Coolier - 新生・東方創想話

泡沫

2006/03/26 15:24:59
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それは白なのか黒なのか、視界が光に閉ざされる中、ふいに闇が差し込んでくる・・・
それに、今の自分には意識しかない。上を向いているのか、下を向いているのか、とにかく「感覚」と呼ばれるものがない。
「あぁ・・これは夢ね・・・」
私は決め付けてしまう、これが夢以外なんだというのだ。
んもー、夢なら夢で、もっと面白い夢の方がいいのに・・・・
ったく、こんな何してるかもわからないようなのじゃ、面白くもなんともないじゃないの。これじゃあ何時もの隙間の中と同じよ。
はあ、まあこんな夢見てても暇ねぇ、寝ましょうか・・・



「いやいや、寝ながら寝ないでください!紫様!起きてください!朝ですよ!起きてください!」
ガンガンガン!と藍は中華鍋をおたまで叩くという、この世に古くから伝わる伝説の起こし方をしてくれた。
耳元で煩いわねぇ・・・というか、どこが伝説なのかしら・・・
「ん~、もうちょっと~、あと半年~」
「それ絶対本気で言ってるでしょう?!もう、いい加減起きてくださいよ~」
んもー、藍ったら、いつからそんなに偉くなったのかしら?昔は「ゆかりさまぁ、ゆかりさまぁ」って後を付いてきたのに。どこで教育を間違ったのかしら?
ああー、もう!ガンガンガンガンと鬱陶しいわねぇ・・・・
「わかったわよ、起きるは、起きるからそれ止めてちょうだい」
「全く・・・折角作った朝餉が冷めてしまいますよ?橙もまっていますから、早くしてくださいね」
行ってしまった。藍ってば最近冷たいわねー、いつも橙にべったりじゃない。まあ式とはいえ、何時かは主の下を離れていくのね、寂しいものねぇ
まあ、橙の成長を一緒に見守ればいいだけの話よね。あらやだ、思考が年寄りくさいわね、全く、なんでこんな可憐な少女がこんな事考えなくちゃいけないのかしら・・・・

「あっ!おはようございますっ!紫様!」
「あら、おはよう橙、今日も元気ね」
「はい!ありがとうございますっ!」
「紫様、おはようございます」
藍が台所からエプロンで手を拭きながら出てきた。可哀相に、こんなにも所帯じみた式になっちゃって・・・
「ごめんなさいね・・・藍・・・」
「??何を言ってるんですか、朝からふざけてないでくださいよ」
「もう、ノリ悪いわねぇー」
「はいはい、それじゃあ橙もお腹を空かせているだろうし食べますよ」
「にゃーーいっ!」
丸い卓袱台を3人で囲む、今日の献立は焼き魚ね
「それでは」
「「「いただきます」」」

藍、やっぱり腕を上げたわね・・・・
これじゃあ私より料理が上手かもしれないじゃない・・・
「あ、橙、お醤油とってちょうだい」
「ふぁい、ゆはぁいはま」
「こら橙っ!食べながら喋るな、行儀悪いぞっ!」
「あら藍、そんなにぶちぶちと小言ばかり言ってたら嫌われるわよ」
「それが行儀の作法ですよ」
「固いわねぇ~、私はもっと伸び伸びと育てたはずよ?」
「それは紫様の反面教師がてきめんでしたね」
ほどなくして食事が終わり
「ごちそうさまでしたぁっ!」
橙は食べ終わると勢いよく外へ駆けていってしまったわ、食べた直後に動くとお腹痛くするわよーって、橙なら大丈夫そうね。
「はい、私もごちそうさま」
「お粗末さまでした」
藍は食器を片付け、台所へと運んでいく。やっぱり食後は緑茶ね、胃に優しくしみるわぁ
そのままボーっと外を眺めてみる、やっぱりもう春ね。緑の葉に柔らかい日差しが眠気を誘うわね。
「ふわぁー・・・あぁ・・・」
あらやだ、つい欠伸が
「これから寝ないでくださいよ?」
洗い物が終わったのか藍がやってきた。
「んー、どうかしらねぇ、正直眠くなるわー」
「全く、食べてすぐ寝ると太りますよ?」
「だいじょーぶ、私は胸しか太らないわ」
「お願いですから、他所で絶対にそんなこと言わないでくださいよ・・・」
「わかってるわよ」
それにしても何しようかしらねぇ・・・
「そうねぇ・・・じゃあ、ちょっと出かけてくるわ」
「神社ですか?」
「おそらくね」
私はスキマを適当に開く、開く先は博霊神社
「いってくるわ」
「はい、いってらっしゃいませ、紫様」
なんだかんだ言って、やっぱり藍は出来た子ね。








「はーろー」
「げっ、紫・・・」
あら魔理沙、居たのね
「あらあら、つれない反応ねぇ」
「当たり前だ、お前が居てロクな目にあってないぜ」
「それもそうね」
わかってるなら止めろよな・・とぶつぶつ言う魔理沙を放っておく。んふふ~、そんなの止められる訳ないじゃな~い♪
と、よくよく居間を見渡すと、お茶と煎餅を貪る魔理沙しか居ない
「霊夢がいないじゃない。魔理沙、いつから貴女が博霊神社の跡継ぎになったのかしら?」
「あー?この年増はついに頭がおかしくなったのか?」
ガンッ!!!
ヤカン一丁ね、口は災いの元よ?
「いやねぇ、ちょっとした冗談じゃない」
「そうそう冗談で落とされちゃ困るぜ・・・」
いつつ・・・と魔理沙が頭をさする。どうやら取っ手の部分が当たったようね。
「霊夢は今境内にいるぜ、何でも月1回の奉納らしい」
あの巫女がそんな殊勝なことしてたなんてビックリね。やっぱり腐っても巫女なのかしら。
「それで貴女がお留守番って訳?」
「留守番ってほどのものでもないが、まあそうなるな」
なんにせよ、あの博霊から心を許されている、博霊の巫女が背を預けられる少女・・・
数多くの異変を解決してきた二人の人間、その異変からいろいろな関係の輪が広がりを見せた。
今まで博霊の者を見てきたが、ここまで人妖入り乱れ、友好的とまで言える関係を気づいてきた者は居なかった。今代の霊夢が少々特殊というのもあるが、魔理沙と共に居るということが大きいのもまた事実。両者の持つモノは勿論違うのだが、お互いに違った「他者に好かれる」部分があるようね。そこに二人が引かれあい、またそれに周りが惹かれていったのでしょう。
「で?紫、お前はなんでこんな所まできたんだ?つーか今はまだ寝てる時期じゃないか?」
「今年は早く起こされちゃったのよ、私だってまだ寝ていたかったわよ」
「あー、どーせ厄介事しか持ってこないんだから、ずっと寝ててもよかったんだがなー」
「あら、貴女にだけは言われたくないわね」
「私は大人しいぜ。冬の間はな」
どこが「大人しい」よ、毎度の宴会幹事がよく言うわ。
「あ、そうだ。今日宴会やるから来るか?」
思ったそばから・・・
「いつもお前はこの時期寝てるからな、誘った事なかったぜ」
「今日は何かイベントでもあるのかしら?」
「いんや、なんとなくだぜ」
「なんとなく、ね」
「そう、なんとなくだぜ。言うならば宴会というイベントの為に宴会を開くんだな」
「いいわ、参加しましょう。この時期の宴会は始めてね」
「あー、酒かつまみ、もしくは両方持って来いよー?」
「藍に作らせるわ」
「ひでぇ主人だな」

「あら紫、居たのって、アンタなにやってんのよ」
「別になにも~」
「じゃあその膝の上に載ってるモンは一体何よ」
視線を下げると、そこにはお寝んね中の魔理沙
「見た感じ魔理沙ね」
「魔理沙以外ないでしょうが!!なんでアンタが魔理沙に膝枕してんのよっ!!!」
思った通りの反応ねぇ~
「あらあら、大声出すと起きちゃうわよ?」
「いいわよ別に!てゆうか起きなさい魔理沙!」
霊夢がぺちぺちと魔理沙の頬を叩く、乱暴ねー
「んー、んーーんー」
「ほら、起きなさい魔理沙」
「んもー、ダメねぇー」
「何がよ」
んふふふふ~、私は霊夢を押しのけ
「こうやって起こすのよ♪」
魔理沙にキス
「なっ?!!」
んー♪魔理沙は唇がぷるぷるでいいわね~、このまま思う存分キスしていれば・・・
「んー?!、んーっ!んーーー!」
ぷはっ
「おはよう魔理沙♪」
「はぁ、はぁ・・・おはようじゃねぇー!いきなりなにすんだーっ!」
ほーら、ばっちり起きたわ♪
「霊夢が起きて欲しそうだったから、目覚めのキスを・・・ひあっ!」
ズダンッ!!
針がっ!針が飛んできたわ!
「・・・・紫・・・覚悟は、出来てるわね?」
「あら霊夢さん、ごきげんよう・・・」
「えぇ、御機嫌よう、隙間妖怪・・・」
「れ、霊夢ぅーっ!」
魔理沙が行ってしまった。
それにしても、こ、ここまで怒るとは・・・やはり霊夢にとって魔理沙はただの友達関係ではなさそうね。
それがイイ事なのか悪い事なのか・・・それはこれから解ることでしょう。それに、この二人なら何があっても大丈夫そうね。
「あーっと、じゃあ、私は帰るわね。宴会の準備をしなくちゃ」
「いいわよ仕度は、どうせ出られないのだから・・・」
マズイ!目が本気だ!このままでは、あの冥界の境界を直す時以上の惨事になりかねないわ!
「ふっ・・・そこまで言うなら相手をしましょう・・・」
ここは一まず・・・
「珍しく潔いじゃない、今日のわたs「えい♪」は本k・・・って、え?」
言うが早いか、私はスキマに逃げる。
「ちょっと!まちn」
本気の博霊なんかと付き合ってられるもんですか、逃げるが勝ちよ♪








その夜、とりあえず宴会には参加しておく、やっぱり宴会には出るべきね。
霊夢も魔理沙ももう気にしてないみたいだし、というか記憶と忘却の境界をちょっといじったのだけどね。やっぱり便利ねー、この力
他の者は中央で騒いでいるのだけど、私は幽々子と隅で飲んでいる。
他愛のない話をして、今幽々子は崩した足の上で潰れている妖夢の頭を優しく撫でている。何時もながら、この二人は本当の親子みたいね。
「ふふ・・・」
「何か嬉しそうね、どうしたのよ?」
「いえね、ついこの前まで妖夢が、幽々子さまぁ~幽々子さまぁ~って泣いていたのに、もうこんなに大きくなって・・・」
「ほんとに母親みたいなこと言うのね・・・」
「え?何か言った?」
「いいえ、なんでもないわ。幽々子、それは寂しいのかしら?」
「そうねぇ、寂しいっていうのもあるけれど、妖夢が少しずつ成長していく様子が見れるのは楽しいし、嬉しいわねぇ。でも、まだまだ未熟ね」
幽々子は優しく妖夢を見つめる・・・
「ふふ、紫、貴女にだってそう思える子が二人も居るでしょう?」
「そうね」
藍に橙。橙はまだまだこれから、頑張って八雲の名を継いでもらわねばならないし、藍にしてもまだ未熟な部分はある。
「貴女の式が式を持ったときは驚いたわよ?式が式を持つなんてね」
私は最初から考えていた事だった。藍は今に大きな力を持つと思っていた、なんせこの八雲紫の式なのだから、それ位はあたりまえだろう。
でも、流石に藍が式を持ったときは、一番成長を感じたときだった。あぁ、ついに式を持てるようになったかぁ、と。あのときの感覚は今でも忘れていない。
「なーんかしんみりしたわねぇ」
「そうね、折角の宴会なんだしこの空気はダメね」
私は秘蔵の一升瓶を持って立ち上がる。
「あら行くの?」
「ええ、ちょっと行ってくるわ。どーせなら、今を楽しまなきゃ、ねぇ?」
「ふふ、そうしてらっしゃい、私はここで見ているわ」
幽々子はそういって妖夢を撫でる
さーて、誰で遊ぼうかしらね。でも、一応霊夢と魔理沙には近寄らないでおきましょう・・・・


今日も賑やかな幻想郷。人間が妖怪と共に騒いでいる、人妖相容れる不思議な楽園。



境界を操る者として、人と共に、私が守っていかなくては・・・





























目が覚める・・・・



それは白なのか黒なのか、視界が光に閉ざされる中、ふいに闇が差し込んでくる・・・
今の自分には意識しかない。上を向いているのか、下を向いているのか、「感覚」がない。
私は誰なのだろうか。曖昧な意識しかない、浮遊しているような、固定されているような、なんだかわからない存在。そもそも私は「存在」するのかも解らない。
夢を見た。だがなんの夢だったのだろうか、あまり覚えていない。遠い昔の記憶かもしれない。だけどもう覚えていない。
私は長い間こうしてきた気もするけれど、後どれだけこうしていなくてはならないのだろうか・・・・

解らない、解らない。

いろいろな境界が曖昧になってしまっている、この世界。
私はいつになったら消えるのだろうか・・・・



また・・・眠く、なってきた・・・・・・
神矢です。

全ては「何か」の一夜の夢
今か昔か、はたまた未来の事か
夢が織り成す、ただの「幻想」

みたいな?
ちなみに題名は「うたかた」より「ほうまつ」と読んでいただいた方が良さげです。
イメージ的に儚い感じが出せればなーと思いますが、どうでしょうね。

それでは、おやすみなさい・・・・
神矢
[email protected]
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コメント



0.1500簡易評価
1.80名前が無い程度の能力削除
ゆかりんはとぼけているようでやっぱり本質を見据えていると実感
見習いたいものです
4.無評価名前が無い程度の能力削除
三点リーダーと句点を使って下さい
14.無評価神矢削除
指摘どうもす。
三点リーダーなんて名前知らなかったです…
ありがとうございました!勉強になります。
15.70名前が無い程度の能力削除
雰囲気がいいですね
16.90SaToShi削除
こういうの大好きです。
19.90かわうそ削除
余韻がすばらしい。好みです。
紫ほどの大妖怪の末は、このような終わりとも言えない終わりなのかもしれません。