Coolier - 新生・東方創想話

割かった愛

2018/11/18 00:31:52
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 割愛という言葉には単に省略という意味ではなく、惜しい気持ちだが止むに止まれずここでは省略する、という意味が込められている。
「せーがー」
 私の後を追うこの人形にもかつては愛があった。
「何かしら」
「使いが終わった」
「ええ、ご苦労様」
 籠を持っていたその手の平から皮膚がはがれ肉が削れ骨が見えていた。この子は痛みを感じなくなっているからこんなことにも気づけない。里の間抜けどもでも骨が見えていればこの人形が死人だと気づく。この幻想郷で材料を手に入れるのは大変だ。本当は誰かを殺したいが、殺した後の手間がかかる。
 私の部屋のすぐわきに動物小屋がある。小屋で一匹の兎をつかんで――兎を一羽と呼んで食らう文化は本当に愚かしいので私は一匹二匹と数える――人形の前へ連れる。簪で穴を空けて即死させると皮をそのまま剥がし筋肉を骨からはぎ取った。人間なら肉を食えば肉が戻るが、人形はそうはいかない。筋肉をしたいから死体へ移して通電させる。人間なら肉の移植は容易ではないが、死体に死体を剥ぎ接ぐのは簡単だ。
 私はこの人形を動かし続けるのに割愛に割愛を重ねていた。私が生かしておきたいと思った高貴な人たちはまだ生きていたが、この人形は出会ったその時には瀕死。生きた人間の肉を次いで延命させたかったが、手順が多すぎて全身が朽ちてしまうのが速かった。だから、惜しかった。冬の朝のことで、私の頬に露が下りた。露ったら露だ。惜しかったが、仕方なく、止むに止まれず手順を飛ばして、安価で普遍的な材料を使って彼女を殺して人形にした。人形は本当に簡単だ。麻酔もいらないし人間を殺すまでもない。
 人形は私を見つめている。愛を割っした。人形は私を愛する模倣はできるが、人形は私を愛さない。私は手順を飛ばして愛も飛ばした。養蚕家は交尾する男女をすぐに割る。体力を繭作りに温存させるためだ。愛を割かつ。割愛。
 にっこり大口を空けて私の処置の様子を見守る。私の所作を気にするそぶりをするように回路を組んだから。私の目の前で笑顔のまま固まっている人形は私を知らないのだ。私は彼女に愛されない。
 雲がぽつぽつと浮かぶ冬の気持ちいい秋の青空が私たちに影を落とす。
二次創作ゲーム「3rd eye」制作中です。
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いってつ
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コメント



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1.90奇声を発する程度の能力削除
今回も面白く良かったです
2.100サク_ウマ削除
青娥はぞっとするような話が似合いますね。お見事でした。
3.100名前が無い程度の能力削除
繊細に文章を重ねていく文体、好き
4.100南条削除
とても面白かったです
この短さの中に青娥の感情が込められていてすごいと思いました
割愛しても割り切れていない感じがたまりませんでした