Coolier - 新生・東方創想話

魔法ょぅι゛ょまりしゃ 第六話

2004/01/06 01:56:57
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※オープニング

(ランランラン、ラーラ ランランラン、ラーラ)
(ランランラン、ラーラ ランランラン、ラーラ)

まほうのもりのおんなのコは(ランランラン、ラーラ)
とてもちいさな魔女っ子です(ランランラン、ラーラ)

おべんきょう げんそう郷
なりたいの
すてき魔法なおんなのコ
ぷきぷきぱよ

Ah さがしてアイテムさん
あれも これも
もっとしりたい

Ah してしてべんきょうさん
すごい ひみつ
いえないことぜんぶ

(ランランラン、ラーラ ランランラン、ラーラ)
(ランランラン、ラーラ ランランラン、ラーラ)





※第六話「別れの時! さよならさくやおねぇちゃん」


「おねぇ……ちゃん……」
紅く、冷たく伸びる遠大な赤絨毯。その先に立ちはだかる、二人のよく知る……いえ、知り過ぎている人物。
さくやおねぇちゃん……そう、紅魔館を預かるメイド長・十六夜咲夜が、今、二人の行く手を阻んでいます。
そのさくやが、攻撃を仕掛けてきた……その事に、酷くうろたえるまりしゃ達。……無理もありません。
「……私は、この館を預かる十六夜咲夜。ここから先へは、通さない」
「どうして……? おねぇちゃん、なんで!?」
さくやの眼が、月明かりの反射を受けて紅く、鈍く輝きます。
それは、いつも二人を見つめるあの優しい眼差しではありませんでした。
「こたえて、おねぇちゃん! だまってちゃわかんないよ!」
声を荒げ叫ぶまりしゃ。……少しだけ、さくやの表情が柔らかくなりました。が、目は笑っていません。
「あなた達……ここに何をしに来たの?」
「えっ……その、きりがでてきたから、なんとかしようと……」
「フフ、流石ね。確かに霧はこの館から出ているわ。……正確には、ここのお嬢様が出しているのだけれど」
「おじょうさま?」
「そうよ。そして私は、お嬢様にお仕えするメイド。だからここは、通せない。
 ……さぁ、早くお帰りなさい」
幾本ものペーパーナイフを構え、鋭く睨み付けるさくや。こんな様子のさくやを見るのは、生まれて初めてです。
悪戯をして怒られた時でも、どこかに優しさを漂わせていました。けれど、今のさくやは……
そしてまりしゃとれいむも、生まれて初めてさくやに逆らおうとしていました。
「……それは、できないよ」
「……どうして?」
「……きりがきえないと、おひさまがとどかないもん……。
 おひさまがとどかないと、むしさんも、おはなさんも、みんなしんじゃうんだもん!!」
まりしゃの脳裏によぎるのは、あの時の辛い思い出。もう、あんな思いはしたくない……
自分以外のものの為に頑張る……あの悲しい出来事が、まりしゃをまた一つ大きくしていました。
「れいむも……同じ?」
「わたしは……ずっとまりしゃと、いっしょだよ」
いつでも動き出せるように構える二人。膨れ上がる緊張感が、空間を満たしていきます。


「そう……分かったわ。ならば私を、倒していきなさい!」


ヒュン――――――――――
空気を切り裂く音を合図に、無数のナイフがさくやを中心に展開されました。
放たれたナイフが何も無い空気に反射して、限定された空間を跳ね回ります。
「わわわっ、あちこちはねかえってくるよ!」
「よくみてまりしゃちゃん! じぶんにむかってくるのだけよけるの!」
れいむの言う通りに、慌てず落ち着いてナイフの軌道を見ます。
……確かに、数こそ多いものの避ける必要のあるナイフは僅かでした。
「ん~……それっ!」
流石というか何というか、順応と学習能力の高さには目を見張るものがあります。
初めこそあたふたしていましたが、あっという間にさくやの攻撃を見切ってしまいました。
そんな二人の様子に、僅かに目を細めるさくや。しかし、すぐに先程までの厳しい顔に戻ってナイフを構え、投擲しました。
「甘い……油断は禁物よ!」
「うわっ……!」
ヒュッ――――― 一本のナイフがれいむ目掛けて直進してきます。
かろうじてお払い棒で叩き落しました、が……
「つ……っ!!」
ナイフが、れいむの腕に刺さります。さくやは、全く同じ軌道で、タイミングだけをずらしてナイフをもう一本放っていたのでした。
その為れいむからは死角となり、反応出来なかったのです。
自重で床に落ちるナイフ。刺し傷から、血が珠のように浮かんできました。
「最後まで気を抜いちゃ駄目よ」
「れいむちゃん、だいじょーぶ!?」
「う……あ……」
呆然と、滲み出る自分の血を見つめるれいむ。……おや、何だか様子が変ですね。
目の焦点はぼやけ、唇が小刻みに震えています。
「れいむちゃん、しっかりして!」
「やだ……もう、やだよ……こんなの……こんなのいやぁ……」
全身を震わせ、ポロポロと涙を零すれいむ。今まで、小さな体でいっぱいの無理をしてきていました。
どこかでさくやに甘えていた二人でしたが、流れる血が二人を無理矢理現実へと引き戻します。
我慢の糸が切れたのか、まりしゃも一緒に泣き始めました。
「うっ……ぐすっ……れいむちゃん、ないちゃだめだよぉ……」
「だって……だってぇ……こんなの、おかしいもん……ひっく……」
「わたしだって……おねぇちゃんとけんかするなんて、やだよぉ……すん……」
「こんなの、わたしのしってるおねぇちゃんじゃないもん……グスッ……」

 何時の間にか無数のナイフも消え失せ、静寂を取り戻した紅い廊下。
変わらず同じ姿勢で立ちはだかるさくやが、ゆっくりと、優しく語り掛けてきました。
「……まりしゃ、れいむ。二人は、ここに何をしに来たの?」
初めと同じ質問を、もう一度繰り返します。
「それは……きりを、けしたくて……」
「霧が消えないと、どうなるんだっけ?」
「おひさまがでなくて……むしさんもおはなさんも、しんじゃう……」
「その為には、どうしないといけない?」
「きりをだしてるひとのところまで、いかなきゃ……」
「でも私は、それを邪魔している。だから、二人は私をやっつけないと……」
「「やだよ!!!」」
まりしゃとれいむ、二人声を揃えて叫びます。あの優しいさくやおねぇちゃんと争う……
それは、二人には到底受け入れられない事でした。
しかし、さくやは変わらずゆっくりと話し続けます。
「優しいね、二人は……。でも、時には戦わなきゃいけない時もあるのよ」
「それでもやだ! おねぇちゃんとけんかするなんて、そんなことできないよ……!」
……始めて、さくやが笑顔を見せました。さっきとは違い、目も微笑んでいます。
いつもの、二人がよく知っているさくやでした。
そして、優しく、静かに二人を諭します。
「けんか、ね……。二人は、これをけんかだと思ってるの?」
「ちがう、の……?」
「お互いに思っている事がある……そして、どっちかが引っ込まないといけない……
 そんな時にこうして勝負する事は、けんかじゃないわ。
 『弾幕ごっこ』……って言うのよ」
「だんまく……ごっこ……?」
「そう。自分の力をめいっぱい出して、相手と戦う……それが弾幕ごっこ。
 ごっこだからけんかじゃないし、終わった後は相手と仲良くだってなれる」
「なかよく……? ともだちってこと……?」
「えぇ、そうよ。あなた達は霧を止めたい。私はそれを防ぎたい。
 ……だから、弾幕ごっこ」
「でも……でも、それでもわたしはっ……」
さくやの言葉に、ようやく泣き止む二人。しかし、それでもやはりさくやと戦う事は躊躇われました。
……その時でした。

「いい加減にしなさいっ!!!」

今までに聞いた事が無いさくやの声が、廊下に反響して響き渡ります。
それはさくやの、年長者として二人に教えられる、最後の言葉でした。
「いつまでもそうやって甘えないの!!」
「おね……ちゃん……?」
冷たく、厳しく、そして暖かいさくやの声が、まりしゃとれいむに降り注ぎます。
「二人は、どうしてもしたい事があるんでしょう?
 どうしても、霧を止めなきゃいけないんでしょう!?
 なのに、そうやっていつまでもぐずっててどうするの!」
「あ……うぁ……」
「二人がここで頑張らなきゃ、また虫さんもお花さんも死んじゃうんだよ!? それでもいいの!?」
「それは……やだ……」
「だったら!
 自分の足で立って、ちゃんと顔を上げて、前を見て! 力いっぱい戦って!!
 そして…………勝ちなさい!!!」

 再び静寂を取り戻す、紅魔館の廊下。そこに見える二つの小さな体と、立ちはだかるメイドの姿。
しかし、先程までのような迷いは、もうどこにもありませんでした。
吹っ切れた表情のまりしゃとれいむが、さくやを見遣ります。
「れいむちゃん……わたし、がんばるよ。それで、このさきへいくんだ!」
「うんっ!」
「(ふふ……こんな顔、出来る様になったんだ……。
 子供子供って思ってたけど……考え直さなきゃね)」
さくやの顔も、すっかりいつものさくやおねぇちゃんに戻っていました。
ナイフを構え、二人に向かって叫びます。
「さぁ、行くわよ! 二人の力……私に見せなさい!」
ビュンッ―――――さらに無数のナイフの束が、さくやと二人の間に広がります。
そこから、さらに沢山のナイフが四方八方に散っていき、空間を埋め尽くしていきます。
だけど、先程よりも危機的状況にあるにも関わらず、二人は笑っていました。
「まりしゃちゃん、いくよ!」
「うん、いいよ!」
お互いに目配せをすると、二人は一気にナイフの密集する真ん中に突っ込んで行きました。
「自分から突っ込んだ……!?」
「それっ、『むそーふいーん』!」
れいむは袖から一枚の符を取り出すと、『夢想封印』を発動させました。
それでナイフを一掃するつもりなのでしょうか? ……と思いきや、放たれた光はれいむ自身を包み込みます。
「んっ……考えたわね……!」
「とつげきー!!」
光を纏ったれいむが、さくやの元目掛けて突進していきます。
研ぎ澄まされたナイフも光に弾かれて、その一本もれいむには届きません。
みるみる内に、さくやとの距離を詰めていきます。
「やるじゃない……けどっ!」
「わっ!?」
渾身の力を込めたナイフが放たれ、夢想封印を貫通してれいむを襲います。
慌てて腕でガードしましたが、光を砕かれてバランスを崩し、落下していきます。……が。
「ちょっとびっくりしたけど……まだまだね」
「まだなのはこっちだ!」
「えっ!?」
落下するれいむの肩を跳び箱の様に飛び越えて、黒い人影がさくやの目前に現れます。
何とまりしゃは、突っ込んでいくれいむの背後にぴたりと張り付いていたのでした。
最初かられいむは囮……二人だからこそ出来た、一瞬の連係プレーです。
「これでかちだ、いっくぞー!」
「しまっ……!」
「ますたーすぱーく!!!」

 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォン――――――――――

まりしゃの手から放たれた光の帯が、ナイフを、さくやを包み込み、吹き飛ばします。
やがて光が拡散され消え失せ、そこには何も残っていませんでした。
絨毯の上で座り込むれいむの元に降り立ちます。
「れいむちゃん、だいじょーぶ? やったよ、わたしたち、かったよ!」
「わたしはだいじょーぶだけど……でも……」
きょろきょろと何かを探すれいむ。そして、遠くに倒れている人影を見つけ、慌てて駆け寄ります。
「おねぇちゃん……さくやおねぇちゃん!!」
走り出すれいむ。慌てて後を追うまりしゃ。仰向けに倒れているさくやの傍に駆け寄りました。

「おねぇちゃん、だいじょうぶ!?」
「あはは……おねぇちゃん、負けちゃった……」
力無く笑うさくや。それは余りにも、弱々しい声でした。
二人の脳裏をよぎる最悪の結末を、慌てて頭を振り掻き消します。
「おねぇちゃん、しっかりしてよ!」
「二人とも、ほんとに強くなったわ……もう、子供だなんて言っちゃ駄目だね……」
「そんなことない! わたしたち、まだこどもだよ!
 ……だから、そんなこといわないで!!」
涙を滲ませて叫ぶまりしゃとれいむ。
そんな二人を見て、震わせながら、懸命に両手を伸ばし二人の頬をその手で包み込みます。
……その手には、いつものあの温もりは、どこにもありませんでした。
「れいむ……あんまりいたずらとか、しちゃ駄目よ……?
 まりしゃを困らせたりしないようにね……」
「うん……うんっ……!」
「まりしゃ……泣き虫さん、早く治さないとね……?
 泣いてばっかりだと、れいむも悲しくなっちゃうから、ね……」
「もう、もうなかないからっ……げんきだしてよ、おねぇちゃん……!」
「おねぇちゃん、ちょっと疲れちゃった……。
 この先に行けば、お嬢様がいるわ。真っ直ぐだから、迷う事も無い……」
消え入りそうな声で、廊下の先を指差すさくや。その姿はあまりにも儚く、幻のようでした。
「いい……? お嬢様は、恐ろしい方よ……。
 駄目だと思ったら、すぐに逃げなさい……これは、おねぇちゃんとの約束ね……」
指切りをするまりしゃとれいむ、そしてさくや。さくやは、どんな時でも二人を心配しています。
……そう、最後の最後まで……。
「うん、いい子ね……これで私も、安心出来る……
 ……ちょっと、疲れちゃった……眠たいわ……
 二人とも……頑張って…………ね………………」

 ドサッ――――――――――――――――――――

上げられた手が力を失い、音を立てて床に落ちます。瞼を閉じ、その口から言葉を発せられる事は、もうありませんでした。
「おねぇちゃん……おねぇちゃんっ……!!」
「やだよ……こんなのって、やだよ……!!」

「「うぁ……あぁぁ……うわあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!」」

幼い二人の絶叫が、紅い廊下を悲しい色に染め上げていきました。





立ち上がり、前を見据えるまりしゃとれいむ。その眼差しには、もう涙はありませんでした。
「まりしゃちゃん……だいじょーぶ?」
「やくそくしたもん……もうなかないって……
 じぶんのあしでたって、ちゃんとかおをあげて、まえをみて、ちからいっぱいたたかって……
 そして…………かつって……!!」
「……うん、そうだね」
遥か廊下の先に、霧を出している張本人がいます。
もはや二人の瞳に映るのは、まだ見ぬ紅魔館の主……それだけでした。
「……さっ、いこう!」
「うん……ぜったい、きりをとめさせるんだから!」


地を蹴り、空を蹴って駆け出します。その脇に、さくやおねぇちゃんのナイフを一本ずつ、携えて―――――



-おしまい-




※次回予告

♪ランランラーンラーラー ランランラーンラーラー
   うふふ……今日もとっても紅い月……
   あら、あなたはだぁれ? 私? 私は……
   こんなに月も紅いから、本気で殺すわよ……?
次回、魔法ょぅι゛ょまりしゃ・第七話!
 「決戦! 亡きょぅι゛ょの為のセプテット」
                じかいもおたのしみにな!
                        ♪ランランラーンラーラー ランランラーンラーラー

-つづく-
あけましておめでとうございます。
ちゃんとハッピーエンドの予定でございますので。
marvs
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コメント



0.990簡易評価
1.50絵利華削除
おめでとうございまーす。
咲夜さんが格好いいですね。弾幕ごっこのところで笑ってしまった・・・
2.50マグ削除
GJ!東方だから安心と分かっているのに涙腺が緩みかけました