Coolier - 新生・東方創想話

火ノ粉ヲ散ラス昇龍

2018/12/10 02:56:50
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 神様、どうして我らにこのような責め苦をお与えに?

 あの時、幻想郷の人里で起きた悪夢のような異変に対し、人と妖は揃ってこの言葉を呟いた。明らかな異常であった。
『ザ・デス辛・地獄異変』
九代目「御阿礼の子」、稗田阿求は幻想郷縁起でこの事件の顛末を記載する時、「アレは現実じゃなかった、幻だった、そう自分に言い聞かせなきゃ、耐えられない」と述べている。
 事の発端は、幻想郷に突如訪れた謎の流行、「激辛ブーム」にあった。妖怪の賢者、八雲紫の手回しもあり、食文化で香辛料の流通が急激に強化され、民間の飲食に様々な「激辛メニュー」が誕生したのである。
夜雀の妖怪、ミスティア・ローレライが経営している屋台で考案された「ピリ辛ウナギ串」「ピリ辛マヨポテト」「ピリ辛チンジャオロース(肉無)」が世間的に「始まりの御三家」と呼ばれている。
しかし、初期の段階ではまだ「ピリ辛」と、辛さのレベルは比較的に抑え気味であった……が、名もなき一人の酔っぱらいが、酔いに任せて、とある言葉を宣ったのである。
「ピリ辛じゃ物足りなくね?(笑)」
 それを聞いた店主のミスティアは、その場では愛想笑いを浮かべていたが、内心穏やかではなかった。
――目に物を見せてやる――。
青い炎のように熱く、静かな決心がそこにあったという。そう、このミスティアという妖怪、食に関しては誰よりも拘りがあった。
それから一週間、彼女は屋台を休業し、「自慢のピリ辛料理に対し「物足りない」発言をした、あの名もなき人間を完膚なきまでいわしたる」という精神で、新たなメニューを考案したのである。
これまでメニュー欄の隅に慎ましく書かれていた「ピリ辛」の文字にはバッテンの印が、そして代わりにメニュー表のど真ん中にデカデカと血の色のような赤文字で「激辛」と書かれていたのだ。
幻想郷第一次激辛ブームが始まったのだ。
初めは物好き専用のメニューとして扱われたこの激辛料理であったが……そこは長年この土地で酒と食の世界を生き抜いてきたミスティアだ。人間友好度は「悪」にも関わらず、彼女の作る激辛メニューは、単に辛いだけではない。
……そう、美味いのであった。
天狗が発行する新聞の広告、噂は人から人へと流れていき、夜の人里には大勢の辛党達が織りなす行列が完成した。老若男女を問わず、そこには種族の違いもなく、ミスティアの激辛料理は人妖隔たり無く、広い層に愛されたのである。「やみつき」「虜に近い」「くせになる」と評判も高く、ミスティアのある種「実験」にも近い料理は結果として既存の食に一石を投じる形となったのである。
そこからであった。激辛のビッグウェーブ、里で夜店を出している他の商売敵がそれを黙って見逃す筈もなく、激辛ブームの仕掛け人であるミスティアに触発され、次々と辛さをテーマにした新メニューが各所で生み出される事となったのだ。
最初は居酒屋、小料理屋と夜の店が中心であったが、その波紋は夜店に留まらず、甘党の居場所であった甘味処にまで及んだのである。スパイシーとスウィート、味覚の垣根を越えてのコラボレーション、『辛味噌まんじゅう』が誕生する。甘さの中に刺すような辛さ、アメとムチを彷彿とさせる斬新なメニューにより、激辛は一気に幻想郷中で『バズった』のである。
だが、幻想郷の中でも歴史ある老舗の煎餅屋で真っ赤な『ハバネロ煎餅』という商品が売られた時、ついに彼女が姿を現したのだ!
 楽園の素敵な巫女、博麗霊夢である。
霊夢がその煎餅屋でハバネロ煎餅を購入したのだ。そもそも、幻想郷で何らかの目立つ動きがあれば、彼女が必ず出張ってくる。必然であった。そして博麗霊夢は、この煎餅屋の常連でもあった。お茶請けに煎餅、本を読む時も煎餅、宴会の肴も煎餅、布団も煎餅、時々メインのおかずも煎餅……そう、何を隠そう、彼女は根っからの煎餅マニアなのであった。詳しくは博麗霊夢の著作『せんべい~千の魅力』を参照してほしい(※現在は絶版との事)。
つまり、霊夢にとってこの煎餅屋は生活の一部、人生の一部と化していた。そんな彼女の日常を脅かすような異変、霊夢は絶対に許しはしないだろう。彼女の登場により、この異常なスピードで広がった激辛ブームは虚しく幕を閉じると、誰もがそう思った……。
 しかし霊夢、ハバネロ煎餅を一齧りすると、最初は激しく咳き込み、涙目で難色を示していたが、彼女はハバネロ煎餅を再び口に運んだ。一齧り、更に二齧りと、真っ赤な煎餅を頬張った。彼女は理解していなかった……辛さには、悪魔の罠が潜んでいる。
辛さには、中毒性があるのだ。
すると霊夢、突然ハバネロ煎餅を片手に酒屋へと直行。一切の迷いもなく安めの缶チューハイを購入。そして、人里の真ん中でハバネロ煎餅を肴に一杯始めたのである。
 思えば、それは当たり前の事であった。
ハバネロ煎餅、つまり……。
辛い物は、お酒によく合うのだ。
 霊夢の激辛巡りはそれに留まらず、里の客引きに勧められるままに、様々な出店を回って激辛料理に舌鼓を打った。偶然、取材に来ていた天狗の新聞記者、射命丸文が激辛ブームについてインタビューを行ったところ、霊夢はほろ酔いのまま、満面の笑みで応えた。
「激辛、さいこー」
 そう、これは公認である。
 主人公のお墨付きとあってはこの勢い、留まる理由がない。人里には唐辛子をメインに大量の香辛料が入ってきた。人々は躍起になって美味い&辛い料理に暫し酔いしれた。
激辛料理に合わせて酒も飛ぶように売れた。特に売れたのはビールと、ハイボール、そしてホッピー。人々の間で、飲み会の挨拶であった「とりあえずビール」は急遽「とりあえずタバスコ一瓶」へと変更された。酒、そして辛さ。このコンボが基本……かと、当初は思われていたが、ここで予想していない事態が起きた。
飲み会での酒の強要は暴力である。所謂アルハラというヤツだ。しかしこの激辛ブームの流れ、本来は酒を飲むために入った居酒屋でも、激辛料理がテーブルの中央に鎮座した瞬間、飲みニケーションなどと悠長な事は言っていられなくなる。
そう、激辛料理と一緒に酒を注文する客が減りだしたのだ。
激辛は、スポーツだ。のんびりと酒を飲んでいる暇など無くなる。
店に入った客は、額に汗をかきながら激辛料理に食らいつかなければならない。だって、そうしないと目の前の激辛料理は減らないのだ。酒なんか飲んでる場合じゃない。別に強制でもないのに、人々は必死で箸を動かし、血のように真っ赤な料理を堪能するのだ。そう、これはスポーツ、これは戦いなのだ。退く事は決して許されない。そのおかげか、仕事の上司による酒の席での説教や一気コールの被害が激減した。素晴らしい事である。
さらに一般家庭の食卓にも激辛ブームの影響が表れ始めた。妖怪達に人気のある、地底の食事処『ペリカン食堂』が考案した斬新なおかず商品『食べちゃえラー油』が飛ぶように売れたのだ。この幻想郷において、ラー油はもはや調味料ではなく、おかず。珍味としても重宝され、仕事帰りのお土産にも丁度良いのである。
そして、博麗の巫女が好んで食べていたハバネロ煎餅とハイボールの相性抜群な『天国と地獄セット』が妖怪達の間でプチ流行しちゃっていたのだ。知らないうちに居酒屋の人気「裏」メニューとして採用されていたのである。宣伝文句には「永遠の巫女、まさかのお気に入り!」、これには霊夢本人も思わずニッコリ。
 意外だったのは、氷精であるチルノの活躍であった。
 人間という生き物は、辛い物を食べた後についつい欲してしまうのだ。冷たくて甘い食べ物を。まさに今の人里では、辛さに疲弊した舌を癒すための癒しの場が求められていた。
チルノの作り出す氷は天然水が原料である。質も上等、氷菓子を作るには最高の素材となるのだ。安全且つ、コストは実質ゼロ、商売経験のないチルノであったが、彼女の存在は図らずもユーザーのニーズに適していたのである。早い話が、チルノったら最強ね。
 急遽、チルノは寺子屋に通うちびっ子妖怪達と結託し、人里の一角にかき氷屋をオープンしたのである。毎夜毎夜、人里には辛さを求めて人が行き交う、そんな中での氷菓子屋さん、それはまさに砂漠のど真ん中に突如現れた楽園(オアシス)であった。
 チルノのビギナーズラックは止まらない。彼女は同じく寺子屋のマブダチでもあるミスティアと手を組み、新たな商品を開発した。
 辛さとは、必然的に熱さの隣に座る。熱さは、冷まさなければならない。その期待に応える食べ物。特に料理屋で、鍋モノを食した後、お会計の直前に出されたら嬉しい食べ物。
 それは『ゆずシャーベット』……柑橘類系の爽やかな風味と、辛さによって徹底的に苛め抜かれた味覚をリセットしてくれる冷たい甘さ、それらを程よく兼ね備えた甘味、まさに神が与えた祝福のようなデザートである。ほんと、チルノったら最強ね。
ミスティアの屋台では〆にこのシャーベットを出すのが定番となった。裏があるから表がある、闇があるから光がある。この世は陰と陽で成り立っている。それは食も同じだ。辛さを十分に堪能した後だと、その分だけ甘い食べ物の美味さも一入増すのである。
チルノとミスティア、本来は寺子屋でも指折りのいたずらっ子として、教師である上白沢慧音先生も手を焼いていた存在であった。つまり、彼女らはただの悪戯好きの子供だった。
その二人が起こした、好奇心と遊び心で始まったプロジェクト、神の悪戯か、それとも運命か、まさかの大当たりであった。
激辛料理でグロッキー寸前のお客に、突如として涼しい風が、そう、夏の風が流れた。陰陽が交わり、一つとなった瞬間である。
そして、気付けばレパートリーは国境を越えていた。
日本を飛び越え、インド、中国、韓国、アジア圏を股にかけて激辛料理は進化していった。特に、中華の安定感は異常であった。
四川省の家庭料理をメインに、地獄の血の池を思わせるほどの真っ赤な麻婆豆腐の登場により、青椒肉絲、回鍋肉、炒飯、エビチリ等の食材、その調理法が爆発的に広まった。辛いだけではなく、美味い。食文化の発展は経済効果に直結しており、人里は瞬く間に潤っていった。突如として始まった激辛ブームはもはや「バズる」を通り越し、「バブる(バブル)」へと昇華したのである。
 そう、幻想郷の住民は楽しんでいたのだ。この異変を。
 ……。
 ここで話が終わっていれば、一夜の祭りのような、楽しい催し物程度の事で済んだのかもしれない。ここで終わっていれば、誰も傷付かなかったのかもしれない。そう、ここで終わっていれば……。

 ・・・

その店の名前は『辛辛軒(からからけん)』という。

 ある日、謎の店が人里に出現した。
一つのブームから新たな店が現れるのは別に珍しい事ではない。しかし、今の幻想郷でこの手の店はもう溢れかえっていた。お昼時の出店では唐辛子を主流とした食べ物(特に最近は一周回って比較的ポピュラーな激辛焼きそばが人気の様子です)が多く出回っており、日を追う毎に新しい商品開発が行われていった。
挙句の果てに激辛シュークリームや激辛チョコレートパフェ、激辛ショートケーキなど、激辛とは対極の存在である甘ーい食べ物との融合という「それ激辛にする必要ないだろクソボケカス」と言いたくなる商品まで生まれる始末である。
……ちなみに、魔法の森に住んでいる魔法使い、もう一人の主人公である霧雨魔理沙は激辛ショートケーキがお気に入りの様子だった。結局、「頭が狂ってる」と評されてこの手のお馬鹿メニューは次々と廃止された。魔理沙は残念そうだった。酷いのぜ。
つまり、生半可な激辛メニューじゃ通用しない。味や辛さはもちろんの事、必要なのは目新しさ、誰もが食いつくような斬新なアイデアが無ければ、この幻想郷辛い物三国志大戦は生き残れない。
だが、驚く事に、この辛辛軒のメニューは……。
まさかの「担々麺」一品であった。
一点突破……、あまりにも無謀な策略であった。普通なら、サブメニューも付いている筈である。餃子、炒飯等、通常なら中華の定番メニューもセットで付いている筈だ。しかしこの辛辛軒、どういう訳かそれらの手堅いラインナップを全スルー、まさかの担々麺ワンマンプレーを採用しているのだ。
しかし、だからこそ気になるものである。
他のメニューに頼る事なく、担々麺ワントップでフィールドを駆け上がろうとしているこの店に、誰もが興味を抱いた。
そしてついに、初めてのお客さんが来店する。
 その男の名前、今のところは名無しという事で、権兵衛としよう。人里で木材を建築の職人に売って妻と子を養っている男であった。その日は帰路に着く前に最近話題の激辛料理を食べて帰ろうと思い、里の店を回っていたのだが、何処も人気で長蛇の列が出来ていて、権兵衛はすっかり困ってしまっていた。
 そこで目についたのが、辛辛軒である。
 人の列が出来ていない。
いや、そもそも人がいない、不気味なほどに。
周りの店にはずらりと人が並んでいるというのに、この店だけは誰一人並ぼうとしていなかったのだ。それもそのはず、周りの人間達は様子見に徹していたのだから。美味いのか、不味いのか。
「こちとら腹ペコなんだ。どんな物だって美味しく食ってやるさ」
 権兵衛は少々豪気な性格であった。誰もが穴倉を決め込むというなら、俺が第一のお客になってやろう。権兵衛がその辛辛軒の暖簾をくぐってから四半刻経った後、それは起きた。
 賑やかな夜の喧騒に、突如、絶叫が鳴り響いた。
それは、あの権兵衛が足を運んだ店、辛辛軒からであった。付近の店にいた人々が一体何事かと外へ出てくる。すると、辛辛軒から権兵衛が出てきて、目を見開きながらのた打ち回っていたのだ。
「みんな……ヤバい……助けてくれ……助けてくれ……ッ」
 幸いにも、今夜の人里には永遠亭の薬師見習いである鈴仙・優曇華院・イナバがいた。薬売りの帰りに寄り道して竹林の案内人である藤原妹紅と酒を飲んでいたという。鈴仙はその場に持参していた薬を持って、店の前で倒れこむ権兵衛へと駆け寄った。
「どうしましたかっ? 一体何が……」
「……化け物だ……あれは……マジの化け物だ……ッ」
 化け物ですって?
「妖怪ですか? この店の中に現れたんですね?」
 権兵衛の慌てる様子を見て、弾幕、スペルの構えをとり、鈴仙はキッと辛辛軒の暖簾を睨む。内部は薄暗く、中の様子は伺えない。それがどうしようもなく不気味である。戦闘の目で店を睨みつける鈴仙に、権兵衛は半ば半狂乱で、それを制した。
「違うっ! 中にいるのはただの亭主だ! だが……あの亭主が作る……あの担々麺……あれは、地獄だ……血の池地獄だ……ッ」
 地獄の鬼、その言葉に鈴仙は「?」のマークを頭に浮かべた。
「どういう事ですか……?」
 鈴仙は傍にいた妹紅に権兵衛の介抱を頼み、単身でそのまま辛辛軒の暖簾をくぐったのである。
 しかし、店内には空間操作の魔法がかかっていたのか、店の中は外観よりも少々広く感じた。店内には小さなカウンターと一人分の椅子が一脚だけ置いてあった。そして、店内の装飾は禍々しく、不気味であった。なんで人の頭蓋骨がテーブルに置いてあるんだ。
『らっせーい』
 カウンターの奥から、身震いするほどの低音が響いた。まるで軋む木の板のようにおどろおどろしい物であった。鈴仙は身構えながらその声の主の顔を凝視した。一瞬、叫び声を上げそうになった。
 驚くべきことに、亭主の顔は人間ではなかった。
 牛の首である。まるで悪魔、バフォメットを想起させる凶暴な角に、獰猛な漆黒の体毛、炎のように荒々しく、夜闇のように底知れない二つの黒い眼球、思わず攻撃の態勢をとってしまったが、その亭主が放った『らっせーい』という癖の強い「いらっしゃいませ」のおかげでどうにか冷静を保つ事が出来た。らっせーいって。
『……食事でしょう? さぁ、お掛けになって』
 その牛の化け物は意外にも紳士的な喋り方をする。鈴仙のまごついた様子を見て、その牛は落ち着いた動きでゆっくりと椅子を指した。接客業における最低限の「奉仕の精神」は持ち合わせているという事だ。鈴仙は動揺しながらも、その椅子に座った。
「さっき、この店に入った男性が、尋常じゃない様子で店の外に倒れていました。何があったか……いえ、何をしたのか教えなさい」
 椅子に座りながらも、鈴仙はいつでも攻撃出来るように相手の様子を窺っていた。油断のない鈴仙に対し、店主は臆することなく、落ち着き払った様子でお冷とおしぼりをカウンターに置いた。
『……先ほどのお客さんですか……いえ、私は何もしていませんよ。ただ……ウチの担々麺が、思いのほか辛過ぎたのでしょう……』
「担々麺、ですか……」
 その時、この不穏な雰囲気の中で「クゥ」と、何処となく場違いな音が鳴った。その瞬間、鈴仙は少々赤面する。先ほどまで妹紅とちょい飲みをしていた最中であった。その中で、突如やって来た担々麺という名の〆……恐ろしいほどに魅力的ではあった。
「おいウサギちゃん! どうしたんだ?」
 店の外から妹紅が入ってくる。その後ろには永遠亭で働くウサギ達がいた。その様子から恐らくあの権兵衛という男は無事に永遠亭まで搬送されたのだろう。
『すいませんねぇ、お客さん。満席なんですよ。何せこの狭さだから……どうか店の外でお並びになってください……』
 店主が唸るような声で、しかし心底申し訳なさそうに言う。奥でゴソゴソと調理を進めている店主と、律義にカウンター席に座っている鈴仙を交互に見つめながら、妹紅はひどく困惑した。
「妹紅さん、ここは店主さんの言う通りに……。ここで無駄に争うよりも、まずはその原因を見定めましょう……」
 鈴仙の目には若干の怯えがあった。しかし、それと同時に好奇心にも似た何かが宿っていた。その目を見た妹紅は、一瞬だけ悩んだ。このまま鈴仙に任せてもいいのか、と。しかし、この店の店主からは敵意が感じられない。妹紅は戸惑いながらも、静かに頷いて、何も言わずに店の外に出て行った。……それがまずかった。
 ……。
 数分後、鈴仙は先ほどの権兵衛と同じように叫び声を上げ、ずるずると足を引きずりながら店から出て来た。青ざめた表情をしていた。いつもはピンとしているウサギ耳も何かへなへなになっていた。
「……ば……化け物……め……ッ」
 妹紅は自分の軽率な判断を恥じた。鈴仙なら安全に動く事が出来ると、たとえ危険な状況に陥ったとしても、的確に引き際を見極める事が出来ると考えていた。しかし、それは誤りであった。
 妹紅は確信した。あの店主が作った担々麺には何らかの魔術が生じていると。それは、対象の判断力を鈍らせる何かだ。恐らく、どんな状況であっても冷静沈着にトラブルを回避する鈴仙の脅威的な生命力さえかき乱すほどの濃度である。
 上手く呼吸が出来ないのか、鈴仙は滴るような涙を流しながら自らの喉を抑えていた。まるで毒を飲まされたような表情であった。妹紅が鈴仙の介抱をしていると、あの牛の顔をした店主が店から出て来た。この騒ぎに、店の周りには人だかりが出来ていた。その中には人間だけではなく妖怪達もいる。妹紅は店主を睨みつけた。
「逃げ……て、殺、される……」
「お前……鈴仙に何したんだ? 答えろ!」
 店主は無表情のまま(っていうか牛だから表情がわかんない)、地面に倒れこんでいる鈴仙を見下ろしていた。その底知れない漆黒の眼球には、どす黒く、空恐ろしい感情が渦巻いていた。
『何もしておりませんよ、私はただ、お客様に担々麺をお出ししただけです。……魔術なんて、そんな物、使いませんよ』
「……っ!」
この店主、ただの妖怪じゃない。一体何者だ……ッ?
『くっくっく……』
 店主は笑いながら(顔が牛なのでやはり表情は変わらない)視線を妹紅達から、周りにいた住民達に移した。そして、演説のように声を張り上げて、その場にいる者達に語りかけた。

『これは、宣戦布告である』

 突如、夜の香ばしい香り漂う人里に起こるどよめき。
『貴様らは求め過ぎたのだ』
 ざわめきと共に浸透していく不安、辺り一帯に感染していく、得体の知れない恐怖感、人々のその怯えの宿った視線を無視するように、店主は淡々と言葉を述べていく。
『そう、激辛料理を作り過ぎたのだ。この幻想郷には、激辛が増え過ぎたのだ。だから、私という存在が生まれたのだよ……。私の名は、辛神(カラガミ)。欲に溺れ、侮り、「辛さ」をくだらぬ娯楽へと貶めた貴様らを罰するためにやって来たのだ。愚かで傲慢な貴様らを、地獄の底へと突き落とすためにな……!』
 店主、辛神は残酷に、嬉しそうに、楽しんでいるような様子で語り続けた。そして、辛神は店の中に戻り、一杯の担々麺を持って再び、その場にいた人間達に言い放った。
『三ヵ月の猶予を与えよう。それまでにこの激辛担々麺を完食出来る者が現れなかったら……くっくっく、そうだな……、この土地で採れる食材の味を、全て激辛に変えてやる、というのはどうだ?』
「な、何だってっ!?」
「幻想郷中の食べ物を」
「全部……激辛に変えるだと……」
「ど、どうやって……っ」
 その場にいた人間達が次々と恐怖の表情を浮かべていく。
『何かこう、そういう能力で。バンッ、って』
 大事なところがずいぶんとフワッとしていた。バンッ、って。
『詳しい事は俺もよくわからんが、俺にはそれを可能とする力が備わっている。やろうと思えば、この世界の住民がよく被っている帽子(いわゆるZUN帽ってやつ)を、全部韓国のりに変える事が出来る。もう滅茶苦茶パリッパリのヤツだ』
 その瞬間、辺りにいた人々に戦慄が走った。
「マジかよ……ZUN帽を……全部パリッパリにするだって?」
『……くっくっく、そうだ、パリッパリだ』
 流石にそれはまずい。このまま、この辛神とかいう化け物の思うままにさせていたら、幻想郷に存在する全てのZUN帽がパリッパリの韓国のりにされてしまう。違う。幻想郷に存在する全ての料理が「何かそういう力」で激辛に変えられてしまう。
 その時、辛辛軒の付近に一陣の鋭い風が吹いた。
「そこまでよっ」
 激辛ブームに酔いしれる人里の夜に、赤と白の少女が舞い降りた。博麗霊夢である。彼女の、巫女のカンがそうさせたのか、この異様な雰囲気をいち早く察知して飛んできたのである。
『……ふん、幻想郷の守護者か……』
「この里で勝手な真似は許さないわ」
 代々、博麗の巫女には大昔から受け継がれた戦法という物がある。いや、霊夢にとってそれは戦法ではなく、家訓に近い。
 先手必勝、という信念である。霊夢は名乗る事も無く、ましてそれ以上会話を続ける素振りも見せず、無言のまま辛神に封魔針を発射しようとしたのである。
 しかしその時、とてつもなく奇妙な現象が起こった。
 霊夢が辛神に弾幕を放った瞬間、その場にいた人間達は皆、時間が止まったような錯覚を起こした。まるでフィルムが一部、不自然に抜き取られた映像のように、光景が歪んだのである。
 そして、気付けば霊夢は辛辛軒の椅子に座っていたのだ。霊夢自身、移動したその間の記憶は一切なかった。その現実に最も驚いていたのは、他ならぬ霊夢本人であったのだ。
「な、何が起こったの……?」
 全く予期しなかった出来事に、妖怪退治のプロである霊夢も困惑の様子を見せていた。すると、カウンターの奥で辛神が包丁を片手に座っていた。この時、霊夢は素晴らしくゾッとしたという。
『らっせーい……一名様ご案内です……』
 シャンシャンと薄気味悪い金属音を立てながら、辛神は太い肉切り包丁を研いでいる。霊夢は再び辛神に攻撃を仕掛けるために椅子から立ち上がり、そのまま距離を取ろうとしたのだが……。
「……っ、また……!?」
 確かに、霊夢は椅子から立ち、そのまま後方へと下がった筈である。しかし、気付けばまたあのカウンター席に座っていた……いや、何らかの方法で座らされていたのである。
「まさかコイツ……咲夜みたいな能力を……」
 霊夢は、紅魔館の従者である十六夜咲夜の持つ力を思い出していた。以前戦った際に体験した、謎の時間操作能力の事だ。
『……私に攻撃する、それはつまり、私の挑戦を受ける意志をお持ち、という事ですね……よろしいでしょう』
 霊夢はその瞬間に悟った。コイツに危害を加えようとすれば、強制的にあの椅子に座らされる。この辛神という生き物、存在自体が何らかの結界、あるいは術式そのものである可能性が高い。
 この場合の撃退方法は限られている。その中でも霊夢は、今回の条件下ではかなり分が悪いと考えていた。
 それは、相手の提示する勝負内容を受け入れ、その上で正々堂々と勝利する事。つまり、辛神の出した条件、彼の作る担々麺を無事に完食してみせる事である。
『噂で聞いたのですが……霊夢さんは……意外に辛い物好きらしいですね……これは、良い勝負を期待できそうです』
「……了承するしかないようね……いいわ、望み通り、アンタの土俵で戦ってあげる。その担々麺とやらを完食すれば、私の勝ちって事でいいのよね? ……ふふん、そんなの楽勝よっ!」
『くっくっく。相当の自信がおありのようで……』
 辛神は上機嫌そうに調理を始める。その間、霊夢は能天気に店のレイアウトを見物していた……と見せかけて、内心は辛神の弱点か、ヤツを取り巻く術を無力化ための鍵を探していた。油断していると思わせる。自分の限界や本性を他者に知られないために余裕である事を装う。霊夢の癖であり、ある種の意地でもあった。
『でもそういう生き方、結構疲れるでしょう?』
「……なっ、急に、何の話をしているの……?」
『くく、貴女の話ですよ。霊夢さん……常に強者であろうとするその矜持は素晴らしいと思いますが、それはあくまで守護者としての霊夢さんの話です。人間としての貴女は、その生き方に縛られっぱなしで、それがとても窮屈に思えて仕方がない……でしょう?』
 辛神の、全てを見透かしたような物の言い方に、常に冷徹であるように努めていた霊夢は、珍しく激昂した。
「……っ! 黙って聞いていれば勝手な事ばかり言って! アンタみたいな化け物に説教される筋合いなんてないわよ!」
『ほらまた、意地を張って……この店にいる間は、少なくとも、私のお客様でいる間は、肩の荷を下ろしてはいかがでしょう? ここでは法も理も、それこそ、しがらみさえも必要ない。時には素直になって、ありのままの自分を慈しむ事も必要ですよ……』
 霊夢の中の本質、他人に触れられたくない、精神の最も脆く、傷付きやすい部分を、辛神は労わるように、触れていく。
「勝手な事、言わないでよ……そんなの……そんなの……」
 霊夢の心は、氷の如く冷たい。否、そうであるように自分で自分を律しているのだ。だが、辛神の何処か温かく、そして優しい言葉の愛撫により、霊夢の氷は溶けかけていたのである。
『いつも、お疲れ様です。霊夢さん……』
 お疲れ様。ぶっちゃけ、霊夢はこの一言で泣きそうになっていた。
これまで、本当の自分を肯定してくれる存在は、ただ一人だけ、相棒の霧雨魔理沙だけであった。レイマリっていいよね、なんかこう、キュンってなるよね。まさかこの得体の知れない食事処の店主が、レイマリという至高のカップリングと同じ席に座るとは誰も予想出来なかったであろう。だが、あり得ない話ではない。
 飯屋では、特に地元で一定の層に愛されている昔ながらのラーメン屋では、時折そういう奇跡が起きるのだ。
例えば残業で疲弊しきったサラリーマンが、週一で通っているラーメン屋に足を運んだ時、ラーメン屋の大将がふと口にする「お疲れ様」の一言、上司の無茶ぶりによって擦り切れた心をそっと溶かすような、温みのある一言、その何気ない言葉に救われた大人達が、現代の日本にどれほど溢れているのだろうか? それはいわゆる「ラーメン・イリュージョン」……このご時世で、気を張って生きている大人を、温かいラーメンのスープと、飾り気のないストレートな労いで癒してくれる、人情という名の魔法である。
 この辛神という化け物、目的はどうであれ、れっきとした料理人の端くれである。飲食をやる上で最も重要な心得……「お腹だけではなく、心も満たしてみせる」という立派な奉仕の精神、食魂(フード・スピリッツ)を持ち合わせているのだ。
『……ふふ、お待ちどうさま』
 霊夢が動揺しているうちに、辛神は慣れた手付きで霊夢の前に一杯の担々麺を置いた。それはひたすら赤く、血の池のようにおどろおどろしい物であった。トッピングはいたってシンプル、豆板醤と甜面醤、更に風味をまろやかにするための芝麻醤が程よく絡み、赤くなった豚肉のそぼろが丼の中央に鎮座している。さらに、周りの赤いスープとは対照的に涼しげな色合いでフレッシュさを醸し出している青梗菜が肉そぼろの横でうたた寝していた。それだけ見れば普通に美味しそうな担々麺であるが、前述のとおり、異様なのはそのスープの色である。恐らく、使われている物は、従来の担々麺で使用されるようなポピュラーな調味料ではないはずだ。
しかし心が揺れている今の霊夢には、その危険を察知するだけの警戒心が欠けていた。見た目だけで「これは絶対口に入れたらアカンやつ」だと分かりそうな物だというのに……。
今の霊夢は、「この人に全てを委ねてみたい」という、ある意味ラブが入ったような感情が混じっていた。何それ。
辛辛軒の唯一にして最強の担々麺『ここは地獄の一丁目だぜ』、略して『地獄一丁』を、霊夢は疑う事も無く口に運ぶ……。
「駄目、よ、れ、いむ……ッ!」
 その時、店の外で待機していた鈴仙が目を真っ赤にしながら飛び込んできたのである。担々麺の辛さにより、鈴仙の声は潰れていた。しかし、霊夢は鈴仙の言葉を聞くどころか、一瞥もくれずに目の前の担々麺のスープを口に含んだのだ。
『くっくっく……もう遅い』
 瞬間、霊夢の口内に、爆雷が巻き起こった……。
(……は……?)
 辛い、なんてもんじゃない。霊夢は一瞬、舌が抜き取られたような錯覚を起こした。だがこれはあまりの辛さ故に、ではない。これは、霊夢の脳が見せた幻影である。舌が無くなったと錯覚させ、少しでも痛みを麻痺させるという無自覚の防衛本能であった。
「あ、あがあああぁああぁあ……ッ!」
辺りに響き渡る、霊夢の絶叫。
辛辛軒の地獄一丁は、脳が見せる一時的な幻影ごときで霞むほど甘くはない。霊夢は瞬時にリアルへと引き戻された。
『分かるかい? 目で見た物だけがリアルだろう?』
 何か変な事言ってる。その瞬間、霊夢の瞳から澄みきった雫が滂沱と溢れだした。そこでようやく、巫女としての使命を思い出した。そうだ、この担々麺を完食しなければいけないのだ。霊夢は持ち前のガッツで何とか箸を取るが、その手は激しく震えていた。そう、恐怖していたのだ。これを一口食べれば、再びあの衝撃がやって来る。また、あの辛さが襲ってくる……。
霊夢は今までの人生で、幾度となくこのような境地に直面してきた。紅霧異変、春雪異変、永夜異変、何度も底知れない恐怖と対峙してきたのだ。しかし、その度に霊夢は己を奮起し、傷付きながらも心だけは折れる事なく、強敵に挑み続けた。コンティニュー、異変である以上、自分にゲームオーバーの文字はない。彼女の強さの根底には、「決して諦めない」という精神があった。
(無理だって……これ、無理だって! 絶対無理だって!)
その霊夢が、この地獄一丁を前にして、初めて「試合放棄」という言葉を選択肢としてその道に置いたのである。このまま続行すれば、命はない。しかし……ここで諦めたら……どうなる?
(幻想郷中のZUN帽が……有明海苔にされちゃう……っ!)
 違う、色々と。ここで霊夢が諦めたら、幻想郷中の食べ物が全て激辛に変えられてしまう。生きるという事は、食べるという事。神社の賽銭も少なく、度々貧困生活を送っている霊夢はそれを痛いほど理解していた。食べ物を全て激辛に変えられるという事は、生き方を根本から歪められるという事である。幻想郷中の生き物が、激辛に苦しむ事になる。それだけはあってはならない。
霊夢は涙を流しながら、意を決して担々麺をすすった。ええいままよ、決死の覚悟があった。この豊かで素晴らしい大地を守る為なら死んだって良い。それほどの意志が宿っていた。
……だが地獄は、健気な少女に憐憫を向ける事はなかった。
それはまるで、無限に続く槍の猛襲である。
しかも、その一本一本には致死量の毒(激辛)が塗られている。霊夢の口は、無数に放たれた槍によって容赦なく、残酷に穿たれた。刃物のように鋭く、業火のように熱い刺激が舌の上を滑っていく。
激しく怒り狂う口腔の痛みに朦朧としながら、霊夢は思った。
マグマをお湯で割ったらこんな味がするんだろうな……と。
「れい、む……やめ、なさい……」
 鈴仙は慌てて霊夢を止めようとするが、霊夢は聞かず、駄々をこねる子供のようにぶんぶんと首を横に振った。ここで無理をしないで、いつ無理をするのだ? 今までそうやって、辛く険しい困難と対峙し、それでもたじろぐ事無く戦ってきたのだ。
霊夢は自身の身体に叫び続けた。「耐えてみせろ」と命令し続けた。自分は、幻想郷の巫女なのだ。負けは許されないのだ。私は、博麗霊夢だ。甘えちゃダメだ……戦わなきゃ……。
しかし、そう自分に言い聞かせるたびに、霊夢の気は弱くなっていった。自分を奮起させようとすればするほど、瞳から涙がこぼれ落ちるのである。守護者として生きてきた自分、無心で築き上げてきた、博麗霊夢としての誇り、その全てが、手の平からこぼれ落ちていく……。それは、とても大事な物だった筈なのに……。
「ひぐっ……うぐ……ぐす……」
そして、赤いスープが喉を通ろうとした瞬間、霊夢の中にある、彼女の中の最も強固な部分が、あっけなく崩れ落ちてしまった。
少女の華奢な手から……静かに、箸が滑り落ちた。

「うう……ぐすっ……うえぇぇぇえぇえん……っ」

 霊夢が、泣いた。
 妖怪達に鬼とまで畏れられていた紅白の巫女が、泣いた。
 辛辛軒に、少女のむせび泣く声が虚しく響いた。そこにいたのは、これまで幾度となく異変を解決してきた英雄ではない……。年相応に涙を流す、一人のか弱い少女であった。
すると、その場で戦いの一部始終を見ていた鈴仙は、たまらず霊夢の傍に駆け寄り、涙に震える彼女の肩を優しく抱きすくめ、泣きじゃくる子供を慰める母のような表情で彼女の頭を撫でた。
(霊夢……辛かったんだよね……苦しかったんだよね……)
 霊夢は頷きながら、しゃっくりをし続ける。その姿を見た鈴仙も、思わずもらい泣きしてしまう。……そういえば、辛い(つらい)と辛い(からい)は同じ漢字だ。これ凄い面倒だね。
 すると、厨房にいた辛神はカウンターに置かれた食べかけの地獄一丁を静かに下げ、代わりにティッシュ箱を持ってきた。この世で最も優しいと言われている物質、『鼻セ〇ブ』である。
『……猶予は三ヵ月、今夜だけは、ゆっくりと休みなさい』
 睨み返す気力も残っていなかった。霊夢は辛神に手渡された鼻セレブで涙を拭き、鼻をかんだ。しかし、涙はとめどなく溢れ出てくる。本来の霊夢なら、ここで迷わずコンティニューする事を選ぶ筈であった。しかし、今の霊夢は「完全敗北」という逃れられない現実を噛みしめていた。行き場の無い屈辱と、みっともなく負けてしまったという羞恥心で頭がいっぱいであった。
「……帰、ろう、今日は、も……う、か、えろう……」
「……うん」
 霊夢の完敗であった。鈴仙に連れられ、霊夢はとぼとぼと店の外に出る。異変の首謀者である辛神に一度も振り返る事も無く、今はただとにかく家に帰りたかった。熱いシャワーを浴びて、温かいホットミルクを飲みながら、ゆっくりと眠りにつきたかった。
「……勝てなかった」
 そう、霊夢は負けた。それだけが、幻想郷の事実であった。

『くっくっく、幻想郷激辛地獄化まで、猶予は三ヵ月……皆様の挑戦を心から楽しみにしていますよ……くっくっく』

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