Coolier - 新生・東方創想話

アリスと幻想郷の一夏

2021/05/07 21:50:13
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ある真夏の夜の事。
博麗神社に楽しげな声が飛び交う中、1人の人形遣いはお賽銭箱の前で寂しげな声を漏らす。

「私は…」途中で途切れた言葉は力無く夜風に吹き消される。
アリスは落ち着きなく髪の毛をねじった。

いつもなら落ち着かない時や落ち込んだ時には人形達がそばに寄ってくれたり、寄り添ってくれた。
けど今人形達は酔いつぶれた紅白の巫女や半人半霊の庭師達の世話でいっぱいなのだろう。
だから私に構うには無理があるのだ。

アリスはいつも宴会で話についていけなかったり、1人になってしまう。
それを自分が気にしているのはわかる。けど、昔は人間には興味がなくて、「人間の知り合い」と言える存在も少なかった。
だからよく話が噛み合わなくなってしまう。
宴会の時はいつもそうだった。
けど、毎回毎回参加するのは何故だろう。
魔理沙に呼ばれるから?

けど、どうしてみんなは群がりたるんだろう。

ふとそう思う事が何度かあった。けどなんでそう思うかは分からなかった。
ただ、そう思うと何故か心の奥底が痛む。

アリスは数秒間考えたが、心が痛むだけでただ虚しいのでやめた。
そしてアリスは夜空を見上げた。

アリスの見上げた空は星々が綺麗に輝いていた。
その輝きはそのたくさんの星々が一塊でまとまっているからこそ輝いて見える。そうアリスは思った。
ただその輝きについていけず、ただ1つ鈍く光る星をアリスは見つけた。
その星は他の星たちと少し距離があってなんだか寂しそうにみえてきた。

アリスはその星々をじぃーっと見つめた。
そう。あれだ。家に帰って部屋に戻ると、人形達がなんとも言えない変なダンスを踊っていた時のあの複雑な気持ちで見つめ続けているのと少し似ているような気がする。
あの何か感じた時と…

アリスは感じた。今見つめているこの夜空が私たちと似ているような気がした。あの孤立している星が私。あの輝いている星々が魔理沙や霊夢たちみたい。そんな気がするなぁ。もし私があの子たちともっと近づけたなら、もっと輝けていたのかもしれないな。

アリスが考え事をしていると、魔理沙が赤い顔をしながらこちらに近づいてきた。
「アリス!なぁにそこでくつろいでんだよ!アリスの分、幽々子が狙ってるぜ。」そういうとみんなのところに戻っていった。
アリスは、なんなのよ…。と思いながらも、なんだか嬉しくて宴会の場に戻っていった。



この場に集まっている全ての人が最高潮のテンションだった。
話が盛り上がって、とても幸せな時間だった。
もちろんアリスも幸せな時間を共に過ごしていた。さっきまで落ち込んでいたから余計かもしれないがそれなりにいい笑顔で楽しんでいる。
それは、魔理沙がアリスの話題を上げてくれたからでもあった。
「お前、最近少し太っただろ!」魔理沙がとんでもないことを大声で言った。
「なに言ってるのよ魔理沙!私、いうほど太ってはないわよ?!」アリスは少し顔を赤らめて否定した。
「いやぁ、なんか前のお茶会で私の作った特製キノコクッキー、めちゃくちゃ嬉しそーに食べてただろ!あれはどうみても食べ過ぎだったぞ!」魔理沙が自慢げに語ると、パチュリーがふき出した。するとこの場にいる全員が一斉に笑い出した。中にはアリスのことを知ってか知らずか「アリスもなかなかね。」と口にするものもいた。
アリスは真っ赤に染まった顔を手でおおった。

そう言えばなんだっけ。まえ本でこういう時のことを『穴があったら入りたい』って言うんだつたような…

アリスは消え入りそうな声でこう言った。「穴があったら入りたい入りたい。」



宴会は笑いと共に終わった。
今回の宴会はアリスにとってとても良い思い出になったかもしれない。今までの宴会では1番みんなと笑えたとアリス自身もそう思っていた。
いつもがこんなんだったらいいのに。そんなふうにアリスは思いながら夜道を歩いていると後ろから気配を感じて瞬時に人形を後ろに移動させる。と、そこには魔理沙が箒を手に持って立っていた。
怪しい存在ではないと思いほっと息をつく。
「なんだ。魔理沙だったのね」
「お前、今日は注目の的だったな!」にやけながらいつもの顔色で言ってきたのでアリスは言い返した。
「あら、お酒はもう抜けたのね。それで?何、からかいに来たのかしら?」
「いやぁ?今回は違うなぁ。」
「じゃあいつもならからかっていた流れなのね。」
「それもどうかな。それじゃあ本題に入るぞ?明日の夜12時から肝試しやるんだよ。アリスもくるか?」
魔理沙の唐突な肝試しの誘いにアリスは困惑した。宴会の次の日に肝試しだなんておかしな話だ。準備もあるし宴会の疲れもあるだろうに。
アリスの心情を呼んだかのように魔理沙はアリスの疑問にこたえる。
「もうすぐ秋だし、なんたって紫の都合だってさ。まっ、私は楽しみだぜ?」
魔理沙の言葉を聞いてすこし安心し、アリスは聞き返した。
「その、どこでやるとか、誰か行くとかはもう決まってるの?」アリスの言葉には少し嬉しさが混じっていた。
アリスのもう一つの疑問に魔理沙はこたえた。
「まだ誰が行くかは決まってないけど場所は地霊殿だぜ?にししっ!楽しみだな!」魔理沙は意気揚々と言葉をはなつ。
アリスはその魔理沙の輝きに惹かれてつい「うん。」と言ってしまった。

アリスが家に着いたのはおよそ午前3時。それから風呂や着替え。髪の手入れや人形達の世話を全て終わらせると午前4時30分になっていた。そして寝ようとするもなかなか寝付けず妄想に耽るもいいシーンで寝付いた。
結局午前11時まで寝ていてジタバタだった。



アリスは夜道をドキドキしながら進んでいた。例えば紫やこいしがおばけ役をやるとなるとクオリティーが高そうだな。とかレミリアやチルノがめぐる役だったら強がりそうだな。とか色々な想像で頭がいっぱいだった。そして肝試し30分前にアリスは地霊殿についた。思ったよりも集まったものが多く、楽しくなりそうだった。
地霊殿につくなりパチュリーがアリスに近づいてきた。
「アリスも来ていたのね。楽しみ?」と微笑みかけてくれた。彼女の微笑みがアリスの緊張を和らげてくれる。とアリスも「えぇ。楽しみよ。」と、微笑み返した。
パチュリーと何気ない雑談を交えていると、本肝試しの主催者や関係者の八雲紫と博麗霊夢、そして霧雨魔理沙が挨拶をし始めた。
「えぇ〜、今回は集まってくれてありがとね。紫が何企んでいるかはわかんないけど、実は私も楽しみだし今回は特別で開催することにしたわ!」霊夢がにこやかな笑みを浮かべながら挨拶をする。すると紫が今度は説明をする。「もちろん肝試しだから脅かす側と脅かされる側に分かれてやってもらうわ。まぁそれはくじ引きで決めるとして、文句は聞きつけないわ。まぁ楽しんでね。」怪しく薄く微笑んだ後はスッと後ろへ下がった。最後に魔理沙が続けて説明した。「まぁ、集まってんのが私と霊夢と紫とアリスとパチュリーにレミリアにフラン。それからにチルノに大妖精、小鈴。最後にさとり、こいし、お燐。だから人だ!と言うことは、脅かされる側が2人。脅かす側が11人!脅かす側は特にしっかりやってくれよな!まっ、楽しもうぜ!」最後にピースサインを決めてから3人でくじ引きの用意をし始めた。

「くじ引きの用意が終わったので集まって!あっ、ズルは禁止よ!ズルいからね?」最後の言葉に違和感をおぼえながらもせーの!!でくじを引いた。
次々に「ふふふ。私にひれ伏すがいいわ!」だの「まぁあたいはサイキョーだから驚くに決まってるな!」とか「ふふふっ。楽しみね。」など様々な声が飛び交う中、アリスは目を丸くした。そう。アリスがめぐる役になったのだ。
紫の言葉ですぐに他の人たちが地霊殿の中に消えてゆく。アリスとその人はその姿を見送るしかなかった。
「まさか驚かされる側になるなんてな。」魔理沙が少し満足いかなそうに呟いた。がそんな呟きはアリスに届かなかった。
それもそのはず。アリスは今までで1番焦っていたのだ。

どうしよう。どうしよう。嬉しい。嬉しいけど!2人きりになっちゃったわ。上手くやってけるかな。うぅ、何話せばいいのかな…どうしよう本当にぃ。

ありすが焦っているのにかまわず魔理沙が「もう時間だぞ!そろそろ行くか!」というとアリスの手を引いて地霊殿に向かった。アリスはされるがままにされた。

ルールは簡単。地霊殿の至る場所にある6つの場所にある言葉を用紙に書き写して帰ってくる。ただそれだけで至ってシンプルだ。

アリスと魔理沙は玄関を通り過ぎるとまず第一ポイントである書斎に向かう。書斎は玄関から入って大広間に並ぶドアの右側の手前から3番目にあった。書斎に着くとドアのすぐ前でどちらかが開けるかを2人とも待っていた。書斎周辺や特にアリスと魔理沙の間からはとんでもなく嫌な雰囲気が漂う。
その空気を変えようと魔理沙が口を開いた。「アリス、びびってんのか?」
「びびってなんかないわよ。」アリスは顔をそむける。「手が震えてるじゃないか。」アリスの手の震えは、魔理沙と手を繋いでいてその緊張感からだった。魔理沙の言葉が逆に2人を追い込んでいく。今度はアリスが話を逸らそうと「開けるわよ。」といってすぐに扉を勢いよく開けた。「もう少しゆっくりできなかったのか?」と魔理沙がいうが「コントロールが効かないのよ。」とそっけなく返した。
会話が終わると伏せていた顔をゆっくりと正面に向ける。だがそこには誰もいなかった。
「「ぬぁっ?」」2人の素っ頓狂な声が書斎中に広がる。
数秒間立ち止まると後ろから肩を叩かれた。まるで霊のような冷たい手が。
「あのぉう。妖魔本を知りませんか?私、あれがないと…夫に、夫に…」2人の背後から聞こえる恐怖に満ちた声が2人を震わせる。何故か現実味があったから余計にだ。
そして黒く歪んだ隙間から赤黒い本が飛び出した。急な出来事にアリスと魔理沙は怖気ついた。その様子を横目で見た後、女は動き出す。
その本が現れたことにすぐ反応したその女は嬉々としてその本に飛びついたかと思うとすぐにその手を離した。
「違う。違う違う違う。これじゃない。表紙が赤黒くて大昔に住んでいた妖怪の書いた妖魔本。実物ですごく貴重なの。見つからないと夫が私を…」
急に泣き叫んだ女に魔理沙がビクッとした。すごく慌てているようで服に汗が染み込んでいた。微かに差し込んだ月の光が魔理沙達を照らし示している。
その光を頼りにその女は魔理沙の足元を掴んでニッと口の端をほっぺに引き寄せてありったけの気力でこう叫んだ。
「妖魔本を返して!あれ高値で売る注文があるの!返済期間もう過ぎてるわよっ!」
その言葉が終わる前に魔理沙はその手を振り払いすぐさま駆け出していく。振り返らずそのまま駆ける。このままのペースならきっとマラソンでも1位をとれるだろう。ぐらいに。
ただアリスは未だ状況を飲み込めずただ魔理沙の方を見ながら立ち尽くす。
女の方は「ほんとにいつ返してくれるのやら。」呆れたかのように呟きながらそのまま寝そべっている。
それから数分が経っただろうか。アリスは我に帰り魔理沙の向かった方へ駆け出していく。
すると後方から落ち着いたような声がしてアリスはゆっくりと振り返る。アリスはその正体に気づいて小鈴に向かって首を傾げる。
そして小鈴がアリスに微笑みかけるようにして話し始めた。
「魔理沙さんに言っておいてくれせんか?いい加減に本返してって。後のことは私と紫さんでやっときますから。よろしくお願いしますよ?あと、鈴奈庵の経営にもかかっているんですよ。あの本は高値ですからね。魔理沙さんのことは頼みました!」そう言った本居小鈴ははにかんだ。
事情を知ったアリスは少し笑ってしっかりと頷いた。
そして再び玄関の方へ向くと魔理沙の方へ駆け出していった。

きっと魔理沙は自分の家に向かっているはずだ。そう思ってアリスは魔理沙の家の方へと向かっている。
その道の途中で、魔理沙と肝試しもう少しでいいからしたかったな。とかレミリアやフランらへんが激怒するだろうな。とか、前よりも少し素直になれたようなアリスは想いを巡らしていた。




次の日、鈴菜庵は大騒ぎだった。昨日の肝試しのメンバー全員が鈴菜庵に押し寄せ、魔理沙とアリス(特に魔理沙)に何があったのかを説明して!とか、せっかく準備してたのにどういうことよ!アンタねぇ、楽しくな!とか言ってたくせに。などと不満が魔理沙にぶつけられていく。
その光景を見たアリスや紫は少し苦笑した。
そして紫はその光景に満足げに目を細めると近くにあった隙間を使って移動した。
アリスはというと勇気を振り絞って苦笑している小鈴に「結局、妖魔本戻ってきたの?」と言って言葉を紡いだ。
アリスの言葉に「はい。流石に罪悪感というものを知ったようですよ。」そう返すとまた、そのはちゃめちゃな光景に目を落とした。今度はアリスと一瞬目を合わせて再び微笑んだ。
季節外れですが()
今回地霊殿の構造を知らないのでごめんなさい。あと確認したつもりですが誤字があったらすみません。

やっぱりアリスと魔理沙の組み合わせはいいですよね!
まじねこ
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コメント



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1.90奇声を発する程度の能力削除
良かったです
4.70名前が無い程度の能力削除
エンターキーの有り難さについて改めて知ることができました
5.無評価名前が無い程度の能力削除
改行がなくて読みづらいです。
話もちょっと分かりにくかったかな
6.80名前が無い程度の能力削除
穏やかな日常感が良かったです
7.90南条削除
面白かったです
アリスがかわいらしかったです
8.90名前が無い程度の能力削除
良かったです