Coolier - 新生・東方創想話

おきらくよーよーむ:4

2006/04/15 18:12:03
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「そろそろ夜明けね」

「もうそんな時間か。気付かなかったぜ」

「魔理沙は時間に無頓着すぎるのよ。だから私の図書館の本も返さない」

「返さないんじゃなくて、返せないんじゃない?」

「そ、そんな事はないぞ? と」

「どうだか。どうせ借りた本も他の研究書とごっちゃになって見つからないんじゃないの?」

「……今度小悪魔に家捜しさせようかしら」

「それはまずい」

「何がまずいのよ」

「崩れる。迂闊に触るとあんなものとかこんなものとかとても口じゃ言えないようなものとかがひっくり返る」

「そんな事になる前に片付けなさいよ。他所の図書館を荒らす前に」

「片付けるためにお世話になってるんだぜ?」

「なんで片付けるために図書館に行くのよ?」

「整理整頓が楽に出来る魔法は無いものかと」

「……それぐらい自分でやりなさい」









   そのよん 三人寄ればだいがっしょー









「雲だな」

 風を辿っていくと目の前には分厚い雲海が広がっていました。

「ええ、雲ね」

「蜘蛛じゃなくてね」

「突っ込まないからな」

「雲に?」

「いや、雲には突っ込めよ」

「私の勘も雲に突っ込めと……」

 むむむ、と霊夢はわざとらしく考え込むポーズを取りました。
 勘なのに考え込む必要はあるのでしょうか。ないですよね。

「雲のどこにボケがあるのかしら?」

「いや、その突っ込みじゃないし」

「え、違ったの?」

「……あいつの言った通りお前の頭は春満開だな。明々後日から春巫女と呼ぶ事にしたぜ」

 やれやれ、と魔理沙はアメリカンに肩を竦めます。

「明々後日とは微妙な間を……」

「明々後日には自分でも忘れてるに10フラン」

「フランかよ! てか私を賭けの対象にするな!」

「因みに1フランで妹様と弾幕ごっこ1回」

「そっちのフラン!? それマジで死ぬから!」

 話題の妹様と、以前に弾幕ごっこをした事のある魔理沙は必死です。
 本当にやらされたら本当に死にかねないので、別の意味でも必死です。

「明後日までなら図書館から持ち出した本を全て返せば帳消しに出来るわよ?」

「まだ本の事を引っ張ってるのか!」

「借りた物を返すのは当たり前の事でしょ?」

「今までボケ発言繰り返してる霊夢には言われたくない!」

「ぐだぐだ言う前にちゃちゃっと雲を抜ける」

「ぐだぐだにしてるのはどこの誰だっ!」

「「そこの魔理沙」」

「なんでこういう時だけ息ぴったしなんだよ!!!」

「「さぁ?」」

「ちくしょー! 首傾げるのも一緒かよっ!」

 微妙にかわいいじゃないか、と思ったけれど口には出さない魔理沙でした。
 だって聞かれたら調子に乗りそうだし。

「とりあえずこれ以上は魔理沙が可哀想だからさくっと雲を突き抜けてみない?」

「そうね。無駄話をしても先に進める訳じゃないもの」

「無駄話を広げたのはお前らだよっ!!!」

「きっかけは……春巫女発言っ! つまり魔理沙の発言から全ては狂ったのよ!」

 霊夢はどぉーん、と効果音を背負いそうな勢いで指を魔理沙に突きつけます。
 それを受けた魔理沙もがーん、と効果音を背負いそうな感じの表情になりました。

「確かにそうだけど、そうだけどっ!」

「遂に魔理沙が罪を認めたわ」

「これでこの話題はお終いね」

「くぁぁぁ~! マジで頭に来た!」

「その怒りで雲を吹き飛ばしてみない?」

「怒りで力が増幅されるなんて非論理的ね」

 怒り心頭の魔理沙を霊夢とパチュリーが茶化します。

「私の八卦路が光って唸るっ!」

「なんか始まったけど?」

「新しい技でも見られるのかしら」

「世の不条理を憂いて嘆くっ!」

「……つーかこれ大丈夫? 止めなくて」

「ギリギリでセーフじゃない?」

 ギリギリです。パチュリーが言うなら、それは誰がなんと言おうがギリギリなんです。

「恋符『マスタースパーク』ゥゥゥッ!!!」

「結局いつものね」

「ええ、期待して損した気分よ」

 一体パチュリーは魔理沙に何を期待していたのでしょうか。持ち出された本がばらばらと出てくるとかでしょうか。

「ふぅぅぅぅ………」

「終わった?」

「……すっきりしたぜ~」

「魔理沙、その言い方親父臭い」

「じゃ、ちゃちゃっと雲を抜けますか」

「既にマスタースパークで突き抜けているけれど」

 目の前の雲海には文字通り穴がぽっかりと開いていました。

「雲のトンネルなんて滅多に経験できないぜ」

「普段はこんな高さまで飛ばないものね」

「高さ以前にそもそも出不精でしょうが、あんたは」

「さーて、日の出でも拝めないものかね」

「願掛けでもするの? 魔理沙らしくもない」

 今日は氷河期かしらね、と霊夢はかなり失礼な事を考えてしまいました。
 パチュリーはパチュリーで似たような事を考えていたようです。

「どうせならスカッとした気分でサクッと異変を解決したいだろ?」

「なんだ、気分の問題か…… 魔理沙らしい」

「気分は大事だぜ。気が乗らない時は何やっても駄目だしな」

「ふぅ、図書館に来る時にも気が乗っていなければいいのだけど」

「気が乗らなかったらそもそも家から出ないぜ?」

「その間は何をしてるのよ」

「精力増強のきのこを割りと食べてたり食べてなかったり」

「……そのきのこを分けてもらえないかしら?」

「お、パチュリーが健康に気を使うなんてどういう風の吹き回しだ?」

「失礼ね。以前から健康体になる為の魔法を研究中よ」

「魔理沙の事言えないじゃない。魔法で健康を手に入れようなんて」

「同感。お前はまず外に馴染め。とりあえず一番手決定な」

「一番手って何の……」

「霊夢、そっちは?」

「OKよ、魔理沙」

「よし、それじゃ行くぜ?」

「いや、だから何の……ってどうして二人は私の両脇をがっしりとホールドしているのかしら?」

「3。細かい事を気にすると禿げるわよ?」

「カウントダウンが始まっているこの状況も細かい事で片付ける気?」

「2。とりあえず霊夢も後でぶっ飛ばす」

「とにかく実行の前に説明を要求するわ」

「1。舌噛まないようにね」

「……まさか……っ!」

「「ゼロぉぉぉぉぉぉぉーーーーー!!!!!」」

 カウント0と同時に二人は急加速をし、雲に開いた穴に向かってパチュリーを投げ飛ばしました

「っっっっっ~~~~~!!!!!」

「おお~、予想以上に綺麗に吹っ飛ばされてくれたぜ」

「じゃ、私はこれで」

「まぁ待て、霊夢。お前にも楽しいアトラクションを用意してるぜ?」

 一仕事済ませてすっきりとした表情で先へ進もうとする霊夢の方を、がしっと掴んで止める魔理沙。

「残念ながら私は急いでいるのよ。残念ね」

「急ぐならなおさらぴったりのアトラクションだから気にする必要はないぜ」

 逃げようとする霊夢。それに対して、逃がすまいとぎりぎりと手に力を加える魔理沙。

「一応どんなアトラクションかを聞いておくわ」

「なに、大した事のない簡単なアトラクションだ。説明をするまでもないな」

「何よ、説明出来ない程如何わしい、の間違いじゃないの?」

「百聞は一見に如かず、習うより慣れよ、だぜ」

「その二つは微妙に意味違うわよ?」

「大まかには同じって事だろ? 大同小異だぜ」

「そういえばパチュリーは大丈夫かしら?」

 霊夢は話を逸らして離脱を試みました。

「すっかり忘れてたぜ。私たちを置いて先へ行くとはいい度胸だ」

「そうよね。早く追いついてとっちめてやりましょ」

 上手い事話を逸らすことが出来た、と霊夢はほっと胸を撫で下ろしました。

「んじゃ、超特急で飛ばすぜ!」

「え?」

「私達は流星になるんだぁぁぁ!!!」

「何で私までぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ………!!!」

 ほっとしたのも束の間。霊夢は魔理沙に肩を掴まれたまま引きずられるように一条の流れ星になりました。










「むきゅ~………」

「うっぷ………」

「さすが雲の上だ。好き勝手にやってもなんともないぜ」

 投げ飛ばされたパチュリーと魔理沙に引きずられて超高速飛行をした霊夢はぐったりと、それに対して魔理沙は日の出の鑑賞にしゃれ込んでいました。

「いやぁ~、それにしても暖かくて居心地がいいぜ」

「そう、ね…… はぅ……」

「普通、高度が上がると、気圧が下がって、気温も、下がる筈、なんだけど……」

「無理して解説しなくていいからな」

「ここが、暖かいという事は、おそらく奪った春がこの近くに、集められている筈という事よ。ふぅ、ようやく調子が戻ってきたわ」

「お前は解説をすると調子が良くなるのかよ……」

 魔理沙は、そんなパチュリーの様子を見てげんなりとした模様です。因みに霊夢は未だに本調子ではありません。
 そんな三人に白い人影が近付いて来ました。

「お、また誰か来なすったぜ」

「よよよ! 第一春人発見ですよ!」

「春人って何よ……」

「良くぞ聞いてくれましたぁ! 春人とは、ズバリその名の通り春を体感した人の事ですっ!」

「……どこかの新興宗教みたいね」

「で、その春人がどうしたんだ?」

「あなた達が栄えある今年最初の春人ですよ! という訳でレッツ弾幕っ!」

 掛け声と共に展開される弾幕。

「何故そこで弾幕が出るっ!?」

「春といえば弾幕ですよ~」

「私は初耳だぞっ!」

「奇遇ね、私も初耳だわ」

「つまり春イコール弾幕はガセで沼にドボン!?」

「うそつきね」

「くぁぁ! どうしてお前はそう落ち着いていられるんだよ!」

「焦っても良い結果は残せないらしいわよ?」

「質問に疑問系で答えるな!」

「ぅぁ……」

「霊夢もいい加減にしろよ! 早くしないと弾に当たるぜ?」

「パチュリー…… 足止めと防御……」

「わかったわ」

「お、遂に復活か?」

「ええ…… 私のとっておきがあるのよ、誰にも見せた事のない、ね……」

「よっしゃ! じゃあ私も……」

「待って、魔理沙には別の役目があるわ……」

「お、なんだなんだ?」

「とりあえずそこにまっすぐ起立の姿勢になって」

「こうか?」

「そのまま腕を頭の後ろで組んで」

「組んだぞー」

「後は動かないようにね」

「……動かないようにって、これじゃ何も出来ないぜ?」

「ええ、魔理沙はそれでいいのよ。だって何かをするのは私なんだから……」

 霊夢はすぅっと魔理沙の背後に近づくと、おもむろに魔理沙の両足首を脇でがっしりとホールドしました。

「おいおい、何のつもりだ?」

「これが私のとっておき! 回符『人間大車輪・遥かなる悠久の大空へ』!!!」

「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉおぉ! 目が、目が回る!」

 ご大層にスペルカードっぽい名前をつけていますが、要はジャイアントスイングです。

「ていうか、お前、さっきまでの不調っぷりはどうしたんだよ!?」

「うふふふ、限界を、超えた、今の私には、リバースなど、怖くはないわぁぁぁ!!!」

「いや、怖がれよ! というよりもその被害は全部私に来ると思うんだががが!」

「遠心力万歳!!! ビバ遠心力ぅぅぅ!!! 遠心力は世界一ィィィィィ!!!」

「うわぁぁぁ! 霊夢が壊れたぁぁぁ! パチュリー、そいつはいいから私を助けろぉぉぉ!」

「6秒後に手を離せばドンピシャのタイミングよ」

「パチュリィィィー! お前もかぁぁ!!!」

「これが、真の、ミサイル魔理沙、略してミサマリ、だぁぁぁぁぁっしゃぁぁぁぁ!!!」

 霊夢の掛け声と共に、慣性に従って等速直線運動を始めるミサマリ。
 ご丁寧にひねりも加わって相当体に悪そうです。

「のおおおぉぉぉぉぉぉ!」

「春! 春! 春ったらはぶべふぉぉぉぉっ!!!」

 パチュリーの予測通り、ミサマリは見事に白いのの鳩尾に抉り込む様に直撃しました。

「……うぁ、リバースの、危機、だ、ぜ………」

「は、はる、なのに…… この仕打ちはなぜ………」

「理由一ぃ! いきなり私達に向けて弾幕っ!
 理由二ぃ! 宗教は我が神道のみで十分っ!
 理由三っ! ストレス発散の為!」

「わぁー、かなり主観的な判断だわー。特に三番目」

「そ、そんなことで…… 無念……」

「ぅぇっぷ……」

「せめて……綺麗な弾幕の前に、散りたかった……」

 ロケットずつきなんかにやられるなんて、と呟くと白いのはそのまま雲海に向かって自由落下を始めました。

「これが絶対勝利の力よ!」

「天罰光臨ね」

「私が……何をしたって、言うんだ……」

「一つ、私をぶん投げた」

「二つ、私を引きずった」

「「三つ、その後の態度が気に障った」」

「それはお前たちが……」

「シャラーップっ! 聞く耳持たず!」

「さて、休んでいる暇はないわね。さっさと行くわよ」

「うぁ… 休ませてくれ、マジで……」

 ダウン中の魔理沙を引っ張って先へ先へと進む二人でした。










「門ね」

「門だぜ」

「見紛う事なきまでに門だわ」

 ここは雲の上。
 なのに三人の目の前にはなぜか門がありました。

「怪しいな」

「怪しいわ」

「これ以上ない程に妖しいわね」

「似たようなネタは厳禁だぜ」

「ちっ……」

 ボケを潰された霊夢は舌打ちします。

「さて、普通に考えればこの門には何か仕掛けてあるはずだが」

「もしくはうちみたいに門番がいるかね」

「結界が張ってあるから門番はいないんじゃない?」

「さすが霊夢だぜ。一発で結界を見破るとは」

「魔法に携わる者として結界にも気付けないのは問題じゃなくて?」

 魔法使いは相手の魔法にも敏感である必要があります。多分。
 だからパチュリーとしては魔理沙の無神経っぷりが許せなかったのでしょう。

「さて、この結界をどう突破するかだが」

「……人の話を聞いて」

 しかし魔理沙はそれを無視して話を進めようとします。

「素人にはさっぱり解き方がわからないぜ」

「私に聞いても無駄よ。張る方専門だから」

「……だから話を」

「私はまどろっこしい事は嫌いだからな」

「聞いているなら最初からそう言えばいいのに……」

 実は最初からしっかりと聞いていたらしいです。このちゃっかり者め。

「ま、こんなご大層な物を用意する位だ。この先に何かあるのは間違いないぜ」

「一体何があるのかしら?」

「えへへ~。企業秘密だよ」

 そんな三人と門の間に割り込むように、楽器を持った三人組がやってきました。

「試しに何か言ってみたらどうかしら? 言霊に反応して開くかもしれないし」

「オンパッキャラマド……」

「臨闘兵捨皆陣烈勢全……」

「そんなもので開いたら結界の意味がない」

 ふぅ、とヴァイオリンを持った人がため息を吐きながら言いました。
 その態度にカチンと頭にきた魔理沙は思わず言いました。

「それだけ大口を叩けるんだからお前達は解けるんだよな?」

「私達はいいのよ。通り抜けられるから」

「ところであなた達は何者かしら?」

「よくぞ聞いてくれました!」

 と、今度はトランペットを持った人が前に出てきました。

「ある時は流しのアーティスト」

「またある時はあの世のお抱えちんどん屋」

「果たしてその実態は……」

「長女、騒霊ヴァイオリニスト、ルナサ・プリズムリバー」

「次女、騒霊トランペッター、メルラン・プリズムリバー!」

「三女、騒霊キーボーディスト、リリカ・プリズムリバー!」

「「「三人揃って、騒霊楽団・プリズムリバー三姉妹!!!」」」

 さんしまいぃぃぃ、しまいぃぃ、いぃ、ぃ……

「だから私はこういうのは嫌だったんだ……」

 沈黙に耐え切れずに思わず愚痴をこぼすルナサ。

「まぁまぁ、メルラン姉さんがこれで調子付くらしいし我慢しようよ」

 ぽんぽん、と長女の肩を叩きつつそう言うのはリリカ。

「ふふふ、決まりすぎて声も出ないようね!」

 そして一人で悦に浸るメルラン。

「いや、声が出ないのは別の意味で……」

「くぅ~! 私達も負けてられないぜ!」

「エーッ!? 魔理沙ってそういう趣味持ってたの!?」

「よし、やるぞ!」

「やるって何を!?」

「名乗りに決まってるだろ!」

「私は嫌よ! あんなみっともない真似できないわ!」

「それにやると言っても打ち合わせ無しでまともにやれると思うの?」

「パチュリーが意外と乗り気!?」

「ふっ、三つのハートをクロスさせれば何も問題はないぜ!」

「なんでそういうセリフが素で言えるの!?」





「むっ……」

「どうしたの? メルラン姉さん」

「今、熱い魂の炎を感じたのよ……」

「うんうん。わかったからちょっと休んでよっか? 3時間ぐらい」

「……うう、私はあんなキャラじゃないのに……」





「見果てぬ明日を追い求め、今日も見果てぬ空を行く!」

「果て無き叡智を探求し、暗き洞にて知識を貪る」

「夢はでっかく大金持ち! 誰でもいいからギブミーお賽銭!」

「ブラックマジシャン、霧雨魔理沙!」

「パープルハーミット、パチュリー・ノーレッジ」

「ミーディアムレッド、博麗霊夢!」

「「「マ・レ・パ! レディ……ゴー!!!」」」

 どぉーん。ぱぁーん。ちゅどーん。

「うぁぁぁ! やっぱ恥ずかしいぃぃ!」

 頭を抱えながら天に向かって咆哮する霊夢。雲の上だけど天はまだまだ遠いです。

「これはこれで中々…… 今度レミィにも話してみようかしら」

 何気に名乗りを上げる事が気に入ったパチュリー。そんな事したら紅魔館の株価が急降下。多分。

「私に惚れるなよ、ベイビー……」

 実はまだ続いてた魔理沙。恋色魔法使いは伊達じゃない。多分。

「くっ…… こちらはエコーを利かせてみたけど、バックで爆発を起こすなんて……」

「や、張り合うなヨ、メルラン姉さん」

「こういう事もあろうかと見栄えと音だけを重視して爆発を起こす魔法を研究してたんだぜ」

「そっちはそっちで説明始めちゃうし」

 ふふん、と鼻を鳴らして説明を始める魔理沙。

「使い道が微妙な魔法シリーズ。一つ目の爆発から順にその248、その249、その250だぜ」

「ふふふ…… あなたもやるようね。でもあのエコーもただのエコーじゃないわ! 長年の研究の結果、最も声がかっこよく聞こえるように調整してあるのよ!」

「甘いな。私の爆炎にはまだまだバリエーションがあるんだぜ。その243からその252、飛んでその267がな!」

「まだよ、まだ終わらないわ! 私達はかっこいい登場テーマも用意してるんだから!」

「こっちには浪漫が詰まった極大レーザーがある!」

「私達にだって煌びやかな合体攻撃があるのよ!」

 魔理沙とメルランの熱血論議がどんどんヒートアップします。もう誰にも止められません。

「はぁ…… 完全にスイッチ入っちゃったよ、メルラン姉さん……」

「しばらく終わりそうにないわね」

 少し離れた所で呆れているのはパチュリーとリリカ。完全に傍観者気取りです。

「あああぁぁぁぁぁ…… 状況に流されたとはいえ、あんな事をするなんて……」

「このままでは私の長女としての威厳が……」

 更に離れた所で自己嫌悪に陥る霊夢とルナサ。部屋の隅で三角座りをするかのように暗黒オーラを背負っています。



   ......数分後。

「登場シーンは逆光で、輪郭だけが辛うじて確認できるのがいいんだよ」

「そうそう。そしてバックミュージックはもちろん口笛よね」

「わかってるじゃないか」

 すっかり意気投合してしまった魔理沙とメルラン。他の四人は完全にほったらかしで勝手に盛り上がってます。

「ねぇ、アレは止めなくていいのかしら?」

「別にいいんじゃない? 時間に遅れなきゃ好き勝手やっていいと思うし。あー、また勝負がつかなかったよ」

 ○×ゲームで暇を潰していたパチュリーとリリカはやっぱり傍観者面です。

「時間って何か用事でもあるのかしら?」

「お屋敷にお呼ばれしてるの。素敵な演奏で盛り上げるのが私達の役目」

「なら、なおさら止める必要があるんじゃない? このままだと終わらないわよ、多分」

「大丈夫大丈夫。いつもならそろそろだから」

「そろそろ? 何がそろそろなのかしら。ふぅ、また引き分けね」

 くい、とリリカが二人の方を指差した瞬間……



「「いい加減にしろ!!!」」

「あだだだだだだっ!!」

「かはっ!!」

 黒い方にはたくさんの針が、白い方にはチェロが飛んできました。
 投げたのはもちろん、さっきまで暗黒オーラを放出していた二人組。オーラはすっかり出涸らした模様です。

「「二人ともそこに正座っ!」」

「えー、なんでだよー」

「せっかく盛り上がってたのにー」

「あら、こんな所に良く尖った鋭い針が300本ほど」

「おや、こんな所に予備用のコントラバスが。ついでにその針を50本ほど分けてもらえない?」

「「ごめんなさい、私達が悪かったです」」

 そのままレッツ説教タイム。

「魔理沙、あんたが自分の道を突っ走る奴だってのは良くわかってるつもりよ。でも私を巻き込んだりするのは……」

「メルランはもう少し地に足をつける事を心がける必要があるわ。それと他人の意見にもう少し耳を傾けるように……」

 がみがみ、ねちねち。魔理沙もメルランも一応正座をしているけれど、話は右から左へランナウェイ。



「ほらね」

「苦労してるのね、あなたも」

「ルナサ姉さんに比べればこの程度は苦労でもなんでもないよ」

 私も悪ノリする方だからねー、とリリカ。

「ふーん…… あら、また引き分け」

「さて、そろそろ私の出番かな」

「そうね。いい加減に話を進めたいし」



「はいはいー、説教タイム終了ー」

「霊夢も魔理沙ももう気が済んだでしょう?」

 ぱんぱん、と手を叩きながら二人は説教中の4人の間に割り込みました。

「……パチュリーがそう言うなら」

「……さすがに言い過ぎたか」

「助かったぜ、パチュリー」

「あー、やっと終わったぁ。ありがとー、リリカ」

 すりすり。

「ちょっと、やめてよメルラン姉さん…… 人前だよ?」

「えー、何でやめなきゃいけないの? こんなに可愛いのに」

「可愛いって言ってもらえるのはうれしいけど……」

「じゃあいいじゃないの」

「あ、いや、くすぐったいよ」



「春だなぁ」

「春ねぇ」

「……もしかして私って置いてけぼり?」

「一番上は得てしてそういうものよ」



「よし、リリカ分補充完了ー」

「うー、頬擦りぐらい我慢してよ……」

「じゃ、一段落着いたところで宴の前の音合わせよ」

「「はーい」」

「お、宴会があるのか」

「私達もぜひお邪魔したいわね」

「残念だけどあなた達はお呼びでない」

「一曲だけ聴かせてあげるから、聴いたらさっさと帰ってねー」

「姉さん達、準備はいい? それじゃ、いっくよー!」

「「「大合葬『霊車コンチェルトグロッソ』!」」」

 三姉妹が心を一つにして初めて成功するスペルカードが発動しました。

「弾幕と弾幕で語り合う…… これも熱いぜ」

「これ以上語ったらあの三人のど真ん中に投げ込む」

「と、まあ無駄話は置いといて、先陣は私が切るぜ?」

「ええ、好きにして頂戴」

「私達も勝手にするから」

 こちらの三人も思い思いのスペルカードを手にしました。

「一発目! 魔符『ミルキーウェイ』!」

「素敵な照明ありがとー♪」

「まだまだ続くわよ。水符『ベリーインレイク』」

「わわわっ! 危ないなぁーもう!」

「トドメっ! 夢符『封魔陣』!」

「ダメだ…… 避けきれないっ……!」

「「「三連携『ミルキーインレイク陣』!」」」









「さて、私達が勝ったんだからこの結界を通してもらおうかしら」

「そんな事言われても私達は生きてないから通れるだけよ?」

「それじゃ開け方でもいいわ」

「私達もこの結界が解けた所は見た事がないよ」

「まどろっこしいな。わからなきゃ全部ふっ飛ばせばいいんだ」

「ふぅ、それしかないわね。面倒くさいなぁ」

「手早く済ませましょう。時間を掛けるのは得策ではないわ」

「……本当に結界を壊す気?」

「当たり前でしょ。私達はこの向こうに用があるみたいなんだから」

「じゃ、サクッと行くぜ。恋符『マスタースパーク』!」

「おおっ!? これがさっき言ってた極大レーザーね!」

「はしゃぐな、メルラン」

 魔理沙の放ったマスタースパークで結界は崩壊しました。

「……意外とあっけないわね」

「面倒が無くていいじゃないか」

「さて、ここからは気を引き締めていくわよ」

「「おー」」
「今回のあとがきは」
「私達、プリズムリバー三姉妹が~」
「乗っ取らせてもらったよ!」
「それでは今回のおさらいをしてみよう」
「リリーが名前を名乗る間もなく落とされて、私達はSaga連携の前に敗れ去ったわ」
「簡潔すぎ、メルラン姉さん。それとSaga連携って何?」
「Saga連携とは、一見何の関係もなさそうな技や術を使って複数人で連携攻撃をする事だ」
「ちなみに連携する人数が増えれば増えるほど個々の攻撃力も上がるわ」
「じゃあ私達がそのSaga連携をしたら?」
「『スードクリフォードドルファー神奏 ‐Lunatic‐』ってところかしら?」
「スードのせいで台無し。全部贋作じゃん」
「エーッ! 私のスペルカード全否定!?」
「それと今回は結構長かったんじゃない?」
「無視ですか、そうですか」
「ごめんね、ヒーロー談義で盛り上がっちゃって止まらなかったらしいのよ」
「私はいらない子ですか……」
「そこは止めようよ!」
「あの、わざと放置してるの? それとも本気でいらない子?」
「一応案は他にもあったらしいわ」
「そろそろ相手してくれないとお姉ちゃん家出しちゃうぞ~」
「ここでルナサ姉さんの出番だよ」
「え? あ、私たちの演奏に対して霊夢達がアカペラで対抗する、という案があったらしい」
「魔理沙がボイスパーカッション、霊夢がベースの予定だったらしいわ」
「じゃあボーカルはパチュリーね」
「それにコーラスの小悪魔が付いていたらしいわ」
「ちょっと待て。小悪魔どこから沸いて出た」
「それかベースをパチュリーにして霊夢には胡散臭い民族楽器を使わせようとしたとか」
「アカペラで民族楽器!? 明らかに破綻してるよね!?」
「ちなみにその楽器の名前は『脇キュバブ』」
「胡散臭いというよりも既に楽器じゃないと思うんだけど!?」
「ここも長くなってしまったわね」
「それじゃ次回予告も私達がして終わりにしよう」
「ちょっと待って! さっきの疑問は放置!?」


「強敵と書いて『とも』と読む。私と魔理沙はそんな関係だったわ」
「いらない。いらないからそんな設定」
「同じ趣味を持つ同好の志だった二人は時には手を取り合い、時にはぶつかり合いながらもうまくやっていたの」
「て言うかその設定は既に他の人が持ってるよ」
「そんなある日、魔理沙は突然旅に出てしまった」
「魔理沙がふらっと何処かへ行くのは割と日常茶飯事だと思う」
「私は思ったわ。『勝ち逃げなんて許さない』って」
「負けてたんだ、メルラン姉さん」
「私は自らを高めつつ、魔理沙の後を追ったわ」
「ダメだ、メルラン! 後を追うのはやられる方のライバルだ!」
「旅の途中、突然ある能力が私の中で目覚めた。それはトランペットの音色で人形と心を通わせる事の出来る能力」
「色々と敵が増えるからそろそろやめようね、メルラン姉さん」
「次回、題名の無いストリートライブ 第五話『ライバル×人形×ただ一つ』」
「幻想郷にハッピーお届け♪」
「「どこをどう見てもパクリだらけです。本当にありがとうございました」」
シロ
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コメント



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部分的に。
霊夢が結界を壊せない事に対して、気分的に-10点。
それを魔理沙があっさり壊した事に対して、気分的に-10点。
でした。