Coolier - 新生・東方創想話

僕と魔理沙と鉄の意志

2020/02/09 19:36:13
最終更新
サイズ
15.99KB
ページ数
1
閲覧数
483
評価数
9/11
POINT
960
Rate
16.42

分類タグ

 香霖堂の新たな家族は今日も元気に走り回っていた。
 僕がいつものように机に向かって本を読みながらでも、この子の小さな身体に見合わない重々しい足音が教えてくれるので見失う心配は皆無だと言っていい。
 反面、生前とは勝手が全く違う身体に彼(彼女?)が適応しきれていないところが問題だろうか。
 滑らない所で滑る、通れる隙間を見誤ってつっかえる、それでいて痛い目に合うべき所で痛くないのだから学習しない。むしろ被害が出ているのは店や僕の方であった。

「凄いです! 本当にアイボが勝手に動いてるじゃないですかっ!」

 頭に双葉が生えたような変な、もとい独特な髪型の少女が興奮して叫ぶ。
 彼女の名は東風谷早苗。妖怪の山の頂に建つ神社の風祝だ。
 早苗君は我が家のロボット犬、ライカが見たくて来店したそうだ。
「凄いだろー。まるで生きてるみたいだろー。奥さん……それ、生きてるんですぜ?」
 そして売り物のチェアーに図々しく腰掛けて妙なノリで早苗君と馴れ合うのは、この店によく顔を出す泥棒魔法使いの霧雨魔理沙だ。
 客ではないので僕の中ではぞんざいに扱ってよい事になっている。
 ついでに僕は森近霖之助。この古道具屋、香霖堂の主だ。
 古道具屋と謳いつつ、最近は外の最新機器を買い集めたりもしていて一部(主に魔理沙)からクレームもあるが、中古品だから古道具なのだ。
「霖之助さん、この子ってエサは何を与えればいいんでしょうか! やっぱり電池とかですか?」
「……あげたことはないなあ。とりあえず骨とかを見せてみたらどうだい。齧るくらいはするかもしれないよ」
 ライカもそんな一昔前の最新機器から生まれた存在だった。
 この子は死んだ子犬の魂が偶然にも犬を模したロボットに転生して成り立った存在だ。
 そもそも空腹が無いのだから何かを食べようとする本能が働いていないのではないだろうか。
 幸いというべきか、僕も半妖であまり食事を取らないので丁度いい。
「そもそも香霖の家にはろくすっぽ食べ物が置いてないからな。食費がかからないからこんな流行らない店でもやっていけてるんだ」
「我が家の食費は大体君みたいなのが勝手に持っていく物で占めているんだが? 魔理沙が来なければ食費ゼロ円だって夢ではないんだよ」
「そんなん自慢することでも何でもないぜ。私だってその気になれば魔法の森に自生する食材とか、あと他所の家の飯をたかってゼロ円生活くらいできる」
 その『他所の家』の中には馬鹿にした僕の家も入っているのに無駄な対抗心を燃やさないでほしい。
「……不毛な会話ですねえ」
 早苗君が僕と魔理沙の顔を交互に見て皮肉めいた笑いを浮かべる。
 僕だって魔理沙と同レベルに思われたくはないので口をつぐむ事にした。

「ところで早苗は昔アイボってのは持ってたのか?」
 それは魔理沙が早苗君と一緒にライカにお手を仕込んでいた最中の質問だった。
「んー、子供がお小遣いで買うのは絶対に無理なお値段でしたしねえ。こういうのは大人が道楽で買う物なんですよ」
 確かに、一度中を覗いてみたが僕達には到底太刀打ちできない作りになっている事だけは理解できた。
 これを一台作るだけでも相当な苦労が有ることは容易に想像できる。
「それに今これを言うのもなんですけど、正直子犬にこの見た目ってのもどうなんでしょうね。子犬なのにロボットのシャープな見た目、なんかチグハグじゃないですか? やっぱりロボットならうちの非想天則みたいに重厚で格好良くあるべきなんですよ!」
 早苗君が鼻を鳴らして興奮の面持ちで語る。
「本人……本犬?を前にして言うのも気の毒ですけど、やっぱり可愛さなら本物の子犬が一番です。最も重要なもふもふ感が全然足りませんし! 昔これが持て囃されてたのってやっぱり物珍しさだったんですかねえ?」
 早苗君も菫子君と同じく外の世界を知っている人間だ。
 こういう時は僕達と違う物の見方を持っている貴重な存在ではあるのだが、彼女は彼女で何というか……変わり者の印象を受ける。
「昔は熱中していた物が時代と共に色褪せてしまう……なんとも悲しい話です。私が今スーパーファミコンのゲームをプレイしてもあの頃のように盛り上がれるのか……」
「あれ、ちょっと待て。スーパーファミコンってやつなら香霖堂にも流れ着いてたよな? それが昔って事はお前っていつ生まれ……」
 魔理沙の指摘に早苗君の身体がビクンと震える。手をバタバタと振り回して魔理沙の台詞を必死にかき消した。
「わー! わー! 今のは無しですっ! 私が子供の頃はゲームキューブが流行ってました! 私は今でもティーンなんです!」
「おそらくこの話は危険だ。即刻止めた方が良い。魔理沙も火傷しかねないぞ」
「お、おう。そうだな!」
 幻想少女は少女なのだ。それを揺るがせば幻想郷の崩壊に繋がる。
 僕達が慌てふためく様を、ライカは暢気に床を転げ回って眺めているのだった。


「えーと……そう、それにしても不思議ですよねえ。ロボットに本物の魂が転生してるって。ハガレンのアル君みたいな感じ?」
「それが誰かは知らないけど、憑依とは違うのは確かだね」
 今名前を挙げた人物も世代的に大丈夫なのかと軽く背筋が冷たくなる。
 まあ、わざわざ言うからには平気と信じて話を続けよう。
「憑依はその身体に仮住まいといった具合だけど、ライカはカタツムリと言えば分かりやすいかな。一度剥がしてしまえば二度と戻ることはないだろう」
「あー、私も昔やりましたよ。カタツムリを引っこ抜いたらナメクジになるのかなーって。結果は……ええ、ダメでしたけど」
 早苗君は軽く青ざめながら下を向いた。
「それを実行するお前に私はドン引きだよ……」
 魔理沙も同じく青い顔をするが、子供というのは時として無邪気に残酷な行為をするものだ。特に小動物はしばしば子供の好奇心の犠牲になる。
 魔理沙なんかは現役で動物実験もしているはずなのであまり他人の事を言えたものじゃない。
 しかし改めて考えてみると恐ろしい話でもある。自分が命を落としたと思った次には喋ることすら出来ない機械の身体になっているのだから。
「ライカからしてみれば、とりあえず捕食されたり餓死の心配は無いんだから幸せなのかもしれないよ」
「私は御免だな。朽ちない身体は魅力的だけど人の生き方を捨てる気は無いぜ。私は不老不死を目指すのが好きなんだ」
 魔理沙は魔理沙らしくて安心するが、元々人より寿命が長い僕は……今とあまり変わらない生活を送っていそうだ。機械の身体でも本は読めるだろうし。
 そんな僕達の思考などお構いなしにライカは鉄の尻尾を規則的に振り回していた。
 もはや生きる者の苦労など一切考えなくていい。空腹にも外敵にも悩まなくていい。この子はそれでいいのだ。

「えーと……話をちょっと戻しますけど、昔流行っていたものって今見ると何となく恥ずかしくなったりしないですか? この現象って何なんでしょう。名前とかってあるのかちょっと気になりません?」
 早苗君が言いたい事は分かる。探せばそういった事への論文もあるかもしれないが、生憎とここに気の効いた検索道具は置いていないのだった。
 菫子君のスマホもここでは電波が悪いらしくてネットが繋がらないとボヤいている。
「名前は知らないけれど、学説を探してるのだったら紅魔館にでも行ってみたらいいんじゃないか。あそこには大図書館があるし、館主も博識だ」
「あーやめとけ。あそこは今その図書館の主のパチュリーが死んだんで喪中だからな。その内生き返るだろうからそれまで行かない方がいい。きっとろくな事にならないぜ」
 むしろパチュリーとは何なのだろうか。僕は学説よりもそちらの方が気になって仕方がない。
「まあパチュリーは置いといて私が思うにはだ、本当は大して好きでもないのに流行に踊らされてた自分への恥ずかしさがあるんじゃないかと」
 ピッカーン。早苗君は頭に電球が浮かんだ時の擬音を自ら口にした。
「おおー、きっとそれです! 本当に好きだったら今でも好きなはずですもん」
「ただ、同じ阿呆なら踊らな損って言葉もあるからな。踊る奴と踊らない奴なら私は前者の方が好きだよ。興味があるなら何でもやってみるべきだ」
 僕から見ると魔理沙も流行には影響されないタイプの人間だ。里には馴染まず魔法使いを目指すくらいなのだから。
 魔理沙だったら、他の皆が盆踊りを踊っていても一人だけ阿波踊りを踊るかもしれない。
 僕はその方が魔理沙らしくて好ましいと思うが。

「お二人はどうですか? 昔は好きだったのになあっていうの、何かありますか?」
「昔……」
「昔か……」
 僕と魔理沙は同時に複雑な顔でお互いを見た。その様子に早苗君は目を星にして興味津々だ。
「お、なんですかなんですか! 意味深な空気出しちゃって、お二人の間で何かが!?」
「何も無いわぃ!」
 何も無いわけではないのだが、僕の昔と魔理沙の昔では大きな隔たりがあるのだと考えていた。
 僕からすれば魔理沙の昔も『つい最近』程度でしかない。それほどに半妖と人間の生きる時間の差は大きい。
「当然昔は好きだったというものはあるさ。でもね、流行というのは一種のコミュニケーションツールなんだよ。好き嫌いよりもその話を共有できる事の方が大事なのさ」
「はあ、そういうものですか」
「外では機械を使って見知らぬ相手とも気軽に会話ができるそうだけど、そんな物が無い時代はそうは行かない。コミュニティというのは自分の生活圏の周りにしか無いから話題を共有できる事も重要になってくるんだよ。考えてごらん、食べ物が店に行けば置いてあるような世界じゃ無い時代、狩猟や物々交換で日々の糧を得ていた中で孤立するという意味を。今の世の中である程度の人間が一人暮らしできるというのも実は相当に恵まれた社会である事の証左であって……」
 と、ここまで話した所で魔理沙が失礼にも会話を遮ってくるのだった。
「待て待て香霖。なんか脱線してる気がするから戻ってこい。今は……何だったっけ?」
「お二人の間の昔話ですよっ!」
「しまった、そこまで戻るのか!」
 それも違う気がする。大体とりとめの無い会話に戻る点などあるのだろうか。
「魔理沙さんって霖乃助さんとは小さい頃からお付き合いしてるんでしょ? せっかくですからその辺詳しく教えてくださいよー。ライカちゃんも聞きたいって言ってる気がしますよ、ねー?」
 ライカを胸に抱えた早苗君が目を爛々と輝かせて魔理沙に迫る。
 ライカも目は無いのにつぶらな瞳で見つめている、ような気がする。
 そして早苗君の聞き方もいろいろと間違っている気がする。
「……別に面白い話じゃないぞ。私が昔好きだったのは香霖の話を聞く事だったんだよ」
「ほう、ほう!」
 心なしか早苗君の頭の双葉が成長したような気がする。いや流石に気のせいか。
「私があれこれ聞くとさ、香霖は今みたいに有ること無いこと薀蓄をいろいろ語ってくれたんだ。私はそれを聞きながらまだ見ぬ世界を夢想したもんさ」
「いいですねえ、夢見る乙女じゃないですか!」
 早苗君が鼻息を荒くしてライカをぎゅっときつく抱き締める。
 息苦しくはないだろうが、圧力は何となく感じるのかなんとか脱しようとばたばた悶えていた。
「だから昔はって言っただろ。夢は覚めたんだよ。今になって聞くと香霖の話って結構な頓珍漢なのが分かってきてなぁ」
「失礼な。僕の話のどこにおかしな点があると言うのか」
「いくらでもあるわ! 指を何回も折り返して一つ一つ言ってやろうか?」
 全くこの娘は。昔はあんなにしがみついて話をせがんで来ていたのに本当に可愛げが無くなったものだ。
「まあまあ魔理沙さん。恥ずかしいエピソードの暴露は拷問に等しいですからここで使うのは止めましょうよ、ね? それより霖之助さんも何か昔の話を聞かせてください!」
 取って置かれるのも生きている心地がしないがそんな日が来ないように願うばかりだ。
 それに僕の過去話はあまり人に言いたく無い事も多い。半妖には半妖にしか分からない苦労がある。
 あくまで人間の彼女らに言える範疇の過去話となると、やはり霧雨家のお嬢さんの話で仕返しをするのが一番だ。
「魔理沙の事は生まれた頃から知っていたけど、本当に人形みたいに可愛らしくてね。それでいて好奇心も強い娘だったから、せがまれた日には聞かれていない事まで言いたくなったものだよ。マジックアイテムの使い方もレクチャーしたのは僕さ」
 特にミニ八卦炉は今でも彼女の切り札として活用して貰っている。過保護が過ぎると言われた事もあるがこれは僕にとっても誇りだ。
「……なのに最近は全然真面目に話を聞いてくれないし、僕もそろそろ話を一生懸命聞いてくれる新しい娘を探す時期かなあなんて思ったりもしているよ」

「ああ?」
 この言い方には流石の魔理沙も狙い通りにむっときたらしく、僕の眉間を真っ直ぐ睨み付けて猫のような威嚇姿勢を取る。
「何だよ、今だって真面目とは言わんが話自体は聞いてやってるじゃんか。私じゃダメだってのか!」
「さっきだって君は話を遮ったじゃないか。僕はそういう事をしない子がいい」
「だから頓珍漢な事を言うなって言ったのにさあ。お前は自分が言いたいから語ってるってだけで相手の顔を見てないんだよ! そんなんで商人としてやっていけると思ってるのか!」
「偉そうに言う前にまず君はお客として来店しろ。大体君がそんなだから僕だって……うぐふぉっ!?」
 ライカが激突した。
 いよいよといったところで今度はライカから物理的に話を遮られた。
 早苗君の懐から脱走した勢いでそのまま僕の腹に向かって体当たりしてきたのだ。
「あははは! ざまあみろ、私にあんな事言った天罰だ……ってあだっ! 私にも来んのかよ!」
 返す刀で次は魔理沙の脛に突進し出した。ダメージで言うとたぶんこちらの方がキツい。
「こ、これはもしや……!」
 何かを閃いた早苗君が勿体ぶった溜めを作り、叫ぶ。

「夫婦喧嘩は犬も食わない!」

 香霖堂が静まり返った。
 言いたい事を言われて満足したのか、ライカはお座りして僕に首を向ける。
「ほら~、お二人さんが喧嘩するからライカちゃんがご機嫌斜めになっちゃったじゃないですか。ちゃんと仲直りしてほしいよね~?」
「犬をダシにしないでストレートに言えよ!」
 魔理沙も斜に構えて吠えた。
 シニカルな感情をありありと浮かべ、早苗君はさらなる追い討ちをかけてくる。
「めんどくさいなあ。元はと言えば魔理沙さんが原因なんですから素直に謝りましょう? 抱き締めてごめんなさいのチューでもしたらどうなんですか」
「やらんわ! それにこういうのは男の方からするもんだろ!」
「うっわー! 魔理沙さんったら夢女子~! ですってよ、霖乃助さん。さあどうしますか!?」
 どうもこうも無いのだが……今の状態で僕が何をしても自分で作ったミニ八卦炉に焼かれる未来しか想像できない。
 こういう時は魔理沙が言ったように僕お得意の技を発動させるしかないだろう。

「……ライカを散歩させてきてくれないかい。家の中がめちゃくちゃになりそうだ」
 話を脱線させる、僕がいつも文句を言われるアレだ。
「むー? それはつまり……僕と魔理沙の二人っきりにさせてくれと言うことですか~!? いいでしょういいでしょう、おじゃま虫はそそくさと退散いたしますので! さーライカちゃん、お姉さんとお散歩に行きましょうね~」
 早苗君は壁にかけていたリードをむんずと掴んでライカの首に取り付ける。
 機械の身体で鈍るから運動したいと思うかは知りようもないが、とにかく紐が自分に付くイコール外に行けると学んでいたライカは狂喜乱舞して走り回りだした。
「それでは早苗、ライカのお散歩に行って参ります! あとは若い二人に任せますので、ごゆっくりどうぞ!」
 明らかに使い方の間違ったフレーズを遺し、早苗君はライカと飛び出していくのだった。

 足音が遠ざかるにつれ、静寂が香霖堂を包む。
「……私と二人きりになりたかったのか?」
 久方ぶりの静けさを取り戻した香霖堂の中で、魔理沙がおずおずと口を開いた。
「とりあえず、君か早苗君のどちらかが居なければ良かったかな。話がややこしくならずに済む」
「香霖らしいぜ」
 魔理沙は先程ぶつけられた脛をさすりながら呟いた。
「さっきの話だけど……別に私は嫌じゃないからな」
「さっきのって、どっちだい?」
「どっちって……あ!? ちちち違う! いや違わないけどそうじゃなくて!」
 わたわたと手を振り大慌てで訂正する。こうやって赤くなって恥ずかしがる所はまだ僕の腰ほどの背丈しか無かった頃の魔理沙と変わっていない。
「私は別に……お前の話を聞くのが嫌になったとか、そういうのじゃないからな。それだけだ」
「分かっているよ。そうだったらここに来ないだろうし」
「分かってんなら、いい。悪かったよ」
 気付けば魔理沙も難しい年頃だ。言いたい事が言えない時代は僕にだってある。その頃の昔話は決して語らないと思うが。
 ややあって、魔理沙は上目遣いに僕を見ながら口を開く。
「なあ……私が昔から好きだったもの、香霖なら知ってるよな。というか知らないとは言わせないぞ」
 この言い方はつまり、過去に僕に向けて言った事を示している。おそらく戯れ言と思って真剣には向き合わなかった、魔理沙の子供らしい願望の事だろう。
「……君が大人になってもまだそんな夢を見ているのなら、って答えたアレの話かな」
 魔理沙は小さく首を縦に振った。
「……正解だ。そんな事覚えてるなよ、まったく」
「だったら聞かなければいいだろう。僕だってどうでもいい話だったら忘れてるさ。ただでさえ僕の人生は長いのだし」
 なぜ覚えていたかというと、何かあった時に魔理沙をやり込める為の切り札というのが半分。
 残りの半分は、さて何だろうか。
「お前はどうなんだよ。今また言われたら昔みたいに同じ事を言うのか?」
「まだも何も、ついこの間の事じゃないか。僕がそんなすぐに意見をコロコロ変える男に見えるのか」
 魔理沙の顔に力が入る。その声は上ずりそうになるのを必死に抑えているようだった。
「こ、この間って……お前は時間の感覚が悠長すぎるよ。そんなんじゃ香霖が気付いた時には、私は大人どころかおばあちゃんになっちゃうぜ」
「いつまで経っても子供扱いされるなんて好都合じゃないかい。まあ僕も、君の顔がしわくちゃで寝たきりになるぐらい時が経ったら考えが変わるかもしれないよ」
 今の僕に言えるのはそれだけだ。ありきたりな言葉は僕らしくないし、普通の魔法使いにも似合わない。
 魔理沙は僕の言葉を噛みしめると、顔をふにゃりと歪めて微笑んだ。

「……馬鹿だな、香霖は」
「僕が馬鹿なら君は大馬鹿者だろうさ。自分で言うのもなんだけど、僕だったら絶対に僕みたいな相手は選ばないよ」
 昔は好きだったからと言って今でも好きである必要は全く無い。
 それでも魔理沙が馬鹿な夢を貫くならば、僕など好きに持っていけばいい。

「なあ、香霖。さっきはああ言ったけど、やっぱりしてやろうか。その、ごめんなさいの、あの……」

「……お好きにどうぞ」
 魔理沙は立派な魔女だ。僕がこんな想いをするのもきっと彼女の呪いなのだろう。
 頬を赤らめて目を逸らし、しどろもどろになる彼女を見て、僕はその考えに確信を持つのだった。
 出会った時から僕はきっと、この娘の魔性に魅了されていたに違いない。



 その後、残念な事に魔理沙の一大決心は、散歩に行ったと見せかけて窓からずっと覗いていた早苗君に気付いたせいで断念せざるを得なかった。
 興奮を抑えきれなくなったと彼女は証言しているが、頭の双葉がまるでハートマークのように巨大化しているのを見てしまった魔理沙は怒る気も失せたという。
魔理霖衝動が抑えきれなくなったので書きました。
ちなみにですが、引っ越してきた2007年に17歳だと仮定すると早苗さんはスーファミと同い年になります。
石転
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.100簡易評価
1.100Actadust削除
甘酸っぱくて好きです!
2.90奇声を発する程度の能力削除
とても良かったです
3.100名前が無い程度の能力削除
早苗さん双葉自重しよう
4.90名前が無い程度の能力削除
いいなぁいいなぁ、ごちそうさまでした
5.100ヘンプ削除
恥ずかしそうな魔理沙が可愛かったです。
早苗さんが滅茶苦茶ニヤニヤしているのが見える……
6.90名前が無い程度の能力削除
あまあまでよかったです
7.100サク_ウマ削除
ラブコメでした
8.90平田削除
良き甘さでした。

ライカさんがもう少し活躍すると良かったと思います。
9.100モブ削除
あまあい!なんかこう……甘かったです。ご馳走様でした