Coolier - 新生・東方創想話

小ちゃんとシロちゃんとフランちゃん

2019/11/14 20:31:24
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「しょうちゃーん! リリーだよー!」

 ここは多くの妖精たちが住んでいる森の奥。
 小さいながらもしっかりとした造りのおウチの前です。
 大きな声で玄関に呼びかけたのは白い三角帽子とドレスの春告精、リリーホワイトです。

「いらっしゃい」

 ドアを開け迎えたのは髪の長い、落ち着いた感じの妖精です。
 彼女は中(なか)ちゃんと呼ばれている大妖精三姉妹の真ん中さんです。
 大妖精、通称大ちゃんには妹が二人いるんですね。次女の中ちゃんと末の妹の――

「しょおー シロちゃんが来たわよー」

「はーーい」

 中からパタパタ出てきたのが小ちゃん、小妖精です。
 短めのボブカット、クリクリしたお目目。
 誰もが認める元気いっぱいな良い子です。 

「おまたせ、シロちゃーん」

 ホワイトだからシロちゃん。まんまですね。

「じゃ、いこっか~」

「うん! いこう、いこう」

「ちょっと待ちなさい、忘れ物よ」

 中姉さんが大きめのバスケットを妹に渡しました。

「あ、いっけなーいっ」

 実にあっけらかんとしたものです。 

「もう……ちゃんとご挨拶をして、お行儀良くするのよ?」

「もちろんっ」

 気持ちの良い答えが返ってくるのですが、お姉さんはちょっと心配です。自分や姉が一緒に行けないので心がザワザワしちゃいます。
 なにせこの二人が向かう先はあそこなのですから。

「暗くなる前に帰ってきなさいね」

「はーーい!」×2

 ―――†―――†―――†――― 

 ふよふよ ふわふわ

 小妖精と春告精はゆっくりと飛んでいます。
 得意な季節(春)であれば亜音速でカッ飛べ、それ以外でもジェットヘリぐらい余裕のリリーホワイトですが、親友の小ちゃんに合わせてあげているのです。
 
「フランちゃんちに行くの初めてなんだー」

「とても大きなお屋敷なのですよ~」

「シロちゃんは行ったことあるの?」

「ふふ、ま~そうですね~」

 湖を越えたところで大きな洋風の屋敷が見えました。

「あ、あれだー」

「そうですね~」

 二人が目指しているのは紅魔館。
 幻想郷でそれなりの知識を持っている者ならうかつに近寄ることはしない魔境の中の魔境ですね。

「まずは門番さんにご挨拶ですよ~」

 紅魔館の門番はご存知ボリウムバンバンボデーの紅美鈴さん。

「こんにちわー」×2

「はーい、いらっしゃいませ。ようこそ紅魔館へ、リリーさんと……えーと?」

「しょうでーす!」

「あー、そうでした、大妖精さんの妹さんですね?」

「いえす、あいあむ!」

「元気ですねー、それではご案内しましょうね。私についてきてください」

「はーーい」×2

 トテトテとついて行く二人、結構歩きました。
 ようやく大きな扉の前につきます。玄関でしょうか。
 美鈴がパチっと指を鳴らすと、ぐごごごっと扉が開きました。
 中には大勢のメイド妖精さんが並んでいます。

「いらっしゃいませ」×たくさん

 メイド妖精さんたちが一斉にお辞儀をしました。

「う、うわわわっ!」

 これにはさすがにビックリ! の二妖精。

 真ん中あたりからスタイル抜群のスーパー美人メイドさんが歩いてきます。

「ようこそいらせられました。私は当館のメイド長、十六夜咲夜でございます」

「ふわわ……ほわわ」

「しょうちゃん、しっかりして~」

「う、うん」

 小はリリーに背中をさすられ、なんとか気を取り直しましたが、いまだにふわふわどきどきが収まりません。
 だって、スゴい美人さんなんですもん。

「フランドール様がお待ちかねでございます。ここからは私がご案内させていただきます」

 そう言って軽いお辞儀。すると美鈴も軽く頭を下げました。案内役が引き継がれたことの確認でしょうか? 
 身分の高い方々のところでは色々と手続きが大変なのですね。

 メイド長さんについて二人はポテポテと廊下を歩きます。

「わぁー 広いおウチだねー」

「これくらい広いと〝おやしき〟ですね~」

「おそーじがたいへんそうだね」

 二人がお気楽な話をしていると奥の扉が開き、薄紅色のドレスをまとった女の人が出てきました。

「ん? だ、誰?」

 小妖精が思わず声をあげてしまいます。

「あら、かわいいお客様ね。私はレミリア・スカーレット。この館の当主よ」

 その人はとっても素敵な笑顔で応えてくれました。

「フランちゃんのお姉ちゃん?」

「そうよ。 フフフフ」

 目を丸くする小妖精。今日は美人さん、それも超がつく美人さんに次々と会ってビックリしっぱなしです。

【結晶化した純粋な闇の魔素を神域の技術で形成し、奇跡の調色が施された驚異の芸術作品。その名はレミリア・スカーレット】 ……簡単に言いますと皆が憧れる綺麗なお姉さん、てことです。

「お嬢様、こちらは小妖精様とリリーホワイト様。フランドール様のお招きでご来館いただきました」

 メイド長さんの説明に合点がいったご当主様は、

「そうだったわね。二人とも、フランとたくさん遊んであげてね」

 そう言って太陽のように眩しい笑顔(吸血鬼に対して変な表現ですねw)を見せてくれました。

「き……きれー、スゴいきれーー!」

 別にキレかかっているわけではありません。念のため。

「フフフ 正直なコね。気に入ったわ」

「あ、そうだ! コレ、おみやげです!」

 大姉(だいねえ)が作ってくれたクッキーがいっぱい入ったバスケットを差し出しました。

「あら、ありがとう。……咲夜」

「はい、お嬢様。小妖精様、それは私が預かります。後ほどお茶と一緒に持って参りましょう」

「はい! お願いします! 大ねえのクッキーはとても美味しいんです。……あの、あの、お姉さんも食べてみてください!」

 小妖精は勇気を出してレミリアさんにクッキーをすすめました。だって大姉のクッキーは世界一美味しいと信じているからです。

「わかったわ。後で私もいただくわね。 フフフ」

 そして再び最強の笑顔。

「ふわわわ~」

「ステキです~」

「お二人とも、フランドール様がお待ちかねですよ」

 メイド長に促されてようやく正気に戻った二妖精。

「そうだ、フランちゃんが待ってるんだ」

「そうですね~ 行きましょ~」

「お姉さん、またねーー!」

 レミリアお嬢様に手をブンブン振りながら歩き出しました。フランドールのお部屋はもう少し先なのです。
 レミリアさんは軽く手を上げてお別れです。

 歩きながら二妖精は今の衝撃的な出会いを語っています。 

「ねえシロちゃん、スゴいキレイなお姉さんだね!」

「そうですね~ それにとても優しそうですぅ~」

 二人は小声で話しているつもりですが、レミリア・スカーレットはデビルイヤーなので全部聞こえています。
 鼻がぷくぷく拡がって、口元がぐにょぐにょ歪んでいます。嬉しさを隠せないようです。

「お嬢様。そのお顔、いただけません」

「さ、咲夜! いきなり何よ!」

 二妖精を先導していたはずのメイド長がいきなり自分の耳元で囁いたのですから、それは驚きますよね。時を操って一瞬だけ戻ってきたようです。

「お嬢様がだらしなく気を抜いていらっしゃる気配を察しましたので忠言に参っただけです」

「き、気を抜いてなんかないわよ! 私に構っていないで仕事をしない!」

「でしたら結構です。私はお二人のご案内に戻ります」

 皆が憧れる綺麗なお姉さんもメイド長にはかなわないようですね。

 ―――†―――†―――†――― 

「待ってたよー!」

 フランドール・スカーレットが二妖精を自室に迎え入れました。

「あそびに来たよー(~)」

 感極まって二人に抱きつく悪魔の妹様。
 最凶最悪の力を持つ故に半ば封じられていたのですが、色々あって今ではハッチャケ・オープンなのです。

 ホントの年齢はともかく、身ごろが近い(というか精神年齢が近い)小妖精たちと交流を持つようになり、すっかり明るくなって現在フランちゃんは絶好調のようです。

「あのヌイグルミ、可愛いね! あっ これも!」

「この箱、オルゴールですか~ 良いですね~」

「でしょっ でしょっ! お姉さまが選んでくれたの!」

「フランちゃんのお姉さん、スッッッゴく! きれいでステキだったよー!」

「なんだか困ってしまうほどカッコよかったです~」

「でしょっ でしょっ! お姉さまはサイコーなんだよ!」

 ハイテンションな三人組は初っ端からクライマックスです。

 ―――†―――†―――†――― 

 ボリボリッ ンククッ

「このクッキー、美味しいわね」

「お嬢様、はしたのうございますよ」

 紅魔館の厨房。お嬢様のつまみ食いに眉をひそめるメイド長。

「ふん、貴方も食べたのでしょ?」

「はい」

「んー、咲夜のクッキーも美味しいけど、これも良いわね。何が違うのかしら?」

「おそらく森の幸、ナッツや果物やハーブの類が加えられているのでしょうが、見当がつきません」

「咲夜でも? それなら妖精固有の力かしら?」

「そう言ったモノもあるかも知れませんね」

「この美味しさ、案外〝愛情〟だったりして」

「……それは私の料理には愛情が足りないと言うことでしょうか?」

 おっと、メイド長の温度が急激に下がりましたぁ!

「じょ、冗談よ、咲夜笑って、笑って咲夜、ね?」

「フランドール様たちへお茶を持って行きますので、私はこれにて失礼いたします」

「さくやー! 笑ってよぉ! しゃくやぁー!」

 こちらは放っておきましょう。

 ―――†―――†―――†――― 

「失礼いたします。お茶とお菓子を持って参りました」

「ありがとう。おいしーお茶をいれて上げてね」

「かしこまりました」

 メイド長は流れるような所作でお茶の支度を始めました。

「フランちゃん、今日はなにお話しする?」

「女の子が集まったんだもん、もちろん恋バナよ!」

「コイバナ?」×2

「そうよ、恋バナって言うのはねー」

「うんうん」×2

 二妖精はなんだか分からないけど面白そうなので真剣に聞く態勢です。 幼いフランドールが恋バナなどと言いだしたのでメイド長も支度をしながらも聞き耳を立てています。


「湖の人魚さんがお昼寝していたら尾ヒレをかじられちゃったんですって」

「それで?」

「その相手がおヒゲを生やした、でっかーいお魚だったの!」

「ぎゃー、こわーい!」

(それは鯉でございます。フランドール様)

 メイド長が無音でツッコミました。


「闇妖精がね」(闇妖怪です:作者註)

「ルーミアちゃんのことかな?」

「多分、そうですね~」

「美鈴のオヤツを食べちゃったんだ。美鈴がちょっと注意したら『うっかりまちがえたー』て言ってたんだけど、あれは絶対わざとだよ」

「ルーミアちゃんならやりそうだね」

「そうですね~」

(それは故意でございます。フランドール様)


「これは私の恋バナなんだけどね」

「フランちゃんのコイバナかー」

「このあいだ、自分でお茶をいれてみたら渋くておいしくなかったの」

(それは濃いのでございます。フランドール様)


 支度の終わったメイド長はお辞儀をして部屋を出ましたが、そこには当主、レミリアお嬢様が立っていました。

「咲夜どうだった? フランは? 仲良くしていた?」

「お嬢様、落ち着いてくださいませ。どうしてこちらに?」

「い、いえ別に……ちょっと気になっただけよ。で、どうだったの?」

「ご心配には及びません。とても楽しそうでしたよ。ただ……」

「ただ?」

「フランドール様は独特のユーモアセンスをお持ちのようです」

「は?」

 ―――†―――†―――†――― 

 三人の少女はそれからお茶を飲んでお菓子を食べて、ボードゲームをして、ヌイグルミでおままごとをして、と楽しく過ごしました。


「お嬢様」

「な、なによっ」

「ここはフランドール様のお部屋の前ですが」

「そんなこと知っているわよ!」

「ウロウロそわそわとなさって、何かご用でしょうか?」

「何もないわ。私が私の屋敷のどこに居ようと勝手でしょっ」

 お嬢様の行動を見て考え込むメイド長さん。

「……よもや皆様と一緒に遊びたいとか」

「ひぁ!」

 雷に打たれたかのようにビクッとするお嬢様。

「そ、そんなわけあるわけないでしょうが! 私はもうレディなのよ!」

「申し訳ございません、失言をお許しください」

「ふ、ふんだ!」

 はしたなくドスドスと足を鳴らしながらお仕事部屋へ入っていきました。

 ―――†―――†―――†――― 

 お仕事部屋で難しいお顔をしているお嬢様。
 その理由は割と簡単です。
『キレイでステキなお姉さん、サイコーのお姉さま』と慕ってくれるあの輪の中に入ってチヤホヤされたいのですが、うまい口実が見つからないのです。

 うんうんと頭をひねっていると、やがてお嬢様の頭上にLEDライトがパカッと灯りました。

「あ、そうだわ! 簡単なことだわ!」

 手元の呼び鈴をチリリ~ンと鳴らしました。

「お呼びでしょうか」

「咲夜、これから言うことを三人に伝えてきなさい。それは――」

 ―――†―――†―――†――― 

「ほえ?」

 メイド長さんのお話にキョトンとしてしまった小妖精とリリー。

「それってお姉さまがおっしゃったの?」

 フランちゃんは確認したいようです。

「はい。お嬢様は皆様を夕食にお誘いでございます」

「ゆーしょく……えっ? もうそんな時間なの?」

 慌てる小妖精。

「暗くなる前に帰らなきゃですよ~、お姉ちゃんが心配しますぅ~」

(お嬢様、残念ながら今回は失敗でございますね。……後で慰めて差し上げましょう)

 ―――†―――†―――†――― 

「おじゃましましたー(~)」

 二妖精のお帰りに門の前まで大勢でお見送りです。
 吸血鬼姉妹はもちろん、メイド長さん、門番さん、そしてたくさんのメイド妖精たち。
 
「また来てねー」

「もちろー(~)ん!」

「あ」

 フランちゃんが何か思いついたようです。

「ねえ、次はお泊り会をやろうよ」

「おとまりかい?」

「私の部屋にみんなで泊まるの。 お姉さま、良いでしょ?」

「ええ、よろしくてよ」

 当主様のお許しも出たようです。

「やったぁ」

「お泊りならパジャマパーティーですね~」

「ぱじゃま?」

「フランドール様、パジャマとは上着とズボンに別れた寝間着のことでございます」

 吸血鬼姉妹はネグリジェ派なのです(極秘情報)。

「私、かわいいパジャマ持ってる。大姉が作ってくれたの」

「わたしもかわいいの持ってる~」

「えー、私は持ってないよ」

 がっかりのフランちゃん・・・

「私がパジャマをお作りいたします」

 すかさずメイド長のひとこと。

「えと、あの・・・」

 レミリアお嬢様が何か言いたそうにしています。でも小声なので誰も気が付きません、残念!

「それならお姉さまとお揃いのパジャマが良いわ。ね、お姉さま?」

「そ、そうね、それが良いわね」

(さすが我が妹! 愛してるわ!)

「咲夜、頼んだわよ」

「かしこまりました」

「お泊まりならディナーも一緒だし、夜遅くまで遊べるよ!」

「うわー、楽しそう!」

「楽しみです~」

(ディナーの前に図書館を見せても良いかも。デザートは凝ったモノを用意してビックリさせようかしら? 食事の後はダーツで盛り上げて、えーとお風呂はどうしよう? まさか私も一緒とはいかないけど、どうしてもと言われたらどうしようかしら? 月が綺麗に見えるテラスをグラスハウスに改築して皆でたくさんのクッションに埋もれながら話をするのもアリね!)

 次はお泊まり会のようです。皆楽しみにしていますが、一番楽しみにしているのは、さて……誰でしょう?

 ―― おしまい ――

次回「うっふ、きゃはは、楽しい紅魔館。幼女たちのお泊り会(入浴シーンもあるよ)の巻」につづく


(つづきません! 作者註)
 大妖精三姉妹については東方三月精(VFS)最終話に出てきた二妖精を勝手に大妖精の妹にしました。
11月17日みやこめっせ『文々。新聞友の会』で頒布する絵本の文章部分となります。
サークル名:Team東方不敗
配置:追加09
でお待ちしております。
Team東方不敗
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コメント



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1.100ヘンプ削除
妖精とフランドール、レミリアがとても可愛かったです。
この雰囲気いいですね。
2.90奇声を発する程度の能力削除
雰囲気が良かったです
3.80大豆まめ削除
可愛いの過剰摂取。
この空間、絶対いい匂いがする。した。
4.100終身削除
大妖精に中妖精と小妖精の妹が居るっていう発想好きです みんななんだかユーモアが独特でノリが良くてにやにやしました 次に会うときにはレミリアもこの素敵空間にぜひ混ざってほしい