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香霖堂と○○○(外來韋編2019秋 香霖堂第八話ネタバレ注意!)

2019/10/28 16:51:07
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 香霖堂の新たな住民として改めて迎え入れられたライカは、元気に店内を走り回ったり、道具に乗っかったりしている。
 外見がロボットである事以外、普通の子犬と何ら変わらない動きを繰り広げていた。
 ……いや、もう一点、異なる点がある。

「動き自体は可愛いけどさ、やっぱ声が無いとちょっと不気味よね」

 椅子に座り、頬杖を突きながら、菫子はそう言った。

「僕も困っているんだよ。鳴る音といえば、動作音ぐらいだから、どこに居るのかも分かりづらい。もし勝手に変な隙間に入られては、最悪気づかずそのままになってしまう可能性が……」
「だったら、霖之助さんが店内を綺麗に整理整頓すればいいじゃない」

 頭を抱える霖之助に対し、霊夢が冷静なツッコミを入れる。

「いや、これは確かに一見すると無造作に置かれているように見えるが、或る一定の規則や法則に則っていて――」
「マリサッチが似たような事を言ってたけど、やっぱり霖之助さんが元ネタだったのねー」

 回りくどい言い訳を展開する霖之助を見ながら、菫子は苦笑した。

「こんなに元気なのに、声は出せないって事は、元となっている機械の体が原因って事なんじゃない?」

 霊夢は霖之助の長台詞を無視し、店内で暴れ回るライカを捕まえ、その場でしゃがみつつ頭を撫でながらそう言った。ライカは暫く彼女の胸の中で暴れていたが、やがて観念したのか、静かになり、彼女のされるがままとなっている。

「では、それを修理しないと。うぅん、機械なら河童か、外の情報にアクセスできる菫子君に頼むか……」

 急に頼られた菫子は、肩を落としながら答えた。

「私-? 一応理系だけど、機械工学は正直自信ないわ。技術の時間で半田付けした程度だし」
「なら河童か」
「あいつらはだめ! 何するか分かったもんじゃ無いし!」

 霊夢はライカをぎゅうと抱きしめながら、そう反論する。彼女の河童に対する当たりの強さは、どこから来ているのだろうか。霖之助は改めて気になったが、今はそれどころでは無いと流す。

「それだと、どうにもならないじゃ無いか。困ったなぁ」
「そもそもさ、修理するって事は、この子のお腹を切り開くって事なんだよ? 人間で言うなら、麻酔無しの手術をするようなものよ? いいの?」
「ぐ、そう表現されると途端に残酷な気がしてき……いや、そもそも菫子君だってライカの蓋を開けてバッテリーとやらを外したじゃ無いか」
「あれは、だってそういう仕組みなんだし、あの時は普通のロボットが暴れている物だと思ってたし……」

 語尾が小さくなり、終いには口籠もってしまった。
 相手が人間であれ道具であれ、思い入れが強まってしまうと、接し方は変わってしまう。それは、菫子も例外では無かった。
 結局良い案が思い浮かぶことは無く、三人ともうんうんと唸り、頭を捻っていた。
 暫くすると、菫子があっと呟きながら立ち上がった。

「霖之助さん、何か紐みたいな物はある?」
「今手元にある物だと…サテンリボンなら」
「それでいいわ。ちょっと持ってきてくれる?」
「あ、ああ」

 いきなりどうしたのかと困惑しながらも、霖之助は指示に従うため、席を離れる。
 菫子は彼の様子を横目で見つつ、手持ちのバッグから何かを引っ張り出していた。

「んっと……。あったあった」

 彼女が目的の物を探し当てると同時に、霖之助が戻ってくる。手には、真っ赤なリボン用の紐が握りしめられていた。
 菫子はそれをひったくると、霊夢によって抱きかかえられているライカの前にしゃがみ、何やら作業を始めた。

「これを、こうして、っと……。よし、完成!」

 彼女は徐に立ち上がり、大げさに手を広げてみせた。

「あ、なるほどね……」
「うーん、機械の体という事実に縛られすぎていたな」

 霊夢が感嘆の声を漏らし、霖之助がライカにつけられたそれに触れる。
 彼の首には、首輪のようなリボンが巻かれ、その中心には鈴が付けられていた。鈴は、恐らく菫子の私物だろう。

「犬と言えば、首輪だったね」

 ライカは霊夢の傍を離れると、先ほどと同じように動き回りだした。最初こそ首元のリボンが気になって、前足ではずそうとしていたものの、自分が大げさに動くと鈴が鳴るという事実を学習し、以降は気にせず、むしろわざと鳴らしているかのように、より一層元気に動いていた。

「そういえば、あの子ってオスなの? メスなの? リボン付けちゃったけど」

 元気そうなライカの様子を見ながら、菫子は今更な事実を霖之助に問いかけた。

「うーん、僕にもそれは分からない。まあ、それはどちらでもいいじゃないか。機械の体なのだし。いずれ分かることに越したことは無いが、今は無性という事にしておいた方が良いだろう。支障はなさそうだし」

 それもそうか。と菫子は納得する。

「……にしても、あの様子を見ていると、誰かを思い出すのよね……」

 唐突に霊夢がうめき出す。霖之助は少し逡巡してから、その誰かを察した。

「ああ、彼女か。貸本屋の……」
「うーん、言われてみると、確かにあの子っぽい……」

 菫子も小さく頷き、肯定した。
 ……香霖堂に、小さいが元気いっぱいな鈴の音が鳴り響く。手に入れたそれを、自らの声だと主張するかのように。
 その無邪気な様が、おてんばでトラブルメーカーな本居小鈴と被って見えた三人は、思わず苦笑いを浮かべてしまった。
意外な展開に驚いていたら、掌編がいつくか思い浮かんだので、思わずがっと書いていました。
ちなみにタイトルは、香霖堂とライカです。シンプルだね(思いつかなかっただけ)。
原稿はこれからがんばります(香霖堂の展開によって手直しする必要が出てきた)。
そっちが終わったら、まだプロット段階の「香霖堂とライカ そのn」を書きたいですね……。原稿が終わると原稿が始まる。

話は変わりますが、11/17に京都みやこメッセにて開催されます科学世紀のカフェテラスにサークル参加します。
秘04です。初めての誕生日席でドキドキしています。新刊はまだ告知していませんが、あります(多分)ので是非お立ち寄りください。
東風谷アオイ
http://gensokyo.town/@A_kotiya
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コメント



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1.100サク_ウマ削除
ふ、筆が早い!
シンプルにまとまっていて良いですね。お見事でした。
2.90奇声を発する程度の能力削除
シンプルで良かったです
6.90名前が無い程度の能力削除
短くまとまっていてきれいな作品でした
7.90封筒おとした削除
読みやすくてgoodでした
8.100ヘンプ削除
鈴を鳴らすライカがかわいいですね。
綺麗にまとまっていて素敵でした。
9.100名前が無い程度の能力削除
香霖堂原作の自然な延長のような雰囲気に惹かれました。

良かったです。