Coolier - 新生・東方創想話

偽りの真

2006/10/07 09:32:58
最終更新
サイズ
58.42KB
ページ数
1
閲覧数
1299
評価数
31/109
POINT
6410
Rate
11.70



「嘘を吐かず正直に生きること。生まれ変わってもそれを忘れずに心掛けなさい」

これは死後、新たに転生する霊に向ける私からの最後の助言。
男性の霊は黙って頷くが、素直に聞き入れる様な人柄には到底思えない。
生前、嘘を日常的に吐いて生きてきた男性は、まるで人を信用していない目をしている。

「嘘と言うのはそれ程いけない事なのか……という顔をしてますね」

心中を読まれた事に嫌悪したのか、男性は眉間に皺を寄せた。
いかに嘘を吐くのが上手かろうが、私の前ではそれは通用しない。
閻魔と言えど、舌までは引っこ抜くつもりは無いけれど。

「良いですか? 嘘と言うのはそれ自体が罪なのです。それは相手を騙すという事もそうですが、自分を偽るという事でもあります」

どんなに小さな嘘も、悪意の無い嘘も同じ事。
些細な嘘を一度でも吐いてしまえば、その嘘がばれない様に、どんどん嘘に嘘を重ねなければならなくなってしまう。
そしてやがて小さな嘘は大きな取り返しの付かない嘘になってしまう。
全部が全部そうとは言い切れないが、私はそんな人達を大勢見てきた。

「人を上手く騙す事が出来ればそれは自分に利益が出るでしょう。しかしその時点で嘘を吐いた人は相手の信頼を裏切っている事になる。そして嘘で塗り固められた仮面が剥がれ落ちた時、相手はどう思うでしょう」

騙された自分が悪いと思うのか、仕方が無いと諦めるのか。
実際は殆どの場合に嘘を吐いた相手を憎むという行為に出る。
事によっては殺人にまで発展しかねない場合がある。
嘘を吐く事により、自分は愚か相手までも不幸にしてしまう。
それが嘘が罪になると言う事だ。

「貴方にとっては幸い、嘘が発覚する事なく天寿を迎える事が出来た。恐らく貴方は来世でも同じ事を繰り返すのでしょう」

記憶は無くなっていても魂の本質までは変わる事は無い。
それが出来るのは本人の意思のみ。
自分の行いを正面から受け止め、それを真剣に考える。
そうやって初めて変わる事が出来るのだ。

「もし貴方が誰かに嘘を吐かれたとしたらどう思いますか? 嘘だと分かった時、貴方はどうしますか?」

嘘が日常となった者ならいつかは考える事。
この男性もそんな頃があった様で、気まずそうに俯いてしまった。

「基本的に貴方は悪い人ではない。それは此処まで辿り着く事が出来た事で証明されています」

極悪人なら三途の川を渡る為に必要な渡し賃が足りず。
もし渡し賃が足りていたとしても、水先案内人である死神によって此処に来るに相応しくないと判断され、その場で川に落とされるか、死神の鎌によって消滅させられてしまう。
船の上で死神の機嫌を損ねる行いは、自殺行為に他ならない。

「良く考えてみなさい。自分がこれまで吐いてきた嘘の事、その時の相手の気持ちになって考えれば自ずと理解出来る筈です」

俯いたままの男性の肩に手を置く。
それに反応し、見上げた男性の顔は憑き物が落ちたかの様だった。

――これなら大丈夫でしょう。
私はそう判断し、この裁判の行方を決定する。

「判決を下します」

卒塔婆を男性へ向ける。
これまで幾度と無く続けてきたこの体勢で、私は最終判決を言い渡す。

「この男性に更生の余地有りと判断し、今一度人間へと転生し、自らを偽らずに生きる事を命じます」

その判決に男性は頭を深く下げた。
恐らくこの男性が此処に戻って来る事は無いでしょう。
此処、無縁塚にはなにかしらの罪を背負った者達が訪れる。
もしくは災害や飢饉などで亡くなった、そういう不幸を負った者達が訪れる場所。

「一つ言い忘れていました……私の言葉は只の助言にしか過ぎません。結局の所、自分の行いを決めるのは貴方自身なのです。それでも私は貴方が二度と同じ事を繰り返さないと信じています」

自分がどんな行動を取るのか、それを命令出来るのは自分だけ。
誰からどんなに強制されたとしても、最後は自分で考え行動しなければならない。

男性は涙を流しながら感謝の言葉を漏らした。
誰も信用する事が出来ず、誰からも信用されてるとは思えない。
そんな人生を歩んできた男性にとって、真っ向から信用すると言われるのは初めてなのかもしれない。
……それは罪以前にとても悲しい事。

「……大丈夫です。今のその気持ちを忘れなければ貴方はもっと多くの人から信頼される事になるでしょう。そして信頼される喜びを知った貴方は二度と嘘など吐く事はなくなる筈です」

些細な罪でも、それを犯してしまった事が罪ではなく、犯してしまった事を後悔もせず平然と生きて行く事が罪なのです。
だからと言ってただ悔やむだけでは意味がありません。
罪と向き合い、考え、そして行動する。
それがどれだけ見当違いな行動だったとしても、大切なのは心構えと詫びる事が出来るちょっとした勇気なのです。
誰にでも出来る事、それでも中々素直に出来ない事。
罪を犯す事は簡単だけれど、それを償うのは難しい事です。

「さぁ……新たな人生を歩みなさい。そしてもう二度と此処へは戻って来ないこと。それが今の貴方が積める善行です」

男性は一礼すると、淡い光の奔流と共にその姿を霧散させた。
最後は笑顔でにっこりと……。



◇   ◇   ◇



「……ふぅ」

霊魂を裁き終えた私は椅子に深く背中を預けた。
これで今日は三人目……恐らくこれ以上、此処に霊魂が運ばれて来る事は無いでしょう。
それがここ最近、小町のお気に入りのペース配分の様だった。

「はぁ……」

出て来るのは溜息ばかり。
私の部下である水先案内人、死神の小町はどうにも怠け癖が付いているらしい。
最初に小町が来た頃は今の三倍以上の霊魂が送られて来たというのに、一体いつからこんな風になってしまったのだろう。いくら叱っても数日経てば元通り。

「ん……はぁ~……」

座ったまま背伸びをし、そのままの格好で机に突っ伏す。
今では私もこのペースに慣れてしまったのか、これ以上仕事をする気にはなれなかった。

小町の怠け癖がうつってしまったらしい。
お陰で小町を叱りに行くのも面倒に思う。
もしかして私は、小町の策略にまんまと嵌ってしまったのかしら。

考えてみるも長続きしない。
私は一体どれだけ集中力を無くしてしまったのだろう。

「む~……」

こうして机に体を預けていると、そのうち寝てしまいそうだ。
窓の外を見てみると、日はまだ完全に落ち切っておらず、寝るにはまだ早い。

「小町にも困ったものね……」

身を起こし部下の事を考える。
本当に困ったのは自分の方でしょうに……。

その部下を咎めに行く事も無く、こうして何もやる気の無い自分に自嘲の笑みが零れる。
窓を開け、彼岸の乾いた空気を胸一杯に吸い込む。
夏でも冷たい外の風は、私の眠気を一瞬で吹き飛ばした。

まぁ、こうして考えていても仕方が無い。
それに送られて来る数が少ないから、霊魂一人一人に割ける時間も多い分じっくりと裁きを下す事が出来る。
多くてもやっつけ仕事という訳では無いにせよ、時間を気にする事も無く話が出来るのは良い事なのかもしれません。

でもそれは……私の都合の良い解釈でしか無いのは分かっている。
実際どちらが良いかは半々と言った所でしょうけど。

「はぁ……」

何を考えても出てくるのは溜息ばかり。
今の私が積める善行って一体何なのでしょう……。

壁に掛かった時計を何気なく見る。
針はそろそろ一日の仕事が終わる時刻を指していた。

こうしていても仕方が無い……夕食でも作るとしましょうか。
今夜は質の良い鳥肉が手に入ったので、親子丼を作ってみる事にした。

法衣の上にエプロンを身に付け、調理場に立つ。
まずは、まな板の上に肉を乗せ、それを一口大に切る。
次に玉ねぎを一玉取り、薄切りにしていく。

うぅ……目に染みる……。
玉ねぎを切る時に、先に冷やしておくと良いという話を聞きますが、あれって本当なのでしょうか?
試してみようとは思っても、いざ玉ねぎを使う時にはすっかり忘れてしまっているものです。
思い出すのはいつもこうやって切ってる時に……。
まぁ、目を瞑っていれば問題無いのでしょうけど。

一度それをやって指を切った事がある。
なんとも馬鹿な理由な為、誰にも言わない様にしていますが……。

最後に三つ葉を適当な大きさに切って、包丁を使う仕事は終わりだ。
卵を容器に入れ、切る様に解きほぐす。

今作っているものには関係のない事ですが……。
黄身と白身を別々に分けて、白身の方を泡立つまでかき混ぜて、それから後は普通に黄身と混ぜて玉子焼きを作ると、ふわふわとした玉子焼きが出来上がるのですよ。

鍋にみりんを入れ強火に掛ける。
沸騰したところであらかじめ作っておいただし汁と砂糖や醤油などの調味料、それとお酒を少々入れる。
また沸騰させてから切った玉ねぎと肉を入れていく。
アクを丁寧に取り除く事が美味しく作る為の秘訣だ。

肉が柔らかく煮えたところで鍋から半分を取り出し、少し小さめの鍋に移していく。
それを火に掛け、煮立ったら溶き卵を加える。
そのままかき混ぜずに、卵が半熟程度になった頃を見計らい、上から三つ葉を散らす。
後はこれをご飯の上に乗せるだけ。

「お~、良い匂い」

その時、丁度のタイミングで小町が入って来た。

「もうすぐ出来ますから、少し待っていて下さい」

残りの分も同じ様に卵を加え、頃合を見てご飯に乗せる。
良し、出来はまずまずといったところですね。

「まーだですか~? もうお腹もぺこぺこですよ~」
「はいはい。今出来ましたから、そう慌てないで下さい」

まったく……手の掛かる娘ですね。
机に丼を置いて自分も座る。
先に座っていた小町はというと、出て来た丼に目を輝かせていた。

「親子丼ですか、四季様にしては珍しいですよね?」

確かに普段からこういう物は余り作らないけど、簡単で美味しい親子丼というのも偶には良いでしょう。

「そうですね。今日は偶々質の良い鳥肉が入ったのですよ」
「へ~、そうなんですか」
「取り合えずは頂きましょうか」
「はーい」

ぽん、と両手を合わせて、二人揃って頂きます。

実際、小町はちゃんと自分の家を持っているのだが、こうして私の所で寝泊りしている。
毎日の様に手料理を振る舞い、一緒に食事を取っていた。
本来、死神稼業は肉体労働が多い事から普通は男性がその職に就く為、閻魔と死神の住居は別々に用意される。
小町にも例外無くそれが用意されたが、いつの間にやら此処で同居するようになってしまった。

まぁ、私自身その事は特に気にもしていないし、小町も食費が浮く程度にしか思っていないかもしれません。
今ではこうやって一緒に居る事が当たり前になっていて、これが自然な生活サイクルになっている。

「おいひ~」
「こらこら、口の中に物を入れたまま喋らない」
「らって~……」

もごもごとりすの様に膨らました頬で、とても幸せそうな顔をする。
こんなに喜んで食べてくれると作った甲斐があったというものです。

「ふふ、ご飯一つでどうしてそんなに幸せそうな顔が出来るのですか」
「それは……」

そのまま何かを言おうとしたが、口の中の物を咀嚼し、飲み込む。
口の中を空にして、小町はにっこりと笑った。

「四季様とこうして一緒に食事が出来て一緒に暮らせるんですから、幸せじゃない筈がないですよ」
「小町……」

眩しい程の笑顔で真正面からなんとも恥ずかしい事を言ってくる。
全く……この娘は……。
どうしてそう言う事がはっきりと言えるのでしょう。
聞いてるこちらが恥ずかしくなりますよ……。

でも……小町の言葉は本当に嬉しいものです。

「それにこんな美味しいお料理を毎日頂けて、それだけでも幸せってもんですよ」
「大げさに言い過ぎですよ、それに貴方だってこれ位は作れるでしょう?」
「ん~、確かに作れますけど、やっぱり誰かが作ってくれたお料理の方が美味しいじゃないですか」

確かにそれはありますが……。
それでもそんなに喜ぶ様な事なのでしょうか?

「四季様はどうなんです?」
「えっ?」
「あたいと一緒に居てどう思いますか?」

小町と……。
当たり前になっていて、余り気に掛けた事が無かった……。

私は暫し考え込む。
今まで小町と一緒に暮らした記憶を探りながら。

「そう……ですね。少なくとも一人で居るよりは楽しいですね」

昔はいつも一人だった。
食事も睡眠も一人っきり。
霊魂を相手にする仕事の為、広い空間に一人きりというのは寂しいものがある。

「む~……」

何故か小町がむくれてしまった。
まぁ、いつもの事なので特に気にはしない。

「昔は一人で居るのが当たり前でしたから、そう思える様になったのは小町が来てからですね」

誰かと一緒に居る楽しさを知った。
小町のお陰でそれを知る事が出来た。
普段はただの怠け者だけど、大切な事を私に教えてくれた。
怠け者だから、力を抜く事を私に教えれたのかもしれない。

「きっと小町だから楽しいのでしょう」
「むぐっ!?」
「ちょ、小町!?」
「んー! ん~ん~!!」
「み、水! 水!」

何をしているんですかこの娘は!?
落ち着いてゆっくり食べないから喉に詰まらせる事になるんですよ!

「ん……ん……ぷはぁ! はぁ…はぁ…」
「大丈夫……ですか?」
「あ~……なんとか」

生死の境から復活を遂げた小町は、力なく微笑んで取り敢えずは無事な様子を見せた。
今ので三年位は寿命が縮まった気がする……。

「全く、私の作った料理で死なれたら、私は一体どうやって裁きを行えば良いのですか」
「それは加害者である四季様が裁かれるんじゃないんですか?」
「私は何もしていません。小町が勝手に詰まらせたのでしょ」
「いや、それは四季様が……」
「……?」

そこまで言っておいて止めますか……。
私が何をしたんですか、気になるじゃないですか。

「あー、何でも無いです。もう大丈夫ですから、気にしないで下さい」
「何なのですか急に」
「なーんでもありませんよー」
「む、隠し事はいけませんよ?」
「何を仰います。あたいは四季様には嘘など吐いた事はありません」
「嘘と隠し事は別物よ、それに結構嘘だって吐くじゃないですか……」

嘘を吐かないと言う時点で既に嘘でしょう。
ここらで一つお説教でもしておきますか……。
そう決めて小町に声を掛けようとしたが、その小町は気持ちが悪い程のにやついた笑みを浮かべていた。

「……んふふふふ~♪」
「な、何ですかその不気味な笑みは……」
「えー? だって……んふ、んふふ」
「気味が悪いですよ……」

急にむくれたり笑ったりと何ともころころと表情が変わる娘だ。
未だにニヤニヤとしている小町を放っておいて、食事を再開させる。

「ねー、四季様?」
「はい?」
「やっぱりあたい……すっごく幸せですよ」

そんな事、言わなくても顔で分かりますよ。
でもこの娘の笑顔は、見ているこちらまで釣られてしまう程に無邪気だと思う。
きっと私は小町のこういう顔を見るのが好きなのでしょう。
釣られて笑顔になった私は、そうですねと返し、幸せな温かい気分に浸る。

小町と一緒なら、毎日こんな気分で居られるのだろう。
仕事の事さえ少し目を瞑れば、明るく元気な部下であり、また良き友人です。

「早く食べないと冷めてしまいますよ?」
「あ、忘れてました。でもきっと冷めても美味しいですよ」
「何を言っているんですか。美味しい温かいのを食べて欲しいからそう言っているのですよ」
「なる程、それなら冷やしてしまうのも勿体無いですね」

小町はそう言うと、ご飯を口にかき込む様に食べ始めた。
でもどんなに急いでいても、美味しいと言うのは忘れてはいないらしい。

「ああもう、そんなに急いで食べるとまた喉に詰まらせますよ」
「ふぁいようふふぇふよ」
「だから口の中に物を入れたまま喋らない!」
「ふぁーい」

分かっているんだかいないんだか。
こちらは叱っているつもりでも、今の小町相手ではまるで通じない。
まぁ、私もそれ程に咎めるつもりはありませんが。
本当に美味しそうに食べてくれる小町を見て、そんな些細な事はどうでも良くなってしまう。

「そう言えば四季様、来週の休日はどうするんですか?」
「ん? 特に何も考えてはいませんが……偶には外の空気を吸ってみるのも良いかもしれませんね」
「あ、それなら黒白に教えてもらった良い所がありますよ。一緒に行きませんか?」
「ええ、別に構いませんよ。良い所って言うのはどんな所なのですか?」
「それは行ってからのお楽しみって事で」

何か考えでもあるのでしょう、含んだ笑みから容易く想像出来ます。
此処の外に行くのも久々ですね。
無縁塚は悪い所ではありませんが、死霊が集まる場所なので空気や雰囲気はあまり褒められたものではありませんから。

それにしても小町も気が早い。
つい先日、休んだばかりだと言うのにもう次の事を考えているだなんて。
余り休みの事ばかり考えるのも良くありませんよ?
とは言っても私もそれなりに楽しみにしている訳ですが……。

「それじゃあその時はあたいがお弁当作りますよ、何かリクエストはありますか?」
「そうですね……それは小町のお任せにしておきます、その方が楽しみですから」
「あはは、了解しました。腕に縒りを掛けて作りますね」
「ええ、楽しみにしています」

うん、これでまた今週も頑張れる。
小町が与えてくれる楽しみと、この笑顔を見ていれば頑張れる。
私に元気をくれる小町に、心の中だけでそっと感謝した。

「ふぃ~、ご馳走様でしたー」
「お粗末様でした」

大した量でも無い筈なのに、食べるのにこんなにも時間が掛かった。
作った時間の倍以上の時間を掛けて楽しい一時を過ごす事が出来た。
何事も楽しもうとする小町が居るからこそ出来るんでしょうけど。

「あ、後片付けはあたいがやっておきますよ」
「いいですよそれくらい、小町はゆっくり休んでいて下さい」

丼を持っていこうとした手がそこで止まる。
小町はなにやらばつが悪そうに苦笑いを浮かべていた。

「あはは……昼間に十分休んでましたから……」
「小町……それは少し聞き逃せないですね」
「あはははは……」
「もう、自覚が有るならもう少し真面目になさい。それに私だって貴方がサボっていた事くらい分かっています。それなのにわざわざ馬鹿正直に言わなくても良いでしょうに……」

最も小町もそれが分かっているからこそ自白したのでしょうけど。
仕事面では不真面目な癖に、こういう所は意外と真面目だったりする。

「四季様に嘘は吐かないと誓いましたから」
「嘘です。それ自体が既に嘘です」
「そんな事ありませんよ、と言っても誓ったのはつい先程ですけど」
「……口八丁とは良く言ったものですね」
「それは四季様には敵いませんよ」

都合の良い事を言う娘だ。
それに口は閻魔としての商売道具ですから、自ずと達者になるものですよ。
……それは霊魂を連れて来る死神にも同じ事が言えるのかもしれませんが。

「良い事があったから少しは善行を積もうとした、ちょっとした心境の変化ですよ」
「そうなのですか?」
「あたいだって善行くらい積みますよ?」
「いえそうじゃなく、何か良い事があったのですか?」
「はい、とっても!」
「そ、そうなのですか」

一体何があったのだろう。
この様子では聞いても教えてくれなさそうですね。
嘘はすぐに見破れるから良いとして、隠し事をしないようにして欲しいものです。
おまけに中途半端な所で止められるから気になって気になって……。

「と言う訳で、あたいは後片付けしてきますね」
「うーん……それなら私も手伝いますよ。それにその方が早く終わるでしょう?」
「あはは、そう言う事なら一緒にやりましょうか」
「ええ」



◇   ◇   ◇



次の日、私は誰もいない法廷内で待ち惚けを受けていた。
時刻は既に昼を回ろうとしているというのに、今日はまだ一人として此処に連れられて来る事はなかった。

さすがにこれだけ暇だと時間も持て余してしまいますね……。
小町は一体何をしているのでしょうか?
予想出来る事としてはお昼寝をしているかどこかに出掛けたか。
どちらにせよ、これは少し注意する必要がありますね……。

そう思い立って、椅子から立ち上がろうとした時、不意に私を呼ぶ声が聞えた。

「……?」

気のせいでしょうか?
室内には誰もいない様だし、霊魂の気配も感じません。

それでも耳を良く澄ませていると、窓が叩かれる音でようやくそれに気がついた。

「やっほー」

気の抜けた元気の良い挨拶。
窓を乗り越え部屋の中へとやって来る。

「やっほー、じゃありませんよ。入るなら普通に入り口から入って来なさい」
「いいでしょそれくらい、知らない顔でもないんだから」

私と似たような服装をしたこの女性は、私の古くからの同僚。
仕事柄、滅多に会う事は出来ないが、それでも気心知れた仲だった。

「それにしても久しぶりねー、元気してた?」
「まぁ、ぼちぼちですね」
「相変わらず暇そうにしてるみたいだけどね」

片手をひらひらと振りながら、そんな事を言ってくる。
余計なお世話です……言われなくてもそのくらい分かっています。
現にこうして事の元凶を注意しようとしてた所ですから。

「そういう貴方はどうなのですか? 平日のこんな時間に来るだなんて、どういう風の吹き回しですか?」
「んっとね、その事だけど、貴方に言わなきゃいけない事があるのよ」

何なのでしょう?
この娘だって普段は急がしい筈。
それなのにわざわざこんな所まで来るだなんて、それ程重要な事なのでしょうか。

「私は貴方の代わりをする為に此処に来たのよ」
「は? それはどう言う事ですか?」
「まぁ、だらだら引っ張るのもあれだから単刀直入に言うね。貴方は本日限りで解任が決定されたのよ」
「……は?」
「つまりはクビね」
「な、そんな! 何故ですか!?」

分かってる。
そんな事を聞かなくても理由は分かり切っている。
ここ最近、まともに職務を真っ当しているとは到底言えない状況で分からない筈が無い。

「こ、小町は!? 小町はどうなるのですか!?」
「小町ちゃんなら引き続き私の所で働いてもらう事になっているわ」
「……そうですか」

それを聞き、少しだけ安心する。
小町が原因とは言え、責任は上司の私にある事は間違い無い。
これで小町まで解任となれば、私は自分の不甲斐無さを呪う事になるだろう。

「あら、随分あっさり納得するのね?」

余り意外では無さそうな顔をしている。
気心知れた仲だ、私がどういった性格をしているのか分かってるのだろう。

「ええ……いつかこんな日が来るんじゃないかと考えていた事もありましたから。認めたくはありませんが認めざる得ないでしょう……」
「職務怠慢及び監督不行届き、解任の理由はそれくらいね」

いいです……言われなくても分かっていますから……。

「それで……本日限りというのは今日が終わるまで私はまだ辞めなくてもいいのですか?」
「ん~……それでも良いし、今すぐでも良いし。それは貴方の好きな様にしたら?」

まだ私が閻魔でいられる時間は半日残っている訳ですか……。
でも今日は霊魂が送られてくる事は無いでしょう。
私の勘がそう告げていた。

「今の内に小町ちゃんに挨拶してきたら? 何も言わずにさようならも寂しいだろうしね」
「そう……ですね」

私と合ったら小町はどんな顔をするのだろう。
私を慕ってくれる小町は、きっと自分の所為だと思い込んでしまうに違いない……。
今の私に積める最後の善行は、小町の気を和らいでやる事くらいしか思いつかなかった。



◇   ◇   ◇



三途の川は果てしなく広い。
眼下には見渡す限りの流水。
川の上空を飛ぶ私は、小町に会う為に此処まで来ている。

私は此処に来るまでに、ずっと小町の事を考えていた。
どうやって元気付けてあげたら良いのか。
どうしたら自分を責める事を止めさせられるのか。
考えは上手く纏まらない。

暫く飛行を続けていると、ようやく対岸が見えてきた。
そこには岩を布団代わりに気持ち良さそうにしている小町の姿が確認できた。
私は考えが纏まらないまま、小町の傍にそっと静かに降り立つ。

……暢気なものですね。
余りにも気持ち良さそうな寝顔を見て、つい頬が緩んでしまう。
此処を離れる事になったら、もう小町には会えなくなってしまうのだろうか。
見納めにこのまま暫くこの寝顔を見ていようと傍に腰を下ろしたが、気配に感付いた小町が目を覚ましてしまった。

「ん……ぅん? …………うわぁ!?」
「その反応は少し失礼ですよ?」

寝ぼけ眼で私の姿を確認した小町は、驚いた勢いで岩から転落した。
背中を打ったのか、痛みにもがき苦しんでいる。

「し、四季様!? どうして此処に!?」
「……?」

この反応……。
もしや小町は私が解任された事を知らないのですか?

「いつまで経っても霊魂が送られてくる気配すらありません。いくら怠け者の貴方と言えど、これは少し見過ごす訳にはいきません」
「えぇー!? 最近はお説教も無いから少しくらいさぼっても大丈夫だと思ったのに~……」
「貴方は普段からさぼっているでしょう! これ以上さぼられたら、たまったもんじゃありませんよ!」
「うぇ~……」

普段と変わらない小町の反応。
間違いない、小町にはまだ何も知らされていない様だ。

ならどうする?
想定外の出来事に、私は二つの選択を迫られた。
一つは本当の事を話す。
一つは何も言わずに去る。

「どうしたんですか四季さま?」
「えっ?」

思わず考え込んでしまった私の顔を、小町が不思議そうに覗き込む。
……駄目だ、こんな顔をされては本当の事を話すなんて私には出来ない。
正直に話す事、それは私自ら小町の責任を明らかにする事。
そんな事を話してしまえば、小町はきっと泣いて詫びる事になるだろう。
……泣いて詫びる小町の顔なんて絶対に見たく無い!

「貴方に話があって此処まで来ました」
「うぁ……もしかしなくてもお説教ですか……?」
「それは後でする事にして、先に大事な話をしておきます」
「大事な話ですか?」
「はい。実は先程、私の解任の知らせが届きました」
「……は?」
「その事で貴方に話しておかなければらないのが―――」
「ちょ、ちょっと待って下さい! それは一体どう言う事ですか!?」

声を荒げ、私に掴みかかって来る。
その真剣な形相に、流石の私も息を呑んでしまう。

「落ち着きなさい、小町」
「落ち着いていられますか! 納得出来ません! 何故なんですか!?」
「小町……」
「私の……私の所為なんですか!? 私が怠けてばかりだから……それで四季様が!?」

ああ……思っていた通りだ……。
事実、百歩譲ってもそれが原因には違いない。
だが私とて、小町を甘やかしていた事は否めない。
だからその責任を私が負うのは当然の事でしょう。

「私が……うっ……私の所為で……」

とうとう泣き出してしまった。
こんな顔は見たく無かった筈なのに……。
小町には元気な笑顔が似合いますから……。

だから良いですよね?
この娘を笑顔させる為に……。
嘘を吐いても良いですよね?

「小町っ!!」
「ひっ!?」

突然の私の大声に体を震わせる。
急に声を大にした私が怒っているものだと思ったのか、その顔は酷く怯えている様に見えた。

「小町、ちゃんと話は最後まで聞きなさい」

だから私は、笑顔で小町に話しかけた。
これから吐く、生涯初めての嘘の為に。
公明正大な閻魔である私が、唯一自らの意思で吐く嘘の為に。

「解任、と言ってもまだ完全に決まった訳ではありません。これからも今の現状が変わらなければそうなるという事です」
「……え? それじゃあ!?」
「ええ、貴方がもう少し頑張ればこの話も無かった事になるでしょう」
「な……はぁ……良かったぁ~……」

胸がズキリと痛む。
嘘を吐く人の気持ちが、本当の意味で分かった。
それが相手の為とは言え、嘘は嘘。
いつか私が霊魂に言い聞かせた言葉。
その時、私は相手の気持ちを分かってはいなかった。
嘘は罪と、頭で解釈してしまっていた私は、そこまで考える思考は持ち合わせていなかった。

「安心するのはまだ早いですよ? 貴方の行い次第ではそれが本当の事になってしまうのですから」
「そんな事は絶対にさせません! 私、頑張りますから! 絶対に四季様を解任なんてさせませんから!」

ズキリ。
小町の思いが伝わる度に胸が痛む。
胸が締め付けられる思いの中、私は無理やりにでも笑顔を引き出す。

「それは心強いですね。でも、だからといって無理をしてはいけませんよ? そうですね……最初は今の倍の六人程から始めてみましょうか」
「六人だなんて……もっといけますよ! 十人でも二十人でも送り届けますよ!」
「こらこら、それだと私の方が参ってしまいます」
「大丈夫です。四季様ならそれくらいなんて事ありませんよ!」
「ふふ、言ってくれますね。良いでしょう、その挑戦……受けて経ちましょうか」

小町が余りにも意気込むので、私もつい微笑んでしまう。
だが笑顔の下では、間違いなく私は涙していた。

「……それともう一つ」
「何ですか?」
「暫く私の宿舎には来ない事。幾ら貴方が女性と言えど、やはり体裁というものがありますから」
「あ~……はい、分かりました」

一つ目の嘘がばれるのを防ぐ為の嘘。
こうやって嘘が嘘で塗り固められていくものなのでしょう。

些細な嘘を一度でも吐いてしまえば、その嘘がばれない様にどんどん嘘に嘘を重ねなければならなくなってしまう。
そしてやがて小さな嘘は大きな取り返しのつかない嘘になってしまう。

これは昨日ここを訪れた霊魂に言った言葉。
だが、たとえ取り返しのつかない事になってしまおうが、私には今の小町の笑顔を崩す真似は出来なかった。

「それでは私はそろそろ戻ります」
「あれ? お説教は無しなんですか?」
「これから頑張ろうとしている者にお説教をしても仕方が無いでしょう。その代わり暫くは真面目に働く事」

約束ですよと念を押す。
小町は任せてくださいと真剣な顔で頷いた。
私はそれを見て、元来た道へと踵を返す。
去り行く中、私は小町の顔を見ずに何度も謝った。

……さようなら、小町。



◇   ◇   ◇



私は四季映姫。
元は彼岸にて閻魔としての職務を真っ当しておりました。
今では無縁塚にほと近いこの雑木林にひっそりと居を構えています。

私が彼岸を出てからはや二日が経った。
行く当ての無い私は、昔から誰も住んでいないこのこじんまりとした家に居座らせてもらう事にした。
やる事も無く、そして今まで生き甲斐の様に閻魔を生業としていた為、それから離れた私は、抜け殻の様に毎日を過ごしていた。

このままで良いのでしょうか……。
一体、私は何をしたら良いのでしょうか……。

思考に浸るも何も浮かんではこない。
閻魔という職を失った私には、他に何をすれば良いのかまるで考え付かなかった。

朝起きて夜になったら床に就く。
ただそれだけの毎日がこれからも続くのだろうかと思うと気が沈む。
霊を裁いていた時は、あれだけ大層な事を言っておきながら、実際に自分は何も出来ていない。

小町は……元気でやっているのでしょうか……。
余り無理をしていなければ良いのですが……。

私が吐いた嘘を真に受けて、今頃はせっせと霊魂を彼岸に送り届けている所だろう。
あの娘はやれば出来る娘ですから、やる気さえ出してくれたら何も問題は無い筈です。

書斎らしき部屋の机に座り、本棚に入っていた本を何気なく読みながら暇と時間を潰す。
前にこの家に住んでいた者が今どうしているのかは分からない。
家の様子や家具などで、前に居た者は何かしらの研究家だった事が分かる。

「随分と腑抜けた顔ねぇ」

聞き慣れない聞き覚えのある声。
その声に振り返ると、そこには赤いチェック柄の服を着て、家の中だというのに傘をさしている少女が立っていた。

「無断で人の家に入って来るのは余り関心しませんね……」
「それは貴方にも言える事じゃなくて?」

その少女、風見 幽香は片手で口元を隠し、くすくすと笑いながら私を見ていた。
傘をくるくると回しながら立つ姿は、見た目相応の少女らしい格好だが。
その実、幽香は妖怪の中でも長生きで、かなりの実力を持っている。

「此処に来れば貴方の無様な格好が見れると聞いてね、見に来たのよ」
「一体誰がそんな事を……」
「幻想郷の噂話は天狗に聞けって言うじゃない」

なる程……確かにこういった噂や事件などは天狗の情報網に容易く掛かる事でしょう。
天狗と聞き、一人の少女が頭に浮かんだが、それよりも目の前の問題を解決する事を優先と考えた。

「安心しても良いわよ、この事は記事にはしないと約束させたから」
「どうして貴方がそんな事まで……?」
「別に、私はやりたい事をやってるだけ。それに理由も無ければ理屈も無いわ」

幽香らしい考え方だと思う。
強い力を持っている為に誰もそれを制する事が出来ない。
何者にも縛られない幽香を少し羨ましく思える。

「取り敢えずその事に関しては貴方に礼を言わなければなりませんね」
「言ったでしょう、私は只やりたい事をしただけ。誰も貴方の為にやった訳じゃないわ」
「それでも結果として私はあらぬ事を書かれずに済みました」
「……相変わらず堅いわねぇ」

半ば呆れた様な物言いで幽香が溜息を吐く。
もし天狗の書く新聞に記事として書かれたのならば、ある事ない事を様々に捏造されたに違いない。
そうなってしまえば私は周囲から笑い者になる事は間違い無かった。

まぁ、あの者が書く記事は他とは違い、至ってまともな物が多いのですが。
それでも書かれないに越した事は無い。
自分の醜態を周りに知られるのは少々願い下げしたい。

「それで、貴方は一体何をしにわざわざ此処まで来たのですか?」

その言葉に今まで笑みを浮かべていた幽香は、ここで初めてそれを崩した。

「それは初めに言ったわ。貴方の腑抜けた顔を拝みに来たって」

どこか怒っている様な、それでも何故か優しさを感じる顔で幽香は傘を閉じた。
哀れむ顔とはまた違う、そんな幽香の表情に少し戸惑いを覚えた。

「それだけでは無いのでしょう? 私の前では嘘や隠し事は通用しませんよ?」
「そうね……と言っても別に隠すつもり何て無いけど」

いつの間にか幽香は、普段と同じ微笑を帯びた顔に戻っていた。
幽香が此処に来る理由なんて想像もつかない。
私の幽香に対するイメージは、人妖問わず誰かしらにちょっかいを掛けているか、静かに花を愛でているかのどちらかだ。

「こんな所に居ないで、私の所に来ない?」

思いも寄らない言葉に、私は呆気にとられる。
何故そんな事を言うのか、何を考えているのか全く分からない。

「それは……何故ですか?」

だから私は直接聞いてみる行動に出た。
幽香は一瞬きょとんとすると、私の心中を察して可笑しそうに笑った。

「あはは、誰も取って食う様な真似はしないわよ。それにこれと言った理由がある訳でも無いし」
「……理由も無しに貴方がそんな事を言うとは到底思えませんが」
「酷いわねぇ、私ってそんなに悪い妖怪に見える?」
「はい」
「…………」

固まる幽香。
少し正直に言い過ぎたかもしれない。
張り付いた様な笑顔のまま固まった幽香を見て、少し軽率だったかと後悔した。

「うっ……ぐす……私ってそんな風に見られていたのね……」
「私には嘘泣きも通用しませんよ?」

突然泣き真似を始めた幽香を静かに嗜める。
他の者は騙せたとしても、私がそれに騙される事は無い。

「面白く無いわねぇ……か弱き乙女を泣かせて、少しは慌ててくれても良いじゃない」

むくれてながらとんでも無い事を言う幽香に、思わず顔を歪めてしまう。
幽香が此処に来たのは、ただの暇つぶしなのかもしれない。
そう思わずにはいられなかった。

「誰がか弱い乙女なのですか……自分で言ってて恥ずかしくありませんか……?」
「別にー、見た目がそれらしい少女なんだから乙女で良いじゃない」
「か弱いはどこから出てきたのですか……そもそも貴方は―――」
「ストップ。お説教はいらないからそう怒らないで」

お説教モードに入りかけた私に、いち早く発言を制止する。
長々と話を聞かされるのは勘弁願いたいと、幽香は慌てて話題を変えた。

「まぁ、理由は無いとは言ったけど、私は貴方の事を結構気に入っているのよ。だからこんな辛気臭い所に居ないで私の所に来ないかって」
「それだけの理由ですか……?」
「そうは言われても……ただ何となくよ」

確かに幽香が住む屋敷は広さも十分あり、此処に居るよりは随分とましな生活を送れるかもしれない。
幽香の言う通り、ただ何となくなのは分かるが、それで良いのかと疑問も湧く。

「私を思って誘ってくれる事には感謝します。ですが私はもう暫く此処で自分の事を考えてみます」
「そ、残念だけど無理強いするつもりは無いから。貴方がそう言うのなら仕方が無いわね」

あっさりと納得する。
幽香も初めから期待はしていなかったのかもしれない。
もしかすると私の事を心配してくれていたのかもしれない。
想像でしかないが、幽香の優しい新たな一面を見れて、私は少し元気が湧いてきた。

「それじゃあ、もう用事は無くなった訳だけど。帰る前に私からの贈り物よ」

そう言うと片手を徐に上げ、その状態で数秒何かを考えると、ぱちんと指を鳴らした。
すると今まで何も無かった幽香の手には一輪の花があった。
その茎からは、くたっとぶら下がる様に白い花が幾つか付いている。
幽香は手に持った花を、私の方に差し出してきた。

「……これは?」

渡された花を見てみるが、見た事も無い花に首を傾げる。
見た目からしてユリ科の植物なのは想像出来るが、その名称までは分からない。
鈴蘭の様な釣鐘型の花をまじまじと見てみるが、それとは少し違う様だ。

「これは甘野老と言う花よ」
「あまどころ……?」

名前を聞いても、それが何なのかは分からなかった。
当たり前の事だ、そんな名前の花は聞いた事も無い。

初めて見る花に、私はまたも首を傾げる。
贈り物にしては見た目が貧相で、華やかさに欠けていた。
どうしてこんな物をと思い、幽香の顔を不思議そうに見ていると、幽香は含みのある笑みでこちらを眺めていた。

「どうしてこれを?」

にやにやと笑みを浮かべている幽香はそれを崩さずに、閉じた時と同じ様に静かに傘を開いた。
くるりと踵を返すと、肩に掛けた傘を一度くるんと回すと、顔だけ振り返り私の方を見た。

「それは私から貴方に送る言葉よ」

それだけ言って、じゃあね~と前を向いたまま片手をひらひらと振り、幽香は部屋を後にした。
残された私はその言葉の意味を考える。

言葉、と言うからには、このあまどころという花には何かの花言葉があるのだろう。
そこまでは想像出来るが、肝心の花言葉が分からない。
部屋の中にそういった類の書物がないか調べてみたが、残念な事に此処には花言葉が載った本は無い様だ。

まぁ、あの幽香の事ですから、余り褒められたものでは無いのでしょう。
例えば向日葵の高慢や蒲公英の軽薄の様に。
そう結論付け、私は調べる事を諦めた。
でも貰ったからには大事にしないといけないと、花瓶になりそうな物を見つけ、そこに幽香からもらった花を挿しておいた。

作業を終えた私は、最初の様に静かに椅子に腰を下ろす。
思いがけない幽香の訪問は、私に現実の息吹を与えてくれた。
彼岸を離れてから魂が抜けた様に過ごしていた私は、これからの新たな生活について、ちゃんと考える事を胸に誓った。



◇   ◇   ◇



幽香の訪問の後、私は自分自身の行いについて考えていた。
何もする事が無く、抜け殻の様な生活を送っていた自分を叱咤し、それを改める事から始める。
やる事が無いのならばそれを作ればいい。
何をしたら良いのか分からないなら、考えるより先に行動したら良い。

そう考えた私は、取り敢えず花壇でも作ってみる事にした。
植えるのは、幽香に貰ったこのあまどころという花。
幽香に聞いた話では、これは観賞用でも薬用でも育てられているらしく、育てる事自体は難しく無いらしい。

あれから幽香は毎日の様に此処に顔を見せに来る。
その度に色々と花の話を聞かせてもらっては関心していた。
花壇を作ろうと思ったのも、幽香の話が切っ掛けだったりする。

こんなものでしょうか……。
花に水をやり、私は一息吐く事にした。

彼岸から離れて一体何日が過ぎたのだろう。
私はその事を考えるのを止めていた。
過ぎ去った過去に縛られたままでは良くないと、新たな人生を送る決心をつけた。

花壇の淵に座り、空に輝く太陽に目を細める。
雑木林とは言え、住まいのある此処は開かれた場所になっている。
私は暫くその場で日光浴を楽しむ事にした。

そのまま空を眺めていると、突然に太陽と重なる影に私は目を凝らす。
こちらに向って来るその影は、私を発見すると手を振りながら地に降り立った。

「いやーどうも、少々お話をお伺いに参りました」

突然現れたその影の正体は、幻想郷のブン屋こと烏天狗の射命丸 文だった。
にこにこと営業用の笑顔を思わせる顔で、社交辞令の挨拶をする。
少し遅れて来た一羽の烏が、静かに文の肩に止まった。

「…………」

明らかに興味を秘めた瞳で見つめられ、私は文を睨み返した。
ブン屋がこんな場所に来るのは、此処で面白い話でも聞けると思ったのだろう。
そう思うと、文は余り歓迎出来る相手では無かった。

「あぁ、そう警戒しないで下さい。貴方の事を記事にするつもりはありませんから」
「そうなのですか……?」

私に話を聞きに来たと言うからには、てっきりそうとばかり思っていた。
嘘を言ってる様子も無く、どうやら本当に記事にする気はないらしい。

「はい、貴方の事は書かないと幽香さんとの約束ですから」

そう言えばそんな事を言っていた様な記憶がある。
あの時はさして気にはしていなかったが、今になって少し疑問が湧いてきた。

「私の話を書くのは、貴方にとっては恰好なネタの筈。それなのに良く引き下がりましたね?」
「私も初めは書くつもりでしたが、幽香さんと交渉の末それを取り消す事にしたんですよ」

交渉とは何か?
相変わらずの笑顔を浮かべる文の表情からは、何も読み取る事は出来なかった。
幽香がまともな交渉をするとも思えないが、実力行使に出たとしたら文だって黙ってはいない筈。

「貴方の事を記事にしない代わりに、他の面白そうなネタを頂いたんです」
「他の……?」
「えっと……例えば、とある巫女の失態とか、ある魔法使いの過去の話とか……」

……これは怒るべき所なのでしょうか?
誰かの秘密を誰かに洩らす。
しかもその相手がこの者である事が更に達が悪い。
でもお陰で私は事無きを得た。
それが誰かの犠牲の上に立っている事を知り、素直に喜べるものではなくなった。

「それなら貴方は只の興味本位で此処に来たと?」
「そうですね。そう言う事になります」

記事にはしなくても、何も知らずに居るのは文にとってみれば不本意なのだろう。
ブン屋としての職業柄な事なのか、射命丸 文として興味を満たしたいだけなのかは分からないが。
私が強張った顔を緩めると、文も安心した様で、早速ペンとメモ帳を取り出した。

「それでは今回の事について幾つか質問させて頂いても宜しいですか?」

普段とは違う丁寧口調で是非を求めてくる。
それに対し特に断る理由も無い私は、小さく首を縦に振る事で肯定した。

「ではまず最初に……貴方が閻魔という職を解任されたというのは本当の事ですか?」
「ええ……」

分かってはいたが、己の失態をこういった形で根掘り葉掘り聞かれるのは、少々辛いものがある。
そんな私には一切構わず、文は質問を勧めながらその都度メモ帳に何かを書き込んでいく。



「それで貴方は今こうして此処に居座ったと」
「前から此処が空き家だという事は知っていましたから。それに他に行く当てもありませんでしたからね」

質問が後半になっていくと共に、少しづつ私は気が楽になっていた。
内に溜め込んだ思いを文に話す事によって、それが消化されているのかもしれない。
そう思うと、文の訪問は私にとっては良い方向に働いている様だ。

「ありがとうございました、それと最後に一つ良いですか?」
「ええ、何ですか?」

幾つかされた質問も、どうやらこれで最後らしい。
私は最初とは違う穏やかな気分で聞き返していた。

「貴方はこれからどうするおつもりですか?」
「……そうですね」

このまま此処で静かに暮らすのも良いかもしれない。
幽香の所で世話になるのも良いかもしれない。
気ままに幻想郷を回ってみるのも良いかもしれない。

「まだ特にこれといって決めていません。ただ、何か打ち込める事を見つけてみたいですね」

つまりはそういう事だった。
あれこれ考えてはいたが、未だに良い案が浮かばない。
その中でも一つ、強く思っている事がある。

「出来たら……もう一度閻魔として生活してみたいものですね……」

結局、私は過去に縛られたままの様だった。
だがそれは後ろ向きな考えでは無く、新たに一から閻魔を目指すのも悪く無いと思っていた。

「……そうですか、貴方ならきっと……いえ、絶対になれると思います」
「え? あ、ありがとうございます」

今までの笑顔とは違う、文の本当の笑顔で言われてしまった。
何故そんなに強く断言出来るのかは理解出来なかったが。
それでも誰かに励まされるというのはありがたい話だった。

「それにしても……」
「どうかしましたか?」

急にまじまじと私を食い入る様に見つめる文に首を傾げてしまう。

「いえ、思っていたよりも元気そうだったので、それがちょっと意外でした」
「貴方は……落ち込んでいると思っている相手に対し、その傷を抉る様な質問をしに来たのですか……」
「あ~……まぁ、それはブン屋の性という事で……それに本当に落ち込んでいる様ならそんな事しようとは思いませんよ。私だって鬼じゃありませんから」

どうにも信じがたい事を言う。
人の事情をお構い無しに記事にしそうな烏天狗は、その時点で既に鬼に見えた。

「それでは、私はここらでお暇させて頂きますね」

私との問答に満足したのか、文はその場から立ち上がると、一歩身を引いた。

「突然の訪問のお詫びと、快いご協力に感謝致します」

礼儀正しくその場で頭を下げると、お付の烏と共に一陣の風となり去っていく。
残された私は、一瞬で視界から消えた文の姿を見送る事も出来ず、飛び去ったであろう方角を暫く眺めていた。
結局の所、本当は文が何をしに来たのかは分からずじまいだった。
それでも文との受け答えのお陰で、自身の考えを纏める事が出来た。

私がやりたい事……。
幾ら考えてみても、それはたった一つの事しか頭に浮かんでは来ない。



◇   ◇   ◇



私が此処に来てから、もうすぐ一週間が経とうとしていた。
今までが毎日の様に仕事に追われていた所為か、今の時間がとてもゆっくりと流れている様に感じる。
幸いな事に、書斎にある書物を読むだけでも十分時間を潰せる為、今の生活にはさして困った事も無い。

中々良いものですね。
こういったのんびりとした生活というのも悪く無いかもしれません。
前まではこうして自由に過ごせる時間など限られたものでしたから。

いや、最近までは大して今と変わらない生活を送っていた様な気もするが……。
それはそれ、これはこれ。
休める時間の中でも、仕事があると無いとではまるで勝手が違う。
本当に時間を気にする事も無く過ごせる今は、本当に穏やかな生活だと思う。

しかし、それも長続きする事は無かった。
リビングの椅子に座り、本を片手に優雅にお茶を楽しんでいた私の生活は、けたたましく開かれた扉の音で
一瞬にして破られる事となった。

「はぁ……はぁ……はぁ」

蹴破る様な勢いで開かれた扉の向こう側には、私が幻想郷で一番に見慣れた姿の女性が立っていた。

「こ、小町……!?」

肩で大きく息をする小町は、微動だにする事無くその場に立ち尽くしていた。
俯いている小町は、前髪で顔が隠れ、その表情まで読み取る事は出来なかった。
だが、それでも小町が息を切らす程に此処まで来たという事は変わりは無い。
簡単な話、私が吐いた嘘がばれたのだろう。

良く見てみると小町の体は僅かに震えていた。
真実を知った今、私に怒りを覚えない訳が無い。
どんな罵声を受ける覚悟も出来ている。
責任を取るには、それ位の事しか浮かばなかった。

全く身動きしようとしない小町に一抹の不安感はあったが、このままの状況でいるのも胸が張り裂けそうになってしまう。

「小町―――」
「四季様……」

小町に声を掛けようとしたが、静かで、それでいて強い口調で私を呼び掛けた事で思わず口を閉じる。

「あたい……頑張りましたよ……? 昼寝したかったのも我慢して……四季様に会いたかったのも我慢して……頑張って霊魂を送り続けましたよ……?」

小町は何かに耐えるかの様に拳を強く握り締める。

「ねぇ……なのに……どうしてなんですか……?」

俯いた小町の顔からは、ぽたぽたと雫が零れ落ちる。

「どうして四季様がこんな所に居るんですかっ!?」

初めて小町が顔を上げた。
やはり小町は怒っていた。
ただ少し予想とは違っていた事は、小町がとても悲しそうだった事。

「小町……」
「約束……しましたよね……?」
「あれは……貴方も知っての通り、その場で思い付いた嘘です……」

知られてしまったからには、これ以上嘘を吐く必要も無い。
それ以前にこれ以上、小町に嘘を吐きたくは無かった。

「それは分かっています……四季様が嘘を吐く様な方じゃ無い事も。それなのにどうしてそんな嘘を吐いたのかも、ちゃんと分かっていますから……」
「…………」
「私の為に嘘を吐いたんですよね……? 私を傷付けないように……私を悲しませない為に……」

だが、結果としてこうやって小町を傷付けてしまっている。
最初からこうなる事はどこかで分かっていた筈だ。
それでもあの場で本当の事を言う事は私には出来なかった。

「あたい……自分が情けないです……四季様だって解任を知らされて辛かった筈なのに、それなのにあたいに気を使わせて……あたい何かよりずっと悲しい思いをしていた筈なのに……そんな四季様の力になれなかった自分が情けないです」
「小町……それは」
「分かっています! 四季様がどんな方なのか……そんなの良く分かっています!」

零れ落ちる涙を拭おうともせず、小町は私から視線を離さない。
私も小町から目を離す事は出来なかった。

「どうしてあたいに相談してくれなかったんですか!? 何でそうやって一人で抱え込もうとするんですか!? 四季様があたいの事を思ってくれてる様に……いえ、それ以上にあたいだって四季様の事を考えているんです! あたいは四季様の為に何も出来ないんですか……? 四季様の助けにはなれないんですか……!?」

私は何て愚かだったのだろう。
結局の所、私は自分の事しか考えていなかった。
小町を傷付けない様に吐いた嘘。
だがそれは私自身がそんな事が嫌だったからにしか過ぎない。
ただの私の主観でしか無いそれは、小町の気持ちなど一切考えていない。

「約束……覚えていませんか……?」
「……約束?」

覚えがあるのは、最後に小町と会った時に吐いた嘘での約束。
それ以外には覚えが無かったが、小町を見ていると他に何かある様だ。
私は記憶の奥底から引っ張り出して考える。

「一週間……四季様に会えず、この時だけを楽しみに頑張って働きました。ほら……見て下さい。今朝早く起きて腕に縒りを掛けて作ったんですよ? 四季様に美味しいものを食べて欲しくて、何度か作り直しちゃいましたけど、時間を掛けただけあって中々の自信作が出来たんですよ……」
「あ……」

そうだ、確かに約束した。
どうして忘れていたのだろう。
あれだけ楽しみにしていた筈なのに……。
それが楽しみで一週間頑張ろうと決めた筈なのに……。
どうしてこんな大切な事を忘れていたのだろう……。

「それで四季様に会いに行ったらどこにも居ない……それであの閻魔様に全て聞きました。私と最後に会った時点で既に解任されていた事。四季様はもう彼岸には居ない事。全部聞きました」

どれ程悲しませた事でしょう。
真実を知った時、小町は何を思ったのでしょう……。
私が弱かった所為で余計に小町に悲しい思いをさせてしまった……。

「居ても立っても居なれなくなって、すぐに彼岸を飛び出して四季様を探しました……必死になって探しました……でもどれだけ探しても四季様を見つける事は出来ませんでした……そしたら何だかもう四季様が遠い所に行っちゃった様に思えて……もう二度と会えないんじゃないかって思えて……でもそんなのは絶対に嫌だって、必死に四季様が行きそうな場所を虱潰しに当たって行きました」

小町の言葉に胸が締め付けられた様に苦しくなる。
ふと気がつくと、私の頬を何かが伝わる感触を覚えた。
だがそれを拭う様な事はしない。
小町から絶対に目を離さない、いや……離せないでいる。

「そして最後に思い出したのが此処です。此処に居なかったらどうしようって……すごく不安でした……此処以外にもう当てはありませんでしたから。でもちゃんと此処に四季様が居た。やっと……やっと会えた……またこうやって四季様に会うが出来た……!」

のろのろと覚束ない足取りで小町が歩み寄る。
私も似た様な足取りで小町に近づく。

「もう黙って居なくなったりしないで下さいっ……! たった一日会えないだけで凄く不安になるんです……あたいは四季様のお傍に居たいんです……!」
「小町……」

そっと小町を抱きしめる。
子供の様に泣きじゃくる小町を胸に抱いて、私は得も言われぬ安心感を覚えた。

「小町……ごめんなさい……本当にごめんなさい……!」

私をここまで慕ってくれる小町に心から詫びる。
陳腐な言葉しか口に出て来ないが、その分言葉に想いを込めて。

私はとんでもない罪を犯してしまった。
償っても償っても償い切れない程の大きな罪を。
何が善行を詰めだ。何が裁判だ……。
こんなに傍に居たのに、大切な人の気持ち一つ分からずに何を偉そうな事を。

誰もが必ず何かしらの罪を背負うもの。
大事な事はそれをどうやって償うのか。
私はどうやって罪を償えばいいのだろうか。

そんな事は考えるまでも無い。
私は小町をきつく、強く抱きしめた。



◇   ◇   ◇



「ほら、そろそろ起きなさい!」
「……ん~……あと半日……」
「もうお昼ですよ!? 半日寝たら明日です!」

まだ寝ている小町の方を揺する。
小町が此処を訪れてから、私達は此処で一緒に暮らしていた。
初めこそ小町も私と一緒の時間に起きていたが、数日経つとこの通りのだらけ振り。

「……あ……四季様~、おはようございます」
「お、おはよう」

寝ぼけ眼の力の抜けた笑みに、思わず目を奪われてしまった。

「って、そうじゃないでしょ!」
「ふぇ……?」

まだ頭が寝ているらしく、私の言葉も意味までは通じていない様だ。
取り敢えず小町を布団から引きずり出す。
ベットになっているそれは、段差があったが特に気にしない。
足を掴み引っこ抜く。
何かが鈍い音を立てたが気にしない。

「!?、痛ったぁ!?」

音と叫びがその痛さを物語る。
だが気にしない。
そのまま小町を引きずり、食事の置いてある居間まで移動する。

「あたたっ! 擦れる! や、焼けるっ!」

居間に着いた私は、小町を放って食事に移る。

「ひどいじゃないですかぁ~……」

私は静かに箸を置き、冷ややかに小町を睨みつける。
その視線を浴びて、小町は不機嫌な顔を引っ込め、代わりに一歩引いて顔を引きつらせた。

「うっ……四季……様?」
「……小町」
「は、はい!」
「今日、私が何度貴方を起こしに行ったのか覚えていますか?」
「え、え~っと……三……回?」
「…………」
「じゃ、じゃあ五回!」

どうやら私の苦労も覚えていないらしい。
無駄な事をしていたのだと思うと、怒りも忘れて溜息しか出てこない。

「あ……あの?」

恐る恐る真相を確かめ様とする小町。
私はまず、ご飯を食べるように促した。

「それで何回なんですか?」
「はぁ……二十回よ」
「あぁ、二十……って、えぇ!? 幾らなんでもそれは多すぎですよ!」
「起きない貴方が悪いのでしょう」

十分置きに起こしに行った私も私だが。

「片付かないから、取り敢えず食べてしまいなさい」
「はーい」

数時間遅れの朝食を食べ始める小町。
全く、いい身分ですね……。

「小町、今日の貴方の予定は?」

もぐもぐと美味しそうに食べる小町は、視線だけをこちらに向けるが、食べるのを止めたりはしなかった。

「特には無いですよ。暇なもんです」
「そうねぇ……彼岸に居た時の忙しさが懐かしいわね」
「そんなに前の話じゃない上に、忙しいって言う程、働いていましたか?」
「……そうね、あの頃も暇だったわね……誰かさんのお陰で」
「うっ……それは言わない約束です……」

墓穴を掘った小町は、泣く真似をしてこの場を切り抜け様とした。
前ならここで叱る所だが、それはもう過ぎた過去の話。
済んだ出来事を今更掘り返しても仕方が無い。
私達は冗談を言い合える程には落ち着いていた。

「……やっぱり戻りたいですか?」

それでもやはり気になる様で、小町はそれを心配しているみたいだった。
私はそんな小町の不安を拭い去る様に笑顔で返す。

「そうね。確かに戻りたいとも思うけど、今のこの生活も満更ではありませんよ」

小町と過ごすのんびりとした生活は、今までには無い程に気が安らぐ。
このままこの生活を続けるのも案外良いかもしれない。
そんな事を思っていた矢先に、家の外から烏の鳴き声が聞えた。

「烏? こんな所にも烏って居るんですかね?」

小町は鳴き声に反応し、窓の外に目をやる。
私もそれに倣い視線を窓へと移す。
そこには真っ黒な烏が一羽、窓の外から私達の方を見つめていた。

「あれ? あいつ、何か咥えてますよ?」

小町の言う通り、烏は何か紙の様な物を口に挟んでいた。
それが気になったのか、小町が窓を開けに席を立った。
小町が窓を開けると、烏は窓縁に飛び乗り、加えていた紙を部屋の中に落とした。

「あれ、この烏って……」
「どうしたのですか小町?」

かぁーと一鳴きすると、烏はそのまま飛び立った。

「いや、多分あれって文の烏だと思うんですが……」

何故ブン屋の烏が此処に来たのかは分からないが。
咥えていた紙を見たら何か分かるだろうと、それを手に取った。
そこにはこう書かれていた。

大至急、無縁塚に戻られたし。



◇   ◇   ◇



「貴方は一つの大きな罪を犯した。それはとても許されざる行為。まずはそれを自覚しなさい」

小町から送られて来た霊魂に、私は静かに目を向ける。
送られて来た男性の魂は、とても気の良い周りからも慕われる程の建築家。
彼は数多くの建築物を残し、まだ若くしてこの世を去った。

「貴方にもそれが何か分かっている筈です」

彼の死因は出張先で発覚した不治の病。
その症状は既に末期で、手の施しようが無かったらしい。

「悔いの残る最期だったでしょう……ですがそれは残された者にとっても同じ事」

故郷に妻と子供を残し、単身赴任で遠くの地で働いていた男性は、最後に家族と会う事も出来なかった。
病気が発覚した時点で家に戻っていたらそんな事にはならなかった筈なのに。

「家族には貴方の死因は正確には伝えられていませんね?」

私の言葉に男性は口篭る。
それは肯定と見て間違いない様だ。
家族には建設中の事故だという事にしているらしい。

「確かに家族に心配を掛けない様に内緒にしていたのも分かります。それに手掛けている仕事を放棄して帰りたく無かったのも分かります。ですが嘘を吐いた、これだけは決して許される事ではありません」

それがどんなに相手の事を想っていたのだとしても。
自分の身近に居る人が相手ならそれは尚更に。

「嘘を吐く行為自体が罪な事ですが、それよりも貴方は最も身近に居る者を信じる事が出来なかった。それが貴方の犯した大きな過ちです」

もし本当の事を知ったら相手は悲しむだろうか。
そんな顔を見る位なら嘘を吐いてでも悲しませたくない。
でもそれは決して良い方向に進む筈が無い。
嘘がばれたらそこで終わり。もしくはこの男性の様に気持ちがすれ違ったまま二度と会えなくなる。

男性もそれは分かってはいたが、どうしても心の弱さから嘘を吐いてしまったのだろう。
目に見えて後悔の色が滲み出ている。
だから私は優しく諭す様に声を掛けた。

「次の人生では最後まで隣に居てくれる人を信じてあげて下さい。例えどんな事があろうとも、貴方が誠意を込めて接すれば必ずそれに答えてくれる筈です。事情はどうであれ、一人で背負うよりも一緒に歩いて生きなさい」

今回の事で私はそれを痛感した。
罪には犯してしまってから初めて気が付く発見もある。
そしてそれ以来、私は二度と小町を、そして自分を偽らないと心に決めた。

「判決を下します」

卒塔婆を男性へ向ける。
これまで幾度と無く続けてきたこの体勢で、私は最終判決を言い渡す。

「もう一度人間へと転生し、傍らに居る者を信じて生きていく事を命じます」

お互いが信じあえる仲。それはとても幸福な事。
一人なら重く押し潰されそうな事でも、二人一緒ならきっと乗り越えていける。
それは決して簡単ではない事。だが誰にだって出来る一番大切な事。

男性に話しかけながら、私もそれを決して忘れてしまわない様に強く胸に留める。



◇   ◇   ◇



「そろそろ出て来たらどうですか?」

裁きを終えた私は、窓の外から盗み見る様にこちらを窺っていた人物に目を向ける。

「あはは……ばれてた?」

ばつの悪そうな笑みを浮かべて同僚の閻魔が窓から入って来る。

「当たり前です、ってそんな事よりもちゃんと入り口があるんですから……」
「まーまー、堅い事言わないの」

面倒なんだもんと行儀の悪さを気にした風も無かった。

「それで、今日は何を?」

聞かなくても大体の事は分かっている。
それでも敢て私は尋ねる事にした。

「今回の件についてちょっと……ね」

それは予想した通りの事。
あの時、烏から手紙を受け取った私達はその足で彼岸へと舞い戻ってきた。
そこには既に同僚の閻魔は居らず、変わりに手紙が机に置かれていた。
その内容は引き続き閻魔を続ける事、解任の話は元々無かった事。そして最後に何故かご馳走様と。

「大体これは一体なんなのですか……」

それが書かれた置手紙を掴んでひらひらと振る。
怒っている訳ではないが、ちゃんとした理由も知らないのでは気分が悪い。

「その事なんだけどね。この間例の事件があったじゃない? ほら、六十年に一度の」
「ええ、でもそれとこれとはどういった関係が?」

六十年に一度、それは回帰の時。
そして彼岸に霊魂が溢れる時期でもある。

「その時の忙しさったら酷いもんでしょ? だから今回からそれが終わった後に順番で一月の休暇を与えようって事になったのよ」

そんな話は今の今まで聞いた事も無かった。
いつ決まったのかも分からない事項を私は疑問に思った。

「なら今回はもしかして……」
「そう、この一ヶ月は貴方達の番だったのよ」

初めてその事を知り、軽く頭を抱える。
折角の長期休暇に私達は一体何をやっていたのだろう。
事の原因を睨みつける事で今の気持ちを伝える。

「ま、まぁまぁ、そんな顔しないで。これには深い訳があるんだから」
「ならその訳とやらを聞かせて頂きましょうか」

慌てるようにぱたぱたと手を振る閻魔を見て、事情を聞いてからどう対応するかを決める事にした。

「それに書いた通り貴方の解任の話なんて最初からなかったのよ。それに貴方は周りからは一目置かれているのよ?」

周りの評価何て今まで気にした事も無かったが、随分大層に思われている事を今知った。

「そうなのですか?」
「知らなかった? 貴方が裁きを下した霊魂は転生後何かしらの善行を積んで来るのよ」

私はただ職務を真っ当していただけに過ぎない。
でもそれを聞かされ、改めて私のしている事は間違いでは無かったと思い知る。
同時に私の想いがちゃんと伝わっていた事を嬉しく思った。

「だからね、どんなに貴方が怠けていようと解任されるなんて事はまず無いわ」
「好きで怠けている訳ではないのですけどね……」

仕事をしようにも、霊魂が送られて来ない事には何も出来ない。
それでも周りから見ると怠けている様にしか見えないのかもしれないが……。

「では何故貴方はこんな事を?」

私が解任されない事は分かったが、それで問題が解決した訳でもなく、逆に疑問が湧いてくる。

「解任されない、とは言ったけどあながちそれは間違っていないのよ」
「……つまりはどう言う事ですか?」
「貴方は解任されない。なら一体誰が解任されそうになる?」

はっきりと答えを言わず、私に問い掛けてくる。
答えは簡単な事。私以外に此処に居るのは他に一人しか居ない。

「小町……ですか?」
「そう、小町ちゃんね」

驚きと納得が同時に湧き上がる。
確かに小町の労働加減を見るに、それは仕方が無い事なのかもしれないが……。

「そこで今回それを確かめる為に私が派遣されたって訳」
「確かめる?」
「小町ちゃんが有能か無能かをね」

怠け癖が付いているだけで小町は至って有能な部下だと確信がある。
問題はその怠け癖な訳だが。

「貴方と小町ちゃんには内緒で私がそれを監視する。それでその結果を報告する訳だったんだけど……。普通にやっても小町ちゃんは働いてくれないでしょ? だからあんな形を取ったのよ。ついでに休暇も取って貰おうと思ってね」
「成る程……」
「でもまさか小町ちゃんまで居なくなるとは思ってなかったから、流石にあの時は焦ったけどね」

閻魔は可笑しそうに笑いながら、窓の外を眺める。
こちらをちらりと見てぽつりと、良い子だねと呟いた。

「ちゃんと働いてくれたのはたった一週間だったけど、周りを納得させるには十分だったみたいね。結果は問題無く通って解任の話も取り下げられたみたい」
「そうだったのですか……」
「まぁ、派遣されたのが私だった事が小町ちゃんにとっての幸運ね」

他の者が派遣されたとしたら、小町が怠けている所しか見れなかっただろう。
そしてその結果は……言うまでもない。

「ありがとうございます」
「気にしない気にしない。私と貴方の仲でしょう? 貴方もあの子の事を気に入ってるみたいだったし」

良い友人に恵まれた事が私にとっての幸いだったのでしょう。
私の事を、そして小町の事を気にかけてくれたこの友人に心から礼を述べた。

「ですが、それなら他にもやり様があったのではないですか?」
「ああ、それはね……仲の良い二人を見て意地悪してみたくなったのよ」
「な……」

にぃ、と意地悪な笑みを浮かべながら真相を明らかにする。
結局私達はこの閻魔に振り回されっぱなしだった訳だ。

「全く……貴方って人は」
「あはは、結果おーらいじゃない」
「そういう問題ではありません!」
「どーどー、落ち着いて落ち着いて」

悪びれた様子も無い閻魔に溜息が零れる。
結果だけ見れば確かに問題無く解決した訳だが、どこかやりきれない思いも残る。

「さて、言う事も言ったし私は帰ろうかな」
「はぁ……帰るならちゃんと出入り口から出て行って下さい」
「はいはい、それじゃあ私は束の間の休日を楽しんでくるねー」

言いながら閻魔は窓から退散した。
人の話を聞いていないのか、それとも聞いていてわざとやっているのか……。
不毛な事だと思い、私はそこで考えるのを止めた。



◇   ◇   ◇



「四季様ー、お水はこの位で良いんですかぁ~?」
「ええ、それが終わったらお昼にしましょうか」
「やたー、おっ昼ーおっ昼~」

お昼と聞いた途端、小町は浮かれた様にはしゃぎまわる。
私はそんな小町をとても微笑ましく思う。

週に一度の休日。
私達は彼岸に戻ってからも、こうしてほんの数週間だけ過ごした此処に遊びに来る。
此処を離れている間も花壇の花は元気良く咲き乱れていた。
私達が居ない間にも誰かが手入れしてくれているのか、手の加えられた後を見てそんな事を思った。
そして誰か何て言い方をしなくても、そんな事をしてくれる人物と、此処の事を知っている人物には一人しか心当たりはない。

「ふぅ……こんなところですかね」
「四季様~、終わりました?」
「ええ、今しがた」
「それなら早くお昼にしましょう!」
「はいはい、すぐに用意しますから、少し待っていて下さい」
「あ、それならあたいも手伝いますよ」

地面にシートを敷いて予め作っておいたお弁当を並べていく。
小町と一緒に作ったそれは、豪華とまではいかないが、それでも十分美味しそうだった。

「いっただっきまーす」

いち早く小町はお弁当に箸を伸ばす。
いつから小町はこんなに食いしん坊になったのでしょうか?

「ほら、四季様も早く食べないと、全部食べちゃいますよ?」
「余り食べ過ぎるとお腹を壊しますよ?」

言われるがままに私も箸を手に取る。
自信作の玉子焼きはふわふわと軟らかく、少し冷えてもその美味しさは十分だった。

「それにしても、この間のあれは何だったんですかね?」
「さぁ、大方あの娘の悪戯ってとこでしょうね」

小町には真実を伝えていない。
そんなものを伝えなくても小町は前よりサボる事は無くなっていた。
それでもマイペースなのには余り変化は無いが。

「良いですよねこういう所って。あたいもいつかはこんな所に住んでみたいなぁ」
「そうですね、周りに生命を感じるからなのでしょうか、とても気が安らぎます」

小鳥の囀り、羽虫の奏でる音色。
どれをとっても彼岸や無縁塚では聞く事の出来ない音。
それを聞く度に世界が生きている事を実感出来る。

「それならいっそ此処に住んじゃいましょうか?」
「此処からあそこまで通うのですか? まぁそれも悪くはありませんが」

時間は掛かるがそれを差し引いても此処は良い場所だと言える。

「尤も、既に此処は私達の家みたいになっていますけど」
「えっ?」

私の発言に、小町はきょとんと私を見詰める。

「あたい達の家……ですか?」
「ええ、私達二人の家です」
「あはは……それだと何だか夫婦みたいですよね、あたい達」
「なっ!?」

小町の言葉で一気に顔が熱くなる。
鏡なんか見なくても今の自分の顔が真っ赤になっている事はすぐに分かる。

「そっか~、四季様はそんな風に考えていたんですか~」
「ちがっ、そんな事を考えて言ったのでは決して!」
「あーほら、早く食べないと全部食べちゃいますよ~?」
「もう! 余り可笑しな事を言うと地獄に落としますよ」
「うわ、冤罪だー……。あ、でも四季様と一緒なら喜んで地獄にも落ちますよ?」
「一人で落ちなさい、私はまだ死にたくはありません」
「いや、あたいだって死にたくありませんって」

一つ、また一つとお弁当が消えていく。
然程時間も掛からずに食べ尽くしてしまった。
小町も満足いった様で、お腹を擦りながら大きく伸びをしていた。

「ふー、ご馳走様でした」
「ご馳走様でした」

箸を揃え、私も食事を終わらせる。
心地よい天候と、澄んだ小鳥の囀りに思わず瞼が重くなる。

「今度の休みはどうしましょうか?」
「もう次のお休みの事ですか。小町は気が早いですね」
「えー、いいじゃないですか。こうして四季様と一緒にどこかに出掛けたりするの、いつも楽しみにしてるんですよ」
「それは私も一緒ですが……まぁ、今度はどうしますか?」

昼食後の一時を雑談で過ごす。
いつもと変わらない光景を、私はとても大切に思っている。
隣では小町が花の咲く様な笑顔を私に向けてくれる。
それはとても温かで、そして私の望む笑顔。

静かな雑木林の中で私達の笑い声が響き渡る。
燦々と降り注ぐ日の光に、花壇の花達も楽しそうに笑っている気がした。

「四季様」

突然小町が私を呼ぶ。
ぼーっとしていたのか、私はその声に小町を見る。
そこには太陽の光よりも明るい笑顔が。
私だけに向けてくれる眩しい程の太陽に私は目を細める。
そんな私の視線を受けた小町は、短く一言だけこう告げた。



















「大好きですよ」








―CAST―

四季 映姫
小野塚 小町
風見 幽香
射命丸 文
ミスティア・ローレライ
友人の閻魔
霊魂の男性その1
霊魂の男性その2
黒うさぎ
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.3680簡易評価
1.90名前が無い程度の能力削除
優秀な映姫様と上司思いのこまっちゃん、いいコンビです。
5.90名前が無い程度の能力削除
些細な事ですが、免罪じゃなくて冤罪ですね。
6.80名前が無い程度の能力削除
CASTの「ミスティア・ローレライ」だけで全てが台無しだ!!!


だがそれがいい。
12.80名前が無い程度の能力削除
和む……。
何だか初々しくて良いなぁ、この二人。
14.80名前が無い程度の能力削除
これは良いコマザナドゥ。



ってみすちーーーーーー!!
16.100名前が無い程度の能力削除
み・・・・みすちぃぃぃぃ
20.90名前が無い程度の能力削除
くわぁ、ええ話やぁ。・゚・(ノд`)・゚・。
26.80名前が無い程度の能力削除
×:これだけは消して許される事ではありません
○:これだけは決して許される事ではありません
27.80CODEX削除
嗚呼その一言が物語る、歴史に埋もれた惨劇。みーすちーー!
ともあれ甘くて美味しい山小丼でしたw
28.無評価名前が無い程度の能力削除
これは良いえい×こまですね

気になったので調べてみた
甘野老の花言葉
「元気を出して」「心の痛みの分かる人」

誤字っぽいもの
此処意外→此処以外

29.90名前が無い程度の能力削除
点数忘れてた;
30.90名前が無い程度の能力削除
やはり食わry
34.100oblivion削除
とても心温まる話でした
みすちーで台無しですが!
38.100名前が無い程度の能力削除
友人の閻魔、ホント良い奴だな。
42.90KOU削除
とてもいい話。ある意味で一番理想的な主従関係かもしれませんね。


だがしかしCASTで台無しだぁー!
44.80名前が無い程度の能力削除
なんでミスティア?
ミスティアなんて出てたっけ…?

…あ゛ーーーーーーー!!!!!
46.100Admiral削除
泣いた。
。・゚・(つД`)・゚・。

映姫様と小町の良いお話でした。
ごちそうさまです。
48.90名前が無い程度の能力削除
あぁ、すごく温まった・・・
49.70nanasi削除
この同僚に裁かれたい……
てか同僚さん嘘ついてるよw
50.90名前が無い程度の能力削除
コマザナはいいね~
友人といいゆうかりんといい文といい、いい奴ばかりだぁ(ノД`)

みすちーは囀ってたんだよ!!!
52.80削除
えっ?えっ?みすちーってーーー!
世界の表と裏を見た気分だ…いや光と影?
59.90跳ね狐削除
いい話だなぁ、と思っていたら余韻に浸る事も出来ずに痛烈なボディブロー!
み、みすちー!!
61.80名前が無い程度の能力削除
ごちそうさm・・・
ミスティアァァァァーーーーーー!!
62.80名前が無い程度の能力削除
捌かれた!?いや裁かれたのか!?ミスチー!!
65.100名前が無い程度の能力削除
いくら小町が怠けていてもクビにしないのは、
きっと映姫様がこまっちゃんの事が好きだから。

みすちーは……きっと偶然通りすがっただけだよ!ね?ね?
66.100名前が無い程度の能力削除
質の良い……『鶏肉」ってまさかぁ!!?
70.100ちょこ削除
いいコマザナ見せてもたらいました~w
あー、いい感じだn……

って、ミスティアーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!

最後で落とすとは流石です;
71.90ぐい井戸・御簾田削除
みんないいやつだなあ。ゆうかりんのさりげない優しさが粋(いき)だ。
すごくいいお話だったと思います。愛だなぁ…。
ちょっと誤字が多い(って程でもないか?)のが気になりましたが、
│0M0)つミ◎ それでも構わん、お賽銭もってけーい!それぐらい感動。
追記を読むとミスティアも出てたみたいですね。もっかい読も…。
とにかくいいコマザナでした。ご馳走様です。
うっしゃあ、俺も負けてらんないぜ!
72.80名前が無い程度の能力削除
本文も映姫が解雇されたりとあまりない展開だったりして楽しめましたが、後書きにあるたった1つの名前だけでココまで笑わせられるとは…w
79.無評価黒うさぎ削除
何だか評価の大半をみすちーに持っていかれた気がする……。
何はともあれ最後までお読み頂きありがとう御座います。

>名前が無い程度の能力氏×3
誤字指摘、感謝致します。
なるべく誤字脱字を無くそうとは思っても些か力不足orz

>KOU氏
>ある意味で一番理想的な主従関係かもしれませんね
仕事上は上司と部下。でもそれ以外では友人か姉妹みたいな関係だと
良いですよね。日々仕事に追われてるからこそ一時の休息には二人で
仲良く羽を伸ばして欲しいものです。

>nanasi氏
>てか同僚さん嘘ついてるよw
本当だΣ
閻魔様、さくっと裁いちゃって!

>名前が無い程度の能力氏
>友人といいゆうかりんといい文といい、いい奴ばかりだぁ(ノД`)
周りの何気ない優しさに支えられているからこそ、命を失った者達に
携わるという辛い仕事にも真っ向から対峙する事が出来るのだと思い
ます。

>名前が無い程度の能力氏
>いくら小町が怠けていてもクビにしないのは、
>きっと映姫様がこまっちゃんの事が好きだから
そしてそんな映姫様に甘えてしまうこまっちゃんなのでした。

>ぐい井戸・御簾田氏
>ゆうかりんのさりげない優しさが粋(いき)だ
>ちょっと誤字が多い(って程でもないか?)のが気になりましたが
幽香の性格からして素直に相手を励ましたりはしない気がしたので、
こういう捻くれた遠まわしの励まし方になってしまったんでしょう。

まだ誤字ありますか……。
もし良ければ指摘して頂けるとありがたいです。
何度読み返しても自分じゃもう気付けない……orz

>名前が無い程度の能力氏
>本文も映姫が解雇されたりとあまりない展開だったりして楽しめましたが
実際にそういう組織があるか分からないというのと、小町のサボり具合
が分からないのでなんとも言えませんが。仕事しなかったら首飛んじゃ
うんじゃ……?
誰しもが考えそうな話なのでネタがかぶって無いかが心配でしたが少し
安心しました。

長くなるので他の方へのコメント返しは、お礼と感謝に代えさせて頂き
ます。本当にありがとう御座いました。

みすちーの真意は皆さんの心の中で。
80.無評価ぐい井戸・御簾田削除
すいません、誤字は他の方が指摘されていた部分と一緒です。
読んでから数日経って感想を書いたので…なんかへこませてしまったのならゴメンナサイ。
次の作品も、楽しみにしてます。
83.90名前が無い程度の能力削除
これはすっばらしいいいいコマザナドゥですな!いやあいいものを読んだ!
ところでミスティアってどk・・・アッーーーーーーー!
85.80名前が無い程度の能力削除
コマザナの掛け合いもさることながら、裁判の説教…もとい
口上も素敵でした。あと、誤字かどうかは微妙ですが、
> 卒塔婆を男性へ向ける。
> これまで幾度と無く続けてきたこの体制で
                  ̄ ̄
ポーズってことなら「体勢」ですかね。
システムってことならこっちの勘違いで申し訳ありませんが。
95.無評価中尉の娘削除
良い話でした!
そしてみすちーになみだ…w

甘野老の花言葉知らなかったんで調べました。
「元気を出して」って意味だったんですね。
幽香いいひと!そしてかっこいい!
100.無評価突っ走る程度の能力削除
02~
105.90名前が無い程度の能力削除
泣いた
CASTのミスチーでもう一回泣いた