Coolier - 新生・東方創想話

紅魔の出会い

2023/06/26 00:33:53
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「ねぇ、レミリア。」
「ん、何?霊夢。」
私は今霊夢と魔理沙とお茶会をしている。
珍しくパチュリーもお茶会に参加していた。
「あんた達紅魔組ってさ、色んな種族が混同してるじゃない。」
「あー、そうね。私達吸血鬼に魔法使い、固有妖怪に人間だっているし。それがどうしたの?」
霊夢が紅魔のメンツについて聞くなんて珍しい。ちょっと興味が沸いた。
これで種族のサラダボウルだね。とか下らないギャグ言われたらどうしようか迷う。いや、合ってるんだけどさ。

でも、霊夢が次に話したのは私の予想の斜め上を行った。
「いやさ、あんた達ってどうやって出会ったの?」 

「あー...なるほどねぇ。しちゃう?その話。」
「でも気になるな!確かに。皆がどう言う経緯で出会ったのか。」
魔理沙が霊夢の振りに食い付く。
「まぁ話すのは良いんだけど、長くなるわよ?後パチェはどうなのよ?」
「...私も良いわよ。私が来る前の事は知らないから、寧ろ気になるし。」
「そう。じゃあ、話しちゃおうかしら。長くなるけど、よく聞きなさいよ。それはそれは波瀾万丈な人生だったんだから___」

❇︎

(少女回想中...)

私の両親がいた頃まで遡りましょう。

まだあの時の私は幼かった。
それはつまり妹は更に幼いと言う訳だ。

妹__フランは、生まれた時からあのキラキラした羽を持っている訳では無く、生まれた時は私と同じ悪魔の羽を持っていた。


私達は元々はイギリスの貴族だった。三世代位前の先祖は人間だったのだが、ある日先祖は吸血鬼に襲われ、首元を噛まれた。

スカーレット家は吸血鬼の格としては下の方だった。吸血鬼として降り立ってからたかが三代。まだまだ新参の童に過ぎなかった。

オマケに私達の両親は私が30歳に満たない頃に揃って死んだ。当時の吸血鬼ハンターに殺されたのだ。私達は隠し部屋に押し込まれていたから、吸血鬼ハンターに狙われる事は無かった。

30歳はもう大人だ。と言うのは、寿命の短い人間の勝手な主観だ。寿命が長い生物ほど、精神が成長するのに多大な時間を要する。吸血鬼は200歳になってようやく人間で言う成人を迎えれるのだ。30歳など、赤子同然だった。

両親を失った私達を待っていたのは壮絶な暮らしだった。いや、戦い。とでも言う方が正しいのかもしれない。

人間からは恐れられ、ハンターに狙われる日々。吸血鬼同士からは両親を失った私達への同情...とでも言えれば良かったが、大半は蔑みや憐れみといった醜い感情を私達にぶつけてくる。私はさとり妖怪では無かったが、それでも感じ取れる位には彼奴等の行動や態度は露骨だった。

でも、私達は我慢しなければならない。喧嘩をふっかけた所で、勝ち目は無いのだ。
相手によっては齢1000歳を越えている吸血鬼もいる。どうしたら30に満たない子供が勝てようか。

なのに、いや。だからこそ、それから10年程経つと、遂に軽い決闘を申し込まれた。吸血鬼は退屈凌ぎに同族決闘を申し込む事がある。
「ねぇ、レミリア。この私が勝負してあげる。」
相手は齢300歳ほどだろうか。10倍程にかけ離れている年齢差じゃ、勝負にならない。
「いえ、私はまだ力も弱いので決闘はちょっと...」
「何よ。折角の私のお誘いを断る気?アンタ覚悟は出来てるんでしょうね?」
よく相手を確認してみれば、名家ジュリアーナ家の末裔である、アンナ・ジュリアーナだった。黄色い髪をツインテールにしてグルグル巻いている独特な髪型をしている。それが分かった瞬間、私は断る事を諦めた。ジュリアーナ家の権力を行使すれば、格下貴族のスカーレット家を社会的に抹殺することなど造作も無い。
だったら...私が少し痛い目を見れば良いだけで済むなら、それで良い。
「分かりましたわ...」
「聞き分けの良い子ね。嫌いじゃ無いわ。じゃあ明日の0:00に廃館でね。」
廃館は、吸血鬼の遊び場のような物だ。普段誰も近づかないから、幾ら暴れても問題は無いし、偶に興味本位で来た人間を殺して仲間内で血を分け合うのはあるあるだ。

きっと、物凄い数の観客が私の醜態を観に来るだろう。
当時、吸血鬼はイギリスだけでも1000を超える個体数が確認されていたのだ。


「フラン...」
「お姉様。」
私は妹しかいない家に帰って、フランに決闘のことを話す事を決めた。


❇︎


0:00
決闘が始まる。

アンナは、正直に言えば実力は名家の割に弱いらしい。500歳を過ぎた今の私だったら、余裕で勝てたかもしれない。
でも当時はやっぱり子供だ。得意技と称したグングニルはダーツの投げ矢位のサイズでしかないし、威力も今より全然弱い。生身の人間が喰らっても吹っ飛ばされるだけで済むんじゃないだろうか。今のグングニル?身体に穴が空いて即死だよ。

「準備は良い?スカーレットのおチビちゃん。」
「...はい。」
「ふふふ、緊張してるのね。安心なさい。すぐに終わらせて可愛がってあげる!」
言い終わる瞬間、アンナは空を駆けた。
「っ!」
私も慌てて腕を振るう。
ガキィィ!
「あははっ!チビのくせに中々力があるじゃない!面白いわ!」


❇︎


決闘は初めこそ拮抗していたが、すぐに私は崩れた。身体が小さい為に体力が少なく、20分でバテてしまったのだ。
「あははっ!これで終わりよ!」
真上から急速にアンナが落下してくる。あの勢いは...殺す気満々だ。喰らったらひとたまりも無いかもしれない。
でも私は避ける気力も無く、なす術がなかった。


あぁ...死ぬのか。


不思議と怖くは無かったが、何故か私は死ななかった。それどころか衝撃すら走って来なかった。
不思議に思って上を見上げると、アンナが苦しそうに胸を抑えて呻き声をあげていた。
「あ、あんた...何...し...て......!」
次の瞬間、


アンナは爆散した。比喩表現では無い。本物の意味でだ。まるで体内に小型爆弾が仕掛けられていたみたいに。
私は訳が分からなかった。急に目の前の吸血鬼が死んだのだ。ホントに意味が分からん。

やばたにえん。


❇︎


すぐに騒ぎになった。アンナの眷属達は号泣し、周りの吸血鬼もどよめきを隠せなかった。
私は、ふと遠くで観戦する事になっていた妹を見た。

あの時の恐怖は今でも忘れられない。
妹はこれ以上無いのかってほど狂った笑顔をしていた。目はうつろで光が灯ってないのに、幸せそうな表情をしていた。

妹はそんな奴じゃなかった。人の死で喜ぶような性格では無かった。

でも......私は確信した。

"アンナはフランが殺したのだ。"

私は、一目散にフランの手を取り、廃館から脱出した。
後ろから気付いた吸血鬼が追ってきたが、私達を捕まえる事は無かった。


❇︎


この事件が起こってからは私達は遠ざけられるようになった。
原因不明の同族殺しの吸血鬼。それだけで私達を遠ざけるには十分だった。
私は、ここに居場所は無いと知り、イギリスの郊外へと住処を移した。


年月が経っていくにつれて、私の妹は狂気に呑まれるようになった。
定期的に周囲の物を破壊し尽くす。私も何度か死にかけている。

フランが狂気に呑まれるようになったある日、吸血鬼の連中が私達を殺しに来た。
亡きアンナの眷属だ。ずっと復讐の機会を伺っていたらしい。
眷属は基本的に純粋な吸血鬼より弱いが、生まれてからの年月が違う。それに向こうは5,6人で攻めてきた。
私は妹を守りながら戦ったが無理だった。
その時、"また"だ。

眷属が一瞬の内に爆散した。10秒後には全員死んでいた。


フランのおかげで助かったのは事実だが、この能力はあまりに危険すぎる。フラン自身も抑えてられない時があるし。


苦渋の決断で、私はフランを地下室に閉じ込める事にした。
「お姉様!なんで!?フラン何か悪い事した!?出してよ!お姉様!お姉様!!」

私が60歳の頃だった。


❇︎


それからが1番辛い日々だったと思う。
広い館に一人ぼっちな上に、妹を幽閉した罪悪感で毎日吐き気が込み上げてきた。

フランを幽閉した場所には魔法陣が敷かれているので、フランは能力を使えなかった。その為、大人しく閉じ込められる他無かった。


100歳位になってくると、私も能力が開眼してきた。『運命を操る程度の能力』。
と言ってもまだ不完全で、思いもよらない運命を手繰り寄せてしまう事もある。
吸血鬼ハンターが来なくなる運命を拾ったはずなのに、集団でハンターが来た時は本当に焦った。
フランと同じ地下室に逃げ込んで、見つからないように2人でビクビクしていた。

基本的にフランは幽閉されても私への愛情が尽きる事は無かった。それだけが唯一の救いだっただろうか。

そうして時が経ち更に100年後。私は200歳を越えた。この頃になると力が付き始め、同族同士の対決でも勝てるようになった。フランは未だ閉じ込められている。

そしてある日、近くの森林で真夜中の散歩をしていると、1人の人間を見つけた。

...中国人だろうか?緑色のチャイナドレス風の服を着こなしている。
歳は20前半と言った所か。若いお肉と血は美味い。久しぶりの上肉を見つけて、私は喜んだ。

すぐに気配を殺し奴の近くへと近づいた。
真後ろまで迫って、今だ!っと思って首に飛びつこうとしら、
「っ!はあっ!」
飛びつこうとした私の顔面に振り返りざまの正拳突き。
「痛っっっ!!」
あれはめっちゃ痛かった。マジで。鼻の骨折れてたもん。
「あ、アンタ...!何すんのよ...!」
「そ、それはこっちのセリフでしょう!?後ろから人の血吸おうとして!」
あー、まぁ確かに。この人は正当防衛だったのだ。
「ふ、ふーんいいわ。確かに悪いのは私だし。」
力づくで血を吸わせて貰おうか迷っていると、目の前の中国人らしき人が首を傾げて、
「随分幼い見た目をしてますが...もしかして10歳位の子どもでした?」

カチンときた。

「ふ、ふざけないでよ!私これでも齢200歳越えなんだけど!?」
「うわ、合法ロリ...」
「うっさい!喰らえ!グングニル!」
私はキレながらグングニル__この時にはレイピア程の大きさだった__を中国人目掛けて投げた。

中国人は間一髪で避けると一言、
「私はっ!中国人じゃありません!」
「ナチュラルに心を読むなぁぁぁ!」
もう一発グングニルを投げようとした時だ。中国人__彼女は一瞬で私の懐に飛び込み、みぞおち に蹴りを入れた。
「あがっ...!?」


私は、そのまま気絶した。





「う...ん...?」
「あ、気が付きましたか。」

起きた目の前には、さっきの中国人がいた。
「何よ。喰わなかったの?」
と聞くと、
「生憎、妖怪を食べるような趣味は持ってないので 笑」
と返してきた。
「...アンタ、名前は?」
「へ?」
「だから、名前。あるでしょ?名前くらい。」
「あー名前ですか。めいりん です。美鈴と書いてめいりん。」
「苗字は無いの?」
「野良妖怪なんてそんなもんですよ。」
ふーん。そっか。勿体無い。苗字あってこその名前だと思うのよね。
「じゃあ私がつけてあげる。あなたの苗字。」
この時には既に、私を一撃で倒す腕を持っていながら献身的な態度で接してくれる彼女__美鈴の事を私は気に入っていた。

「えっ、そんな悪いですよ。見ず知らずの人に名前をつけてもらうなんて。」
「嫌?」
「嫌では無いですけど...」
見ず知らずの人。見ず知らずの人___

「あーつまり。見ず知らずの人じゃ無ければ良いのね?」
「へ?」
そう言うと、私はニマって笑って、こう答えた。
「あなた、私の僕になりなさい。」


❇︎


「え、えぇ!?なんでそうなるんですか!?」
「私はね、独りぼっちなのよ。妹がいるけど、妹は地下室で篭ってるし。広い屋敷で独りって本当に寂しいのよ?だから、私は仲間か僕が欲しいの。」
実際人が欲しい。割とマジで寂しいのだ。
「...だとしても、私で良いんですか?」
「私を倒すほどの実力を持ってるのにその献身的な態度が気に入った。それじゃ足りないかしら?」
「じゃあ僕はおかしくないですか...?」
「細かい事は気にしない。気にしない。それに、それな邪険に扱う訳じゃ無いわよ。ほぼ仲間と同義。しかもあなたは私から苗字を貰える。win-winじゃないかしら?」
ここで家に人が来るなら本当に嬉しい。だから私は何としても逃すまいと、早口で捲し立てる。
「うーん、私、そんな豪邸に住むのって慣れないんですよね...話に聞く限りどう考えても豪邸じゃないですか。」
「あら、地味な部屋ならあるわよ?部屋の大きさも小さいわよ?」
「う、う〜ん...」
「まぁ何、ものは試しよ。嫌だったらお暇してもらって構わないわ。」
「...分かりました。実を言えば慣れないけどそういう暮らし、憧れてた所もあるので。」

こうしてなんやかんや、美鈴が仲間になった。
後で聞いたが美鈴は中国拳法を得意としてるだけで本当に中国人では無いらしい。
以前美鈴に聞いた事がある。
「なんでそんな服装にしてるの?」
「ほら、こういうのって形から入るのが良いって言うじゃないですか。」

いや形から入りすぎ。後アチョー!みたいな功夫の掛け声が似合いすぎてやっぱり中国人に見える。

めんどくさくなったら美鈴の呼び名は中国にしよう。


❇︎


「そういや、あなたの苗字を決めないとね。」
私は美鈴にこの話をする。
「あー確かにそうでした。」
「何よ。あなた忘れてたの?失礼な人ね。」
「い、いえ!別に忘れてたわけでは!」
「...まぁ良いわ。実はね、あなたの苗字は既に決めてあるのよ。」
なんか人の名前や苗字の名付け親になるって言うのはワクワクする。失礼な名前にならないようにするドキドキも混じってる。
「あなたの苗字は紅よ。」
「紅...ですか?」
美鈴が首を傾げる。
「そう。紅と書いてホン。ほん めいりん ね。私のイメージカラーが紅色なのとあなたの髪が紅色だからこの苗字にしてみたんだけど。」
それを聞いた美鈴はパアッと顔を明るくして、喜んでくれた。
「わぁ!その苗字良いですね。私気に入りました。」
「そう?それなら良かった。私もそう言ってくれると嬉しいわ。」
気に入ってくれたようで何よりだ。
この苗字には私と美鈴が離れられなくなるおまじないの意味を込めたんだけど、そんなものは必要なさそうだ。


❇︎


それからは美鈴も館の中で一緒に過ごす事になった。フランにも紹介をした。

「どうして妹さんは地下室に閉じ込められてるんです?」
なんて美鈴に聞かれたから、私は一言
「危険だからよ。」
って返した。

美鈴は料理や家事も上手かった。
本当に野外で活動していた野良妖怪なのか疑問だったが、年齢を聞いたら私より年上だったんだしどこかで家事の1つくらい学んだんだろう。

ちなみに私は軽くだったら家事も料理も出来る。と言うのも当時は今みたいにメイドなんていなかったからね。


❇︎


「レミリアさん。」
ある日、唐突に美鈴が話しかけてきた。
「ん?どうしたの美鈴。」
「この前一度行ってきたのですが、この館凄い大きな図書館があるんですね。」
はて、そんなのあったかしら...いやあった。私も滅多に行かないから忘れかけていた。
「あーあそこか。あれは凄いわよね。私の父上が蔵書家らしくてね。沢山集めてたわ。」
「レミリアさんは本は読まないんですか?」
「暇な時はたまに読むわ。でもあんまりかしらねぇ...」
今度また図書館に行ってみようかしら。


❇︎


って事で来てみたんだけど、まともに管理されてなかったから結構カビ臭かったわ。
「あー参ったな...こりゃダメかもしれん...」
誰かしら管理人雇おうかしら?...いやダメだ。
父上の莫大な遺産があるとは言え、雇うのはちょっと不安。余分なお金吸い上げられるし。何か私自身で事業なり起こして収入源を獲得しないと。

「ねぇ美鈴。」
「はい?どうしたんですか?レミリアさん。」
「私吸血鬼だからさ、人を襲ってお金奪って、お金溜めようと思う。それで図書館管理してくれる人雇うわ。」
「強盗宣言!?」
美鈴が驚きの表情でこっちを見る。
「あはは、冗談冗談。そんな事したら私達の事バレちゃうわよ。」
私達の存在が表立って人間共にバレたらオシマイだ。それこそ本当の人生グッバイ宣言。
「強盗は冗談だけど、あの図書館カビが凄いわよ。なんとかしないと。」
「ん〜......じゃあ掃除しますか!」
美鈴が提案をする。...ちょっと待って。
「それは私も手伝うの?」
「勿論です!」

クソー、面倒くさい。


❇︎


図書館問題は定期的に掃除をする事で一応は大丈夫だった。
大丈夫だったけど、それはあまりに大変すぎる。
やる時は一ヶ月程かけてゆっくりと丁寧に掃除をするしかないのだ。毎日5時間の掃除を一ヶ月。推定150時間。物凄い労力だ。
何回か繰り返していると、慣れてきたし掃除はフランも手伝ってくれたから何とかなってはいる。
でもなぁ...

「やっぱり何か必要よ...」
「うーん、ここまで頑張れたんだし、もう今更苦では無いでしょう?」
「それでもよ。そ れ で も。」
私はこの時には400歳を越えていた。かなり力も強くなっていた。むしろ平均的な400歳の吸血鬼より圧倒的に強いらしい。さすが私。
「あー...そう言えば1つだけ聞いた話なのですが...」
美鈴が口ごもりながら何かを提案しようとする。
「どうしたのよ?歯切れが悪いわね。」
「西の森の中に一軒の強力な魔女の洋館があるらしいです。そこの魔女だったらもしかしたら何かしら対策を打てたりして...ほら、魔法でパァーって。」
「魔女、ねぇ...」
まぁ確かに魔女なら魔法で上手くやってくれるかもしれない。
「しかしどうやって仲間に加えるかだよな。」
「ですよねぇ...」
魔女は力が弱いだろうし、無理矢理連行させてやらせる事も可能だ。だがこの館を奴隷の強制収容所にする気は毛頭無い。
「とりあえず、今日の夜向かってみるよ。」
「分かりました。」


❇︎


という訳で私レミリアは森の洋館へと向かった。
洋館はすぐに見えた。
寂れた館で見ているだけで不気味だ。雷でも鳴りそう。
「さぁて。お邪魔しますっと。」
鍵は掛かって無かったので堂々と入る。掛かってたら壊したまでだが。

が、洋館に入った瞬間何者かに呼び止められた。
「誰!?...帰りなさい!」
目の前から巨大な火球が飛んできた。慌ててそれを避ける。
「おっと、危ないな。問答無用か。」
「人の館に勝手に入ってくる奴に礼儀もクソもあっもんじゃないわ!」
目の前にいたのは...全身紫の寝巻きっぽい服を着てる紫色の髪をした少女だった。
「あー、あなたがここの魔女なのか?」
「えぇ、そうよ。じゃあ帰ってくれる?早く読書の続きが読みたいの。」
この言葉に私が心の中で笑みを浮かべる。恐らくこの魔女は読書好きだ。丁度良い。
「そう言わないでくれよ。私は貴方にお願いがあってきた。」
「出会って10秒でお願いですって?失礼な奴ね。でも先に答えてあげる。...断るわ!礼儀の1つもなってない奴め!私の魔法で消えなさい!」
言うと同時に正面から大きな火炎弾が降り注ぐ。私はそれを避けながら魔女へと近づく。一度気絶させないと話を聞いてくれないだろう。
魔女は魔法の詠唱に夢中で私の攻撃に反応出来ない。......ように見えた。
ガキィィン!
「ぐっ!?」
私が振り下ろした腕は魔女が作った障壁に阻まれた。それどころか攻撃した威力を自分自身に返された。身体中が痛みで痺れる。
「凄いでしょ?対物理用リフレクター。苦節5年の時を経て作り上げた私のお気に入りの魔法よ。みた感じ貴方吸血鬼ね。吸血鬼に勝ったともあればだれも邪魔者は入って来ないわね。みんなビビっちゃうもの。」
魔女は得意そうに、そして嬉しそうに言葉を紡ぎ続ける。
「こんなもの!グングニル!」
大きな槍と化したグングニルが魔女目掛けて飛んでいく。
「馬鹿ね。リフレクターは飛び道具の方が反射させるのが得意なのよ!」
魔女は自信満々でリフレクターを貼る。が、
バリィィィン__
「えっ?」
リフレクターはグングニルに触れた瞬間砕け散った。
「うぐぅっ!?」
更にリフレクターを破壊された代償で、リフレクターを破壊したその威力が全身に反射された。
魔女は既に息絶え絶えだ。やはり身体が弱いのか。
「ま、待って__私が悪かったわ。吸血鬼に喧嘩売るなんてどうかしてた。」
既に戦意が無い事を確認すると、私は戦闘体制を解いた。
「ふぅ__。じゃあ命を許す代わりだが、私のお願いを聞いてくれる?」
「基本的には。」

「じゃあお願い。私の館に住んでくれない?」
「それは困るわ。私はここで生活したいの。」
いやお前、お願い拒否すんなよ。殺すぞ。
「こことは違って豪邸よ?素晴らしいと思うのだけれど。」
「嫌よ。そんな理由じゃここを離れたくは無いわ。ここは昔の魔導書が大量にあるんだから。」
ダメだ。コイツ命乞いをしながらこのお願いを跳ね除けるつもりらしい。
首元に手を当て脅迫したい衝動を抑えながら、私が最後の手段に出る。

「あら、私の館、とっても大きな図書館があってよ?」
「___!」
明らかに魔女が反応した。
「あれは何百年あっても読みきれないかもしれないわねぇ。凄い量よ。なんてったって1000年以上生きた私の父上が集めてくれた沢山の本なのだから。母上が魔法を使えたから、魔導書も沢山あるわ。どうかしら?」
「...くっ。分かったわよ。でも本の内容を見てからね。これでも既に数百冊の本を読んでるわよ?私のお気に召す本が沢山あるかしら?」
「ふふん。父上は蔵書家よ。そんじょそこらの本が集められてるだけじゃ無いと思うわ。」
正直少し不安ではある。もし読んだことある本ばっかだったらこの魔女は興味を失くすだろう。

後は天命に任せるだけ。あれ、悪魔が天にお願いって変よね?

❇︎


杞憂だった。
私の館を見た瞬間、魔女が目を見張ったのを見たし、図書館に入れば思わず感嘆の声をあげていた。
「これは...凄いわ!こんなに沢山の本があるなんて。読んだ事ない本ばっかり!あ、これってずっと読みたかった『魔法七元素学』じゃない...!」
魔女は明らかにここに来て興奮している。
「良かった。気に入ってくれたかしら?」
「えぇ、気に入ったわ。とても。良いのね?ここに住むだけで良いなんて。私多分殆ど図書館から出て来ないわよ?」
「ん、あーそれは大丈夫だ。私は人が欲しかったのと同時にもう一つやって貰いたい事があるのよ。」
「と言うと?」
「ほら、ここの本長い間放置されていたからカビとか生えてる本もあるのよ。読む側としてもそれは困るでしょう?魔女なら魔法使って何とかならないかなー...って。」
それを聞くと魔女は考えるそぶりをして、
「ふむ。それなら多分何とかなるわ。」
「え!?ホント!?」
「えぇ。本の周りに魔法の水分コーティングをすれば多分大丈夫。」
それを聞いて私は怪訝そうな表情をした。
「水分?カビって水分や湿気が原因で繁殖するのよ?」
実は一般常識には疎いのかこの魔女___とか思ったがそう言うわけでは無く、
「ただの水ならね。私の魔法で作られる水は精霊の水。純度100%の清い水よ。これにカビが当てられればカビの方が消滅するわ。」
「ふーん、流石ね。」
よく分からないが、嘘をついてるようには感じないもし、嘘だったら地獄のような目に遭わせてやればいいだけだ。

「あ、そういえばあなたの名前をまだ聞いていなかったわね。」
「名前?あー...そうね。私はパチュリー・ノーレッジ。魔女界隈では有名な家系の生まれよ。」
どうやら向こうは向こうで名のある血筋らしい。
「へぇ〜凄いわね。私はレミリア・スカーレット。由緒正しきスカーレット家の長女よ。」
長女と言う私の言い回しにパチュリーは引っかかった。
「長女?あなた兄妹がいるの?」
「えぇ、妹がね。ちなみに私の家系は吸血鬼の始祖であるブラド・ツェペシュ公と繋がっているわ。」
「へぇ、凄いじゃない。」
「嘘だけど。」
「オイ。」


❇︎


パチュリーはここに来た当初から図書館に居座り続ける動かない大図書館だった。

そんなパチュリーが、ある日私にこんな提案をしてきたのだ。
「ねぇレミリア、あなたが住んでるこの館って、名前は無いのかしら?」
「うぇ?この館の名前?...言われてみれば無いわね。」
それを聞いてパチュリーが「あちゃー」と言いながら手を顔の前に持ってく。
「自分の住んでる館に名前があった方が風格が出ると思わない?」
「ん、確かにそうだわ。そうねぇ何が良いのかしら。」
と悩んでいる私に、パチュリーが助言をしてくれる。
「基本的には自分の名前を誇示する意味合いを込めて自分の姓を館の名前に付ける人が多いわね。私が子供の頃住んでいた屋敷も、『ノーレッジ邸』だったわ。」
「なんかメチャクチャ賢そうな名前ね...でもそれは一般的すぎてつまらないわ。」
私は思う。スカーレット邸でも良いと思うんだ。でもさ、それじゃつまらないじゃない!
「ふふっ。貴方らしいわね。そう言うと思って、少し捻った名前を考えておいたわ。」
「あら、流石知識の魔法使い。優秀ね。」
パチュリーのネーミングセンスがどうなのか分からないが、気になるところだ。
ちなみに私のネーミングセンスは自分では良いと思ってるんだけど、後で妹に聞いてみたら、
「無い。皆無よ。ダサすぎる。何でもカタカナにすればカッコいいとでも思っとるのか。」
と、一蹴されてしまった。お姉ちゃん泣いちゃう。

「それで?発表してもらいましょうか。パチュリーさん?」
「えぇ。私が考えた名前はズバリ...『紅魔館』よ。」
「紅魔...館?」
コウマカン。違う違う、紅魔館。まさか西洋のイギリスに漢字を持ち込んで来るとは思わなかった。
「紅魔の紅は、あなたの姓であるスカーレットを漢字で表したもの。紅魔の魔は私達の種族の事。あなたは悪魔だし、私は魔法使い。ピッタリな名前だと思うけど。」
紅魔館...か。良い。凄く良い。今までに無い新鮮な感覚がする。
「良いわ...!その名前。気に入ったわ!」
「あら、ホント?良かったわ。頑張って考えただけはあった。」
どうやら私の為に頑張って考えてくれてたらしい。嬉しい限りだ。
「今度からレミリア・スカーレットのこの館を『紅魔館』とするわ!...ありがと。パチェ。」
「パチェ?」
パチェが頭に[?]を浮かべる。
「パチュリーの事。なんかそう呼びたくなったわ。ダメ?」
私が聞くとパチェが優しく微笑んで、
「良いわよ。じゃあ私も呼びたいように呼んで良いかしら?レミィ。」
と返してくれた。私はそれが嬉しかった。
「良いわよ。...寧ろ嬉しい。」


❇︎


ある日、パチュリーが「人手が足りない。」と言ってきた。
「え、そんな事言われても...」
「ここの本を読み切るには私1人じゃ大変すぎるわ。」
まぁ、物凄い量だもんなぁ...ってか読み切る気でいるんだ。正気か?
「まぁ、これは提案でしか無いけど...僕悪魔を召喚してみたら?」
「僕悪魔?」
「そ。誰かに使える為に生まれてきた、悪魔の中の最底辺の奴ら。悪魔だから気をつけないとだけど、基本的に仕事は忠実だから任せられるわ。」
「なるほどねぇ...」


一週間後、図書館に行ってみると、見慣れない赤髪の悪魔がいた。
「あ!貴方がレミリアさんですか?初めまして!私、この図書館の司書を任される事になりました、小悪魔と申します!こあ と呼んでください!」
ほほー、パチェの奴。早速僕悪魔を召喚したか。本の為ならホントに動きが早いわねぇ...


❇︎


「レミィ。この前、私達でこの館の名前を付けたじゃない?」
急にパチェが話を振ってきた。
「えぇ。付けたわ。紅魔館は今でも気に入ってるわよ?」
もしかしてお世辞じゃ無かったか気にしてるんだろうか?って思ったけど違った。
「私も、この図書館に名前を付ける事にしたのよ。」
「おぉー、良いじゃない。何?『パチュリー大図書館』とか?」
「そんなダサい名前付けられないわ。」
「んなっ!」
パチェにまでダサい言われた!本当に私のネーミングセンスは無いんだろうか?
「ヴワル魔法図書館 にしたわ。」
ヴワル魔法図書館。おおー良いじゃない。あれ?確かヴワルって__
「そ。ソロモン72柱の1人で、グリモワールを創ったともされる魔神よ。魔法使いである私が管理するのにピッタリじゃない。」
確かに。パチュリーらしいわね。私もその名前気に入った。
思わずクスリと笑っちゃう。


❇︎


一週間ぶりにフランに会いに行ったある日。
地下室のドアを開けると、そこには変わり果てた妹がいた。
衣服も髪もボロボロ。そして何より、羽は枝の部分以外全て千切れていた。
「フ、フラン...?」
私は怖かった。私が閉じ込めたから。私が少しだけフランと会っていなかったから。私が...私が...
「お姉様?」
フランが、返事をした。目が虚で光が灯っていないが、確かな眼をしていた。
「ごめんなさい...破壊衝動が起きたんだけど破壊出来る物が見つからなくて、自分自身をズタズタにしちゃったの。...服や髪は時間が立てば治るけど、もう...私に翼は生えてこないわ。」
ショックだった。でも、フランが無事だったのが幸いだった。
「良いの...フランが無事で。生きていて良かった。廃人になっちゃったのかと本当に不安だったわ...」
後日、フランの羽にはパチュリーの賢者の石をぶら下げる事にした。キラキラしていて、一瞬羨ましくなったのはここだけの話。


❇︎


そうして、私が500歳間近に迫った頃。

やっぱりこれこそが運命の出会いなのだと思う。

「ふふっ。吸血鬼ハンターが私の場所に来るのはどれくらいぶりかしら。生死を分けた戦いも久しぶりだわ。」
ある日の夜、1人の吸血鬼ハンターが侵入してきた。
そいつは室内で偶然出会った美鈴を倒し、図書館に入った後パチェも撃退した。かなりの技量を持ったハンターだとは言うまでも無い。

私は久しぶりに沸いていた。吸血鬼としての感性にだ。血が滾る。元来吸血鬼は夜は好戦的になるのだ。

ハンターは全身をフードで覆っていて分からなかったが、銀色の髪をしていた。中々美しい。

使用する武器は何百本ものナイフ。どうせ全部銀製だ。普通のナイフだったらわざと当たっても良かったんだが、そうは問屋が卸さない。

何分か交戦しているのだが、どうにも奇妙な術を使っている気配がある。それはパチュリーも美鈴も言っていた。


(少女更に回想中...)

バタン__
「っ!はぁ、はぁ。レミィ!っ__ごほっ。ごほっ...」
勢いよく扉が開いたかと思うと、右の脇腹を深く斬られ、左肩にナイフが刺さった状態でパチェが来た。
「パチェ!?どうしたの!?」
「賊よ。恐らく吸血鬼ハンターだわ。」
まさか、パチェが負けたと言うのか。
「あの吸血鬼ハンター、変な術を使っていたわ。瞬きする間に消えて、目の前に何百本ものナイフが出現したわ。」
「何それ。人間如きでそんな事が出来る奴がいると?」
「そう言うことね...」
ハァ。とため息をつきながらパチェが言う。
「もう少しで来ると思うわ。レミィ、気をつけて。」

(ハンターとの戦闘シーンに戻る)


交戦してる間、偶におかしな感覚がする。五感では感知できないような"何か"を弄られてる感覚。
何だ。何を弄られている?
等と考えていたら目の前にいたハンターが突如15本のナイフと入れ替わった!
「はぁ!?」
ザクッ__

クソ...!左肩をやられた。
でも今ので、奴の能力が分かった。
「ふふ。貴方の能力、時を操れるのね___!」
「っ!」
図星だ。奴が狼狽えた。突如ナイフと入れ替わったのはただの錯覚だ。ハンターが私の視界から消えて、元いた場所にナイフを置いただけ。時が止まった世界では投げたナイフもすぐに止まるはずだ。
これではまるでナイフとハンターの位置が入れ替わってるだけかのように見える。時を止める能力は露骨すぎる為、これでカモフラージュしているのだろう。

「ふふっ。凄い能力ね。羨ましいくらいだわ。あなた、私の眷属にならない?」
「っ!?黙れ!吸血鬼め、殺してやる!」

この言い方__大方吸血鬼に親を殺されたとかそんな所だろう。

私がハンターに向かって突進する。その瞬間、ハンターの姿が消え、またしても何十本ものナイフが出現した。
が、それを見切っていた私は、片手でナイフを弾き飛ばし、身体を反対方向に向け、突進する。

予想通り、ハンターは私の真後ろにいた。
「もらったぁ!」

と思ったが、私の手は空を切る。

「くっ__幼いから弱いと思っていたのだけど、私の能力を見破るとは中々強い吸血鬼なのね。」
「中々じゃ無い。強いのさ。」
ハンターは全身を覆っていたマントを脱いでいた。その下には何年も使い古していたであろう衣服を着ていた。

「良いわ。そんなに自分に自信があるのなら、本気で殺ってあげるわ!」
次の瞬間、360度を完全にナイフで包囲された。
考える暇も無く襲ってくる。私は一か八か、目の前に突進し、両手のクローで私が通れる所だけナイフを叩き落として、後を避けた。
「!?馬鹿な、あれを避けるなんて!」
「ちょっと焦ったけど。私を甘く見過ぎよ。そろそろ終わりにしましょう。...予言するわ。今から3分後にあなたは死ぬ。死にたくなかったら今から逃げる選択肢も与えるけど?」
「くっ__この!」
ハンターがナイフを投げる。私はそれを躱すと、あさっての方向に得意技のグングニルを投げた。
「はぁ?何して__」
私はその言葉を打ち消し、こう告げる。
「あれが、貴方を殺す槍。」
「っ!」
私には既に事の顛末が『見えて』いる。
そう、『見えて』いるのだ。この運命を操る程度の能力で。


2分30秒が経過した頃だ。
ハンターは既に消耗し、動きが鈍くなってきた。予想通り。
ハンターが装備していたのは投げナイフが殆どだったが、近接用のナイフも所持していた。瞬きする間に首を斬りかかってきた時は本当に死ぬかと思った。
「っ、はぁ!」
ここでハンターがもう一度近接戦へと切り替え、突進してくる。私はそれを受け止めるように見せかけ__

コウモリ化する事で躱した。
「え!?」
「はぁ!」
ドガッ!

鈍い音がして私の蹴りをハンターはモロに喰らった。突進で前傾姿勢だった事も相まってバランスを右斜め前方向に崩す。

そして、ハンターが倒れた先には__
「グングニル。」
館の中を縦横無尽に暴れていたグングニルは、壁や天井で反射し続け、向こうの壁に当たり此方へと戻ってきた。そしてグングニルは今まさに天井にぶつかり、下方向へ降りてきていた。

そう、この顛末を、私は予言した時から『見えて』いた。

グングニルは、正確にハンターの心臓を貫いた。

グサッッ!

「が...はっ...!」

このままでは彼女は数分で死んでしまうだろう。

でもそれは勿体無い。だから私は___


❇︎


「うん__ここは?」
「お目覚めね。咲夜。」
「咲夜?」
「そ。貴方の名前よ。十六夜咲夜。素敵な名前でしょう?」
「あれ、私、心臓を貫かれて__」
「あぁ、私の眷属にしたから、その程度の傷半日もすれば勝手に治ったわよ。」
「え、そんな__」
「安心して。今はもう人間よ。パチェに吸血鬼化の解除魔法をかけさせたから。」
「良かった__」
「ねぇ、貴方。これから行く宛あるの?」
「.........」
「そんな事だろうと思った。私は、貴方をこの館__紅魔館へお招きしたいと思ってるわ。」
「...ここに?」
「そうよ。あなたは頼れるメイド長。皆を纏める存在よ。__ホントは私がするハズの事なんだけど。」
「それは...ありがとうございます。えぇっと...」
「私の名前はレミリアよ。レミリア・スカーレット。」
「ありがとうございます。レミリアさん。」
「あぁ、そんな『さん』なんて中途半端な丁寧語はやめて頂戴。呼ばれるなら呼び捨てか様付けにされたいわ。」
「...レミリア様?」
「ちょっと、今のは冗談だったのに。」

❇︎


咲夜は初めは家事が何も出来なかった。特に料理と掃除が酷かったわね。とにかく雑。
今の咲夜からは想像出来ない位雑だったわ。料理の見栄えは最悪だし、廊下の隅の方はホコリだらけだし。
初めは咲夜は実は「レミリア様、フランドール様」と呼んでいたのだ。
でもやっぱりそれじゃ呼び名が長いから、「いつの日かお嬢様、妹様」になった。
そしてそれはパチュリーの『レミィ』以外みんな移った。それで私がお嬢様って呼ばれるようになっちゃった訳。
別に私ボンボンじゃ無いのよ?


❇︎


それから数年後。私達は紅魔館を追われる事となった。
私達妖怪が跋扈してる事がイギリス市民にバレて、大規模なデモを起こされたのだ。そりゃ食い殺したかったよ。でもアイツら私が吸血鬼って知ってるから昼間しか来ないんだもん!身体焼ける!死んじゃう!
仕方なく、私達は紅魔館を去ろうとしたんだけど、美鈴が1つ面白い提案をしたのだ。
「私聞いた事があるんですけど、この世界には忘れ去られた者が辿り着く最後の楽園があるそうなのです。...今の私達がそこへ行く意味はあるんじゃないでしょうか?」
そんなのがあるのか。でも確かに興味があるし、どうせこっから出れば昼間に私は焼け死ぬ。
「良いわ。行きましょう。」
「...でもどうやって行くのよ?そもそもイギリスにあるの?」
パチュリーが呆れた顔で美鈴に問いかける。それに対し美鈴は、
「いえ、あるのはジパングです。」
「日本か...どうやって行けって言うのよ...」
「もうなんか、お嬢様の能力でいけません?バァーって。」
ふざけてんのかこの野郎。
「はぁ...ふざけた事言うねぇお前も。まぁ行けなくは無いと思うよ。」
「行けんの!?曖昧すぎるでしょ!」
「そこの名前は?」



「幻想郷です。」


❇︎


「へぇ〜何だか面白いわね。」と霊夢。
「ここに来るキッカケって美鈴の一言だったのか。」と魔理沙。
「美鈴との出会いってそんな感じだったのね。」とパチュリー。
「どう?面白かった?」
と、身を乗り出して聞くレミリアに霊夢が、
「えぇ。暇つぶしにはなったわ。」


「私の一生は暇つぶしなのかよ。」
どーもメアみょんです。
レミリア達紅魔組の色んな過去話をテーマにしました。
今回こそ!今回こそ駄作になって無いと信じて...!
前回の作品は正直駄作だったのかも。もう少し深掘りしてグダらせても問題無かったですね。


ちなみに...出オチもいい所なオリキャラのアンナさんがフランにきゅっとしてドカーンされるシーンの やばたにえんって、何の事か分かった人います?






作者は妖夢推しなのにいつになったら妖夢の話を書くんだろ...もううどみょんでも良いからさ...
メアみょん
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コメント



0.140簡易評価
1.8012club削除
面白かったです。
奇をてらわない紅魔館主従の出会いをシンプルに描いていたのがどことなく新鮮でした。
2.90奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
3.70名前が無い程度の能力削除
やばたにえんっていうホラゲありましたね。
ちなみに「けいせん」と入力すると、「──」この線が使えます。
紅魔組の出会い話は作品が多いので既視感を感じる場面が多く、展開にもう一捻り欲しかったなぁというのが正直な感想でした。
命乞いしてる筈なのに我儘なパチュリーさん好きです。
5.90taketchi削除
意外な内容が多くて読みごたえがありました。
書いてくださりありがとうございます!
7.無評価ゆっくりA削除
最高、可愛い、混ざりたい…俺も、忘れられたら幻想入り出来るのかな?やってみようかな?
9.100あよ削除
点数入れ忘れました。
11.無評価ゆっくりA削除
ゆっくりAでございます。
何回見ても飽きないですね。お気に入り登録しちゃいました。
…俺も幻想入りしたい…
…早く…早く…あああああああああああああああああああああああ幻想入りしたいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい
ピチューン
(ガチで思っている事です)
12.100mikaname????????削除
もう最高。紅魔館組の出会いやフランの羽の由来についても、すごく面白いです。











フランの気持ちがわかる気がするな。