Coolier - 新生・東方創想話

過ぎ行く時を……

2006/05/19 07:41:19
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静かな朝。
そう呼ぶにはまだ日は昇り切っておらず、薄暗い空。
竹林に囲まれ、より薄暗い雰囲気が見て取れる古風な屋敷―――永遠亭。
そこに住まう者もまだ静かに寝静り、静寂と鳥の囀りだけが鳴り響く。

「……っくく」

そんな中、屋敷のとある一室の前に一つの影。
笑みに歪んだ口元から思わず笑みが零れてしまう。
少女と呼ぶに相応しいその容姿に、可愛らしくもあるピンク色のワンピースを身に着けているが。
その手には不釣合いな程の大きな木槌を肩に構えていた。

「……っく」

これから自分が行おうとしている事を頭の中で入念にチェックし、だがしかしまた笑みが零れる。
楽しそうな表情と一緒に、頭から生える対になった兎の耳も楽しそうに左右に揺れ動く。

と、急に表情を引き締め、襖に手を掛ける。
慎重に開けた襖からは一切の音は漏れず、少女一人が入れる位まで開け、そこで止まる。
部屋の中は薄暗く、それでも全く見えないと言う訳でもない。
少女の目の先には、部屋の中心に敷いてある敷き布団と、人一人分くらいに盛り上がっている掛け布団。
布団の中に居るこの部屋の主はまだ寝ているのか、襖が開いた事も気が付かずに微動だにしない。
少女は気が付かれないように気配を消し、音を立てない様に忍び足で目標へと近づく。
布団の前へと辿り着いた少女はそこで足を止め、その可愛らしい口を笑みで吊り上げた。
そして、その手に持った大きな木槌をおもむろに振り上げ。
布団から出る萎びた様な兎の耳の根元に目標を定め、木槌を―――



静まり返っていた永遠亭に、大きな轟音と地響きが鳴り響く。
その音に驚いた小鳥達が、一斉に空へと飛び立った。



◇   ◇   ◇



振り下ろされた木槌は畳に突き刺さり、周囲もそれを中心にへこんでいた。
少女はそれを確認すると満足そうに笑みを浮かべ、その木槌の下に居るであろう人物に声を掛けた。

「おはよー鈴仙、いい朝だよ!」

しかし、反応は返って来ない。
それは当たり前の事だ、いくら妖怪と言えど無防備な所にこの惨劇。
普通なら生きてるかどうかすら怪しい。
それを分かっているのかいないのか、少女は楽しそうに声を掛け続ける。

だがそんな陽気な少女の後頭部に、こつんと何かが当たる感触。
少女はピタッと話を止め、体を硬直させた。
後ろに誰が居るのか、頭に何を突き付けられているのか振り向かなくても分かってしまう。

「―――朝から騒音迷惑よ……てゐ」

後ろに立って居るのは、薄く紫がかった藤色の様な髪をした少女。
てゐと呼ばれた少女よりも幾分背が高い。
この部屋の主、鈴仙だった。
手にした黒塗りの拳銃をてゐの頭に突き付けている。
まだ眠いのか、それとも呆れ返っているのか、その赤い眼は半目でてゐの後ろ姿を睨んでいる。

「いやー、気分のいい朝だったもんでつい……ねぇ?」

ははは、と乾いた笑いを浮かべ、苦し紛れの言い訳とも取れない返事を返す。

「まだ暗いんだけど……?」

じとーっと、言い訳をするてゐをそれでも睨み続ける鈴仙。
その指はいつでも撃てる様、引き金に掛かっている。

「私だけならともかく、まだ皆寝てるんだから」

皆に迷惑でしょ、と叱りつける様に言う。

「まぁ、私にするのも駄目なんだけど……」

もはや諦め切っているのか「はぁ…」という溜息と共に突き付けられていた銃が下ろされる。
と、その一瞬を見逃さず、この窮地をどう脱しようかと策を巡っていたてゐの目が光る。

「勝機っ!」
「何が……?」

木槌を振りかぶり、振り向きざまにその側頭部に木槌を叩き込もうとしたてゐ。
しかし、その視界には黒い筒状の物が眼前に向けられていた。

「なっ!?」

驚くてゐには一切かまわず、引き金が引かれた。

静まり返っていた永遠亭に、乾いた銃声が鳴り響く。
その音に驚く小鳥達は―――もう既にその姿は無かった。



◇   ◇   ◇



「それで朝から騒がしかったのね」

朝食の準備をしていた鈴仙に、師匠である永琳が声を掛けた。
ここは永遠亭の中でも地位の高い四名が食事を取る部屋。
もともとは大広間で永遠亭に住む者全員で食事を取っていたのだが。
あまりにも騒がしいと言う事で、永遠亭の主である輝夜が別室で食事を取る様になり、永琳と鈴仙がその後
を追う様に移動した。
てゐは主にこちらで食事を取ってはいるが、稀に大広間のほうで食事する時もある。
とは言っても宴会やら何かの祝いともなると、やはり全員が大広間に揃う。

「あぁ……やっぱり聞こえましたか」

どこか申し訳なさそうに答え、食器を並べていく鈴仙。
今、この場には輝夜を除く三名が揃ってる。

「あれだけの騒ぎで気が付かないのは姫くらいのものよ」
「さすがにそれは無いんじゃ……」

そうは言ってみたが、今この場に居ないという事は気付かずに寝ていたか、また寝たかのどちらかだろう。
隣では額に赤く痕の付いたてゐが、う~と唸りつつも大人しく座っている。

「でも、良くそんな朝早くに起きてたわね?」
「あれだけ殺気立たれたら嫌でも気が付きますよ……」
「そうなの?いつもなら簡単にてゐの悪戯に引っかかっているのに」
「いや、いくら何でも今回のはやばいですって、死にますって」

今朝の話を面白そうに尋ねる永琳に、同じく今朝の事を思い出し疲れた様子の鈴仙。

「それにしても姫、遅いですね……まだ寝ているんでしょうか?」
「多分ね……てゐ、姫を起こして来て貰えないかしら?」

永琳に声を掛けられたてゐは一瞬、むっとした表情になるが、それでも文句も言わず立ち上がろうとした。
―――しかし、不意にその頭に手が置かれ、立ち上がる事を妨げられた。

「立ってるついでに私が行って来るから」

鈴仙はそう言うと、返事も待たずに部屋を後にした。

それを何を言う事もなく見届けた永琳は、まだ機嫌の悪そうなてゐに話し掛けた。

「今回はちょっと悪戯が過ぎた様ね」
「む~……」

まだヒリヒリするのか額を手で擦り、恨めしそうな目を永琳に向けて来た。

「まだ起きてないと思ったのになぁ~……」
「あの娘も言ってたでしょう?殺気に気が付いたって」
「んー……そんな殺気立ってたかなぁ……」
「まぁ、元々軍に属していたみたいだし、戦場に赴いた事も少なくは無い筈。だからそういうのにはきっと
敏感なのかもしれないわね」
「ふむ、なるほど……」

永琳は、納得した様子で手を顎に当てて考え込むように俯いているてゐの額に目をやる。
拳銃で撃たれたのに赤くなっている程度で済んでいるのはてゐが石頭、という訳ではない。
鈴仙の使う拳銃には元々弾が込められていない。
自身の妖力を弾丸に変え、それを撃ち出す事が出来る。
元々銃が無くても弾丸を飛ばす事も出来るが、本人曰く『媒介みたいな物が在った方が制御が楽』
との事らしい。
力を加減して撃った為、赤く痕が付く位で済んだのだろう。
そんな事を考えていると、この部屋に足音が二つ近づいて来るのが分かった。

「お待たせしました」

襖が開かれ鈴仙が外から声を掛ける。
その隣には、目が開いてるのか?と聞きたくなる様な顔をした輝夜が立っていた。

「やっぱりまだ寝ていたんですか?」
「ん~?起きてたわよ~」

絶対嘘だ、部屋で待っていた二人はそう思ったが口には出さなかった。
ならば起こしに行った鈴仙に聞いてみよう。
永琳はそう思い、部屋の中に入って来た鈴仙に尋ねてみる事にした。

「起きてたの?」
「うーん……起きてた……んでしょうか?」

聞かれた鈴仙はさらに輝夜に尋ねた。

「起きてたわよ~」

先程と同じ返答が帰って来る。

「貴方、起こしに行ったんでしょう?」
「はぁ……行きましたが」

輝夜を起こしに行った時の事を思い出す様に、視線を上に向け「ん~」と考え込む。

「布団の中には居ましたが体は起こしていました」
「そうなの?」
「目は……瞑っていましたが」

どうやら起きていたかどうか曖昧らしい。
それでもまだ「起きてたのに……」と小さく呟く輝夜を見て、そうなのだろうと思う事にした。

「あ、姫はどれくらい食べられますか?寝起きの様なので……少なめにしておきます?」

ご飯をよそっていた鈴仙がおもむろに輝夜に尋ねる。

「そうね……起きてたけど」

食欲があまり無いから、と言って少なめにするように言う。
どこからどう見ても寝起きそのものだった。



◆   ◆   ◆



「ウドンゲ、ちょっといいかしら?」
「師匠?なんでしょうか?」

私の名前は鈴仙・優曇華院・イナバ。
月で生まれ育った私はレイセンという名を授かったが、月から地上に逃げてきた時に、地上の風習に合わせ
ろと言う事で、鈴仙という漢字を当てられた。
イナバと言うのは、永遠亭に住む兎達の苗字の様だ。
で、その間に来る意味不明な名―――優曇華院。
これは私の師匠である永琳が名付けたものだ。
オマケにそれを更に略し、私をウドンゲと呼ぶ。
何故その優曇華院という名を付けたのか、何故中途半端な所で略すのか、一度聞いてみた事はあるが、なん
だかんだで結局ははぐらかされてしまい、事実の解明は未だ困難を極めている。
そして今現在、朝食の片付けを手伝い終えた私の後ろから、師匠が声を掛けて来た。

「貴方、これから何か用事はあるの?」
「えっと……そうですね、今日は薬の配達が」
「あら、そう言えばそうだったわね」

薬の配達とは、元々師匠が趣味で精製していた薬剤を欲しがる人が居たので、気紛れで分けている内に巷で
評判になってしまい、師匠の元に色々な薬品の依頼が来る様になった。
大抵は簡単に作れる薬が多いし、師匠としても趣味で金が手に入るならと快く引き受けている。
でも、ここである問題が浮上した。
永遠亭は竹林の中にひっそりと佇んでいる。
力のある妖怪はともかく、ごく普通の人間はこんな所にまで足を踏み入れるのは少々危険すぎる。
只でさえ迷いやすい上に、知性の無い獣の様な妖怪もこの竹林には存在する。
そこで私達が考えたのが、向こうが来られないならこちらから赴こうという事。
永遠亭に居る一般の兎にこの仕事を任せてもいいのだが、薬の取り扱い、説明など色々とやらなくてはい
けない事がある。
ここで薬学の知識があるのは、師匠とその弟子の私だけだった。
師匠が永遠亭を長い間離れる訳にもいかず、この配達が週に一度の私の仕事となっていた。
ちなみに私としても、気晴らしに永遠亭の外を歩き回れるという事もあって、なかなか気に入っている仕
事の内の一つでもある。

「何かあったんですか?」
「ええ、ちょっと新薬の研究を手伝って欲しかったんだけど……まぁ別に今日じゃなきゃ駄目って訳でも無い
し、明日でも構わないわ」

それでもやや残念そうなのは気のせいだろうか?

「それで、何時ここを出るの?」
「用事が無ければこれからでも行こうと思っていましたが……」
「そう、なら引き止めて悪かったわね」
「いえ」

私は配達の薬が置いてある師匠の研究室へと向かう。
師匠も元々研究室に行こうとしていたのか、私の隣を並んで歩く。

「ところで、新薬って今度はどんな薬を作るんですか?」

歩きながら疑問に思った事を尋ねてみた。

「そうねぇ……効果だけ言うと性格を反転させる薬よ」
「性格……って何でまたそんな薬を作ろうと?」
「とある人からの依頼よ」

そんな危険極まりない薬を誰が誰に使うつもりだ……。

「ある人って誰なんですか?」
「それは依頼人のプライバシーを守る為に教えられないわ、秘密ね」
「誰が誰に使うかも教えられない様な薬を作るのに私を手伝わせようとしていたんですか……」

それは少し気分的に嫌だ……。
そんな表情が顔に出てしまっていたのか、師匠が「ん~」と少し考える仕草を見せ。

「まぁ、それもそうかもしれないわね」
「だったら教えて下さいよ~」
「名前は教えられないけど……寝てばかりの主に困り果てた従者が涙ながらに頼み込んで来たのよ」

誰か、は私でもすぐに分かった。
と言うより、泣きながら師匠に依頼する金色の九尾を幻視した気がした。

「って、そのまんまじゃないですかっ!」
「あら、分かっちゃったの?」

くつくつと笑う師匠、プライバシーなんてあったもんじゃない。
やっぱり従者という者は皆苦労してるんだ……。
私にもその気持ちがよ~~~く分かる!
あれ……なんだか涙が……。

「なんで泣いているのよ……?」
「いえ、少々気持ちが先走りしてしまいました」
「?……変な娘ね」

アンタのせいだアンタの。

それにしても、従者という立場で殆ど苦労していないのは、目の前のこの師匠だけじゃないだろうか……?
姫の世話は特にしなくても好き勝手やってるみたいだし、何かあって苦労するのは私達兎だ。
そもそも姫の従者と言うのも微妙な所だ。
実質、この永遠亭を操っているのは師匠だし、切り盛りしているのも師匠だ。
ん?……という事はやっぱり師匠も苦労してると言う事?
姫が何もしないだけの事かもしれないけど……。

「さっきから何ブツブツ言ってるの?」
「あ、いえ……何でもありません」

どうやら口に出してしまっていた様だ、気を付けなければ……。

「私もこれで結構苦労しているのよ?」
「って、ばっちり聞いていたんですかっ!?」
「貴方が聞こえるくらいに一人言呟いていたんでしょう?」
「う~……」

地獄耳か、この人は……兎の耳も真っ青だ。
いや、私の耳は青くはないが。

「それでも貴方を弟子に取ってからは結構楽にはなったけど」

なるほど、師匠の厄介事が私に回って来るから私が苦労しているらしい。

「あー……で、何でしたっけ……性格を反転させる薬?」
「そうよ」

あまりにも自分が置かれた不憫な状況に、また涙が溢れそうだったので強引に話題を変える事にした。

「大体の構図は出来上がっているから、あとは実際に製薬してみるだけね」
「そんなに手間の掛かる物なんですか?」
「そう言う訳でも無いわ」
「じゃあ、私が手伝う意味ってあるんですか?」

主に私が師匠の研究に手伝う時は、大体が時間や手間の掛かる薬だ。
今回はそうじゃないのに何で手伝いを頼むんだろ?

「って、手伝いって実験体になれとかじゃないですよねっ!?」

そうである可能性が高い……ものすごく嫌な予感がするもの……。

「いや、何ですかその顔はっ!?」

貴方はそれが仕事でしょう?とも言わんばかりの顔をしてくれました。
私が苦労するのは姫のせいでは決して無い。
目の前のこの人が事の元凶だっ!

叫びたい衝動を辛うじて押し止める。
しかし、師匠が次に発した言葉に私は耳を疑った。

「まさか、貴方に使う訳が無いでしょう?」
「……へ?」

それはどう言う事だ?
今まで幾度と無く危ない薬を盛ってくれやがった目の前の人物の言葉はそれほどまでに意外だ。
何かの策か?また私は騙されようとしているのか?
あぁ……そんな乱獲者の様な目でこっちを見ないでっ!

「何を被害妄想しているのか……まぁ、大体分かるけど。薬の効果が何だか思い出してごらんなさい」
「分からないでくださいよぉ~……」

はて、薬の効果?

「性格を反転させるんでしたよね?」

その言葉に師匠はこくりと頷き。

「貴方の性格……そうね、例えば真面目、素直、優しい何かが考えられるわね」

真面目な顔をして自分の長所、とも取れる部分を改めて言われるのも何だか気恥ずかしい。

「その性格を反転させても、悪くはなっても良くはならないでしょう?」
「あ~……確かに」

もしさっき挙げた私の性格が反転したとしたら、不真面目?捻くれ者?優しい……の反対って何だろ?
師匠の言う通り、これじゃ悪くなっても良くはならないだろう。

「じゃあ、本当に薬を作る事に手を貸せばいいんですね?」
「だから、さっきからそう言ってるじゃない……」

どこか疲れた表情の師匠、言ったかそんな事?

「だから今回は姫かてゐにでも盛ろうかと……」
「って、おいっ!?」

やっぱ盛るのか、ダメじゃん。

「もちろんその役目は貴方に任せるわ」
「あ~……聞きたくは無いんですが、その役目って言うのは盛る方ですか?」

また首を縦に振る事で肯定された。
あ……何だか満足そうな凄く良い笑顔……。

「さっきと言ってる事が違うじゃないですかっ!?」
「あら、誰も薬を作る為だけとは言っていないわよ?」

コロヤロウ……。

「嫌ですよっ!それなら師匠がやればいいじゃないですかっ!?」
「―――ウドンゲ」

急に声を低くし真面目な顔をこちらに向ける。

「私はこの地に降り立ち、姫と共に在る事を決めてから絶対の忠誠を誓った……それは今でも変わらないわ」
「いや、だったら私の忠誠も買って下さいよ……」
「貴方は私に忠誠を誓えばそれで良いのよ」
「師匠の主である姫にも誓ってます」
「初耳ね」
「というか普通はそうでしょう……」
「今回だけは誓いを破っても構わないわ、私が許す」
「許さなくて良いですから、師匠がそれを破って下さいよ……」
「それは無理な話ね」
「私なら無理じゃないと?」
「やっちゃった……てへっ♪とでも笑ってれば大丈夫よ」
「まんまてゐじゃないですか、それは……」

お手本だとしても歳を考えて下さい。

「失礼ね」
「っ、今回は口には出しませんでしたよっ!?」
「貴方の考えている事なんて手に取るように分かるわ……それにそれは肯定と受け取っても良いのね?」
「ち、違いますよっ!そんな事考えてもいませんっ!」
「……そう」

拙い……近いうちに白玉楼のお世話になりそうだ。

「師匠が嫌なだけじゃないですかっ!?」

しかし、ここは引き下がる訳にはいかない。
姫にばれても結果は同じだろうから。

「それは少し違うわね……嫌、と言うよりも出来ないのよ」

嘘だっ!
そう叫びたかったが、これ以上は危険だと判断し、ここはもう一つの希望に賭ける事にした。

「なら、てゐなら良いんじゃないですか!?」
「私にあの可愛いらしいてゐをこの手に掛けろと?」
「可愛いって……思いっきりてゐの本性知ってるじゃないですか……」
「あれはあれで可愛いのよ」
「物凄く言い訳に聞こえるのは気のせいでしょうか?」
「あら、貴方も十分可愛らしいわよ?」
「いや、聞いてませんから」
「少しは嬉しがりなさいよ……」
「何故かその言葉の後には何時も必ず良くない事が起こるんですよ」
「不思議ねぇ……」

白々しい……。

「やっぱり師匠が嫌なだけなんじゃないですか……?」
「むしろ貴方がやったほうが面白そうじゃない」
「さらっと本音を暴露ですかっ!?」
「聞きたがってたのは貴方でしょう?」
「いや、そうですけど……」
「まぁ、何にしてもてゐに盛るのは少々リスクが高いわね」

急に師匠が話を変えてきた。
散々引っ張った挙句、あっさり本音を言われ、ほとほと疲れた様子の私には構う様子も無かった。

「まぁ、そういう事はてゐの土壌ですしね」

これ以上の問い詰めはただ疲れるだけと判断し、師匠の話に乗る事にした。

「それは特には問題無いわ」
「あれ?そうなんですか?」
「私を誰だと思ってるの?」

腹黒薬師。
いや、ごめんなさい。
謝りますから睨まないで……。

「てゐの性格の問題よ」
「性格……ですか?」
「そう、アイツはあれで、結構兎達には良くしているみたいだから」
「ん~……言われてみるとそうですね」

私には悪戯ばかりするくせに……。

「と、言う訳で被験体は姫で決まりね」
「まぁ、そうなりますね……」
「幸い、依頼主の主に似ている所もあるし、格好の実験体ね」
「ご自分の主をぼろくそ言ってますね……」
「私は姫の従者の前に一人の薬師よ」
「さっきと言ってる事が……」

無性に疲れた……もう何でもいいですよ、好きにして下さいよ。
もうやだ、こんな生活っ!

「薬が完成したら、それとなく姫に飲ませてみる事にするわ」

結局アンタが盛るのか、今までの問答は一体何の意味があったんだ……。

「師弟の楽しい日常会話でしょう?」
「師匠が楽しんでるだけじゃないですかっ!?……ってさっきから人の心読まないで下さいよっ!」
「良いわね、その分かり易い性格。貴方のそんな所が好きよ」

それは楽しく弄れるからか……。

「それだけじゃないけど……素直なのは良い事よ?」

もういいです、心が読まれる事にはもう突っ込みません。
そんなに分かりやすいのか、私は……。

……それからややあってようやく研究室の前まで辿り着く事が出来た。
そもそも研究室ってこんなに遠い所に在っただろうか……?

「空間操作なんて造作も無い事よ」

お前の所為か。

「それより時間は大丈夫なの?」
「はい、午後から出ても夕食までには間に合いますよ」
「そう」
「一応は余裕をもって出ようと思ってましたから」

そう言って私は薬品の入った鞄を開け、中身を配達表と照らし合わせ確認する。
昨日の内から必要な物は全部入れておいてあるので、後は最後の確認をするだけだ。
師匠もそれを手伝ってくれたお陰でさほど時間は掛からなかった。

「それでは行って参ります」
「はい、行ってらっしゃい。気を付けて行くのよ」
「そんな子供じゃないんですから」

身を案じてくれるのは正直嬉しいが、さすがにそんな歳でもない。
苦笑しながら私は永遠亭を後にした。



◇   ◇   ◇



最初に向かうのは永遠亭のある竹林からさほど離れていない人間の住まう里。
本来なら上白沢 慧音と言う半人半妖が、里に近づく妖怪から人間を守っている為、妖怪が里に入る事は困
難である。
例外的には、里の人間には害を及ぼさない、と慧音さんに認められた者だけは容易に踏み込める。
私もそんな一人だった。
それでも一応、里の手前で飛ぶのを止め地面に降り立ち、後はそこから歩く様にしている。

「おう、薬屋の兎さんじゃねーか!」

途中、里の近くの森で狩りでもしていたのだろう里の人間に声を掛けられ、とりあえず会釈を返しておく事
にする。
私も既にこの人里では中々の知名度を誇っている。
里に入ってくる妖怪の数が少ないからか、私の見た目が特徴的だからかは良く分からないが。

一度、里の者が私の事をどう思っているのか気になって、慧音さんに尋ねてみた事があった。
慧音さん曰く、『薬屋の可愛い兎さん』との事。
そう聞くと、薬屋とは永遠亭の事を示しているのだろうか?。
それより気になるのは、誰に聞いても『妖怪』という言葉が出て来なかったと言う事。
……私ってそんなに妖怪としての威厳無い……?いや無いかもしれないけど。

里の中に入ると通りすがりの人が何人も挨拶をしてくれる。
それに一つづつ挨拶を返して、それでも会話が長引かない様にしながら目的地へと足を進める。
今日は屋敷を出るのが少し遅かったから、そうのんびりしていられる時間も無いかもしれない。

ほどなくして目的地である人間の医師が居る家の前に辿り着いた。
医師、と言っても師匠の様な膨大な知識を持ってる訳でもなく、また薬専門の薬師でもない。
ある程度なら自分でも作る事が出来るだろうが、師匠の薬の評判と材料を集めに行く危険性も含めて、こう
して師匠の下に依頼を出して来る。
この依頼が配達の仕事をする様になった発端でもあったりする。

「ごめんくださーい!」

家の戸を開け中に居るであろう人物に声を掛ける。

「おー、待っておったよ」

すぐに中から声が返って来た。
私は玄関先に上がり依頼の品をそこに並べて置く事にした。

「いやー、待たせたね」

声の主はやや老けたおじさん、と呼ぶに相応しい顔。
その優しそうな雰囲気から、医師という人助けの仕事に携わっていると言う事も頷ける。

「えっと、これが今回の依頼された薬剤です」
「ふむ」

並べられた薬剤を一つづつ手に取り、どんな効果があるのか、どんな材料を使っているのか見定める様に確
しかめていく。

「これはどんな効果があるんだい?」
「あ、それは―――」

いくつか使われている材料についての質問に受け答えし、理解して貰う。
医師、という立場だけに正体不明の物は人に勧めたくは無いのだろう。
真剣に聞き入るその顔を見てそんな事を思った。



◇   ◇   ◇



「いや、助かったよ。ありがとう」
「いえ、こちらこそ」

私の説明に満足いったのか医師は笑みを浮かべ礼を述べて来た。

「師匠が言うには、流行り病の薬を幾つか常備しておいた方が良いとの事なんですが……」
「ふむ……まぁ、確かにそうなんだが……」

流行り病と言っても何時流行するのか、どんな症状が出るのか掛かってみない事には対処のしようが無い。
それでも師匠は『備えあれば憂いなし……って良く言うでしょ』と言っていた。
その言葉になるほどその通りだと頷く医師を見て、なんだか悪徳商売でもしてるような気分になり少し落ち
込んだ。

「君のお師匠様ならどんな病が流行するのか分かったりするのかい?」
「それは……どうなんでしょう?」

普通はそんな事出来るとも思えないが、あの師匠なら不可能では無い様にも思える。

「それじゃあ聞いてみてはくれないかい?」
「はい、勿論いいですよ」
「それで次に来る時まで……まぁ、何時でも良いんだが。その時に予想出来そうな薬剤を幾つか譲って貰える
かな?」
「分かりました、師匠にもそう伝えておきます」
「あぁ、宜しく頼むよ」
「では、そろそろ私はこれで……」
「何時もわざわざ運んでくれてすまないな、ありがとう」
「そんな……大した苦労じゃないですから」
「そう言って貰えるとこちらも助かるよ」

これも私がこの配達の仕事が好きな理由の一つでもある。
師匠の薬を頼ってくれる人が大勢いる事は、弟子として誇らしくもあり嬉しくもある。
その上感謝の言葉まで頂けるとなると、こちらもやる気が出て来ると言うもの。

家を出た私は遠くから手を振ってくる人物に目が付いた。
向こうはすぐにこちらに気が付いたのだろう。
恐らく、この耳が存在を分かり易くしているのだろうか……?。

「薬の配達か?ご苦労様」
「ありがとうございます、ここは今届け終わった所です」
「そうか、いや、お前には本当に感謝しているよ」

手を振っていたのは慧音さんだった。
しかも、ここでも思いがけない感謝の言葉を頂けた。
人間を守るという立場にいる慧音さんとしては、里の者に薬を永遠亭まで取りに行かせる訳にもいかず、自
分が里を長く離れる訳にも行かない為、どうしたもんかと困っていた所にこちらが薬を届けに行く、という
事を知って里の者を危険な目に会わせなくて済んだと、大変安著したらしい。

「これは私も好きでやってる事ですから」
「いや、それでも本当に助かってるよ」

なるほど、慧音さんは師匠の腕を、それこそ身をもって体験しているという事もあり、なんとか里の者にも
その薬を使って欲しいと思っていたのだろう。
それが欲しくても取りに行けないという状況になって、きっと散々悩んでいたのかもしれない。

「ところで慧音さんはここで何をしているんですか?」
「ん?あぁ、特には何もしていないな」

と言いつつも、その青の混じった長い銀髪を風に靡かせながら、やや離れた所で遊んでいる子供達を静かに
見守っている様にも思える。

「子供は元気が一番だな」
「あ~、分かります。家にも子供みたいなのが大勢いますから」

てゐを筆頭に。

「それは随分と年老いた子供だな」

ははは、と軽く笑いながら慧音さんは子供達を眺めている。

そうなのだ、てゐはあのなりで私より年上だったりする。
その他にもてゐと同じような背格好で私より年上は結構居る……世も末だ。

「どうだ、お前も一緒に遊んで行くか?」
「……私はまだ仕事が残ってますから」

意地悪な笑みを浮かべ勧めてくる慧音さんに、じと目で返事を返しておく。
恐らく断られる事は分かっているだろうに、わざわざ勧めてくるあたりが慧音さんらしい。

「そうか、それは残念だな。子供達も中々にお前の事を気に入ってるみたいなんだがな?」
「あれでもう懲りましたよ……」

一度、慧音さんに勧められて子供達と遊んだ事があるが。
妖怪というのが珍しかったのか、ただこの自慢の耳が気になって仕方がなかったのか。
捕まれ、引っ張られ、散々弄られてぼろぼろにされてからは少し子供達と遊ぶのは遠慮する事にしている。
それを知っていて言って来るのだから尚更性質が悪い。
普段は真面目な性格している癖に。
そんな事を考えてる私を見てまた慧音さんは笑っていた。

「いや、すまないな。お前程からかって面白い奴なんて他にはいないんでな」
「そんな理由でからかわないでくださいよぉ~……」
「ははは、悪い悪い」

私は生粋の弄られ妖怪か……そうなのか……。

「それじゃあ、私はそろそろ行きますけど……」
「あぁ、引き止めて悪かったな」
「いえ、今度は引き止めるだけでお願いします」
「それは私の楽しみの一つを奪おうと言う事か?」
「いや、そんな師匠みたいな事言わないで下さいよ……」
「まぁ、永琳殿の気持ちも分からないでもないな」
「分からなくて良いですってば……」
「はは、あまり引き止めて置くのも悪いし、今回はこの辺にしておくよ」
「む~……」
「っとそうだ、ちょっと待っててくれ」
「……?」

そう言うと慧音さんは私を残し何処かへ走り去って行った。
仕方が無く、私は子供達を眺めながら待つ事にした。
子供達は無邪気に走り回り、その顔は笑顔で一杯になっていた。

「子供は元気が一番……か」

確かに元気な子を見ていると、何だかこちらまで元気になってくる様にも思える。
家の子供達は悪戯ばかりで疲れさせられるが……。
ぼんやりと眺めながら待ち呆けていた私の背後から駆け足の音が聞こえて来る。

「悪い、待たせたな」

余程急いだのか、はぁはぁ、と肩で息を切らしながら慧音さんが近づいて来た。

「これを渡そうと思ってな」
「……これは?」

そう言って私の前に突き出されたのは数個の鳥の卵の様な物。

「これは今朝取れたての鶏の卵だ。数が少なくて悪いが、ささやかな礼だと思って貰ってはくれないか?」
「そんな……別に良いですよ」
「そう言われても、こちらもお前に渡すと伝えて来たので、お前が貰ってくれないなら捨てる事になるぞ?」
「それは……卑怯ですよ」
「まぁ、別に大した物では無いが、味は保障する」
「ん~……それじゃあ」

何だか上手く丸め込まれた様な気もするが、ここは素直に受け取って置く事にした。
私としても悪い気分じゃないし、慧音さんが言うのだからこれくらい譲っても大した事では無いのだろう。

「ありがとうございます、今晩か明日の朝にでも皆で頂きますね」
「あぁ、そうしてくれ」

そう言って数個の卵を割れない様にタオルで包み、そっと鞄の中に仕舞い込んだ。
屋敷に着くまでに割れないだろうか……?

「まだまだ配達は残っているんだろう?」
「そうですね……でも今回はそれほど多くはありませんから」
「そうか、それじゃ引き続き頑張ってくれ」
「はい、それでは」

軽く会釈し、慧音さんと別れた。
私は歩いて里の外まで行くとそこから空へと飛び立った。

「えっと……次の目的地は……っと」



◇   ◇   ◇



そうして人間の里、妖怪の住み家と幾つかの場所を回り、同じように説明しながら一つづつ届けて行く。
日が沈むにはまだまだ時間もある。
配達件数が元々少なかった為か、それほど急がなくても十分夕食までには帰る事が出来そうだった。

「次で最後かな?」

配達表を見ながら最後の目的地へと飛ぶ。
この幻想郷の端にある幾つかの小山。
その内の一つに佇む幻想郷唯一の神社、博麗神社である。
そこが今回最後の目的地。
ここは慧音さんの居る人里から少し行った所にあり、本来ならば人里に行った後に立ち寄ればいいのだが。
友人の魔法使い、霧雨 魔理沙曰く『神社はのんびりお茶を啜る所』らしい。
そういう事もあり、ここは何時も最後に回る様にしていた。
まぁ……博麗神社の主、博麗 霊夢にそんな事を言ったら、すかさず護符が飛んでくるだろうが……。
彼女も一応は人間だが、規格外の人間なのでわざわざ手前で飛ぶのを止め歩くような遠慮もしなくていい。
と言うより、神社までのこの長い石段を歩いて登る気にはなれそうもなかった。

そのまま上空から神社の境内に降り立った私はふと、ある事に気が付いた。

「人の気配がない……もしかして留守だったりする?」

それは少し拙い。
もし本当に留守だとしたら、神社の主が帰って来るのを待たなくてはいけない。
薬剤をこのまま置いていっても良いのだが、それは私のポリシーに反する。
届ける以上は自分のこの手で渡したかった。
とは言っても、このまま日が暮れるまで待つ訳にもいかない。

「どうしようかな……」

境内で考え込んでる私に、後ろの……縁側から声が届いた。

「……なんだ、あんたか」
「霊夢?居たんだ?」

まるで気配も音も聴こえ無かったと言うのに、何時の間にか目的の人物は縁側に佇んでいた。
だが、それよりも気になるのは……。

「イメージチェンジ……?」
「んな訳ないでしょ、どう見ても寝巻きでしょ……これは」

そうなのだ、霊夢が着ている服はいつもの紅白の巫女服とは違い、ただの寝巻きだった。

「寝てたのよ」
「あ、そうなんだ?」

言われてみると眠たそうな顔をして……って、いつもそうか。
ふと霊夢の顔を見て、そのかすかな異変に気が付いた。

「顔赤いけど……もしかしなくても風邪?」
「その通りよ、分かったならお賽銭にお金を入れてさっさと帰って頂戴」

そんな時でもお賽銭ですか。

「お金は入れないけど……大丈夫?」
「お金を入れてくれたら大丈夫」

アンタは金の亡者か。
……亡者なんだろうなぁ。

「本当の事言うと結構辛いのよ。今も微かな妖気を感じて無理して来たんだから」

私が気が付かなかったのは、霊夢が警戒していたからの様だ。

「まぁ、とりあえず……はい、これ」

鞄から霊夢の分の薬剤を手に取りそれを渡す。

「あぁ、それでここに来たのね」
「それでって……なんだと思ってたの?」
「病魔に冒された、か弱い少女を悪い妖怪が襲いに来た」
「襲わないし、か弱いって……」

何か文句あるの?とでも言いたそうな霊夢の顔を見る。
無理して来た、というのもあながち嘘ではないのだろう、平静を装ってはいるがどこか辛そうだった。

「用事は終わったんでしょ?悪いけどお茶出す余裕はないわよ」
「……ん~」

別にお茶が欲しい訳ではない。
貰う為に最後に回る様にしていた気もするが、それは取り合えず置いておく事にしよう。
霊夢も律儀にお茶、という言葉を出す位だから、そんな事はお見通しなのかもしれない。
もしくは神社に訪れる人妖がそうだから、という理由かもしれないが……。

「まだ何かあるの?」
「いや、もう用事は済んだんだけど……」
「……?」

声には出さずに『何?』と聞いてくる霊夢に構わず、しばし考えに浸る。
霊夢の症状は只の風邪、それ位は私にも分かる。
顔が赤い事から熱も結構あるんだろう。
薬は、幸いな事に鞄の中に幾つかある。
でも、このままだと日が暮れてしまうかもしれない。

……まぁそれでもいいか。
私には今の状態の霊夢を見捨ててそのまま帰る事は出来ない様だ。

「もし良かったら診てあげようか?」
「みるって何を?」
「貴方を」
「?……あぁ、そう言う事」
「多分、そう言う事」

診る、の意味が一瞬分からなかったのだろう、熱の所為か正常に頭が働いてないのかもしれない。

「で、どうする?」
「……金なら払わないわよ」
「別にいらないって」
「えっ?」
「これは友人サービス、知り合いに薬師が居た事に感謝せよ」

金は取らないと言った時の霊夢の顔は、私が今まで見た中で一番の驚きが含まれていたと思う。
そんな顔されたら取れる物も取れないってば。

「まぁ、私はまだ未熟者だから。こんなんでお金取ってたら師匠に怒られちゃうだろうしね」

まだ驚きが取れない霊夢の顔を見ながら、それとなく言い訳の様な事実の様な事を言ってみる。

「ほんとにいいの?」
「最初からそう言ってるでしょ」
「……でも、あんたってそんな事できるの?」
「失礼な、これでも師匠から医学……まぁ薬学全般が主なんだけど。それを何年も教わって来てるのよ?」

自意識過剰、という訳でも無いと思う。
昼間会った慧音さんの里の医師、その他の医学を学んでいる人達と比べても、自分はそれ以上の知識を師匠
に学んでると思っている。
実践にしても慧音さんの手伝いで人間を診た事は何度もあるし、その辺の事も師匠は教えてくれた。

「取り合えず立ってるのも辛いんでしょ?心配しなくても悪い様にはしないから」
「まぁ……タダで診て貰えるならこっちは言う事ないんだけど……」

ほんとにいいの?と、先程と同じ事を聞いて来る。
金は払わないと言い出したのは自分の癖に、何でいざそうなるとここまで遠慮するのだろうか?。

「何度も言ったでしょ、それに病人を前にこのまま帰る方が気になって仕方が無いって」
「……ならお願いするわ」



◇   ◇   ◇



「本当に只の風邪みたいね」
「そんな事言われなくても分かってるわよ」

診察していた私を、本当に大丈夫なの?と未だに霊夢は疑っている様子で睨んで来る。

「まぁまぁ、はい口開けてー」

一通り診察を終えた結果は、やはり風邪だった。

「ちょっと腫れてるかな……?」
「これでも咳きも大分止まったし、一応は回復してるのよ?」
「今の状態もお世辞にも良いとは言えないけどね」

熱は結構あって三十八度近くあった。

「心拍、脈拍共に異常無し……っと」
「そんなの調べなくても分かるの?」
「ん?あぁ、本当は聴診器とか使って調べるんだけど、今はそんなの持って来て無いし。それにほら、私には
これがあるから」

と、自慢の耳をぴこぴこ動かして見せる。

「……その耳、役に立つ事あったんだ?」
「失礼ね、私にはこれが無いと生きて行けないわよ」
「つーか、それって本物?」
「うっ……良く聞かれるセリフを……」

本当に失礼な。
これでも地上の兎よりも高性能なのになぁ……。
地上の兎は音を音として捉えるが、私の目と耳はその波長すら捉える事が出来る。

「じゃあ、取り合えずこの薬を渡して置くから。食後に飲んでね」
「えっ?今すぐじゃ駄目なの?」
「結構強めの薬だから、あんまりお勧めは出来無いなぁ……」
「他には無いの?」
「一応あるけど……これじゃ駄目なの?」
「駄目」

一言で一蹴された。

「食欲も無いし、そもそもご飯作るのが面倒」
「面倒って……もしかして朝から何も食べて無い?」
「朝からどころかここ二、三日何も口にしてないわ」
「はぁ?二、三日って……もしかして風邪引いたの今日じゃなく?」

こくり、と頷き私の言葉に肯定を示す。
呆れて物も言えなかった。

「風邪引いた時は栄養のある物食べなきゃ、治る物も治らないって知ってる?」
「そんな事言ったって、食欲も無いのに作る気なんて起こらないわよ」
「あ……一応食材はあるんだ?」
「あんた……私を何だと思ってるの?」
「病に伏せたお馬鹿な巫女さん」

迷う事無く、そう口に出た。

「馬鹿で悪かったわね……」

どうやら自覚はある様だ。
あるなら実践すればいいのに……。

「はぁ……」

思わず大きく溜息を付いてしまう。
私はお人好しなのだろうか?
自分では分からないが、少なくとも夕食までには帰れそうにも無くなった。

「台所、勝手に借りるよ」
「台所って……何か作ってくれるの?」
「仕方が無いでしょ、貴方が作らないなら他に誰も居ないでしょう?」
「それはそうだけど……」

霊夢はまだ何か言いたそうにしていたが、私はそれに構う事無く台所へと足を運んだ。

食材を漁ってみるが、日持ちしそうな物は沢山あるが、栄養が付きそうな物は特に見当たらなかった。
そこでふと昼間、慧音さんから貰った卵の事を思い出した。
皆で食べるという約束だったけど、夕食どころか食べさせてやる事すら出来そうに無いなぁ……。
人助けの為あらば、約束を破った事も慧音さんならきっと許してくれるだろう。
これから作ろうとしている物の材料は幸いにも沢山ある。
後はあの卵を使って……。

「ん……帰るの?」
「まさか、まだ作り始めてもいないって」

居間まで卵を取りに来た私が帰るものと思ったのか、その表情は少し不安気だった。
病に伏せて心細くなる、とはこう言う事なのかもしれない。
意外な人物の意外な表情に苦笑しつつも、私は鞄から卵を取り出し、まだ割れていない事を確認する。

「卵?」
「そう、昼間人里に配達に行った時に慧音さんに貰ったのよ」
「ふーん」
「丁度良いから、これで何か栄養付く物でも作ろうかなって」
「あんた、料理も出来たんだ?」
「当たり前でしょ、永遠亭の食事当番は交代制なんだから」
「そうなんだ?」
「うん、永遠亭で料理出来ない人なんて殆ど居ないんじゃないかな?」

味はともかくとしてだが。

「あの姫ですら出来るのよ?」
「……は?」

衝撃の告白。
正にだ。
誰もあの姫が家事を出来るとは思ってもいないだろう。
私も最初見たときはこの世の終わりが来たか、師匠に幻覚が見える薬でも盛られたのかと思った位だ。
霊夢が驚くのも無理は無い。

「嘘でしょ……?」
「残念ながら……私が嘘苦手なの霊夢も知ってるでしょ?」

これは性格だから仕方が無いと諦め切っている。
てゐみたいに、上手く嘘を付ける人が羨ましく思える時もあるが。
それは霊夢も分かっている様で、しかしそれでも納得いかない様子だった。

「まぁ、ほら。病人は大人しく寝てなさい」
「むぅ……うどんげの癖に」
「癖にって何よ、あとうどんげって呼ぶな!」

そう呼んで良いのは師匠だけなんだっ!
これは決して譲れない。

「そう時間も掛からないから、大人しく布団に寝てなさい」
「……わかったわよ」

渋々といった様子で居間を後にする霊夢。
それを見届け、私も台所へ向かった。
そろそろ永遠亭の皆も夕食の準備してる時間帯かな……。



◇   ◇   ◇



調理にはそれ程時間は掛からなかった。
大した手間の掛かる料理でも無いし、時間を掛けると私も夕食までには帰れなくなってしまう。
私は出来上がったご飯と水をお盆に載せ、霊夢が寝ているであろう部屋の前に来た。

「霊夢ー、入るよー?」
「……ん」

中から籠った声が返って来たので、取り合えず部屋の中に入ってみる事にした。

「あ~……もしかして寝てた?」

さっきの声で起こしてしまったとしたら、それはそれで申し訳ない。

「……少しうとうとしてただけだから」

ふぁ……という欠伸をしながら体を伸ばし、気怠げな顔をこちらに向けて来た。

「取り合えず出来たから持ってきたけど……すぐ食べる?」
「ん、頂くわ」

食欲が無いと言っていたのにお腹は空いていたのだろうか。
……同じ意味に聴こえるが。
私は布団の隣にお盆を置き、その上に載っていたお椀を持ち上げた。

「あーん、ってして欲しい?」
「……遠慮しとく」

断られた……残念。
仕方が無いのでお椀を霊夢に手渡し、これからすぐにでも帰ろうかと考えていた。
今から急いで帰れば夕食中には戻れるかもしれない。

「これ……お酒?」

考え込んでいた私に向かい、お椀の蓋を開けた霊夢がその匂いを嗅いで尋ねて来た。

「うん、お酒」

私が作った物は、ご飯をお粥にし、卵を入れ、お酒を少し入れただけの簡単な物だった。

「まぁ、簡単に言うとご飯と玉子酒を一緒にした様な物よ」
「ふーん……」
「前に私が病気で寝込んだ時に、師匠が作ってくれたの」

味は保障するよ、と付け加え、未だ食べようとしない霊夢に苦笑した。

「お酒と言っても香りが付く位にしか入れてないし」
「……まぁ、頂きます」

そう言って、やっと一口目を食べ始めた。
少し熱かったのだろうか、すぐ口を離し息を吹きかけてから食べていく。

「……悪くはないわね」
「でしょ?」

とりあえず合格点らしい。

「でも、これって別々にすればいいんじゃないの?」
「そうなんだけどね……師匠が『このほうが効率的でしょ?』って言ってたから。そうなんだなぁ……って」
「玉子酒にしてはお酒の量が少ないと思うけど……」
「でも美味しいでしょ?」
「確かにそうだけど……」
「ならいいじゃない」

味良ければそれで良し。
病に伏せていた私に、これを作ってくれた師匠の心遣いが本当に嬉しかった事を思い出す。
確かに、玉子酒としての効果は薄いかもしれないが。それでも私を心配してこれを考えてくれた師匠に、あ
の時は本当に感謝した。
今、思い出してみても嬉しくて涙が溢れそうに……。

「今、思ったんだけど……」
「何を?」
「師匠は、ふと思い付いたこれを私で実験したんじゃないかと……」
「……有り得ない話じゃないわね」

溢れたのは怒りだった。
いや、これは只の私の被害妄想だ。
きっと師匠は私の身を案じ、その天才的頭脳を最大限に発揮し、これを考えてくれたんだ。
私はそう信じ込むようにした。
世の中には知らない方が良い事が沢山ある。

「ご馳走様」
「お粗末様」

霊夢は満足いったのか、綺麗に平らげてくれた。

「一応、まだ少し台所に残ってるから。お腹が空いたら温めて食べてね」
「分かったわ」
「それじゃ、はい薬」

先程の薬を渡すと霊夢は、しばしばその薬を見つめた後にそのまま口にした。
傍に置いてあった水を渡すと、ごくごくとコップに入っていた水を全て飲み干し……。

「苦い……」
「当たり前でしょ、薬なんだから」
「あんたの師匠においしい薬を作らせれば良いじゃない」
「苦いからこそ、その有り難味があるんでしょう」

苦い薬が嫌だなんて子供みたいな事を……

「それ、睡眠薬とかも入ってるから。すぐに眠たくなって来る筈よ」
「そうなんだ……じゃ、もう一眠りさせて貰おうかしら」
「そうしなさい、起きたときには多分熱も引いてると思うから」

まぁ、取り合えずはこれで一安心かな……?
外はすっかり暗くなってしまった様だ。
そろそろ帰らなくちゃ……。

「それじゃあ、私はそろそろ帰るけど」
「そう」
「まだ何かして欲しい事とかある?」
「お賽銭箱にお金入れていって」
「まだ言うか……入れないってば」
「人でなし……」

人助けしたのに人でなし呼ばわりですか……。
そんなにお金に困っているんだろうか……?

「ここまでして貰ったんだもの、これ以上して欲しい事なんて無いわよ」
「そっか、それじゃ帰るね?」
「ええ」

霊夢はそのまま横になった。
私も鞄を取りに部屋から出ようとした時……。

「―――鈴仙」

いきなり呼び掛けられ、私は霊夢の方を振り返った。

「何?」
「……」

霊夢はあちら側を向いており、その表情までは分からない。
中々何も言わない霊夢に、どうしたんだろう?と少し不安になっていると。

「助かったわ、ありがとう……」

思いがけない感謝の言葉。
こっちを向いていないのは照れ隠しのつもりだろうか?

「……お大事に」

私は霊夢の言葉に微笑みながらそう短く答え、部屋から出た。
鞄を取り外に出た時には、空に星が幾つも浮かんでいた……。



◇   ◇   ◇



博麗神社を出た私は急いで永遠亭へと帰路を急ぐ。
ここからだと屋敷までは結構な距離があり、帰る頃はもう寝始める兎が居るかもしれない。

「うぅ……師匠、怒ってないかなぁ……?」

夕食までには余裕で間に合う、みたいな事を言ってしまったというのに、今はそれを大きく過ぎてしまって
いる。
怒ってるならまだいい方かもしれない。
だが心配されているとなると話は違う。
それこそ一刻も早く帰らなければいけないだろう。
そう考えると、怒ってればいいなぁ……と考えた方が良いのだろうか?
否、まだ白玉楼のお世話にはなりたくはない。
それでも心配を掛けているかもしれないと思うと、申し訳ない気持ちになった。
この状況で一番良いのは……。

「もう師匠が寝て居てくれたらいいなぁ……寝てないかなぁ……」

私は何も気にしていません、と寝て居てくれればこっちも気が楽だ。
いや、心配されないのは悲しいけど……。
先程から支離滅裂なこの思考はどうしたら良いのだろう……?。
自分が思っている程、中々進めていない事に僅かな焦りを感じながら、それでも精一杯速く空を翔る。

「……?」

その時、私の耳は何かの音を捉えた。
正確には誰かの声……それも悲鳴の様な物。
眼下に広がるのは広大な森。
悲鳴が聞こえて来たのは間違い無くそこからだった。
場所は恐らく然程離れてはいないだろう。
帰路を急いでは居るものの、聞こえてしまった以上このまま無視するのも後味が悪い。
自分の性格を恨めしく思いつつも、私は悲鳴の聞えた森へと高度を落とした。

「確か……ここら辺かな?」

音で場所を判断するのは、私にとっては普通の事。
その波長の出所を突き止めればいい。
上空からでは木々に覆われた森の地面までは見る事が出来ない。
仕方が無く、およその見当を付けて降りてみる事にした。

暗い夜空とはまた全く別の闇。
聳え立つ大小様々な樹により森の中には月明かりすら届かない。
それでも全く見えない事も無い。
それに、目に頼らなくても耳だけでも十分行動出来る私にとっては、あまり関係の無い事だった。
耳をピンと立て周囲の音を窺う……反応無し。
少し奥へと進み、また同じ様に周囲を窺う。

「―――こっち!」

反応あり。
私は音のする方に全力で駆け出した。



◇   ◇   ◇



さて……どうしたもんだろう?。
周囲には狼の様な妖怪が数十匹。
そして私の後ろには……恐らく人間の女性。
音の聞える方に向かった私が見た物は、今正に狼の妖怪に飛び掛かられそうになって居たこの女性。
思わず助けてしまったが、状況はあまり変わってはいない。
……どうしたもんか。
私はつくづく厄介事に巻き込まれるタイプなんだろうか?
自分から厄介ごとに首を突っ込んでいる様な気もするが……。
首を突っ込んでしまったからには、ここで逃げる訳にもいかない。
偶然にも後ろの女性は見掛けた事がある。
確か慧音さんが守る里の人間だった気がする。
兎にも角にも、この現状をどうにかしようか……。
幸い相手は知性の無さそうな獣の妖怪。
弾幕勝負をする意味は無いだろう。

「手加減する必要も無いけど……」

私は懐から愛用の拳銃の一丁を右手に取り、先頭に居た獣に向かいそのまま引き金を引いた。
放った弾丸は感知される事もなく、相手の額を貫く。
それに反応し、その後ろに居た獣がこちらに向かい突進して来た。
半歩ずらす事でそれをやり過ごし、すれ違い様に銃身を腹に突きつけ一発。
貫通した弾はその奥に居た獣の頭に直撃した。
……ご愁傷様。
私の死角を突いて飛び掛ろうとしていた獣を、振り向く事もせず左手に取り出した拳銃で撃ち抜く。
私に死角からの攻撃は無意味だ。
この耳が空間を把握し、音や波長で動きを捉える。
目に頼らずとも獣達がどこに居るのか、どういう動きをしているのか手に取る様に分かる。

「……まだやる?」

言葉を理解出来るとも思えないが一応は聞いておく。
案の定、私の言葉に耳を傾ける気も無いらしく、周囲に居た何匹かの獣が走り出した。
……少し本気を出してみよう。
向かってくる獣の中で数匹が固まっている所、そこに狙いを定め弾丸を撃ち出す。
一発の銃声で数匹居た獣が短い悲鳴を上げ進行を止める。
他に近づいてくる獣は無視し、枝の上から機会を窺って居た獣。
その足元の枝に向かい右手に持った拳銃を放つ。
乾いた銃声と共に放たれた弾丸は、枝に着弾すると共に小さな爆発を起こし、枝もろ共獣を吹き飛ばす。
先程こちらに向かい走り出していた獣は射程内に入ったのか、その鋭い牙を―――何も無い中空に向かって
突き立てた。
……挙句、立っていた樹に激突し、そのまま気絶した。

ここはもう既に私の空間。
真っ直ぐ歩く事も出来ず、立ってる事すらままならない。仕舞いには幻覚すら見える。
狂気の月に住まうは狂気の兎。
そしてその赤い瞳は狂気の瞳。

私の視界に入った時点でもう既に貴方達は負けている。
ここは木々に囲まれた森の中。
地上を照らす月明かりすら届かない暗い森の中。
ならば私が見せて上げよう。
狂気に狂った赤い月を―――

周囲が赤に染まる。
常人ならこの場に居るだけで気が触れてしまうこの世界。
さぁ、貴方達はどこまで耐えてくれる?
それとも狂い切る前に殺して欲しい?
どの道、私に視られた時点で逃げる事すら叶わない。
大人しく狂うか大人しく死ぬか。
貴方達にはこの選択肢二つだけ。
―――さぁ、どちらがいい?



◇   ◇   ◇



周囲に音は無い。
風に吹かれ、ザァザァと木の葉が擦れ合う音だけが鳴り響く。

「……」

それでも一応周囲を窺って置く。
……が、やはり一切の反応は無かった。
獣達の相手を終えた私は両の手に持った銃を懐に収め、女性の方に目をやった。

やはり、思った通り慧音さんが守る里の人間の様だ。
何でこんな時間にこんな所に居たのかは分からないが……。
確かにここから然程離れていない所に里がある事にはあるが。
それでも歩くには少し遠い距離、しかもこんな夜更けに……。

それは後で聞く事として、女性の姿を見てみる。
服は所々裂けた様に破れており、右肩からはさっきの獣にやられたのか血が流れ出ていた。
取り合えず放って置いて良さそうな怪我では無いので、一先ず女性の治療が先だと判断し、小ぶりの短剣を
取り出した。

「っひ!」
「……?」

……あぁ、なるほど……。
急に女性が短い悲鳴を上げたので思わず後ろを振り返ったが、そこには横たわった獣が居ただけだった。
彼女は今の私の姿を見て悲鳴を上げたのだろう。
それはそうだ……ついさっき目の前であれだけの光景を見せられて怯えない普通の人間が要る筈も無い。
傷口を露出させる為にと思ってナイフを取り出したのが拙かったか……。
とは言っても、女性の傷口からは未だおびただしい量の血が流れ出ていた。

―――このまま催眠でも掛けて眠らせてしまおうか。

一瞬そう思ったが、罪の無い人間に向けてこの瞳を使うのも忍びない。
なら、言葉で分かって貰うしか無いだろう。
そう思い、私は暗い森の中でも顔が見える位まで近づこうと女性に近づいた。
女性は怯えてるが……まぁ、気にしない。

「私の顔、見た事ありませんか?」

これ位近ければ顔くらい見えるだろうと言う所で、腰を抜かしてしまったのか座り込んでいる女性の視
線に合せる様にして屈み込み尋ねてみた。

「えっ?」

驚いた様な顔と声を出し、目を大きく見開き唖然としていた。
今から殺されるかもしれない相手にいきなりこんな事尋ねられたら驚きもするだろうか。
取り合えず安心して貰えるよう笑顔を見せる事にする。返り血は浴びてない……と思う。

「薬屋さん……?」

恐る恐るといった風に聞き返して来た。
それを認知してくれたなら後は話が早い。

「はい、そうです。取り合えず傷の具合を見ますから、じっとしてて貰えますか?」
「あっ……」

自分が怪我をしている事に今気が付いた様な感じで小さく驚いている。
今度はナイフを見せても大人しくしてくれた。
薬屋さん、という事もあって信用して貰えているのだろうか?

服を肩から切り裂き、傷を覆っていた布を取る。
鞄の中に入っていたタオルで、傷口を触れない様に周囲の血を拭き取り、もう一度傷口を見てみる。

「思った程、傷は深くないですね……」
「……」

よかった、これなら今ある手持ちの道具でも治療してあげる事が出来そうだ。
鞄から今度は消毒液と包帯を取り出し、ガーゼに消毒液をかけてそれを傷口に当てる。

「ちょっと……と言うよりかなり染みますよ?」
「……っ」

痛いだろうに……それでも声を上げずに我慢してくれた。
止血剤を塗り、新しいガーゼを当ててその上から包帯を巻いていく。

「これでよし……っと」
「……」
「念の為、里に戻ったら慧音さんか医師のおじさんに診て貰って下さい」

後はこの人を里まで送り届けて……。

「はぁ……」

思わず溜息が零れる。
永遠亭に帰る頃には日付が変わりそうだ……。

「……あの」
「はい?」

これからの事を考えて気落ちしていた所に、急に声を掛けられ上擦った返事を返してしまった。

「あの……どうして私を……?」
「……?」

どうして……とは、何がどうしてなのだろう?
助けた理由を尋ねられているのは分かるが、何故そんな事を疑問に?

「取り合えずここから離れませんか?」
「えっ?」
「目を覚まされるとまた色々と厄介なので……」

と後ろに視線をやり、獣の方を見る。

「死んでいるんじゃ……?」
「いえ、そこまではしていませんよ」

いくら人を助ける為だからといっても、命まで取ったりはしていない。
この女性に罪が無ければ、この獣達もまた罪は無い。
幻想郷において、妖怪が人間を食する事は当然の事。
目の前でそれが行われるのが嫌だったからとは言え、獣達が悪いと言う訳でも無い。
私の我侭の所為で、この獣達の命を奪う事の方が罪な事に思われた。
あのまま見捨てても、それはそれで罪深いと思うが……。

「そうなの……ですか?」
「はい、そもそも妖怪はあれ位じゃ死にませんから」

さすがに最初の一発目はかなり加減したが。



◇   ◇   ◇



助けた女性を送り届ける為、里へと足を向けている。

「えっと…何でしたっけ?私が貴方を助けた理由?」

里に着くまで、忘れ掛けていた先程の疑問に答えておく事にした。

「あ……はい」

実はあれから私も少し考えていたのだが……。

「それは妖怪の私がどうして人間の貴方を助けたのかって事?」
「はい……そうです」
「ん~……」

先程の疑問は、私が妖怪だったからの様だ。
とは言っても、私自身そんな事を考えた事も無かった。
規格外の人間ばかり見ているからだろうか?

「私が妖怪……って言うのはあまり関係無いと思います」
「……」
「う~ん……」

どう説明したら良いのだろう?

「私は薬師をしています。人を助ける為の仕事です」

上手く説明できないのなら思った事をそのまま言ってしまおう。

「目の前に命の淵に立たされた者を見て、そのまま見捨てる様な事をすれば薬師として失格だと思います」

怪我や病気以外ではあまり関係無い事かもしれないが……。

「まぁ、簡単に言うと私の性格ですね」

あはは、と苦笑いを浮かべてしまう。

「性格ですか?」
「見て見ぬ振り何てしたら後味悪いじゃないですか」

あっ、良い例えを思い付いた。

「ほら、慧音さんですよ。慧音さん」
「えっ?」

女性はその言葉に前方に目を凝らす。

「あぁ~、そうじゃなくって……」
「……?」

勘違いされてしまった。

「慧音さんが里の人を助けるのと同じですよ」
「あ……」

そう言う事かと半分納得の女性。

「それにもし、あそこで貴方を見捨ててしまったら慧音さんに怒られちゃいますよ」

むしろこっちの命すら危うい。

「私も慧音さんの悲しむ姿は見たくありませんから……」

オマケに私の所為で悲しませる事になったら、どう詫びればいいのか……。

「という事で良いでしょうか?」
「あ……はい」

よかった……どうやら納得してくれた様だ。

「あの……」
「はい?」

まだ何かあるのか?
そう思っていると、女性は急に歩みを止め……。

「ありがとうございました……」

その場で頭を下げられた。

「そんな……気にしないで下さい」
「いえ、本当にありがとうございました」

感謝されるのは嬉しいが照れくさい。
少し顔が赤くなっているかもしれない。
まぁ、暗くて見えないだろうけど……。

「それより、どうしてこんな夜更けに?」
「それは……」

再度歩みを始めた後、今度は私が疑問に思った事を尋ねてみた。
が、それっきり口を硬く閉ざしてしまった。
何か深い訳があったのだろうか?
それは言えない様な……もしくは言いたくない事なのだろう。
俯いてしまった女性を見ると、そうなのかもしれないと思ってくる。

「すいません……話したく無いならもう聞きませんよ」
「……ありがとうございます」

よっぽど話せない事なのか、こちらの言葉に礼を言う事で女性は肯定した。
女性が黙り込んでしまった為、深い森にまた静寂が訪れる。
一応周囲を警戒しながら歩いてはいるが、森の中には風に揺られた木々の音と二人の足音しか聞えて来なか
った。

空が見えないので正確な時間は分からないが、きっともう屋敷の皆は寝静まっているだろう。
人里も、もうすぐ見えてくる筈。
後はこのまま一人で行って貰おうか……?
それとも最後まで送り届けるべきか。
そんな事を考えていると、ふいに何かの音が聞えた。

「……?」

耳を澄ませ音の方に集中する。

「……慧音さん?」

音らしき物は、慧音さんの声だった。
恐らくこの女性を探しているのだろう。
慧音さんも心配していた様だ。

こちらから大声を出しても慧音さんには届かないだろう。
私は耳が良いから聞えるだけだ。
ならばこちらも大きな音を出して知らせるとしよう。

懐から拳銃を取り出し、空に向かって放つ。
暗い森の中に耳を劈く様な銃声が鳴り響いた。

「……っ!」

隣にいた女性は、急な銃声に驚き尻餅を付いてしまった。

「あ、すいません。大丈夫ですか?」
「は、はい……」

女性に手を貸し立ち上がらせてあげる。
その顔は、いきなり何するんだ、と言わんばかりにこちらを伺っている。

「遠くに慧音さんの声が聞えたもので……多分、今ので気付いてくれたと思います」
「そ、そうなんですか?」

この女性にも慧音さんの声は届いてないだろう。
そのくらいには距離がある様だ。

もう一度耳を済ませてみる―――大丈夫、どうやら聞えていた様だ。
こちらに向かって走る音が聞き取れた。
……と言うか、音よりもこの殺気は……。

―――拙い!

と思った時には既に遅かった。
暗い森の木々の間から青く輝く一条の光が……。

「わぁ!?」
「きゃ!?」

閃光は私の頬をわずかに掠め、後ろの木をへし折った。

「その女性から離れろっ!!」

ザッ、という足音と共に聞き慣れた女性の声がする。
その顔は、今すぐ忠告を聞かないとただじゃ済まさないといった風だ。

「ちょ、待ってください!私です、鈴仙です!」
「えっ!?」



◇   ◇   ◇



「ほんっと~に、すまん!」
「もういいですよ」

あの後、身の危険を感じた私は、それこそ今までに無いほど必死に弁明した。
その甲斐あってか慧音さんも納得、理解してくれた……までは良かったのだが。

「いや、本当にすまなかった……」

さっきからこの調子だ。
私が女性を助けて、里まで送ろうとした事を知った後からずっと平謝り。
こっちは顔を上げてくれるよう何度お願いした事か……。

「こっちも知らせ方が悪かったし、こんな夜更けですから」

知り合いの可能性より、女性を襲おうとしている妖怪である可能性の方が高い。

「うっ……そう言ってくれると助かる……」

しまいにゃ、落ち込んでしまった。
これで泣き出したらもう完璧だ。

「この礼と詫びは必ずする」
「気にしないで下さい、本当に偶々ですから」
「なら詫びの方だけでも……」

よっぽど気にしてる様で、中々引き下がってくれない。
どうしよう……。

「何なら今から家に来てくれないか?」

家、という言葉に今更ながらに思い出した。

「それは有り難いんですが、私も早く帰らなくちゃ……」
「そ、そうか……って配達の帰りか?」
「はい……色々とありまして……」
「成る程、また厄介事に首を突っ込んだな?」

答えが出た。
私は厄介事に巻き込まれているのでは無く、自分から突っ込んでいるらしい。
ショック……。

「いや、でもお前がそんな性格で良かったよ……本当に」
「う~ん……私としては微妙な心境ですね……」

この性格がなければ、女性を助けたりはしなかったかもしれない。
そもそも霊夢を放って置いて、あの時すぐ帰っていたらあの状況には巡り合わなかっただろう。
そう思うと、私がこの女性を助けたのは本当に偶然の事だった様だ。

「こんな遅くまで……永琳殿も心配しているんじゃないのか?」
「う~……早く帰ろうとは思っていたんですが……」
「災難続きだな」

くくっ、と声を殺して笑い転げる慧音さん。

そんなに笑わなくてもいいじゃない……こっちだって好きでこんな時間になった訳じゃないんだから……。
何だかこっちが泣きたくなって来た……。

「急いでいるんだろう?帰らなくて良いのか?」
「帰りますよ~だ……」
「はは、そう拗ねるな」

女性は慧音さんに任せておいて問題は無いだろう。
私もそろそろ帰らないと寝る暇すら無くなってしまう。

「それじゃ、私はこれで」
「あぁ、この礼は何時か必ず」
「はい、楽しみにしてますね」

では、と別れを告げ。今度こそ本当に帰路を急ぐ事にした。

飛び立って空の上に出て気が付いた。
きっともう日付も変わってしまっている事に……。



◇   ◇   ◇



静まり返った古風な屋敷。
やっとの思いで私はようやく永遠亭へと帰って来る事が出来た。
もう起きてる者は殆ど居ないだろう。

私は自室に戻る前に、研究室に顔を出してみる事にした。
もし、師匠が起きているならここに居る筈。
居ないならばもう既に寝ていると言う事だ。
研究室は外からでは、防音対策をしている為、中の様子を伺う事は出来ない。
師匠がここに居ない事を祈り、私は研究室の扉を開けた―――

「お帰りさない、遅かったのね」
「あ……」

研究室の椅子に腰掛けた師匠が、顔だけをこちらに向け私を迎えてくれた。
それを見た瞬間、私の目には涙が溢れていた。

「遅くなりました!只今戻りました!」
「……だからって泣く事は無いでしょう?」

違います、遅くなったから泣いてる訳ではありません……。
師匠は……私を待っていてくれた。
そう思った時には既に涙が零れていた。

「疲れたでしょう?……ご飯は?」
「あ、そう言えば……」

言われた途端、急にお腹が空いて来た。
思えば朝食以来、何も口にしていなかった。

「余り物で悪いけど……今、温めるわね」
「えっ?」
「どうせ何も食べていないだろうと思って、ちゃんと貴方の分は取って置いてあるわ」

……師匠。

「それとも、もう寝る?」
「いえ、頂きます!」
「そう、じゃあ、少し待ってなさい」

そう言うと師匠は、火に掛けてあったビーカーをずらし、小さなお鍋を火に掛けた。
……ここで温めるんですね。
私は師匠の後ろ姿を眺めながら、ぼんやりと思った事を聞いてみた。

「師匠……どうしてこんな遅くまで……?」
「ん~?……どうしてって、今日は例の薬を作る日よ?」

確かに今朝、そんな話をしたような覚えがある。

「だから貴方が帰って来るのを待って居たのよ」
「えっ?それって今から作るんですか?」
「今日、という約束でしょう?」
「いや、確かに今日ですけど……昼間でも夕方でも良いじゃないですか」

それなのに何でこんな真夜中に……。

「言ったでしょう、貴方を待って居たって」
「……えっ?」

それはつまり……。

「師匠、それは―――」
「はい、出来たわよ」

私の言葉は、師匠の声によってかき消されてしまった。

「ご飯は少し冷めてるけど……まぁ、そのくらいは我慢しなさい」
「……はい」

師匠が出してくれたご飯は、少し冷えて硬くなっていたが、私の心には暖かかった……。



◇   ◇   ◇



随分遅い夕食を食べ終え、私はやっと一息付く事が出来た。

「ご馳走様でした……」
「はい、お粗末様でした」

師匠は私が食べている間も、何を言う事も無くただじっと私を見詰めていた。

「師匠」
「ん……何?」
「どうしてこんなに遅くなったのかは聞かないんですか?」
「そうねぇ……興味が無い訳じゃないけど……貴方が言わないなら私からは聞かないわ」

その心遣いにまた涙が出そうになる。
私は今日あった出来事を迷う事無く、師匠に話した。

「―――そう……随分楽しい一日を過ごしたみたいね」
「もう、散々でしたよ……」

私が話しをしている間、師匠は終始笑顔でそれを聞いて居てくれた。

「それにしても、良くもまぁ苦労する娘ね」
「うぅ……言わないで下さいよぉ~……」

自分でも分かり切っている事を、しかも笑って言われてしまった。

「慧音にも、随分と感謝されたんじゃない?」
「えぇ、そりゃもう地面に穴が開く程に」
「ふふ、あの半獣らしいわね」
「それよりも、あの霊夢に礼を言われた事の方が意外でしたよ」
「ふーん、それは興味深いわね……」

しばし、師匠と雑談に花が咲き、時間を忘れてしまっていた様だ。

「あ……師匠、そろそろ寝なくても平気なんですか?」
「そうね……正直言うと結構眠いのよ」
「なっ!……それならそうと早く言って下さいよ!」
「ただ、貴方の話を聞くほうが優先だと思っただけよ……気にしないで」

本当に……この師匠は。

「私も、もう寝ますから、師匠も早く寝て下さいね?」
「ええ、分かってるわ。寝坊なんてしたら姫に笑われるかもしれないし」
「私達が起こさなかったら、姫は一日中寝てるんじゃ……?」
「……ウドンゲ、そう姫に伝えておくわ」
「え……えぇ!?ちょ、待ってくださいよ!何ですかそれ!?」
「明日が楽しみね?」
「ししょ~……」

師匠はやっぱり師匠だった。
相変わらずいつも通りにからかわれ、それとなく見守ってくれている。
私の尊敬する、最愛の師匠だ。



「それでは師匠、お休みなさい」
「はい、お休みなさい」

―――私は師匠と別れ、丸一日振りに自室へと戻った。
服を寝巻きへと着替え、そのまま布団の中に入る。

今日は本当に色々あった……。
色々な事があり過ぎて思い出すのも大変だ。
今日一日だけで大分疲れたが、悪い気はしない。
師匠が言っていた通り、楽しい一日だったと思う。
そう思うと、こんな割り食う性格も捨てたもんじゃないな、と思う。

私は私であって本当に良かったと思う。
永遠亭に来て本当に良かったと思う。
師匠や……他の皆に出会えて本当に良かったと思う。
過去……と言う程昔じゃないが、色々と辛い事もあった。
でも今は心から幸せだと言う事が出来る。
この幸せは何時まで続けて行く事が出来るんだろうか……?
出来れば永遠にこの幸せが続けばいい。
でも何時かはそれも終わってしまう事。
過ぎ行くこの一時を噛み締めながら、私は今を大切に生きる。
過去を捨てる訳ではなく、過去と正面から向き合い。
それでも笑顔で、私は幸せだと言える様に……。

頭がぼんやりして来た……。
眠りが私を夢へと誘おうとする。
夢の中でもきっと私は笑って居るだろう。
だって、私は幸せだから……。

明日起きたら、師匠の研究を手伝わなくちゃ……。
そんな事を霞掛かった思考の中で考え、私の意識は夢の中へと―――

















































「れいせーん!覚悟ぉーーーーーーーーーーーー!!!!!」

「て、てゐ!?」

あぁ……私は何て幸せなんだろう……。

だから誰か……私に安らぎと安息をお与え下さい……。

「いやぁーーー!もう寝かせてぇーーーーー!」

「問答、無用ぉーーーーーーーーー!!!!!!!!」

「やっぱこんな生活、もう嫌だぁーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」




どうも初めましてー、黒うさです。
何か色々とやってしまった感がありますが、如何だったでしょうか?

人生初のSSですが、詰め込む物を詰め込みすぎた様な気が……。
これでも読んでいてダレない様、色々とハショったですが、無駄な所が多いかもしれません。

本文に関して言いたい事は沢山ありますが、書ききれないので省略します。
文法、作法など全く知らない者ですが。
気になった点が御座いましたら、どうかお知らせ下さい。
それらを参考にこれからも書いて行こうと思います。

最後に一つ。
「起きてたのに……」と小さく呟く輝夜は可愛いと思った。
黒うさぎ
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コメント



0.3900簡易評価
8.80名前が無い程度の能力削除
〉この耳が空間を把握し、音や波長で動きを捉える
某イベルグエン(ジの人@海皇記)みたいだ…でも強いうどんげだよ!すてき!
…まぁ本当に素敵なのはきっと腋が出てる霊夢の寝巻k
9.50跳ね狐削除
それぞれのキャラクターの特徴を捉えていて良い作品だとおもいます。
ただてゐが鈴仙を何故に撲殺しようとしたのか。永琳の薬、出したのなら使ってみて欲しかった、という二つが気に掛かりました。

文法、作法の方は文句なしです。
鈴仙も鈴仙らしくてすんなり読めました。面白かったですよ~。
17.80翔菜削除
>「今回だけは誓いを破っても構わないわ、私が許す」

えーりん最高。
ほのぼのとした部分も、ちょっとシリアスげな部分も良い感じでした。

ただ、減点要素にはなりえるほどではないのですが、あの性格反転の薬を何かに使って欲しかったなぁ、と。
18.70変身D削除
レイセン、エエ娘やなあ……彼女の性格が良く出てると思いますー
使われなかった例の薬ですが、きっと、きっと次回作で使ってくれると期待し(殺
21.90名前が無い程度の能力削除
キャラの立ち回りは見事!
あとはストーリーの起伏、伏線の回収ですかな
27.80名前が無い程度の能力削除
やっぱウドンゲはこうだよな~
30.無評価黒うさぎ削除
えっと、コメントありがとうございます。
例の薬ですが、実は今後いつか書くSSの為の複線だったり…。
まぁ、書くとしたら全キャラ壊れてますが。

自分で読んでいて、何か話の流れに違和感を感じるので。
次回書くならばその辺をどうにかしたいと思います。
34.70名乗らない削除
村人の女性はまぁ・・・逢引ですかね?と邪推してみるw
48.80名前が無い程度の能力削除
なかなかのうどんでした(-人-)
51.50印度削除
先に何気ない一日の方を読んだので、順序が逆になってしまいましたが・・・
黒うさぎ様の描かれるうどんげは本当に素晴らしいですなぁ。

得点が50なのは、先に癖で匿名の50を入れてしまったからです・・・
合わせて100ということでどうか(?
56.100煌庫削除
これはいい鈴仙のお話だなぁ。
・・・・・・・姫様できるんだ。
66.100名前が無い程度の能力削除
最初のうどんげとてゐのやり取り どっかでみたなぁ・・・・

と思ったけど、普通に面白かったです
性格反転した姫様ちょっとみたかった
82.80絵描人削除
鈴仙と永琳との遣り取りに癒されました。