Coolier - 新生・東方創想話

機械仕掛けの幻想郷

2019/10/26 17:54:06
最終更新
サイズ
4.21KB
ページ数
2
閲覧数
2356
評価数
9/15
POINT
1130
Rate
14.44

分類タグ

表.
にとりが家の外で自転車にオイルを注していると、遠くの方に黒い影が見えた。カラスかなにかだと思っていて眺めていると、それはぐんぐんとこちらに近づいているようだった。そしてその姿は段々と明瞭になってくる。

「あ、魔理沙」

魔理沙は綺麗に着地すると箒をポンと足で蹴り上げて手で上手に空中に浮いたそれをキャッチする。珍しいこともあるものだ。魔理沙が私の家を訪ねるだなんて明日は雪でも降るのだろうか。どうせろくでもないお願いに違いないぞ。にとりは警戒を強めた。一方魔理沙は目の前の相手がそんなことを考えているとは露ほども知らず、にっこり笑って挨拶する。

「よう、にとり。調子はどうだ?」
「珍しいね、魔理沙から私のところに尋ねてくるなんて。どうせ何かの頼み事だろう」
「よく分かったな。それよりも何してんだ」

魔理沙は見慣れない機械を見つめている。

「ああ、これね。この前散歩してたら拾ったんだよ」
「どこ歩いたらそんなもの拾うんだよ……」
「それよりも、私に話があるんだろう」
「そうそう、立ち話もなんだから家に入れてくれよ」

にとりは自分の家の中の様子を頭で思い浮かべる、あちらこちらにまき散らされたの配線の山、修理しかけの機械数点、とても人を呼べるような環境ではない。

「いや、その、今家の中散らかっててさ……」
「大丈夫だよ。私の家も今酷い有様だし、散らかっているのは慣れてるから」
「でも……」
「いいから、いいから」

魔理沙はにとりの背中を押すようにして半ば強引に家の中に入っていった。



 にとりは息を飲んで、手元のスイッチを押し込んだ。奥の固い鉄の扉が、金属的な音を立ててゆっくりと上昇していく。その中から金髪の少女が立ち上がったと思うと少し覚束ない足取りでにとりの方に向かって歩き出す。にとりと机を挟んだところで金髪の少女は歩くのをやめる。

「魔理沙、調子はどう?」
「ああ、ばっちりだぜ」

にとりはほっと胸をなでおろした。

「じゃあ、これ何本に見える?」

にとりはチョキの形を左手でつくる。

「二本だな」

にとりはそれから順番に質問をしていった。少女は淀みなくそれに答えていく。一連の動作は、初めは少しぎこちなかったが今は流れる水のようであった。やった、やはり私はすごいぞ。後、どうしても気になるのは……。

「魔理沙、問題を出すからよく聞いて」
「おう、任せてくれ」
「全知全能の神がいたとして、その神が誰にも持ち上げられない石を作るんだ」
「ほお」
「じゃあ、神さま自身はその石を持ち上げられると思う?」

 金髪の少女の動きが急に止まる。口を何度かパクつかせる。

「11000001011111 11000001011001 11000001010001 11000001100110」

ああ、やはり失敗だ。だから言ったじゃないか魔理沙。いくら寿命を延ばそうと思っても、サイボーグ化なんてするもんじゃないと。脳のメカニズムなんて複雑すぎるんだよ。

 にとりはその場で狂ったようにスピードを上げて高速で回っている金髪の少女の頭をじっと見つめていた。何故か自転車の車輪が思い浮かんだ。

コメントは最後のページに表示されます。