Coolier - 新生・東方創想話

小児用ナイトメア (前)

2006/08/25 06:39:58
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「ふうん。炭水化物も結構血に合うのね」
「お気に召しましたか、お嬢様? 紅いルオータも悪くないでしょう」

「どうかしら小悪魔。このペンネを食べてみない?」
「嫌ですよパチュリー様。あからさまに色がオカシイじゃないですか」

「わ、このパスタ蝶みたい」
「ファルファーレっていうんですよ妹様。仰るとおり伊語の蝶です」
「へー。美鈴イタリア語分かるの?」
「ええ。他にもドイツ語ウルドゥー語エスペラントと、中国語以外ならほぼ完璧です」
「何でそんなに覚えたのよ」
「……反骨精神ですかね」

 晩秋漫ろに宵の口。稜線から顔を覘かせた月に蒼みが混じる頃。
 我が紅魔館が誇る五階ぶち抜きのメインホールにて、私やフランを始めとする館の全住人が集い、思い思いの時間を過ごしていた。


「このブラッドソース、B型のRH-ね」
「はい。東の集落からの血税ですわ」

 僅かに酸味の強いヘモグロビンが車輪型のパスタに絡みつく。少々鼻につく珍味だが、宴の肴にはこの上ない。


「失礼ね小悪魔。セロリと人参の葉っぱを練り込んでみただけよ」
「ニガいのばっかりじゃないですか。どうして緑黄色野菜をペアで用いるんですか」
「そんな……。『いつもお疲れ様』の気持ちを軽くミキサーにかけただけじゃない……」
「勤労感謝はシンプルにして下さいよ。何で態々そんな玄人向けの野菜で表現するんですか」
「……ちっ」
「……今舌打ちしませんでしたか?」
「いいえ」
「……ちょっとそのペンネ検分させてください」
「いいえ」
「……そのフラスコ、何が入ってたんですか」
「イイエ」

 楽しげに料理をつつくパチェと小悪魔。相変わらず歪んだコミュニケーションを展開しているが、当人たちにとってはアレこそが愛すべき日常らしい。
 どんな時でも日常を謳歌出来る者は強い。彼女らの日常はちょっと他所様にはお見せできないシロモノではあるが、強さに変わりはない。十年前はあんなんじゃなかったのに、と思わなくもないがパチェはパチェだ。安楽椅子の上でグッタリしつつも、リビドーが充填されれば誰よりもアグレッシブに行動を開始するこの稀代の魔女を、私は腹の底から気に入っている。


「何で泣いてるのよ美鈴」
「単一のアイデンティティに頼ることの危険性が目に染みて……」
「?」
「いえ……咲夜さんの料理が美味しいからですよ。ああ、毎日こんな料理が食べられたら」
「そうかな? 今日も美味しいけど、いつもとそんなに違うわけでもないじゃない」
「妹様はそうでしょうけど……私はいつも細長いイースト菌で生きてますから……」
「ふーん。まだまだいっぱいあったよ、これ。毎朝コッソリ届けてあげようか」
「えっ? ほ、ホントですか妹様っ!?」
「うん。いいよ」
「イィヤッホーゥ! イタメシ最高ー! ラブ&チーズ!」
「咲夜がいいって言ったらね」
「くわっ。それちっともコッソリじゃないですよ!」
「そう? じゃダメー」
「ぐふう。ヌカ喜び2006!」

 泡沫の夢に敗れる美鈴。フランの優しさはアッサリ取り下げられた。
 大体その会話はリアルタイムで私と咲夜の耳に届いているのだ。叶う夢も叶わない。だがそれは美鈴も分かっているだろう。とするとフランは遊んでいるのか遊んでもらっているのか。

「咲夜、偶にはスープでもつけておあげなさい」
「畏まりました」

 というか別に実際の美鈴の朝食は貧素ではない。『紅魔館七不思議の三、紅魔門外のコッペパン』は所詮噂に過ぎないのだ。
 子供と遊ぶときは道化になりきる。これが出来る美鈴は貴重な人材(サクリファイス)である。

「ま、誰が相手でも道化だけど」
「貴重な人材ですわ」

 門番は外面が凛としていればそれで良い。身内から見れば、内と外とのギャップは寧ろ好ましくもある。内側に向けられた親しみの表情は、倍の親愛を以って迎えられるだろう。

「まあ美鈴は兎も角、今年はパスタづくし? 思ったより悪くないわね」
「毎年カボチャ料理では飽きますでしょう?」

 見渡せば色とりどりのパスタ。ペンネ、エリケ、ステリーネ、セメチコリアにファルファーレ。ホールに集まったメイド達は、色も形も様々なパスタを小さな悪魔のフォークで突き刺し、ジェノベーゼやペスカトーレなどのソースで満たされた十数枚のディッシュにくぐらせ舌鼓を打っている。

「確かにそうね」
「パーティはまず楽しまなくては。今日はハロウィンなのですから」


 そう。今日は十月の晦日。“All Hallows eve”。所謂ハロウィンだ。
 この日は悪魔の謝肉祭。月明かりの下、大手を振って家宅侵入が楽しめる。ハロウィンこそは悪魔の本懐。このありがたいイベントにおいて、悪魔たちには人々に満面の笑みでトリックオアトリートの二択を突きつけた上で、洒落にならない悪戯と可処分所得の七割を超える血税の搾取を実行することが許されている。
 このライセンスは魔を帯びるものには例外なく与えられる。ウィルオウィスプも人狼も。魔女もメイドも中国も。

 紅魔館においても当然毎年ハロウィンは盛大に祝う。
 赤と黒のゴシックカラーで飾られたホールは煌びやかなマスカレードフロアに変わり、四分の三拍子のヴィニーズワルツが180BPMオーバーで鼓膜を突き抜ける。ドレスとマスケラで着飾ったメイド達はワルツに合わせて悪魔と踊り、ナイフとチキンで夜を祝う。それは遥か古からの習慣だ。

 百年前にはもう少し血の匂いの濃いパーティーだった。だがパチェが来て、美鈴が来て、そして咲夜がいる最近のハロウィンは少々穏やかなものとなっていた。幻想郷にやってきて、それは更に拍車がかかった。
 しかし穏やかとはいえ決して退屈な訳ではない。紅一色だったワルツが艶を帯びてピンクがかっただけなのだ。今は遠き首を賭けたブラックジャックも恋しいが、最近の貞操を賭けたポッキーゲームも悪くはない。
 今年のハロウィンもまずは盛況。まだまだ始まったばかりの宴だが、マスケラの下のメイド達の顔から今年も良いハロウィンになるであろうことは容易に見て取れた。

 正直仮装の必要のない生粋の変態揃いの我が家ではある。しかしだからといって損なわれる楽しみなど一欠片もありはしない。普段とは一味違うアブノーマルで武装した乙女達が音楽に合わせて優雅に、かつ極めてアグレッシブに本能を競い合うのが紅魔流の舞踏祭。いつもと何が違うのか、なんて野暮天は存在しない。

 当家は風雅を解する名門である。今この時最もアツい、旬の奇行を味わう贅沢を知っている。

 私は毎年この日を非常に楽しみにしている。ハロウィンは悪魔の祭典だ。無邪気なフランと踊ったり、酔ったフリして咲夜のブラウスに顔を突っ込んでみたり、美鈴の部屋でカボチャを小脇に抱えて全世界ナイトメアで転げまわってみたりと、幼きデーモンロードの名に相応しいデモニッシュなイベントが目白押しなのだ。これで胸躍らない吸血鬼はいない。

 今日も存分に煩悩を解放するつもりである。フランをリードするステップも完璧だし、一年かけて漸くカボチャの匂いがとれてきた美鈴の部屋の鍵は既に手に入れてある。パチェと画策した桃色のイベントも咲夜に気付かれずにセッティングできた。完璧だ。処女の生き血の如き高揚感がチリチリと項を嘗めている。この上ない背徳の一夜は約束されたも同然だった。


「それじゃ咲夜、貴方はどうやって私を愉しませてくれるのかしら」
「あら、愉しみは自分で探すから楽しいのではなかったのですか?」
「咲夜は私のものでしょう。私のものが私を愉しませるのなら、それは私自身の行動と同義よ」
「成る程。それはそうですわ」

 愉しげに声を弾ませ何処かからナイフを取り出す咲夜。くるりとそれを人差し指だけで回転させる。

「それではこんな趣向は如何でしょう」

 台詞とともに、ざあ、とナイフの群れが舞う。咲夜を中心に同心円状に展開するナイフの数は優に千を越え、赤と黒で統一されたホールを銀色に染めていく。
 だが驚くべきはやはり瀟洒。乱舞する四桁の刃は、住人はおろか料理やシャンデリアにすら掠ることなく、極めて優しく空間を裂いていく。会場の皆もナイフのワルツに見惚れていた。

「そういう気遣いは要らない連中ばかりなのだけどね。まあ綺麗に越したことはないけれど」
「優しく生きることにしているのですわ」

 咲夜は映姫の教えをきちんと守っているようだ。というか、都合のいいように適当に採用したらしい。体に優しいお茶を淹れたり、体に優しい枕で寝たり、その優しさは主に己の身体に向けられているような気もするが、それはそれで良い。
 夜摩天という絶対者の命を勝手にアレンジするなんて、人間は本当に面白い。悪魔や妖怪のとる他者の命への反応は、拒否か服従しか有り得ない。弱い生き物はあざとく生きるものだが、それは卑屈と哂われるだけの汚点ではないのだろう。花々が狂い咲いた春以降、咲夜は益々余裕を深めている。

「――ん、これは……」

 彼方に思考を遣っていた空白、ナイフは軌道を変えていた。真円を描いていたナイフの群れは徐々に三つにズレはじめ、三分割された円弧の欠片はそれぞれ三方に放射されていく。

「お察しのとおりですわ」

 三ツ葉型放射能標識の如く世界を食い荒らす魔弾の雨は、紛うことなきナイトメア。闇すら塗り潰す紅い原典とは異なるが、窓から差し込む月光を蒼く切り裂くその様は、確かに私自身の愛情表現(スペルカード)だった。

「魔理沙の受け売りかしら? 本人の前で堂々と、なんて大胆になったわね咲夜」
「優しく生きることにしているのですわ」

 自分に優しすぎる。あの閻魔、説教のセンスが無いのではないか。
 まあ咲夜にならスペルの一枚二枚真似されても全く構わない。寧ろペアルックのようなむず痒い高揚感がなくもない。よし、以降この弾幕を『全日本ナイトメア』と呼称することに大決定。後で一緒にカボチャを抱えて美鈴の部屋で弾けよう。

「で、この悪夢の行き着く先は何処なのかしら」
「あちらになりますわ」

 バラ撒かれたナイフ達は壁の間際で反転加速。喜色満面でアツアツのグラタンを頬張る美鈴目指して収束していく。

「相応しい場所ね。フラン、こっちへいらっしゃい」
「はーい」

 セメチコリア(小粒のスープ用パスタ)を美鈴の鼻に詰める作業に夢中になっていたフランを呼び寄せる。咲夜のことだ。傍にフランがいても問題のない投射なのだろうが、念には念を。下手な避け方をした美鈴の頭突きでも飛んできたら目も当てられないことになる。無論美鈴が。

「グラタンサイコーッ! ~~~~ッラヴ&チィィィズ!」

 約束された惨劇そっちのけでコブシを突き上げグラタンを口に運ぶ美鈴。十分な溜めをもって繰り出されるチーズへの熱い想いは勝ち鬨と共に響き渡り、彼女の鼻腔と未来を見守る皆の目頭を熱くして止まない。

「ッかぁぁ……パセリと奏でるハーモニーが堪ら……はっ? 死の匂い!?」

 よくもまあ、そんな状態の鼻で嗅ぎつけたものだが遅すぎる。紅魔館では割とその辺に転がっている致死性のイベントが美鈴を主演に幕を上げる。

「くわっ、なんかスゴい量のナイフが!」
「日々の成果を見せなさい、美鈴」

 微かに意外な咲夜の声。成果を見せろということは、これは皆が思うような公開処刑の一種ではない訳だ。まあそれはそうだろう。瀟洒な彼女のこと、折角のパーティを刃傷沙汰で台無しにするなんて真似はしない筈だ。

「さ、咲夜さん……また無茶を……」
「喋っている暇はないのではなくて?」
「くぉぉ……ええい、神よ! ラブ&チーズ!」

 愛と乳製品。
 そんなワケの分からん祝詞で加護を求められる神も良い迷惑だろうが、それで力が湧くなら叫びたいだけ叫べば良い。

「へえ。チーズも莫迦に出来ないわね」

 咲夜の声に応えてか、チーズへの愛慕に支えられてか、美鈴は次々とナイフを捌いていく。迫る悪夢を紙一重で見切り、かわし、叩き落し、指で歯で止め蹴り飛ばす。かわし切れないナイフは丈夫な額で受けることによりダメージを軽減していた。
 弾かれたナイフは地に落ちる前に消失していく。咲夜が時を止め回収しているのだろう。本来ならば再射出されるそれらだが、今回その気配はない。これは弾幕ごっことは違うのだ。
 しかし回収されたナイフは何処にいくのだろうか。

「スカートの中かしら」

 今度頭を突っ込んでみよう。

 ともあれ今はショータイム。秒にも満たない零以下の刹那、致死量の万倍を以って飛来する悪夢を美鈴は見事凌ぎきっていた。

「くはぁ……ど、どうです咲夜さん」

 がっくりと膝をつく美鈴。だがそれを無様と誰が哂えよう。並みの妖魔では視認すら難しい魔弾の雨を良くぞ凌いだ。咲夜にとっては奇術の一つでも、それを完璧に捌くことは困難を極める。実際、美鈴も数百の打ち洩らしを額でフォローしていたが、それは許容範囲の内だろう。寧ろダンシングフラワーのように高速でパンを振る美鈴の首の動きは、見る者を大変に和ませた。

「よくやったわ美鈴。70点ね」
「も、もう少し高くても……」
「ダメよ」

 涼しげに笑い、ぴん、とグラスを弾く咲夜。途端、美鈴の服はバラバラに解け散る。

「うあっ! ちょ、まっ――」

 慌てふためく美鈴と、四人組みの外人のように喝采を上げるメイド達。

「――って? おや?」

 期待空しく次の瞬間、美鈴の服は元通りになっていた。咲夜が時を戻したのだろう。
 ほっと安堵の息をつく美鈴と2コマ目に戻っていく外人達。

「とりあえずこんなところでしょうか。お嬢様、少しはお楽しみいただけましたか」

 スカートの端を摘み上げ、優雅にお辞儀をする咲夜。

「そうね。悪くない見世物だったわ。90点」
「お嬢様……」

「美鈴は70点」
「にゅう……」

 と言うものの点数など戯言に過ぎない。二人の業は想像以上の出来だった。借り物のスペルを完全に掌握し、有象無象の犇くホールで何物も傷つけることなく緻密な弾幕を構成する咲夜に、突如訪れた死亡フラグをその肉体のみで跳ね除けた美鈴。二人とも紅魔館にやってきた頃とは比べ物にならない程成長していた。パーティを騒がせた詫びにサービスカットを織り込む芸人魂も心憎い。

「これはそろそろ良いかもしれないわね」
「?」

 小首を傾げるフラン、小悪魔、咲夜に美鈴。一人だけ右側に首を曲げる美鈴のアンバランスさが気に入ったので、ヴァンピリッシュナイトで彼女の周りを飛び回ってみる。

「ほああ! 羽が! バチバチ羽が当たってますお嬢様! 痛いですから!」
「当ててるのよ。このC級ポッキーゲーマーが。調和を尊べとあれほど言ったでしょうに」
「ぽ、ポッキーゲームのことは言わない約束でしょう!」
「口答え?」
「ヒニャァ」


 咲夜を迎えて初めてのハロウィンの日。
 まだ幼い咲夜にいの一番にポッキーゲームを挑み、ペットボトルロケットみたいな勢いで唇を奪いにいって、喉の奥をポッキーで痛打してのたうち回った美鈴。懲りずに再戦を申し込んだ美鈴にナイフを咥えて応じた咲夜は、その瞬間メイド長の座を約束されていたと言ってもいいだろう。

 無論、その日を境に週の標語が『乾坤一擲』から『恋は焦らず』に変わり、『ポッキー』というボクシング映画の撮影が有志により開始されたことは言うまでもない。
 ちなみにこの映画、精肉工場でバイトをするうだつの上がらないボクサーがポッキーゲームに活路を見出し、製菓工場に転職することで笑顔を取り戻すという、努力や根性どころかボクシングすら出てこない、スポーツキネマの異端児である。雑踏でお菓子を頬張りながら恋人の名を叫ぶ主人公の切ない姿は、観客の胸にコメントし難い感動を焼き付けたという。


「全く。折角上がった株をどうして二秒でフイにするのかしらね」
「それも彼女の生きる道よ。レミィ」

 間違っても同行したくない道だがそのとおりかもしれない。

「パチェは博識ね」
「ありがとう。それよりもレミィ、そろそろ良いかもしれない、というのはもしかして……」

 微かに緊張した面持ちのパチェ。

「ええ。もしかしなくてもアレよ」
「そう……」

 ぐっ、とパチェは下唇を噛む。

「どうしたのパチェ? 怖気づいたのかしら」
「……まさか」

 不適に笑うパチェ。

「十数年ぶりの本領発揮よ。武者震いを止めるだけで一苦労。――今日は久々に生粋の魔女になれるのだから。知識も日陰も擲った、只ひたすらに魔を往く女に」
「素晴らしい。全く素晴らしいわ、パチュリー・ノーレッジ。それぞ魔女。それこそヴワルの徒。それでこそ我が友よ」

 大仰に翼を広げ、れみりあう~☆のポーズをとる。ジト目が頼もしいパチェと頷きあい、やっぱりれみりあう~☆のポーズをとる。

「なんか二人で盛り上がってますけど、一体何なんですか、アレって?」

 擦過傷など二秒で快癒する美鈴はまたも右向きに首を傾げる。

「……いちいち空気を読まない門番ね。まあいいわ。貴方も咲夜も初体験だし、少々の野暮は大目に見るわ」

「はあ、それでお嬢様、私達は何を体験するのですか?」
「良い質問ね咲夜」

「同じコト聞きましたが」

 全くもってエアリードの足りない門番だ。

「フランも良くお聞きなさい。今回は貴方も参加するのよ」
「わーい」

 美鈴の鼻にセメチコリアを次々と再装填していたフランが諸手を上げて駆け寄ってくる。底を知らぬ美鈴の鼻も恐ろしいが、それを前に微塵も躊躇わないフランも末恐ろしい。

「フラン。大きく育ちなさい」
「うんっ」

 屈託のない返事。良い子だ。ヨシヨシと頭を撫でてやる。

「それじゃ皆、聞きなさい」

 くるりとフランを傍らに侍らせシャンデリアをバックに両腕を広げる。決して大きくはない荘厳な声にホールのメイドは静まり返る。

「プログラムを変更するわ。――夜を紅く染めるわよ」

 広げた両手はそのままに、手首だけを内に傾ける。

「ワルツを止めなさい。奏者はBWV11昇天祭オラトリオ、アッコンバニャートを逆弾きで。1から14、16から97のシャンデリアの灯を落としなさい。窓辺の者は月を、そうでない者はこの私を注視なさい」

 ゆっくりと告げる。

「今宵、ハロウィンはドルイドのサウィンに還る。古き時を思い起こせ。万象の裏を悉く搾取せよ」

「――」

 メイド達の目に狂気が灯る。手にしたフォークは当然のようにナイフに変わっていた。

 そう。それで良い。今宵はサウィン。古代ケルトの屠殺祭――

「で、結局何を?」
「ご近所を回ってお菓子を貰ってくるのよ」

 咲夜の質問に簡潔に答える。

「はあ。トリックオアトリートですか」
「そうね」
「ですがこの文言は基督教に喰われてからのものでは?」
「細かいこと言わないの」

 メッ、と人差し指を立てて嗜める。肩を竦め目を瞑る咲夜が愛らしい。

「いっ、いいなっ! いいなっ!」

 それを見て唾を飛ばす美鈴。

「わがまま言わないの」

 メッ、と槍を投げて嗜める。項垂れた美鈴の肩を叩く咲夜が愛らしい。

「ねえお姉さま。お菓子をくれるの?」
「ええそうよ。気の良い隣人達がね」
「わあ……」

 期待に目を輝かせるフラン。
 地下から出てまだ数ヶ月。今は外に出るだけでも楽しい頃だ。加えて甘いお菓子が貰えるとなれば、胸が弾むのも無理はない。

「それでは予定されていたパーティ2部のポッキーゲームと舞踏祭は中止ということですね、お嬢様」
「ええ。今年は嘗ての流儀でいくわ。さっきの貴方達の成長ぶりを見て確信したわ。――イケる、とね」
「はあ。別に成長しなくともお菓子くらい貰えるのでは? というか寧ろ成長してない方が貰えるかと」
「甘いわ咲夜」

 ぴ、と指差すと咲夜はびくりと目を閉じる。先端恐怖症(アイクモフォビア)のナイフ使い。そのギャップが堪らない。

「いっ、いいなっ! いいなっ!」

 ぴ、と咲夜を指差す美鈴。瞬間、広がる例の世界。血液嗜好症(ヘマトフィリア)の召使い。容赦のなさが堪らない。

「学ばない門番ね」
「それも彼女の生きる道」

 パチェは全く動じない。咲夜と美鈴の苛烈なスキンシップには慣れたものだった。

「とにかく甘いの。紅魔のトリートは底なしよ。お菓子は300円以内なんてケチなことは言わない。粉っぽいソウルケーキから老後の積立金まで、貰える物は根こそぎ頂くのが紅魔流。可処分所得の1200%まではトリートに含まれるわね。存分に取り立てて頂戴」
「無邪気さのカケラもありませんね」
「交渉次第よ。それに必ずしも根こそぎ貰ってくる必要はない。ただちょっと常識から逸脱した大胆さで童心に返れば良いのよ」

 返るまでもなくオールデイズ童心フル稼働の者もいるが。

「それでは少々ハジけただけの、ごく普通のハロウィンだということですか」
「ええ。……けどそれじゃ面白くないでしょう」

 それを聞いてクスリとパチェが笑う。悪友は話が早くて良い。

「なので、今回は新たな訪問先を六軒追加するわ。……ああ、いいわ。貴方達メイドは昔のとおりにやって頂戴。新たなターゲットは私とフラン、パチェ、小悪魔、咲夜に美鈴が向かうから」

 メイド達に広がったざわめきが止まる。その視線は我等六人に集中し、微かな動揺は好奇心へと変わっていった。

「追加する狩場は博麗神社、永遠亭、白玉楼、霧雨邸、香霖堂、八雲家の六ヶ所。私達六人はこれらをターゲットとするわ」
「また可愛げのないエリアばかりを集めたわね」

 楽しげにパチェ。

「けどリポジトリ・オブ・閑古鳥を除けば、何処もお菓子の一つ二つ快くくれるんじゃないですかね?」

 そういう美鈴は頭の後ろで腕を組み、気楽そうな風である。

 甘すぎる。忘れてもらっては困る。今宵は悪魔の降誕祭。人妖問わず、デッドエンドなどその辺にゴロゴロしているのだ。

「取立ての少なかった者には当然ペナルティがあるわ」
「くあ……」
「更に私達は一人一軒担当するという訳じゃない。六人は六軒全て廻るのよ。無論各人バラバラに。博麗神社からマヨヒガまで、マルボルジェに等しき悪鬼羅刹の家々を貴方達には制覇してもらう。この意味は分かるわね?」

 追加された新ルールにメイド達が震え上がる。

 そう。これは六種の魔窟を巡るアリギエーリの彷徨だ。魔窟に住まうはそれぞれ純度180%を誇る天然の修羅ども。どいつもこいつも花見だの居留守だのの為に、極めて気軽に弾幕をブッ放す自動発火式のネズミ花火だ。各屋にはそれらがピンで、あるいは群れを成して潜んでいる。我等六人はそんな虎口に立ち向かい、マシュマロや年金手帳を奪取してこなければならないのだ。

「一軒目の徴収が済んだ者は順次、次の狩場へと向かってもらうわ」

 そして真に恐ろしいのはこれが単身突入の総当り戦だということだ。神社で茶菓子を奪ったら、その足でマヨヒガの珍品を奪取しに向かわねばならないのである。

 僅かな例外を除き、いかなネズミ花火といえどなけなしの人情くらいは持ち合わせている。『トリックオアトリート』と、屈託のない笑顔でドアを叩けば菓子折りの一つ二つは差し出してくれるだろう。だが悪魔の来訪は一度では済まない。各屋には洩れなく六名全員が訪れるのだ。
 他愛のない子供の遊び。年に一度の無邪気な夜。一人目の来訪は笑って迎えてくれるだろう。少々無茶な要求もお祭り故の我が侭と目を瞑ってくれるであろう。だがトリックオアトリートは一度きりでは終わらない。加減を知らない取立人は都合六回現れる。しかも訪れるのは皆同じ館の住人である。纏めてやってくれば一度で済む出費なのだ。態々小分けにやって来る理由は悪意以外に思いつくまい。
 最初は気分良く菓子を振舞っていた者も、二度目のノックで首を傾げ、三度目では笑顔も凍り、四度五度目で殺意が芽生え、六度目のもてなしは悪即斬(ラストワード)に相違あるまい。

「後に廻る家ほど取り立ては難しいということですか――つまり、実力行使に出ざるを得なくなる、と」

 訪れる時間が遅れれば遅れるほど、自分以外の五名が訪問済みである可能性は高くなる。

「そうね。楽に取り立てられる家を後回しにするのがセオリーかもね」

 難攻不落の要塞拳母も一度目の客から追い返すことはそうそうあるまい。逆に経済的、精神的に余裕を持ち、おおらかな気持ちを常に忘れず笑顔の絶えない接客を心掛ける気前の良い家ならば、六人目の闖入者にも豪華なお土産を用意してくれることだろう。尤も、そんな奥ゆかしいターミネーターが幻想郷に存在するかどうかは疑わしいところであるが。

「けれども、いくら彼女らが常識に背を向けたエゴ美人でも、無い袖は振れないわ。一度目の取立人が全財産を根こそぎ持ち去ってしまえば、後に残るは絞り粕。ファーストアタッカーの一人勝ちね」

 優しい抜け殻にタカっても意味は無い。

「なるほど。手堅くディフェンスの厚いところから攻めて後半を楽にするか、ラストは捨てる気持ちでスタートダッシュに命を懸けるか。性格が出ますね」

 顎に手を当て咲夜が頷く。
 流石は咲夜。場合によっては一対他の弾幕戦にもなりかねない紙一重の徴収訪問を前に、臆するところは微塵もない。全く以って頼もしい悪魔の狗である。

「一人目から既に袖を振れない人もいそうですけどね」

 美鈴にも怖気づいた様子はない。
 紅魔が生んだ外弁慶の極みが彼女である。館外で暴れる分には全く問題のない実力とライフスタイルを持っている。

「ねえお姉さま。意地悪な人にはキュッとしていいの?」
「程ほどにね。けどフランならきっと平気よ。上目遣いでおねだりするだけで皆財産を寄進してくるわ」

 少なくとも紅魔館の住人ならそうする。当然だろう。無垢な瞳を前に首を横に振る益体無しに、我が城に足を踏み入れる資格は無い。この世知辛い世の中だ。せめて少女愛くらいは忘れずに生きていきたいものである。

「あの、お嬢様。私、何故かウッカリ面子に加えられているんですけども、……良いんですか?」

 おずおずと小悪魔が尋ねてくる。

「何? まさか尻尾を巻く気?」

 確かに相手は界隈きっての無法者揃いだ。右の頬を張られた瞬間ラストワードをブッ放すようなピカレスクどもに、中ボスに過ぎない小悪魔が単身切り込んでいくというのは少々酷な話ではある――が、

 小悪魔は涼しげに口元を上げる。

「いえ、まさか。私がハロウィンを楽しんでいる間、パチュリー様のお守りがなくなりますよ、という確認をしたまでです」

 これだ。これが紅魔に生きる者だ。ネームレスとはいえ彼女も立派な悪たる魔。イタズラと恐喝の二択に胸躍らない筈が無いのだ。
 パワーだけが道ではない。拳で敵わなければバットを持ち出せばよいだけの事だ。バットが無ければマスコミにコネのある親戚でもよい。要は気概だ。己が為に、魔が為に、スカーレットの従者たる誇りを持って滾る欲望を貫けば、无寿国への約束手形は手に入ったも同然だ。

「結構。小悪魔、見事徴収額第一位の座に輝いた暁には、その働きに相応しい名を与えてあげるわ」
「ありがとうございますお嬢様。自機昇格目指して邁進します」

 誰もそこまで言っていないが構わない。夢は大きいに越したことはない。胸とは違うのである。

「……お嬢様、なぜ此方を見るのです?」
「いいのよ咲夜。今日も瀟洒よ」

 カップまで主の好みに合わせるとは。メイドの鑑と言えよう。

「やっぱりBに限るわね」
「し、Cはありますよっ?」
「血の話よ」
「うぅ……」

 頬を染めて俯く咲夜を十分に堪能したところでパチェと向き合う。

「……ということよ、パチェ。今日は保護者抜きでの一人旅。気ままに優雅に煩悩を満たして頂戴」
「レミィ、これは煩悩ではなく知識欲よ。万象に亘る私の興味は貪欲なまでに知を求めるの。ただちょっと範囲が広すぎるからジャンルごとに片付けているのだけれど、ここ百年は風俗情報にかかりっきりね」

 ぐっと胸を張る百歳児。自らの人生を簡潔に語った練達の魔女は満足げに紅茶を啜った。

「流石ね。そんな後ろ暗い百年を誇らしげに披露出来るなんて。凡夫にはとても真似できない潔さだわ」

 パチェはその辺の魔法使いとは格が違う。彼女こそは知識と日陰が生んだ生粋の引篭り。自らの生き様に疑いを持つことなどありはしない。伊達に我が家のエンゲル係数を上げている訳ではないのである。

「よしてレミィ。照れるじゃないの」

 見ろこのブ厚い大胸筋。嫌味や皮肉が彼女の心臓に届くことなどあり得ない。だがそれでこそ紅魔の居候だ。こんな彼女だからこそ私は館に置く気になったのだから。

「けどレミィ。貴方にしては随分と寛大なルールじゃない。……もう一縛りあるのでしょう?」

 見ろこの鋭い洞察力。パチェは何でもお見通しだ。

「やっぱりパチェは分かっているわね」
「当然でしょう。どう見てもカモな家が一軒あるじゃないの」

 チッと舌打ちする音がどこかから。やはり狙う者がいたか。

「そうね。確かにあそこは財産と住人の力量に大きな隔たりがあるわ。ローリスクハイリターンとくれば誰もがそこで稼ごうとするわね」

 一軒目に選ぶ者も多いだろう。が、ゾロゾロ群れをなして襲撃したのでは興醒めもいいところ。数を笠に着た強奪など紅魔のハロウィンではない。

 逆にハイリスクローリターンなのが博麗神社であるが、そちらは寧ろゲームを面白くする。あの冬の日本海のような厳しい環境から如何にして収益を上げてくるか。際どいネゴが楽しめるだろう。

「なので、各人の一軒目は運命に決めて貰うことにするわ」

 翼を広げ一薙ぎし、生のパスタ満載の銀のボウルを舞い上げる。目を瞑りボウルの端を指先で強く弾き、それが軽く鋭い音を響かせ一回転したところで咲夜がボウルの動きを止めた。

「理解が早くて助かるわ」
「それはもう」

 吸血鬼の指で弾かれたボウルの動きは吸血鬼にしか止められない。その辺の妖怪では指どころか腕がヘシ折れてしまう。かといって私やフランが腕力に任せて回転を止めると中身のパスタが全部ブチ撒けられてしまうことになる。静かに事を為すには時を止めるのが一番なのだ。

「さて、それぞれの運命を告げなさい」

 五名を見渡す。それぞれの手元には、ボウルの回転に放り出されたパスタが一粒乗っていた。

「ステリーネ(星)ですわ」
「それじゃ咲夜はまず魔理沙の家に向かって頂戴」
「畏まりました」

「メッツァルーナ(半月)よ」
「パチェは永遠亭ね」
「永遠亭なら満月じゃないの?」
「満月はウチに決まってるでしょ」

「ファルファーレ(蝶)です」
「小悪魔は白玉楼から廻ること」
「はい」

「お姉さま。私、ラビオリ(役立たず)」
「そう。それじゃフランはまず香霖堂に行きなさい」
「うん」
「あのメガネは弾幕にも幼女の笑顔にも弱い筈。フラン、頑張りなさい」
「うんっ」

「エライ勢いでカンパニオーレ(田舎者)が飛んできましたよ。お嬢様」
「美鈴は博麗神社。いいわね」
「霊夢は田舎者と言うよりは無法者ですけど」
「無法者且つ田舎者であり、加えて粗忽者なのよ。霧がうっとおしい、なんて理由で人様の館にアポ無しでカッ飛んでくるようじゃレディとはとても言えないわ」

 パスタはそれぞれ別種が行き渡った。運命を操る程度の能力があるとこういう時に便利で良い。尤も、必要以上に行使すると人生がつまらなくなるのだが。
 確率の糸は手付かずで。程ほどが良いのである。

「それじゃ私は余った八雲家ね」

 ボウルからエスカルゴ(カタツムリ)を摘まみ出す。

「各自初陣は確認したわね」

 五人の顔を見渡す。

「ちょっと待ってレミィ」

 と、パチェがひょいと手を上げた。

「なに?」
「六箇所巡るのは構わないのだけれど、白玉楼はちょっと遠すぎるんじゃない?」
「ん、そう?」

 青黒い空の果てを思い出しながら、ざっと距離を弾き出す。

「ああ……そうね。少しきついかもね。刻限は夜明けだし」

 私やフラン、咲夜にとっては全く問題のない距離だが、機動力に欠ける美鈴や小悪魔、ちょっと疲れるとすぐに茶店のキリマンジャロで一息入れようとするパチェには少々厳しい距離かもしれない。

「それじゃ白玉楼はカットしましょう。代わりに慧音の家をノミネートするから小悪魔はまずこちらに向かいなさい」

 ぴん、と人差し指でルオータ(車輪)を弾いて小悪魔に放る。

「はい。分かりました」

「皆もよ。あの辺鄙な武家屋敷は廻らなくていいわ。慧音の家なら冥府の庭より遥かに近いし、皆も此方をルートに加えなさい」

 そもそも白玉楼の菓子は全て幽々子の腹の中だろう。別にトリートは菓子に限ったものではないが、セオリーが欠片も顔を見せないというのも少々寂しい。下手に冥府で石榴なんぞ出されても面倒なだけだし、今回は白玉楼は外してしまって構わないだろう。
 幽々子と妖夢は命拾いをしたのだ。せいぜい変わらぬ穏やかな夜を過ごすといいだろう。

「さ、改めて準備はいいわね? 二軒目以降は好きに廻って構わないわ。オイシイところを先に廻るか後に残すか、地理的に近いところから潰していくか。全て自由よ」
「分かったわレミィ」

 パチェの返事に満足し、くるりと五人に背を向ける。

「刻限は夜明けまで。貴方達メイドにはそれ以外の縛りはないわ。さあ、往きなさい」

 六人を囲んでいたメイド達に告げる。朗々たる残響がホールから消えると同時、メイド達は恭しく一礼すると風のように館を飛び出していく。

「教育の賜物ね、咲夜」

 一瞬で消えた輪に感心する。

「ありがとうございます。ですが、彼女らもまた紅魔の眷属。純粋に夜を楽しみたい気持ちもあるのでしょう」

 気が逸る故の疾風か。それも良い。ハロウィンの夜は魔の為にあるのだから。

「さてそれじゃ私達も出るわよ。ジャックオゥランタンの御旗の下に、ショコラや株券をゲットする聖なる夜の巡廻に」

 再度五人に向き直る。

「畏まりました」
「いつでもいけるわ」
「了解です」
「はーい」
「分かりました」

 息が合ってるんだか合ってないんだか微妙なチームワークを見せて、五人は空に散開していく。
 その姿は私を少なからず満足させた。

「本当に、良く分かっているじゃない」

 彼女らのうち誰一人、収穫物だのペナルティだのに言及することはなかった。今夜においてそれらが付属品に過ぎないことを良く理解しているからだ。

 ハロウィンの醍醐味はネゴである。村一つ消し飛ぶようなトリックと、豊かな老後が手を振って去っていくトリートの二丁拳銃を手足の如く操って、最上の結末へと交渉の階段を華麗に駆け上がっていくのがハロウィンだ。子供っぽさを前面に押し出し保護欲を刺激するも良し、巧みな話術で絡めとるも良し。それを潔しとしない不器用なシャイガールは弾幕片手に窓から飛び込んでいっても良い。
 要は過程なのだ。言ってしまえば簒奪品に興味などない。そこに至るまでのクール且つクルードな駆け引きが紅魔の本能を満たすのだ。
 洗練された豪奢が基調の紅魔館。欲しいものなど館内に全て存在する。我らにとっては小判もタワシも価値は同じだ。ただそれを手に入れる際の心温まる交流に、狂おしい程に惹かれるのだ。

「さて、そろそろ私も往こうかしらね」

 ばさりと翼を翻す。

「楽しませて貰うわよ」

 今宵はサウィン。一夜限りの魔の宴。今夜だけは、嘗ての悦びを思い出そう。

 
                                                               
 続く

世界一晴れやかな顔で道を踏み外すのが彼女達だと思うのです。
冬扇
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コメント



0.10800簡易評価
13.90名前が無い程度の能力削除
ようやく現れてくれたか…
俺はずっと待っていたんだ

後半にも期待。
15.無評価名前が無い程度の能力削除
誤植発見
×三分の一拍子のヴィニーズワルツが180BMPオーバーで鼓膜を突き抜ける
○三分の一拍子のヴィニーズワルツが180BPMオーバーで鼓膜を突き抜ける
Beat Per Minuteの略でBPMですよ
18.80削除
まさに魔女たちの宴w みんなにげてー!
21.90CODEX削除
笑顔で道を踏み外すって言うよりは、道なき道を突っ走るド外道振り…素敵だ。
22.無評価冬扇削除
誤植指摘ありがとうございます。

ビートマーピニッツって何だったんだろう。美味しそうですが。
23.90名前が無い程度の能力削除
期待するしかねえww
24.90名前が無い程度の能力削除
後半が楽しみでしかたない
31.100名前が無い程度の能力削除
高い文章力と奇抜なギャグセンス。あなたを待ってました。
35.100名前が無い程度の能力削除
めちゃくちゃ楽しそう。期待してます。
38.90名前が無い程度の能力削除
卓越したギャグセンスに脱帽しました
うらやましい
60.90名前が無い程度の能力削除
パスタの知識が凄い
71.7074削除
なんかかっこいい
72.90はむすた削除
スポーツキネマの異端児が凄すぎるw
87.80kt-21削除
冥府で石榴の件がなかなかに洒落てますわ。
わくわくしながら後半へダイブさせていただきますわ。
143.100名前が無い程度の能力削除
こいつは素敵な紅魔館だww
155.90名前が無い程度の能力削除
リポジトリオブ閑古鳥吹いたwwww
続き行って来ます
195.100名前が無い程度の能力削除
いちいちリアクションが面白いwww
198.100名前が無い程度の能力削除
……文章に殺される!!
199.100名前が無い程度の能力削除
こいつら楽しそうだなぁw
224.100名前が無い程度の能力削除
文章なのに漫画のようなテンポの良さと勢い、そして端々から滲み出る広範な知識と笑いのセンス…
大いに笑わせてもらいました。続けて後半行ってきます。

外人四コマの妖精など、文を見た瞬間にイメージが脳に凝固致し候
238.90名前が無い程度の能力削除
台詞回しが素晴らしくカッコいいです。