Coolier - 新生・東方創想話

噂の眞相

2019/05/04 01:59:49
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 とあるウワサの真相を知りたくはないか?
 いや何、大したことではない。ほんの少し奇妙な事件に関わったので、こうして文字に起こしてみたくなっただけだ。
 正確には僕はこの物語には直接は関与していないのだがね。つまりは見物人、ただの野次馬でしかない。
 一つ断りを入れる、この文章には僕自身の偏見や推論がちょくちょく混じる。嘘偽りは一切書くつもりはないが、誤った解釈をしているかもしれないことは念頭においてほしい。これから見せるのは僕が知る限りの真実だ。


 幻想郷の中心に位置する香霖堂、僕はそこで歴史を記していた。
 徒然なるままに今日を綴る最中カランコロンと入口の扉が開いた。
「よぉ香霖。暇をつぶせる仰天ニュースを持ってきたぜ」
 彼女は霧雨魔理沙。普通の魔法使いを自称する少女だ。里の名家、霧雨商店の一人娘なのだがいろいろあって今は勘当されている。ちなみに香霖とは彼女がつけた仇名だ。その香霖はすこぶる迷惑そうな顔をして答えた。
「生憎暇ではないよ。店は通常営業だ。客じゃないなら帰ってくれないか」
「そう言うなよー……ほんとに大事件なんだよ」
 声のトーンが一つ下がった。どうやら重要なことらしい。だが彼女は誇張して話す癖があるから話半分にと僕は耳を傾けることにした。
「質屋の旦那がおっちんじまったらしいんだ」
「そうなのかい」
 里の情勢には疎い僕だが、確か質屋の店主には息子がいて1年前に跡を継いだことをぼんやりと覚えている。そうだ、悪徳質屋とか言われていて評判がよろしくなかったあの店だ。店主が隠居して若旦那が店を継いでから随分ましになったと聞いていたが。
「記憶では大分歳だったと思うが」
「いや、どうも老衰ってわけじゃないようなんだ。詳しくは知らないけど、流血沙汰だったらしい」
 なるほど、殺人事件の線もあるわけか。平和な人里にとっては一大事だ。
「犯人は?」
「不明、ついで言うと他殺かどうかも定かじゃない。今は慧音とかが動いてるぜ」
 慧音とは寺子屋を営んでいる半獣である。満月の夜にはハクタクになり歴史を編纂するのだとか。半分妖怪である彼女だが、里の守護者と呼ばれているほど住民に信頼されている。
「里じゃその話題で持ち切りだよ。理由はなんだとか、犯人が誰だとか、そんな噂で大盛り上がり」
「魔理沙はその噂には参加しないのかい」
 彼女はこういう事件にすぐ首を突っ込んでしまう性分である。だからこそ今まで数多の異変にいち早く気づき、幾度となく解決に導いてこれたのだ。
「いや、私はちょっとな……あの質屋、親父の知り合いだし」
 てっきり虫眼鏡でも持って探偵ごっこに興じるものかと思っていたが、なるほどそういうわけか。色々嗅ぎまわっている最中にばったり出くわす可能性は高いだろう。
「まあ、君が動かずとも時間が解決するだろう、それに僕にはあまり関係のない話だ」
「まあなぁ。でもなんか気になるんだよなぁ」
「気になるのはわかるが里内のいざこざは里内で解決するものさ」
 魔理沙が言わんとすることもわからなくはない、ちょっとでも気になってしまうともやもやがずっと頭の中に残るものである。


 魔理沙が帰って数時間後、執筆作業を終えた僕は人里へと下りることにした。単純に好奇心に駆られたのだ。自分でも珍しいと思う。
 探偵をするつもりはない。そう言うのは専門家に任せておけば良いのだ。里の守護者でも、自警団でも、外部なら巫女でもいいだろう。僕はただ見て、考えて、推理して、あとはちょっと文字に起してそれで終わる。ただの自己満足に過ぎない。
 香霖堂を出て里への道を数刻歩き、夕方には着いた。
 里の空気は思った以上にこわばっていた。人の身にあらぬ僕の姿を好奇の目で見る者もいた。視野が狭く感覚が敏感な子供は顕著で、僕の方を指さして物珍しそうにしていることが多かった。
 今が逢魔が時と言うのもあるだろうが、どうも妖怪を警戒しているらしい。以前来た時は妖精や弱小妖怪が人々の中に溶け込んでいたと思ったが、これではなかなかどうして居心地が悪い。
 僕は道の端の方をこそこそと歩くことにした。そしてふと立ち止まっては道行く人々の噂話に耳を傾ける。
 誰の仕業か、動機は何だという事件がらみことから、あいつはケチで最低な野郎だったとか、せいせいしたとかいう生前の質屋の愚痴まで様々な根拠のない情報が飛び交っていた。中には妖怪の仕業だと声高々に主張している者もいた。
 確かに妖怪などの魑魅魍魎の類は不可解な事件の犯人としてやり玉にあげられることが多い。天狗などはその最もたる例で、風で家屋が崩壊したりすると真っ先に疑われる。未知に対する恐怖の感情が万が一を考えさせてしまうのだ。
 今の人里で妖怪が悪事を働くことはできない。それはこの幻想郷での常識であり掟でもある。誰が決めたのかは定かではないが。妖怪が我が物顔で闊歩する中、人々が唯一の安楽の地として住まう場所がこの人里なのだ。もし事件が妖怪の仕業だった場合、里にいる限り安全であるという保障がなくなってしまう。なるほど妖怪を警戒しているのも頷ける。
 里の警戒態勢は事件が解決もしくは忘れ去られるまでいましばらく続くだろう。僕はできるだけ人に姿を見られぬよう行動することにした。


 日は沈み、路地は月明かりに照らされていた。ようやく大手を振って歩ける時間帯になった。飲み屋はまだ明かりがついているが、それ以外の店や家々は夜に溶け込んでいた。
 人々は寝静まっているが夜は存外にぎやかなものだ。道を歩けば耳を澄まさずとも声が聞こえてくる。
「ねえ聞いた、今日の事件」
 家の軒先にある水瓶がそう言った。
「あたぼうよ、俺ぁあすこのお鶴とは長え仲だ、すぐに耳に入ってきたぜ」
 水瓶の隣に立てかけてある竹ぼうきがそう答えた。お鶴とは多分質屋にある掛け軸の事だと思う。
「あ、俺も聞いた犯人は多分塩屋の旦那だろって」
 隣の家の鎖樋が反応する。
「いやぁ、違うんじゃないかなぁ。自分の見立てだと、ほら、あそこ、霧雨商店の」
 もごもごと鎖樋の隣に引っ掛かってあった藁みのが言った。
「それはねえな、商売敵でもあの頑固親父はそんな真似しねえよ」
 また竹ぼうきが答えると――
「絶対借金取りよ、金銭面でのいざこざで闇に葬られたに決まっているわ、怖いわねぇ」
 顔が真っ赤な郵便受けがそう捲し立てた。
「じゃあなんてったって若旦那のほうは無事なんだい。あれだろ後追い自殺ってぇやつ。ほら女房が亡くなっただろう」
 水の入ってない木桶がそう言った。
「いんや、それはないね。もう一年も前だしあの親父はずっと大分尻に敷かれてたからな。せいせいしてただろうさ」
 今度は向かいの茶屋の幟が自信満々に言い切った。
「俺は慧音先生の尻に敷かれたいよ」
 空気をぶった切り、茶屋の縁台の丸ござがそう嘆いた。
 ちなみに彼らは付喪神である。長年使われた道具たちが妖怪化したものだ。一口に付喪神と言っても様々で口しかついてないものもいれば、僕たちのように足があって歩いたりできるもの、果ては自力で空を飛べるものや人型をとって人間の中に紛れているものたちもいる。
 尤も、大概は喋っているだけで人間にとっては無害であることが多い。日中は道具としての務めを果たし、夜になるとこうやって井戸端会議を繰り広げていたりする。たまに誰もいない場所からどこからともなく声が聞こえるのは彼らが談笑しているからなのだ。
 その会話を人間たちは気にもかけないが、僕にとっては重要な情報源だ。
 今回の事件は込み入った問題だろうから、当事者に説明を求めてもまともな返答は期待できない。多分怪しまれて締め出されてしまうだろう。僕の情報源は人や道具の噂話くらいなものなのだ。
 道具たちの噂に聞き耳を立てていたところ、会話の中に足音が混ざった。誰かがこちらに向かっているようだった。
 見つかっては不味い、夜中に一人で歩いていたのでは怪しさ満点である。僕は近くの付喪神化していない水瓶の陰に身を隠した。
「ふう、夜は冷え込むな」
「本当に。先生は帰っても大丈夫ですよ。夜警は私に任せて」
「そういうわけにもいかん」
 片方は上白沢慧音だ。もう片方は、小兎姫だっただろうか、確か警察官である。里に警察組織があるのかはわからないが、自警団は一応存在する。二人はそこに属しており、時折こうやって見回りをしているのだ。
「まぁ確かにひっさしぶりの事件っぽい事件ですしね。腕が鳴るってもんよ」
「不謹慎だぞ。まぁ怪しい奴がどこに潜んでいるかわからんからな。警戒しておくに越したことはない」
 楽しそうにしていたので慧音は嗜めたが、笑いながら小兎姫は返した。
「見かけたらすぐに牢にぶち込んでやるわ!」
 冗談のつもりなのかもしれないが、少しぎくりとしてしまう。いや本気かもしれない。おそろしや。
「まあひとまず休憩しましょ」
 茶屋の前まで来た二人は縁台に腰かけた。願いが叶った先ほどの丸ござは叫びたい気持ちを抑えるのに必死だろう。よく見ると若干身震いしていた。そんなことは露知らずの二人は、今回の事件について大まかなところを確認し始めた。
 これは好機だと僕は聞き耳を立てた。ほかの道具たちも同じことを考えてたようで辺りは静かになった。
 とりあえず聞いた話を大まかにまとめる。
 まず質屋の旦那の死体を最初に発見したのは息子こと現在の若旦那で、今日の朝だったそうだ。なんでも一晩中飲み歩き、明け方家に帰ったところいつもは起きている親父の声が聞こえなかったため不思議に思い、探してみると作業場に血まみれで転がっていたそうだ。この作業場と言うのは質に入れた道具を手入れする場所らしく、店の奥の暖簾をくぐったところに位置する。居住区は二階だそうだ。大慌てで里医者を呼んだが手遅れだった。胸部の丁度心臓の位置に深い刺し傷があり、これが致命傷になったとのことだ。凶器は不明、刃物かはたまた研がれた爪か。
 こんなところだ。
「しかし、困った。手がかりが何もない」
「ですねぇ。昨日の夜警担当者も怪しい人影を見たりはしてないみたいだし」
「ああ、品が盗まれた痕跡なし、そもそも鍵はしっかり施錠してたそうだ」
「合鍵とかで押し入ったのかも」
「いや、それはないと言っていたな。若旦那はともかく旦那は徹底していたらしい。閂を差した上に錠前で鍵をかけているそうだ。まあ、商売上物取りに狙われることは多々あるだろうしな」
 質屋には当たり前だが大量の品がある。それこそ香霖堂に引けを取らないくらいだ。盗人対策は万全だろう。
「むむ、じゃあ念力、神通力よ」
「それだ、それが噂になっていることが問題だ」
 慧音の言う通りで、噂というものはこの上なく恐ろしい。もし、今回の犯行が人に非ざる者の手によって行われたなどという噂が浸透すれば人々は疑心暗鬼に陥ってしまう。最悪、行きつくところは里の全妖怪の排除せよという思想だ。それは半獣である慧音としては喜ばしくないことなのだろう。
 ただ今回の事件、妖怪が仕掛けた可能性は限りなく低いとみる。なぜなら、博麗の巫女が未だ動いていないからだ。里にあまり赴かない魔理沙でさえ噂を聞きつけているのだから、当然霊夢の耳にも入っているだろう。それにもかかわらず動きがないのは、妖怪が関与していないからに他ならない。
 まあ、博麗の巫女すらごまかせるほどの実力、あるいは計画的に行ったのなら話は別だが。
「あまり噂が広がるのも良くない、巫女にでも言伝しておくか」
「ええー私の仕事が無くなっちゃう」
「良いことだ、自警団が活動しないのが一番平和でよろしい」
「むうー」
 小兎姫は面白くなさそうに頬を膨らませたが、慧音は無視するように立ち上がり「夜警を続けるぞ」と歩き出した。
 慧音たちがその場を後にしてからは自警団に警戒したのか、付喪神たちがそれきり黙ってしまった。若干一名、息を荒くしている物もいたが。
 夜も更けてしまったので、僕も一度店に戻ることにした。明日もう一度里に来るとしよう。


 次の日、僕は午前中から里に赴いた。
 今日は質屋に行って現場を改めるつもりだった。
 里に入り、商店街を抜けたところに質屋はある。日中は賑やかな通りだが、立地は住宅地に近いため、夜は人通りが少ない。もう少し先に行くと宿泊所や酒屋が点々としている飲み屋街に繋がっている。
 大通りに面しているので迷うことなく着いた。店内では慧音と若旦那と思わしき男が話をしていた。
 僕は人目を忍ぶように店に入った。幸いほかの客はおらず、二人は話に夢中だったので僕の来店に気づかれることはなかった。
 店は狭く、大人五人も入ればいっぱいになってしまうほどだ。丁度香霖堂と同じくらいの広さで、なんとなく安心する空間であった。作りもほとんど香霖堂と変わらず、奥に扉があり、その手前に精算所があるといったものだ。店内は物であふれかえっており、食器から洗濯板といった生活用品、版画や掛け軸などの芸術作品、大きいものでは箪笥まで、ありとあらゆるものが雑多に取り揃えてあった。ある程度区分されたそれらは壁を埋め尽くすように所狭しと並べられていた。置いてある商品はどれも比較的新しい。
「なるほど、これが昨日の夜見つかったと」
 慧音が見ているのは刃渡り15cmほどの包丁であった。切っ先から腹にかけてべっとりと赤黒く変色した血液が付着している。刃の形に特徴はないが、柄の部分には太極図が彫られていた。
「……へい、その実は昨日言い忘れてたんですが……」
 若旦那はやけにまごまごしながら答えていた。昨日の今日で困惑が残っているのだろう。
「これが凶器に使われたと」
「おそらく」
 この得物なら凶器としても十分説得力がある。心の臓を狙えばたとえ女子供でも犯行は可能だ。
「わかった、一度これは預からせてもらう。町医者に見せて旦那の血液か判別してもらおう」
「……頼みます」
 結果が出るまで決めつけるのは早計だが、付着した血液は十中八九旦那のものだろう。そうでなければ不自然すぎる。
 外の世界の推理小説では包丁の柄の部分から指紋を検出して犯人が割り出していたが、人里にそんな技術はない。至極残念だ。もしかすると永遠亭の薬師辺りならそういった器具を持っているかもしれないが。
 まあ得物が見つかっただけでも十分な収穫だ。すぐに噂が広まり、妖怪の仕業という噂は消え失せるだろう。
 僕はそそくさとその場を後にした。店を出てから現場を改めるという当初の目的を果たせてないことに気が付いた。


 質屋を出てから僕は包丁の出どころを探ることにした。今の唯一の手掛かりである。まずは大手の店に行くことにしよう。僕は久方ぶりに霧雨商店に行ってみることにした。
 霧雨商店にはすぐに着いた。しかし扉が閉まっており、定休日という板が下げてあった。その方が都合がいいと思い、昔の記憶を頼りに店の横へと回った。
 実は雨が降ったりしない限り、霧雨商店の窓は常に開け放たれているのである。窓は小さく、子供か痩せた大人がやっと通れるかどうかの大きさである。そのため泥棒が侵入したという話は聞いたことがない。「そもそも泥棒なら鍵かけたって破って入ってくるだろうよ、まあ来たら俺がげんこつ喰らわせてやるがな」とは親父さんの談。なんとも肝が据わっている。
 昔と変わらず窓は開いていた。そこから侵入する。
 昔は魔理沙が門限を破って遅く帰ってきた時、よく窓からこっそり入ってきたものだった。不思議なことに魔理沙が何度門限を破っても窓は開いたままだった。本人は気づかれてないと思っていたようだが、今考えると親父さんの甘やかしだったのかもしれない。
 親父さん、あなたのおかげで娘さんは今立派な泥棒に成長してますよ。
 さてと閑話休題。店内は流石人里一の道具屋というべきか、広く整理整頓されていた。ここなら何でもそろうだろう。さっそくと僕は調理器具の陳列棚へと向かった。
「おい聞いたかよ、質屋の旦那、包丁でぐさってやられたらしいじゃねえか」
 親父さんが来たのかと思って声がした方を振り返ると、箒と塵取りが喋っていた。ここにまで付喪神がいるとは思わなんだ。付喪神たちの間ではもう噂が広がったらしい。里のおばちゃんたちよりも早いとは驚きだ。
「ええ聞いたわ、もうほんと驚きですわ」
「あすこの親父は気にくわねえ、ざまあみろだ。もし俺に手があったら俺がやってるね」
「あんたが持ったら武装箒ね」
「上っ面だけへこへこしてよ、金勘定しか頭にねえ狸のくせに。俺ぁハキハキ喋ってねえ奴がでえ嫌いなんだ」
「まあ」
「去年だったけなぁ、あいつがここにきて店長としゃべってたんだ。女房が死んだから葬儀代寄越せとか何とか、銭ゲバめ。俺は言ってやったんだ『この狸親父!』ってな」
「あらまあ! あんたが言ったってばれたらどうするのよ」
「そりゃあ捨てられっちまうだろうよ、でも俺ぁ箒だぜ。言いたいことは吐いて捨てるのが信条だい」
 ……延々と話が続きそうなのでいったん聞くのをやめた。
 流石に商品に付喪神化しているものはなかった。あとついでに同じ包丁もなかった。
「しかし店長さん遅いですこと」
「知らねえのかい、今日は九十九姉妹feat.堀川雷鼓のコンサートに出かけてるぜ。ファンなんだと」
 霧雨の親父さんが会場ではしゃいでいるところを想像して噴出しそうになった。
「いいよなあ九十九姉妹、付喪神のあこがれだよな」
「あら、私はさっぱり。プリズムリバーなら聞いたことあるけど」
「プリズムリバーは騒霊だ、ものがちげえよ」
 その差なら僕にもわかる。騒霊が憑りついて楽器を奏でている、所謂ポルターガイストがプリズムリバーで、楽器そのものが妖怪化したのが九十九姉妹たちだ。
「いいなぁ楽しんでるんだろうぜ」
 僕も少し興味がある。もし余裕があれば外野から眺めるだけでも行ってみようか。
 特にこれ以上用もないのでそそくさと窓から店を出た。


 困った、会場がどこかわからない。いや、それ以前に今日コンサートがあるのかどうかすら怪しいと思えてきた。狭い人里で行っているのならどこからか音色が聞こえてもいい気がするが、そんな気配が全くないのだ。
 そうこうしていると前方から三人の女性が歩いてくるのが見えた。どうやら九十九姉妹と堀川雷鼓らしい。見た目が完全に人型なので元道具だとは思えない。
「むきー中止ならそうと早めに言ってよね!」
 地団駄を踏んでいるのは八橋である。彼女は確か妹だったか。どうやらコンサートは中止になったらしい。妖怪警戒態勢がとられているからだろう。
「まあ落ち着きなさいって、おっかない巫女呼ばれるのも嫌でしょ」
 姉の弁々が宥めていた。
「プリズムリバーは先週やったのに!」
「まあ、しょうがない、信用の差よ。私たちはまだ新参ってこと。逆らわず、たたき上げの精神で行くしかないわ」
 雷鼓がそう言った。そう言えば打出の小づちの魔力が何とかでいつぞや異変になっていたのを聞いたことがある。確か彼女らは比較的新しい妖怪のはずだ。
「次こそ頑張りましょ」
「そうね、こうなったら……あっそこなお団子やさん、この団子ください」
 ここの団子屋も最近できたものだ。なんでも兎がやっているらしく、売り文句は「味一番」だとか。最近の繁盛店だ。
「まいどー、つきたてだよ」
「憑きたてだって、私達みたい。いいことあるかも」と言って八橋は団子を受けとり二人にも渡した。
「ツイてるわね、餅だけに」
「ゲンを担ぐのね。琴と琵琶だけに」
 いただきますと三人はうまそうに団子をほおばった。


 さて寄り道してしまったが、僕は包丁の出どころを探しているのである。見当もつかないので、虱潰しに当たることにした。
 とりあえずと、僕は稗田のお屋敷の近くにある鍛冶屋に入った。
「この包丁を見たことないか。太極図が彫られているのはここの特徴だろう」
「む、これは確かにうちのやつだ」
 中には慧音と鍛冶屋の主人がいた。なるほど、太極図はこの鍛冶屋の証なのか。そういう情報には疎いものだから困りものである。だがどうやら一発であたりを引いたようだ。僕もツイている。
 包丁に付着した血液はふき取られており、刃先が鈍く光っていた。
「売った者は覚えているか」
「俺はここ数年包丁なんて打ってませんぜ。見覚えがありません。きっと親父が鍛えたんでしょう」
「いや違う、購入者だ」
「ああ、多分そいつは俺が質に入れたんです」
「そうか」
「ええ、このところ不景気でねえ。刃物なんてきょうび誰も買わないんでさ。あーあ、うちにも小傘ちゃんみたいな可愛い子でもいればいいんだがなあ」
 多々良小傘、唐傘の妖怪であるがなんと里で鍛冶業を営んでいるのだとか。腕は確かなものがあり、霊夢の針を新調したこともあるそうだ。
「いや、まあ彼女はな、ちょっと変わり種だ。……そんなに切羽詰まっているのか」
「言いにくいんですが、親父の作った借金の取り立てが来まして……一回家にあるものまとめて質屋に持ってったてえわけです。若旦那は同情してくれて何も言わず全部買い取ってくれたんですよ」
「ふむ、それはいつだ」
「つい3日前でさ」
 質屋の旦那が死んだ2日前である。
「……さっき見覚えがないと言ったな。なぜ質に入れたと分かる」
「ああ、それは、その包丁、箱に入ってやせんでしたか? 親父が開けるなって言ってた箱があるんですよ。値打ち物の包丁が入っているって」
「む、わからん。しかし君の親父さんは確か」
「ええ、去年亡くなってます。その箱は財産みたいなもんでしてね、売れるから質にでも入れろ、ただし未開封じゃないと価値が下がるって。形見だと思って売らないでおいたんですが、まあ、あとで買い戻しに行く前提で売っちまいやしたよ」
「……その話は本当か」
「慧音先生……俺を疑ってますかい?」
「……いや、すまない。手掛かりが少ないもんでな」
 お手上げのポーズを取り、困り顔を浮かべた。
「だったら確かめてくれて構わないですぜ。先生の能力ででも」
 慧音はぎくりとしていた。
「知っているのか?」
「ええ、まあ。一応うちは代々続く退魔の一族の鍛冶屋でして。太極図もその名残なんです」
 聞いたことがある。博麗大結界がまだできてなかった頃、里には妖怪退治を生業とする者たちの名家があったと。一つは今も残っている稗田家、主に妖怪の知識を与える。もう一つが退治屋、知識をもとに符術、体術を用いて妖怪たちと直接戦闘する。陰陽師などもこれに該当する。そしてもう一つが彼らに武器を提供する鍛冶屋であった。
「だからその辺の妖術とか能力とかはちょいと詳しいんです」
「む、そういうことか。少し語弊があるな、私は歴史を隠すことはできるが、人の記憶を覗くことはできないよ」
 慧音は歴史を喰らい、隠すことができる。それでも完全に消し去るわけではないらしく、力を持つ者が見た場合はばれてしまうこともあるとか。
 歴史とは本来人から人へと伝えられるもの。だから回りくどく、聞き込みをしたり、物的証拠を探ったりしているのだろう。
「歴史を操るとか聞いてたもんだから俺はてっきり……」
「まあいい、おとといの夜は何をしていた?」
「飲み屋で酒を飲んでました、質屋の若旦那と一緒だったかな」
「そうか。丁度、証人同士になるわけだな。まあ一応飲み屋にも確認しておこう」
「信用無いんですかい」
「いやあすまんすまん、何しろ手掛かりが少ないもんでな」
 慧音は平謝りしながらようやく笑顔を見せた。
「誰かいないんですかね。仏さんの記憶を覗けるとか、そう言う能力持ったやつ」
 記憶を覗くのは確か、地底にそんな能力を持った妖怪がいた気がする。死人まではわからないが。
「記憶か、探せばいるかもだが……私が嫌だ。墓荒しと同じだろう」
 ごもっともだ。よく「墓場まで持っていく」などという言い回しもある。記憶とは本来不可侵の領域なのだ。
「重要な事なんでしょう、仏さんも目を瞑ってくれますって」
「仏は最初から瞑っている。いや、そういうことではなくてだな」
「じゃあ交霊術とかどうですか、いっそ霊界まで魂を探しに行くとか」
 見た目が似たり寄ったりである魂を探るのは難しいだろうが、交霊術はできそうだ。うちにもウィジャ・ボードや狐狗狸さん用の文字盤などいくつか低級霊を呼び出す道具がある。道具がなくともイタコなら降霊術がつかえるだろう。すでに転生したとかでなければ捜査に使えるのではないか。
「なるほど、まあやってみる価値はあるか。期待はできんがな」
「なぜです、死んだ本人が一番わかっているでしょうに」
「そうとも言い切れん。良く言うだろう、死人に口なしと。憑依させても口を閉ざしていることが多いんだ。たとえしゃべったとしても、こと死因に関しては断片的だそうだ」
 低級霊などそんなものかもしれない。転生の準備をしている間、生前の記憶は薄れる。それでも未練を残し、恨みを忘れられなかった魂が呪縛霊となるのだ。
 そもそも霊以前に、老齢になれば誰しも物忘れが激しくなるのだ。自分が一番輝いてた瞬間は忘れないが、新しいことは覚えられない。それに付け足して旦那はボケてきているとも言っていた。死の瞬間を鮮明に覚えてることは保証できない。
「確かにそうですねぇ。……ちょいとその包丁調べてみてもいいですかね」
「ああ、構わんが、なぜだ」
「多分親父の作だと思うんですが、気がかりなことがありまして」
「ほう」
「うちの親父、旦那と仲が悪かったんですよ。ほら、あの旦那ケチでしょう。いつぞやも安く買いたたかれたようで、あんなとこ二度と売りに行くかって言ってたんでさ。なのに、この包丁は高く売れるから質に入れろって、おかしいなと」
「ふむ、言われてみれば確かに」
「こいつがそんな値打ち物なのか調べてみるつもりです」
「そういうことなら、助かる。ついでに不審な痕跡がないかも見てくれ。素人にはわからんのでな。他の自警団もお手上げだった」
「お安い御用です。ついでに確認したいんで箱も持ってきてもらえますかね」
「了解した」と短く返し、慧音は包丁を手渡して鍛冶屋から出ていった。
 鍛冶屋の主人はさっそく受け取った包丁を単眼鏡のような道具を使って調べ始めた。
 暫くかかりそうだったので僕は一度帰ることにした。犯人は今だ見当つかずだが、凶器の出所がわかっただけでも十分な収穫だ。


 そして次の日。僕は午後から里に赴いた。今日は質屋の旦那の葬儀が執り行われたそうだ。場所は命蓮寺で、どうやら火葬らしい。
 葬列には慧音をはじめとする自警団や、昨日の鍛冶屋の主人も参加したという。しかし、合計すると参列者は少なかったとか。三途の川をちゃんと渡れるのだろうか。
 葬儀は滞りなく進み、僕が葬儀場に着いた頃には終わっていた。
 僕は命蓮寺の近くの喫茶店に行くことにした。そこで、慧音たちが昨日の報告をするのではないかと踏んだからだ。予想は的中し、喫茶店の中には葬儀終了後に一服している客に紛れて、慧音、小兎姫、若旦那、鍛冶屋の主人の4人の姿があった。
 テーブルには珈琲が四つと苺のケーキが二皿。ケーキは女性陣のものらしく、フォークでつついて口に運んでいる。旨そうに食べているのだが、小兎姫と慧音のペアと洋菓子という組み合わせがなんとなくミスマッチであるように思えた。特に慧音は団子とかしか食べてるイメージが思い浮かばないからなおさらだ。
「さて、おほん、まず私からね。昨日の夜血液検査の結果が出たわ。見事に一致、凶器はこの包丁で間違いないわね」
「……」
 小兎姫の言葉に対して若旦那は口をつぐんでいた。予想通りだと慧音が小さく言った。
「次は私だな。葬儀の前に降霊術をしてくれるよう里のイタコに頼んだ。結果、降霊は成功し、旦那を呼び出せた。鋭利なもので刺されたことはぼんやりと覚えていたよ。ただ、相手がわからない、性別も、体躯も、特徴も何を聞いても口をつぐんでいたよ」
 やはり覚えてないらしい。残念だが仕方がない。
「じゃあ次は俺から。とその前に箱はあるか」
「ああ、これ。多分ですが」
 若旦那は琥珀色の箱を見せた。大きさは丁度包丁が収まる程度、派手ではないがなんとなく荘厳だ。蓋には僕では解読できない文字や印のようなものが刻まれていた。
「確かにこれだ、間違いない、親父の言っていたやつだ」
「ほうほう、続けて続けて」
 小兎姫が興味津々にのぞき込んだ。
「調べたこの包丁、比較的新しいものでした。歴史的な値打ちがあるとか、曰く付きのものだとは到底思えやせん。ただ、丁寧に研いである。晩年の親父の品で間違いないでさ」
「なるほど、痕跡とか何かなかったか、こう握った痕とか」
「まったく、ただ一つ思い出したことがあって……」
「なんだ含みを持たせるな」
「すまねえ若旦那……もしかしたら俺がこいつを売ったのが原因かもしんねえ」
「!?」
 頭を一度下げる。突然の謝罪に一同は唖然としていた。鍛冶屋は続ける。
「いえ、晩年の親父なんですがね、気が狂ったかのように鉄を打ってまして、なんつうか鬼気迫ると言いますか怨念が混じっていたように思えたんです。しかも怪しげな術書まで倉庫から引っ張り出してきて読みふけってやした」
 珈琲を啜り、一呼吸置く。
「そんで、殺してやる殺してやるってうわごとのように呟いてたことを覚えてます」
「むう、聞き捨てならんな。殺すって具体的に誰をだ」
「わかりやせん。ですが質屋の旦那と怨恨があったとは言ってました。もしかしたら……」
 そこへ若旦那が割って入った。
「待ってくれよ。君の親父さんがやったというのか。でも去年親父が引退したときに確か……」
「ああ、そうだ。丁度そのころだった。俺の親父が逝ってからあんたが店を継いだんだったな。いや俺の言いたいのはそう言うことじゃない……」
「わかったわ。死んだ鍛冶屋の親父さんの霊が現れて旦那を殺したってことね」
 ピンときたという風に小兎姫が言った。
「まあ、そんな感じです」
「待て、なぜ今頃なんだ。普通は死んだ直後に出るものだぞ」
「親父がそのまま化けて出たわけじゃないでしょう。包丁に直接、憑りついたんじゃあねえかと」
 ポルターガイストという現象があるように霊が道具を動かすことは多々ある。身体の一部を狙って突くという芸当ができるかは定かではないが。
「腑に落ちないなぁ。わざわざ包丁に憑いてなんて。霊だったら直接憑いた方が早いでしょ」
 小兎姫の言うとおりだ。わざわざ道具に憑く必要はない。
「まあ、それはそうなんですがねえ、慧音先生?」
 慧音は頭を抱えるような仕草をしていた。
「……ありえん話でもない。が、私はちょっと別の可能性を考えた」
「といいますと」
「さっき、狂ったように鉄を打っていたといっただろう。怨念が混じっていたとも。もしかしたらその怨念そのものが直接この包丁に宿ったのではないかと思ったんだがどうだろう」 
 包丁が鍛冶屋の親父の念で付喪神化してしまい、親父の霊とは関係なく事件を起こした。なるほどありうる。道具が付喪神になってしまうのには様々な理由がある。有名なのは九十九年の歳月を経ることだが、それ以外にも周りの強い妖気に当てられたり、強大な念を込められて変質した場合なども該当する。
「じゃ、じゃあこれは付喪神なんですか、先生」
「わからん、私じゃ断定はできない」
 包丁は言葉を発するどころか動き出す様子さえなかった。
「そう言えばさっき怪しげな術書がどうたら言ってなかった?」
「ああ、私もそこが引っ掛かってたんだ。もしかしたらその術書というのは……例えばものに魂を吹き込むとか、転生術とかが記されたものじゃなかったか」
「……いや、すんません覚えてねえです」
「いま、その術書は家にあるか?」
「ほとんど鈴奈庵に売っぱらっちまいやした。残ってんのは古い製法書だけです」
「鈴奈庵か、わかった後で行ってみよう」
 鈴奈庵とは里の貸本屋である。品揃えが豊富で、外の世界のものから、聞くところによると妖魔本まで取り扱っているとか。
「一つ進展ですね! 私はじゃあ別の方向で調査を続けます、霊の仕業じゃない可能性も捨てきれませんからね」
「頼む。よし、おーいお勘定だ」
「先生、ここは私が。何にもお役に立ててませんので」
 若旦那が財布を取り出した。革製の立派なやつである。相当繁盛していることが窺い知れた。
「気にするなそれには及ばん。……いや、素直に受け取っておこう。ごちそうさま」
 若旦那の顔が少しだけ明るくなった。情報提供もあまりできなかったので気にしていたのだろう。


 僕は鈴奈庵に来ていた。慧音と鍛冶屋と店員である本居小鈴が話し込んでいる間、僕は話そっちのけでずらりと本棚に並べられた歴史書を眺めていた。『幻想郷の成り立ち』著、初代博麗の巫女、『月面戦争』著、楚々たる若賢者、『平安狸合戦』著、団三郎……あれ僕が書いた歴史書がない……
「あったあったわ、これが多分そうよ。どれも妖魔本じゃないけどねー」
「わざわざすまんな。どうだ」
「ええと、確かにこれらでさ」
 小鈴が机に出した本を確認していた。見てみると古い技術書だったり、妖怪大戦に関係した歴史書だったり、陰陽道の術書であったりと様々である。
「ざっと見てもそれらしい術書はないな、一安心だ」
「一安心?」
「ああ、考えてもみろ。付喪神とて妖怪だ。妖怪を生み出す方法を記録してある本など実在していたら危険極まりない」
 以前、怪しげな術書を用いて里の人間が妖怪変化したという異変があったことを思い出した。あの時はすぐさま霊夢が解決したので、そこまで大事にはならなかった。本も処分したとかで、妖怪変化の術が広まることもなかったとか。なんにせよ人の手で妖怪を生み出してしまうことは幻想郷の掟に反することなのだ。
「じゃあもしあったら……」
 小鈴が恐る恐る聞いた。
「処分するほかないな」
「やめてぇー」
 まあなかったのだから、問題ない。これで付喪神の線は消えたのだろうか。いや、計画的犯行でなかったことも考えられる。恨みを込めて打っていたら偶々、付喪神化したのかもしれない。いや、だとしたらなぜいまさらなんだ、付喪神ならば変化した瞬間にでも動き出して殺しに行くはずではないのか。
 僕はどうも混乱してきたようだった。一旦考えを整理したかったので、それ以上話は聞かず鈴奈庵を後にした。


 香霖堂に戻り、茹だった頭を冷やすため何も考えずに過ごした。
 そして何もしないまま夜になってしまった。店内から外を見やるとびゅうびゅうと風が窓を叩いていた。雪はとうに溶けてはいたが、それでも夜は冷える。
 カランコロンとドアベルが鳴った。
「もう閉店だというのに」
 ギギギと扉が開く。顔を見せたのは里の守護者であった。
「やあ君か。久しぶりだな」
「ああ、いや今日は客じゃないのだすまない」
 夜風に吹かれて赤ら顔になっていた慧音は昼の活気がなくなっているようだった。あの後何かあったのだろうか。
「霖之助、ここらで里の男を見かけなかったか? 質屋の若旦那なのだが」
「探し人かい? 生憎だが今日は閑古鳥しか見てないな」
「そうか……神社に向かったと聞いたのだが、いなかったんだ」
 博麗神社に向かったということは巫女を呼ぶつもりなのだろう。きっと付喪神の件だ。妖怪の事は巫女に頼むのが手っ取り早い。だが如何せん里からは遠いし危険だ。博麗神社への道はやはり舗装すべきだと思う。
「ああ、私が余計なことを言ったばかりに」
 慧音はどうやら負い目を感じて探し回っているようだった。おそらくだが若旦那は慧音の推理の真相を探るべく、独断で神社に向かったのだろう。
「ふむ、わかった見かけたら保護しておこう。ついでに、探し人なら命蓮寺のネズミにでも頼むと良い」
「……ああそうするよ」
「ついでにこれを、なあにただの外套さ。外は寒い」
 香霖堂はストーブのおかげで暖かい。一度このぬくさに慣れてからまた寒空に出るのは苦痛だ。
「……ありがとう」
「礼には及ばない。代金は特別にツケにしておくよ」
「くく、押し売りじゃないか。この業突く張りめ」
 口では悪態をつきながらも、漸く頬が緩んだようだった。
「失敬な」
「はは、まあ恩に着るよ。丁度身体が冷えてきてたんだ」
 慧音は外套を羽織りそのまま店を出た。
 先ほど神社に行って確認したということは明日にでも巫女が動くだろう。そうすればすべて解決だ。それまで若旦那が無事だと良いが。


 次の日。
「ねえあんた、質屋の若旦那が失踪したってさ」
「ああ、そうらしいな。あいつがねえ……」
「うーん、親父と違って悪い奴にゃあみえなんだがな」
「あれでしょあれ、介護疲れよ。ほらちょっとボケ入ってたじゃない」
「ああなるほどなあ、それなら納得だ」
 噂の話題も変わってしまっていた。どうも若旦那が旦那を殺した犯人ということになってしまっているらしい。
 あてもなく里をふらふらと歩きまわっていると、はしゃいでいる童たちを見かけた。どうやら寺子屋は休みらしい。ということは慧音がまだ里の外を探し回っているのだろう。
「そういえばさあ、なんで今日休みなんだろ?」
「慧音せんせーが忙しいんでしょ」
「なんか『殺人事件』に巻きこまれたらしい」
 どうやら里の子供たちまで噂を知っているようだ。
「おお! すげー先生探偵じゃん」
「あなたを犯人です!」
「出来心だったんです! 頭突きは勘弁して~」
 あはははと大口を開けて朗らかに笑う。なんとも微笑ましい。
「ねえ、私たちも犯人さがししない?」
「おもしろそう! でも事件ってどこで起きたの?」
「知らない」
「はいそこまで。子供は家に帰る時間よ」
 子供たちの間に小兎姫が割り込んだ。傍には鍛冶屋の主人もいたので、こちらは殺人事件の捜査中なのだろう。ちなみにまだ午前中である。
「あ、けーさつのねーちゃん」
「今日は大人しくしてなさいって言われたでしょう。早く帰った帰った。慧音先生に言いつけるわよ」
「けーさつがちんころとは何事かー!」
「しょっけんらんようだー!」
「われわれには自由の権利があるぞー!」
「ふはは、小童ども豚箱にぶち込まれたくなかったらおとなしくするんだな!」
 ぶーぶーと子供たちは文句を言うが小兎姫はノリノリで返していた。
 ただ、最後に小兎姫が「頭突き」と言うと、なんだかんだ言いながら子供たちは足並みそろえて自宅へと帰っていった。どうやら魔法のキーワードようだ。
「まるでパブロフの犬ね。ちょっと違うかしら」
「はあ、ぱぶろふって?」
「知らない」
「……まあいいでさ。えっとどこまで話しやしたかね」
「鈴奈庵に変な本があったてとこ」
 どうやらこっちは進歩があったようだ。僕が帰った後に何か見つけていたらしい
「そうそう、昨日色々漁ったんですが……ともかく来てみてくだせえ。その方が早いでしょう」
 そう言うと二人は小走りで駆け出したので僕は後を追うことにした。


 息が切れる。疲れた。普段から運動をしないせいか、小走りの二人にまったく追いつけなかった。幸い行き先はわかっていたので何とか辿り着いた。
 店内ではすでに二人が本を確認していた。
「……確かに妙な描写があるわね」
「でしょう、なんか晩年の親父と似てるんでさ」
 それはどうやら外の世界の絵巻のようであった。所謂漫画と呼ばれる類のものだ。背表紙に巻数が書かれていたが、中途半端な数字であった。
 ぺらぺらとページが捲られているのを覗き見する。その巻にはどうやら刃物の製造工程が描かれているようであった。
 鬼のような形相をした人間が鉄を打っていた。その鉄には人間が溶けているという。そして鍛えられた鉄は槍となり、その鋭い矛先は不倶戴天の敵に向かって一直線に飛び立っていった。
「……もしこれを参考に鉄を打ったとしたら……」
「対象に向かって一直線に飛ぶ妖怪包丁ね、危険極まりないわ」
 恨みの副産物とはいえ人為的に作られたそれは付喪神と言えるのだろうか。
「これ他の巻は?」
「数冊しか、何せ外の世界のですから」
 小鈴が答えた。小兎姫は鍛冶屋のほうを見る。
「あなたの家にあった物なの?」
「……覚えてやせん。こんな絵巻持ってた記憶はありやせんが……」
「まあ、あなたの親父さんがここから借りたことも考えられるわね」
「だとすると親父は本当に……」
「過ぎたことは仕方ないわ。それより今は原因の究明が大事、これ借りてくわ」
 そう言うと小兎姫たちは絵巻を手に取り店を後にした。
「……あっ、お代ー!」
 鈴奈庵に悲痛な声が響いたが、もう遅かった。僕は小鈴に同情しながらこっそりと家路についた。


 そして次の日。
「号外号外ー」
 昼頃に朗報が窓を突き破って飛び込んできた。今朝、若旦那が発見されたのだ。なんでも道中妖怪に襲われ、結局神社にはたどり着けなかったそうだ。逃げ切ったのは良いものの、傷を負ってしまい、ふらふらと場所もわからず彷徨っているところを竹林の案内人が保護したのだとか。両足には火傷痕が残っていたが何とか歩けるそうだ。
 ほっと一安心だ。僕と直接のかかわりはないが、死なれたらなんとなく夢見が悪い。さて、無事だったようなので様子を見に行ってみようか。さすがに霊夢も動いているだろう。



 里に着いた僕はいの一番に質屋に向かった。
 店は開いていたが、若旦那の姿が見当たらない。仕方がないので勝手に入らせてもらうことにした。
 やはり良い空間だ。古臭い匂いと微弱な妖気、居て心地よい。
 精算所の奥の扉は開けっ放しであった。先はきっと倉庫に続いているのだろう。誰もいなかったので難なく侵入することができた。こう書くと悪いことしている気がする。
 好奇心が理性に勝った僕は多少罪悪感を抱えながら奥へと歩を進めた。
 扉をまたぐと店内よりも広い空間に出た。相変わらず道具が所狭しと並んでいた。中には付喪神化してしまった道具すらある。この布団や、鶴の掛け軸などは随分と年季が入っていた。
 部屋の中心に虫眼鏡や汚れ拭き、砥石と言った商品を整備点検するための道具一式が無造作に放り出されていた。そしてその周りには血痕がまだ少し残っていた。
「さ、こっちです」
「お邪魔しまーす」
 野太い男の声と聞き覚えのある少女の声が聞こえた。多分若旦那と霊夢だろう。やはり巫女も動いていたようだ。若旦那がすぐに見つかったのもあって、すぐに事件のほうにシフトしてきたのだろう。
 不味い、開いているからと言って勝手に入るのは軽率だった。見つかるのはよろしくない、事件と関係のない僕がここにいるのは怪しすぎる。事情を説明する前に退治されてしまうかもしれない。それは勘弁願いたいので、僕は身を潜めることにした。幸い大きめの箪笥などもあったため、その陰に隠れることができた。
 隠れてからすぐに人が入ってきた。どうやら二人のほかに慧音もいるようだ。
「ここで事が起きたわけね、なるほど妖気が充満しているわ」
「確かに、言われてみればそうだな」
 妖気は付喪神によるものだろう。これだけ古い道具が集まれば曰く付きのものなどいくらでもあるに違いない。
「妖気が……俺も居なかったんで詳しくはわからんのですが、多分親父はここで何か商品の点検してたんだと思います。で、その時何者かに……」
「で、妖怪の仕業なの? それとも見当つかずかしら」
「これです」
 若旦那はそう言うと布に包まれた包丁を取り出して見せた。
「む、ちょっと見せて」
 そう言うと霊夢は包丁を手に取り調べ始めた。
「うーん、これと言って怪しいところはないわね、むしろ」
 そう言うと霊夢は近くの別の包丁や琥珀色の箱を指さした。
「こっちの道具のほうが怪しいわ。この箱とか、なんか封印の術が施されているし」
「ああ、やはりそうか」
 慧音は合点がいったようだった。
「含みを持たせるわね。何?」
「いや、その箱はこの包丁が入っていたものなんだ。そうだよな」
「はい、間違いありません」
「それでだ、先も話したが、箱を開けた旦那は刺されたんじゃないかと思ったんだ」
「うーん、でも妖怪化の痕跡はないわね」
「当てが外れたか。しかしそうなると振出しだな」
 血を吸ってこれから妖怪化することはあるでしょうけど、と付け足すと若旦那は少し心配そうな顔をした。
「大丈夫だと思うけど、まあ心配なら供養しておきなさい」
「はい」
 曰く付きの道具で喜ぶのは金持ちの蒐集家だけである。
 異変解決家である霊夢が来たものの、結局進展のないままその日は終わった


 さて、ここまでだらだらと書いておいてなんだが、この事件は唐突に結末を迎えた。

 
 噂が里中を巡った。鍛冶屋の親父がとある製法書を読み、その方法を模倣してありったけの恨みを込めて鉄を打ったところ、怨念が取り憑き、包丁が付喪神と化したというものだ。
 霊夢は妖怪化を否定していたが、それも悪い方向へと転がった。恨みによる付喪神化は博麗の巫女の目を盗んで妖怪を生み出す方法であると認識されてしまったのだ。
 これは非常に不味い事態である。妖怪が里内で悪事を働いたこと、それを巫女が見逃してしまったこと、これは幻想郷の掟に反することなのだ。根も葉もない噂とは言え、広まってしまってはそれが里の歴史となってしまう。かといって止めようにも尾ひれがついて勝手に泳ぎ回るものだから始末に負えないのだ。
 ちなみに人間同士だけでなく、里の付喪神の間にもこの噂は浸透してしまっていた。
 事を重く受け止めた里の守護者はこの事件に関する歴史をまとめて隠すことにした。噂の原因を根底から絶つことにしたのだ。
 真相はすべて闇の中、事件は迷宮入りして忘れ去られることを待つのみとなった。


 さてここからは僕の勝手な見解を話そう。あたかも事の真相のように書くが、憶測でしかないことを了承してほしい。
 さて、広まった噂だが、これでは博麗の巫女が動かなかった理由を説明できない。
 そこで僕が唱える真相は今回の事件が式神を利用した計画的犯行だったというものだ。鍛冶屋の息子が売ってしまった書物の中には式に関するものも含まれていたからね。
 式神とは計算式を用いて物または生き物を使役する術の事だ。此処にあるコンピューターもそうだが、幻想郷で一番有名な式と言えば八雲藍が筆頭だろう。彼女には主が施した高度な術式が組み込まれており、その方程式に従うことで強大な力を発揮する。
 さすがにスケールが違うが、式とは算術の上に成り立つものであり、仕組みさえ理解できれば実は比較的容易に使うことができるのだ。現にこのコンピューターなどは使い方さえわかればだれでも使役することができるように設計されている。……使い方がわかればだが。
 それはともかく、鍛冶屋の親父は凶器となった包丁に式を組み込んだ。式は「心臓の位置を感知して、その座標に向かってまっすぐ進み、到達する」と言った単純なものでいい。素人でも組み込めると言えば嘘になるが、それでも過去に妖怪退治に関わる仕事を生業としていた名家ならわけないだろう。
 できた式包丁を箱に入れ封をする。箱には仰々しく文字や印を記す。それが結界の役目を果たすのだ。
 そして開店前の質屋に赴き、旦那に直接曰く付きの包丁だから高く買えと交渉する。普通ならそんな危なっかしいもの金を積まれても断るが、質屋の旦那は強欲だからあとでその筋の者に高く売りつけようと算段するに違いない。旦那は頭の中でそろばんを叩き終えた後、値切るだろう。鍛冶屋は切羽詰まっている様子を見せ「足元見やがって」とでも言って了承する。そして心の中でほくそ笑みながら店を出るのだ。
 あとは店主が箱を開ければ式が作動するという寸法だ。店主が道具を改めるのは大概夜であるから、その時間帯に飲み屋にでも入り浸ってアリバイを作っておけばよい。
 式神の優れた点は、役目を終えたら剥がれるということだ。つまり証拠は残らない。勿論式に精通した者が見れば痕跡くらいは残っているだろうが、そもそも疑うはずがない。暗闇の中の事故と捉えられるだろう。それに他殺を疑われても旦那を恨んでいる者は数多くいるのだから、アリバイのある自分に矛先が向くはずがない。鍛冶屋の親父はそう考えたのだ。
 鍛冶屋の親父は式を組み込むところまでは実際に行った。ただそこで、計画に狂いが生じた。計画を企てた当の親父本人が亡くなってしまったのだ。死因は感染症。計画遂行のために老体に鞭打って夜通し作業をしていたとので、身体が衰弱していたのだ。
 計画は破綻したのだが式を施された包丁は残った。
 さて、その後はこうだ。まず鍛冶屋だが、この親父がありとあらゆる術書を買い漁ったり、ほかの仕事を放棄したせいで、家計は火の車であった。
 困った息子は家じゅうの金物を集めて質に出したのだ。そして質屋の若旦那はそれをすべて買い取ってしまった。若旦那と鍛冶屋の息子は父親たちと違って良好な関係を築いていたらしい。気のいい若旦那は殆どがなまくらだと知りながらも品物を改めることもせず、鍛冶屋にとって必要な額を渡してやった。買い取った品はまとめて倉庫に放り込んだ。この時点で式が施された包丁はその中に紛れ込み息をひそめていた。
 そして、事件が起きた。道具の手入れが日課の旦那が何も知らずにその箱を開けてしまった。結果的に鍛冶屋の親父の復讐は果たされることとなった。

 
 というのが僕の推理だ。色々噂が立っては消えていくが、これなら一応筋は通るだろう。凶器は付喪神ではないし、式は剥がれ落ちたのだから妖力の残り香もない。霊夢が何も感じ取れなかったのも頷ける。
 そもそも式を使っての犯行はあくまで人同士のいざこざの範疇だ。妖怪化したわけでもないし博麗の巫女が介入することではない。
 つらつらと並べたがあくまで僕の持論だ。今では確かめる術もない。もし、僕の推理が正しいことを証明するには証拠が必要だ。
 幸い包丁は今ここにある。なぜかというと僕が買い取ったからさ。歴史が隠されて、ただの凶器でしかなくなった包丁は持ち主の質屋に返される。そこでだ、僕は質屋に赴き「この琥珀色の箱に入った包丁を届けてほしい」と香霖堂の場所と届けてほしい日時、そして大まかな金額の書き残しを置いといた。代金には色を付けといたから必ず来るだろうと踏んでいた。そして先ほど留守にしていた時に届いたみたいだ。代金は適当に持って行ってもらうよう書いといた。
 その辺に置いてあるだろう。そう、その箱だ。ちょっと中身を出してみてほしい。


 よし、出してくれたね。
 さて、凶器の包丁に式が施されていた事実。それを確認するには式に精通している者、あるいは道具の用途を見ることができる者の眼が必要だ。
 僕は式が剥がれ落ちた今、用途は無くなっていると予想しているのだが。
 どうだい、森近霖之助。君の眼には何が映っている?




 
 僕はただ驚いていた。僕の愛用していた筆が急に動き出したかと思うと、文字を書き、文章を構成し、物語を描いていたのだ。しかも題材は迷宮入りした人里の事件で、推理まで語られたのだから面食らうのは当然だろう。いつの間にか最後まで読んでしまっていた。
 さて彼の推理と提示した証拠についてだが、なるほど確かに名前があるが用途がない。
 人を殺めるという用途で生み出された道具。式によって組み込まれた役目を果たせば用途は消える。それはもう道具ではない。有形の無象だ。
「ふむ、そのようだ。君の持論が正しいことが証明されたわけだが」
 そう伝えるとさらさらと筆が勝手に動き出す。筆跡は僕の字と同じだ。
『そうかい、ありがとうスッキリしたよ。僕も探偵でも目指してみようか』
 その小さな体なら潜入捜査に向いているだろうが、やはりコネクションがないとどうしようもないだろう。
『冗談だよ。僕はあくまで歴史を記すのが役目だ。物事に口など挟めやしない』
「それは物理的にかい?」
 先から文字を書いているが彼は一切言葉を発していない。どうやら話を聞くことはできるが自ら話すことはできないようだ。
『喋る能力は僕には不要だからね』
 本人が言うのだからそうなのだろう。話術は僕ら商人にとっては必須だが、付喪神である彼には無用の代物らしい。
 事件のことはあらかた理解した。次の疑問は彼の事だ。僕は一呼吸置き、質問した。
「君はいつから付喪神になったんだい?」
『さていつだったか。ただ霧雨道具店にいたころの記憶も残っているし、香霖堂を初めて執筆したときのこともぼんやりと覚えている。その時は確かに僕は単なる筆だったはずだ』
 となると最近だろうか。古い割にはひび割れたりしているようには見えない。これは僕が手入れを怠らなかったからでもあるが。
「99年も経た年代物には見えないが」
『ここはあまりにも妖気にあふれている。歴史を記し続けているうちに妖気にあてられたのだろう』
 確かに曰く付きの道具は多い。それに外の世界の魔力を帯びている物もある。なるほど付喪神化するなら此処ほど適した場所もない。僕が歴史を記しているうちにだんだんと変化したのだろう。
 面白いこともあるものだ。愛用の筆が知らない間に付喪神になっていたとは思いもよらなんだ。
 僕はこの奇妙な体験をそのまま小説にしようと思った。数日後、里で小説のコンテストが開かれる。それになにかしら応募しようと思っていたところなのである。


「なぜだ」
 送られてきた冊子をぺらぺらと捲る。だが、どこにも僕の名前が載っていない。
 僕の書いた小説は賞をとるどころかエントリーすらされてなかった。
『あたりまえさ。今、里では歴史が隠されているんだ。この事件に関する情報は里に入ると勝手に隠蔽される。本人の意思に関わらずね』
 なるほど、納得がいった。裏を返せば里の外でのみ事件を認識できるのだ。僕は香霖堂でこの事件を知った。だから文字に起すことができたのだ。
『もし、どうしても僕の推論を公にしたいのなら、歴史を隠した張本人に直接、里の外で見せるしかない』

 カランコロン
「居るか霖之助」
「いらっしゃい」
「遅くなったがこの間の外套代だ。寒かったから助かったよ」
「それは良かった、ついでに何か買って行ってくれると僕の懐も温まるのだが」
「仕方ないな、これとそうだな、この半紙でも貰おうか」
「毎度あり」
 カランコロン

『……見せないのかい』
「ああ」
 言ってしまおうかとも思ったが、やめておくことにした。よくよく考えてみるとそれは一度隠したものを掘り返すような行為だ。僕の趣味じゃない。証拠をつついて、真実を暴いて、それではまるで探偵が犯人を追い詰める時のようではないか。
 探偵役は似合わない。あくまで僕は傍観者に徹していたい。幻想郷という箱庭で、物語の主人公を気取るには如何せん華やかさが足りないのだ。こういうことは可憐な少女たちでもに任せておけばいい。古道具屋はこうやって道具を売って、本さえ読めれば満足なのだ。
森近霖之助は動かない。そんな感じ、つきもののお話でした。
明日は例大祭ですがなんと今度の新作は獣が憑依するそうで、万能ですね憑依。
追記
コメントの通り「あなたを犯人です」は小ネタなのでした(笑)
灯眼
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コメント



0.150簡易評価
1.100サク_ウマ削除
いやめっちゃ面白い。お見事でした。してやられました。
2.90奇声を発する程度の能力削除
面白く楽しめました
3.100名前が無い程度の能力削除
探偵の真似事で駆け回るなんて霖之助がそんなにやりたがるかなあと思いつつも、付喪神のやり取りやキャラのそれっぽい会話、気になる謎でぐいぐい読み進めました
謎が明らかになる下りでは正直少し物足りなさを感じつつも面白かったなーと思っていたのですが、やられましたね
最初に感じた違和感すらも伏線だったとは。なるほどすべてに合点がいき、脱帽としか言いようがありません
5.100終身名誉東方愚民削除
論理付けがすごくしっかりしていて読んでいくうちにどんどん引き込まれました。完全に◯◯が犯人だと思っていたのでオチも意外でとても面白かったです。中盤ちょっと後くらいの子供達の会話の「貴方を犯人です」は「貴方が犯人です」の誤字でしょうか 違ったら申し訳ないです
8.100名前が無い程度の能力削除
最後の謎解きには二つの意味で驚かされましたあなたを犯人ですは誤字じゃないとしたら洗脳探偵翡翠のネタかな?まさしく箒がお出掛けですって感じ