Coolier - 新生・東方創想話

はやり

2020/02/22 21:55:40
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 『はやり』
                              七草粥
妖怪でありながら人里に混ざって暮らす,そんなどっちつかずの赤蛮奇は,『はやり』の物が嫌いであった.
『はやり』の弾幕勝負は勿論,『はやり』の宗教,巷で『はやり』の歌に至るまで,そういったものが嫌いだった.それが赤蛮奇であった.
 だから彼女は行きつけの甘味処も,あまり流行っておらず,無口な女の店主が切り盛りする店であった.決して世間話をすることもなく,ただ黙々と食べることが出来る,その店がお気に入りであった.並んで待つこともなく,それなりの味の甘味をそれなりの値段で食べられる,そんな店であった.




 冬の寒い日,マフラーを口元まで上げた赤蛮奇の顔は苦虫を噛み占めたようになっていた.
店が閉まっているのだ.それも三日続けて.暫く休みますとの張り紙でも張ってあれば納得も行く.だが,それもなく,ただ閉まっているのだ.確かにはやっていなかったのだ,店じまいでもしたのだろう,そう考えると,ため息が出てきた.
 念のため赤蛮奇はあたりを歩いていた男性に問いかけた.
「すまないが,ここの店は潰れでもしたのか」
するとその男は気まずそうな顔をした後,赤蛮奇の耳に口を近づけてきた.
「なんだ,あんた知らないのか」
どうやら,何か事情があるようだ,自然と赤蛮奇の声も小さくなる.
「何かあったのか?てっきり店じまいでもしたのかと私は思っていたよ」
「いや,そうじゃなくて最近『はやり』のさ」
首をかしげる赤蛮奇に男はため息を着くとより一層声を潜めていった.
「つ・じ・き・り・さ」
「辻切り?そんなことあったのかい」
赤蛮奇の家は人里から少し離れたところにあるために人の噂には疎かった.
「ああ,夜中の川沿いでな.それもどうやら後ろからいきなり襲われているようだ.それも首をスパンっとね.余りにもいい手際なので,妖怪の仕業って噂もある」
そういって男は自分の首を手で切るように動かした.
「それはまた物騒な・・」
「ここの店主もつい三日前に・・」
語尾を濁らせたが男の言いたいことはよくわかった.男は恐ろしそうに店の入り口に向かってナンマイダ,ナンマイダと手合わせて拝む.仕方なしに,それに赤蛮奇も倣った.
赤蛮奇は男に礼を言ってそのまま道を歩き始めた.彼女の去り際に後ろから男が声をかけてきた.
「あんたもきいつけなよ,女ばかり狙われてるらしい」
一瞬キョトンとしてしまった赤蛮奇だったが振り返って軽く頭を下げた.
「ああ,ありがとう」
それだけ言うと首に巻いていた,継目隠しのマフラーの中で彼女は薄く笑った.
「私の首を切ることなんて無理な事さ」
赤蛮奇の能力は頭を飛ばせる程度の能力,そう,つまり赤蛮奇はろくろ首の亜種であった.




 道を急ぎながら赤蛮奇は一人毒づいていた.里での甘味の調達が途絶えてしまったのは彼女にとって割と大きな問題であった.
「ああ,これだから『はやり』はきらいだよ.一体『はやり』の辻切りってなんなのさ」
そうこぼしていると,甘味処が目に入ってくる.二月前にふと見た新聞に載っていた店であった.しかしだ,新聞では大盛況と書いてあったのに人ともまばらであった.
まあ,『はやり』と言うのはそう言うものだろう,最近なら一月持てばいいほうだ,そう思い赤蛮奇は店へと向かった.亡くなった店主には申し訳ないが代わりの甘味処を探すことが急務であった.




 五軒は回っただろう,里の甘味処を色々回ったが,気に入った所がない.味は良くても店員が気に入らなかったり,味が受け付けなかったり,理由は様々だ.だが『はやり』に乗らないからこそこういった所で妥協をするわけにはいかなかった.
すっかり重たくなった腹をさすりながら赤蛮奇は道を行く.そして里のはずれに出たときに,見覚えのある店を見つけた.
「ああ,あれはたしか兎の・・」
噂にたがわず人がたくさん団子屋の前に並んでいた.無論,わざわざ並んで買う気もしなかったが,よく見ると店が二つあり,片一方のみに行列ができていた.
少し歩いたことで腹に与力が生まれていることを確認して,赤蛮奇は迷わず,行列のない,空いている方へと並んだ.




 ふて腐れて兎の耳をペタンと垂らしていた店主は赤蛮奇を見上げると口を尖らしていった.
「何よ,妖怪」
どうやら店主には素性はばれているようであった.漂う妖気でも感じたのだろう.赤蛮奇は首をすくめるそぶりをした.
「客にとんだ言い草だね.私は団子を買いに来たのよ」
「ふーん,妖怪も団子を食べるのね」
「当たり前でしょ?あんた等も食べてるじゃないの.それに,特に私は頭をよく『動かす』からね」
恐らく赤蛮奇の言いたいことを店主は理解していなかっただろうが,取りあえず団子を入れている箱の蓋をあけて見せてきた.
「みたらし団子がお勧めよ」
だが,お勧めと言う割には夕方なのにまだたくさんの団子が残っていた.
みたらし団子を二つ受け取り,側にあった椅子に腰かけて赤蛮奇は団子を口にした.味は確かに悪くなかった.それどころか,どちらかと言うと好みの味であった.
「しっかし,あんたも変わり者ね」
「うん?」
団子屋の屋台に頬杖をついた店主が赤蛮奇に声をかけてきた.赤蛮奇が怪訝そうな顔をすると店主は顎で前の並んでいる屋台を指した.
「だって,わざわざ並んでないほうに並ぶ?普通は向こうに並ばないかしら」
言いたいことがわかった赤蛮奇は鼻で笑った.
「さあ?私は並ぶのは嫌いよ.それに『はやり』の物もね」
「『はやり』ね・・」
店主は項垂れてしまう.赤蛮奇が黙って食べていると再び店主が口を開いた.
「私も『はやり』は嫌いかな・・.だってつい一月前までは私のとこにも客が来たのよ」
赤蛮奇が店主を見上げると店主は目の前の屋台の人の並びをつまらなそうに眺めていた
そして頼んでもいないのに身の上話を始めた.逃げても良かったのだが,不思議と『はやり』が嫌いといった店主の話に興味が湧いてきたのだ.
「まったく,鴉のせいよ.アイツら私たちの団子屋を新聞で取り上げた後,勝手に企画を始めたのよ.どっちの団子屋が上手いかって.確かに鈴瑚の店の方が美味しいわ,悔しいけどそれは認めるわよ.でも人には好みっていうものがあるでしょ.それが,あの企画のせいで美味しい団子屋として向こうが有名に,それにつれて私の方が不味い団子屋って呼ばれてしまうようになったのよ」
何となく話の内容を理解した赤蛮奇は独り言のように呟いた.
「まあ,私は美味しいと思ったわよ.このみたらし団子.喉に付くような甘さじゃない上に,何より団子が良かったわ」
「・・・.ありがと」
「そう言えばあんたの名前なんていうのよ」
「清蘭よ」
「清蘭,人のはやりなんてあっという間よ.そんなのに流されるのなんて馬鹿みたい.どうせもう一月もすればいつも通りよ」
「そうかしら・・」
「ええ,そう言うものよ.そう,『はやり』なんて言うのは早く終るものなの」
そう言ってしまってから,柄にないことを言ってしまったと赤蛮奇は赤面してしまう.それを隠すように咳払いをして立ち上がると,大きく伸びをした.
「ああ,美味しかったわ.失礼するわね」
そう言って去って行く赤蛮奇を見送ったあと,清蘭はハッとした.
「名前聞いてないや・・」




 次の日も,次の日も,赤蛮奇は甘味処廻りを行った.
なかなか思うような店は見当たらなかった.一応,今のところの一番の候補は先日訪れた清蘭の店だが,あんなことを言ってしまったことが尾を引っ張り赤蛮奇の足取りを重くしていた.
 店先で食べられない物を袋に入れて川沿いの道を進む.冬の日暮れは早く辺りはすっかり真っ暗であった.枯れ木の側を通りかかった時,ふと赤蛮奇は音を感じた.そしてすぐに殺気を感じる.だが,それに気づいた素振りもなく,赤蛮奇は足を進めた.わずかだが足音が近づいて来る.


タ,タ,タ,


隠しているようだが,赤蛮奇には御見通しだった.そしていきなりその音が早くなった.




赤蛮奇の頭は地に落ちた.後ろから赤蛮奇の首を狙って刀が振り下ろされたのだった.土手に転がり落ちた赤蛮奇の首から相手をみた.
 息を殺したそいつは三十路ぐらいの頬のこけた男だった.その目は何かに取り付かれているかのようであった.だが赤蛮奇にはわかった.
(何だ,妖怪じゃないじゃないか)
そんなことを思いながら草の上に転がった頭から見上げていると男は首を傾げた.どうやら切った時の感触が気になったのだろう.実は噂を聞いたときからいつかこうなるじゃないかと赤蛮奇は思っていたのだ.と言うよりも期待していたのだ.そのため首元には血糊の袋を忍ばしていた.
男は幾度か首を傾げた後,刀に付いた血を払って捨てて収めた.
(出血量が少ないことに気が付くなよ)
そんな赤蛮奇の心配をよそにそそくさと男はその場を跡にした.




転がっていた頭が胴体のもとへとふわり,ふわりと空を飛びながら近づいてきた.
「さて,顔は見たぞ・・.どうしてやろうか」
 そう言いながら離れた首を胴体につなぎ直す.その顔はひどく楽しそうであった.
「『はやり』の辻切りねぇ,悪いが私は『はやり』が嫌いなんだ.あんたのような奴は一月も持たずに消えてもらわないとね」
そうこぼすと枯れ木の側で赤蛮奇は楽しそうに声を上げて笑った.




 次の日からは,昼は甘味処探しに,夜は辻切り探しに赤蛮奇は里を練り歩いた.一件ぐらい彼女の目にかなう店がありそうなものであったがそれがなかなか見当たらない.
一週間もしたころの夕方,赤蛮奇は清蘭の団子屋にいた.そろそろ気恥ずかしさも収まってきていたし,何より里の殆どの甘味処を巡ってしまっていたのだ.
「あら,あんたまた来たのね」
相変わらず客のいない屋台に清蘭はいた.だが,前のように項垂れてはいなかった.
「みたらし団子四本」
「あら多いわね」
「最近頭をよく『動かす』からね」
駄賃を渡しながら赤蛮奇は椅子に座って,ふと気が付いた.箱の中の団子がこの前よりも少なかったのだ.確かにまだ,たくさん余っていたがその量は確かに目でわかるくらい減っていた.赤蛮奇が箱の中を覗いているのに気が付くと清蘭は恥ずかしそうに笑って言った.
「ああ,あんたの言うとりだったわ.確かに少しは売れるようになってきたの」
その言葉に自分の言った言葉を思い出し,赤蛮奇は誤魔化すように団子を口にした.
「まあ,そのうち前みたいになるでしょ,そう思って今は頑張ってるのよ」
「いいんじゃないの?まあ,余りにもはやってもらうと困るけどね」
「どうして?」
「言ったでしょ?並んで買うのは嫌いなのよ」
そう言うと何が面白いのか清蘭はクスクスと笑った.
「大丈夫よ,だって私の店に行列が出来たことなんてないもの」
それはそれで店として大丈夫ではないのではと思ったが赤蛮奇は黙って首をすくめる素振りをした.
「そう言えばあんた,何か噂でも知らないかしら」
「噂?」
「ええ,辻切りの噂」
そう言うと清蘭は合点が行ったように手を鳴らした.
「ああ,それね.確かまだ捕まって無いのよね.まあ,私とかあなたが恐れるような話でもないでしょ」
「そう,そいつの噂.なにか知っていたら教えてよ」
そう言うと清蘭は少し考えた後,何かを思い出したかのように指を立てた.
「あんまり役に立つかはわからないけど,妖怪の仕業って言うのは聞いたわ.それにそろそろ巫女が動くって言うのもね」
前半の内容はどうでも良かったが,後半の内容は赤蛮奇にはありがたかった.
「まあ,巫女が動くとなると『はやり』の辻切りも御終いよねー」
それに軽く相槌を打つと赤蛮奇は団子を一本だけ残し立ち上がった.
「ああ,ありがと.それだけ聞けたら十分だわ.ごちそうさま.この一本だけ持ち帰ってもいいかしら」
「ええ,いいわよ.今包むわ」
そうして紙に包まれた団子を受け取って立ち去ろうとする赤蛮奇を,清蘭は慌てて呼び止めた.怪訝そうな顔で振り返った赤蛮奇に清蘭は言った.
「あなたの名前,教えてよ」
「赤蛮奇よ」
一瞬教えるかどうか迷ったが結局,そう言い残し赤蛮奇はその場を跡にした.
(巫女が動くとなると,余り時間はないわね.できれば今日にでもケリをつけたいわね)
そう思い足早に帰路へとついた.





 その日の夜中,赤蛮奇はこの前,遭遇した場所を歩いていた.片手に団子の入った袋を
持ちながら.水の音しかしない川沿いの道を進み続けていること実に数刻,ようやくお目当ての相手が現れた.
 この前と同じように後ろからつけてきているのを赤蛮奇はほくそ笑みながら感じる.そしてこの前と同様にいつ首を切ってくるのかを楽しみに待っていた.
 タ,タ,タ,タタタ一瞬足音が早くなった次の瞬間赤蛮奇の頭はこの前と同じように地面へと転がった.そしてこの前と同じように男は首を傾げていた.そして赤蛮奇の頭を見るや否やその顔は恐怖にひきつった.
「あ,あ,なんでお前,この前,殺したはずじゃ」
それを見ながら赤蛮奇は自分の頭を拾い上げた.顔に満足げな笑みを浮かべながら.
「今晩は,『はやり』の辻切りさん」
そういって頭をもとあった所へと直すと男は奇声を上げながら切りかかってきた.
「おいおい,あんまり声を出さないでよ,巫女が来たらどうするのさ」
そう言うと赤蛮奇は男へと拳を叩き込んだ.
一発でことは済んだ.腹を殴られた男は苦しそうにしゃがみこむと嘔吐をした.余り腕っぷしに自信がないと言えど,赤蛮奇は妖怪であった.これぐらいは朝飯前であった.
男は赤蛮奇を見上げる,それを楽しそうに見ていた赤蛮奇はいきなり頭を男の前へと飛ばして耳元でささやいた.
「私,『はやり』って嫌いなのよ」
男は這いつくばりながら逃げ出す,それを頭だけで追いかけながらさらに赤蛮奇は続ける.
「まったく,あんたが甘味処の店主を殺したせいで面倒なことになったのよ」
何の事を言われているのかおそらく理解してない男は腰を抜かした体勢のままやみくもに刀を振るった.それをこともなく避けながら赤蛮奇の頭は男をあざけ笑った.
「全く人に,迷惑かけないでよ.ああ,でも清蘭の団子屋を見つけられたのはあんたのおかげかもね」
そう言うと赤蛮奇は一際近く,男の顔の前に首を近づけた.すると男はそれを避けようと後ろへと這った.


ボチャン


 水の音が響いた.男は首から逃げようとするあまり,川へと落ちてしまったのだ.まだ浅い筈なのにおぼれそうになり男はもがこうとした.簡単な話だ.赤蛮奇の増殖させた頭が男の服を咥えて水底へと引っ張り下ろしているのだ.必死にもがき続ける男の側へ赤蛮奇は胴体を伴って立った.その手には団子の入った袋があった.
「ねえ,辻切りさん.あんたのせいで食べ歩いた団子あなたにもあげるわね」
そう言うと赤蛮奇はしゃがみこみ男の口へと団子を入れていく.
「作り立てでなくてごめんなさい.この団子は少ししょっぱいわね.なんでこんなものがはやったのかしら」
半年ほど前にはやっていた団子を男の口に押し込む.おぼれそうになり,必死に水面の上に顔を出そうと男はもがいていた.少しでも空気を口に入れようと,まるで酸欠の魚のように口をパクパクと動かしていた.そんな所に団子を口に入れられるのだ,男は白目をむいて必死に吐き出そうとする.だがそれを気にせずに赤蛮奇は次の団子を手にした.
「こっちはアカネコ.知ってるかしら?案外美味しいでしょ?黄粉が付いていて.店員がおしゃべりだったのが惜しいわね」
にっこりとほほ笑みながら口に押し込んでいく.
「ああ,こっちは知ってるわよね.柏餅.季節外れだけどまあいいでしょ」
また一つ
「これも変わった奴ね.えーとなんて言ったかしら・・」
赤蛮奇は頬に指を当てて名前を思い出そうとする.少しそのままだったがようやく思い出したのかニッコリと笑いそれを男の口の中へと押し込む.
「ああ,ういろう.そうそうそれ.食べたことなかったから知らなかったのよ.まあまあ美味しいわね」




赤蛮奇による一方的な甘味の品評会も残り袋に数個を残す所となった.
「あら,このみたらしは清蘭の所のね」
赤蛮奇により絶妙な所で溺れ続けていた男だが,この頃になるともはや息も絶え絶えであった.
「残念だけどこれは私のよ.お気に入りなの.あんたも今度行ったらいいわ」
そう言うと残っていた別の団子を男の口に押し込んだ.
男の口には呑み込めなかった団子がまだたくさん残っていた.その様子を清蘭のみたらし団子を口に咥えながら赤蛮奇は黙って見ていた.彼女の見ている前で男はだんだんと沈んでいく.そしてついにその顔は完全に暗い水面の下へと消えていった.
 それを確認すると赤蛮奇は増殖させていた頭を水から拾い上げるとその場を跡にした.




 それと同時刻,清蘭は前線基地の中で鈴瑚と話していた.実は二人は突きから送り込まれた情報員だったのだ.
「そう言えば清蘭,あなたの所に最近妙なのが来ていたね」
「赤蛮奇のことかしら」
「ふーん,アイツがそうなんだ」
名前を聞くと鈴瑚はなにか思い当る節があるようであった.
「あら,知ってるのね」
「いや,里の妖怪リストに載っていたからさ.大人しい妖怪だそうだ.ていうかあんたもリスト渡されていたよね」
「あー,ちゃんと覚えてないや」
それを聞くと鈴瑚は大きくため息をついた.
「赤蛮奇,ろくろ首の妖怪さ.とび首と言われる方のね」
「とび首・・ねぇ,あ・・」
そこで清蘭は何かに気が付いたかのような声を上げた.
「うん?どうかしたのか」
「いえ,そう言う事ね.頭をよく『動かす』って」
勝手に納得のいった清蘭を鈴瑚は変わった物を見る目で見ていた.






それから数日後
「みたらし団子二つ」
清蘭が顔を上げるとそこには見知った顔があった.
「あら,赤蛮奇じゃないの,今日は二つでいいのかしら」
「ああ,もう終わったからね」
赤蛮奇がそう言うと清蘭は苦笑いをしながら団子を渡した.
「やっぱりあんたの仕業だったのね」
「うん?なんのこと」
「あの『はやり』のよ」
そう言われると赤蛮奇は口角を歪めた.
「言ったでしょ,『はやり』は嫌いだって」
それを聞くと清蘭は溜息を着いた.
「それにしても,あんた大人しいって聞いていたけど,案外大胆なのね」
「そうかしらね.自分では大人しいって思っているわよ」
そう言いながら赤蛮奇は団子を自分の口へと運んでいた.
ちょうど彼女が団子屋を訪れた次の日の朝だった,川に妙な水死体があがったのだ.
口いっぱいに団子を詰められた男の水死体だった.目立った外傷はなかったが,その顔は恐怖にひきつっていたそうだ.それだけならいざ知らず,その男が『はやり』の辻切りであったことがわかってさらにことは大きくなってしまっていた.
額を押さえながら清蘭は再び溜息を吐いた.
「まったく,どこが大人しいのさ」
「私はただ,『はやり』が嫌いなだけ.そう,それだけなのよ」
そう言うと満足そうに赤蛮奇は二本目の串を口に運んだ.
稚拙な作品ですがお読みいただきありがとうございます.
少し張りつめたような,それいでいてのどかな幻想郷が好きです.
七草粥
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コメント



0.240簡易評価
1.100サク_ウマ削除
この赤蛮奇、ひねくれものというか、どことなく天邪鬼な感じがしていて良いですね。
面白かったです。ご馳走様でした。
2.90奇声を発する程度の能力削除
ひねくれた感じが良かったです
3.90名前が無い程度の能力削除
赤蛮奇ちゃんのお話だヤッター
『突きから送り込まれた情報員』→多分 ×突き ○月?
6.100名前が無い程度の能力削除
赤蛮奇がこういう、捜査している話好きです。
9.90名前が無い程度の能力削除
はやりに流されない蛮奇、らしくてよかったです!
10.100ヘンプ削除
蛮奇のつれないような態度、「はやり」がとても嫌いで辻斬りを探して……
最後の蛮奇の辻斬りを襲うところがとても良かったです。
11.100南条削除
素晴らしく面白かったです
はやりが嫌いなだけど言いながらきっちりと犯人を叩く赤蛮奇が素敵でした
人間と妖怪の力量差も描かれているところも心躍りました
最後も何事もなく日常に戻っているようでよかったです
13.100終身削除
ようかいこわい 殺したはずの相手に溺れて空気を求める口に猟奇的に団子を詰め込まれる辻斬りの今際の際の恐怖、とてもとても計り知れませんね… でも外道には外道をもって制し、嫌いな『はやり』に見事に決着をつけてみせる様子はどこかスカッとしました