[注意]
・秘封倶楽部に関する自己解釈がかなりあります。
・特に胸とかおpp(ry
↓それを踏まえた上でお願いします↓
マエリベリー・ハーンは割合ひとりで居る事が多かった。
別に友達が居ないとかそういうわけではない。
どちらかと言えば少ない方ではあったが、別に引きこもって人形作っているわけでもなければ本を読んでばかりいるわけではなく、ましてや最近流行りのニートでなどもっとない。
つまりはまぁ、悲観するほど友達が少ないわけでもないと言う事だ。
だが、その少ない中に特別仲の良い者がいるわけでもなく、1人で居る時の方が気楽であった。
大学に通うようになって3ヶ月弱。
今までとは違う交友関係になった事が関係あるかと言えば、それは否。
昔からこんなもんである。
こんな風に並べてみると少しばかり特殊に思えるかもしれないが、なんてことはない。
端から見ればちょっと友達が少ないけれど当たり障りなく付き合う事の出来る普通の大学生だという事だ。
髪や肌の色がこの国の生まれでない故に周りの者と違う事と……結界の境目が見えるという事を除けば。
でも前者は今更本人含め誰も特に気にはしないし、後者は言わなければいい。そんなもんである。
それでも特別仲の良い者の1人もいないのは少し寂しいような気もするが、マエリベリーは気にしない。
だって、
――特に気の合う相手もいないんだしねぇ。
……まぁ、そんなもんなのだ。
*
両に緑を置き、真ん中が茜色に染まる光景がある。
大学の敷地内の並木道から空を見上げた視界に映る光景だ。
そんな夕刻の並木道を、宇佐見蓮子は歩いていた。
気分は上々。
気合と根性とちょっとした裏工作で設立を申請していたサークルは見事認可され、まさに胸躍る気分だった。
まぁ、元気よく踊るほどの胸はないが。そこそこには。
それはさておき。
兎も角気分が良かったのである。
良かったのではある、が。
「私以外に誰も居ないってのは問題よねぇ」
問題とかそういうレベルではない。
大問題である。1人しか居ないサークルってなんだって話だ。
まぁ、この辺が裏工作をするに至った所以なのだが、あまりここで気にしてはならない。
というか蓮子はそんな事をいちいち気にするような少女でもなかった。
認可についてはこれで雀の涙ほどとは言え活動費が得られる、それだけ。
そんな悩みを抱えつつもやっぱり上機嫌な蓮子は並木道の突き当たり、左右に折れた道を右に曲がった。
その時である。
「きゃっ!?」
「ひえっ!?」
前者、ぶつかった人。
後者、蓮子。
女っぽくないとまで言えないにせよ、間抜けな声だ。
「ご、ごめんなさい!」
「あ、いや、こちらこそ」
そうやって顔を上げ、ぶつかった人物と目が合い、
――うわなによこれ。
そして蓮子は絶句した。
まず美人である。
紛うことなき美人である。
それでいてどこか幼さが残っていて、可愛い。
極めつけに。
「金髪巨乳ですか」
「はい?」
思わず敬語になった。しかも口に出していた。
大きな声でなく、相手が焦っていた事もあってちゃんと聞こえなかったのが不幸中の幸いか。
「あ、いえ、なんでも」
「……? え、えっと。私ちょっと急いでるのでこれで! すみません!」
そう言うと金髪巨乳は脱兎の如く去っていた。
その方向、沈む夕陽を見ながら蓮子は呟く。
「……うむ、何と言いますか」
引き続き、敬語で。
「……うん、あの娘を、我らが秘封倶楽部に」
1人しか居ないとかそんな事はさて置き。
間違いなくあの少女は普通ではないと蓮子は確信する。
例えば星を見ただけで時間が、月を見ただけで今居る場所が分かる自らのように。
何故そう確信したかは蓮子自身にもわからなかったが。
兎に角、普通ではないと。
「…………普通なわけ、ないわよねぇ」
柔らかかった。でかかった。
あいつはでけぇぜおやっさん、とでも言いたくなる気分だ。
誰だか知らんが。
「まぁ、何と言うか」
もにゅもにゅと胸部の膨らみを持ち上げながら、思う。
―― 一応平均以上はあるはず、多分。
と。
でもまぁ、女の子だから。
「牛乳でも買って帰ろうかな」
そんな新たな悩みを抱えつつも、まぁ、やっぱり蓮子は上機嫌であった。
*
講義中、マエリベリーは頭に超が付くほど必死こいてノートにシャーペンを走らせていた。
この講義はぶっちゃけどうでもよかった。
次の講義である。ノートとってないと何だか知らんがヤバイらしい。
詳細は聞いてないが兎に角ヤバイらしい。
なのでとりあえずノートを借りて写す事にした。
特別仲が良いわけではないとはいえ、やはり持つ者はそれなりに仲の良い友である。
そんな事を思いながらやはり必死こいてシャーペンを走らせている最中。
「ねぇ、そこの金髪巨……じゃなくて、マエイベリー・ハーンさん? ちょっといいかしら」
「え……?」
「そう、あなた。ちょっと話があるの」
「はぁ……?」
はて、と思う。
目の前に立つのはちょっとばかし茶色の混じった綺麗な黒髪を肩のあたりまで伸ばした少女。
素直に可愛い顔だ。だが印象に残るかといえば否なのだろうか、マエリベリーには見覚えがなかった。
というか今金髪巨乳とか言いかけなかったか。でも出かかったそれはなんとか飲み込む。
「えっと……マエイベリーじゃなくてマエリベリーなんだけど」
「マエ……イベミー?」
「後退してる」
「えぇっと、マエ……えぇっとリベリー」
「そう」
「言いにくいわねぇ」
「初対面の人間にいきなりそんな事を言わないでよ」
「昨日会ったわよ、メリー」
「メリーって誰」
「あなた」
「なんでメリー」
「発音がそれっぽいから」
呆れた。呆れるしかなかった。
会話のテンポがまずいい。
それだけに碌に考えもせず導き出したと思えるこの愛称が何か凄い。
でもまぁ、なんか呼びやすそうだしそれでもいいかとマエリベリー……以下メリーは思う。
「で、昨日会ったって? どこのマルチ商法勧誘の方?」
「私はそんなのしないわよ。ほら、並木道でぶつかったでしょ」
「……あぁ、なるほど」
思い出した、と言わんばかりにメリーはポンと手を合わせ、
「それで、慰謝料でも請求に来たの?」
そう言い放つ。
怪しい勧誘とかその辺の類と断定している。
「まぁ、大きさの違いという理不尽による精神的ショックを受けなかったといえば嘘になるけど、そんなのじゃないわ」
「じゃあ、何かしら?」
「あなたを我がサークル、『秘封倶楽部』に勧誘に来ました」
えっへんと胸を張って、そう言った。
メリーは何故誇らしげに胸を張るのかと問いたい気分になったが、不毛な気がしたのでやめておく。
何はどうあれ勧誘だった。怪しいといえば間違いではないサークル名な気もした。
「そんなサークル」
「いいからいいから。今日の午後4時半に、このメモに書いてある場所に来てもらいたいの」
知らない、と言おうとして物の見事に遮られる。
「それじゃ、これからの秘封倶楽部、2人で盛り上げましょうね!」
拒否権なし。
問答無用でメモをメリーに渡すと、黒髪の少女はそのまま走っていった。
――っていうか今講義中……。
そんな事を思うがそれを気にする者はいない。
まぁ、詰まるところその程度の講義なのかも知れないが。
そしてひとつ、気になった。
――2人だけ、なの? 私含めて?
*
――遅い。
大学近くの喫茶店の席に座りながらメリーはイライラしていた。
まず第一。初めて入った店だったのだが大学の近くにあるくせに学生の事を考えてないような値段だった。
他と比べて高いわけではないが学生が多いんだからもう少し安くして欲しいと思う。
そして第二。4時半を過ぎていた。3分ほど。
些細だ。些細だが呼び出した方が遅れるというのはどうなのか。
ついさっき頼んだ紅茶はもう来ている。が、敢えて飲まない。
来るのが遅すぎて冷めたら代金請求するつもりで。
そもそも来る必要もないのに何で来ているのか、というのもあるが何故か気になって来てしまったのだからそれはしょうがない。
「メリー」
呼ばれた。すぐに反応するほど馴染んでいるわけではないが、声に反応して振り返った。
「3分42秒ほど遅刻」
「え? 私の時計なら3分28秒だけど」
「そんなの知らないわよ。というか遅刻は遅刻」
「むぅ。……ま、いいわ。とりあえず入部祝いという事で何か奢」
「誰も入るとは言っていないんだけど。それに私、あなたの名前すら聞いてないわよ?」
メリーがそう言うと黒髪の少女は考えるようにしてから、
「そうだっけ?」
確認するように問うた。
「そうよ。聞いてない。入部も何も誘ってきた人間の名も知らないんじゃねぇ」
そう言い、メリーは紅茶を啜る。
少しだけ冷めているが、
――うん、まぁ、美味しいかな。
成る程、大学近くでも他と変わらない値段は安い方かもしれない、とそう思う。
「じゃあ、自己紹介。私は宇佐見蓮子。『秘封倶楽部』の開設者にして唯一のメンバーよ。今のところ」
予想通り2人だけだった。メリー含めて。
ここでは唯一とか言ったがどう考えてもメリーを2人目のメンバーにする気満々だ。
何というかとりあえず振り回されっぱなしもあれなので。
「ふむふむ……うさぎれんこんさんね。よろしく」
こんな事を言ってみた。
「…………その間違いはわざとよね?」
「わざとよ」
「強引に誘われた仕返しと言わんばかりにそんな事してたら碌な人間になれないわよ?」
「あなたに碌な人間になれないなんて言われたくないわよ!」
「まぁ、ほら。自覚ある分だけ私はマシって事で」
「私も自覚ある! っていうか自覚ある方が性質悪い!」
はぁはぁと息を荒くし、メリーは笑顔で向かいの席に座る蓮子を睨む。
しかしながら、自覚あると言いつつその方が性質が悪いと自分で言ってしまうのはいかがなものか。
「それで? ……何で私なの。たまたまぶつかったから? っていうかこのサークルの目的は何?」
「あー、そんな一気に2つ質問されても困るんだけど。最初からひとつずつ答えていくわね」
「……そうして」
「まずひとつ目。直感よ」
「…………」
「胡散臭いとか思ってそうな目をするわねぇ」
……というかまさに思っていた。
直感くらいでこんな事されるメリーは堪ったもんじゃないだろう。
「あなたはね……何か、他の人には出来ない事が出来そうに感じるのよ。
そう……例えば。普通の人には見ることの出来ないものが見える、とか」
「…………え?」
音を発してから間が抜けすぎている、とメリーは思う。
だが無理もない。
家族以外誰にも話した事のないような事を、目の前の少女……宇佐見蓮子は当ててしまったのだ。
そんな音を発しない方が冷静すぎて怖いぐらいかもしれない。
「……それで、強いてそう思った理由を挙げるなら」
「……何かしら?」
「おっぱいが大きいのよ、あなた」
「はぁ?」
さっきよりも間の抜けた音が出た。
かつ呆れ、訝しさその他もろもろを含んだ混沌の音。
おっぱいがおおきいってなんだおっぱいがおおきいって。
これはあれか。今私の目の前にいる宇佐見蓮子とやらの常識ではおっぱいの大きい人間は他人とは違う何かが出来る特異な人間なのか。
そんな事を思考し、自らの脳内とは言え『おっぱい』などと何やら色々と微妙な単語を連呼してしまった事にメリーは頭痛を覚える。
――あぁもう何なのよ、この蓮子ってのは。
「そう。あなたのおっぱいにはこう何て言うの? 私には不思議な力がありますよー、って主張する何かがあるように思えるのよ」
「はぁ……」
「まぁ、だからと言っておっぱいがその力の源だとかそんなのは言わないけどね、さすがの私も」
「いやもう何て言うかそこそこ人のいる喫茶店で年頃の娘が『おっぱい』って連呼してる時点でどうかと私は思うわよ」
……おっぱいが力の源なんて言い始めたら冗談抜き精神病院にでも運ぶべきだろうが。
それ程ではないにしてもせめて『胸』とか『乳』とかその辺の表現にしておくべきなんじゃないかとメリーは思い、それを蓮子に告げる。
で、返って来たのは。
「なんか普通に言っても詰まらないし」
「……何が詰まらないのか私にはさっぱりよ」
「それで次。サークルの目的だったかしら?」
「えぇ。それがわからないと入りようもないわ」
もはや入る気など毛頭なかったが一応話だけでも聞いてやろうと思い、メリーはそう言う。
「表は霊能者サークルね」
「表?」
「そ、表。裏はね……結界を暴くサークル」
メリーが無意識の内に右手で左肩を握るようにする。
身体が冷える。ぞっ、とした。
……人と違う目、その能力。
『結界の境目が見える』程度の能力。
本当に何者なの……この宇佐見蓮子って子は、とメリーは思う。
……まるで最初から全てわかっているようにさえ感じた。
「それって……均衡を崩す恐れがあるからと禁止されていることじゃなかったかしら?」
「あくまで建前みたいなもの、罪に問われるわけじゃないでしょ? それに暴くだけ。潰したりするわけじゃないわよ」
「…………」
苦し紛れの言葉は簡単に跳ね除けられた。
それもそうだ。そもそも言われているだけで常人からすればそんな物の存在自体が疑わしいのだ。
『禁止』はされているが何かしらの『罪に問われる』わけではない。
結界を潰したからと言って均衡が崩れる、というのだって本当かどうかは誰にもわかりはしない事。
でも、とメリーは思う。
「でも、だからって……何でそんな事」
「何でって……ほら、こう。他人がやらない事ってのはやってみたいとか思うこと、ないかしら?」
「……それも人によると思うけど」
「確かにそうね。それで、私はそういうのをやってみたいと思う人なのよ」
気が合いそうにない、とメリーは思う。けれどこの少女は凄いな、とも。
メリーは違う。
危ない事は避けて通りたいし、ましてやそれが他の者も避けるようなものならば絶対に触れようとは思わない。
嫌いな物からだって目を背ける。
例えば彼岸花。メリーはあれが、嫌いだ。
まるで何かを……魂だって掴み取ってしまいそうにも見える、放射状の舌状花とおしべ。
それは長く見ていると吐き気すら催してくる気持ち悪い見た目だと思う。
では、もしこの少女が……宇佐見蓮子が彼岸花を嫌いだったとしたら、目を背けるだろうかと考える。
メリーは悩む事無く答えを導き出す。それは否だ、と。
きっと向き合うだろう。花の見た目だけではなく、彼岸花の花言葉、『悲しき思い出』にも。
今は大袈裟に言うほどの悲しき思い出などありはしないが。
もし出来たとしたらメリーは向き合う事を拒否するであろうそれに、もし彼女なら……蓮子ならきっと向き合うだろう。
「……入会、するわ」
「へ?」
「入るわ。あなたの秘封倶楽部に」
「そう。……じゃあ、今日からは私たちの秘封倶楽部って事ね」
何となく蓮子に惹かれ、無意識にメリーはそんな事を言ってしまう。
少し後悔し、しかし別にいいかと開き直る。軽い気持ちだった。
期待外れなら。本当にとんでもなく危ない事に巻き込まれそうになったなら。
さっさと抜けてしまえばいいと、メリーはそう思ったのだ。
*
夜の道がある。
鬱蒼と生い茂る草に挟まれ、舗装もされず申し訳程度にあるような道だ。
外灯すらありはしない、光に見捨てられたかのような錯覚を抱かせるその道を、しかし今は小さな光が照らしていた。
照らされるのはその光の発生する場所から前方数メートル。
懐中電灯の光だ。
そしてその懐中電灯を持ち、闇夜の中を歩く人影は2つあった。
メリーと蓮子だ。
メリーはというとうんざりした様な、なんで私はこんな所にいるんだろうとでも言わんばかりの顔をしていた。
それに相対するかのように帽子を被った蓮子は楽しそうな顔をしている。
夜だと言うのに帽子を被っている理由をメリーが問うたとき、返って来た答えは「気分の問題よ」だった。
それがメリーのうんざり具合に拍車をかけているのだが、勿論そんな事は蓮子の知った事ではない。
「はぁ……もうなんで、いきなりこんな所に」
「さっきから文句ばっか言わないの。メリーも秘封倶楽部のメンバーなんだから。ね?」
「そりゃそうだけど……」
事の始まりは喫茶店で秘封倶楽部のメンバー入りをしてしまった翌日だった。
携帯電話に蓮子から電話がかかってきたのだ。
『明後日の夜、街の外れにあるらしい結界を暴きに行くわよ!』
と。
いきなりすぎるとかそもそもまだ教えていなかった携帯電話の番号を何故知っているんだとかメリーからすれば突っ込みどころ満載ではあったが。
もう僅かな接触だけでメリーは分かりきっていた。
――蓮子にとってはそんな事はきっとどうでもいいのよね。
だから番号の件も含め何も言いはしなかった。
で、その結果が、
「ほんっとーに暗いわね……」
ちょっとくらい拒否してみればよかった、という後悔だった。
多分無駄ではあっただろうが。
それでも最悪時間帯くらいは昼にしてくれたんじゃないだろうかともメリーは思う。
あと蓮子がまた遅刻をしでかしたのだが、この状況だとそんな事はもうどうでもよかった。
「暗くなんかないわよ。ほら、懐中電灯」
「こんな所でそのくらいの光が何だって言うのよ」
「こんな所だからこそ、この光が十分すぎるのよ」
メリーが言いたい事はこんなに暗い場所でこの程度の光など大した物ではないという事。
一方蓮子が言いたい事はこんなに暗い場所だからこそ、この程度の光でも十分頼りになるという事だ。
それを理解したからこそメリーは、
――やっぱり、蓮子とは全く気が合いそうにないわ。
そんな事を頭の中で呟き、口からは溜め息を漏らす。
それでもメンバーである以上としっかり着いて行くだけメリーは人が良いと言えるのかも知れない。
「……それで。この先に例の結界があるの?」
「そ。提供された写真によるとね」
「…………」
確かにその写真に写った景色は、一部からはっきりと違う世界のようになっていた。
メリーが訝しげに写真を覘き込むと、横から「あ」という蓮子の声。
「どうしたの?」
「とうちゃーく」
目の前には忘れ去られたかのようにも思える墓地と。
小さな寺が、あった。
*
「ここに参りに来る人なんているのかしら……」
「どうかな。綺麗にされてるお墓もあるにはあるけど」
メリーの疑問に、蓮子は墓石を触りながら答える。
確かに蓮子の言うとおり、小奇麗にされている墓石もあるにはあった。
だがそれでも周りには草が生えており、古い。
恐らくはお盆や、気が向いたときに誰かが来る程度なのだろう。
寺などはもう誰かがいる様子だってありはしない。
「本当に何か出そうね……」
「出たら出たでいいじゃない」
「よくない」
元よりメリーは霊感が強い。
それはメリーの家系が代々そうであったが、結界の境目が見えるという能力からしても、メリーの霊感は並外れている事は確かだ。
何か出れば見える可能性はかなり高い。
「……見えたらどうしよう」
「ま、見える事もあるかもしれないわね」
軽い、蓮子は実に軽かった。
墓を触るにしても全く物怖じしていないし、もしかすると自らが興味を持ったものには恐怖を覚えないのかもしれない。
「ほらぁ、メリーも墓石動かしたりして何か探してよぉ。もう0時10分14秒、日付変わってるわよ?」
「はいはい……」
そこで違和感を感じる。
ちょっと待て、とメリーの頭の中で誰かが問いかけるような気がした。
それは紛れもなく自身が抱いた疑問だ。何かに取り憑かれたりしたわけではない。
じゃあこの疑問は何なのか、と思う。
「…………」
よく考えろ、とメリーは自身に強く呼びかける。
喫茶店で遅れた時……夕刻、蓮子は腕時計を見ながらメリーの時計と蓮子の時計ではズレがあるように言っていた。
では今日はどうだ。
――蓮子は、腕時計をしていない?
携帯電話は持っているには持っていたが、秒単位まで表示はされていないもののはずだ。
なのに秒単位まで言ってのけた。
だがそれだけではない。何故なら。
「蓮子……あなた、何も見ずに時間を言ったでしょう? 適当にも、ほどがあるわよ」
それだけではないと思う心を抑え、そう言う。
そんなのはおかしいと思ったから。
……メリーが見た腕時計は確かに0時10分を指している。
秒単位の違いこそあれど、蓮子の言った時間が間違っているわけではない。
だが、頭の中で一瞬でもたてたその仮定を肯定する方が馬鹿げている。
そんな事が有り得たら気持ち悪いではないかと、そんな風に思う。
「あー、やっちゃったか。……つい癖で、ね」
本当に、失敗したなーという口調で蓮子はそんな事を言った。
何故かはわからないが懐中電灯のスイッチを切ったために蓮子の周囲からは光が失せ、表情を窺うことは出来ない。
「癖って……適当な時間を言う事が?」
メリーは無理に訝しげな表情を作り、蓮子に視線を向ける。
……もうわかっている。蓮子の力がどんなものかという事が。
「……ま、メンバーに隠し事はいけないわよね」
「隠し事?」
「さっき私が言ったのは正確な、正確すぎる時間よ」
「…………」
「今日待ち合わせ場所に行った時もやっちゃってさ。注意しなきゃ、って思ってはいたんだけど」
待ち合わせ場所での事をメリーは思い出す。
メリーは遅刻してきた蓮子に腕時計を見ながらこう言った。
5分11秒の遅刻よ、と。
すると蓮子はどう返したか。
残念、4分52秒の遅刻よ、と。
そしてそれを言う前に蓮子は何をしたか。
「私ね、……星を見ただけで、今の時間がわかるのよ」
……そう、空を見上げていたのだ。
先ほどもだ。
メリーに声をかける直前に空を見上げていた。
「さすがに2回やっちゃえば違和感の1つや2つ、覚えるよね」
蓮子は苦笑しながら、メリーに顔を向けそう言う。
「……本当なの?」
「本当も本当。ついでに、月を見れば今居る場所もどこだかわかるわ」
「気持ち悪いわね」
「え……?」
「どうしたの? 素直な感想を言ってみたんだけど」
少し驚いたかのような声を出した蓮子に、素直な感想だと告げる。
つまり『気持ち悪い』というのは冗談などではない、と。
「あ、いや、そこまではっきり言ってもらったこと、なかったから」
「そうなの?」
「うん。話したらみんな『凄いねー』とか『星の事詳しいんだね』とか。
……その割には全く信じず、変な奴を見るような目を向けられたわ」
メリーには何となくわかった。
例によって家族以外誰にも話した事はないがメリーの『結界の境目を見る』能力。
人に話せば恐らく、蓮子の経験と同じように言われ、見られるに違いないと、わかる。
「星の事なんか全然詳しくないし、当たり前のように出来たから凄くもなかったんだけどね」
「……そりゃそうよね」
本人にとっては凄くなんてない。
分かりたくなくても、分かってしまうのだから星に詳しいわけでもない。
結界の境目を見たくなくても見えてしまうメリーと一緒だった。
見えるからと言ってメリーは結界の事やらその歴史なんて知ったこっちゃないのだから、詳しいわけなんてない。
「はぁ……折角、幸先よくメンバーをゲット出来たと思ったんだけどなぁ」
「…………誰も、やめるなんて言ってないけれど?」
「やめちゃった方が、何かとよくない?」
「別に、それだけがあなたってわけじゃないでしょ?
それにそれが見える目は気持ち悪いとは思うけどその力自体があなたの存在なわけでもない」
「……」
「そうね、今はまだ仲の良い友達だ何て言うつもりもないけど」
同じだ。メリーと。
他の人たちとは違う何かを持っていて、恐らく蓮子も自らと同じように、どこか他人と壁を作っているのだと、そう思う。
それでも。
どう考えても、気の合いそうな相手とはメリーには思えなかった。
そんな風には思えない、けれど。
「私はあなたみたいな性格の娘は嫌いじゃないわ。友達に居たら面白いかも、って思う」
「……ありがとう」
「どういたしまして」
蓮子がゴシゴシと服の袖で目元を擦る。
そして懐中電灯を点け、元の笑顔に戻り、
「さぁ、結界探し、始めましょうか!」
そう言うと寺の方へと向かう。
「どこに行くの?」
「どこって……写真にはお寺が見えてるでしょ? なら結界は」
「違うわよ」
「むぅ?」
「結界はそっちじゃないわ。その写真に見えてるお寺は向こうのものであってこっちのものじゃないもの」
ざっ、と土を踏みしめて、蓮子に背を向ける。
「向こうよ」
「合ってるの?」
「合ってるわよ、絶対にね。だって」
一息入れて、続ける。
「私には、結界の境目が見えるんだもの」
「気持ち悪い目ね」
「そう? 私はあなたの目の方が気持ち悪いと思うのだけど」
蓮子は疑う事をしなかった。
おっぱいが大きいから何か不思議な力がある、見えるんじゃないかと言ってきたような少女だ。
疑うわけがない。むしろ予想通りだろう。
そしてそれに対し気持ち悪いと、清々しいまでにはっきりとした感想を言ってのけた。
2人は歩を進める。結界の境目へと。
その先に咲くは季節的に明らかに早い一輪の彼岸花。
結界の境目に近い故に何かが歪んでいて咲いているのだろう。
「結界の近くだとこんな事も起こるのね。……季節外れの一輪、綺麗」
「……私には一輪だけなんて、余計気持ち悪くしか見えないのだけど」
「何かの影響で早く咲いてしまったにせよ、一生懸命咲いているんだから綺麗よ。
……それにこれの花言葉『想うは貴方一人』。何だか、それだけで綺麗じゃない?」
そう来たか、とメリーは思う。
悲しき思い出ではなく、そちらを。
――やっぱり気は合いそうにないなぁ。
そう思い、けれどメリーは笑う。
確かに気は合いそうにない。
けれど蓮子は、だからこそメリーにはないものを持っているだろう。
ならばメリーは、きっと蓮子にはないものを持っているに違いない。
メリーは蓮子の能力を知って気持ち悪いと正直に言った。
蓮子がメリーの能力を知って言った気持ち悪いというのは、間違いなく言い返したのでなく、正直にそう思ったから言ったのだろう。
正直に何かを言い合う、人と人の付き合いの中では当たり前の事で、けれどこういう能力に関すれば、きっとしにくい事だ。
「行くわよメリー! 秘封倶楽部最初の活動! 結界を暴きに!」
「えぇ。そうしようかしら、蓮子」
特別に気が合うのが良い事とは限らない。
それでも、些細なすれ違いだけできっと簡単に崩れてしまう事もあるだろうから。
メリーは思うのだ。何度も、何度も。
女の子同士だ。
甘い物の話、可愛い物の話。
よく考えれば気が合う事はいくらでもあるだろう。
でも蓮子とは特別は気が合いそうにない、と。
そう思うのだ。
けれど。だからこそ。
――相性はこの上なく、どこまでも、最高に……良さそうだわ。
・秘封倶楽部に関する自己解釈がかなりあります。
・特に胸とかおpp(ry
↓それを踏まえた上でお願いします↓
マエリベリー・ハーンは割合ひとりで居る事が多かった。
別に友達が居ないとかそういうわけではない。
どちらかと言えば少ない方ではあったが、別に引きこもって人形作っているわけでもなければ本を読んでばかりいるわけではなく、ましてや最近流行りのニートでなどもっとない。
つまりはまぁ、悲観するほど友達が少ないわけでもないと言う事だ。
だが、その少ない中に特別仲の良い者がいるわけでもなく、1人で居る時の方が気楽であった。
大学に通うようになって3ヶ月弱。
今までとは違う交友関係になった事が関係あるかと言えば、それは否。
昔からこんなもんである。
こんな風に並べてみると少しばかり特殊に思えるかもしれないが、なんてことはない。
端から見ればちょっと友達が少ないけれど当たり障りなく付き合う事の出来る普通の大学生だという事だ。
髪や肌の色がこの国の生まれでない故に周りの者と違う事と……結界の境目が見えるという事を除けば。
でも前者は今更本人含め誰も特に気にはしないし、後者は言わなければいい。そんなもんである。
それでも特別仲の良い者の1人もいないのは少し寂しいような気もするが、マエリベリーは気にしない。
だって、
――特に気の合う相手もいないんだしねぇ。
……まぁ、そんなもんなのだ。
*
両に緑を置き、真ん中が茜色に染まる光景がある。
大学の敷地内の並木道から空を見上げた視界に映る光景だ。
そんな夕刻の並木道を、宇佐見蓮子は歩いていた。
気分は上々。
気合と根性とちょっとした裏工作で設立を申請していたサークルは見事認可され、まさに胸躍る気分だった。
まぁ、元気よく踊るほどの胸はないが。そこそこには。
それはさておき。
兎も角気分が良かったのである。
良かったのではある、が。
「私以外に誰も居ないってのは問題よねぇ」
問題とかそういうレベルではない。
大問題である。1人しか居ないサークルってなんだって話だ。
まぁ、この辺が裏工作をするに至った所以なのだが、あまりここで気にしてはならない。
というか蓮子はそんな事をいちいち気にするような少女でもなかった。
認可についてはこれで雀の涙ほどとは言え活動費が得られる、それだけ。
そんな悩みを抱えつつもやっぱり上機嫌な蓮子は並木道の突き当たり、左右に折れた道を右に曲がった。
その時である。
「きゃっ!?」
「ひえっ!?」
前者、ぶつかった人。
後者、蓮子。
女っぽくないとまで言えないにせよ、間抜けな声だ。
「ご、ごめんなさい!」
「あ、いや、こちらこそ」
そうやって顔を上げ、ぶつかった人物と目が合い、
――うわなによこれ。
そして蓮子は絶句した。
まず美人である。
紛うことなき美人である。
それでいてどこか幼さが残っていて、可愛い。
極めつけに。
「金髪巨乳ですか」
「はい?」
思わず敬語になった。しかも口に出していた。
大きな声でなく、相手が焦っていた事もあってちゃんと聞こえなかったのが不幸中の幸いか。
「あ、いえ、なんでも」
「……? え、えっと。私ちょっと急いでるのでこれで! すみません!」
そう言うと金髪巨乳は脱兎の如く去っていた。
その方向、沈む夕陽を見ながら蓮子は呟く。
「……うむ、何と言いますか」
引き続き、敬語で。
「……うん、あの娘を、我らが秘封倶楽部に」
1人しか居ないとかそんな事はさて置き。
間違いなくあの少女は普通ではないと蓮子は確信する。
例えば星を見ただけで時間が、月を見ただけで今居る場所が分かる自らのように。
何故そう確信したかは蓮子自身にもわからなかったが。
兎に角、普通ではないと。
「…………普通なわけ、ないわよねぇ」
柔らかかった。でかかった。
あいつはでけぇぜおやっさん、とでも言いたくなる気分だ。
誰だか知らんが。
「まぁ、何と言うか」
もにゅもにゅと胸部の膨らみを持ち上げながら、思う。
―― 一応平均以上はあるはず、多分。
と。
でもまぁ、女の子だから。
「牛乳でも買って帰ろうかな」
そんな新たな悩みを抱えつつも、まぁ、やっぱり蓮子は上機嫌であった。
*
講義中、マエリベリーは頭に超が付くほど必死こいてノートにシャーペンを走らせていた。
この講義はぶっちゃけどうでもよかった。
次の講義である。ノートとってないと何だか知らんがヤバイらしい。
詳細は聞いてないが兎に角ヤバイらしい。
なのでとりあえずノートを借りて写す事にした。
特別仲が良いわけではないとはいえ、やはり持つ者はそれなりに仲の良い友である。
そんな事を思いながらやはり必死こいてシャーペンを走らせている最中。
「ねぇ、そこの金髪巨……じゃなくて、マエイベリー・ハーンさん? ちょっといいかしら」
「え……?」
「そう、あなた。ちょっと話があるの」
「はぁ……?」
はて、と思う。
目の前に立つのはちょっとばかし茶色の混じった綺麗な黒髪を肩のあたりまで伸ばした少女。
素直に可愛い顔だ。だが印象に残るかといえば否なのだろうか、マエリベリーには見覚えがなかった。
というか今金髪巨乳とか言いかけなかったか。でも出かかったそれはなんとか飲み込む。
「えっと……マエイベリーじゃなくてマエリベリーなんだけど」
「マエ……イベミー?」
「後退してる」
「えぇっと、マエ……えぇっとリベリー」
「そう」
「言いにくいわねぇ」
「初対面の人間にいきなりそんな事を言わないでよ」
「昨日会ったわよ、メリー」
「メリーって誰」
「あなた」
「なんでメリー」
「発音がそれっぽいから」
呆れた。呆れるしかなかった。
会話のテンポがまずいい。
それだけに碌に考えもせず導き出したと思えるこの愛称が何か凄い。
でもまぁ、なんか呼びやすそうだしそれでもいいかとマエリベリー……以下メリーは思う。
「で、昨日会ったって? どこのマルチ商法勧誘の方?」
「私はそんなのしないわよ。ほら、並木道でぶつかったでしょ」
「……あぁ、なるほど」
思い出した、と言わんばかりにメリーはポンと手を合わせ、
「それで、慰謝料でも請求に来たの?」
そう言い放つ。
怪しい勧誘とかその辺の類と断定している。
「まぁ、大きさの違いという理不尽による精神的ショックを受けなかったといえば嘘になるけど、そんなのじゃないわ」
「じゃあ、何かしら?」
「あなたを我がサークル、『秘封倶楽部』に勧誘に来ました」
えっへんと胸を張って、そう言った。
メリーは何故誇らしげに胸を張るのかと問いたい気分になったが、不毛な気がしたのでやめておく。
何はどうあれ勧誘だった。怪しいといえば間違いではないサークル名な気もした。
「そんなサークル」
「いいからいいから。今日の午後4時半に、このメモに書いてある場所に来てもらいたいの」
知らない、と言おうとして物の見事に遮られる。
「それじゃ、これからの秘封倶楽部、2人で盛り上げましょうね!」
拒否権なし。
問答無用でメモをメリーに渡すと、黒髪の少女はそのまま走っていった。
――っていうか今講義中……。
そんな事を思うがそれを気にする者はいない。
まぁ、詰まるところその程度の講義なのかも知れないが。
そしてひとつ、気になった。
――2人だけ、なの? 私含めて?
*
――遅い。
大学近くの喫茶店の席に座りながらメリーはイライラしていた。
まず第一。初めて入った店だったのだが大学の近くにあるくせに学生の事を考えてないような値段だった。
他と比べて高いわけではないが学生が多いんだからもう少し安くして欲しいと思う。
そして第二。4時半を過ぎていた。3分ほど。
些細だ。些細だが呼び出した方が遅れるというのはどうなのか。
ついさっき頼んだ紅茶はもう来ている。が、敢えて飲まない。
来るのが遅すぎて冷めたら代金請求するつもりで。
そもそも来る必要もないのに何で来ているのか、というのもあるが何故か気になって来てしまったのだからそれはしょうがない。
「メリー」
呼ばれた。すぐに反応するほど馴染んでいるわけではないが、声に反応して振り返った。
「3分42秒ほど遅刻」
「え? 私の時計なら3分28秒だけど」
「そんなの知らないわよ。というか遅刻は遅刻」
「むぅ。……ま、いいわ。とりあえず入部祝いという事で何か奢」
「誰も入るとは言っていないんだけど。それに私、あなたの名前すら聞いてないわよ?」
メリーがそう言うと黒髪の少女は考えるようにしてから、
「そうだっけ?」
確認するように問うた。
「そうよ。聞いてない。入部も何も誘ってきた人間の名も知らないんじゃねぇ」
そう言い、メリーは紅茶を啜る。
少しだけ冷めているが、
――うん、まぁ、美味しいかな。
成る程、大学近くでも他と変わらない値段は安い方かもしれない、とそう思う。
「じゃあ、自己紹介。私は宇佐見蓮子。『秘封倶楽部』の開設者にして唯一のメンバーよ。今のところ」
予想通り2人だけだった。メリー含めて。
ここでは唯一とか言ったがどう考えてもメリーを2人目のメンバーにする気満々だ。
何というかとりあえず振り回されっぱなしもあれなので。
「ふむふむ……うさぎれんこんさんね。よろしく」
こんな事を言ってみた。
「…………その間違いはわざとよね?」
「わざとよ」
「強引に誘われた仕返しと言わんばかりにそんな事してたら碌な人間になれないわよ?」
「あなたに碌な人間になれないなんて言われたくないわよ!」
「まぁ、ほら。自覚ある分だけ私はマシって事で」
「私も自覚ある! っていうか自覚ある方が性質悪い!」
はぁはぁと息を荒くし、メリーは笑顔で向かいの席に座る蓮子を睨む。
しかしながら、自覚あると言いつつその方が性質が悪いと自分で言ってしまうのはいかがなものか。
「それで? ……何で私なの。たまたまぶつかったから? っていうかこのサークルの目的は何?」
「あー、そんな一気に2つ質問されても困るんだけど。最初からひとつずつ答えていくわね」
「……そうして」
「まずひとつ目。直感よ」
「…………」
「胡散臭いとか思ってそうな目をするわねぇ」
……というかまさに思っていた。
直感くらいでこんな事されるメリーは堪ったもんじゃないだろう。
「あなたはね……何か、他の人には出来ない事が出来そうに感じるのよ。
そう……例えば。普通の人には見ることの出来ないものが見える、とか」
「…………え?」
音を発してから間が抜けすぎている、とメリーは思う。
だが無理もない。
家族以外誰にも話した事のないような事を、目の前の少女……宇佐見蓮子は当ててしまったのだ。
そんな音を発しない方が冷静すぎて怖いぐらいかもしれない。
「……それで、強いてそう思った理由を挙げるなら」
「……何かしら?」
「おっぱいが大きいのよ、あなた」
「はぁ?」
さっきよりも間の抜けた音が出た。
かつ呆れ、訝しさその他もろもろを含んだ混沌の音。
おっぱいがおおきいってなんだおっぱいがおおきいって。
これはあれか。今私の目の前にいる宇佐見蓮子とやらの常識ではおっぱいの大きい人間は他人とは違う何かが出来る特異な人間なのか。
そんな事を思考し、自らの脳内とは言え『おっぱい』などと何やら色々と微妙な単語を連呼してしまった事にメリーは頭痛を覚える。
――あぁもう何なのよ、この蓮子ってのは。
「そう。あなたのおっぱいにはこう何て言うの? 私には不思議な力がありますよー、って主張する何かがあるように思えるのよ」
「はぁ……」
「まぁ、だからと言っておっぱいがその力の源だとかそんなのは言わないけどね、さすがの私も」
「いやもう何て言うかそこそこ人のいる喫茶店で年頃の娘が『おっぱい』って連呼してる時点でどうかと私は思うわよ」
……おっぱいが力の源なんて言い始めたら冗談抜き精神病院にでも運ぶべきだろうが。
それ程ではないにしてもせめて『胸』とか『乳』とかその辺の表現にしておくべきなんじゃないかとメリーは思い、それを蓮子に告げる。
で、返って来たのは。
「なんか普通に言っても詰まらないし」
「……何が詰まらないのか私にはさっぱりよ」
「それで次。サークルの目的だったかしら?」
「えぇ。それがわからないと入りようもないわ」
もはや入る気など毛頭なかったが一応話だけでも聞いてやろうと思い、メリーはそう言う。
「表は霊能者サークルね」
「表?」
「そ、表。裏はね……結界を暴くサークル」
メリーが無意識の内に右手で左肩を握るようにする。
身体が冷える。ぞっ、とした。
……人と違う目、その能力。
『結界の境目が見える』程度の能力。
本当に何者なの……この宇佐見蓮子って子は、とメリーは思う。
……まるで最初から全てわかっているようにさえ感じた。
「それって……均衡を崩す恐れがあるからと禁止されていることじゃなかったかしら?」
「あくまで建前みたいなもの、罪に問われるわけじゃないでしょ? それに暴くだけ。潰したりするわけじゃないわよ」
「…………」
苦し紛れの言葉は簡単に跳ね除けられた。
それもそうだ。そもそも言われているだけで常人からすればそんな物の存在自体が疑わしいのだ。
『禁止』はされているが何かしらの『罪に問われる』わけではない。
結界を潰したからと言って均衡が崩れる、というのだって本当かどうかは誰にもわかりはしない事。
でも、とメリーは思う。
「でも、だからって……何でそんな事」
「何でって……ほら、こう。他人がやらない事ってのはやってみたいとか思うこと、ないかしら?」
「……それも人によると思うけど」
「確かにそうね。それで、私はそういうのをやってみたいと思う人なのよ」
気が合いそうにない、とメリーは思う。けれどこの少女は凄いな、とも。
メリーは違う。
危ない事は避けて通りたいし、ましてやそれが他の者も避けるようなものならば絶対に触れようとは思わない。
嫌いな物からだって目を背ける。
例えば彼岸花。メリーはあれが、嫌いだ。
まるで何かを……魂だって掴み取ってしまいそうにも見える、放射状の舌状花とおしべ。
それは長く見ていると吐き気すら催してくる気持ち悪い見た目だと思う。
では、もしこの少女が……宇佐見蓮子が彼岸花を嫌いだったとしたら、目を背けるだろうかと考える。
メリーは悩む事無く答えを導き出す。それは否だ、と。
きっと向き合うだろう。花の見た目だけではなく、彼岸花の花言葉、『悲しき思い出』にも。
今は大袈裟に言うほどの悲しき思い出などありはしないが。
もし出来たとしたらメリーは向き合う事を拒否するであろうそれに、もし彼女なら……蓮子ならきっと向き合うだろう。
「……入会、するわ」
「へ?」
「入るわ。あなたの秘封倶楽部に」
「そう。……じゃあ、今日からは私たちの秘封倶楽部って事ね」
何となく蓮子に惹かれ、無意識にメリーはそんな事を言ってしまう。
少し後悔し、しかし別にいいかと開き直る。軽い気持ちだった。
期待外れなら。本当にとんでもなく危ない事に巻き込まれそうになったなら。
さっさと抜けてしまえばいいと、メリーはそう思ったのだ。
*
夜の道がある。
鬱蒼と生い茂る草に挟まれ、舗装もされず申し訳程度にあるような道だ。
外灯すらありはしない、光に見捨てられたかのような錯覚を抱かせるその道を、しかし今は小さな光が照らしていた。
照らされるのはその光の発生する場所から前方数メートル。
懐中電灯の光だ。
そしてその懐中電灯を持ち、闇夜の中を歩く人影は2つあった。
メリーと蓮子だ。
メリーはというとうんざりした様な、なんで私はこんな所にいるんだろうとでも言わんばかりの顔をしていた。
それに相対するかのように帽子を被った蓮子は楽しそうな顔をしている。
夜だと言うのに帽子を被っている理由をメリーが問うたとき、返って来た答えは「気分の問題よ」だった。
それがメリーのうんざり具合に拍車をかけているのだが、勿論そんな事は蓮子の知った事ではない。
「はぁ……もうなんで、いきなりこんな所に」
「さっきから文句ばっか言わないの。メリーも秘封倶楽部のメンバーなんだから。ね?」
「そりゃそうだけど……」
事の始まりは喫茶店で秘封倶楽部のメンバー入りをしてしまった翌日だった。
携帯電話に蓮子から電話がかかってきたのだ。
『明後日の夜、街の外れにあるらしい結界を暴きに行くわよ!』
と。
いきなりすぎるとかそもそもまだ教えていなかった携帯電話の番号を何故知っているんだとかメリーからすれば突っ込みどころ満載ではあったが。
もう僅かな接触だけでメリーは分かりきっていた。
――蓮子にとってはそんな事はきっとどうでもいいのよね。
だから番号の件も含め何も言いはしなかった。
で、その結果が、
「ほんっとーに暗いわね……」
ちょっとくらい拒否してみればよかった、という後悔だった。
多分無駄ではあっただろうが。
それでも最悪時間帯くらいは昼にしてくれたんじゃないだろうかともメリーは思う。
あと蓮子がまた遅刻をしでかしたのだが、この状況だとそんな事はもうどうでもよかった。
「暗くなんかないわよ。ほら、懐中電灯」
「こんな所でそのくらいの光が何だって言うのよ」
「こんな所だからこそ、この光が十分すぎるのよ」
メリーが言いたい事はこんなに暗い場所でこの程度の光など大した物ではないという事。
一方蓮子が言いたい事はこんなに暗い場所だからこそ、この程度の光でも十分頼りになるという事だ。
それを理解したからこそメリーは、
――やっぱり、蓮子とは全く気が合いそうにないわ。
そんな事を頭の中で呟き、口からは溜め息を漏らす。
それでもメンバーである以上としっかり着いて行くだけメリーは人が良いと言えるのかも知れない。
「……それで。この先に例の結界があるの?」
「そ。提供された写真によるとね」
「…………」
確かにその写真に写った景色は、一部からはっきりと違う世界のようになっていた。
メリーが訝しげに写真を覘き込むと、横から「あ」という蓮子の声。
「どうしたの?」
「とうちゃーく」
目の前には忘れ去られたかのようにも思える墓地と。
小さな寺が、あった。
*
「ここに参りに来る人なんているのかしら……」
「どうかな。綺麗にされてるお墓もあるにはあるけど」
メリーの疑問に、蓮子は墓石を触りながら答える。
確かに蓮子の言うとおり、小奇麗にされている墓石もあるにはあった。
だがそれでも周りには草が生えており、古い。
恐らくはお盆や、気が向いたときに誰かが来る程度なのだろう。
寺などはもう誰かがいる様子だってありはしない。
「本当に何か出そうね……」
「出たら出たでいいじゃない」
「よくない」
元よりメリーは霊感が強い。
それはメリーの家系が代々そうであったが、結界の境目が見えるという能力からしても、メリーの霊感は並外れている事は確かだ。
何か出れば見える可能性はかなり高い。
「……見えたらどうしよう」
「ま、見える事もあるかもしれないわね」
軽い、蓮子は実に軽かった。
墓を触るにしても全く物怖じしていないし、もしかすると自らが興味を持ったものには恐怖を覚えないのかもしれない。
「ほらぁ、メリーも墓石動かしたりして何か探してよぉ。もう0時10分14秒、日付変わってるわよ?」
「はいはい……」
そこで違和感を感じる。
ちょっと待て、とメリーの頭の中で誰かが問いかけるような気がした。
それは紛れもなく自身が抱いた疑問だ。何かに取り憑かれたりしたわけではない。
じゃあこの疑問は何なのか、と思う。
「…………」
よく考えろ、とメリーは自身に強く呼びかける。
喫茶店で遅れた時……夕刻、蓮子は腕時計を見ながらメリーの時計と蓮子の時計ではズレがあるように言っていた。
では今日はどうだ。
――蓮子は、腕時計をしていない?
携帯電話は持っているには持っていたが、秒単位まで表示はされていないもののはずだ。
なのに秒単位まで言ってのけた。
だがそれだけではない。何故なら。
「蓮子……あなた、何も見ずに時間を言ったでしょう? 適当にも、ほどがあるわよ」
それだけではないと思う心を抑え、そう言う。
そんなのはおかしいと思ったから。
……メリーが見た腕時計は確かに0時10分を指している。
秒単位の違いこそあれど、蓮子の言った時間が間違っているわけではない。
だが、頭の中で一瞬でもたてたその仮定を肯定する方が馬鹿げている。
そんな事が有り得たら気持ち悪いではないかと、そんな風に思う。
「あー、やっちゃったか。……つい癖で、ね」
本当に、失敗したなーという口調で蓮子はそんな事を言った。
何故かはわからないが懐中電灯のスイッチを切ったために蓮子の周囲からは光が失せ、表情を窺うことは出来ない。
「癖って……適当な時間を言う事が?」
メリーは無理に訝しげな表情を作り、蓮子に視線を向ける。
……もうわかっている。蓮子の力がどんなものかという事が。
「……ま、メンバーに隠し事はいけないわよね」
「隠し事?」
「さっき私が言ったのは正確な、正確すぎる時間よ」
「…………」
「今日待ち合わせ場所に行った時もやっちゃってさ。注意しなきゃ、って思ってはいたんだけど」
待ち合わせ場所での事をメリーは思い出す。
メリーは遅刻してきた蓮子に腕時計を見ながらこう言った。
5分11秒の遅刻よ、と。
すると蓮子はどう返したか。
残念、4分52秒の遅刻よ、と。
そしてそれを言う前に蓮子は何をしたか。
「私ね、……星を見ただけで、今の時間がわかるのよ」
……そう、空を見上げていたのだ。
先ほどもだ。
メリーに声をかける直前に空を見上げていた。
「さすがに2回やっちゃえば違和感の1つや2つ、覚えるよね」
蓮子は苦笑しながら、メリーに顔を向けそう言う。
「……本当なの?」
「本当も本当。ついでに、月を見れば今居る場所もどこだかわかるわ」
「気持ち悪いわね」
「え……?」
「どうしたの? 素直な感想を言ってみたんだけど」
少し驚いたかのような声を出した蓮子に、素直な感想だと告げる。
つまり『気持ち悪い』というのは冗談などではない、と。
「あ、いや、そこまではっきり言ってもらったこと、なかったから」
「そうなの?」
「うん。話したらみんな『凄いねー』とか『星の事詳しいんだね』とか。
……その割には全く信じず、変な奴を見るような目を向けられたわ」
メリーには何となくわかった。
例によって家族以外誰にも話した事はないがメリーの『結界の境目を見る』能力。
人に話せば恐らく、蓮子の経験と同じように言われ、見られるに違いないと、わかる。
「星の事なんか全然詳しくないし、当たり前のように出来たから凄くもなかったんだけどね」
「……そりゃそうよね」
本人にとっては凄くなんてない。
分かりたくなくても、分かってしまうのだから星に詳しいわけでもない。
結界の境目を見たくなくても見えてしまうメリーと一緒だった。
見えるからと言ってメリーは結界の事やらその歴史なんて知ったこっちゃないのだから、詳しいわけなんてない。
「はぁ……折角、幸先よくメンバーをゲット出来たと思ったんだけどなぁ」
「…………誰も、やめるなんて言ってないけれど?」
「やめちゃった方が、何かとよくない?」
「別に、それだけがあなたってわけじゃないでしょ?
それにそれが見える目は気持ち悪いとは思うけどその力自体があなたの存在なわけでもない」
「……」
「そうね、今はまだ仲の良い友達だ何て言うつもりもないけど」
同じだ。メリーと。
他の人たちとは違う何かを持っていて、恐らく蓮子も自らと同じように、どこか他人と壁を作っているのだと、そう思う。
それでも。
どう考えても、気の合いそうな相手とはメリーには思えなかった。
そんな風には思えない、けれど。
「私はあなたみたいな性格の娘は嫌いじゃないわ。友達に居たら面白いかも、って思う」
「……ありがとう」
「どういたしまして」
蓮子がゴシゴシと服の袖で目元を擦る。
そして懐中電灯を点け、元の笑顔に戻り、
「さぁ、結界探し、始めましょうか!」
そう言うと寺の方へと向かう。
「どこに行くの?」
「どこって……写真にはお寺が見えてるでしょ? なら結界は」
「違うわよ」
「むぅ?」
「結界はそっちじゃないわ。その写真に見えてるお寺は向こうのものであってこっちのものじゃないもの」
ざっ、と土を踏みしめて、蓮子に背を向ける。
「向こうよ」
「合ってるの?」
「合ってるわよ、絶対にね。だって」
一息入れて、続ける。
「私には、結界の境目が見えるんだもの」
「気持ち悪い目ね」
「そう? 私はあなたの目の方が気持ち悪いと思うのだけど」
蓮子は疑う事をしなかった。
おっぱいが大きいから何か不思議な力がある、見えるんじゃないかと言ってきたような少女だ。
疑うわけがない。むしろ予想通りだろう。
そしてそれに対し気持ち悪いと、清々しいまでにはっきりとした感想を言ってのけた。
2人は歩を進める。結界の境目へと。
その先に咲くは季節的に明らかに早い一輪の彼岸花。
結界の境目に近い故に何かが歪んでいて咲いているのだろう。
「結界の近くだとこんな事も起こるのね。……季節外れの一輪、綺麗」
「……私には一輪だけなんて、余計気持ち悪くしか見えないのだけど」
「何かの影響で早く咲いてしまったにせよ、一生懸命咲いているんだから綺麗よ。
……それにこれの花言葉『想うは貴方一人』。何だか、それだけで綺麗じゃない?」
そう来たか、とメリーは思う。
悲しき思い出ではなく、そちらを。
――やっぱり気は合いそうにないなぁ。
そう思い、けれどメリーは笑う。
確かに気は合いそうにない。
けれど蓮子は、だからこそメリーにはないものを持っているだろう。
ならばメリーは、きっと蓮子にはないものを持っているに違いない。
メリーは蓮子の能力を知って気持ち悪いと正直に言った。
蓮子がメリーの能力を知って言った気持ち悪いというのは、間違いなく言い返したのでなく、正直にそう思ったから言ったのだろう。
正直に何かを言い合う、人と人の付き合いの中では当たり前の事で、けれどこういう能力に関すれば、きっとしにくい事だ。
「行くわよメリー! 秘封倶楽部最初の活動! 結界を暴きに!」
「えぇ。そうしようかしら、蓮子」
特別に気が合うのが良い事とは限らない。
それでも、些細なすれ違いだけできっと簡単に崩れてしまう事もあるだろうから。
メリーは思うのだ。何度も、何度も。
女の子同士だ。
甘い物の話、可愛い物の話。
よく考えれば気が合う事はいくらでもあるだろう。
でも蓮子とは特別は気が合いそうにない、と。
そう思うのだ。
けれど。だからこそ。
――相性はこの上なく、どこまでも、最高に……良さそうだわ。
金髪でしかも巨乳ならその位出来たって何の不思議も(ry
……ええ、テンポ良くて綺麗なお話ですよね。
意識したかどうかはわからないが「我輩は猫である」みたいな書き出しはOK。こちらも読む流れがきれいに行く。
最初にごちゃごちゃ説明あり、もしくは勢いだけで最後まで引っ張る話はもう疲れた。
ともすれば尻切れトンボにもなりかねない終わり方だけに、もっと読みたいという思いは確かにあるのですけど、理想的な二人の関係が丁寧に描かれていて良かったと思います。
僭越ながら、秘封倶楽部の雰囲気をしっかり捉えていると思いますし、このままいけば物凄い秘封ワールドが広がっていく予感に胸が震えています。
というかむしろ震えるのはめりーのおっpp(ry
ありがとうございました。
けれど、だからこそ相性は最高に良い』
…ううむ。面白い言葉だと思います。なんとなく納得できるし。
初めは「メインテーマ=おっぱい」だと思ってました。
>ぐい井戸・御簾田さん
雰囲気がよかったですか、ありがたやありがたやです。
>noさん
うん、まぁ、その、始めはおっぱいがテーマになりそうだったんです。
いつの間にか最初頭に浮かんだおっぱいな話が発展してこんな事に(ぉ
>はむすたさん
えぇ、そうです! おっぱいには秘められた力があるに違いないんですよ!
これは僕が普段かr(ry
綺麗と言っていただけるような話でよかったです。
咲いて咲いて咲いてー(謎
>名乗らないさん
んー、意識してる作家さんは実はいるにはいるんですが、「我輩は猫である」は意識してませんでした。
説明くさいと指摘された事があって、それ以来ちょっとそこは気になってたんで、よかったです。
>藤村流さん
理想的な関係でしたか、光栄です。
尻切れトンボ……実はもうちょっと考えてた展開もあったんですけど、蓮台野夜行~夢違科学世紀の間を考えるにちょっと無茶かなー、と判断しまして(汗
最後におっぱいで締めるのはさすがだと思いました。
>akiさん
『気が合いそうにない~』っていうのは実は僕が秘封に抱いた印象でもあったり。
何がと聞かれれば困ってしまいますが、感覚的にというか。
あ、最後は既に言ってますが……えぇ、そういう事です。
でもそのうちおっぱいメインな話を書きt(ry