Coolier - 新生・東方創想話

星は願いを

2006/09/24 06:03:07
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 注:拙作、『星に願いを』(プチ創想話ミニ作品集8)に基のお話があります。




 それは、とある姉妹の気まぐれのお話。

「ねぇねぇ、姉さん。こんなもの見つけたんだけど」
「ん? 何だい、これは?」
「ほら、この前さ、七夕のあったでしょ?」
 ああ、とうなずく長女。
 その彼女に、話を持ってきた三女はというと、
「うちらの実力を持って、みんなに、この願いを叶えてあげましょうっていうのはどうよ!」
「……どうやって?」
「何かそれを連想させるような音楽を作ればいいんでない?」
 片手にケーキを持って、食べながらこちらに歩いてくる次女。はしたないからやめなさい、と叱る彼女に、まあまあ、と次女は笑って、
「それくらいなら出来そうだし」
「ふむ……まぁ、面白そうではあるが」
「でっしょー? 音楽一つで生き物の意識なんて、結構、簡単に変えられることは出来るじゃん?」
「乱暴な言い方だけど、それは面白そうだ。
 ……やってみようか」
「よーっし。さんせーい。
 んじゃ、メルラン姉さんは楽しい系。ルナサ姉さんは、しっとり系とか、そういう方面でお願い」
「リリカは?」
「リリカは総合よ!」
 びしっと親指立てて、三女。

 ――かくして、ある夜、世界中に不思議な音が満ちるのであります。


case1:博麗霊夢の場合

 巫女の朝は早い。目を覚ますと同時に、様々なお勤めをこなさなくてはならないからだ。
 朝食などを含めた朝の用意もまた、神に捧げる勤めの一つ。彼女――博麗神社の主はそれをこなしながら、空を見上げる。
 いつもと変わらない青空が広がる。そんな世界。
「……そろそろかしら?」
 彼女の視線の先。
 人々の姿が見え始める。
「巫女さま、おはようございます」
「おはようございます、巫女さま。遅れて申しわけありません」
「遅れてないよ。ほら、着替えて着替えて。お仕事始まるよ」
 やってきたのは、彼女とそう年頃の変わらない男女だ。彼らは、彼女に――霊夢に促されるまま、はい、とうなずいて本殿の方へと上がっていく。
 そうして、さっさと竹箒で境内を掃除する霊夢。それから少しすれば、
「巫女さま、本日のお勤めですけど……」
「あの、巫女さま。こちらのお守りとかはどこに?」
「巫女さま、参拝客に振る舞うお菓子などの用意、終わりました」
「うん、ありがと。みんな。
 さあ、今日もお客さんが一杯来るんだから。気合いを入れていきましょう!」
 はい、という返事が力一杯なされた。
 彼女の言葉の通り、それから一時間もしないうちに最初の参拝客が神社を訪れ、あとは時間を過ごしていくごとに人の数が増えてくる。彼らを出迎えながら、彼らの言葉を聞き、それをもって彼らに奉仕する。
 それが、博麗神社の巫女の仕事となっている。
「うーん……いいわねぇ。やっぱり、にぎやかじゃないと神様も寂しがるってなもんよ」
 一昔前の閑散とした境内など、今はどこにもなく。
 たくさんの人たちがやってくる神社には、やはり御利益も、降って湧いたかのように現れ始める。下より、自分の神社の御利益を信じなければモグリであるが、人が来ない状態ではそれを疑いたくなるのも、また人間の常だ。
 霊夢は、今、充実していた。
「巫女さま、大変です!」
「どうしたの?」
 走り寄ってくる宮司が一人。
 血相を変えてやってきた彼は、霊夢の前で何度か深呼吸して息を落ち着かせると、一息で言い放つ。
「は、はい。この先の村で化生の類が発生したと……!」
「……なるほどね」
 霊夢の表情が変わる。刹那の間に気配を入れ替え、彼女は服の袖からお札を滑り落とし、指先で構える。
「わかった。行ってくる」
「はい」
「ここの人たちのお世話はお願いね」
「はい、かしこまりました」
「巫女さま、どうかご無事で」
「大丈夫よ。そんじょそこらの妖怪じゃ、私の相手にならないからさ」
 彼女は涼やかな笑みを見せ、空中にふわりと飛び上がる。人々の声援を受けながら、博麗の巫女が空を行く。一昔前は、ただ、自分の意思でやるだけだった全てに、今、人々の意識が混ざり合う。それは、心地いいことだった。そして同時に、自らの意識の高揚にも役立つこと。
 彼女の瞳が彼方を見据える。手にしたものが、淡い光を放つ。
「さぁて、妖さん! この博麗霊夢に目をつけられたことを己の不運と嘆くのね!」
 幻想郷の空に響き渡る声。
 その声が遠く響いて消える頃、彼女の手によって、また一つ、人々に幸運が舞い降りる。


case2:霧雨魔理沙の場合

「……さってと」
 手にした一冊の書物を机の上に置いて、彼女は立ち上がった。
 目深にかぶった帽子を一度かぶりなおすと、家の外へと足を踏み出す。いくつもの木々に囲まれた、昼なお暗い森の中。
 彼女は、瞳をぎらりと光らせて、それを見据える。
「試し打ちだ」
 天空めがけて手を突き出す。続けて、彼女の口から出るのは耳慣れない言葉である。紡がれたフレーズに従って、その手の先に光が収束し、一瞬の後、一発の閃光となって天空を突き抜ける。
「……やった」
 感慨深げに彼女はつぶやく。
 今、唱えたのは、一見すれば彼女が得意とするマスタースパークそのものである。しかし、違う。今のは、それとは全く違う力の使い方、操り方、そして存在の定義を持った魔術だ。言うなれば、彼女オリジナルであり、同時に、古来よりあった術をさらに改良した『魔理沙独自』の魔法と言っていいだろう。
「やった、やった、やったー! 成功だー!」
 普段の彼女よりもずっと幼い仕草で、体を全部使って一杯に喜びを表現する。
 ここに至るまでの道のりは長かったのだ。幾多の苦難、艱難辛苦を乗り越え、挫折を経験し、敗北にうちひしがれながらも不屈の闘志で立ち上がり、挑戦を続けてきた。
 今、それが実ったのだ。
 ようやく、今までの苦労が報われたのである。
「いやいや、ずいぶんと豪快な魔法を使うようになったもんだね」
 森の中から、聞き慣れた声。
 振り向けば、森の闇に溶けるようにしてひっそりと佇む女が一人。彼女は、魔理沙に向けて優しい笑みを浮かべる。
「こりゃ、あんたも、そろそろ『弟子』卒業かね?」
「そ、そんなこと……」
 照れくさそうにはにかんだ笑みを浮かべ、もじもじと身をよじる。しかし、ぶるぶると首を左右に振って気合いを入れ直すと、彼女は言った。
「まだ、私の道は始まったばかりですから!」
「そうかい。相変わらずの努力家だ」
「……それくらいしか取り柄がないですから」
 てへへ、と笑う。子供っぽいその笑みに、よしよし、と頭に手が置かれる。
「それじゃ、あんたの努力を祝して、今夜は私が飯をおごってやろうかね」
「あ、は、はい! ありがとうございます!」
 慕う相手に。尊敬する相手にかけられる言葉は、何よりも嬉しいご褒美となる。
 弾けるような笑顔を浮かべた魔理沙を連れて、彼女もまた、家の中へと。閉じられたドアの向こうで、にぎやかで楽しそうな声が響き渡った。


case3:十六夜咲夜の場合

「……ふぅ」
 小さく息を吐いて、ゆっくりと起きあがる。ちゅんちゅんと、鳥の鳴き声。窓から入ってくる日差しは実にまぶしく、寝起きの体に活力を与えてくれる。
 起きあがった後は、寝間着のままでモーニングコーヒーを用意して、パンとハムエッグ、そして少量の果物と共に優雅な朝食。テラスの向こうに用意された、小さなスペースで、朝日を眺めての食事は、何とも言えず美味しかった。
「……お嬢様も、たまには粋な計らいをしてくださるのね」
 数日前のことである。
 日頃、頑張っている彼女に対して、彼女の雇い主であるレミリア・スカーレットがこんな一言を告げた。
『たまには、思いっきり羽を伸ばしていらっしゃいな』
 と。
 要するに、彼女はお暇を出されたのだ。無論、これを本来的な意味で使っての事であるが。
 最初のうちは困惑したものの、彼女のためだけに作られた、小さな館に無理矢理送り出されてからはその日々を満喫する術を、咲夜は覚えた。幻想郷を一望できる、緑豊かな丘の上に作られた、こぢんまりとした瀟洒な館。そこで暮らす日々は、ゆったりとした時間の流れを感じることの出来る、まさに休日。
「忙しい日々も嫌いではないけれど、本当にたまにはこんな日々もいいものだわ」
 普段の、険のある厳しい顔つきはどこへやら。
 彼女の顔は、今は、年相応に柔らかく優しいものになっていた。ここにいれば、何かを考える必要はない。ただ、毎日を、のんびりと暮らしていくだけなのだから。
 この後は、ちょっと少女趣味な服に着替えて、麓の村へと降りて、そこで買い物をして。帰ってきたら、部屋の掃除などをして、お昼ご飯を作って。今日は天気がいいから、外で食べようかしら。
 そんなことを考えながら、また一口、コーヒーをすすった時だった。
「……あら」
 視界の彼方。丘の麓からこちらに延びている、曲がりくねった道を歩いてくる人影を見つけた。
 その人影を見た瞬間、咲夜は顔をほころばせる。そして、思いっきり、大きな声を上げた。
「お嬢様ー! フランドール様ー! パチュリー様ー! 美鈴ー! こっちよー!」
 咲夜の顔を見に来たのだろうか。そう言えば、ここに来てから、毎日のようにレミリアは咲夜を訊ねてくるのだから。
 たったった、と笑顔のフランドールが一番に、丘を駆け抜ける。その彼女の傘持ちをやっている美鈴は、「ま、待ってくださいフランドール様ー!」と全力疾走だ。
「さくやー! あそびにきたよー!」
 飛びついてくるフランドールを抱き留めて、「はい」と笑う彼女。遅れてやってくるレミリアが、「どうかしら? バカンスは楽しい?」と訊ねてくれた。
 もちろん、咲夜は微笑む。
「とっても楽しいです」
 ――と。


case4:アリス・マーガトロイドの場合

「……ん……」
 目を覚ませば、家中にいい香りが漂っていた。
 ふぁ~、とあくびをして……そのまま動きを停止させる。
 アリスは、この家に一人暮らし。朝でも日差しの期待できない、暗い森の中に一軒家を構えてもうずいぶんになる。
 当然、一人暮らしである以上、こんないい匂いが家の中に漂うことなどあり得ない。アリス本人がキッチンに立たなければ。彼女は多くの人形と共に暮らしているが、その人形達も、日々のアリスの生活をサポートすることは出来ても、料理などと言った高度なことまでは出来ないはずだ。
 では、なぜ?
 警戒を怠らず、彼女はベッドから降りると、外につながるドアの前に立った。大きく息を吸い込み――とんとん、と直後、向こう側からドアがノックされて、それが開け放たれる。
「おはよう、アリスちゃん」
「お、お母さん!?」
 そこに、満面の笑みを浮かべ、鍋つかみを両手にはめた母親が立っていた。
「もうすぐ朝ご飯が出来るから。お着替えしていらっしゃいね」
「あ、は、はい……。
 って、そうじゃなくて!」
 あら? と立ち去ろうとした母親が振り返る。
「ど、どうしてお母さんがここにいるの!? 魔界は!? それ以前に、どうやって夢子さんの追撃を振り切って!?」
「あら」
 心外ね、とばかりに彼女は微笑んだ。
「アリスちゃん、私はだぁれ?」
「え? えっと……ま、魔界の……」
「ぶぶー」
「……え?」
「私は、アリスちゃんのママでしょ?」
 そう言って、にっこり。
 その笑みを見て、アリスの顔が一気に赤くなり、剣幕もあっという間に収まっていく。
「今日は、ママ、みんなに許可をもらって来たのよ。たまにはアリスちゃんの顔も見たいし、それに、長い間離れていると、やっぱりアリスちゃんも心配でしょ? ママ達のこと」
「それ……は……」
「朝ご飯を食べたら、お茶にしましょう。それくらいになったら夢子ちゃん達も遊びに来るわ。
 今夜はね、みんなでパーティーにしようと思っているの」
 一家団欒って素敵よね、と。
 母親の一言に、思わず、うなずいてしまう。
「さあ、着替えてらっしゃい。ご飯が冷めてしまうわ」
「……はい。お母さん」
 素直に答えるしか出来なかった。それ以外のことをする必要がないと感じた。
 なぜか?
 ――理由は簡単。嬉しかったからだ。
「えへへ……」
 室内に戻ったアリスの顔に、思わず笑みが浮かぶ。そんな彼女を不思議に思ったのか、室内の人形達のうち数体が首をかしげる。彼女たちに向かって、アリスは言った。
「みんな元気だ……へへ……」
 その時ばかりは、いつものすました印象はどこにもなく、アリスの顔は子供の顔に戻っていた。まだまだ母親や家族に甘えていた頃の、幼い彼女に。
「さあ、着替えしないと!」
 あんまり母親を待たせてもいられない。アリスは寝間着をさっさと脱ぎ捨てると、手早く着替えを終えて居間へと走る。テーブルについて待っていた母親が、「お顔、洗ってらっしゃいね」と一言。
「はーい!」


case5:レミリア・スカーレットとパチュリー・ノーレッジの場合

「レミィ……」
「パチェ……」
「私たちは……ついにやったのね……」
「ええ……ついに……ついにやったのよ……!」
 がしっ、と二人は手を取り合う。
「ついに……ついに極めたわ……!」
「ええ……レミィ……あなたはついにやったのよ……!」
「いいえ……パチェ……。あなたのフォローがあったから、わたしは今、ここにいるのよ!」
 暗い空間。
 灯りはほとんどなく、両者の顔すら闇に埋もれて見えないほどの世界。しかし、その中にあっても、確実に二人はそこにある。互いの想いと、互いの存在と。その全てを受け止めながら、彼女たちはそこにいる。
「夢がかなった……。ありがとう、レミィ……」
「何泣いてるのよ……パチェったら……。わたしの方こそ、あなたにありがとうを言わないといけないのに」
「あなたに似合わないわ、レミィ」
「ふふっ、そうかも」
 ぺろりと舌を出して微笑む。
 その空間に響き渡る第三者の声。「お嬢様、もうそろそろよろしいでしょうか?」とのメイドの声。
「ええ、もういいわ」
「……レミィ。あなたは最高だわ」
「当然よ。わたしは夜の王なんだもの。
 でも、パチェ。そんなあなたこそ、わたしにとって最高のパートナーよ」
「これからも頑張っていきましょう」
「ええ。わたし達は、最初の夢を叶えることが出来たんですもの。あなたと一緒なら、これからも、ありとあらゆる夢を叶えていけるわ」
「……ええ、レミィ。本当に……おめでとう」
「ありがとう……パチェ」
 それじゃ、行ってくる。
 彼女はパチュリーの手を離すと、そっとその場に背を向けた。大きく息を吸い込み、一度閉じた瞳を静かに見開き、一歩を踏み出す。
 赴く友人の姿を、パチュリーは、静かな眼差しで見つめていた。新たな旅路の始まりを迎えたレミリアを、最高の友人として、誰よりも近くで祝福するために。
 彼女は、声を上げる。
「さあ、幕を開けなさい!」
 その声が響き渡ると同時に闇が開かれる。左右に、上下に開かれた闇の向こうにきらびやかな魔法の光が映し出され、同時に、その空間全てを圧迫する人々の声。
 彼らに出迎えられ、世界そのものに出迎えられ、レミリアは声を上げた。
『魔法の吸血鬼、ヴァンパイア☆レミちゃん、さんじょ~う♪』
「ああ……レミィ……。私たちの夢が……ようやく……。伝説の魔法少女の、幻想郷への復活よ!」
 レミリアの宣言の後、何かよくわからない可愛らしいファンシーミュージックと共にきらきら光るお星様などのエフェクトが会場を満たす。
 ――今日は、レミリアにとって、記念すべき日だった。
 大いなる、幻想郷の真実の一つとして。闇の中に埋もれ、隠されていた世界を浮かび上がらせたのだ。
 その名は、魔法少女。
 その復活に尽力したパチュリーの手によって、今日のステージは設けられた。もはや誰もが認める『幻想郷の魔法少女』であるレミリアを、最大限、祝福するために。紅魔館の一角を魔法少女の舞台に染め上げ、彼女は友人を見送った。
 美しい。世界が美しい。ああ……私……生きててよかった……。
「パチェ……わたし、あなたに感謝するわ。こんなにも素敵なステージを用意してくれて……」
 そして、そんな友人のためにも、今、自分に出来ることはただ一つ。
「わたしは、このステージで、そして幻想郷で一番に輝く魔法少女になったのよっ!」
 その事実を胸に、今、この瞬間を成功させること。
 レミリア・スカーレット。五百歳。その時、彼女は初めてこの世界の美しさを知ったのだった。


case6:フランドール・スカーレットの場合

「おーっす、フラン。遊びに来たぜ」
「あ、まりさー!」
「全くもう、何で私まで」
「うわぁ、霊夢もだー! 遊びに来たの!? 遊びに来たんだよね!」
 にぱっ、と笑ったフランドールが、そのまま可愛らしく二人に走り寄り、彼女たちに飛びついた。
「まぁ、成り行きでな」
「全く。いい迷惑よ」
「やったやったぁ! ねぇねぇ、何して遊ぶ!? 何して遊ぶの!?」
「待ちなさいな、フラン」
 その時、横手から響く声一つ。
 振り向けば、そこには大好きな姉の姿。そして、彼女が慕ってやまない紅魔館の面々が並んでいる。
「わたし達も混ぜてちょうだいな」
「レミィ、私、もう少しだけ調べものをしていたかったのだけど……」
「よろしいではありませんか、パチュリー様。たまにはこういうのも」
「……あのー、門の警備は?」
「たまにはいいわ」
 狭い室内は、あっという間にぎゅうぎゅう詰めの大にぎわいとなった。
 その中心に立つフランドールは、信じられない光景に目を丸くしている。こんなにも大勢の人が一度に自分の所を訪れてくれた。しかも、これから、自分と一杯遊んでくれるのだという。
 信じられなかった。
 そして同時に、とても嬉しかった。
「ああ、そうそう。フランドール様」
「なにー?」
「表に、他にも、フランドール様と遊びたいと言ってくれているご友人の方々がいらっしゃってますよ」
「え? ほんと!?」
「あら、そんなににぎわってしまうのね」
「おいおい、どうするんだ。そんなら、こんな部屋の中に入りきらないだろ」
 そうね、とレミリアは考え込む。
 そうしていたのは数秒のこと。顔を上げたレミリアが、ぽんと手を打つ。
「それなら、表で遊びましょうか」
「おそと!?」
「ええ。こんな狭苦しいところより、ずっと楽しいでしょう」
「やったぁー! おそと、おそと! お姉さま、大好きー!」
 抱きついてくる妹を抱き留め、愛おしそうに彼女の頭を、姉はなでる。ごろごろと喉を鳴らしているフランドールを、一同は優しい眼差しで見つめていた。そんな中、霊夢が、「それなら行きましょうか」と音頭を取った。
 一人、また一人と、フランドールの手を引く形で部屋を後にする。わくわくうきうき。そんな単語がこれ以上ないほど似合う笑顔を浮かべて、フランドールがそれに続く。
「ねぇ、お姉さま」
「何かしら」
「……ありがとう」
「あら?」
「フラン、嬉しい……何かすっごく嬉しい。お姉さま、本当に本当に、ありがとう!」
「別にいいのよ。それに、たまには姉らしいことをさせなさいな」
 うん、とうなずく彼女。
 ――そうして、開かれる紅魔館の扉。そこに並んだ面々が、フランドールを見て、皆、優しい笑顔を浮かべる。みんなに応える形でフランドールも笑い、「みんな、あそぼー!」と大きな声を上げたのだった。


case:7 紅美鈴の場合

「ねぇ、美鈴」
「何ですか? 咲夜さん」
 茶器を優雅に扱ってのお茶。お客として招かれた咲夜の前に出されたのは、金色に輝く烏龍茶だった。
「……その……やっぱり、少し恥ずかしいわ」
「そんなこと言わないでくださいよ」
 にっこりと微笑んで。
 そうして、そっと、咲夜の隣に腰を下ろす。
 日はすっかりと落ちていた。室内に点された光は、今、二人がついているテーブルの上のランプだけ。ぼんやりと頼りない、しかし、どこか幻想的な光の下、そっと彼女は咲夜の手を握る。
「今夜は、約束だったでしょ?」
「そうだけど……でも……」
 手にした烏龍茶を一口。
「……すごい甘いのね……」
「わざわざ高いのを手に入れてきたんです。お祝いですよ?」
「……お祝い?」
「はい」
 包み込んだ彼女の手を自分の頬に当てて。そうして、そっと、キスをする。
「お祝いです」
「……もう」
「それ飲んだら」
「……けど、私、下手かもしれないわよ?」
「いいですよ。リードしますから」
 甘い囁きと、切なさの混じり合う視線が絡み合う。
 そして――。

(以下、八雲ゆかりんの境界認定に弾かれました)


case8:西行寺幽々子&魂魄妖夢の場合

「妖夢」
「はっ」
「……あなたが白玉楼の守りについて、もうどれほどになるかしら」
「時を経ること幾年月。ずいぶんになりました」
「そうね……」
 白玉楼の縁側に座り、お茶をすする幽々子の前に膝を落とす剣士が一人。
 すらりと伸びた高い身長。引き締まった体躯。女らしさを残しつつも、そこに漂うのは凛々しさ。
「あんなに小さかったあなたが、今では私の背丈を超えてしまったのね」
 美しく、そして気高く成長した、自らの自慢の従者を見据え、幽々子は言った。
「……はい。
 ですが、幽々子様。私はいつまでもあなたの従者です。たとえ、あなた様の背丈を超えようと、あなた様よりも年老いてしまおうと、いつまでも、魂魄妖夢は魂魄妖夢のままです」
「かっこいいんだから。もう」
 まるで剣を思わせるような鋭利な眼差しの中に、目の前の女性に対する慈愛を浮かべる妖夢に向かって、幽々子は優しく微笑む。
「あなたもいつかは、私よりも先に」
「……はい」
「でも、妖夢。それでもあなたは私の所にいてくれる?」
「幽々子様の許可があるのなら、たとえ閻魔の定めに逆らってでも、私はここで剣を振るいます」
「ありがとう、妖夢。あなたが大好きよ」
「私もです」
「……いつか、あなたも素敵なお婿さんを迎えるのね」
 ふぅ、と一つ、小さなため息。
「私はいい姑になれるかしら」
「そのようなことをご心配なさらずとも、幽々子様は、いつだって、素敵な、私の自慢できる主人ですよ」
 微笑み。
 そして、
「……幽々子様」
「ええ。どうやら不届きものが入り込んだようね」
 二人の視線が鋭くなる。
 妖夢は、己の手に持った、昔から愛用している二本の刀を握りしめる。
「幽々子様、この私、魂魄妖夢が白玉楼の剣となり盾となり、あなた様とこの世界を守り続けます」
「ええ」
「いつまでも、必ずや」
「ええ。期待しているわ、妖夢」
「はっ!」
 それでは行って参ります。彼女は折り目正しく敬礼して空へと向かって飛び上がった。
 彼女の姿が、幽々子の視界から消えようとする頃、幽々子も立ち上がる。ゆっくりゆっくり、ふわふわと、妖夢の後に続いて彼女も飛んでいく。
 妖夢の鋭さが、気配の源を捕らえる。彼女の視線の先に現れた何者かが、妖夢を見て警戒の意思を示す。両者が動きを止める。それを、妖夢の気配の範囲に入らないよう、足を止めた幽々子が見守る中、妖夢は宣言した。
「何者だ!」
 相手の返答。
 それで、妖夢は判断する。すなわち、相手はこの白玉楼にとっての敵であると。
「ならば、ここより向こうに入れるわけにはいかない」
 両手の剣を握り、言う。
「我、魂魄妖夢! 我と、我が剣に斬れぬものなどなし! 我が存在の鋭さ、その身でしかと受けるがいい!」
 敢然たる叫びの中、相手を葬り去るために走る妖夢を見つめながら、幽々子は静かにつぶやく。
「……いつまでも、一緒に」
 振り下ろす剣の鋭さが白玉楼の日差しを切り裂く。
 幽々子が。妖夢が。
 二人が存在する世界は、永遠にこのままであることを示す一撃だった。


case9:八雲一家の場合

「藍さま」
「ああ、橙。どうかしたのかい?」
「あの、私……」
 大きく、一つ息を吸い込む。目を閉じて、胸を押さえるように手を置いてから、一言。
「……新しい術を学びたいんです」
「新しい術?」
 その一言に、彼女の母親のような立場でもある藍が首をかしげる。
 縁側に置かれた物干し台に洗濯物を干し終わってから、ふぅ、と一息。
「はい。藍さまに、早く追いつけるように」
「……そんなに焦らなくてもいいよ。あと百年……いや、五十年でもいい。しっかりと修行をすれば、橙はもっと立派になる。お前と一緒になるようになって、早何十年……。お前は、立派に成長してきたよ」
 心も体もね、と藍は言った。
 しかし、そんな言葉ではごまかされないとばかりに橙は首を左右に振る。
「だけど、藍さま。私に術を教えてくれなくなって、もうずいぶんになります」
「お前は今、体の成長期だ。心の成長期が終わった以上、次になすべきは、強い肉体を育てること。その中で、困難な術の習得は危険を伴う」
「でも……」
「好きにさせてやればいいじゃない?」
 紫さま……。
 困ったような口調でつぶやき、振り返った先には、この屋敷の主がいる。彼女は、口許を扇子で覆い隠しながら、目を細くし、橙を見つめた。
「橙」
「は、はい。紫さま」
「あなたにはこれが出来る?」
 片手に生み出したのは小さな光の珠。それが、段階的にゆらゆらと揺らめきながら輝いている。色を変え、そして珠自体の形を少しずつ変えながら揺らめく様は、夏の蜃気楼と虹が同時に現れたかのような、不思議な印象を与えるものだ。
「え? えっと……」
 言われて、自分の掌にも同じようなものを創ってみようと四苦八苦する。だが、出来るのは、色を変えることなどかなわない小さな光の珠だけだ。困惑したかのように顔をゆがめる橙を見て、藍がたまらず進言する。
「紫さま、橙をからかうのはおやめください」
「からかってなどいないわ。藍、あなたは出来る?」
「……出来ます」
「ならばやってみなさい」
 言われるがまま、藍が構えを取った。
 両手をあわせるかのような構えの後、静かに掌の間に力を集中する。ぱちぱちと、最初に起きた白い放電の後、急速にそれが形をなし、紫が作り出したような珠を描き出した。ぐるぐると回転するそれは、確かに、紫のやったような段階的な色の変化、形の変化を起こしており、全く同じものと言い換えても相違ない。
「……すごい」
「これは、自らの力を操る術。これが出来ない間は、橙、お前はまだまだ新しい術を覚えるには至らない」
「……はい」
「もっと、藍について修行なさい。たかが百年、妖にとっては短い時間のはずよ。
 その間、どうせ、この世界も変わらないのだし。それならば、なおさら焦ることなどないでしょう」
 のんびり行きましょう、と彼女は話を締めくくった。
 意気消沈と同時に、何かに対する希望のようなものを見せる橙が、「はい」とうなずいて、そのままどこかへと駆け出していく。「晩ご飯には帰ってくるんだよ」という藍の言葉に、はーい、と返事をして。
「たとえ精神が成長したとしても、あの子の本質は子供のまま。
 藍。お前とは違うのよ」
「はい」
「なら、親に憧れる子の気持ちくらい理解してあげなさい」
「……そのつもりですよ。
 しかし、紫さまは、本当にいつまでもお変わりない」
「それは私に対する侮辱かしら?」
 くすくすと笑う。
 しかし、藍は静かに、ゆっくりと首を左右に振ると、「昔から変わらないと言うことはいいことですよ」とお茶を濁すような返事を残し、「買い物に出かけてきます」と残して屋敷を去ってしまった。
 一人、残された紫は縁側に腰掛けると、無意味に空を見上げる。
「たとえ何百年、何千年が過ぎようともここは永遠に変わらない。変わることを忘れた、停滞と連鎖があやなす世界。そこに生きる私だもの、変わるはずもないわ」
 だから。
 今日はこのままお昼寝かしら、と立ち上がる。
「ふぁ……眠たいわね。
 ……本当に退屈だこと。退屈しのぎに何か面白いことをすれば、あの子達が飛んでくるかしら」
 含むような笑いを残しつつ、彼女の姿は寝所に消える。
 誰もいなくなった屋敷の縁側。そこを、ひゅうと風がなでていく。わずかに舞い上がった落ち葉の欠片が、ひらひらと、廊下へと落ちていき、かさりと小さな音を立てた。


case10:蓬莱山輝夜の場合

「はー……ったく。かぐや姫も、最近は知名度が微妙になってきたわねー」
 部屋の真ん中でごろごろしつつ、そんなことをぼやく女性が一人。
 そのままぴたりと部屋の中心で止まり、大の字で天井を見つめる。別段、しみがあったり割れていたりするわけではないのだが、止まった視線を天井の木目に沿って動かしながら、意味もなく幾何学模様を視線で描いたりする。
 ――と、断りの言葉の後、障子が引き開けられた。
「姫、お客様です」
「客? 私に客……って……!」
 現れた、一羽の因幡。
 その彼女が連れていた女を前に、輝夜の瞳が見開かれる。
 現れたのは、際だったとまでは行かないものの、立派な美人で通る女性だった。彼女は、にっこりと、輝夜を見て微笑む。
「久しぶりね……かぐや姫……」
「あなた……織姫……!」
「ふふふ……あなたとの長年の確執、今こそ晴らすとき!」
「面白い……ここ数百年、どこぞの不死鳥娘と戦ったことで上達した私の力、今こそ見せつけてやるわ!」
「屋敷は壊さないでくださいね」

「ふ……なかなかやるじゃない、織姫……!」
「ええ……あなたもね、かぐや姫……!」
 戦い終わって日が暮れて。
 両者とも、着物などをずたぼろにして、ここは一体どこだという夕日の川縁に寝ころんでいた。
「……ふっ、やはりあなたの実力、大したものだわ」
「ええ……だけど、織姫。ここ数百年の間、全く腕が落ちていないわね」
「もちろんよ。地上の人が彦星と言える彼とも、毎年、一年に一度の決闘……! 決して楽な戦いではないわ……」
「全くね」
 七夕の伝説をめちゃくちゃにするような事実を堂々と言い放ち、起きあがる織姫。確かに、彼女の肌には、今し方、輝夜との戦いでついたとは思えない傷がいくつも残っている。すなわち、彼女はそれだけ激戦をくぐり抜けてきた兵なのだ。
「織姫……やはり、あなたは七夕の主役と言うにふさわしいわ」
「ええ、かぐや姫。あなたの思い、しかと受け取ったわ」
「……ふっ、地上の人々は知らないでしょうね。短冊に願い事を書く、本当の意味を」
「ふふっ……伝説は伝説のままがいいわ。きれいなままが、ね」
「ええ……戦勝祈願の祈りだとは知られてはならないわね」
 ぶちこわしだった。
 本当に色々なものがぶちこわしだった。
 しかし、そんな伝説クラッシャーな二人は、戦いの後の清々しい笑みを浮かべていた。互いにお互いの手を握りあい、再戦を誓う。次こそは、私が勝つ。互いにそれを約束し、二人はお互いに背を向ける。
 夕日をバックに去る二人の戦士。その伝説は、これからも語り継がれていくのだろう。
 不滅の戦士、かぐや姫と織姫に幸あれ。


case11:八意永琳の場合

「永琳さまー! 因幡が転んでケガしましたー!」
「あらあら」

「永琳さま永琳さま。今日のお夕飯の買い出しなんですけど、材料、何でしたっけ?」
「あらあらあら」

「永琳さま~……因幡達がケンカしてますぅ~……」
「あらあらあらあら」

「え、永琳さまー! お風呂が壊れて何か新しい温泉が湧きましたー!!」
「あらあらあらあらあら」

「……永琳さま、『あら』が多いですよ」
「あらあらあらあらあらあら」

「あらあら……よっこいしょ」
「師匠、ご苦労様です」
「あらあら」
 ことん、と置かれた湯飲みの中で揺れているお茶を一口。そして、付け合わせとして出されたようかんも一口。
「あら、美味しい」
「はい。霊夢さんにもらったんです」
「あらあら、そうなの」
「……いや、師匠。そこは『え?』とか言う場面じゃ……」
「あらあら」
「……まぁ、いいですけどね。霊夢さんが珍しく、『たくさんもらって腐らせたら困るから』ってお裾分けしてるみたいなんですよ」
 そう、愛する弟子の鈴仙が言う。そんなこともあるのね、と納得しながら、さらにようかんを一口。味はたっぷりとあんこのきいた本練り。栗ようかんとかも美味しいけれど、やっぱり本練りね、ということらしい。
「けれど、師匠」
「なぁに?」
「この頃、永遠亭の中は忙しいかもしれませんけど、外はすごく平和ですね」
「あらあら」
「それで、私、考えたんです。今度、みんなで遠足とか行きませんか? ほら、外に出てもこの周りの竹林だけ、っていう子供も多いですし」
 やっぱり、見聞は広めておいた方がいいですよ、というのが彼女の言い分だった。
 それについては文句を言う必要もない。いいわね、と同意する。
「ですよね?
 それで、あの……師匠」
「何?」
「お弁当とか作るの手伝ってもらっていいですか?」
「あらあら。どうして?」
「その~……てへへ」
 実は、と口を開く鈴仙。それによると、彼女、今回の遠足に関して、まだ誰にも話を通していないらしい。その前日に、突然、みんなの前で発表して、みんなを驚かせてやりたいというのがその理由なのだとか。
 要するに、一種のサプライズパーティーのノリなのだろう。
「それに、みんな、毎日退屈してますから。いいですよね?」
「あらあら。面白そうね。
 でも、ウドンゲ。ちゃんと、何人か、お手伝いをしてくれる子には話を通しておくのよ」
「はい。それについては」
「あらあら。いい子ね」
「えへへ……。
 あ、あの、それじゃ、私、お茶を新しくしてきますね」
 そそくさと茶器一式を持って立ち去る鈴仙を見送り、手にした湯飲みの中のお茶を飲み干す。
 そうしてから、つと、永琳は立ち上がった。部屋の障子を開ければ、その向こうは板張りの廊下と中庭、そして月を臨むことが出来る空間が広がっている。
 よいしょ、と彼女はそこに腰を下ろした。長く伸ばした三つ編みを、軽く手でいじりながら、空に浮かぶ月を見上げる。今宵は満月、望月の頃。
「お月様……か」
 何とはなしにつぶやいて。
 そうして、ふと、視線を巡らせる。誰かの瞳が自分を向いているような、そんな気配を感じたのだが、どうやらそれは気のせいだったらしい。年を取ったのかしらね、と笑いながら、お茶を一口。
「遠足か……。みんなで。
 うふふ、面白そう」
 少しだけ、何か思うことでもあったのか。少しだけ、含みのある表情を見せる彼女だったが、すぐにその顔は普段のとろけた、おっとり笑顔へと戻っていく。
「みんなで仲良く、いつまでも」
 そうつぶやいた時、鈴仙が、「師匠~、お茶、持ってきましたー」と舞い戻ってくる。それを見て、いつも通り、「あらあら」と答える永琳だった。


case12:鈴仙・優曇華院・因幡と因幡てゐの場合

「あ、あの……鈴仙さま」
「何?」
 片手に持った試験管とビーカー。それの中身を慎重に混ぜ合わせながら、その傍らで、尊敬する師匠から渡された薬の本に視線をやりつつ、鈴仙が後ろからの声に応える。
「その……」
 声の主は、ずいぶん、勢いがなかった。普段なら、何を置いても自分の要件だけを伝えてとっとと背中を向けそうな雰囲気の持ち主であるというのに。
 どうしたのかなと気にはなったものの、今はこの調合から気を割くことは出来ない。
「……今度、私にも、調剤とか教えてもらっていいですか?」
「別にいいよ」
「で、でも、私、そう言うことには素人同然ですよ?」
「私だって最初はそうだったよ。でも、いい師につけばきちんと成長するものなんだよね」
 にこっと笑って、鈴仙が振り返る。
 彼女の視線が、初めて声の主であるてゐを見据えた。鈴仙の返答に、少しだけ、意識を緊張させていたてゐが脱力する。
 だが、次の瞬間。
「あっ!」
 と、てゐが声を上げるのと、鈴仙の手にしたビーカーから、一滴、ぽたりと雫が試験管に落ちるのは同時だった。
「……あ」
 その言葉の後、猛烈な閃光が部屋を満たし、凄まじい爆音が永遠亭に響き渡った。
 ――調合失敗、である。
「げほっ! げほっ!
 て、てゐ、大丈夫!?」
「うぅ~……び、びっくりしたぁ~……。心臓止まるかと……」
「あっちゃ~……師匠みたいなドジやっちゃったよ~……」
 爆発のすさまじさを物語るが如く、部屋の中のものは軒並み吹っ飛んでしまっている。その爆心地にいたのに、なぜかほぼ無傷の鈴仙は、「大丈夫?」としりもちをついたままのてゐを助け起こした。
「鈴仙さま、ドジ……」
「あはは、ほんとだね。
 うーん、参ったなぁ。私も師匠に似てきたのかも」
「ってことは、鈴仙さまも、将来は三つ編みして『あらあら』なんて言ってるんですね?」
「そうかもね」
 二人は声をそろえて笑いあった。爆発のせいで、全身煤まみれだというのに、なぜかお互いがお互いに可愛らしく見えるから不思議だ。そうしてひとしきり笑った後、さて、と立ち上がる。
「それじゃ、後かたづけしないと」
「そうですね。じゃ、頑張ってください」
「待て。手伝って行きなさい」
「えー? けど、私がやったんじゃ……」
「授業料」
「……ちゃっかりしてますね」
「そう言う度合いだけは、てゐに負けるよ」
 にこっと微笑む鈴仙に、てゐがわずかに顔を赤くして黙り込む。「こ、今回だけですよ?」と口では減らず口のようなものを叩きながらも、せかせかと、丁寧に真面目に取り組む様は、実に彼女らしいと言えば彼女らしかった。
「あらあら。何の騒ぎ?」
「あ、師匠。ごめんなさい、調合失敗して」
「あらあら、私みたいな事しちゃったのね。
 どれ、お手伝いしてあげるわね」
「い、いいですよ。別に……」
「いいの。てゐもお手伝い? 偉いわねぇ」
 そんなこんなで、三人で掃除を進め、終わったのは午後もお昼ご飯の時間を回った頃。当然、お腹ぺこぺこの三人は、いつも以上に昼食を食べて、そのままお昼寝モードへと突入していったのだった。


case12:上白沢慧音の場合

「いいか? 妹紅。それに輝夜殿。
 もう何回も言っていることだが、ケンカはよくないことだ。それはわかっているな? しかるのに、お前達と来たら――」
 延々、くどくどと。
 上白沢奥義、永久機関説教の発動である。この状態になると、まず、三時間は慧音は事の発端を解放しようとはしない。逃げようとしたら弾幕で黙らされた上に、それまでの倍以上の説教を倍以上の時間で食らうことがわかっているからだ。
 だから、大人しく、正座している二人に向かって、今日も慧音の説教は続いていく。

「全く……困ったものだ」
「あらあら。まぁ、言ってもわからないというか、あれがあの方々の人生になっているような節もありますから」
「それが困っているというのですよ、永琳殿。
 ……っと。すいません」
「あらあら。さあ、ぐいっとどうぞ」
 かぽーん、という古典的な音が響くのは永遠亭の湯殿である。天然の自然石で作られた岩風呂。しかも、美しい星空を眺めることの出来る露天風呂が、永遠亭の自慢の一つだ。そこに、慧音が頭を悩ます原因を懐に抱え込むことになってしまった、ある意味ではもう一人の苦労人が一緒に浸かっている。
「……ぷはぁ。うまい」
「そうでしょう? このお酒は永遠亭の特産品なんです」
「なるほど。永琳殿プロデュースなのだろうか?」
「はい」
「そうか。それならば、さぞ、体に良さそうだ」
 そして、お風呂に入りながらの晩酌タイム。何ともゆったりとした時間の過ごし方だ。
 ちなみに、慧音の永久機関説教を食らった二人はというと、現在、布団に横になって悪夢にうなされている。
「しかし、どうしたものだろうか。永琳殿」
「はい?」
「輝夜殿と妹紅のことですよ。
 あなた方も頭を悩ませている問題でしょう? このままでは、将来、彼女たちにもよくないことが起こるに決まっている」
「あらあら。そうですねぇ」
「それでなくとも、最近、麓の村々では、あの二人の決闘の余波を見て怯える子供がいるというのに」
 全く、と憤りを示すためにおちょこの中身を一気に空ける慧音。ぷはぁ、と酒に彩られた息を吐き出してから、そのままぶくぶくと沈んでいく。
「私たちの苦労くらい理解してもらいたいものです」
「あらあら。本当ですねぇ。
 せっかくですから、また、楽しい決闘でも企画しましょうか」
「ああ、それはいいかもしれません。ものがものだけに、あの二人は危惧される存在だ。それなら、何の被害を生み出さない決闘を考えればいいわけですな。
 いやぁ、永琳殿。さすがだ。さすがは天才。この上白沢、一本取られました」
 はっはっは、と何だか妙に陽気な声を上げる慧音。うっすらと頬が赤い。どうやら酔っているらしい。
「さあさあ、慧音さん。どうぞ」
「いやいや、すみません。
 永琳殿は、本当に良妻賢母という言葉がよく似合う。結婚してないから正しい言葉ではないでしょうが、これもまた才女の形ですな」
「あらあら。照れますね」
 ぐいぐいと、次から次へと注がれる酒を空けていく。あまりにもピッチが早いのではなかろうかと思われるのだが、それを勧めているのは永琳である。どうにも、慧音も彼女の策略にはまっているような気もしないでもないのだが――。
「私はね、永琳殿。みんなに幸せになってもらいたいだけなんですよ」
「あらあら」
「だから、時に厳しくもなる。まぁ、最近は厳しくなってばっかりですがね」
 あっはっは、と大笑い。何が面白いのかわからないが、しばらく、彼女は肩を揺らして笑っていた。
「あなたとこうしていると、本当に幸せだ。やはり、互いに苦労を分かち合える知り合いがいるのはいいものですな」
「はい」
「どれ、永琳殿。私からも……」
「あらあら。ありがとうございます」
 それでは失礼して、と今度は永琳も晩酌に加わった。
 そのまま、二人して、何だかんだと話をしながら一升瓶を丸ごと空っぽにする頃、
「くぅ……」
 完全に酔いの回った慧音が風呂場の床の上で潰れていた。そのそばには、全く顔色の変わっていない永琳の姿。彼女が、「うどんげー」と声を上げると、鈴仙ががらりと湯殿の入り口を開いて現れる。
「師匠……相変わらず、手加減ないですね」
「あらあら」
「慧音さん、明日は絶対に二日酔いですよ」
「いいのよ。たまには、ゆっくりと休んでもらわないとね」
「……それはそうですが」
「彼女は気が張りすぎているの。
 ねぇ、ウドンゲ。世の中にはね、幸せになるべきものがいるのよ。慧音さんもその一人。彼女は、『人間』が好きだと言っていたわ。でも、忘れている。彼女だって、半分は人間。自愛の出来ない人間では、あまりにも狭量ですものね」
「……まぁ、そうですけどね」
 よいしょ、と慧音を担ぎ上げ、鈴仙。
「それじゃ、私はこれで」
「ええ。ご苦労様」
 慧音にバスタオルをかけてから、風呂場を退場する。廊下を歩いていけば、秋の風が吹き渡る。その風に頬をなでられてか、「う~ん……」と慧音がうなるのが聞こえた。起きたのかな、と鈴仙は彼女に視線をやるが、慧音の瞳は閉じられたままだ。
 だが、小さく、口は動いている。寝言だろう。そっと耳を寄せてみれば、
「……永琳殿、もう一杯……」
 どうやら、夢の中では、まだ酒宴が続いているようだった。
 普段のきまじめな慧音からは、とても想像できないかわいい寝言に思わず笑ってしまってから。鈴仙は、彼女を、あらかじめ用意していた寝床へと運んでいったのだった。


case13:藤原妹紅の場合

「何しに来たんだよ、輝夜」
 険悪な眼差しが、突然の来訪者を見据える。その来訪者はと言うと、着物の袖で口許を隠していた。どうやら、笑っているらしい。
「んだよ? ケンカ売りに来たのか?」
 早くも勢いづいた妹紅が立ち上がる。
 妹紅の庵。そこを突然、輝夜が訪れたのは、今し方の頃。ちょうど、月が昇ってきて、それを見ながら、妹紅がぼんやりと過ごしていた頃のことだ。
「まあ、無粋ね。これだから教養のなってない人は」
「何が言いたいんだよ?」
「お酒の席をご用意致しました、妹紅様。なんて一言はいかが?」
「ああ?」
 輝夜が取り出したのは、ちゃぷん、と中身の揺れる瓶が一つ。そして、まるで手品のように、さらに服の袖からおちょこが取り出される。
 ……こいつの袖の下はどうなってるんだ。
 そんな眼差しを注ぐ妹紅に「いかが?」と誘いをかける輝夜。しばし、彼女は目の前の相手をにらんでいたが、やがて肩から力を抜くと、どっかとその場に腰を下ろした。
「一杯だけだぞ」
「あら」
「その後は、いつも通りの殴り合いだ」
「お好きなように」
 こちらは優雅に腰を下ろすと、そのまま、手にしていた瓶の栓を抜き、中身をおちょこの中へ。やがて両者のおちょこにたっぷりと、揺れる液体が注がれ、何とも言えない香りを立てる。
「……ったく。何なんだ、お前」
「さあ」
「ぶっ飛ばすぞ」
「どうぞご随意に。ただし、お酒も粉々よ」
「……むぅ」
 一口、それをすすれば、見事な味わいが口いっぱいに広がっていった。
「……うまい」
「でしょう? これは永琳お手製なの」
「へぇ~……。……この酒を壊すのはもったいないな」
 ここは酒だけ全部もらってから一発やるべきか? そんな現金な考えを浮かべながら、早々とおちょこを空にした妹紅は「もう一杯」とそれを突き出した。
「一杯だけではなかったの?」
「うるさい」
「全く」
 がっついてるんだから、と輝夜が笑った。
 さらに注がれる酒を一口して。
 ――はぁ、と妹紅は息をつく。
「いい月が出てるな」
「そうね」
「殺しあいをやるにゃいい夜だ」
「そうかしら?」
「……疑問形にすんじゃねぇよ、ばーか」
「妹紅。あなたは、生きていることの理由を考えたことはある?」
 唐突な一言だった。
 は? と眉をひそめる妹紅。それも当然の反応と言えば、当然だった。対する輝夜はといえば、全く動じる様子もなく、すました顔で酒を口にして、「つまりね」と口を開く。
「私には永琳がいる。因幡達がいる。
 あなたには誰がいる?」
「私には誰もいないよ」
「あのワーハクタクは?」
「あれは、慧音が口やかましくしゃしゃり出てくるだけだ。それに、死なない人間なんて化け物以外の何物でもないからな。他人の前に顔を出すことも出来ない。いつまでも、こんなちっぽけな庵の中に閉じこもってるだけだ」
「そう。なら……」
 永遠亭にいらっしゃい。
 ――その一言を、輝夜は口にした。
 一瞬、確実に妹紅の時間が止まる。目を丸くし、手にしたおちょこが、そのまま畳の上へと落ちていった。
「お前……ついに頭がおかしくなったか?」
「永遠を生きる人間にとって、同じ時間を過ごすことの出来るものの存在が、すなわち生きることの印でしょう」
「は?」
「いつかは死ねることが存在の定義だというのなら、私たちにとっての定義は、いつも死ねること」
「だから、お前、何を……」
「そして、目を開けた時。出迎えてくれる人がいること」
 その一言に、妹紅は言葉に詰まる。
「違う?」
「それは……」
「そう言う存在がいないのなら、いつでもいい。永遠亭にいらっしゃい」
「……本気かよ?」
「嘘だと言ったら?」
「いや……その……」
 どう答えていいかわからない。それを全身で表現しながら、妹紅は落としたおちょこを拾い上げる。輝夜がそこへ、再び酒をついだ。じっと、彼女は揺れる水面に視線を落とす。
「生きると言うことはそういうことよ。そして、全ての万物に等しく、生きることこそが幸せなのだから」
「……お前は幸せなのか?」
「幸せよ」
「どうして」
「幸せと感じていることが出来る、今のこの時間。それがいつまでも続くから、きっと、私はいつまでも幸せ」
 意味がわからない。
 どのようにツッコミを入れていいかもわからず、妹紅はやけ酒とばかりに酒をあおった。もう一杯、とピッチを上げながら、彼女は酒を飲み干していく。
 明日はきっと二日酔いだ。そんなことを思いながらも、酒がとても心地よい。そして――、
「そういえば、外では最近、『やきゅうけん』なるものが流行っているそうね」
 と、怪しい知識を見せびらかしている輝夜の存在が、なぜだか、今日はとても居心地がよかった。


case14:伊吹萃香の場合

「みんなー、お酒は好きかー!?」
『大好きだー!』
「宴会を愛しているかー!?」
『愛してるぞー!』
「今日もぶっ倒れるまで、飲んで、飲んで、飲み続けよー!!」
『おーっ!』
「ではぁー!」

『かぁーんぱぁーい!』

 幻想郷の一角、博麗神社。そこの主は、嫌な顔はするのだが、それでも場所を提供してくれる。
 何の場所か? それは当然、境内全部を使った、にぎやかな大宴会。その幹事でもあり、今回は主催者でもある彼女、伊吹萃香はというと、大量のお酒を両手に持って、鬼の力を無駄にフル活用しながら酔客の間を回って歩いていた。
「あー、やっぱりお酒はこーでなくっちゃー!」
「しっかしさぁ」
「んあー?」
「あんたは、ほんと、酒飲む以外やることないんか?」
「何を言いますかな、愚かな人間よ。
 人生、酒さえあればバラ色ですわよー!」
「あんた人間じゃないし。そもそも喋り方おかしいし」
 ま、いいけど、とその問いかけを放った人物――神社の主は、手にした焼き鳥を一気に根本まで頬張った。ちなみにその光景を見たとある夜雀が、「次は私も混ぜてもらいましょうかい!」と乗り出してくるのだが、それはまた別の話。
「いやほんと、酒があればこの世は天国だよねー」
「あら、そう?」
「そうだよー」
「そうですねー。疲れた時には、温泉に浸かったり、美味しいつまみを手に、こいつをぐいっと。たまりませんねぇ」
 交友がある――というか、これもある意味では腐れ縁か。
 客に酒を配り終わり、またぐびぐびとやっている萃香の所へと、二人の妖怪がやってくる。そのうちの一人は、もう日も沈んでずいぶんだというのに日傘を持ちながら、くすくすと、妖艶に、そしてどことなく不気味に微笑んでいる。もう一人は、だいぶ飲んでいるのだろう、顔を赤らめて手にしたカメラを無意味にぱしゃぱしゃとやっていた。
「なになにー? 文ちゃんってば、もー酔ってるのー?」
「バカなこと言わないでくださいよー。まだまだ宵の口。ついでに言えば酔いの口ですよ」
「あ、うまいねー。ゆかりんー、文ちゃんに座布団一枚ー」
「はいはい」
 どこかから取り出した座布団の上に、文が腰を下ろす。その隣で、やはり、座布団を取り出した人物も地面の上に直接腰を下ろした。そうして、一同、車座になっての宴会の中でのプチ宴会開始である。
「やー、やっぱり、大勢で飲むのは楽しいねー」
「楽しいですねー。日々の悪いこともばしっと忘れられそうですよ」
「だからって、お酒におぼれてしまうのはまたどうかしら?」
「おぼれてないじゃーん?
 ほら、ね? こうやってさ、みーんなでわいわい騒ぐのって、それだけで楽しいから、私は好きかもー」
「かも、なんですか?」
「かもー」
 あっはっは、と笑う萃香。どうやら、彼女も酔っぱらい始めているらしい。酒に関しては、それこそ底抜けに強い鬼のくせに、だ。一体どれほどの酒を飲んでいるのか、想像したくない。ついでに言えば、それほどの酒が一体どこから出てきているのか、それも想像したくなかった。
「まぁ、それもまた華の一つということね」
「そうそう。幻想の宴に混じって止まった時を堪能するのも悪くないでしょー」
「あら、風流な言い方」
「あははー、意味はさーっぱりだー」
「ダメじゃないですか、萃香さん。もっと、鬼は思慮深くなければ」
 ぷは~、と二人そろって酒臭い息を吐き出す。萃香はともあれとして、文はこのままでは二日酔いにもなるのではないだろうか。酒の席で鬼と張り合えるのは天狗だけ、と言っていたくせにこのざまだ。さぞかし、大量の酒を空けてきたのだろう。
「たのしいねー」
「たのしいですねー」
「よーし、文ちゃん! 歌うぞー!」
「踊るぞー!」
「……やれやれ」
 肩を組んで、何だかよくわからない歌とダンスを始めた二人を横目で見ながら、それに巻き込まれないうちに紫は退散した。案の定、この二人の酔っぱらいは、周囲の連中をみんな巻き込み、その後、『大宴会だよ弾幕集合』というわけのわからない催しをやらかして、翌日、全員を酒酔いの地獄へと招き入れることになる。
 ――のだが。
「それではいっちばーん! 伊吹萃香ー!
 巨大化して火を吐きまーす!」
「おー、やれやれー」
「いっくぞー!」
「ぎゃー! 神社燃やすなー!」
 少なくとも、今が楽しければそれでいい、な思考をしている彼女たちにはそれでいいようではあった。


case15:メディスン・メランコリーの場合

「メディスン、ずいぶん、みんなと仲良くなったようね」
「そうかな?」
「人形同志、気が合うんだろうさ」
 アリスの家のお茶会。そこに招かれるのは、彼女と同じ、魔道を究めようとするもの達ばかり。ただし、最近では、その中に若干意味合いの違うものが紛れ込んでいる。
「そうかもしれないわね。私たちにはわからないことが、メディスンにはわかるかも」
「私にゃ、人形の言葉なんてさっぱりさ」
「楽しい?」
「うん!」
 大勢の仲間達に囲まれて、楽しいおしゃべり。
 女の子は、基本的に、話をすることが大好きだ。それは、たとえ、人形の存在に過ぎないメディスンであっても、その見た目が女の子の姿をしている以上、魂は器に縛られると言うことだろう。彼女もまた、周りを囲むみんなと話をするのが大好きだった。あんまりにも楽しすぎて、ついつい、家に帰るのが遅くなってしまうことなどしょっちゅうである。
「何て話してるんだ?」
「さあ?」
「いや、お前、自分の人形が何言ってるのかくらいわかるだろ」
「わかんないわよ。っていうか、理解を放棄してるの」
「そりゃまた何で」
「人形のことを理解できない人には、アリスお姉さんの心を理解するのは無理なんじゃないかなー」
「何だと、この!」
 思わず、手にしたティーカップを置いて椅子を蹴倒してしまう。そんな短気な彼女を、まあまあ、とアリスが諫めながら苦笑する。
 してやったり、な笑みを浮かべて、メディスンが二人のついているテーブルへと歩み寄ってきた。そして、じーっと、視線を注ぐ。
「な、何だよ……?」
「やっぱり、アリスお姉さんは、人を見る目があるというか? でも、それに応えるだけの器が、まだまだあなたには足りないねー。そう思わない? スーさん」
「……どうやら、お前は本格的に私にケンカを売っているようだな。表に出ろ、弾幕勝負開戦……!」
「はい静かに」
 こっそりと、彼女の後ろに忍び寄っていた人形が、さっと彼女の椅子を直した。そうして、さらにもう一体が、彼女を強制的に椅子に座らせる。
「……何だよ、ったく」
「アリスお姉さんは優しいね」
「優しいと言うより……。そうね、退屈なの。退屈だから、たまには戯れもしたくなる」
「そうなんだ」
「メディスンには、退屈、と言う言葉の意味はわかる?」
「わかるよ。時間を持て余してどうしようもないこと」
「ちょっと違うかな」
 あのね、と微笑み、
「私は、退屈な今が好き。つまり、退屈って言うのは、私にとっての日常なの」
「……ほえ?」
「哲学的だねぇ」
「すぐにわかるようになるわ。メディスンにとって、今は毎日が楽しい時だから。すぐに、退屈な日常が来るようになる」
 その言葉の意味は何なのか。
 今は、まだ、彼女にそれを理解することは出来なかった。首をかしげるメディスンの肩を、アリスの人形達がぽんぽんと叩いて自分たちの輪の中に連れ戻していく。そして、再び始まる人形達のおしゃべりを聞きながら。
「……で? お前にとっての退屈な日常ってのは、つまるところ、単なる毎日なんだろ?」
「そういうこと。魔理沙にしては理解がいいじゃない」
「やかましい。私だって、そこそこ天才なんだぜ?」
「自分で自分のことを天才とか言う人間にろくな奴はいないって言うわね」
「ほんとー」
「やっかましい!」
 二人にそろって攻撃を受けて、ついに魔理沙がギブアップした。手早くカップの中身を空にすると、外を歩いてくる、と言い捨ててドアを乱暴に開け放って歩いていってしまう。やれやれ、と肩をすくめるアリス。そして、楽しそうに笑うメディスン。
「楽しいと退屈、の境目かぁ」
 そんなことをしながらも、ふと、考える。
 もちろん、今、理解できないことなら、それはまたいつかという言葉が正しいと言うこと。だから、今は、彼女はそれを考えずに目の前のおしゃべりに興じることにしたのだった。


case16:風見幽香の場合

 風見幽香は、悩んでいた。
「……はぁ」
 憂鬱なため息を漏らし、頬杖をつきながら、指先で空っぽになったティーカップをなでる。
「……はぁ~」
 本日、何度目かになるため息。
 この頃、幽香はいつだってこんな感じだった。理由はと言うと、日頃の彼女の行いそのものに理由があるのかもしれない。
「……出かけてこよう」
 ため息ばかりついていても仕方がない。
 あんまり気は進まないが、それでも、ここでぼんやりとしているよりはマシだと判断したのだろう。ふわりと空へと浮かび上がり、家を後にした彼女は、どこへともなくふらふらと飛んでいく。行く先の決まらない、のんびりとした旅路だった。ただふわふわ飛ぶだけというのもストレス解消になるが、事、そのストレスの源を抱えた状態だったらどうなるのかなぁ、ととりとめもないことを考えながら――ふと、視線を下に落とす。
「……祭り?」
 何やらにぎやかそうな風景がそこにあった。
 まだ、祭りを始める準備段階に過ぎないのだが、大勢の人々がえっちらおっちらと機材を抱えてあっちこっちを歩き回っている。
 何かしらと思いながら、ゆっくりと、そこからは距離を取ったところに舞い降りる。空を飛べない人間の前に、空を飛べる妖怪が現れた場合、次に起こるのはパニックだろうと、それくらいは彼女にも考えつくのだ。
「何だか楽しそう……」
 まだ、祭りの準備に過ぎないというのに。
 みんなが笑顔で騒がしい。彼らをのんびりと、遠くから眺めながら、はぁ、とため息。そして、ぽつりとつぶやいた。
「……私も混ざりたいな」
「なら、荷物運びくらいは手伝ってもらおうか?」
「!?」
 いきなり、何の気配もなくわき上がった声に驚いて、横に飛び跳ねる。それと同時にバランスを崩して木に顔面から激突し、『うー……』と顔を押さえてうずくまる彼女。かなり間抜けだった。
「いや……驚かしてしまったか。すまないな」
 そこに現れた声の主は、上白沢慧音。彼女は、軽く頭を下げて、そして『大丈夫か?』と幽香に歩み寄る。
「な、何よ……。べ、別に、あなたに気遣ってもらうつもりなんてないわ!」
「鼻血を流しながら言われてもな」
「えっ!?」
 慌てて、ポケットから取り出したハンカチを鼻に押し当てる。
 ……のだが。
「……え?」
「冗談だ」
「なっ……! ば、バカにしてっ!」
「おっと、そこまでだ。幽香殿」
「何を……!」
「今日の夜、祭りが行われるんだ。ここで騒ぎなんて起こしたら、それを楽しみにしている人たちに迷惑をかけることになるだろう?」
 その言葉に、片手にしたためていた魔力の塊が、行き場を失って消えていく。しおらしく、『……そうね』とつぶやいた幽香は、足早にその場を立ち去ろうとする。だが、その後ろ姿に、慧音は声をかけた。
「手伝っていかないか?」
「別に、手伝ってまで祭りになんて出たくないわ」
「そんなことを言わずに。今、人手が足りなくてな。
 ついでに言えば、あなたの力は、実に役に立つ」
「……何でよ?」
「祭りに必要なのは装飾さ」

「ねぇ、慧音」
「ん?」
「この祭りさー、何か妙に華やかじゃない?」
 ああ、と慧音は、無理矢理に『女の子なんだからおしゃれの一つもしろ』と着物を着せて連れてきた妹紅の言葉にうなずいた。
「今年の祭りには、心強い助っ人が来てくれたからな」
「助っ人?」
「あっちだ」
 彼女の指さした先には。
「いやぁ、お嬢ちゃん、助かった! こいつは俺からの礼だ、腹一杯食べてくれ!」
「ち、ちょっと、こんなに渡されても……」
「そうよ。女の子は甘いものが好きなんだから。
 はい、これ、里の自慢のお団子。一杯作ったからおみやげにもしてね」
「いや、だから……」
「ねぇねぇ、おねーちゃん。このお花は何て言うの?」
「え? そ、それは……」
「しかし、祭りには華がないといかんやなぁ?」
「そうそう。うちの里の女は、どうにも気が強いのばっかりでさぁ」
「姉ちゃんみたいな美人さんなら大歓迎さ」
「何だって、男ども!」
「もっかい言ってごらん!」
 ――という具合に、大人気の妖怪の姿が一つ。
 何だありゃ、と思わず妹紅がつぶやく。「そうだな……」と、慧音が腕組みをして考え込むような素振りを見せる。そうこうしている間に、彼女――幽香の手には、祭りの男衆から渡された食べ物や、女性から渡されるお菓子や装飾品が山積みになり、子供達にせっつかれて、「あれはね」と苦笑いを浮かべつつも懇切丁寧な解説を始めている。
「心優しい、というわけではないな。ただ単に、願っているだけならば何にも始まらないということさ」
「よくわかんねぇ」
「理解を放棄するのは思考の停滞だぞ、妹紅」
「へいへい」
「はい、は一つ」
「……はーい」
 立ち上がる妹紅。そのまま、どこへともなくふらふら歩いていく。その姿を人混みの向こうに見送ってから、慧音も踵を返す。「幽香殿、存分に祭りを楽しんでいってください」と残して。
 幽香は、それからしばらくの間、人々から解放されることはなかった。最初こそ困惑と、どこかめんどくさげな表情を浮かべていたのだが、それもしばらくのこと。いつしか彼女の顔には、女の子らしい、可愛らしい笑顔が浮かんでいたという。


case17:四季映姫・ヤマザナドゥと小野塚小町の場合

「……あの……小町?」
「はい、四季さま」
「……これは何でしょうか?」
 四季映姫・ヤマザナドゥ。
 日々を苦労と苦労と、まぁとにかく苦労という単語で全てが埋め尽くされる人生を送っている彼女は、今日も疲れて帰ってきた。
 日頃の疲れから、この頃は肌荒れや髪の傷みがひどい。ついでに言えば、疲れのためにまともに料理を作る気にもならないので、胃腸の具合も弱り気味だ。そんなこんなで、ため息とすすけた縦線を背負って家に帰ってきた彼女が見たものと言えば、である。
「見ての通り、手料理です」
「……いえ、それは見たらわかります。と言うか、小町、あなた、料理が出来たの?」
「勉強したんですよー」
 照れくさそうに笑う小町の姿は、エプロン姿だった。普段の服装の上に真っ白なエプロンを身につけているのだが、それがまた何とも言えず、端的に言うのなら『若奥様』という感じがして似合っていた。ついでに言えば、彼女の手には、ぐつぐつといい音を立てて煮込まれた鍋料理が鍋つかみと共にあったりする。
「こいつがメインディッシュですよ」
「……えっと……小町、これから永琳さんの所に参りましょう。夜間診療ってやってるんでしょうか」
「ち、ちょっと! 四季さま、そんな、人を病人みたいに……!」
「だっておかしいじゃないですか!? あなたが、こんな、立派な良妻賢母してるなんて!?」
「うっわ人のことをどう見てたかわかる発言が来ましたよ」
「……はぁ……私は疲れているのですね。ついに幻覚が見えるようになるなんて……」
「むぅ……四季さま、そういうこと言いますか!」
 言うが早いか、小町は手にした鍋を、足の低いテーブルへと置いた後、目にも止まらぬ速さで、テーブルの上に並べられていた料理のうち、実にいい色に煮込まれた煮物を取り、映姫の口の中へと押し込んだ。
「はい、よくかんでー」
「むぐむぐ……」
「はい、飲み込んでー」
「……ごくん」
「はい、感想は?」
「……少々、味付けが薄いですね。だしが効いていません。もう少し、砂糖の味を強くして、煮込み時間を十分ほど長く取りましょう」
「……はい、ごめんなさい」
 忘れてた。この人はこういう人だったんだ。
 小町は内心でつぶやき、ため息一つ。四季映姫・ヤマザナドゥと言えば、この世界では知らないものはいないと言われるほどの『味通』なのだ。その舌から来るジャッジは、彼女の信念と相まって常に正確と公平に根ざしたものとして、その世界から高く評価されている。そんな彼女に、料理を覚えて、まだ数日程度……とまではいかないものの、やはりまだまだ腕前の足りない己の料理が感慨を抱かせることなど出来はしなかったのだ。
 肩を落とす小町。しかし、そんな彼女に、「ですが」と言葉を続ける。
「どうやら、これは幻覚ではないようです」
「……え?」
「……精進は必要です。でも、努力は認めます」
「あ、それじゃ……」
「ごめんなさい、小町。あなたの気持ち、しかと受け取りました。
 では、晩ご飯です。さあ、つやつやのご飯を用意なさい!」
「はっ!」
 早速、卓につく彼女。その彼女の前に、小町が、ふっくらと炊けた美味しそうなご飯をてんこ盛りにしたお椀を持ってくる。箸とご飯、そして、決して豪華とは言えないものの立派なおかずがテーブルの上にそろった。二人は手を合わせ、「いただきまーす」と声をそろえる。
「ふーむ……このお鍋はなかなか」
「そうでしょう? いやぁ、いい鮭が手に入ったもんでみそで煮込んでみました」
「もう少し、塩味を効かせた方がよかったかもしれませんが、これには合格点ですね」
「そうでしょうそうでしょう。あ、こっちの漬け物はどうですか。あたい、初めて漬け物ってやってみたんですよ」
「不合格! 味が濃すぎます!」
「ええー……」
「漬け物を漬けるには、それ相応の技術と年月が必要です。小町、あなたはまだまだです! 今度、私が漬け物を作ります。それを食べて勉強するのです!」
「ははーっ!」
 ――などと。
 何だか妙ににぎやかな会話を交わしながらの、楽しいんだか楽しくないんだか、今ひとつ微妙な晩ご飯。しかし、先ほどまでの疲れた表情は、今の映姫にはなく、そんな彼女を前にする小町もまた、笑顔だった。
「小町、お酒は?」
「四季さまは酒乱の気があるから、当分、お酒の飲み方を覚えるまではお酒は出せませんね」
「何ですと!?」
「あたいを見習ってください」
「……うーむ……お酒が飲めないというのは、この四季映姫、一生の不覚ですね」
「ほんと、大変なんですよ。酔っぱらった四季さまの面倒を見るのは」
「む……。ですが、私が普段、あなたによって受ける苦労の程度から見たら微々たるものです。
 あ、小町。その豆腐をこっちにくださいな」
「はいはい、どうぞ」
「第一ですね、小町。あなたは、最近はまともになってきたとはいえ、サボってばかり。そんなことでは労働の神様に叱られますよ」
「閻魔様に叱られてりゃ、神様だって大目に見てくれますよ。
 あ、四季さま、ジュース飲みます?」
「……いただきましょう」
 ずいぶんと、双方共にリラックスした晩ご飯である。
 にこやかに、時に、情けない悲鳴なども混じりながらの夕飯は、それから一時間ほどに亘って続いた。それが終われば、入浴、睡眠のステップを踏んで一日が終わる。それすらも小町が「風呂は用意しておきましたよー」だの「布団はすでにあちらに」などと、気を利かせてくれている。
 果たして、これはどんな風の吹き回しなのだろう。そう思ったが、映姫は訊ねなかった。たまには、こんな一日があってもいい。そう思ったに違いない。それなら、日頃から行っている無粋な説教や追求など論外だ。今は、この時間さえ楽しめばそれでいい。
 明日への英気を養うとは、すなわち、こういうことなのだろう。
「小町、背中を流してくださーい」
「はい!?」
「いいじゃないですかー。たまには上司と部下で交流を深めあうということで」
「ええっ!? 一体どうし……って……あーっ! しまった、さっき渡したのカクテルだー!」
 ――お後がよろしいようで。




「ねぇ、姉さん」
「何?」
「みんな、いい夢見ててくれてるかな?」
 隣で、にぎやかな音を響かせているメルランに、ヴァイオリンのしっとりとした演奏を続けているルナサは「そうだといいね」と笑った。彼女たちの後ろで音をとりまとめ、一つの曲に仕上げているリリカは、「夜のプリズムリバー演奏会? 粋でいいじゃん、それって」と今宵のコンサートにずいぶんご満悦の様子だった。
「たまには、こんなプレゼントをしてあげるのも悪くないね」
「プレゼント……ね。
 そう言う恩着せがましい言い方はよくないね、メルラン」
「えー?」
「私たちは、ただ、いつも通り演奏会をしているだけさ。それがどんなことを招こうとも、それは私たちの観客に対する、いつも通りの私たちのアピールだ」
「さっすがルナサ姉さん。言うこと違うねぇ、メルラン姉さん?」
「うっさいなー。リリカは、どうしてそうやって姉をからかうかなー?」
「強いて言うなら、ルナサ姉さんとメルラン姉さんの成熟度の違い?」
「何だとー!」
「やめないか、二人とも。
 ……さて、次の曲に行くよ」
 長女の主導の下、曲調が変わる。再び紡ぎ出されたのは、ゆったりと響き渡る、実にスローテンポな曲だった。それが、長く、長く、幻想郷の夜に響いていく。
 今宵のプリズムリバーコンサート。
 それの聴衆達は、また新しい夢を見ていることだろう。そんな人々を思いながら、彼女たちは、今日もまた、自由気ままな演奏を続けるのだ。



 以下、文々。新聞のコラムより抜粋

『その夜、何となく眠れなかった筆者は、一人、夜の散歩を楽しんでいた。夜陰の静寂、夜の階の向こうに月光の輝くいい夜。のんびりと空を飛んでいたところ、耳にしたのは、心に染み渡るような音の響きだ。それが何なのだろうと近寄ってみたところ、幻想郷の音楽家ことプリズムリバー姉妹が、観客のいない深夜のコンサートを開いていた。
 その音に、筆者も思わず聞き惚れる。近くの木に腰を下ろして、じっくりと、音の聴衆に浸ってしまった。すると、不思議なことが起きたのだ。
 音の気持ちよさに、ついうとうとしてしまったところ、唐突に夢を見た。その夢の内容は、今でも鮮明に思い出せる。何と、我が文々。新聞が、この幻想郷においてトップの知名度を誇るに至るまでのサクセスストーリーを、そのまま一本、夢で眺めてしまったのである。
 これは一体どうしたことか。
 唐突なその展開に目を開ければ、未だ、姉妹の演奏は続いていた。唐突な展開。唐突な夢。そして唐突な演奏会。それらを総合して、筆者は判断する。それは、この夜が、そしてこの日の星が、月が、幻想郷の全てが、彼女たちの演奏と共にその内に抱く同胞たる我々に見せてくれた、一瞬の『幻想』であると。
 姉妹達の演奏は、東の空に朝日が昇る頃に終わり、彼女たちは自らの家へと帰っていった。筆者は夢から目を覚ました後も、やはり眠ってしまっていたのだろう。気がつけば、彼女たちの姿を遠くにしか見ることが出来なかったのだから。
 素晴らしい夢をくれた姉妹に。そして、優しい想いを分けてくれたこの世界に。筆者は、今日、この時、これまで以上の感謝と敬意を送ろう。願わくば、この幻想が幻想を超えて、今の私たちを包み込みますように。
 それを思いながら、この一文を記す』
夢は心のバロメーター。皆さんは、夜、どんな夢を見ていますか?
私の場合、現実ではあり得ないのに、目が覚めたら「あれ? こんな事あったっけ?」と悩むほどのリアルな夢を見ました。
はて、私の心はどうなっているのやら。


そして書き終わってから思い出したこと。
あ、香霖忘れた。
haruka
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コメント



0.4380簡易評価
6.90名前が無い程度の能力削除
お見事!
7.90名前が無い程度の能力削除
凄いハートフルな幻想郷でした
とくにアリシアさんな永琳師匠が最高
次点は妖夢&幽々子か、かっこええ
そして伝説クラッシャーには吹いた
11.100名前が無い程度の能力削除
いいもの見せてもらいました。
12.80翔菜削除
うむ、こりゃいい。
特に最後の映姫さまと小町のびみょんなほのぼの具合がいい。

だが何より……伝説ぶち壊しまくりの織姫が最高だ。
19.無評価Fimeria削除
「みんな元気だ……へへ……」

このアリスの呟き、温かくて優しくて素敵な少女を幻視できました。
アリス良い子だよぅ……
幽香の株も最近急上昇してます、この作品もその原因の一つとなりそうです。
良作を有難うございました。
21.80Fimeria削除
てーんすーうつけ忘れだぁ〓■●
29.80草月削除
>「もちろんよ。地上の人が彦星と言える彼とも、毎年、一年に一度の決闘……! 決して楽な戦いではないわ……」

七夕ってそういう行事だったの!?(ガビーン

そしてゆうかりんかわいいよゆうかりん。
32.100紫音削除
あっちこっちでほのぼのと。たとえひと時の夢であれ、いいものですね。私は夢というものはあまり見ない(覚えてないだけ?)人なのですが、こういう夢を見れたらいいなと思えますね。
個人的にはやっぱり、娘としての無邪気な笑顔もメディのお姉さんな表情も素敵なアリスと、皆に囲まれて笑う幽香が気に入りました。
心温まる素敵な作品、ありがとうございました。

・・・だがやはりMVPは、伝説を完膚なきまでに爆砕してくれた織姫&輝夜に進呈です(ぇ)
そうか、七夕とはそういう行事だったのか・・・そして今明かされる短冊の真実・・・
・・・そりゃ知られちゃならんわな・・・(--;)
48.100名前が無い程度の能力削除
あーもう、みんなすごい和むなぁ!
悪魔と図書館はツッコミ所しかないけどw
55.90赤灯篭削除
霊夢の夢を読んでてなぜか涙が。
57.100名前が無い程度の能力削除
幻視力フルに使って読ませていただきました。
ザナに酒をw
59.80変身D削除
誰も彼も実は微笑ましい夢で良いですね~。
中には結構早く実現しそうなモノもちらほらとありそうで。
が、最初の霊夢の夢だけはぜってえ実現しそうに思えないのは何故でしょu(封殺
69.90名前が無い程度の能力削除
理想の霊夢を見つけれた
82.100時空や空間を翔る程度の能力削除
子守唄・・・・・
夢物語ですね・・・・・
84.100名前が無い程度の能力削除
プリズムラバー三姉妹GJ!
冥界組がいいですね~正に理想。
フランの夢→中国の夢の流れに吹いた。
85.100名前が無い程度の能力削除
いいわぁ。和みました。どっかのお嬢様と紫もやしはアカンがなw
冥界組が特に良かった。咲夜さんは休日も瀟洒だなっと。
96.100名前が無い程度の能力削除
皆が幸せであり他に何の必要があろうか!
97.100名前が無い程度の能力削除
幸せな気分になれました
100.100名前が無い程度の能力削除
ゆうかりんかわいいよゆうかりん