Coolier - 新生・東方創想話

サイエンスドリーム

2006/04/12 08:38:59
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第118季 10月中旬

とある人里の口外に、幻想とは程遠い建物がある。ソレは、汚く、廃れた小さな工場のようだ。
その中、4人の少女と、なにやら金属の塊の様な物があった・・・

??壱 「ついに・・完成よ!」
??弐 「長かった・・・でもないか? まぁ、これこそ化学の結晶だわ!」
??参 「ムフー この子は、私の中でも、最高傑作なのですぅ」
??四 「毎回、それ言ってないか?」

夢美  「幻想の探求者!『岡崎 夢美』!!」 白いシャツに赤いベストとスカート、赤い髪の女性。
朝倉 「化学の星! 『朝倉 理香子』!!」 白衣に身を包んだ、メガネをかけた紫の髪の少女。
里香  「天才マシンエンジニア 『里香』!!」 汚れたツナギを着た、ミツアミの女の子。
3人 「3人合わせて! 『サイエンスドリーマーズ』!!」

ちゆり 「4人居る。4人」 その3人を眺めながら、パイプイスに、だらしなく座ってるセーラー服の金髪の少女。

夢 「幻想郷に来て、早1年と数ヶ月・・・長かったわ・・」
朝 「化学の壁にぶち当たり、何度辛酸を舐めた事か!」
里 「最高のエンジンのため、設計図を書き直す日々・・・」

ち 「お披露目会やるたんびに、芝居かかってきてるな」

夢 「でも、それも今日までよ!そう!ついに完成したわ!」
朝 「私たちの持てる技術、全てを結集させた!」
里 「威風同等たる、外装甲殻!革新的な電装回路!」
3人 「その名も!」

夢 「『マジックエンペラー』!」
朝 「『サイエンス・ニュー・ジェネレーション』!」
里 「『ふらわ~戦車・Mk‐Ⅴ』!」
3人 「あん!?」 3人が面を合わせる。

ち 「長くなるか?」

夢 「ちょっと!この計画の最高責任者は、私よ!魔法で動く最高の機械、正に『エンペラー』じゃない!」
朝 「このマシンは、素晴らしい化学力で開発された材質を使ってるのよ!このマシン自体が、化学の新時代の幕開けを象徴してると言っても、過言ではない!」
里 「前回の戦車がMk-Ⅳだったんだから、この子はMk-Ⅴですぅ」
3人 「あーだこーだ!喧々囂々!ワンワン!キャンキャン!」

3人は言い争いを始めた。毎回の事だ。なんで最初の段階で名前を決めておかないのか・・・見かねたちゆりが、大声で叫んだ。
ち 「・・・・さーいしょはっ!」
夢&朝&里 「グー!」
ち 「じゃんけんっ・・・!」

夢見と里香と朝倉は、戦車の前に立ち、ちゆりは戦車からコードで繋がっているコントロールパネルのイスに座っていた。
なにやら四角い画面に波形やらメーターやら数値が表示されている。幻想とは程遠い。
夢 「・・・えー、では、『ふらわ~戦車・Mk-Ⅴ』の始動式を始めたいと思います」
里 「パチパチパチパチ」
朝 「チッ」
夢 「ちゆり、スロットルアップ!」
ち 「了解」
コンソールのレバーを上げる。戦車は小さな身震いとともに、地面の底から響いて来るような低い音を出し始めた。

里 「んん・・素晴らしいですぅ、この産声を聞く瞬間が、いつもしびれるのですぅ」
朝 「化学の賜物ね」
夢 「ふ・・ふっふ・・・ふふふふふ 今度こそ・・これで、あの学会の奴らをギャフンと言わせてやるわ!」
ち 「『ギャフン』は絶対言わないと思うが」

夢美と、ちゆりは、この世界の人間ではない。外界の人間という意味ではない。幻想郷が存在しない世界、化学が現在の外界より発達した世界、言わば「パラレルワールド」の人間だ。
夢美は、その世界の科学者で、「魔法」の存在を学会で発表したが、周囲はソレを笑った。彼女の世界では、魔法など、おとぎ話の中の産物でしかない。
彼女は魔法の存在を証明するため、幻想郷へと、時空を超えてやってきた。そして、能力者達と戦い、そのデータを学会で発表した。
あきれた学会は、彼女を学会から追放した。
彼女は、幻想郷へと戻ってきた。ここで成果を挙げ、ソレを学会の連中の眼前に叩きつける。あわよくば、自ら魔法使いになろうとしているのだ。

ちゆりは、夢美の助手だ。夢美に付き合わされている感が大きいが、ソコソコ楽しいようである。

朝倉は、夢美が戦った能力者の一人。幻想郷に住み、かなりの魔法使いだが、当人は魔法を嫌い、科学を信奉している。
学会を追放され、幻想郷へと戻ってきた夢美に自ら接触し、彼女らの科学力を我が物にしようとしている。

里香は、幻想郷では珍しい『エンジニア』だ。以前、博麗神社を襲い陰陽玉を強奪しようとしたが、失敗。その後も、今までどおり普通のエンジニアとして暮らしていた。
と言っても、複雑なメカは存在しない幻想郷である。ゼンマイ玩具、時計塔、水車や風車のカラクリ部の設計、製造、修理等が主な仕事だ。
その傍らで、戦車造りも続けていたようである。その技術を夢実に買われた。

夢 「ちゆり、徐々に予定出力まで上げるのよ」
ち 「了解」
朝 「今回はなんてったって、魔法反応を押さえ込むエンジンよ。あの材質を開発するために、私は徹夜続きで・・・」
ち 「出力21%、エンジン部内壁温度、上昇率、毎秒0.4℃」
里 「冷却効率のために、幾度も内部機関配置を考え直したのです!出力100%にしたって、内壁温度は50℃以下に抑えられるのですぅ」
ち 「出力48%、エンジン壁温度、+12℃、上昇率依然変わらず。毎秒0.4℃」
夢 「もう少し・・・ああ、見えるわ、輝かしき未来が!学会の奴らが、私に頭を垂れる様が!」
ち 「・・・・盛り上がってる所悪いが・・・出力52%の時点で、温度上昇率急激増加」
3人 「え?」
ち 「エンジン部内壁融点突破、温度上昇率毎秒6℃」
里 「融点突破って、そんなぁ~」
朝 「私の完璧な化学式に落ち度があったのかしら?」
夢 「んなこたぁいいから、ちゆり!」
ち 「もうやってるぜ・・・・電源OFF・・・・でも、まだ稼動してるぜ」
朝 「な、魔力の暴走!?」
夢 「(魔法は・・・魔法使いじゃないと、やはり操れないの?)」
里 「ふらわ~戦車・Mk-Ⅴがぁ~(ウルウルウル) 」
ち 「冷却剤塗布、各自、浴びないように非難してくれ」

コンソールの下にある、黄色と黒のシマシマで囲まれたケースを割り、その中のレバーを引く。天井からシャワーの様に液体が降り注ぐ。
工場内に白いモヤが立ち、気温が急激に下がった。
彼女達が『最高傑作』と称した戦車には、霜と氷が張り付いている。まるで魔物が氷漬けになったかのように、静かになった。

ち 「コンソールは死んだぜ。直前までデータは、送信されていたが」 データ回収作業に移る。
朝 「魔法反応は、消えたみたい、大丈夫よ」
里 「イビルアイ∑を越える傑作は、なかなか難しいですぅ」 霜に包まれた戦車に近づく。
夢 「・・・・やはり、魔法よ・・・魔法に関する考察が甘かったわ」
朝 「私は魔法は嫌いよ」
夢 「んな子供染みた理由で嫌悪しないの!あーもー、私自身が、魔法使えれば問題ないのにーー!」
朝 「まぁ、方法が無い事は無いけど」
夢 「本当!?」
朝 「いや、試してみないとなんとも言えないけど」
夢 「この際、藁 (ワラ) でも掴むわ!」
朝 「魔法の本、魔道書、グリモワール・・・早い話、魔法の手引書よ」
夢 「そんな物があるんなら、最初に来た時に、言いなさいよ!」
朝 「ちょちょちょ、ソレは、存在はしてるけど、とても貴重な物なのよ~、普通、人間がお目にかかる事は無いわ」
夢 「っはぁ~ん、幻想郷の、幻想話か~」
朝 「私は化学に目覚めた時に、全部処分しちゃったし・・・そうでなくても、今時、生粋の魔法使いしか持ってないわね」
夢 「生粋の魔法使いね~」
朝 「そう、人里離れた暗い森に住んでる魔法使いとか」
夢 「んな、おとぎ話の魔女じゃあるまいし・・・・・あ」
朝 「お?」
夢 「居たわね、一人・・・ちゆり!」
ち 「はい!?」
夢 「出かけるわ!」
朝 「ちょっと、どこに居るか判ってるの?」
夢 「とりあえず神社!博麗神社よ!あの巫女と、何か関わりがありそうだったし。里香、飛行艇出して」
朝 「っていうか、誰の事言ってるの!?」
夢 「名前忘れた!なんか、ホウキに乗った、黒い奴」
朝 「あ~、居たな~、そんな奴」
夢 「ちゆり、過去のファイルも持って来て!朝倉達と初めて会った時期のデータよ!」


~博麗神社~
幻想郷の空に、雷でもない、暴風でもない、空気を切り裂くような轟音が響く。
霊夢  「何かしら?」 境内の掃除をしていた霊夢が気づく。
魔理沙 「霊夢~五月蝿いぞ~」 居間から声が聞こえた。
霊 「人んちで、昼寝してる奴が偉そうに言うな!それに私は五月蝿くしてない」
魔 「違うぜ、五月蝿いから、なんとかしてくれって意味で言ったんだ」
霊 「あー!?何ー!?聞・こ・え・な・いー!!」
音は大きく、神社のすぐ上から聞こえてくるようだった。
魔 「なんだって、こんな五月蝿いんだ?」

外に出た魔理沙は、上を見て、唖然とした。逆光で、よく見えないが、黒い、翼を広げた大きな鳥が、境内に降りて来ようとしているのだ。

里 「むー、やっぱ広さが足りないわ」
夢 「んー・・・・居たわ、巫女と『霧雨 魔理沙』。じゃぁ、ここで降りるから、適当な場所で待ってて」

霊 「人?」
下から見ると、鳥の背中から、人が飛び降りた様に見えた。夢美が、ユックリと霊夢達の前に降り立つ。
夢 「久しぶりね、2人とも」
霊&魔 「・・・誰?」
夢 「な、願いを叶えてあげた恩人を、忘れたの?」
魔 「悪い、受けた恩は覚えない事にしてるんでな」
夢 「・・・・そっちの巫女には、メイドロボットを。アナタには、ミサイルをあげたじゃない」
霊&魔 「あ!あの時の」
夢 「思い出せた?」
霊 「誰だっけ?」
夢 「・・・まぁいいわ、魔法を求める、『岡崎 夢美』よ」
霊 「で、ウチになんの用?また遺跡でも建てる気?」
夢 「違うわ、そこの黒い奴に用事があるの」
魔 「私か?」
夢 「そうよ。単刀直入に言うわ。グリモワールって持ってる?」
魔 「『ない』」
霊 「『ある』って言ってるわ」
夢 「魔法の研究に必要なの。持ってるなら、貸して欲しいのよ」
魔 「『私が持っていれば、条件付で貸してやったんだがな』」
霊 「『いくら積まれようと、貸さない』と言ってるわ」
夢 「相当、貴重な物のようね」
魔 「借り物がほとんどでな、又貸しはいかんだろ?普通」
夢 「巫女さん、今のは?」
霊 「ん~、多分本当」
夢 「どこから借りてきてるの?」
魔 「教えてもいいが、条件付だ」
夢 「私にできる範囲内なら」
魔 「湖に囲まれた島に、紅い洋館が建っている。その洋館に併設された図書館から借りて来てるんだ。行くのなら、ついでに新しい本を借りてきてくれ」
夢 「は?それだけ?それでいいの?」
魔 「結構大変だぜ、借りるのも。まぁ、『気をつけてな』」
夢 「(ピクッ) 何か、厄介事を押し付けられた感じだわ・・・里香、聞こえて?戻るわ」
また、あの大きな鳥がやって来た。夢美が鳥に乗ると、あの空気を切り裂くような轟音で、遠ざかっていった。

~翌日~
朝 「私も行くの?エスペラント文字の本なんて、二度と見たくないんだけど」
夢 「いいから来なさい。ひょっとしたら、化学の本もあるかもよ。図書館だし」
ち 「準備OK、里香はもう、輸送機のコクピットに着いてるぜ」
昨日の飛空艇よりも大きい、鉄の鳥が、地下の空間に、たたずんでいる。その鳥のお腹は大きく、肥満体型の鳥にも見える。
鳥の頭の部分には、ガラス窓がり、その中の狭い空間に、人がイスに座っていた。里香だ。そこに、夢美が入って来て、空いているイスに座る。
夢 「あーあー、キャビン、聞こえる?もう出発するから、席を立たないように。里香、出して」

朝 「なんでキャビンがパイプイスなのよ」
ち 「即席だ、仕方ないだろ」

天井が開き、鳥がたたずむ床が昇っていき、地上に出た。目の前には、平たく長い土地が見える。
鳥は翼を広げて走る。空気を切り裂く轟音と共に、足が地を離れた。

~~少女祈祷中~~

~湖上~
美鈴 「ん~平和ね~」
紅魔館の門番は、今日も今日とて、退屈な平和を満喫していた。しかし、本日の彼女の平和は、数十秒後に奪われる。
美 「あ?何、あれ?」
何かが猛スピードで近づいてくる。魔理沙?いや、大きいし、鳥のようにも・・・
美 「い!?」

・・・・ドン・・・・ガタガタガ・・・・

朝 「ん?何か当たった?」
ち 「鳥だろう」

夢 「今の、人に見えたけど・・大丈夫かしら?」
里 「この輸送機、人に当たったぐらい、なんともないのです!」
夢 「いや、そう言う事じゃ・・・・まぁ、いいんだけどね。アレかしら?」
湖の小さな島に、紅い洋館が建っているのが見える。
夢 「どこか、適当な場所に着陸して。キャビン!着陸するわよ!」
里 「んー・・・旋回して着水して、緩やかな浜にでも着けるわ」

~紅魔館・4階「レミリアの部屋」~
レミリア 「もう少し・・・」
家事から人事の管理、備品の整理や消耗品の管理まで、全てメイドに任せっきりの紅い館の主人は、だいたいヒマだ。
月でも出てれば、紅茶を楽しめるが、今は昼。人間(霊夢)に合わせた生活習慣は、なかなか抜けなかった。
トランプで作られたピラミッドの頂点に、ラストの2枚を置こうとしてる。その時である。
外からの轟音が空気を震わせ、窓ガラスを揺らし、それに驚き、彼女の羽が、ピンとなった。同時に崩れるトランプのピラミッド。

レ 「クゥ・・・フーラーンー!」
妹の『フランドール』が、何かを爆発させたのだろう。そう思った。
フランドール 「何?お姉様」
レ 「あ?」
自分の妹は、ソファーに横になってるのに気づいた。
レ 「咲夜ぁ!咲夜!ちょっと、いないのぉ!?」
呼べば出てくる万能メイド・・・・と言うのは、ちと都合がよすぎる。

~2階・東側廊下~
メイドチーフの咲夜は、轟音が響く少し前に、島に近づく大きな鳥を見た。
その鳥が、島の上で旋回し、着水したので様子を見に行こうとしたところを、メイドからの伝言を聞き、主人の元へと急いだ。
咲夜 「お嬢様、お呼びで?」
レ 「さっきの音!」
咲 「あ、あれですか。アレなら、すでに目星は着いています、お任せ下さい」
レ 「あら、早いわね。さすが咲夜」
フ 「人間?人間の仕業?」
咲 「いいえ、人間ではありません。アレは、鳥さんの仕業です」
レ 「じゃぁ、今晩は鳥料理ね」
咲 「はい、見た事もない大きな鳥を、ご覧に入れますわ」

~浜~
朝 「全員で行かないの?」
夢 「里香を輸送機に残したのは、万が一に備えてよ」
ち 「図書館に本を借りに行って、どんな万が一が起こるんだ?」
夢 「気をつける事に、越したことはないでしょ」

~紅魔館前~
館へ向かう3人は、館から出てきたメイドと鉢合わせした。
夢 「あら、こんにちわ。あの屋敷のメイドさんかしら?」
咲 「ええ、そうよ。貴方達は、アノ怪鳥の使い魔?それとも、アナタ達が、あの鳥の主人かしら?」
朝 「鳥?」
夢 「浜に着水した、輸送機の事?まぁ、アレに乗ってきたのは確かね。驚かせてしまったかしら?」
咲 「ウチのお嬢様がね」
夢 「驚かせるつもりはなかったわ」
咲 「元々、ウチに用があってきたんでしょ?」
ち 「そう、図書館に用事があって来たんだ」
咲 「ヴワル魔法図書館に?」
夢 「魔法図書館!・・・ああ、なんて素晴らしい響き」
朝 「吐き気がするわ」
咲 「何?この2人」
ち 「気にせんでくれ。『魔法』という言葉に、個別の反応が出ているだけだ」
夢 「まぁ、その図書館を利用しに来たわけだし、それにお嬢様にお礼も言いたいしね」
咲 「(侵入者ってわけでも無さそうだし・・・かと言って、客人でもないし) いいわ、案内してあげるから、金髪の子は、後ろに回してる手を、横に出しなさい」
ち 「あんたは、手を後ろに回したままなのにか?」
夢 「言うとおりになさい」
ち 「了解」
咲 「アナタのマントは・・・何か隠してるってわけじゃなさそうね」
夢 「これは私なりの、『気をつけ』方ですので、気になさらず」
咲 「良い心構えだわ」

~ヴワル魔法図書館~
窓が少ない上に、カーテンが閉じている屋敷の廊下は薄暗い。そんな図書館の扉の前の廊下で、3人は待たされた。
瞬きもせず、人形の様に立っている、白いリボンのメイドが、こっちをジッと見ている。監視役だろうか。
レ 「湖外から、図書館の利用客?」
咲 「はい、お嬢様に謝罪もしたいと言ってますが、どうしますか?」
パチュリー 「ネズミ退治は、任せてあるはずだけど」
咲 「それが、正面切って、『図書館を利用したい』と言った上に、交換条件があるなら、可能な限り飲むと言われたもので」
レ 「侵入者じゃないと言いたい訳ね。誠意は見えたわ。図書館の利用に関しては、パチュ次第ね」
フ 「人間見たい!人間見たい!」
咲 「では?」
パ 「面倒を起こすようなら、容赦はしない。それが入館条件」
咲 「かしこまりました」
パ 「にしても、正面からインターホン押して来たからって、そう易々と人間を屋敷に入れていいの?」
レ 「相手が人間なら、どうにでもできるわ」
フ 「どんな人間かしら♪」

扉が開かれ、3人は中へと誘導された。
夢 「初めまして、お嬢様・・・・・お嬢様?3姉妹ですか?」
レ 「ここの主人は、私。なかなか、礼儀をわきまえてるじゃない。どこぞのネズミに見せてあげたいわ」
朝 「カビ臭い・・・古典的な魔法使いの居場所ね」
パ 「魔力が漂っているのよ、人間には判らないかしら?」
ち 「ん?どうしたんだい?おチビちゃん」
フ 「それ、なに?」
ち 「これか?コレは小さいが必殺の武器でな、特殊コーティングされてない限り、どんな金属も貫通する・・・・」
レ 「で、図書館を利用しに来たって?」
夢 「え、ええ。私は、魔法の研究をしてるの。それで、魔道書を是非、拝見したくて」
パ 「まぁ、静かに読書をする分には構わないけど」
夢 「ありがとう」

ち 「ちょっと、ダメだって!これは子供のオモチャじゃないんだぜ!」
フ 「貸して、貸して!私にも遊ばせてよ~」
パ 「咲夜、追いかけっこしてる、アノ2人を追い出して」

レ 「はぁ・・・詰まんないわ。咲夜、何か『面白い事』になったら、呼んで」
咲 「はい、かしこまりました」

朝 「化学、化学、化学の本は、と・・・」

~~少女祈祷中~~

夢 「ねぇ、館長、ちょっといいかしら?」
パ 「何?」
夢 「本を数冊、借りたいんだけど」
パ 「館外に?屋敷外に?」
夢 「屋敷外に」
パ 「ソレ相応の代償が要るけど?」
夢 「まさか、血や魂なんて言うんじゃないでしょうね」
パ 「気分次第」
夢 「生命に関わらない程度で、私にできる範囲内でおねがいするわ」
パ 「人間にできる事ねぇ・・・珍しい本とかないの?この図書館に無い本」
夢 「ああ、あるわよ。幻想郷に存在しないはずの本が」
パ 「じゃぁ、それ」
夢 「お安い御用よ。(携帯端末に向かって)ちゆり、聞こえる?」
パ 「(遠距離会話のマジックアイテムかしら?)」

ちゆりは、フランに追い掛け回され、外に飛び出した。屋敷内に戻る気も無く、玄関先に座り込んでいた。
ち 「ああ、ええ、今、外だぜ。本?なんでもいいんだな?了解、輸送機に戻って、取って来るぜ」

夢 「今、持って来させるわ」
パ 「・・・・ねぇ、聞きたいんだけど、アナタ達、レミィや妹様の知り合い?」
夢 「いいえ」
パ 「ここのメイドに知人が居る?」
夢 「いいえ」
パ 「じゃぁ、誰からここの存在を知ったの?」
夢 「『霧雨 魔理沙』という、魔法使いから」
パチュリーは、眉を顰(ひそ)めた。
夢 「それで、彼女から情報料の代わりに、新しい本を借りて来てくれって、頼まれてね。彼女の分も借りたいんだけども・・・」
パ 「帰りなさい」
夢 「はぃ?」
パ 「帰りなさいと言ったの。本は貸さない」
夢 「ちょっと、さっき、代償を払えば貸すって」
パ 「気分次第と言ったはずよ」
夢 「ここの常連の、あなたの親友の使いなのよ?」
パ 「親友?」

夢美に魔法が飛んできた。パチュリーの目の色が完全に変わっている。さっきまでの、弱々しい少女の瞳とは思えない。

~BGM「非統一魔法世界論」~

夢 「いきなり何するの!危ないじゃ・・・」
パ 「あのネズミはねぇ、毎度毎度、ここから魔道書を盗んでいく、泥棒ネズミなのよ。他にも、屋敷の骨董品(ガラクタ)やらマジックアイテムやら、イロイロね」
夢 「なっ・・・」
パ 「あのネズミの使いに貸す本は無いわ」
夢 「でも、私の夢の実現のためには、魔道書が必要なのよ。ここまで来て、手ぶらじゃ帰れない」
パ 「幻想郷には存在しないと言う本を置いて、帰ればいい物を・・・覚悟しなさい」
夢 「(携帯端末に向かって)里香、援護を!」
パ 「アグニシャイン」 【火符・「アグニシャイン」】
夢美に、無数の火球が放たれる。が、その魔法は、対照的な属性を持つ魔法に打ち消された。
パ 「!?」
朝 「ふん、カビっくさい魔法が、最新の魔法化学を越えられるか?」
パ 「アナタ、魔法使いだったのね。気づかなかったわ」
朝 「私は、科学者よ!ヘルカルギア!」 【魔科学・「ヘルカルギア」】
無数のギアの弾幕を張る。回転している歯が、鈍い金属光沢を放っている。
パ 「小賢しい」
朝 「夢美、今のうち!」
夢 「判ったわ。(携帯端末に向かって) ちゆり、どこに居るの!?」
夢美は図書館を出た。

~2階・大広間~
咲夜が、部屋に入ってきた。
咲 「お嬢様、『面白いこと』になりましたわ」
レ 「待ちくたびれたわ」

~~少女祈祷中~~

~BGM「Sailor of Time」~

~一階・南側廊下~
本を持ち、屋敷内に戻ってきたちゆりは、またフランドールに追いかけまわされていた。
ち 「図書館はどこだ?」
フ 「待・ち・な・さいよー」
夢 「(携帯端末から)ちゆり、どこに居るの!?」
ち 「教授?いや、まぁ、そのぉ・・・ここのお嬢さんの妹さんと、追いかけっこを」
夢 「(携帯端末から)この屋敷を出るわよ!面倒な事になったわ」
ち 「目的の・・おわぁ!」
後方からの魔法に、吹き飛ばされた。持ってきた本が、床に散らばった。
フ 「惜しい!」
ち 「あの嬢ちゃんも、魔法使いか!?なら、ちっと灸を据えてやるか」
フ 「遊んでくれるの?」
ち 「ああ、この『オモチャ』の威力を、見せてやるぜ」

ちゆりは、『小さな必殺の武器』を構えて、フランドールの左後方に狙いをずらし、放った。
細い光の筋はフランドールをかすめ、眩しく大きな爆光を作った。

フ 「あ・・・」
ち 「どうだい、判ったろ?」
フ 「ふ・・ふふ、すごいすごいすごいすごいじゃない!」
ち 「は?」
フ 「いいわ!私と勝負しよ!きっと、楽しい弾幕ごっこができるわ!」
ちゆりは、少し驚かすつもりだったが、それは裏目に出た。
フランドールが、持っている剣を横に振る。無数の魔法弾が飛んできた。
ち 「なぁ!?で、でたらめだぁ!」
魔法弾が、ちゆりに当たる・・・かのように見えた。
フ 「結界?」
ち 「危なかった~」 【科学魔法・「次元断壁」】
レーザーの壁は、フランの魔法弾を打ち消した。
ち 「(携帯端末に向かって)帰るって、外にでてから合流す・・・ち、壊れてやがる」
その時である。目の前の空間が、広がった。
ち 「幻覚?・・・・いや、時空計の数値が変わった・・・って事は・・・」

ちゆりが外に出るには、今来た通路を引き返すのが早いし、下手に逃げても迷うだけだ。
しかし、それには、フランドールの弾幕を抜けなくてはならない。
ちゆりは、腹を決めた。

~~少女祈祷中~~

夢 「時空計が・・・と言う事は、時空に干渉する能力者が居るって事?素晴らしいわ」

~ブワル魔法図書館~
『面白い事』になったので、喜び勇んで図書館に来たレミリアだったが、そこに居たのは朝倉だけだった。しかも、彼女はパチュリーのお相手中。
互いの魔法のぶつけ合いに、よくもまぁネタが尽きない物と呆れながら、自分の出番を待った。パチュリーの事だ、あそこまで頑張れば、喘息の症状がでてくる。
そこでレミリアの出番。レミリアは、パチュリーを咲夜に預け、朝倉と対峙した。
消耗した上に、元々魔法を嫌悪し、制御していた朝倉は不利だ。
そこへ、パチュリーが戻ってきたのである。

咲 「ん・・・」
パ 「どうしたの?」
咲 「いいえ、なんでもありません。ただ、私の領域に、干渉する輩がいます」
パ 「あいつ・・じゃないわよね」
咲 「パチュリー様、喘息は治まりましたか?」
パ 「ええ、大丈夫よ」

朝 「グランドギア・セカンド!」【魔科学・「グランドギア・セカンド」】
レ 「スカーレットシュート!」【紅符・「スカーレットシュート」】
朝 「アイツが戻ってきた?やばいわね・・・」
レ 「治まったの?パチュ」
パ 「ええ、大丈夫よ・・・・とっておきの魔法で、白ネズミを退治してやるわ」
レ 「ずっと休んでてもいいのよ?」
朝 「ちっ、お迎えは何してんのよ!(携帯端末に向かって)里香、こっちの場所、トレースしてるんでしょ!?早く・・・」
パ 「遺言でも、残してるの?」
朝 「あ・・・・!?グランドギア・トッ・・!」
レ 「遅い!幼きデーモンロー・・・!」
パ 「終わりよ、サイレントセレ・・!」
咲 「?」

ドン・・・ゴォ・・・・・・ゴォォォガガガガガガガ・・

~BGM「She's in a temper!!」~

ドゴォグァアアアアア!!
一瞬、何が起こったのか判らなかった。3人の魔法が放たれようとした時、図書館の壁を突き破り、外から何かが突入してきた。
無骨な鉄(くろがね)の塊。猛獣のような重く響く唸り声。ガレキを踏襲する車輪・・・・

朝 「来たか!」
パ 「本が・・・」
レ 「な、何アレ!?」
里 「ふらわ~戦車・Mk-Ⅴ´(マークファイブダッシュ)、参上なのです!」
朝 「遅かったじゃない。夢枕に立って、どんな嫌がらせしようか、考えちゃわよ」
里 「通常エンジンに交換したんで、少し調整してたのです!その途中で連絡が入ったので、到着まで時間がかかったのです!」

咲 「亀・・ですかね?」
パ 「スッポンの血は、滋養に良いそうよ」
レ 「アレは、まずそう・・・」

里 「教授は、助教授を連れ戻して、ここで合流するみたい」
朝 「んじゃ、それまで待ってればいいのね」
里 「この子の実力、見せてやるのです!」
朝 「弾幕で牽制し続けて、時間を稼げばいいのよ」

パ 「副館長(小悪魔)、ブックカバー(本保護魔法)は?」
副 「初め、パチュリー様がアグニシャインを放った時点で、かけてありますよ」
レ 「んじゃ、改めていくわよ」

レ 「レッドマジック!」【紅幻・「レッドマジック」】
紅い魔法弾は、その空間を紅い色に塗り替えた。そう見えるほど、濃密な弾幕だ。

里 「兵装解放、里香のサーカス!」【兵装術・「里香のサーカス」】
猛獣は、唸り声を上げ、全身から小さき鉄塊を放つ。ソレは猛獣から放たれた後、獲物を狙うかのように、向かって行く。

朝 「グランドギア・トップ!」【魔科学・「グランドギア・トップ」】
縦に、横に、大きく、無数の回転刃が、図書館内を素早く飛び回る。

パ 「サイレントセレナ」【月符・「サイレントセレナ」】
月の満ち欠けのように、弾幕が広がる。

咲 「あとで、片づけが大変だわ」
副 「ご苦労様です」
咲 「他人事にはさせないわ」

~~少女祈祷中~~

(BGM、フェードアウト)

~一階・南側廊下~
フ 「ね、ね、これどうやって遊ぶの?」
ち 「ちぃ・・・」
『小さい必殺の武器』をフランドールに取られてしまった。
彼女は、その見たこともないオモチャに興味深々で、弾幕を張る手を止めた。
ちゆりにとっては好機だが、不用意に狙いを定めるフランは、危険すぎる。そうでなくても危険だ。

フ 「あ、壊れちゃった」
フランにしてみれば、軽く弄った程度だろうが、その武器は、脆く崩れた。
ち 「な!?軽量とはいえ、特殊金属だぜ?」
フ 「ちゃんと、アナタが遊び方を教えてくれれば、よかったのよ?」
癇癪を起こした幼児ほど、手に負えない物はない。まして、相手は元からリミッターが効いてない化け物だ。
ち 「な、な、な!?セー・・うわっと、危ね!・・・セーラオブタイム!」【科学魔法・「セーラーオブタイム」】
滝の様に放出される魔力に、手持ち中、最強の科学魔法で立ち向かうが、全く太刀打ちできない。
ち 「ま、マジかよ・・・」
フ 「こうなったら、アナタがオモチャになってよね」
フランドールが突貫してきた。体当たりとは言え、『あの』フランドールの体当たりだ。生身の人間に当たれば、どうなるか判らない。
ち 「冗談じゃ・・」
フランドールは、もう目前まで迫っている。

2人の間に、無数の、少し赤みのかかった十字架が現れたのは、その時である。

~BGM「Strawberry Crisis!!」~

ち 「ス、ストロベリークロス・・・」
フ 「うっ・・・」
夢 「何やってるのよ、もう」
ち 「教授、助かったぜ」
夢 「相手が怯んでる隙に逃げるわよ」
ち 「ど、どこへ?」
夢 「図書館によ。里香が迎えに来てるわ。通信端末、壊したの?」
ち 「『壊された』・・・教授、前!前!」
夢 「ん、ストロベリークロス・ウォール!」【科学魔法・「ストロベリークロス・ウォール」】
夢美の前に、小さな、されど無数の十字架の壁が形成させられた。
フ 「邪魔ぁあああああ」
レーヴァテインを振り下ろす。が、弾かれた。
フ 「!?」
夢 「今のうち」
ち 「しっかし、奴はしぶといぜ?」

一振りで壊せない十字架は、二振りで壊せた。しかし、数が多い。それらの十字架が、スゥッと消えた。発動者が手を離したので、効果時間が消えたのだ。
消えた十字架の向こう、ちゆりが背を向けて、遠ざかっていくのが見える。
フ 「待ってよー!」
夢 「しばらく、そこで休んでたら?」
フ 「!!」

真上には夢美が居た。十字架の破壊に気を取られすぎた。
夢 「クロスゲージ」【科学魔法・「クロスゲージ」】

360度全ての角度から、細かい十字架が迫ってくる。正に、十字架の檻。

フ 「アハ、スゴイ!すごいすごいすごい!」
片っ端から魔法弾とレーヴァテインで壊すが・・・壊れてない。
フ 「また!?」
二撃目で、壊すことができた。

十字架に強い吸血鬼と言っても、それは彼女達、スカーレット姉妹が『十字架に対して恐怖心が無い』だけだ。十字架が、吸血鬼の能力に対し、有効なのには変わりない。
壊しきれない十字架は、掠るだけでも、フランを弱めていった。

夢 「ごめんなさいね」
床に降りたフランドールに、そう言うと、夢見はちゆりの後を追った。

~ヴワル魔法図書館~
朝 「来たわね」
パ 「また戻ってきた?」
夢 「待たせたわ」
レ 「あ?フランは?」
ち 「いや、まぁ、その」
咲 「私にお任せを」
咲夜は時を止めた・・・はずだった。

咲 「!?」
夢 「アナタが時空に干渉する能力の持ち主ね。ただのメイドじゃないと思ってたけど、素晴らしすぎるわ」
咲 「私の領域で、私と同じ時間を過ごす者が居るなんて・・・世界は広いわね」
ち 「ここは、閉ざされた世界だろ」
夢 「この世界の住人でもないしね。ちゆり」
ち 「タイムカッター」【科学魔法・「タイムカッター」】
時は動き出した。

レ 「咲夜!?」
咲 「申し訳ありません、私の領域に干渉する者が・・・」
夢 「私達は、時間と空間を越える科学技術で、幻想郷に来たのよ」
ち 「時を止めるのは流石に無理だが、時空の乱れに干渉するぐらいの事はできるぜ」
夢 「妹さんなら、心配ないわ。少し、足止めをさせてもらっただけ」
里 「用事が済んだなら、後退するのです!」

レ 「咲夜、時を止めなおしなさい」
咲 「かしこまりました」
夢 「ちゆり、止まった時に、切り目を入れ続けなさい」
ち 「OKだぜ」

パ 「亀(戦車)の足は、私がもらう」
朝 「亀より遅いアンタにできるか?」
パ 「魔法に挫折した無能が。少しは勉強したら?賢者の石」【精霊魔法・「賢者の石」】
朝 「科学に理解を示さない、無知が。この力、思い知れ!魔法科学!」【魔科学・「魔法科学」】

図書館の扉を吹き飛ばし、フランドールが入ってきた。
里 「あ・・あのトルクは、尋常じゃないのです!」
フ 「・・・・ああ!何アレ、何アレ、お姉様!」
レ 「あーんー・・・あんたと似たようなモンよ(フラン、飛べないのかしら?)」
フ 「す・・・・すぐぉいわぁあ!!」
里 「何か・・・笑ってる?」
フ 「パワー比べよ!スターボーブレイク!」【禁弾・「スターボウブレイク」】
里 「トルク全開なのです!アトミックキャノン!」【兵装・「アトミックキャノン」】

レ 「十字架なんて、不愉快ね」
夢 「十字架を恐れないの?そういや、妹さんもそうだったわね」
レ 「弱点には違いないけど、怖くはない。でも、見てるだけで、非常に不愉快よ!」
夢 「弱点と判れば、使わない手は無いわね」
レ 「消えなさい!スカーレットマイスタ!」【紅符・「スカーレットマイスタ」】
夢 「言われなくても、帰るわよ!グランドストロベリークロス!」【科学魔法・「グランドストロベリークロス」】
空間を広げられた図書館内。それでも十字架は、床から天井に届くほどの大きさであった。

咲 「仕事の邪魔、しないで欲しいわね」
ち 「それが仕事なんでな」
咲 「じゃ、遠慮なく。殺人ドール!」【メイド秘技・「殺人ドール」】
ち 「やっぱ、普通のメイドじゃないな。夢時計!」【科学魔法・「夢時計」】

里 「あ?視界外に逃げた?なぁっ!?」
戦車のシートに座っていた里香は、何かが機体にぶつかる大きな衝撃を受けた。フランドールの体当たりだ。
フ 「っっつぅううううう、かっったぁああい」
里 「く、回り込まれてた!?あ、ギアが変更できない・・・フレームまで曲がった!?」
フランドールの一撃は、戦車を僅かに後退させ、装甲をへこませた。意外にも頑丈で重い機体は、体当たりをしたフランドールにもダメージを与えた。
一見、体当たりをして逆に弾き返されたフランドールの方がダメージは大きいように見えるが、戦車の内部にも、致命的なダメージが与えられたようである。

ち 「わ、わ、わ、時止めなくても、強いじゃん」
咲 「時止めだけが能じゃなくてよ」
咲夜が投げたナイフは、ちゆりに当たる前に、朝倉のギアに弾かれた。
朝 「しっかりなさい、それでも科学の子?」
ち 「私は鉄腕じゃないぜ」
咲 「白ネズミ?パチュリー様は・・」
朝 「誰が白ネズミだ」

副 「大丈夫ですか?」
パ 「グッフ、ゲフ、少し、はしゃぎすぎたわ」

レ 「十字架の陰に隠れながら、弾幕を張るしか能がないの?」
夢 「でも、時間は稼げたわ。あなたの友達も、タイムオーバーみたいだし、アンデットに脳が無いって本当ね」
レ 「あ?パチュ?」
夢 「皆、退くわよ!里香、戦車後退、全速力で!」
里 「そ、それが・・・シャフトが逝っちゃってて」
レ 「逃がすかっての!」
夢 「科学の魔方陣!」【科学魔法・「科学の魔方陣」】
レ 「く、こんな目眩ましに!?」
夢 「じゃぁ・・・走れ。あの大穴から外に」
里 「な・・・くぅぅ~~、せめて最後は華やかに飾ってあげるのです・・・電装系開放!エンジン安全弁解除!フルバースト!」【特攻・「フルバースト」】

~BGM「魔法鐘愛」~

コクピット内の赤色灯が回り、けたたましいブザーが鳴り退く。コンソールのメーターの針は振り切れ、四角いモニターに、黒バックで紅い文字が浮かぶ。
『警告~WARNING~』『緊急脱出』『警告~WARNING~』『緊急脱出』『警告~WARNING~』『緊急脱出』・・・・・・
猛獣は、最後の力を振り絞る。全ての砲門、兵装が開き、一斉射撃を始めた。

朝 「行くわよ!外に!」
里 「ああ~、愛しきわが子が逝く・・・・しくしくしく、ぐっすし」
ち 「泣きながら走ると、転ぶぜ?」
夢 「ちゆり、里香を担いでやんなさい。輸送機まで、一気に行くわよ!」

レ 「待ちなさい」
咲 「いけません、お嬢様。今は、太陽の出てる時間です」
フ 「うわ、うわ、こいつすごぉおおい!」
レ 「・・・・フラン、そのオモチャ、遊んだらちゃんと片付けなさいよ」
フ 「後片付けは、メイドの仕事でしょう?」
咲 「いやまぁ・・・・そうだ、妹様、その亀さんとフランドール様、どちらがお強いのか、咲夜は気になりますわ」
フ 「そう?」
咲 「はい、フランドール様が本気を出して、亀さんを吹き飛ばす所をみたいですわ」
フ 「ん~じゃー、せーのぉ!」
レ 「私は寝る。咲夜、あとは任せたわ」

~輸送機~
夢 「里香、出して!」
里 「了解!」
夢 「ふ・・・ふふふ・・・やったわ・・・これで!」
里 「一気に加速して、上昇するのです!キャビン、絶対に立たないように!」

朝 「ああ!ここに置いてあった、私の本が無い!」
ち 「それなら、あの屋敷に持ってったぜ」
朝 「こぉんのぉお!!取って来い!」
ち 「冗談じゃなっ、ウォウ!?」
急激な加速に、固定してあったパイプイスが外れた。
(BGMストップ)

夢美達が抜け出てきた大穴から、魔法光が煌き、醜い鉄塊と化した猛獣が放り出された。
その猛獣が、島を離れる肥満鳥へと向かっていく。
こうして、肥満鳥のお腹から出てきた猛獣は、再び肥満鳥の元へと帰って行ったのだった。

~湖上~
美 「ううう・・・酷い目に会った」

湖上で夢美達の輸送機に跳ねられた美鈴は、水面上をフラフラと飛んでいた。
ふっ、と視界が影った。太陽が雲に隠れたのだろうか?
見上げた先には、自分に体当たりを食らわした怪鳥が、こっちに向かってきている。しかも、全身に炎をまとっている。

美 「ひ、火の鳥!?私を食べる気?」
炎に包まれた怪鳥は、真っ直ぐ美鈴に向かっている。
美 「さっきは不意を突かれただけ!アンタなんか、今晩のオカズにしてやる!」

湖上に巨大な水柱が立った。
それを遠くから眺める4人組。
夢 「危なかったわねぇ~。まぁ、本が無事で何より」
里 「あああ~~『とちおとめ』まで、逝くなんて~しくしくしく」
朝 「輸送機にまで、名前付けてたのか・・・」
ち 「人の背中で、涙拭かないでくれ」
里 「チーーーン!」
ち 「落とすぞ?」

~BGM「久遠の夢」~

~紅魔館~
パ 「ん?この本・・・・」
パチュリーは、ちゆりが持って来て落とした本を拾いあげ、軽く目を通す。
パ 「・・・・ふぅ・・・・ん」
パチュリーは、散らばっている本を全て集めると、図書館に戻っていった。その表情は、なにやら嬉しそうである。

美 「咲夜さん!見てください!火の鳥をしとめました!」
咲 「・・・・それ、喰えるもんなら、喰ってみなさい」
美 「勘弁してください」
レ 「まぁ、確かに見たことも無い大きな鳥だわ。喰えたモンじゃないけど」
フ 「火の鳥って、不死身なんでしょ?じゃぁ、絶対に壊れないわね」
一同 「すでに壊れてる」

~博麗神社~
夢 「約束の本よ」
魔 「いやー本当に持ってくるとは思わなかったぜ」
夢 「アナタの名前を出したら、酷い目に会ったわよ」
魔 「そいつはとんだ災難だ」
夢 「言っとくけど、アナタ、かなり嫌われ者よ」
霊 「魔理沙は、どこでも厄介事の種だからね」
夢 「まぁ、一応礼は言うわ」
魔 「形で示して欲しいな」
夢 「それで十分でしょ」
霊 「ねぇ、今度は私に教えを請わない?報酬は、形で示せるお礼で」
夢 「遠慮するわ、しばらくは・・・・あの魔道書を、熟読して、研究して、実験しなくちゃいけないから」


火の鳥は、一度燃え尽き、そこからまた生まれ出ると言う。
しかし、ソレは同じ事の繰り返しではない。
生まれ、燃え尽きるまでの過程に、同じ過程は存在しない。
何かしら学び、何かしら忘れ、何かしら得て、何かしら失い、何かしら成長し、何かしら退化し、何かしら変化しているのだ。
彼女達、4人の夢も、再び燃え上がりはじめたようであるが・・・その夢の結末は、また別の話。

~完~

~BGM「Maple Dream...」~

これより、旧作を知らない人向けキャラ紹介(二次設定含む)

::キャスト::

夢幻伝説
岡崎 夢美 (おかざき ゆめみ)
分類:教授(人間)  
科学が発達した世界(パラレルワールド)から幻想郷に、魔法を求めてきた来た、オカルトマニアな大学教授。
元居た世界では、比較物理学を教えていた。今も教授と呼ばれているが、学会を追放されているので、アダ名に等しい。
学会で魔法の存在を発表し、笑い者にされ、その復讐のために、魔法の存在する世界へ行き、優れた能力者からデータを取ろうとした。
しかしそれだけでは満足できず、被験者を連れ帰ろうとした。が、能力者の抵抗により失敗。
結局、データを論文にまとめ発表したが、学会は呆れて、彼女を追放した。
幻想郷に戻ってきた彼女は、学会への復讐と、自分自身の魔法習得のための研究を日夜続けているのである。
彼女の使う能力は、魔法ではなく、科学で作った似非魔法。
::補足::
旧作シリーズ第三弾「東方夢時空」のボスとして登場。公式キャラとしては珍しく、年齢が具体的に「18歳」と設定されている。
個人的に、マントがカッコイイ。
本作品では、レミリアと対峙させた。フランとも対峙してるけど。
本当は、もっと多彩な攻撃パターンがあるが、あえて十字架を重要視した。ちなみに公式では、「ストロベリークロス」でなく、「苺クロス」が正しい。


時を駆ける夢幻の住人
北白川 ちゆり (きたしらかわ ちゆり)
分類:助教授(人間)
夢美の助手。ずっと夢美に付き合っている。比較物理学を専攻し、頭は良いが、言葉使いが変。
大学院卒の15歳。これは特別ではなく、彼女達の世界では、普通らしい。
夢美が作り出た似非魔法を使う。
余談だが、幻想郷には『こちらの世界のちゆり』が住んでいる。こちらは本物の魔法を使う。
::補足::
旧作シリーズ第三弾「東方夢時空」の中ボスとして登場。彼女の年齢も公式設定である。
本作品では、フランと対峙してるが、実は、咲夜との対峙がメイン。(タイムカッターと、タイムキーパーを対峙させたかった)
現在の魔理沙の口調の元キャラ?(旧作では、魔理沙は、普通の女の子口調だった)
敵CPUのちゆりと、自機選択時のちゆりでは、設定が違う。(能力は同じ)


夢を探す科学
朝倉 理香子 (あさくら りかこ)
分類:(自称)科学者(人間)
かつて、夢美が集めた能力者の一人。幻想郷の住人だが、科学を信奉している。
科学者を名乗っているが、その科学力は、夢美達と比べ物にならないほど・・・・低かった。
魔法嫌い。でも、本当は強力な魔法使いである。
幻想郷に戻ってきた夢美達の傍で勉強し続け、現在は名実共に揃った科学者・・・・・らしい。
「ギア」を関した科学っぽい攻撃をするが、科学より魔法に依存してる傾向がある。
::補足::
旧作シリーズ第三弾「東方夢時空」のプレイヤーキャラとして登場。小学生向けの科学の本を貰って、嬉しがっていた。
本作品では、パチュリーと対峙。地味に活躍させ、地味に強キャラにした。公式では、「自称」は付かない。


戦車娘の見る夢
里香(りか)
分類:エンジニア(人間)
以前、博麗神社を襲い陰陽玉を強奪しようとしたが、失敗。その後、傑作の飛行戦車でリベンジするも失敗。
神社を襲う以前から、普通にエンジニアとして生活していたようだ。なので、その後も普通に暮らしてた。
戦車技師を自称するが、その技術と知識は機械工学全般に通用するため、機械工技師と言った方が相応しい。
事実、彼女が仕事として請け負うのは、オモチャや時計等の小さなカラクリから、時計塔や水車や風車など、大がかりなカラクリまで多彩だ。
戦車に関する仕事は皆無に等しく、自分が趣味でいじる程度である。
エンジニアのルーツは、結界が張られる以前の幻想郷で、投石器や馬引きの戦車を手がけた職人達と言われている。
時の流れと共に、兵器や戦車も発展してきたが、博麗大結界が張られ、目的意識の無い妖怪が増え、人間と妖怪の大きな抗争も少なくなると共に、技師達は数を減らしていった。
彼女自身に、魔法や霊力など、超常的能力は無い。
::補足::
苗字が無い。かわいそう。旧作キャラでは、結構気に入ってたりする。
旧作第二弾「東方封魔録」の1面&Exボス。事実上、東方シリーズ初の会話有りボス&Exボス。
彼女の解説文は、公式設定が見つからないので、完全に二次創作。タイトルも、彼女のExボス時のBGM「戦車むすめのみるゆめ」をそのまま引用。(今回は、『夢』がテーマだったので)
本作では、フランと対峙。新旧それぞれ最初のEXボスの戦いが書きたかった。
間違えて、最初、プチミニに投稿しちゃった。(削除したけど)
長いですね。SSじゃありませんね。セリフ改行が多いとはいえ、容量147KBは、(私が書くSSでは)ありえないですね。
さて、今回はちと異色の組み合わせでしょうか?旧作品に登場したキャラ4人と、紅魔チームが主体です。
戦闘シーンに至っては、殆ど簡略にしました。私自身の表現力の無さも相まって、読んでて疲れるので。そこはテンポでスイスイと。
旧作キャラのスペカに関しては、殆どアレンジしてます。特に里香は、完全にオリジナルですね。「里香のサーカス」は、戦車版「板野サーカス」を思い浮かべてください。
朝倉のBGMだけ、使う場面がありませんでした。が、地味に活躍させました。ちゆりに関しては、パイプイスで殴るシーンを書きたかったのですか、残念。
最終的に、何が書きたかったのか聞かれると、美味しい場面で、BGM「She's in a temper!!」と同時に、壁を突き破って突入してくる里香(戦車)が書きたかっただけのような気もします。(オ
新シリーズ最初のExボスと旧作最初のExボス、魔女と科学者、十字架を使う者と、それに相反する者、タイムキーパーとタイムカッター、書きたい組み合わせは書けました。
サヂテリアス・ズィ・アーチャー
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コメント



0.500簡易評価
4.30どっかの牛っぽいの削除
え~、旧作全然知りません
そのため、最初オリキャラ物かと
目標に向かって突っ走る人間って良いですよね
後、魔理沙が意地悪だ
そして、魔理沙らしい
ふと思ったが幻想郷でパラレルワールドに興味もって向こう行ってみようとする人達っていそう
10.50名前が無い程度の能力削除
旧作への愛がひしひしと
19.70天狗新聞編集者(誰?削除
旧作のキャラが活躍する話を見るのは珍しい。
今のところ旧作を知る機会が私にはほとんどないので、ぜひとも色々と書いてもらいたいものです。
ってことで、この点数をどうぞ!
21.60ぎゃあ削除
うわぁ、先を越された!
22.90名前が無い程度の能力削除
ぐれーとですっ!
24.80名前が無い程度の能力削除
旧作できないから知らない分、また東方の世界が広がりました。