Coolier - 新生・東方創想話

永夜 終わる時(七)

2006/06/19 02:57:32
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※警告

一部、暴力的且つ読みづらい部分があります。
そういう物が苦手な方はスルー推奨です。

















「くっ・・・・・・うぅっ」

理不尽なまでの熱気と殺気の余波を受け、倒れ伏していた慧音の意識は漸く現実に引き戻された。月の昇り具合から時間の流れを読む・・・・・どうやらそれなりに時間が経ってしまっているようである。
だが妹紅と輝夜の殺し合いは大抵長丁場になる事が多い。二人とも(特に妹紅が)一歩も退かず、それこそボロボロになるまでぶつかり合うものだから、お互い戦い続ける事ができなくなる頃には空が白んできていたという事もしばしばなのだ。
だから、今夜もまだ決着は付いていないはずだった。それ以前にこの熱気が妹紅の健在を端的に示している。
妹紅はまだ無事らしいという事を実感し、ヨロヨロと身を起こした慧音は安堵のあまりその場に座り込んでしまった。


「妹紅殿・・・まったく、思いきり打ってくれる」

鳩尾をさすりながら慧音は誰にともなく愚痴り始めていた。
吐き気の類を感じる間もなく意識を失ってしまったのはある意味幸せだったのかも知れない。
妖しげな薬を嗅がされて眠りに落ちてしまうよりはまだマシだったのかも知れない。
しかし、それにしても痛いものは痛い。それに鳩尾だけでなく首筋も痛い。
しかしやったのは他の誰でもなく妹紅・・・このやるせなさは一体どうしたらいいものか分からず、ただただ慧音はため息をつくばかりだった。

ふと周りを見回すと、一本のリボンが落ちていた。
紅白に彩られたそのリボンの柄を慧音は知っている。そして、意識を完全に失う寸前に見た妹紅の行動を覚えている。
自分の髪から一本ほどき、そっと自分の手に握らせて・・・・・・


「冗談・・・じゃない・・・・・ぞ」


リボンを握り締め、重そうに体を起こして慧音が呟く。

「『帰ってきたら返してもらう』だって・・・?・・・・・・嘘だ、帰ってくる気などないくせに・・・・・・!」


霊気の迸りによって大気が歪む。陽炎をばら撒きつつ、屋根を蹴って飛び上がる。

「妹紅殿・・・これを、これを・・・・・・自分の忘れ形見にしようとしているくせにッ!」


生い茂る竹より頭一つ高く飛び出て、月の光を総身に浴びて慧音は一つ吼えた。竹林が邪魔をしないためか、妖気と熱気の流れがはっきり感じ取れる。その強さ、方角、そして距離さえも肌で感じ取れる。ならばやるべき事は一つ、妹紅の元へ一秒でも早く参じる事。

「今からこれを返しに行く・・・だから妹紅殿、それまでどうにか・・・・・・・・」



「ッ!!?」

背後に薄ら寒い物を感じ、咄嗟に身を横へ薙いだ。
それまでいた地点は青と赤の妖弾で灼かれ、間一髪で慧音のスカートの裾をほんの少し焦がすに留まる。
後ろを向けばそこには、羽根を生やした小人・・・妖精がそこにいた。

「雑魚か・・・・・・悪いがお前に構っている暇などない、邪魔をする―――」


ギラリ。


「―――な!?」



妖精の背後の闇に、蠢く紅がいくつか見えた。明滅するそれは明らかに妖弾の類ではなく、違和感を感じて慧音は一歩退く。今すぐにでも妹紅の元へ急ぎたい慧音だったが、目の前の不気味な気配を野放しにできなかったのだ。

「・・・・・・くそっ、今夜は満月だったか・・・!」

慧音の感じた違和感はすぐにその場に顕在した。明滅した光は、妖精や妖怪の狂気に彩られた瞳だったのだ。
満月の光であらゆる者は狂気に駆られる。そしてそれは、妖精や下位の妖怪といった単純な精神の持ち主ほどその力に毒されやすくなる。そして多くの場合、理性の箍が外れて凶暴になったり隠された力に目覚める事も多々あるのだ。
どこにでもいるような妖精一匹ならば、慧音にとってはどうという事もない相手だろう。だがそれが群れを成し、引き出された力を手加減なしに振るってきたらどうなるだろう?

無益な殺生は好まない、妹紅殿の元へ急ぐのみ、などと奇麗事が通じるような状況ではない事は慧音も分かっていた。










「・・・・・・かぁーーーーぐぅーーーーーやぁーーーーーー?」

姿を見せない仇敵に対し、妹紅は苛立ちを覚えていた。
『この程度』でどうにかなってしまうような輝夜でない事は、千年の長きに渡り弾幕を交わし続けてきた妹紅が一番よく知っている。例え土中に埋まってしまったとしても、すかさず弾幕で反撃の烽火を上げてくる・・・そのはずだったのに。

「まぁさか本当に死んじゃったんじゃないでしょうねー!?」


鳳凰の翼が羽先に至るまで大きく開いた。
妹紅の背丈よりも長く広がった業火をゆったり羽ばたかせ、ゆっくりゆっくりと高度を下げていく。

「輝夜ぁッ!今度は聞こえるでしょう!?隠れてないで出てきなさいよ!」

妹紅の金切り声は、気流が激しく渦巻く焼け野原の中でも良く通って響いた。
土中の生物でさえも驚いて出てきそうなほどの音量と威圧感で、妹紅は叫ぶ。

「出て来たくないって言うんなら・・・・・今すぐ出たくなるようにしてやろうかァ!?」



・・・・・・・・・・・・・・



轟音の中に輝夜の声はない。
もしかしたら自分をおちょくっているのかも知れない・・・
妹紅をどこか見下した風ですらある輝夜ならやりかねないというか、彼女なら絶対やりそうだ。
そう考えて待てば待つほど焦燥は募り、妹紅の心の昂りは程なく怒りに置き換わる。


「・・・・・・ちぃぃッ!」

たまらず右の掌から炎を一閃。炎は揺らめく紅蓮から光り輝く白に凝縮され、眼下の地面を真一文字に切り裂いた。
瞬間、地中から灼熱の噴水が湧いて出る。膨大な熱を受けて地盤が溶岩と化したのだ。
それでも妹紅は止まらない。灼熱に耐えかねて出て来るであろう輝夜を見逃すまいと目を見開き、第二、第三の炎を矢継ぎ早に撃ち出して地面を薙ぐ。新たにできた溝は竹林を更に紅く染め、手当たり次第に全てを灼いていく。

「さあッ!火傷したくなかったら早く出てくることね!」

不老不死の肉体とはいえ熱いものは熱いし、呼吸ができなければ息苦しくなる。だから火傷や酸欠地獄を嫌うなら外に出てくるしかないのだが、妹紅の追撃は勿論こういう効果『のみ』を狙っての事。追撃だけで並の人妖は焼け死んでしまいそうな火力だが、それでも妹紅は容赦をしない。
輝夜の不死身性については、妹紅は奇妙ながらも絶対の信頼を置いているのだ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「―――くッ!?」

紅く染まった闇を穿ち、妹紅に迫る一筋の光。
足元ばかりを気にする妹紅に対し、『それ』はほぼ同じ高さからやってきた。咄嗟に身を翻し、鳳凰の翼を盾にして直撃を防ぐ・・・・・・炎は光を受け止め、ほんのわずかな歪みと引き換えに光を虚空に弾き散らした。
目に一瞬焼きついた射線を頼りに光の出所を辿ると、やはりというかそこには輝夜の姿があった。

ほんの少し、服を焦がして。


「はっ、やっとお目覚め?まだ夜は永いんだから、こんなに早く寝てもらっちゃ困るのよね」
「・・・・・・少しばかり考え事をしてたの。あなたは喧しくてたまらないわ」
「いいじゃない。どうせその内、何も考えられないようになるんだからさ」

焼け焦げた服の向こう側に見える輝夜の素肌は然しながら白く、傷らしい傷もない。
鳳凰の直撃を受け、そのまま地に叩きつけられた筈なのに、だ。
だが妹紅は驚かない。薄布のように霊気や妖気を纏って一時的な結界を作る事など、幻想郷に住む者にとっては造作のない事なのだ。火の玉を掌の上でチラつかせ、妹も負けじと口を開いた。

「・・・あんたがなかなか出てこないもんだからさ、私も色々と考えてたわ。あんたは『この程度』で死ぬようなタマだったかな、って」
「あら、奇遇。私も同じような事・・・・というか同じ言葉を考えてたの」

顔には穏やかな微笑を浮かべたまま、目だけは笑っていない。
昔からそうだ。輝夜という少女は、妹紅の前ではこういう顔しか見せたことがない。
故に彼女の意を見抜くことは難しく、言葉が一つ紡がれるたびに妹紅は身構えていなければならないのだ。
そして妹紅と同じように妖力の塊を掌に浮かべ、妖しくも穏やかな微笑で輝夜は続ける。

「私を殺すと自信満々になっているあなたの根拠・・・ひょっとして『その程度』だったのかしら、って。確かに今までよりは少しばかり強いみたいだけど、まだまだ全然届かない。屋根に上って月を求めるようなものよ」
「・・・フン、『あの程度』で不満だっていうならもっと食らわせてやるわよ」
「それには及ばないわ・・・ところで今度は木にでも登るのかしら」
「あんたも喧しいな・・・言ったでしょ!私はコイツで話す!」



高らかな叫びと共に掌の上の炎が弾け、まるで妹紅から輝夜の方へ引力が向いているかのように火の粉が降り注ぐ。しかし腕を払えば儚く散ってしまうような軟弱な火ではない。妹紅の炎は、その大小に拘らず岩を溶かし肉を焼き尽くす灼熱なのだ。

「・・・・・・やっぱり、あなたは本当に学習しない子」

輝夜の視線が冷たく、鋭い物に変わる。その瞬間、輝夜の手から光が伸びた。

「ッ!?」
「その程度の弾幕、もはや私自らが動く事もないでしょう」

よく見れば、光の源は輝夜ではなかった。輝夜が差し出した掌の上の光塊・・・一匹の使い魔が、彼女に成り代わり妖弾を放ったのだ。妖弾は五色の光を放ち舌のように長く長く伸び、火の粉を舐め取るように悉く飲み込んで妹紅を狙って進む。
さっき自分を狙った一撃とは比べ物にならない威力・・・直感を信じ、紙一重の回避を嫌って妹紅は大きく横に動いて避ける。光の束が完全に彼方まで飛び去ったのを目の端で見送り、改めて輝夜を見据えると彼女は相変わらず冷笑を浮かべていた。

「逆鱗に触れられた龍の怒り・・・身をもって味わうがいいわ、妹紅」
「『龍の頸の玉』か・・・・・・ハハッ、無茶言うわね輝夜ぁ!今更五色の弾ごときにやられる私じゃぁないッ!」
「・・・そう、じゃあもう一つ増やしたら気に入っていただけるのかしら」
「な・・・に・・・・!?」
「見せてあげようと言ってるのよ。私の本気を、少しだけね・・・」

妹紅の表情からわずかに勢いが引いたのを輝夜は見逃さなかった。一気にその余裕を奪わんと、もう片方の掌にも妖気を込め同じ色、同じ大きさの妖弾を生成する。生成された妖弾――使い魔は意志を与えられたように輝夜の手を離れ、もう一つの使い魔と共に輝夜の周囲を回る衛星と化した。

「使い魔が・・・・・・二つ!?」
「『ブリリアントドラゴンバレッタ』・・・・・・あなたがどうのた打ち回るか、見ものね」
「――くっ」
「さあ、始めましょう。あなたが望んでいた『殺し合い』を・・・・・・」


クックッと笑う輝夜の顔は、もはや少女の物ではなかった。
莫大な妖力を撒き散らし、その瞳は人外の如く大きく見開かれている。
輝夜への復讐に狂う妹紅ですら、初めて見るその顔を見て気を削がれつつあった。

やっぱりコイツは人間じゃない。
人間の姿をしているけど、結局は月の狂気が溢れる中で生まれ育った怪物なのだ、と・・・










「くそぉっ・・・・・・!」

慧音は焦っていた。
なんでもない相手の筈なのに、ただその数が多いというだけの筈なのに。
能力の差を補って余りあるほどの圧倒的な『数』が慧音を焦らせ、苦しめていた。

「これじゃキリがないっ・・・!」

叩いても叩いても、人外の群れは雲霞の如く正気を保った慧音に迫り来る。
もし慧音の弾幕に妹紅ほどの火力があったなら、心の中に後味の悪い物を残しつつも目の前の者全てを一瞬のうちに焼き払う事ができただろう。
だが慧音にそこまでの力はない。あったとして、それを行使する覚悟がない。
結局は大群を撒く志向で逃げ回りつつ、たまに迫って来る者を死なない程度に撃ち落とすのが関の山だ。


「!つぅっ・・・・!」

しかし敵は容赦しない。
外れ弾、誤爆もなんのその。本能と狂気のままに慧音を追い回し、思い思いに妖弾を放つ。
一匹あたり一発の弾でも百匹なら百発、千匹なら千発。
ならば、それら全てが千の弾を放ったなら・・・?
何の法則も秩序もない弾幕はかえって慧音の目と判断を鈍らせ、ごく普通に数の暴力で慧音を傷つけていく。
しかし一発あたりの火力が雀の涙程度に貧弱なのが救いで、文字通りの弾幕に晒されながらも慧音はまだ交戦するだけの体力を保つ事ができていた。


「・・・くそっ、くそっ、このままでは妹紅殿が・・・・・・」

歯を食いしばって仰ぎ見る満月はまるで慧音の血を吸ったように赤く、彼女を捉えんとする目の如くギラギラと輝いている。狭い竹林の中では思うように飛べず距離を離す事ができなかった。かといって竹林上空まで出た今は、弾幕を遮ってくれる物が何もない。狂気をばら撒く満月の光もまた然り。
見回せば慧音はすっかり囲まれてしまい、大きな輪を成す妖怪たちの姿が月の光を受け赤く浮かび上がっていた。


「く・・・妹紅殿っ・・・・・・・・・!」










満月の光。

狂気の光。

目覚めるは内なる魂の怒り。

歴史喰いもまた然り。



正気が徒となるのなら、いっそ狂ってしまえばいい。

内に眠る怒りと迸りを、全て見せつけてやればいい。



今ここで。今すぐに。

有象無象どもに。ありのままを全部。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・










「まったく・・・・満月の夜とこいつらの力という物を見縊っていたよ」

輪の中に一人立つ慧音の顔に焦りはなかった。全てを悟り、時の行く末を見切り、達観した者の顔だ。
慧音は今の自分にできる最善の策を瞬時に思いつき、それによる結果まで詳細な予測を立てていたのだ。それゆえの達観した顔だ。今や汗一粒、眉間の皺一つも見受けられない。
だがどんな顔をしようと妖怪たちは容赦をしない。この満月の下、狂気に染まらぬ者を全て障害物と断じ排除する。慧音が狂気の前に跪かぬのならこの場においては異質な存在、敵でしかないのだ。


「やはり私も同じ土俵に立たなければ駄目なんだな・・・だがまあ、これで終わりだ」

そして、この期に及んで敵の行動が同調の兆しを見せ始めていた。それぞれが思い思いに、それこそ的外れな方向に弾を撃っていた事もあった妖怪たちが、一斉に力を蓄え始めたのだ。誰かが指揮を執っているわけでもなく、何かが合図になったわけでもない。まるでそうする事が当然であるかのように足並みが整えられる。
そしてその力が向く先もまた一点に――慧音の方へ、正確に向いていた。



「・・・・・無駄だよ、お前たち」

不敵な笑みすら浮かべて慧音が呟く。
自分を囲む無数の妖怪のうち、果たしてどれほどが慧音の言葉を解しているかは分からない。
だが、理解していようがいまいが慧音にはそれほど重要ではなかった。今の彼女には言葉などより遥かに雄弁な言葉ができたのだし、そもそも呟き・独り言なのだから誰かに聞いてもらいたいわけでもない。
彼女の昂る心ゆえ、自然に口から漏れた心の声だったのだ。

と、慧音を取り囲む輪が白く輝きだした。声なき号令に合わせ、光が一斉に慧音に向けて殺到する。
例え弱い攻撃でも一斉に受ければ慧音とて無事では済まないだろう。だが自慢の長い髪をざわざわと靡かせ、慧音は慌てず騒がず余裕の笑みを浮かべ・・・・・・





光が弾けた。弾という弾が矢の如く慧音に向かい収束し、光がデタラメにぶつかり合い月夜を真っ白に染め上げる。
光は連鎖的に光を生み、遂には何が燃えたのか煙さえ吹き上がり、外から慧音の様子は見て取れない。
しかしこれで終わった、正気を保つ者はいなくなった・・・・・慧音の消滅および再起不能を確信したか、一瞬ではあったが統制の取れた動きをしていた妖怪たちに乱れが生じ、少しずつ輪が解けはじめる。
そうしたら今夜はもうある意味平和なもの、狂気に捉われた者だけが跋扈する夜が戻ってくる・・・・・・


はずだった。



「待て」
『!?』

静かな声と共に光が走った。光の槍は妖怪たちの間をすり抜け、しかしその余波に中てられその一点から輪が急速に崩れだす。
煙もだんだん引き、その向こうには妖怪たちにとってまだ記憶に新しい姿・・・五体満足の慧音がいた。

「あれくらいで殺した気になってもらっては困るんだ・・・『歴史喰い』は伊達ではないんだぞ?」

しかし美しい銀髪は風か爆風かで乱れ放題に乱れ、同じく風に靡く尻尾と牛を思わせる角。
そして何より、全身から吹き出る獣のような殺気。今、目の前にいるのは自分たちが攻撃したのとは似て全く非なる者・・・・・・これこそが月の光を受けて狂気を自ら引き出した時の慧音の姿。その変貌ぶりは、例え言葉を理解しない程度の妖怪でも気付かないわけがなかった。


「今までさんざんいいように嬲られてきたんだ、今度は私の番だろう?」

チリチリと周囲の大気を焦げつかせ、慧音の掌に妖気が収束される。
普段の慧音では到底出し得ないであろう圧倒的な火力。今なら妹紅とも肩を並べられるかも知れない。
その火力でもって周囲の妖怪たちに襲い掛かったならば、月がほんの少し傾くまでの間に全て肉塊と化しているだろう・・・否、肉塊で済むのならまだ手ぬるい方なのかも知れない。
理不尽なまでに暴力的な『力』は、言葉を解せぬ手合いにとっては百の言葉よりも雄弁な言葉となる。それゆえに妖怪たちは気圧され、一斉攻撃どころか妖弾の一発も続かない始末。
今や、慧音を取り囲む絶望的な壁はただの障害物になりかけていた。

「さぁて・・・・・ 死 に た い 奴 か ら 前 に 出 ろ 」


ただでさえ痛いほどに感じる殺気が、ここに来て急激に膨らんだ。これ以上戦うのなら自分も容赦しないぞ、という慧音からの警告が半分。
そしてもう半分は生きて還れると思うなよ、という明確な殺意だ。野生に近い者ほど殺気や気配には敏感になる。今の慧音の殺気は首筋に刃を当てられているような物で、生きた心地などするはずもない。

『・・・・・・・・・・・・!』

そうなれば必然的に退かざるを得ない。赤い輪は徐々に霧散し、思い思いに飛んで彼方に消え、或いは眼下の竹林に姿を隠し、瞬く間に慧音の周囲からは敵が完全に消え去ってしまった。
後に残るはいつも通りの静寂な夜、そして大きな満月。その下で戦いの余韻を感じ取り、ふぅっと一つ息を吐く。



「・・・フン、雑魚が・・・・・・・・・っと、今はそれどころではないか」

長く逃げ続けてきたせいで庵から随分遠くに離れてしまったらしい。
しかし妹紅も輝夜も未だ健在のようで、その証拠に二人の妖気と熱気の余波を強く感じる。
今の自分にできる事は二人の戦いを、妹紅の暴走じみた行動を止める事。
それこそこの夜を喰らい尽くしてもいい、場合によっては妹紅を傷つける事も致し方ない。
とにかく、手遅れになる前に自分が動かなければならないのだ。

「まだ死んでくれるなよ、妹紅殿・・・」


角と尻尾の生えた、いわゆるワーハクタクの姿のまま虚空を蹴って満月の下を駆け出す慧音。
人型の時よりも遥かに強い妖気を撒き散らし、弾丸のように真っ直ぐ突き進む。
速い。身が軽い。遠くまでよく見える。
今夜は気取らず、最初からこの姿でいればよかったか・・・ほんのわずかな後悔の念が浮かぶが、そんな瑣末な物は鉄のように固い意志と強い義務感、そして獣化ゆえの高揚心によってそれ以上付け入る隙は全くなかった。










光と炎が乱舞する。
光は真っ直ぐ、しかし迅く、妹紅を撃ち落とさんと狙いを定めて飛んでいく。
炎は遅く、しかし変幻自在で、五色の弾幕の間を掻い潜り輝夜の首を狙わんと大気を焦がす。

そして光と炎がぶつかり合う。
光が炎を丸呑みにし、辛うじて難を逃れた炎の一片があったとしても光の第二波に呑まれて消える。
しかし光もまた消耗著しく、妹紅の所に辿り着く頃にはその勢いはすっかり失われ、あっけなく握り潰される・・・

そんな、一進一退ですらない膠着した撃ち合いが延々と続いていた。



「あはははは!どうしたの妹紅、私を殺すんじゃなかったの!?」
「こっ・・・・こいつ、ウザいっ・・・・・・!」
「『あの』火の鳥なら使い魔を消す事もできるでしょうねぇ・・・やってみたらどう?」
「だ、黙れっ!このバカ輝夜っ・・・・」
「まあ、そんな余裕があればの話だけどね」

悔しい事に、全くもって輝夜の言う通りだった。
物理的な力すら持つようになる番の鳳凰を放てば確かに輝夜の弾幕を使い魔ごとまとめて吹き飛ばせるかも知れない。しかしその為には十分な間が必要なのだ。普段の殺し合いのレベルなら輝夜も余裕を見せて律儀に待ってくれるのだが、今夜に限っては待ってくれるとは到底思えない。力の集中に入った途端、あの大火力によって蜂の巣か肉片にされてしまうだろう。
こうなると妹紅は輝夜の攻撃を相殺しつつ万に一つのまぐれ当たりを期待するしかないのだが、小さく砕けた炎では輝夜の死どころかちょっとしたダメージにも程遠い。
焦りが集中の乱れを招き、ひいては弾幕にまで及んでしまう。いけないと思いつつも弾着は少しずつバラけていき、妹紅の所まで光が届くようになってくる。
膠着した殺し合いに、ほんのわずかな揺らぎが生じ始めていた。


「・・・思ったより大した事なかったわね、妹紅。あなたの事だからもっとギラギラしてるかと思ったけど」
「な・・・に・・・・・・?」
「私を完全に殺すなどという大言、実行できないのなら軽々しく言わない事ね・・・今まで通り、そこそこに殺し殺される程度の関係でよかったんじゃないの?その方が私も楽だし、長く楽しめるし」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「こんなのに入れ揚げてるなんて、あのワーハクタクも変わり者よねぇ」










プ チ ッ










「・・・・・ざ・・・・・・・・・・んな」
「・・・ん?何か?」
「慧音を馬鹿にするなっ・・・・ふざけんじゃねぇっ・・・・・・・」
「ふざけてなんかいないわ。ただ、私にはあの子が変わり者に見えたってだけで・・・」























「ッふざけんじゃねええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「!」
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


妹紅の中で何かが切れた。大切な物が踏み躙られた。
きっかけは輝夜の一言だった。ただそれだけで妹紅の理性は細切れになり、頭の中が真っ白になっていく。
輝夜の攻撃をモロに受けてはいけない、今の自分の火力では決定打を与えられない・・・・・・もう、そんな事はどうでもいい。とにかく目の前の相手を叩きのめさなくては自分の気が済まないし、慧音の名誉を傷つけたままになってしまう。それだけだ。
『それだけ』の想いで妹紅の目は刃の如く鋭くなり、身を包む炎も一回り大きくなる。
そして狂気すら超えた怒りを以って妹紅は真っ直ぐ、ただ真っ直ぐ、輝夜だけを睨み飛び掛って行った。



「フフ・・・単純な子」

しかし、怒り狂う妹紅を前にして輝夜のこの余裕。
我を失った者はともすれば手に負えない暴れ馬となるが、一方で呆気なく手玉に取る事もでき得る。
そして、輝夜は妹紅を自らの掌の上で踊らせられるという自信があったのだ。
妹紅の性格、彼女の普段の実力などを鑑みれば十分可能だろうと推測して・・・

「馬鹿はあなただったわね・・・消えなさい」

と、輝夜の周りを回っていた二匹の使い魔が、妹紅の進攻を阻むように並んで立ちはだかった。
撃ち出される光は妹紅だけを真っ直ぐに狙うが、勿論怒り狂っているとはいえ単純な軌道の射撃にわざわざ当たってやるような妹紅ではない。紙一重で直撃を避け、しかし視線は輝夜から外さず、次々と迫り来る光の槍を乗り越えて輝夜を目指す。



「だあああああああっ!!」
「!?」

そして無造作に伸びる妹紅の白い腕。
しかし、彼女が掴んだのは輝夜の襟元ではなかった。

「・・・ぐうっ、うぅぅぅぅぅっ・・・・・・・・!」
「っ・・・・・何をやるかと思えば・・・」

妹紅の両手には使い魔が握られていた。歯を食いしばり、腕を強張らせて光の塊を必死に押さえ込む。
しかし使い魔は当然弾幕で抵抗するので、妹紅はそれを零距離で耐えなければならないのだ。
指の隙間からは妖力の欠片が絶え間なく吹き出て、使い魔の抵抗の激しさを物語っている。しかし怯む余裕すら妹紅にはなく、今の力で駄目ならばとますます強く歯を食いしばる。

「ぬぐっ!んぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ・・・・・・・・・・・・!」
「使い魔を握り潰すつもり?でも残念ね、他の者が召喚するのならいざ知らず、それは『私の』使い魔なのよ?そうそう簡単に潰れてはくれない」
「それがっ・・・・どうしたぁぁっ!?」
「使い魔を潰すか手を潰されるか・・・ほらほら、得意の根性の出し所よ、妹紅」
「ばっ・・・馬鹿にするなぁぁぁっ!!」


クスクスと笑みを浮かべる輝夜。もうその顔からは殺意が薄れ始めているように見えた。
このまま妹紅が使い魔を握り潰してしまったとしても、既に両手はボロボロでまともに弾幕すら張れないだろう。
仮に妹紅が両手を失ったとしたら尚更だ。どちらにしろ自分が本気を出すまでもない。
だから頭上の満月など眺めつつ、輝夜は妹紅がどれほどの粘りを見せるのかを楽しみに傍観を決め込もうとしていた。





ピキッ





「え・・・?」

しかし、一度揺らぎ始めた均衡は簡単には治まらず、どちらに揺らぐかも分からない。
輝夜は氷にひびが入るような細い音を妹紅の怨嗟混じりの唸り声の中に聞いたような気がした。

「も、妹紅・・・・・無駄な事よ、諦めなさ・・・・・・・・」
「諦めるもんかぁぁぁっ・・・・・・・・輝夜ッ!」
「ひッ!?」

全てを射殺してしまいそうな視線の妹紅と目が合い、再び輝夜の顔に恐怖の色がわずかながら滲み出てきた。
自分の両手は空いているのだから、妹紅への追撃はできるはず・・・なのに、妹紅の気迫がそれを許さない。金縛りにかかったように輝夜の体は硬直し、視線すら逸らせてもらえない。そんな輝夜を尻目に、妹紅はさらに力を込める。
彼女の両手に押し込まれた二つの使い魔は、握り潰されているからなのか弾の撃ちすぎで消耗しているからなのか、だいぶ小さくなっていた。きっと、妹紅の両掌は黒く焼け焦げているとまでは行かなくとも赤く腫れ上がっているはずだ。その痛みの激しさは想像に難くない。
しかしそんな痛みなど意に介している暇はないとでも言わんばかりに妹紅は退こうとしない。もしかしたら激痛の限界を超えて痛みを感じなくなっているのかも知れない。
『殺し合い』と言いつつも我が身を案じた戦い方をする輝夜には到底理解できない領域だった。


ひび割れの音は更に続き、妹紅の掌の隙間から漏れる光も弱々しくなってきていた。
そこで少しばかりの余裕が生まれたか、頭だけ上げて妹紅は輝夜をもう一度睨みつける。

「人間を・・・・・人間を!人間をぉぉっ!」
「く・・・・・・・・!?」

「人間をナメるなああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」










パキィィィィィィンッ・・・・・・・・・・・・・・・










それは果たして、物言わぬ使い魔の断末魔だったのだろうか。
薄い硝子が砕け散るような甲高い音と共に、妹紅の両手は完全に握りこまれた。
戦闘の時に召喚される使い魔という物は、小さな魂魄に妖力を載せて光球状にした不安定な物だ。つまり、核を成す魂魄が何らかの方法で破壊されてしまえばその残骸(?)は意志も形も持たぬただの妖力になってしまうという事なのだ。
そしてその妖気も虚空に拡散し、後には両手にありったけの霊気と炎気を込めた妹紅が宙に浮かんでいた。

「はぁ・・・・はぁ・・・・ど、どうだっ・・・・・!」
「ば、馬鹿な・・・・・・・・私の使い魔を握り潰すなんて・・・・・」
「・・・・・・・輝夜ッ!」
「・・・っ!?」

狼狽する輝夜に掌が向けられた。
掌からは粒のような炎が生まれ、泡のように一気に膨らみ、やがて形を研ぎ澄まし鳥の姿に変わっていく。
輝夜はこの炎の形を知っている。今まで数え切れないくらい見てきた、今夜も既に見ている、妹紅だけが操る最も雄々しい炎の形。

「・・・くらえぇっ!鳳・翼・天・翔ッ!!」



ひと羽ばたきで届いてしまいそうな距離から不死鳥が飛び立つ。
不死鳥は獲物に喰らいつくかのように頭から輝夜に突っ込み、触れるや否や巨大な炎となって弾けた。
先ほどまでの余裕を見せていた輝夜なら、たとえ至近距離からでもこの不死鳥を迎撃するなり回避するなりできただろう。だが今の輝夜にそんな余裕は全くなく、あっけなく炎に呑み込まれてしまう。

「うぁっ・・・・ぐ・・・・・・・・!」
「輝夜・・・・・かぐやぁぁッ!!」
「・・・・・・・・・・・!?」

紅蓮の炎の向こうから人影が迫ってくるのが見えた。妹紅だ。炎の翼をばたつかせて妹紅が迫り来るのがかすかに見える。悲鳴か気合の声の一つでも上げてやりたい所だが、燃え盛る炎に空気を奪われ呼吸すらままならない。灰の中の空気を搾り出して呻き声を上げるのが精一杯、この辺りは不死かどうかなど全く関係ないのだろう。
そして妹紅が近づくにつれてその姿もだんだん大きくなり、怒りの表情や体勢もはっきり見て取れるようになってきた。大きく開かれた両手は猛禽の爪を思わせ、掴むも引っ掻くも思いのままだろう。
恐らく行動を起こすのは右手・・・その証拠に右腕は大きく振りかぶられ、その掌には炎の塊が・・・・・・



炎。



そう。忘れてはいけない。
鳳凰は常に、雌雄一対なのだ。



「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ・・・・・・・・・凰・華・喧・濫ッ!!」
「・・・・!・・・・・・!!・・・・・・・・・」





まさに輝夜の輝夜の目の前で、不死鳥は再び番になった。
輝夜は今一度巨大な火球となり、焼け野原となった竹林に落ち不毛の地を完膚なきまでに焼き尽くす。


「がっ・・・・・・・」

地面に叩きつけられ、焦熱地獄から開放されたところで漸く輝夜の体に空気が取り込まれた。
呼吸を奪われやや薄らいだ意識の中で思う事は、今や妹紅に対する恐怖。しかし自らの能力の一端を真っ向から打ち破られ、これだけまともに一撃(二撃だが)を受けてそのまま退いてしまっては、天地に名を轟かせた月の姫の名が廃るというものだ。
これほどまでに全てをかなぐり捨てて妹紅が向かってきた事などあっただろうか・・・・・不これは死の身を得た妹紅と初めて相見えた時の彼女の気迫に似ているかも知れない。その気迫は千年という時の流れの中で次第に薄まっていき、しかし今夜それがあの時のままに戻った。しかも今の妹紅は弾幕、霊気、炎気を自在に操り戦うことができる。よりタチが悪い。
・・・・・・しかし、今はとりあえずこのクレーターから脱出しない事には話にならない。
先ほどは妹紅のわずかな隙をついて逃げ出す事ができたが、今度の妹紅がそれを許すとは思えない。
体は痛むし息もまだ苦しいが、まだ妖気の蓄えは十分ある。妹紅ともまだ殺り合える。


埋まった腕を力ずくで引き抜いてクレーターから脱出、全身の埃を簡単に払う・・・自慢の黒髪もだいぶ汚れてしまったようで、梳いても梳いても砂が落ちる。

「ちょっと許せないわね・・・・・」

この代償は妹紅の髪で払わせる事にしよう。地についてしまいそうなくらい長い銀髪を思い切り穢してやろう。
髪と顔は女の命、その内一つを踏みにじられたのだから、目には目をという奴だ。
妹紅へのちょっとした復讐を考えるだけで、かすかに芽生えた恐怖が消えていくのがよく分かる。鎮まったはずの殺意が再び頭をもたげてきたのがよく分かる。さっきは少々油断してしまったがまだ大丈夫、次はどんな弾幕を使ってやろうかしら・・・などと考えつつ押し殺した笑いで空を見上げ・・・・・・・・・





「だあああああああああああああああああっ!!」
「えっ・・・!?・・・・・ぐぅっ!」

見上げた瞬間、何かが空から降ってきた・・・いや、『何か』などと回りくどい表現は必要ない。妹紅がぶつかってきたに決まっている。
一瞬の出来事だったので殴りかかってきたのか体当たりだったのかは分からないが、そんな事はどうでもいい。これから反撃してやろうと思っていた相手がわざわざ近づいてきてくれたのだ。こんな願ってもないチャンスはない。


少々よろめきながらも踏ん張って妹紅に立ち・・・・・向かえない。
軽々と起き上がるはずの体は、妹紅に圧し掛かられてピクリとも動かせなかった。


「うっ・・・・くっ・・・くそっ・・・・!」
「・・・やぁっと捕まえたよ、輝夜ぁ・・・・・・・・」
「降りなさい、妹紅ッ・・・」
「誰が降りるか、バカ」

両腕は動かせるが、圧し掛かられたままだと何をするにも背後の地面が邪魔をして満足に動かせない。
殴ろうとすれば腕を押さえられ、弾幕を張ろうとすれば撥ね退けられてしまうだろう。
この分だと妹紅が何をするにしても満足に遮る事もできないのではないか・・・自らの絶対的な不利を悟り、必死に暴れてみるものの妹紅はピクリとも動かない。

しっかり握り込まれた妹紅の右拳は怒りと力みで震えていた。
この状態なら避けられたり力を受け流されるという事はない。確実に当てる事ができる。
今までも数え切れないくらい殺し合ってきたが、この一撃は重みが違う。積もり積もった千年分の怒り、狂気、恨み、哀しみが篭っているのだ。


「私が今まで味わってきた苦しみっ・・・哀しみっ・・・怒りっ!輝夜っ!千年分だぁぁぁッ!」
「ひ・・・・・・!」





そして、拳は容赦なく振り下ろされた。
寸分違わぬ狙いで輝夜の顔面・・・頬に千年分の想いが叩きつけられ、輝夜の端正な顔が不自然に歪む。

「ご・・・・・・・・ぉッ」



殴った。妹紅が私を殴った。
今まで誰にも傷つけられた事がない顔を。
妹紅にさえ今まで一度も傷つけさせなかった顔を。
それを。こいつは。今。あっさり殴ってのけた・・・

殴られた所が痛い。
しかしそれより頭の中が揺れている。
しかしそれより何より・・・・・・怖い。妹紅が怖い。
こんな事を何度繰り返すのだろう。いつまで続けるつもりなのだろう。
たった一発だけでもこんなに痛いのに、たった一瞬だけでもこんなに怖いのに。

抵抗しなければ。
謝ったって許してくれる相手じゃない。
なら、できる限りの事をして妹紅から離れなければ。
しかしどうやって・・・・・・?
そしてもし離れなければ・・・・・・!?

私は・・・・・・!?



妹紅の鉄拳は、恐怖を呑み込んだかに見えた輝夜を激しく迷わせるほどの一撃だった。
威力云々の話ではない。『輝夜が』『生まれて初めて』『怨敵に顔を殴られた』、これが大きかったのだ。























「かぁぐやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」



そして、妹紅はもう止まらなかった。
組み敷いた輝夜に拳の雨を降らす、降らす、降らす。
弾幕より手っ取り早く、弾幕よりストレートに。己の想いを叩きつける格好の手段。抵抗も防御も回避も関係ない。
際限なく振り下ろされる拳のうち何発、何十発かは輝夜を捉えず空を切り、あるいは地に叩きつけられていた。
だがそれでも関係ない。皮がすりむけ、血が滲み出し、骨が軋もうとも、妹紅の勢いは止まらない。
そもそも妹紅自身に止める気などないし、理性でどうこうできる物でもないのだ。





「どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!私の怒り・・・こんなもんじゃ済まないんだッ!」
「・・・ッ・・・・!・・・・・・・・っ・・・~~~~~ッッ・・・・・・・」
「どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだッ!どうだぁッ・・・・・・!」



拳の嵐を巻き起こしながら、大きく見開かれた妹紅の目からは大粒の涙がこぼれ落ちていた。千年越しの想いをまだ不完全はあるが漸く遂げたという歪んだカタルシス、そして殴れば殴るほどかえって募る輝夜への怒り。
まだまだ、これくらいで済ませちゃいけない・・・邪魔さえ入らなかったら十年でも百年でも、それこそ千年でもいつまでも殴り続けてやる・・・・・・拳を振り上げるたびに想いは蓄積し、想いを載せて拳を精一杯振り下ろす。連撃の余波で周囲の地面は陥没すらし始めていたが、この幻想郷の地がどうなろうと妹紅にとっては全く瑣末な事なのであった。










痛い。
痛い。
痛い痛い痛い。

何これ。何なのこれ。
なぜ私がこんな目に・・・・・・
いや、なぜ妹紅が私をこんな目に・・・・・・

このままでは心が折れてしまう。
心が折れてしまうというのは、妹紅に屈してしまうという事。
そんなの絶対に嫌。死ぬより嫌。
仕返しをしないと気が済まない。

許さない。絶対許さない。
もう髪を穢す程度では済ませてやらない。
死んだ方がマシというくらいの絶望を。屈辱を。



確  実  に  味  わ  わ  せ  て  や  る










「う・・・・・・・ぐぅ・・・・・っ!」
「!?」

輝夜の右手が震えだした。
妹紅がそこに何らかの力を感じた時には既に遅し。気力を振り絞り、再び恐怖と迷いを乗り越え、妹紅に報いる為の一矢が放たれる。

「ちぃっ!」

光は妹紅の耳元をわずかに掠め、満月に呑まれ消えていった。
しかし逆転の契機としてはそれで十分、妹紅の体勢がわずかに崩れたのを見計らって輝夜も同じ方向に体重をかける。
不意に二人分の力がかかれば、妹紅といえども踏ん張りきれない。


「い・・・・今っ・・・・・・・!」
「あ、あぁっ!?くそっ・・・・・」

力の均衡が崩れ、わずかな間隙をすり抜けるように逃げる輝夜。逃がすまいと腕を伸ばす妹紅。
二人の体は惜しい所で行き違い、ついに輝夜は妹紅の拘束から逃れ、もう捕まるのは真っ平御免と一気に空へ舞い上がる。追って妹紅も空へ駆け上がり、何もなくなった荒野を眼下に控え二人は今再び振り出しに立っていた。





「はっ・・・はっ・・・ち、畜生ッ・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

攻め疲れで息も荒い妹紅、対して輝夜は落ち着き払ったもので、これではどちらが優位だったのか分からない。
その端正な顔についた傷もほんの少々といった程度で、これでは両拳を痛めた妹紅の方が重傷にも見えてくる。
しかし輝夜はその傷――最初に妹紅に殴られた左頬――をしきりに気にし続け、指で撫でるのを止めようとしない。
彼女がその気になれば、その部位の時間を大幅に進めて傷を癒す事ができるのに、だ。


「私ね・・・・・・生まれて初めて顔を殴られたわ。月にいた時から、地上に堕とされて、今の今までずっと、顔だけは傷つけられた事がなかったの・・・・・・」
「ハッ、随分なお嬢様だことで」
「それを破るのはあなただろうって薄々予想はしてたけどね・・・あんなにやられるなんて思ってもみなかった」
「・・・・・・私はまだまだ殴り足りないよ!」

もう何度目になるのか、背の鳳凰を奮い立たせて輝夜を威嚇する妹紅。
しかし輝夜は気付いていた。その炎が弱り始めていた事を。
そして輝夜は見抜いていた。彼女の言葉に虚勢が混じり始めていた事を。
流石に全開のまま戦い続ける事には無理があっただろうし、そこまでしても輝夜を殺すどころか心すら折れない事に焦りを感じていたのかも知れない。そんな小さな気付きが輝夜にとってほんの小さな余裕となり、その余裕が妹紅にとっては得体の知れない恐怖、不安感、焦りに結びついていた。


「あなたの拳はもう結構」
「ッ!?」
「あなたはやり過ぎたわ・・・・・・もう、お終いにしましょう」

輝夜の周囲の背景が歪んでいるように見えた。
陽炎と同じ理屈で妖気が光を屈折させている・・・・・のとはまた微妙に違う。よく分からないが、とにかく何かが不自然なのだ。何かの結界だ、と想像するのは難しい事ではない。ならば妹紅がやるべき事はたった一つ、『正面から突破する』それだけだ。

「ああ、そろそろ終わりにしよう・・・・・・でも輝夜、 ア ン タ が 終 わ り だ ッ ! 」


ほとんど不意討ちのような感覚で、妹紅は言葉の終わり際に弾幕を合わせてきた。
翼を広げた火の鳥、名こそ宣言しなかったが鳳翼天翔から凰華喧濫への連携でほぼ間違いない。
もう何度も撃ってきたのだから、そろそろ完全に見切られていてもおかしくはない。そうでなくても、この炎の連携だけでは輝夜に対する切り札とはなり得ない。
しかし、例え芸がないと言われようとも妹紅にはこれしかないのだ。この『火の鳥』から全ては始まる――
少なくとも、妹紅はそう信じて・・・・・・





「フフッ・・・・・・もう、あなたは何もできやしない」

迫り来る鳳凰を目前にして、輝夜は妖気すら収束させず一人笑みを浮かべていた。
慧音のワーハクタク化は、サイヤ人の大猿化よりはザーボンさんの変身に近いと思う(挨拶

使い魔の定義はどうでしょう。浮遊霊(妖属性?)に力を与えて半具現化なら大量召喚・大量消費にも対応できるだろうし
妹紅が握り潰せたのも納得がいくと思うのですが・・・妹紅だってあんなんだけど元は人間だし。使い魔にだって触れそう。

幻想郷で、妹紅ほどバイオレンスなキレ方が似合うキャラはいないと思いました。
例えばレミリアなんかとはキレ方が全然違う。レミリアは威圧で敵をねじ伏せるキレ方ですよね(ぉ





ところで、妹紅が輝夜にやらかした『アレ』について、やり過ぎだとは思ってませんので悪しからずm(_ _)m
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コメント



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>妹紅が輝夜にやらかした『アレ』について、やり過ぎだとは思ってません

逆に、描写が不足してる感がありました。
妹紅の猛り具合を示すなら、叫びの羅列だけでなく、やられた側の輝夜にも相応の描写が必要だったのではないかと。
直後にほぼ無傷に戻っていたのでは、二人の心情にリアリティが感じられません。
14.無評価0005削除
御意見ありがとうございます。

>輝夜にも相応の描写
一方的に殴られ続けているので反応を示す事すら許されない・・・
という意図から敢えて輝夜の描写は省く事にしたのですが、
確かにあれだとサンドバッグと変わりませんね。要反省です。

>ほぼ無傷
輝夜が無傷である事の理由は次回で説明をつける予定ですが、
それにしても妹紅の反応が乏しかったですね。これもまた反省します。