Coolier - 新生・東方創想話

夜明けの屋台

2020/04/22 16:53:03
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 夜半過ぎにはよく賑わっていた夜雀の屋台も、夜明けが近いこの時刻には、もう既に客の一人もいなかった。
 屋台の女将、ミスティア・ローレライは、満足そうに、鼻歌交じりに屋台の片づけを進めていた。
 実際、彼女は満足していた。その日はとっておきの肉を仕入れることができたのだ。
 おかげで客も多かったし、売れ行きも普段の倍はあった。万々歳というところだ。
 炭に水をかけ、まな板を洗い、タレ壺に蓋をしてひもで縛る。
 それから、余ってしまった肉を袋に詰めていたところで、物陰の方から声がかかった。

「ねえ、ミスティア。それ、どうするの」
「なにルーミア、まだいたの? 言っとくけど今日はもう店じまいだからね」

 ちらりと、樹の陰に金髪の揺れたのが見えた。

「別にいいよ。私はもうお腹いっぱいだし」

 ルーミアはそう言って、それより、と続けた。

「その、袋に詰めてる余りの肉は、どうするの」
「どうする、ねえ」

 ミスティアは首を傾げた。あのものぐさ幼女がそんなことをわざわざ訊くとは、と意外に思ったのだ。

「とりあえず、三分の一ぐらいは私の今日の朝食かしら。のこりは腐るといけないし、干したり、燻したり、そのあたりね」
「ふーん」

 自分から訊いといてなんだその雑な反応は、とミスティアは文句を言いかけたが、ぐっと堪えた。
 ルーミアがそういうやつであることは、前々からよく知っていたからだ。
 そうして、ミスティアはルーミアのことを意識から外した。まだ片付けるものは幾つもあるのだ。
 どうでもいい問答は流して、早く屋台を片付けて、帰って、朝食を食べて、それからぐっすり眠りたい。
 それが、ミスティアの偽らざる本音だった。

「じゃあ、全部残さず食べ切るんだ」

 だから、ルーミアがぽつりと漏らした言葉を、ミスティアは聞き逃したのだ。

「……? ルーミア、いま何か言った?」
「いや。彼女はきっと幸せだろうな、って」

 そう言い残すと、ルーミアはふわりと浮かんで去っていった。

「……」

 何の話だよ。そもそも彼女って誰だよ。
 そうミスティアは思ったが、追いかけるのもルーミアに訊くのも面倒だった。そもそも彼女は早く眠りたかった。
 そういうわけで、ミスティアはその話についてはもう、考えることを止めにした。
「……あー。ていうか、骨の使い道は決めてたけど、そういえば髪と着物は決めてなかったっけ。
 使えそうにないし、捨てちゃおうかな……」
豚串もいいけどやっぱ屋台には焼き鳥だよね
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コメント



0.簡易評価なし
1.100奇声を発する程度の能力削除
最後でかなりゾクッときました
2.100終身削除
ミスティアが○肉に抵抗あるのかは分かんないけどルーミア以外全員被害者ですねこれ… 幸せって言ったのも皮肉でもなんでも無さそう 後書きにいろいろと詰まってるのがとても強烈でした
3.80名前が無い程度の能力削除
いろんな読み方する人が居るなあ
4.70夏後冬前削除
グラデーションで文章を読ませるのはエモいですね、サクッと読める長さなのがちょうどいいです。
みすちーのお肉の仕入れ先はルーミアなのでしょうか。よく判らなかったです。
5.70名前が無い程度の能力削除
夜明けの表現が好きです