Coolier - 新生・東方創想話

休日

2019/09/28 00:10:40
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 例えば。ベルトコンベアの上を流れてくるパンを梱包し続ける仕事があったとする。私の仕事は、言うなればそれだった。
「いいよな射命丸はさ。自分のやりたいことをやりたいようにやれて。私なんて山の神様の興味の奴隷だよ。ほんと、天狗に生まれりゃよかったのに」
「そんな、河童さん達だってなんだかんだ楽しそうにやってるじゃないですか。文さんにしたって、あれで色々大変だって聞きましたよ」
 しかし今日は休みだったので、友人の犬走椛を家に招いて談笑している。特に目的が無くても喜んで誘いに乗ってくれる椛は私にとって唯一の気のおけない友人だった。
「確かにあいつが山の上層部との折り合いで大変だってのは知ってるよ。でも、結局それって、自分の好きなようにやった結果だろう? 因果応報って言うのさ、そういうの」
「それは、そうですけど」
 私たちは縁側に座って、川を眺めていた。緩やかな水の流れは不愉快なほどに和やかだし、見上げれば長閑すぎる青空が広がっていた。
 椛はいつもそうだ。どんな話だったとしても、最終的には誰かの意見に流されて、少し不服そうに頷く。少し不服そうにするぐらいなら、無理に頷くことないのに。
 私は流されやすい奴も嫌いだし、隠れて人の陰口を言う奴も嫌いだ。でも、椛のことは好きだから、椛の優柔不断な温和さを責めることはしない。でもやっぱり、友達なんだから。気を使って言葉を飲み込まれると、私も多少気を使ってしまうけど。
「椛さ、いいよ。気を使って合わせてくれなくても。椛は人のことそんな風に悪く見られない奴だってのは分かってるからさ」
「そんな、別に合わせたってわけじゃあ……」
 椛が言うと、私たちの間に沈黙が訪れた。瞬間、緩い風が吹いた。風に撫でられた川面はそよいで、映す空を慎ましく揺らし、川を囲む木々がさわさわと鳴いた。そしてまた、しばらくすると、静寂が訪れる。それから一間置いて、椛が徐に口を開いた。
「……でも私、思うんです。文さんも好き勝手やりながらも、なんやかんやで頑張ってて。にとりさんも、好きな事ばっかりはできないけど、それでも頑張ってる。それは、私だってそうだし、みんなだって、そうなんじゃないかと思うんです」
「……そっか」
 また一つ、緩い風が吹いたから、私の心も凪いでいた。明日からまた処世に立ち向かわなければいけないけど、なんだか不思議と、やれそうな気がした。
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コメント



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3.60ばかのひ削除
卑屈なかっぱがよかったです