Coolier - 新生・東方創想話

博麗神社のお賽銭

2006/02/11 14:41:08
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/* 凄い今更ですが年明けSSです。 */
/* 何かいろいろとスイマセン */
/* チルノの一人称が”あたし”なのは趣味です */
/* 微妙に「アリスのメリークリスマス!」との繋がりがあります。微妙に。 */
/* ギリギリ 崖の上を行くように */
/* 性欲をもてあます */
/* 15歳未満は見てはいけない程度の規制 */





「私だってねぇ~……いろいろとつらいことだってあるのよぅ……」
「そんなん誰だって一緒だよ。私だって大変さ」
「なぁによぅこの居候~。少しは~私の立場にもなってみなさいよ……」
「お二人さんとも大変なんですねー。はい、追加の鰻串焼き3つ!」

暗い夜闇の中に浮かぶ赤提灯は屋台の目印。
夜雀ミスティアが経営する屋台には今、二人の見慣れないお客が来ていた。

「はぁ~、親の立場ってのも悲しいものね……。
 どんなに可愛がっててもいつか必ず親元を去って行っちゃうわけだし……」
「それは当然のことよ。親じゃないが弟子も必ず師の下を離れていくわけさ。
 それを別れととるか成長ととるか、じゃないかい?」
「成長でもあり、別れでもあるのよ~。嬉しいけど、やっぱり悲しいわ……。
 ああ~、この気持ちはどこにぶつければいいのよー」

すっかり出来上がった状態で、涙ながらに酒を煽る魔界神と
串焼きをツマミに少しずつ酒を飲む博麗神社の祟り神。
先日のクリスマス、アリスとの別れが神綺には密かに堪えてたらしく、
半ば無理矢理に魅魔を誘ってヤケ酒を煽っているのが現在の状況である。

「というか、あんたが今ここにいるんなら、すぐにでも会いにいけるんじゃないの?」
「あんな送り出し方しといて今更ホイホイ会いにもいけないわよ……。
 あの子もあの子なりに幸せを手に入れたんだから、もう私の出る幕でもないわ~……」
「はぁー、親って大変なんですねぇ」

はい、と暖かい味噌汁を差し出すミスティア。
それを啜りながら魅魔がぽつりと呟く。

「子がツンデレなら親も、かねぇ……」
「ちょっと、私のドコがツンデレだってのよー!」

ほにゃー!と変な声で叫びつつ真っ赤な顔で思わず六枚羽を展開する神綺。
ばさっ!という音と共に風が巻き起こり、
のれんやら周囲の木の葉やら近くを飛んでたルーミアのスカートやらがいろいろと巻き上がった。
ちなみに赤の縞だそうだ。

「あわわ、お、お客さん落ち着いてー!」
「待ちなって!オーケイとりあえず落ち着こうじゃないの!」
「うるしゃーい!あーもう、店主ー!そこの吟醸、一升瓶ごとこっちにちょーだい!」
「は、はいぃ!」

半ば涙目になりつつ、あたふたとミスティアは瓶の栓を開けて神綺に手渡す。
神綺は……その瓶を片手で持ち、思いっきり口に含んでガバガバ飲み始めた。
俗に言うラッパ飲みというやつである。
良い子は(悪い子も)マネすんなよ。

「ぷはぁーーーーっ!!うー、貧乏神!今日はとことん飲むわよぅー!」
「ダレが貧乏神だって!?私ゃ祟り神よ祟り神!間違えんじゃないわよアホ毛神!」
「どっちも大して変わんにゃーいよ!
 あーによぅ、貧乏神だって祟り神だって私よりずーーーっとよわっちいくせにぃ!」
「何だってぇ!?酔ってるとはいえその言葉は聞き逃せないよ!」
「お、お二人ともー!やめてくださいお願いしますー!!」

あまりの緊迫ぶりに思わず号泣しながらミスティアが神綺にしがみついた。
どこの世の人でも酔っ払いというのは至極迷惑なものである。うむ。



ミスティアが神綺の腰にしがみついてわんわん泣いていると、不意に首に手を回される感触。

「はへ……?」

思わず顔を上げると。

そこには……満面の笑みを浮かべつつも、どこか妖しくにやけた神綺の顔。

「………ふふ、うふふふ………」

オマケに半開きのままの口からは不気味な笑い声がだだ漏れな始末。

……ミスティアはこの笑顔を見たことがある。
そう、これは……あの大食い亡霊が自分を狙ってきたときと同じ顔。
いや……それよりも、なんか……



なんか、艶っぽい。



「あなた、よく見ると可愛いわねぇ……どーお?私の子として暮らしてみない?」
「ふ、ふえぇぇ!?」
「何年端も行かない娘に手ェ出してんのよ惚気神ーッ!!」



遠巻きから見ていたルーミアによると、神綺が抱き寄せたミスティアごと
魅魔が殴ったらしい。その時の様子を彼女はこう回想する。

「ミ、ミスティアは何ともないッ!!
 魔界神を砕くのもすさまじいが……それにもまして不思議なのは
 ミスティアを打ったというのにミスティアが無事なことッ!!」








~博麗神社のお賽銭~











ごーん。

真夜中の博麗神社。
年明けが目前に迫った今、霊夢は相変わらず炬燵で茶を啜っていた。
腋出し巫女は冬は炬燵で丸くなる。
そんな迷信信じちゃ駄目だけど。

ごーん。

もぞもぞと卓上のみかんに手を伸ばし、2個いっぺんに取り寄せる。
暖かい炬燵に入ったまま、頭が覚める冷たさを持つみかんを食べる。
これぞ冬の醍醐味。この組み合わせを考えた人は天才だと思う。
少し眠い頭でそんなことを考えながら、巫女は何時も通りにのんびりと過ごしていた。

ごーん。

遠い人里から、何度も何度もこの音が届いてくる。
これは言わずもがな、除夜の鐘。
つまり今日は大晦日である。のだが。

「ま、結局やることはいつもと変わんないわよねぇ」

一人でそんなことを呟きながら、その場にごろりと仰向けになる。
やや煤けた天井板が目に付いた。
大掃除でいくら擦っても落ちなかった汚れである。
そのうち板ごと張り替えてやろうか、とも思っているが
結局やらないまま、来年の大晦日も同じことを思うんだろう。
そんなもんだ。

ごーん。

ごぉーーー

ずざー。

………何かが飛来して、地を滑る音。
この日、この時間に派手な滑走音を立てて訪れてくる人物など一人しかいない。
その人物は、どかどかと全く遠慮の無い足音を立て、
そして勢い良く部屋の障子を開け放って姿を見せた。

「霊夢、明けましておめでとうだぜ!」
「まだ年明けには一時間早いわよ」
「私は音速が早いんだ。どこぞの亡霊と違ってな」
「あんたは単に夜型生活で体内時計が狂ってるのよ」

いつもながらにお邪魔しますの一言も無しに上がりこんできた魔理沙は、
ずかずかと部屋に上がりこんできて至極当然のように炬燵に入り、みかんを手に取った。

「いつもながら全く遠慮ってものがないわね、あんた」
「そう言うなよ。私とお前の仲じゃないか」
「じゃあ年越し蕎麦作ってよ。私とあんたの仲でしょ」
「それは勘弁だぜ」
「物事には見返りってのが必要なのは知ってる?」
「OK今すぐ作らせてもらいます」

懐から取り出された呪いの札を見て反射的に炬燵から飛び出る魔理沙。
以前あれを貼られたときはとんでもないことになったものだ。
気付いたら体の自由が効かなくなって、そしてまあ、ナンだ、いろいろと。



材料自体は揃えられていたため、蕎麦はすぐに出来上がった。
香りのよい出汁と歯切れのある麺が実にうまそう。
なによりこの寒い中、炬燵に入って食べるというのはまた格別だった。

「聞いたとこによると、蕎麦は噛まずに飲み込むのが通らしいぜ?」
「それってうどんじゃなかったっけ?」

ずるずるずる。

「今年もまぁいろいろとあったなぁ」
「私は宴会の後で誰も片付けを手伝ってくれなかったことが一番の思い出だわ」
「私だって手伝ったじゃないか」
「皿を積み重ねるだけで手伝うなんて言わないの」

ずるずるずる。

「今頃は紅魔館でも年越しパーティやってんのかねー」
「年越しって言っても普段通り、日付が変わるだけなんだけどね」
「まあ一年っていう節目があると、来年も頑張ろうって気になるじゃないか」
「一日一日で移り変わっていくのよ。節目は日々あるじゃない」
「お前らしいぜ」

ずるずるずる。

「とふぉろふぇ、はしゅほーれはろーら?」
「飲み込んでから話してよ」
「ごっくん。……初詣には誰か来たりするのか?」
「さぁ、レミリアとか紫あたりはきそうだけどね」
「元旦は神社にとって一番の稼ぎ時だぜ。宣伝しないとな」
「残念ながらチラシを作るほどの余裕は無いわね」

ずるずるず

「ぅげフッ!?」
「きゃっ!?ちょ、ちょっと何、どうしたのよ!」
「ご、ごはっ!けほっ!けほっ!……う゛~、器官に蕎麦がダイレクトに入った……」
「あんたずっと噛まずに飲み込んでたの?せめて噛み切るくらいはしなさいよ」
「けほ、けほ……うぅ、すまん」

手近にあったタオルをとって魔理沙に渡してやる。
咳き込んだせいか。瞳に涙を浮かべ、紅潮した顔で、更に上目遣いで受け取る魔理沙。

(こ……これは……!)

正直、鳥肌が立った。
普段強気の魔理沙が凄く乙女っぽい仕草と表情をしているのだ。
しかも涙目で。コレ最強。
可愛い、可愛い、可愛いいいいー!

「……?霊、夢……」

タオルを受け取ろうとしたのに、霊夢がしっかりと握って離さないのを見て
魔理沙はきょとんとした表情をした。
どちらかといえば、少し小動物的な、遠慮がちな態度と言えばいいのか。
可愛いじゃないか。貴方もそう思わないかい?



というわけで、霊夢の脳内春度ゲージは一瞬にして臨界点を迎えたわけである。



「……魔理沙、私が綺麗にしてあげるわ」
「え?い、いやいいって、自分でやむむぅーっ!!!?」

一体いつの間に、と思う暇もなしに唐突に霊夢が魔理沙に口づけをした。
きゅっと手をとり、そのまま魔理沙を畳に押し倒した。
しかもあろうことか舌まで入れて口内をまさぐるおまけ付きである。
いやんエロすぎ。
一瞬で魔理沙の頭はパニック状態になってしまった。

(な、何、何!?何なのこの状況!?)
(ってか唐突すぎるだろ!こういうのはもうちょっと場の流れってもんが―――)
(いやそういう問題じゃなくて!というか一体なんで!?)
(もしかしてこれは脱出すべきなのか!?身の危険、身のキケーン!)
(や、やばっ……霊夢の舌使い、上手すぎ……)
(……うぅぅ~、こ、このままでも悪く、ない……)
(いやでも考えろ霧雨魔理沙!この場の流れに流されていいものか!?)
(………っ、め、目の前に霊夢の顔が!やべぇ凄ぇ可愛い……)
(ど、どうしていいか……あうあううぅぅぅ………)

そして魔理沙は考えるのをやめた。

………

……………

………………………


2006年。なんだかいい年になりそうだ。

年越しそばはすっかり伸びてしまっていたが、
妙につやつやして満腹の表情の霊夢はそう思うのであった。

年越し魔理沙、ごちそうさまでした。



 * * *



妙にもじもじしてふらふら飛んでいく魔理沙を見送りながら、
霊夢は神社の境内でぐっと背伸びをした。
気付けば既に1時。
そろそろ参拝客が来てもいいんじゃない?と思っていると
早速遠くから飛んでくる姿を見つけた。

「ハッピーニューイヤー霊夢ぅ~!」
「『あけましておめでとう』……よ。とりあえず突進から抱き付きの連携はやめて」
「ドグチァッ!?」

自分自身を紅い槍と化して(紅いのは桃色オーラのせい)突っ込んできたロリ吸血鬼は
顔面に分厚い靴底キックを食らって見事に中に静止した後、ばたりと顔から石畳に落下した。
その鼻血は蹴られて出たのか、落下して出たのか、それとも最初から出ていたのか。
まあどうでもいいことだけど。深く考えないでおこう。

「お嬢様、とりあえず鼻血をお拭きになられてください。
 流しながら飛んだりすると、そのように服が真っ赤になってしまいますよ」

ああ、やっぱり流しながらカッ飛んできたのか。
というか想像したくなかったのに今の言葉でその様子がありありと幻視できるのが悲しい。
思わずレミリアの後からついてきたらしい咲夜を睨みつけるものの、
当人は全く気付いていない。

「ああ咲夜、悪いわね。と・こ・ろ・で、霊夢っ!」
「何?」
「新年一番最初に霊夢の体を頂くのは私よっ!」
「お、お嬢様っ!?」

ばっ、と両手を広げてブーン……じゃなく抱きつこうとするレミリア。
霊夢は絶妙のグレイズでそれをかわす。それはもう神リプレイに数えられるほど軽やかな避けで。
当然対象物を見失ったレミリアは止まれず、霊夢が元いた場所の後ろにあった木に
これまた顔から激突して、ずりずりずりと地面に突っ伏す。
木の幹に残る赤い二本の筋が色々な意味で痛々しい。

「ショ、ショックだわ霊夢……。この私の愛を!新年最初に受け止めて!」
「ああごめん、もう最初に魔理沙を食べちゃったわ」
「ダブルショック!?」

頭を抱えてブリッジするかの如く後ろに仰け反るレミリア。
というか事実ブリッジした。
ゴン!という強烈な音と共に頭を地にぶつけ、
ブリッジの姿勢のまま「おぉぉぉぉぉ……」と唸る。

「そうか、そうなのね……途中ですれ違ったとき、妙にしおらしい態度だったものね……。
 てっきりあの人形遣いとアレコレしてきたと思ってたのに……答え③、答え③、答え③なのね」

ちなみに答え③=現実は非情である。

「お嬢様……大丈夫です、咲夜はいつもお嬢様の味方ですから……」
「うぅぅ、咲夜ぁ……」

思わず咲夜に泣きつくレミリア。
しかしレミリアは見えていない。
その咲夜の顔は、徹夜でギャルゲーの限定グッズを手にした漢の如く破顔していることが。
「しめしめ」という心の声が実際に聞こえてきそうなほど嬉しそうである。



そこで霊夢さんはついつい意地悪をしてみたくなったのです。



「大丈夫よレミリア、私はまだ『食べられて』はいないんだもの……」

わざと声をしおらしく、顔を赤らめてもじもじしてみる。

「何ィ!それは真実(まこと)だろうな!!」
「ゲヴォア!?」

唐突に顔を跳ね上げる。
その為、泣きつかれていた咲夜は顎部に強烈な頭突きを食らうことになったが
レミリア自身は気付いていない。
ある漫画だったら「顎部陥没による窒息死」に数えられるほどの勢いで吹っ飛んだが
それでもレミリアは気付いていない。
今その飢えた紅い目に映るのは、紅白の巫女のみ。
しかも服に隠された細い肢体をも幻視するほどギラギラと見つめている。

「ハァハァ、霊夢……私が最初に、最初、最初にぃぃぃ……うぶぶっ!」
「そうね、その鼻血を止めて、お賽銭を入れてくれたら……ね?」
「入れるっ!入れるわっ!もう何でも入れるわ!この服も全部入れちゃうわ!」
「それは入れないで。詰まるから」

結局鼻血を流しながらレミリアは通常の3倍の速度で賽銭箱に突撃していった。
手にしていたハンドバッグの中身の金目のものを全て投げ込んだ挙句、
半分失神している咲夜の財布をも抜き取ってそのまま投げ入れた。

……そう、これは霊夢の作戦である。
初詣、それは神社の掻きいれ時。
ただ年明けという理由だけで皆が賽銭を持ってきてくれるのである。
ならば、その時に搾り取れるだけ搾り取ってしまえというのが霊夢の考えである。

幸いにもレミリアに関してはラクだ。
なんてったってこの調子。ちょっとした言葉ですぐ動いてくれる。
その代償としてアレコレされるけど。
どうせその時になったら結局自分が攻めだしー。

「い、入れてきたわよ!あるもの全て入れてきたわよ!」
「ええ、それじゃあ……」
「ああん霊夢、もう私待ちきれないわっ!ハァハァ、早く中へ……ハァハァ……」
「そうね、じゃあ家の中に入りましょうか……」

二人が家の中に入り、ぴしゃ、と障子が閉まる。



数分後。

「えっ、何その鎖……」
「ちょ、ちょっと待って!話が違うわよぉ!」
「なにそれ!何その注射!てか大きいわよ!何が入ってるのよ!」
「やっ、やめて……鎖が痛い……」
「首輪…外してぇ……くるしいよぉ……」
「うううぅぅ、ううぅ~霊夢ぅ~……」

私が書けるのはここまでだ。






ちなみにそれから少し経って、紅魔館。

「咲夜さんおかえりなさ……ってうわっ!どうしたんですか泣いてて!お嬢様はどうされたんですか!?」
「うわぁぁぁーん美鈴ー!お嬢様が、お嬢様が私を見捨てるのよぉー!」
「そ、そんなこと言われても……」
「そこ慰めてよ~!私もう我慢できないわよ~!」
「慰めるって……大体お嬢様と何があったんですか?」
「めくるめく官能の世界へ二人で旅立とうとしt」
「あきらめろ。(100万ドルの笑顔)」





再び神社にて。
ぐすぐすと泣きながら帰っていくレミリアを見送る霊夢の顔は清々しい笑顔だった。
ご満足だったようです。



 * * *



家の中で炬燵に入ってくつろいでいると、外に気配を感じた。
新たなカモ、もとい参拝客がやってきたようだ。
普段は寒くて出るのが億劫になるものの、金が絡めば話は別。
めちゃめちゃ俗っぽい巫女は炬燵から飛び出し、外へ顔を出す。

「あ、霊夢だ。初詣にきてやったわよ!」
「あの、明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとー。今年もよろしく」

やってきたのは大妖精にリグルにバカの三人。
賽銭の額は期待できそうにないが、来てくれたことには感謝する。

「あああんたたちね。明けましておめでとう。ところでミスティアは一緒じゃないの?」
「ミスティアは屋台でお客さんに捉まってるらしくて、先に私達だけで来ることにしたのよ」

霊夢の問にリグルが答える。
あの屋台は年中無休だったのだろうか?
意外と仕事熱心な雀ねぇ、と霊夢は感心する。
それでも自分は真面目に働く気はさらさら無いようだが。
どう見てもニートです。
本当にありがとうございました。

「なるほどね。あ、有り難いお賽銭箱はあっちよ」

ちょいちょい、と賽銭箱の方角を指差す霊夢。
博麗神社にいるのは居候の祟り神なのに、どこが有難いのかわかったもんじゃない。
とりあえず指差された方角を振り返り、三人はそちらへ歩いていく。

「えーと、賽銭っていくら入れるんだったっけ?」
「確かレティさんは5円って言ってなかったかな?理由は忘れちゃったけど」
「5円かぁ……巫女って大変なのね……」

霊夢へ哀れむような視線を送るリグル。
うるさいうるさい。5円で良いわけないじゃない。
誰よ御縁があるように5円、なんて言ったのは。
水だけでいいような蛍っ子には私の苦しみは判るまい!
……今、ちょっぴり蛍がうらやましく思えた霊夢であった。

「じゃあ私から入れるね。それー」

ちゃりーん。
リグルが放り投げた5円玉は放物線を描いて賽銭箱に吸い込まれていった。
ああ、たった5円でも小銭が奏でる音とはなんと素晴らしいことか。
眼福ならぬ耳福耳福。
次にいつ聞けるかわからない音を霊夢は少しでも聞き逃さないように楽しむ。

「じゃあ次は私だね~」

大妖精は放り投げずに手を賽銭箱の上まで持っていき、小銭をぱっと手から離す。
ちゃりーん。
ああ幸せ。ビバ神社。ビバ賽銭箱。
神様GJありがとう。

「あれ?チルノちゃんは入れないの?」
「入れるよ、ちゃんと………ふふふふふ」

不敵な笑いを浮かべ、何かを手に取るチルノ。
そしてそれを賽銭箱に向かって、投げた。

「そぉ~れ!」

チルノが放った物は、銀色に近い輝きを放つ何か。
それは空中で回転しながら賽銭箱に向かって飛んでいく。

がこぉん。
ごろんごろん、ごとん。

「…………」
「…………」
「………チルノ、あんた今何を入れたのよ?」
「自分で確かめてみれば~?」

コノヤロウ、新年早々何をしやがった。
霊夢は仕方なしに下駄を履き、縁側から外に降りた。
賽銭箱の蓋の鍵を開け、中身を覗き込む。

「……氷?」

そこにあったのは紛れも無く氷そのもの。
大きさとしては拳大くらいか。
銅や銀の輝きの中、それだけが異質な輝きを放っている。
きらきらと月明かりを反射し、淡い緑色の輝きを………緑?

「ひゃっ!?」
「あっははははははは!」

それは蛙の氷漬けであった。
綺麗に凍結されている点や、この寒い時期に蛙を見つけたことは凄いだろうが。
驚いた霊夢を笑うチルノの声は、上空から聞こえてきた。

「あっ、あれ?チルノちゃん?」
「いつの間にあんなところに……」

チルノは鳥居の上で腹を抱えて笑っていた。
いたずらしてやったことと、霊夢が予想以上に驚いたことが受けたのか。
作戦は大成功であったようだ。



そして、大失敗でもあった。



「針弾収束……エクスターミネーションッッッ!!!」
「へっ……いたぁぁぁぁぁっ!!!!!」

霊夢の放ったエクスターミネーション(小)は見事チルノの額に直撃した。
すこーん、と気持ちいい音が響き、チルノは真っ逆さまに鳥居から落下する。

「あぁっチルノ!」
「チルノちゃん!!」

あわや地面に衝突、というところで、チルノはどさりと誰かに受け止められた。
恐る恐る顔を上げると、そこには霊夢の顔が。
幻想空想穴を使って瞬時に鳥居下へと移動したらしい。
その顔には満面の笑みが浮かぶ。しかし眼は笑っていない。
チルノは悟った。これは人ではない。鬼だ。
こんな相手にいたずらをすること自体が大間違いであったのだと。

「チルノぉ~?駄目だよねぇ、大切なお賽銭箱にいたずらしちゃぁ~……」
「あ……あ……」
「そんなことばかりしてると、いつか天罰が下っちゃうわよぉ?」
「ううう……」

そこで霊夢は、にっこりと笑いかけた。
優しさの欠片も無い笑顔はこうも恐ろしいのかとチルノは思い知った。

「ひっ……」
「じゃあいたずらっ子なチルノちゃんが天罰を受けないいい子になるために、
 今のうちからちゃ~んと教育しとかないとね……?」

やばい。
やられる!

「あ、あの……」
「ん?」

その時声をかけたのは大妖精だった。
随分とおどおどしているが、なんとか霊夢に話しかけようとしている。

「その……チルノちゃんのことは、私からも謝ります……だから……」
「わ、私からも……だから、その……」

ああ、この二人は私の代わりに謝ってくれようとしている。
なんて優しいのよ、あんたたち……。
チルノは目の前の二人が聖母のように光輝いて見えた。

「つまり………みんな悪い子ってことでいいのね?」

チルノは目の前の巫女が悪魔のようにどす黒く見えた。

「えっ……そ、そんな……」
「ちょ、ちょっと待っ……!」

時既に遅し。
大妖精とリグルは、二人とも封と書かれた符を投げつけられており、体の自由がとれない。
そんな、いくらなんでも!

「れ、霊夢っ……やめて、悪いのはあたしなんだから、二人には何も……」
「大丈夫よ……二人には優しくしてあげるから……」

優しく?
意味がわからない。
というかなんで頬が赤く上気しているのかもわからない。
更には部屋の中に2枚組で布団が用意してあるのもわからない。
あと周囲の縄やら手枷やらもナニに使うのかわからない。
わからない。わからないまま。
――――霊夢のお仕置きが始まった。





10分後。

「ひぁっ、やめてっ!いたいいたいいたいっ!だめーっ!」
「だーめ、これはお仕置きなんだから」
「ごめんなさいっ!あたしがっ、悪かった、からっ!ごめんなさ……あうっ!」
「あんたはしばらくそのまま……さて、こっちの二人ね……」
「あうぅ……」
「ま、待って、そんなの……」
「ほら、大丈夫……私に任せて……」
「や、だめ……助けて、助けて霊夢ぅぅ……」





===== Border of 創想話 =====





ぐったりしたチルノを両脇から大妖精とリグルの二人が抱え、
ふらふらしながらもなんとか飛んで帰っていく。
霊夢はその三人の後姿を見ながら両手を合わせ、

「ごちそうさまでした。」

とだけ呟いた。



 * * *



「どこでもドア~」
「そこかぁっ!!」

突然現れたドア(スキマ)に霊夢は薄っぺらなアミュレットを投げつける。
丁度そこへ顔を出した紫の顔にピッタリと貼り付く。

「むぐっ!?んー!んんんー!!」

しかも口と鼻を塞ぐように顔面に貼り付いたせいで呼吸ができない状態に。
危険だから絶対に真似しないでください。

「んー!んー!!」
「紫様っ!今剥がすのでしばしの我慢を!」

慌てて飛び出してきた藍と橙が紫の顔の符を引き剥がそうと引っ張り始める。
しかしそんなもので剥がれるものではない。一緒に紫の顔がびろーんと伸びる。

「んごー!!?んごォォー!!!!」

もはや雄叫びとしか言えないような叫び声で悶絶する紫。
顔面にアミュレット、引っ張られて伸びる顔、異様な叫び声は
見るものを恐怖させるか、または爆笑させるものだ。

当然、やった本人である霊夢は爆笑させられる側である。

「ぶっ、あーっはっはっはっは!」
「あはははははははは!」
「くっ……!く、くくく……っ!!」

待て、今なんか二人分くらい笑い声が多くなかったか。
スキマの奥を覗き込むと、友人がピンチにも関わらず腹を抱えて笑い転げる幽々子と
笑ってはいけないと思いつつも涙を溜めて笑いを必死で堪える妖夢の姿が。

「ゆ、ゆかりーっ!サイコーよその顔!ひーっ!あははは!」
「ぷくっ……だ、だめですって、幽々子さま……わ、笑ったら失礼……くっ、くっくっ……!」
「いーからなんとかしてくださいよ!!というか霊夢!これさっさと剥がす!」
「むぐー!んぐー……!んー…………」
「ゆ、ゆかりさまーっ!しっかりしてー!」

ヤバイ、流石にそろそろ剥がしたほうが良いかもしれない。
何せ叫び声に元気が無くなって来たし。顔は赤いのを通り越して青くなってきたし。
さすがに妖怪といえど空気を吸えないとなるとマズイようである。
やっぱり酸素濃度6%を下回る空気を吸うと一呼吸で意識を失ったりするのだろうか?
いやまあその、どうでもいいけど。
そろそろアミュレットを剥がしてやることにした。

「ほらほら、剥がしてあげるから動かないで」

べりべりべりっ!

「ぶはぁぁぁーーーーっ!!ぜーっ、ぜーっ……ううう、顔が痛いわ」

赤くなった顔をさすりながら涙目で訴えかける紫。
普段は中々見れない弱弱しい表情に、霊夢はドキリと……

(でも年増だと魅力も半減ね)
「何か言った?」
「いえ何も。とりあえず家にくるなら玄関から来なさい」

気付けば全員が居間に出てきてそそくさと炬燵に潜り込んでいる。
橙は早速丸くなってるし、幽々子は全く遠慮せず蜜柑を食べてるし。
それは私のビタミンCだ。

「それで、なんでこんな大人数でうちに押しかけてきたのよ?」

幽々子を蹴り倒してぐりぐり踏みながら霊夢は紫に問い掛ける。

「酔っ払いを連れてくるついでにね、初詣にきたのよ」

ちょいちょい、と扇子で指し示す紫。
その先には、妖夢に背負われてきた真っ赤な顔をした萃香が転がっていた。
見事に熟睡している。酔いつぶれたとは珍しい。

「幽々子たちと一緒に皆で集まって盛り上がってたら、呑み比べが始まっちゃってねー。
 私は歯の一本を身体の98%が水分のクラゲに変えて吸い取らせてたから平気だったんだけど、
 それに気付かなかったこの子は延々呑み続けてこーなっちゃったの」
「境界を弄るだけでなんで生命を生み出す能力使えてるのよ」

気にしたら負けな気がするので気にしないようにする。
とにかく、初詣に来たというのなら願ったり叶ったりである。
特に幽々子はレミリアと同じくしてお嬢様。いくら入れてくれるのか楽しみだ。

「初詣に来たんでしょ?有り難いお賽銭箱はあっちにあるからよろしくね」



博麗神社は小さい神社である。
なので破魔矢やお守りや熊手が売っていないのは仕方があるまい。
別に制作費が無いというわけではない。

「それにしても、絵馬くらい無いのかしら?他人の願い事を覗くのが面白いのに」
「一応あるわよ。買っていく?」
「藍さまー、えまって何ですか?」
「一年の願い事や目標を書いておくもののことだよ」
「私は絵馬というものを書いたことは無いのですが……。目標というものは心に留めておくものです」
「いやいや妖夢、せっかくだから書いていきましょうよ」

よし、と心の中でガッツポーズをとる霊夢。
全員分の絵馬を売りつければ、ヘタなお賽銭数十人分の利益をも上回る。

「じゃあ全員分頂戴。いくらかしら?」
「一つ5千円ね」
「高ッ!」
「ちょ、おま、それはいくらなんでも高すぎないか?」
「いいえ、5千円よ。ビタ一文負からないわよ」

ここ一番のチャンスを逃してなるものか。
霊夢の目はそう語るかのようにギラギラと輝いている。
あまり長時間見つづけると、金への執念に飲み込まれてしまいそうなほど
ヤバイ、いや恐ろしい光を放っていた。

「わ、わかったわ。5千円ね。5人分だから……ほ、ほらっ、2万5千円よ!」
「毎度ー。…………ふ、ふふふ、ふふふふふ………」
「……霊夢、お札を握り締めて光の無い眼で笑うのはいいが、肝心の絵馬を渡してくれないか?」
「うふふ……ああ、そうだったわね。じゃあこれ、はいっ」

霊夢が取り出したのは、絵馬にしては珍しい四角いもの。
短冊大の大きさに、簡素に紐が通されただけで、片面には物凄くいい加減に陰陽の絵が描かれている。

「……これって絵馬なのかしら?」
「判りません。だけど、なんだか見覚えがあるような……」
「くんくん……藍さま、これ魚の匂いがするー」
「魚の匂い?……本当だ、微かだが匂うな」
「というかこれはどう見ても……」

どう見てもカマボコ板です。
本当にありがとうございました。

その後、紫が返品しようとしたものの結局失敗に終わった。
少し強気に出た次の瞬間に、頭に20本の針が刺さっていたのだから
紫といえども泣く泣く撤退せざるを得ない。
血と一緒に何か透明の液体も流れ出てきたが大事には至らなかったそうだ。



半ばヤケクソ気味に絵馬を描き終わった後、皆は賽銭箱へ向かう。
ああ、この上お賽銭まで入れてくれるなんて。持つべきものは良き友よね。
などと詐欺に近い絵馬を売りつけた巫女が思っている。

「幽々子様、お賽銭はいくら入れましょうか?」
「お賽銭は額ではないのよ。額が多ければ願いが叶うわけでもない」
「つまり1円で構わないということですね?」
「その通りよ」
「待て、ちょっと待て」

お金は一円でも多くあったほうが良いというのは当然であるが
いくらなんでも一円を賽銭として入れられるのは逆に惨めになってくる。
どんなに困窮していてもそこまでプライドは捨てられない。
以前食糧難の時に神社の裏手の雑草やキノコを食べようとして
魔理沙に泣いて止められたこともある霊夢にプライドなど残っているかも疑問だが。

「というかお嬢様でしょあんた!けちけちせずに千円とか一万円とか入れればいいじゃない!」
「嫌よ。どうせお賽銭は霊夢の懐に入っちゃうんだし。それにもう沢山入ってるみたいだし、
 別に私が入れなくてもいいでしょ?」
「そうそう。それに元々うちの家計(主に食費とか食費とか)もそんなに思わしくないの。
 本当ならお賽銭も入れる予定なんてなかったのよ」
「…………あんたも苦労してるのね」
「……判ってくれる?ううっ……」

気丈な妖夢が泣き出してしまうとは、よほど幽々子(の空腹)を満たすのは難儀なのだろう。
流石にこれでは哀れなので賽銭を要求することは止めにする。
それでは……

「……何故私の方を見る?」
「流石に金持ちじゃないにしろ、普通な金額は持ってるわよね?」
「残念ながらそれは、無い」
「なんで!?」
「……紫様が冬眠前に布団とか食事を買い込んだんだ」
「それくらい見越してなかったの?」
「当然考えてたさ。でも、でも紫様が新しい抱き枕買ってくるなんて、健康器具まで……」
「……ごめん、悪かった」

赤貧巫女は金持ちを憎み貧乏に優しい。
お嬢様や自由奔放スキマ妖怪の元で働く二人は、同じく貧乏に苦しめられていたのだ。
この日以降、霊夢がやたら妖夢や藍と仲良くなったそうだが、それはまた別の話。





「さて」

とりあえず参拝を終え紫達が帰ったあと、霊夢は寂しい絵馬掛けへ向かう。
ぶら下がっているのはさっきの5人分だけ。
次からはちゃんと宣伝を欠かさずやろうと心に決めた。
まあ、それはともかくとして。

「あの5人は、どんな願いを書いていったのかしら?」

やはり他人の願いというものは気になるものである。
紫などは特に見せたくなさそうにしていたが、全員が帰ってしまえば
あとは霊夢の好きなように眺めてしまえるものだ。

「えーと、これは橙ね。『はやくらんさまの式としてがんばれますように』か……健気ねぇ」

橙はまだまだ幼い。それ故に、まだまだ先がある。
彼女はどれほどまで強くなれるだろうか。どれほどまで有能な式となれるだろうか。
霊夢には想像もつかないし、第一自分はそこまで生きてはいられまい。
だけど、とりあえず。

「頑張りなさいよ」

一言だけ、そう言える。

「次は…藍、か。えーと……『尻尾の円形脱毛症が治りますように』……………えーと」

いきなりコメントしづらい。
というかストレスの塊か。現代妖怪は大変な日々を送っているらしい。
あの美しい毛並みの九尾は藍自身もさぞかし自慢のものだろう。
その毛が抜ける原因と言えば……一つしかあるまいて。

「あのスキマ、一体どういう苦労掛けてるのよ」

想像したくないし想像も出来なかったので、ここで考えを止めておく。
順当にいけば紫のを見ようかと思ったが、本人がやたら隠したがっていたので
あえて最後に回すことにする。デザートは最後にとっておくものだ。

「じゃあ、妖夢ね。やっぱ剣のことかしら……?『幽々子様に食べられませんように』………ぇ?」

なんだろう、これ。
食べられる?妖夢が?食材ですか?半身は湯豆腐かしら?
ってそういうことじゃなくて。
わからない。霊夢の理解の範疇を超えている。
わからないことは深く考えない。かの香霖堂店主もそう言ってたので
都合よくその考えを適用させてもらうことにする。
知ってはならない物事というものも世の中にはあるのだ。

「え、えーと、幽々子は……『早く妖夢が食べ頃になりますように』…………………。」

知ってしまった。世の中が憎い。
この場合では、どっちの意味での『食べる』かは判らないが、
もう読んだ瞬間に全身に悪寒が走った霊夢にはそんなことを考える余裕すら無い。

「………頑張れ、妖夢」

そうとしか言えない自分が悲しかった。

さて、最後のお楽しみの時間である。

「えーと、最後のは紫か。えーと…………え?」

読み上げようとした霊夢の動きが止まる。
ぽかんと口を開け、眼は見開いたまま固まっている。

「これ、本当に紫が書いたの……?」



『藍、いつも迷惑ばかりかけてごめんなさい。
 計画性も無くてだらしない私の世話は大変でしょう。
 こんな自堕落な主を持って、貴方は私を呪っているのかもしれない。
 けれど私は、貴方が居てくれて本当に嬉しいわ。
 こんな形でしか言えないけど、一緒に居てくれてありがとう。
 橙、こんな我侭な私がどうして藍の主かと思ってるかもしれないわね。
 私には藍が必要だった。そして、勿論貴方のことも。
 だから、貴方にも私は感謝してもし足りない。
 今の私があるのは、貴方と藍が居てくれたから。
 貴方達は、私の大切な家族の一員よ』



「よく言った!感動した!」

誰も居ない深夜の境内に、霊夢の漢泣きが木霊した。



 * * *



「……はっ」

気が付くと霊夢は炬燵で眠り込んでいた。
絵馬を見た後、寒かったので炬燵に潜り込んでいたら
そのまま眠ってしまったらしい。
炬燵を挟んだ反対側では、相変わらず酔っ払った萃香が眠りこけている。
とりあえず放っておくことにする。めどい。

気が付けば空は白んできている。
そろそろ初日の出の時間のようだ。
寒さで動きたがらない体に鞭打って、霊夢は外に出ることにした。



「霊夢ー、いるかー?」

薄い日明かりの中、神社の階段を上ってきたのは霊夢と一応の顔なじみ。
ついでにあと一人おまけがついている。

「あら魅魔、最近見ないと思ってたらソレといい仲にでもなってたの?」
「親父臭い発言だねぇ。コイツには無理矢理誘われて酒呑んでただけよ」
「ふに~、うー……」

久々に神社に戻ってきた祟り神は、やっかいなオマケこと魔界神・神綺を背負ってやってきた。
目を回しているようだが、酒で酔い崩れた+魅魔の仙道パンチでダウンしているのは言うまでも無い。

「まったく、本当にあんたがいると面倒ごとばっかり運ばれてくるように思うわ」
「腐ってもこの身は祟り神よ。他にもいろいろとできるけど―――」
「やらんでいいわ。大体祟り神って言うより貧乏神のほうが合ってるじゃない」
「あんたもコイツと同じ事言うのね……少し凹むわよ」
「ぐぅ~……」

背中で寝息か唸り声か判らない声を出す神綺を指差しつつ、魅魔は肩を落とす。
とは言っても実際のところ魅魔自身がトラブルメーカーであることも多々あるので
貧乏神という表現もあながち間違っていない気がするが。

「で、なんでそこのアホ毛はそうなってるの?」
「話すとめんどくさいから省略すると、酔って襲ったから殴った。以上」
「なるほどよくわかった」

何で酔ってたかとか、誰を襲ったとかサッパリわからない説明だが
そこは巫女の勘と春頭脳で捏造して保管完了。
しかもその答えがほぼ正解を結んでいるのが恐ろしい。
まあそれはともかくとして。

「年明けだからって酔っ払うのはいいけど、うちに来ないでほしいわ……」
「まあ他に押し付けとく場所も思いつかなかったし。ここに置いていっていいかい?」
「やだ。めんどい」
「困ったわね。流石に放置しとくのは私の良心が許さないし」
「いいじゃない、その辺に捨てとけば?」
「さらっと酷いこと言うねぇ」

「………神綺様?」

「うわっびっくりした!」
「アリス、あんたいつからそこにいたのよ!」
「えぇっ?いや、たった今なんだけど……」

いつの間にか現れたアリスに驚く二人。
せめて声をかけてほしいとか足音も立てずに近寄るなとか
それ以前に存在感を増せとか色々言いたいことはあったがまあいいとして。

「そうだアリス、あんたコレを連れて帰ってよ」
「そうそう、丁度いいじゃない。あんたに会いたがってたみたいだしさ」
「神綺様が私に?」
「そうなのよ。お陰で私が延々振り回されたんだから」

腕組みをして、少しアリスは考える。
連れて帰るか否か、ではなく、もっと踏み入った所で何かを考えている。

「……断るわ」
「な、なんで?」
「ついこの前、せっかくキリのいい別れ方したばかりで会いにくいじゃない……」
「そういうもんなの?」
「そういうもんよ」
「……あぁ、似てるわね……二人とも…」
「? 何のこと?」
「いや、何でもないわ」

背負っていた神綺を鳥居にもたれかかるようにして降ろし、一息つく魅魔。
徐々に明るくなっていく山際を見ながら、ぐっと背伸びをする。

「初日の出まであと一時間ちょっとってとこかしら?」
「流石に寒いし、中に入っていったらどう?」
「あの、霊夢……私は参拝に来たつもりなんだけど」

参拝。
その言葉を聞いた瞬間、霊夢の耳が猟犬の如く反応する。
そしてフラッシュバックするは、クリスマスの光景。
そう、あの夜アリスは封筒に詰めた現金を持ってきてくれたのである。
結局何故アリスがそこまでしてくれるかは判らなかったものの、
霊夢の中でアリスの存在は本日付けで結婚したい相手No.1である。
その割にはついさっき存在感が薄いとか思ってたけど。

「ああお賽銭ね、お賽銭箱はあっちよー。ほらほら、私が案内するわ」
「ちょ、ちょっと待ってよ霊夢……早い、早いって!」

声はなるべく平静に保ちつつ、目を輝かせながらアリスの腕を掴んで
ダッシュでアリスを引っ張っていく霊夢。
その姿は正に神の犬、いや欲望のイヌとしか見えない。

「ほらほらほらほら、お賽銭箱よー。入れると福が舞い降りる素敵なお賽銭箱よぉ~」
「随分現金な福ね、それ……」

とりあえず、ポケットから財布を出して小銭を確認するアリス。
中身を見て、少し困ったような表情を浮かべる。
もしかして、中身カラ?
霊夢も困ったような表情を浮かべる。
同時に脳内のアリスランクが下がり始める。

「うーん、しょうがないか……」

まさか期待させといて何も入れないつもりか!
あんまりだ!生殺しだ!
霊夢の脳内アリスランクは一気に地に落ちた。

「これしか無いけど……」

アリスが取り出したのは、霊夢にとってはあまりにも眩しい10000円札だった。

霊夢の脳内アリスランクは一気に天を突き破った。

え、マジで?
10000円よ?大金よ?
米が何月分買えるのかしら。ああ、大好きなおしるこも食べられる。
これって俗に言うブルジョワ?ブルジョアジー!ブルジョアヌー!

霊夢の脳内ドーパミンは既に留まるところをしらず、だだ漏れであった。

がらんがらん。
お賽銭箱に10000円札を投入し、鈴を振るアリス。
俯き加減で見えにくいものの、真剣な表情でお祈りをしている。
たっぷり一分近くたって、ようやくアリスのお祈りは終わった。

「……うん、じゃあ私、もう帰るね」
「……アリス」
「え、何?」
「あなた、何をお祈りしたの?」
「私?私は―――」

少し恥ずかしそうに、困った表情でアリスは言った。

「皆と、もっと仲良くなれますように、ってね」

「……そう、仲良くね。そうよね」
「……霊夢?」
「アリス、私も貴方と仲良くしたいわ。
 ええもうとっても。仲良くしましょう。いいことしましょぉー!!」
「ちょ、ちょっと待ってぇー!!」

気付いた時は既に遅し。
脳内ドーパミンが全開に達した巫女が取る行動は只一つ。
即ち―――愛し、抱き付き、貪れ!!
アリスは既にガッチリと霊夢に捕獲されていた

「ああんやっぱり貴方最高よアリスぅぅー!もう好き好き大好きっ!結婚してぇー!」
「まままま、まってよ霊夢っ!お賽銭だけでそんな浮かれすぎ―――」
「違うわアリス、私はお賽銭だけでこんなに浮かれてるんじゃないの」
「え―――」

思わずどきん、とするアリス。
そんな、じゃあまさか霊夢は、前から私のことを……!?

「クリスマスにもくれたお金とお賽銭、この二つが私を浮かれさせるのよぉー!」
「やっぱり金なのー!?」
「さぁアリス、貴方の願い、叶えてあげるわ……ね、仲良くシましょう?」
「ちょっと待った!ちょっと待って!!」

霊夢に抱きつかれ、部屋に引きずり込まれようとするアリス。
なんとか抵抗し、魅魔に救いの手を伸ばす。
しかし、その光景は魅魔から見ればアリジゴクに引きずり込まれんとしている哀れな虫の姿のようであった。
つまり霊夢はアリジゴク。祟り神の魅魔から見てもその存在は禍禍しすぎて近寄れないほどに。
一度踏み入れたら抜け出せない。そんな場所にアリスは立ってしまったのである。
残された道は、捕食されるのみ、だ。

「た、助けて……助けてー!」
「ごめん、私じゃどうしようも無いわ」
「そんなー!」
「ふふふ、アリス……怖がらなくていいのよ?私もあなたと仲良くしたいだけだから……」
「い、いやぁ……助けて神綺さまぁーーーーー!!」

……。

………。

…………。

「あー……霊夢の春っぷりは相変わらず凄いわねぇ……」

室内から聞こえる断続的な艶のある声を聞きながら、
頬を赤らめた祟り神はぽりぽりと頬を掻くのであった。





約一時間後、部屋から出てきたアリスはすっかり霊夢とべったりだったそうな。
二人とも仲良くね!!



ちなみに後日、二人の仲に嫉妬し、悔し涙を流していた魔理沙も加え
三日三晩の狂宴が行われたとか行われなかったとか。
私は知らん。私は関係ない。



 * * *



「綺麗ね……」
「うん、凄く綺麗……」
「この美しさはやっぱり何度見てもいいものね」

日が昇る。
黄金色の光は幻想郷を、世界を包み込んでいく。
どんな年であろうと、必ず苦しい出来事、歴史がある。
そして人々は、良い事より悪い事を強く記憶に残す。
良い事があっても、それらは悪い記憶に埋もれ、強く残ることは少ない。
「去年は大変だったね」と人々は口々に言う。
どんな年でも、良いことも悪いことも起きてはいるのだが。

しかし、どんな年であれ、日はまた昇る。
新しい年、新たな幕開けがやってくる。
初日の出を見て、人々は何を思うだろうか?
それは間違いなく、希望である。
初日の出とは人々に希望を与え、人々に力を与える。
人々は、初日の出によって生まれ変わる。
過去の暗い思い出を浄化され、新たに歩き出すのだ。
だからこそ、初日の出とは美しい。
だからこそ、初日の出とは神々しい。


残っていた闇が晴れていく。
木々の隙間から光が走り、あたりを隅々まで照らしていく。
神社の境内から、石段の一つ一つまで。

幻想は光の中で、美しく輝いていた。





「じゃあ、私そろそろ帰るわね」
「そう?もっとゆっくりしていけばいいのに」
「いやまぁその……」

頬を赤らめ、少し困ったように俯くアリス。
さすがにまあ、なんだ、いろいろとあった後では居辛いものがある。

「とにかく霊夢、今年もよろしくね」
「よろしくね。今年も仲良くしましょう」
「……お、お手柔らかにね……」

こみ上げてくる笑いを抑えきれずニヤけながら返す霊夢。
少し引きつった笑いで返事するアリス。
確かに霊夢は好きではあったものの、色々と強烈だったようである。
何がって?いやんそんなの判ってるくせに!

「……神綺様も、またね」

相変わらず気を失ったままの神綺に向かって微笑みながらその手を握るアリス。
そして、頬に軽くキスをした。
気絶してるはずの神綺の顔が、少し嬉しそうに見えた。

「じゃあね!」
「また来てねーアリス!次はもっとイイおもてなしをするわ……!」
「……ほどほどになー。じゃあ気をつけて帰るんだよ」

霊夢と魅魔に見送られながら、アリスは朝日を受けつつ帰っていった。

「さて、私も行くとするかね」
「行くって、どこに?」
「さぁね……とりあえず、この役立たずをどこかに連れて行かないと話にならないわ」
「まあお守り宜しくね」
「まったく、ホントにお守りだよ……」

ぶつぶつと呟きながら、神綺を再び背負って立ち上がる魅魔。
カリスマ不足の魔界神はいつになったら起きるのやら、微妙に幸せそうな顔で
にやにやしながら眠ったままであった。

「じゃあね、霊夢。また来るわ」
「もう来なくていいわよ」
「厳しいね」

あはは、と笑いながら、魅魔は帰っていく。
相変わらず眠ったままの神綺に、

「……あんた、愛されてるわね。羨ましいわ」

と小さく呟いて。



 * * *



さて。
流石に夜通し起きていると春度が下がってくる、じゃなくて眠くなってくる。
体も冷えたことだし、そろそろ寝るか……と思っていると、新たな人物がやってきた。

「おはよう霊夢。もう寝るとこだったかしら?」
「あら、珍しい顔に珍しい組み合わせだこと」

訪れたのは冬の妖怪・レティと春の妖精・リリーホワイトの二人。
一件相反するこの二人が一緒に来るとは、実は仲が良かったりするのだろうか?

「ちょっと悪いけど、貴方に用があるの。聞いてもらえるかしら?」
「私に?あんたが?」
「ええ、どうしても」
「……ま、用件次第じゃ聞かないこともないわよ」
「あら、有難う。それじゃリリー、よろしくお願いね」

レティの背後からおずおずとリリーが出てくる。
用とはリリーが有るのか?一体何なのだろう。
そう思っていると、リリーは霊夢に歩み寄ってきた。
一メートルほど前で、その足を止める。

「あー、ぅ~……」
「……何?」
「その、霊夢さん……」
「だから、何よ?」



「……ごめんなさいっ」



がばっ、と。
唐突にリリーが抱きついてきた。
あまりに予想外のことに、一瞬霊夢の頭が空っぽになる。
次に感じたのは、柔らかいリリーの感触と、ふわりと甘い花のような香り。
その香りが、一際強くなる―――。

「えっ、何―――――ひゃぁぁああぁぁっ!!?」

不意に。
言うなれば、全身を痛みの無い電流が走り抜けたような感覚。
かくん、と全身の力が抜け、立っていられなくなる。
そして、体のあちこちに走る、むず痒いような感覚。
やけに心臓の音が早く、大きく聞こえてくる。

どくん。どくん。どくん。

「何……これ……っ」

どくん。どくん。どくん。どくん。

心臓が早鐘を打つ。どんどんその鼓動は早まる。
体が熱い。頬が上気する。全身に力が入らない。

「流石ね、効果は抜群みたい」

突然、レティの顔が目の前に現れる。
雪のように白く細かな肌。水晶のように透き通った瞳。整った顔立ち。
どきん。
一層胸が高鳴る。

「何を、したの……」

きゅっと服を掴み、なんとか声に出す。

「リリーの力を使ってね、貴方の体に春を呼んだの。
 そうね、強制的に発情期を呼び起こしたことになるわ」
「は、発じょ……!?」
「あ、リリー有難うね。貴方はもう帰っていいわよ」
「うー……もう二度と引き受けませんからね?」

頬を真っ赤に染め、困り顔を浮かべながら
リリーは霊夢に向かってぺこりと頭を下げた。
当人はあまり乗り気じゃなかったようだ。

「この、黒幕っ……何をする気……?」
「貴方が、チルノ達にしたのと同じ事よ」

どくんっ!
胸が張り裂けんばかりに鼓動が高まる。

「そう……仕返しに、きたのね……」
「そういうこと」
「あれは、チルノがいたずらしたのが原因でしょ……」
「そうね。でも、貴方のお仕置は酷すぎた。
 あの子、私の家に帰ってきてからずっと泣きじゃくってたの。
 あの子がどれだけ辛かったか、貴方はわかっているのかしら?」
「それは……ごめん、謝るから……」
「ええ、でも、もう謝っても遅いわ」
「な、なんで……!」

途端、レティが静かに、にっこりと微笑んだ。
この顔―――アブない笑顔だ。
自分と同じ匂いがする!



「だって今の貴方、可愛すぎるんですもの―――」















そ~れから?

自分勝手で横暴で性欲をもてあます春の巫女さんは、
なんだか急にしおらしくなったともっぱらの評判です。



「なんだか貴方のことが少し好きになれそうだわ~」
「だから、もうやりませんよ?」





終われ。



ゴメン正直やりすぎた!!!

単にネタで書き始めた元旦SSが終わりました!今更ーーーー!?(ガビーン)
……あぁ!?あれは炒った大豆の弾幕!?(通信が途切れました)

つーか短く纏めるのヘタクソです。短くて中身が濃くなきゃ!
ってか、戦国自衛隊見てる場合じゃないYO!
さぁ次だ次ー。
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コメント



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6.80東京狼削除
性欲を持て余す
8.90名前ガの兎削除
起ネタエロジョジョ
ディモールトベネ!
9.80翔菜削除
フラフラしたっていいじゃないかよ
10.90無限に近づく程度の能力削除
アリス に なりたい
17.90月影蓮哉削除
改めて巫女さんは最強なんだという事を認識させられました。
18.100名前が無い程度の能力削除
いやっほう!
19.100ステキング削除
素敵
27.100暇を潰す程度の能力削除
れーむ新年早々食いすぎだろう!
29.80名前が無い程度の能力削除
辛抱たまらん!
32.80名前が無い程度の能力削除
性欲をもてあます
34.100no削除
春度の高い作品でした。
でも、前作もそうでしたが萃香分が足りません。
次こそは是非萃香分を。
38.100名前が無い程度の能力削除
15禁?
嘘だね。
39.100ハッピー削除
黒幕。
46.90名前が無い程度の能力削除
アリス可愛いよ
47.100名前が無い程度の能力削除
か…勘弁してくれw
48.80数を書き換える程度の能力削除
>ちなみに赤の縞だそうだ。

みすちーは青の縞だと思います、何となく。
「何が?」という質問は却下で。
49.100削除
誤字>う゛~、器官に蕎麦がダイレクトに:器官→気管

何か、第三部ラスト的にフッ飛ぶSHINKI様と「これが仙道だ」って言ってるウィル・A・魅魔様が。
何が言いたいかと言うと、ほぼ同性能でSッ気のある黒リリーは攻めに回ると最強だな、と。まぁ、私は黒受け派ですけど。
50.90名前が無い程度の能力削除
このはっちゃけぶり…たまらんw
53.100名前が無い程度の能力削除
やはり巫女はネチョ物連鎖の頂点にあるものなのか。
つかその巫女を食べた黒幕がネチョ生態系の頂点なのか。そーなのか。
55.100名前が無い程度の能力削除
何なのこの黒幕ー!?(ガビーン
ちょこちょこ混ざってるジョジョネタが面白かったです。
57.60K-999削除
博麗神社は年々参拝客が減っていくんだろうなぁ。
64.80名前が無い程度の能力削除
面白いお話でした。霊夢春度強すぎるってww

あと
> 今の私があるのは、貴方と藍が居てくれたから。
ここは藍じゃなく橙ではないのですか?
70.100ぐい井戸・御簾田削除
ちんき様にメメタァ!
71.80A削除
色々と持て余す
78.無評価名前が無い程度の能力削除
霊夢底なしw
80.100a削除
ず~れは心が洗われるね~
81.100名前が無い程度の能力削除
も て あ ま す
82.100名前が無い程度の能力削除
地味にリリーが恥ずかしがる姿を夢想してしまいました。
ごちそうさまです。
83.90じゃん削除
アリスめっあれだけ振舞っておいて
まだ余力があろうとは……
93.100NIGHT DREAM削除
色々と最高ですw
102.100名前が無い程度の能力削除
霊夢は、すごかった・・・!!
109.100名前が無い程度の能力削除
冬の妖怪なのに春満開ですね
112.100時空や空間を翔る程度の能力削除
いいんでない。
私はOKです。
118.100名前が無い程度の能力削除
なんというえろす
そしていくら小銭がないからって万札を入れるアリスたんは太っ腹過ぎwww
124.100名前が無い程度の能力削除
性 欲 を も て あ ま す
132.80名前が無い程度の能力削除
えまたかすぎふいたwwww
140.100nekojita削除
マテや。なんでちょくちょく創想話の境界越えるんだwww