Coolier - 新生・東方創想話

幻想郷年末諸事史1―――いつもどおりの連中の話。

2005/12/25 03:17:20
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これは、『文々。新聞』記者と、歴史嗜好の半獣が共同で纏めた、幻想郷のとある年末の記録。


それは、外の世界で言うならクリスマスの話――――――





―――幻想郷年末諸事史―――――――   射命丸 文   上白沢 慧音






0、いつものお約束。






――――博麗神社。
今此処に居る者には説明不要の場所。
敢えて説明するのなら、名物として中身の無い空き箱同然の賽銭箱と、

「だーー!!」
現状に癇癪を起こし非難の絶叫を上げる素敵な巫女―――博麗霊夢。
そして、恒例の現状。

即ち。

『呑ーーーま!!呑ーーーま!!―――イェイ!!!!!』
「やーめーーーーい!!!」

百鬼夜行―――昼間に夜行というのは語弊があるが。

時期は既に年の暮れ、冬真っ只中の寒気にも負けず、数多の人妖入り乱れ、
真昼間から呑めや食えや歌えやの、幻想郷に悪名高き恒例行事―――要するに、宴会である。

面子も酒も肴も出揃い、音頭と共に涌いた宴に、博麗の巫女の悲鳴も空しく消える。
「毎度毎度……飽きもせず……誰が……片付けすると……思ってるのよ……」
喉も枯れて覇気も無く、項垂れる巫女。
幻想郷の数々の事件を解決し、その武勇伝も華々しい『楽園の素敵な巫女』も、
この魔宴じみた光景には無力であった。




1、いつも通りの連中の話。




「一番、ミスティア!歌いまーっす♪」
しかも、ここ最近の宴会は更に拍車が掛かっている。
夜雀はそれまでの人を惑わす唄以外にも、様々な歌を唄うようになり、
宴会に於いてそれはレパートリーの増加として顕れ、宴を盛り上げるのに一役買っている。
「それならば―――」
「われらプリズムリバー幽霊楽団―――」
「僭越ながら飛び入りで―――」

「「「レッツ・セッション!!!」」」
『いいぞー!!カモーン!!!』
騒霊三姉妹も同様で、時にはソロライブを披露する等、練磨に余念が無い。
結果として、その『騒がしさ』に拍車が掛かっている。

芸といえば、幻想郷きっての⑨とされる氷精も忘れてはならない。
「いえーい!!舞台装置として2番チルノーーー!!」
『9番じゃないのかーーー!!!?』
「五月蝿ーーーーい!―――レティー!!大妖精ーーー!!!見てるーーー!!?」
「はいはい、はしゃいでるわねぇ」
「んもーチルノちゃーん!?もう出来上がってるの!?」
最近は住処の湖で蛙相手の無益な殺生―――と書いて有意義な特訓と⑨語では読むらしい―――を控えた氷精・チルノ。
彼女もまた、特訓の一環として新たな宴会芸を習得していた。

――――と、言っても。
「はーいこの快晴の冬空に……ほら突然の天気雨ならぬ天気吹雪ーーーーー」
「「「「……」」」」
『……』

「どーだ、花の咲かない冬にもこれなら華やか―――あれ?」

流行に則って表現するなら。
―――どう見ても猛吹雪です。本当に有難う御座いました―――

雪は、宴会の参加者に皆等しく積もった。

夜雀にも。
「……えー、こほん。
舞台装置のアクシデントに伴い、曲目を変更しまーーす♪」

騒霊たちにも。
「折角乾燥して良いテンションだったのに―――雪で台無し」
「暖まった管楽器もよーーー!!!どーしてくれんの!!?許すまじ!!!!」
「ねーさん方に同じ!!かくなる上は―――!!!」

「ミスティア=ローレライが十八番―――『ブラインドナイトバード』」
「あれ何か急に暗く―――」
「「「この野郎!!!大合葬『霊車コンチェルトグロッソ・怪』!!!死ねェーーーッ!!」」#ξ゚ 皿゚)q」
「あ痛痛痛合体弾幕は止めてーーーー!!!?」
『ふざけんなー!!!帰れーーー!!!』
ドライアイススモークを選択しなかった辺り、⑨の面目躍如か。

そこに歩み出るのは、妖怪蛍。
「三番手リグル=ナイトバグ、例の如く虫たちの照明効果&大合唱――――の予定でしたが」
『どーしたー!?』
「主要メンバーが……連日の寒波と……先程のバカの起こした吹雪に―――ううっ」
アイスの棒の刺さった飼育用植木蜂と、観察日記から切り貼りした虫たちの白黒写真を入れた遺影を持った姿が、
あたりに哀愁を漂わせた。
―――氷精は早速、殺生を増やしてしまったようだ。
『…………南無ーーーーー!!!』
合唱ならぬ合掌となり、

「―――では黙祷も終わったところで。私からもプログラムの変更をお伝えします」

「っひィッ!!!?」
『おおぅッ!!?』
皆が目を開けた先には、修羅が居た。

「彼らの無念を晴らさなければならない。ついでに宴の肴も用意しなければならない。
……結論は一つだよ。可哀相だが逝って貰うよ、ちるのクン」
「り、リグル、目が怖っつーか待って!!?話せば判るって!!!」
「リグルー、こちらは準備オーケーよ」
「「「同じく」」」
「え、ちょ、ちんどん屋もみすちーも止め―――」
「―――『季節外れのバタフライストーム‐Phantasm‐』!―――Dle(死ね)」
結局、出し物の第一打は、騒霊の大三角形に囲まれる氷精と、それを某用務員宛らの表情で狙い打つ妖蛍に、
夜雀の感覚を狂わせる唄のトリプルコンボ執行、題して『Chirno must die(⑨死スベシ)』と相成った。
難易度的にはPhantasmさえ飛び越えて、正しくmust die。
ちなみに、知人である冬の精霊はそれを生暖かい目で見守り、大妖精は直視できなかったという。
「いや、だって自業自得だし」
「あははー……ごめんねチルノちゃん、フォローできないや」
因果応報と閻魔も言ってた。


もっとも―――そんな空気も須臾に去るのが、この宴会だが。



宴も酣、出し物も正常化し、互いに杯を交わし、談笑するのが最も盛り上がる頃。
「かっかっかっ、相変わらずあの氷精は馬鹿だねー」
「いきなり猛吹雪を持ってくる辺り、腕は上がったみたいですけどね。
いやはや、話のタネには困らない人たちで。また良い記事が書けそうです」
「その割には、購読者は増えて無いじゃんよ?」
「それを言われると痛いですねー。―――っと、おや伊吹さん、お酌が空ではないですか。
さ、一杯」
「おおこれは天狗さん、かたじけない……おっとと」

宴会といえば酒。酒といえば筆頭に上がるのが、この『幻想郷酒豪コンビ』。

片や、幻想郷でも希少な妖である鬼、『百万鬼夜行』伊吹 萃香。
片や、幻想郷最速のブン屋を自称する烏天狗、『風神少女』射命丸 文。
鬼と天狗、どちらも酒飲みで知られる妖怪の酒の席。消費される酒はもはや人外ならぬ妖外の量である。
萃香の秘宝『伊吹瓢』からの文字通りの底無し酒を、顔色一つ変えることなく水の如く煽るその姿は、
一見何気なく、だがその自然さと空気の愉しさ故に、周りの酒の勢いを加速させる。


そして、彼女達以上に酒に強いものも居ない宴席でそれを行えば、宴会は混沌と化す。


「んも~~ぉよぉ~む~ぅったらぁ、こ~~んあにや~らかくなぁ~~っちゃってぇ~~っ♪」
白玉楼の亡霊嬢は、従者と間違えてその隣の半身―――何故か羞恥以外に紅い―――を抱き締め頬擦り撫で回していた。
ちなみに、周囲に転がる酒瓶―――もとい、酒樽の量については言わずもがな、である。

「あっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!……んぐっ、んぐっ、くぁ~!!!
見なひゃいよアレ!あれがうちの主らってんりゃから、や~ってらんないわぁ♪ぃっく」
「うっうっ……妖夢さんも苦労が絶えないようで………んっ、んっ、んっ……ふぅ……。
……私も殆ど名前で呼んで貰えなかったり毎回剣山にされたり焼かれたり……よよよよよ」
「にゃにを辛気くひゃいつらをしとんらぁ~ひゃけがたらんぞおひゃけが~?」
半霊の庭師が慇懃無礼な絡み上戸になったり、絡まれた赤い館の門番も泣き上戸、されど酒を煽る手を止めずに絡み合い。
時々庭師が一升瓶を門番の頭に叩き付けたりしているが、酒が回っているのと日頃鍛えられた頑強な肉体の為か、
その酒勢に微塵の影響も無い。
庭師が半身を触られても気にしていないのも、おそらくは回りすぎた酒の影響で感覚が麻痺している為だろう。

―――色々と後が不安な呑み方である。良い子も悪い子も真似をしてはいけない類の。


「…………」
「で、だなぁ~恋って奴はだなぁ~~~…………ん~、どぉおーーしたパチュリぃ~、辛気臭いぞ?
―――おお?顔まで髪と御揃いかぁ?こんな時もおめかしたぁお洒落だなぁあっはっは☆」
「きゃっははははは☆、や~だぁ魔理沙ったらぁ♪それはただ中毒症状起こしてるだけよぉ?
さっきまでガンガン呑ませてたじゃぁないのぉ?」
「…………」
「あっはっはっはっは♪そ~だったなぁ?ってーことは何か?私も呑み過ぎかぁ?」
「そーよぉ、魔女がそーなるくらい私と三人で呑んでたんだからぁ♪ほんとに魔理沙ってお馬鹿さんねぇきゃははは☆」
「あーっはっはっは!そーだったそーだったぁー!アリスは賢いなぁ?はははコイツめ♪」
「…………」
「なぁによその台詞ー?顔が紅白より真っ赤だからって三倍気取りぃーーー?」
「そりゃーいいやぁーーー♪ちょうど酒の勢いも三倍だしなぁッ♪いやアリスも赤いし3×3で九倍かぁ?」
「なにおーぉ?それはすなわち私も⑨だって言いたいんディスカー?」
「おーよー♪そしておなじ⑨なら呑まなきゃソンソン♪」
魔法の森在住、職業:魔法使いの人間と、種族:魔法使いで職業:人形師の魔界人が、
全身紫色となって硬直した七曜の魔女を肴に笑い転げ、酒瓶を片手に踊り狂う。
「ナカーマ」
「マイヤヒー」
人形師と思考を共有している、マーガトロイド謹製の二体の人形も、少々暴走気味に
主人とその友人の動きをトレースしている。

それは普段の彼女達と比較して、特に魔法少女として、色々と終了な光景であった。
お酒は二十歳になってから―――であっても九倍も呑んではいけません。

「……⑨……ばっ……か」
その有様を、焦点が本格的に怪しくなってきた目で、魔女はぼんやりと眺めながら―――

「―――ゴブぁ」

限界に達した。
その色々と微妙な表情の口から色々と当てられないものを噴出し、それを推力にして仰向けに昏倒する。
「ぱぱぱパチュリー様ぁッ!!!?―――嗚呼ッ!?口から何処ぞの庭師の半分のようなモノがッ!!?」
魔女の使い魔が血相を変えて介抱に回る。―――というか少々遅い。
(―――ちなみに。くれぐれも顔色が魔女のようになるまで呑んではいけない。)


そんな混沌たる宴会を横目に。
「……どーでもいーわよ、ちくしょー……」
頭に3cm程積雪した巫女が、雪化粧の境内の外れで、倒れ伏した。

―――宴の、まだまだ始まったばかり。
巫女は早々に、退場しようとしていた。
えーと……皆さん始めまして。

クリスマスだのにクリスマスっぽくないSSを、しかも初SSを、
挙句に長編を放り込もうと至った新参『鷹飛び』と申します。

更にこのタイミング。
はいそれはもう支援物資として書こうとしてタイムオーバーとなったのは
もはや明白であります(号泣)。

ま、まあ、色々有りますが、博麗の巫女のように
人気が無くてもふわふわと頑張っていきたいと思います。

今話に関しては一言だけ。
当方は、博麗 霊夢を一押しで投票しております。念の為。
鷹飛び
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