Coolier - 新生・東方創想話

第4話 大繁殖!超コイノボリ編

2020/04/09 21:22:58
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 昼下がりの永遠亭。
 今日は暇だなとお昼寝を楽しんでいた永琳だったが、にわかに騒々しくなる。騒音の原因は玄関を越え、廊下を渡り、そして永琳の部屋まで飛び込んできた。
「先生、急患だ!!」
「いててててて……いたいー」
「もう、両さん、またなの?」
 叫んだのは小町だ。そして両津は腹を押さえてうずくまっている。毎度毎度のことなので、永琳もさすがに呆れていた。


 30分後。処置が終わり両津は回復した。
「いやぁすまんな、先生。毎度毎度。」
「分かってるなら来ないでよね。」
 そう、両津はここのところ、定期的に永遠亭に運び込まれていた。当然、小町が毎回運んでいる。
「両さん。もう諦めなって。」
「いや、今回のが失敗しただけだ!絶対食えるものがある!」
「はぁ……」
 こういう事情だった。
 両津が食べたのは三途の川の魚。それも生で食べた。曰く、寿司を作りたいとのこと。小町は、三途の川の魚で食べれるものはないと諭したが、両津は『じゃあ全部タダだな』と食べるのを決行。で、今に至る。
「ところで小町さん。何で三途の川の魚は食べれないの?」
「そもそも三途の川は水じゃないんだよ。成仏できなかった霊魂の自我が崩壊して分裂したものの集まりなんだ。両さんが釣った魚は、そういう魂を食べて生息している悪霊なんだよ。」
「はぁ?魚じゃない!?」
 両津がぺっと唾を吐きながら叫ぶ。
「小町!何で言わなかった。」
「あたしゃ、何度も言ったよ……」
「うーむ、だとすると……萃香に頼むか……しかし、設備費は……」
 両津が何やら不穏なことを言い始めるが、小町は分からないので放置。後に、この判断を死ぬほど後悔することになる。
 元より興味のない永琳は、とっとと追い出しにかかる。
「ま、とりあえず、もうここには来ないことね。ホントに死ぬかもしれないわよ。」
「おう。世話をかけたな。小町。博麗神社まで運んでくれ。とりあえず萃香だ。」
「……もうロクでもないこと、しないでくれよ。」
 小町が言うのも無理はない。両津は萃香と共に命蓮寺を壊滅させたのだ。儲けた銭も多かったので何とか賠償はできたが、その時の白蓮の怒りはすさまじく、命蓮寺一同共々、永遠亭に運ばれた。
 なお、両津以外は未だに入院中である。
「任せろ!ワシは寿司屋を作りたいだけだ!」
「寿司?」
 当然、幻想郷にも寿司はある。しかし基本が川魚の幻想郷の寿司は、両津にとっては寿司ではない。幻想郷に本当の寿司を提供したい。”この時は”純粋な思いから、そう考えていた。
「まぁ待ってろ、小町!ワシが本当の寿司を最初に食わしてやるぞ、大船に乗ったつもりでいろ。」
「アタイが運転してるのは小舟だけどね。」



 その3日後。比那名居天子らは自宅の傍で突如始まった工事に叩き起こされた。外を見ると、清らかな天界に何故か鬼、鬼、鬼。鬼だらけだ。傍には安全第一の黄色いヘルメットをつけた両津と萃香がいる。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと!何、何事?何してんの?ホワイ!?」
「おう、お前が比那名居天子か。ワシは両津だ。ここにマグロ養殖場を作ることにした。」
「はぁ?マグロ?何それ?いや、それ以前に、何勝手に工事してんの?萃香!何とか言いなさいよ!」
「んー、説明面倒くさい!」
 怒る天子に、後ろからチョンチョンと永江衣玖が声をかける。
「衣玖!用事なら後にして!」
「それが……正にその案件でして。どういうルートで承認されたのか分からないですが、養殖場作成の許可が本日付けで下りてるんです。」
「はぁあああああ!?」


「両さん、工事は順調だよ。て、言っても、天界の雲の主成分は水だからね。塩さえ調達すればいくらでもどうにかなるよ。」
「おう!天界だからコンタミ(混ざるの意味。この場合、寄生虫や病原菌などの意図しない微生物が混ざること)も少ないしな。理想的な養殖場だよ。日当たりも最高だ。」
 両津は図面を取り出す。そこには水槽がいくつか。
「この一番大きいメイン水槽はマグロの養殖。隣の中サイズ、小サイズがそれぞれ稚魚と中型のマグロだ。更にこっちがイワシの養殖場だ」
「イワシは何で必要なの?」
「マグロの餌だ。本来はサバの方がいいんだがな。しかしサバは肉食で動物性プランクトンなどを食って育つ。サバを餌にするなら、サバの餌用の水槽も作らなきゃならん。ま、いずれ作ってもよいだろうが、今はイワシにする。イワシは植物性プランクトンを食う。だから植物を供給してやればよい。」
「その植物は?」
「ああ。それについて専門家に心当たりがある。萃香、送ってくれ。」


 1時間後。両津は太陽の畑の風見幽香を訪れて、図面を見せて計画を説明。だが、幽香は難色を示した。
「私、海の植物は専門外よ。そんな簡単に言われても……」
「なる!どうにかなる!全てはお前にかかってるんだ。なぁに、藻なんて一旦条件を整えれば勝手に育つ!」
「じゃあ自分でやればいいじゃない。」
「ワシにできないから頼んでるんだ!」
「矛盾してるわよ……」
 普段の幽香ならこういう輩はぶっ飛ばしてるのだが、そこが両津の交渉力。何故かイニシアティブをとられる上に席を立つこともできないのだ。
 結局、風見幽香は協力することになった。


 一か月後。
「やればなんとかなるものね。」
「ワハハ、だろ?」
 天空の水槽の一角。そこでは藻が大繁殖し、イワシ、そして少数のサバが回遊していた。
「アンタ、無茶苦茶だね。風見の。アンタも断ろうとは思わなかったの?」
「……断ったわよ。何度も。」
 ここは水槽の傍に椅子と長机を置いただけの場所。しかし両津には十分だ。両津は取れたイワシとサバで寿司を握っていた。ゲストは小町、萃香、幽香、天子、衣玖の5人だ。
「ほら。これがワシの言う本当の寿司だ。全て味付けしてるからそのまま食べてくれ。右から説明するぞ。これが生イワシ。生姜とネギで食べる。これが生イワシの軍艦。ナメロウといって、ミンチにしてからネギ味噌で和えてる。こっちが生サバ。サバは寄生虫の関係で生では食えないんだが、ここでなら食べれる。そしてこれが〆サバ。酢でしめてて、本来の食い方だな。最後が焼サバ。外の地方ではこっちの方を好む地域もある。」
「あ、旨い!」
「クセがない!」
 思いのほかの旨さに好評だ。
「両さん。マグロってこれを超えるくらい旨いの?」
「好みもあるがな。しかし、マグロがやはり王様だ。」
 両津が腕を組む。寿司において酢飯は重要であるが、酢飯の味はマグロに合わせることが多い。寿司屋にはマグロ専門の卸業者と契約してる店もある。それはマグロの肉質。ねっとりとした食感なのか、筋の多い筋肉質を好むのか。厚さは、水気は。様々な要素が絡む。
「ま、とりあえずは今日はプレオープンだ。ワシの目標は外の世界では作れない寿司を作ることだからな。」
「え、外の世界と同じではなく。」
「当たり前だ。幻想郷の市場規模などたかが知れてる。売るとしたら外だ。まずは外に追いつくことだがな。そのためには風見、萃香。お前たちの力も必要だ。あと永江。この間言ってた、空飛ぶ魚か。それの養殖も試す。」
「はぁ……」
 衣玖はうなづく。天界でも少量ながら魚は食べる。しかしそれは雲を泳ぐ魚だ。当然、両津も食べてみたのだが。
「ダメだ。味が薄くて、とても寿司には向かん。湯引きしてソテーにして何とかなるレベルだ。」
「だめ……ですか?」
「直接はな。しかし、マグロの餌としては良いかもしれん。詳しい生育条件は調査が必要だな。」
 と、こんなことがあったのだ。
「で、両さん。その空飛ぶ魚の生育条件は分かったの?」
「ああ。どうやら一部の雲に植物性のプランクトンがいてな。そいつを食べてるらしい。イワシと食性は変わらん。しかし、雲のプランクトン量が少ないのか、成長が遅い。でも、雲は広いから数では補えるな。」
 両津が期待した目で幽香を見る。
「はぁ……今度は雲に生える植物を作れって訳ね。」
「話が早くて助かるぞ。」
「天界の桃の木があるんだから、条件は揃ってるはずよ。できなくはないわ。」


 
 更に1月後。紅魔館。
「咲夜さーん!大変です!空を見てください!」
「何事、美鈴?」
「だから、空!あれ!」
 咲夜が屋敷の外を見ると、紅魔館の上空。そこには緑色の不気味な雲がかかっていた。


「ガハハハハ!流石、幽香!やるじゃないか!」
「んー、まぁ……でも……」
「見ろ!この空飛ぶ魚。こんなに早く成長するようになった!まだ小さいがな!」
「ああ、あのね、聞いてよ……」
 そう、この雲は植物性プランクトン豊富な雲。緑色に見えるのは、プラクトンの葉緑体だ。そして、幽香の懸念は
「これ、増やしすぎじゃないかしら。環境というのは、バランスによって成り立っていてね……」
「問題ない!ここは雲の上だ!どこにも行かん!」
「今の私たちの頭の中ではそうかもしれないけど、自然は予想もつかないところで結び付いているのよ?」
「気にしすぎだ!問題ないといえば問題ない!」
 幽香の忠告を全く耳に入れない両津。そして更に漁場を拡大しようとする萃香。一方で暴走についていけない幽香と、そして天子と衣玖。両津のいつもの失敗パターンに入っていたのだが、両津は学習しない。する気がない。
「両さん!ちょっとこっち来てくれよ!」
「何だ、萃香!」
 両津は萃香と共に席を外す。その間に天子と衣玖は幽香に話しかける。
「結論から言うとね、私も衣玖ももう責任を負いかねる事態になってきたわ。」
「やっぱり?」
「でも、貴方の技術は天界に役立ててほしいと思ってるわ。だから……」



 一方、両津と萃香は大型の魚を囲んでいた。
「萃香、これは?」
「分かんないけど、突然変異じゃないかな?」
 魚は1mちょっとの肉食魚だった。コイのような外見をしている。そして味は、
「タイに似た肉質だな。形はコイだが、雲の上で育てたせいか、臭みがない。そして仄かに桃の香りがする。」
「桃?」
「幽香は天界には桃が豊富だ。もしかしたら、桃の木があるんじゃなくて、天界で育てたものが桃っぽくなるのかもな。」
「どうする、これ?」
「無論、育てる。今は数匹だけだが、増やす環境はいくらでもあるしな。幸い、幽香の植物プランクトンの育成は容易だし、外敵もいない。と決まれば、漁場拡大だ!」
「アイアイサー!!」


 そして更に数か月後。
 幻想郷の人里だけではない。秋葉原や日本橋を始めとした各地に”超コイノボリ寿司”がオープン。もちろん看板メニューはあの魚だ。コイに似た外見なのと、空で育ったので、”超コイノボリ”と安直な名前が付けられた。魚なのにフルーティな香り、そして味もポン酢で食べると美味だった。なのでたちまち大繁盛。なお、あれだけ力を入れたマグロの養殖はあっさり捨てられた。ひたすら超コイノボリ繁殖に精を出した。
 当然、各地から超コイノボリは何なのかという問い合わせも来たが、両津はトップシークレットと拒否。産業スパイが何人か潜入したが、流石に天空で育てるという発想はなく、極わずかなスパイも天空という隠れる場所もないところではすぐに見つかり、地底地獄送りにされた。
 かくして、両津の養殖産業は大成功かに見えた。


 ある日の萃香と両津。
「両さん、この魚、すごいね。獲っても獲っても減らない。」
「繁殖力がすごいな。むしろ餌になる小魚の方が減りが早い。売るために獲るというより、獲らないと漁場が維持できんな。」
 萃香の配下の鬼が釣り針を垂らす。針も餌も巨大だ。大型の超コイノボリしか食いつけないように。が、心配ご無用。すぐに食いつく。食いついたところで、鬼は釣り竿のスイッチを押す。すると超コイノボリは高圧電流で感電し気絶した。この取り方は、現世の養殖場で実際に導入されている方法で、獲物が緊張することなくしめることができるので、美味だし、また超コイノボリの力が強く、流石の鬼でも危険はあった。以前、釣り竿ごと雲の海に落ちた鬼がいて、腕をかじられた。人間だったら、腕がなくなっていただろう。
「両さん、気のせいかな。こいつら、どんどん狂暴に進化している気がするんだ。」
「うーむ、ワシも実はそんな感じはしていた。共食いもすごいしな。」
「これ、地上に降りたら大変なことにならない?」
「一応実験では、普通の水環境では生きられなかった。餌が豊富にある、この緑雲にいないと餓死してしまう。が、コイツラが更に進化してしまうと、ワシもどうなるか分からん。」
 そう両津たちが話していると、配下の鬼が慌てて声をかける。
「すみません、これ、幻想郷ニュースなんですが……」
「何々?超大型竜巻が近日中に発生、だと!?」
 両津と萃香、一気に青ざめる。竜巻だと?これは養殖場といっても所詮雲。竜巻なんかがきたら、雲ごと吹っ飛ばされるのは自明の理だ。となると、この訳の分からない魚が幻想郷各地に飛び散ることになる……。
「ど、ど、ど、どうする、両さん?」
「慌てるな、まだ時間はある。もう、超コイノボリ、一気に取りつくそう。」
「取りつくすって、この量?」
 萃香の指先には広大な水平線、いや雲平線。時折、超コイノボリが跳ねていた。
「い、急げー!!」
 両津たちは船を起動!網で一気に獲り尽くしにかかる。が、超コイノボリの生命力は想像の遥か上をいっていた。網にかかった超コイノボリの一撃で鬼の一人があっさり骨折。もはや電気ショック以外で釣りあげることは危険だった。
「「「「「うぉおおおおお!!!!」」」」」
 萃香配下の鬼、総動員。が、鬼の軍団を遥かに上回る超コイノボリ!!そうこうしているうちに、あっという間に竜巻がやってきた。
「りょ、りょ、りょ、両さん!もう危険だ。船を岸に戻そう。脱出だ!」
「まだやれる!」
「もう、無茶だって、あ、あーーーーーー!見て、あれ!!」
 漁場の一部が竜巻に吸い込まれる。空に不気味な緑色の柱が出来上がる。その柱の先からは大量のコイ、コイ、コイ!それはさながらミサイルのように地上に降り注いでいった。
「あ、あーーー……」
 そして竜巻の速度は速かった。船が岸につく間もなく、両津たちの船を吸い込む!!
「あーれーーー!両さんーーー!」
「萃香ーーー!」
 しかし二人は引き離され、竜巻の上から排出。そして、他のコイたちと同じ運命をたどった。



「こんにちは。幻想郷ニュースです。昨日に襲った竜巻から地上に大量の凶悪な魚が降り注ぎ、幻想郷各地に甚大な被害を与えました。その魚たちのほとんどは気圧変化に耐えられず死亡したようですが、霊的な影響が強い三途の川では生存。大繁殖をしました。現場の犬走さーーん?」
「はーーい、こちら犬走です。見てください。川を埋め尽くさんばかりのコイ!川の悪霊もすべて食らいつくし、共食いも盛んなようです。また川岸では渡し船を壊された小野塚小町さんが泣いています!」
「う……うう……アタイの相棒が……」

ピッ……

 テレビを消す四季映姫。その視線の先には縛られた両津と萃香。
「はわわわわ、裁判長ーーーー!」
「ち、違うんだ!全て両さんが、両津がやったんだ!」
「てんめぇ、萃香!鬼のくせに嘘つきやがったな!」
「私は無罪だー!信じてくれ!」
「シャラップッ!!」
 振り回される悔悟棒。罪の重さに応じて、叩かれる方の重さが変わる閻魔グッズ。当然叩かれた2人は大型トラックにひかれたように吹っ飛ばされた。
「本来は地獄行きですが、寛大なる私の慈悲に免じて、別の刑罰にしてあげましょう。今すぐ、三途の川を掃除しなさい!!」
 四季映姫はベランダの戸を開ける。そこには5mはあろうかという超コイノボリが牙をむいて口をパクパクさせていた。
「「ひ、ひぃいいいいい!養殖なんて、コリゴリだーーーー!!」」
こち亀の作者、秋本 治先生が紫綬褒章を受章されたことを記念して書き始めました。私は遅筆で、既に半年もかかってしまいました。

最後に。例えこの作品がクソでも、こち亀は神作です。
こち亀は神作
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コメント



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マグロ専門の業者とか養殖場での魚の〆方とかニッチな知識が両津のやり口にそって展開されていくのがこち亀のその手の話っぽくていい味を出していたと思います オチで計画が頓挫した後のはちゃめちゃ感好きです