Coolier - 新生・東方創想話

東方昔話 『わらしべ長者』

2005/11/27 02:08:46
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むか~しむかし、あるところに、気前のいい若者がおりました。
ところがこの若者、働けど働けど、一向に生活が良くなりませんでした。

     霊夢「だって、誰もお賽銭入れてくれないし。」

ある日若者が寝ていると、枕元に観音様が現れました。

     咲夜「これ、赤貧。」
     霊夢「誰が赤貧よ!清貧って言いなさい!」
     咲夜「清貧、って柄じゃないでしょう?まぁいいわ。今日は貴方に良いことを教えてあげます。」
     霊夢「何?」
     咲夜「旅に出なさい。そして、旅の中で最初に拾った物を、大切に持ち歩くのです。」
     霊夢「それで?」
     咲夜「そしたらあら不思議。貴方は必ず、そう、必ず幸せになるのです。」
     霊夢「ふ~ん。」
     咲夜「何よ。ノリが悪いわね。」
     霊夢「何、あの兎みたいなこと言ってんのよ。誰がそんな事信じるのよ?」
     咲夜「信じる信じないは貴方の勝手です。でも、うちのお嬢様の能力、お忘れかしら?」
     霊夢「……む~。」
     咲夜「まぁ、善は急げ、よ。さっさと出た出た。」
     霊夢「わ!押さないでよ!」

観音様は、早く旅に出るようにと若者を促し、
寝ていた若者を転がしたり押したりして、外へと出します。

     霊夢「ちょっと!準備の一つもさせてくれないって言うの!?」
     咲夜「持っていくものなんて、何も無いでしょ?」
     霊夢「ぐ……!」
     咲夜「なお、未練が残らないよう、この家は消しておきます。妹様、お願いします。」
 フランドール「は~い。」

屈強な仁王様っぽい人が現れました。

 フランドール「それじゃあ、いくわよ。さん、にい、いち、はい。」


 どかぁあああああん!


     霊夢「あ~!!」

若者の家は、跡形もなく消し飛んでしまいました。

     咲夜「それじゃあ、私たちはこれで失礼するわ。グッドラック。」
 フランドール「またねぇ。」
     霊夢「こら、待ちなさい!」

観音様と仁王様は、逃げるように消えてしまいました。
若者は不思議に思いましたが、観音様の言うことを信じて、(渋々)旅に出ることにしたのです。

     霊夢「も~、とんだ観音様ね!仕方ない、とりあえずどっか行こう……って、うわっ!」

若者は、旅立ち早々、バナナの皮を踏んで、滑ってこけてしまいました。
幸先が良くありません。

     霊夢「いたたたた……。バナナの皮なんて、そんなベタなもん置いてくなんて……ん?」

ふと気がつくと若者は、手に何かを握っていました。

     霊夢「……これって、藁?」

そう、若者が握っていたのは、何の変哲も無い、唯の藁だったのです。
転んだ拍子で、うっかり拾ってしまったようです。

     霊夢「こんなもんが、何になるって言うのかしら?」

観音様の言うことが正しければ、この藁を持っていれば、大金持ちになれるそうです。
しかし、若者は中々信じることが出来ません。

     霊夢「そう言えば、お腹すいたわね…。」

無理矢理家を追い出されたので、若者は何も食べていませんでした。
何か食べれそうな物は無いかと思い、辺りを見回します。
すると、茂みで何かの気配を感じました。

     霊夢「……そこっ!」

すかさず若者は、藁を投げました。

    ???「わ~~!痛い痛い~!」

茂みから悲鳴が聞こえました。
そして、何かが若者の前に姿を現しました。

    リグル「ちょっと!いきなり何するのよ!何で私に藁なんかが刺さってるの!?」
     霊夢「何だ、蟲かぁ。あんまり美味しそうじゃないわね。」

出てきたのは蟲です。
若者は持ち前の底力で、瞬時に藁を硬化させ、蟲に刺したようです。
狩って食べようとしたのでしょう。
若者のハングリー精神は、並々ならぬもののようです。

    リグル「何でそこで残念そうな顔するの?大体、私を食べようだなんて百年はぶべらっ!」
     霊夢「まぁ、食べないよりマシよね。どうしようも無くなったら食べましょ。」

仕方無く若者は、蟲にトドメを刺して、非常食として持ち歩くことにしました。
それから暫く、歩いていました。

     霊夢「う~、お腹すいた~。これ食べようかしら?う~ん、でもなぁ。」
    リグル「うぅ……。」

ちょっとお腹が空いてきた若者は、蟲を食べようかと思ったりしました。
と、そのときです。

  ?????「たべちゃ~うぞ たべちゃうぞ♪」

歌が聞こえてきました。
ふと、脇を見てみると、

  ミスティア「いたずら 幽々子が 食べちゃうぞ~♪……わぁ~~!いやぁあああ!!」
      文「もう、静かにしてください。」

泣き叫ぶ子供と、それをなだめている母親がいました。

     霊夢「ちょっと。何か五月蝿いけど、どうしたのよ?」
      文「ああ、実は子供がお腹を空かせてしまって……。」
  ミスティア「バターたっぷり塗りつ~けて♪胡椒をパラパ~ラふりか~けて♪……いや!いやぁあああ!!」
     霊夢「嘘でしょ?」
      文「はい、冗談です。実は、さる貴族が、この子を追っていまして、必死で逃げてるんです。」
     霊夢「……そんなお話だったっけ?」

若者は、母親から事情を聞きました。
どうやら、とある悪い貴族が、この子を狙っているようなのです。
母親はこの子を守るため、必死で逃げていると言うのです。

      文「……とまぁ、そういう事情があって、色々恐怖体験をしたのですよ。」
  ミスティア「おおき~な~♪おおきな~♪口あ~けて~♪……やぁあああああ!来ないでぇええええ!!」
     霊夢「それで、怯えまくってるわけね。」
      文「はい。あんまり五月蝿いと、一発でバレちゃいます。どうしたものやらと……。」
  ミスティア「来てる~ぞゆゆこ♪ゆゆこがき~て~る~♪……ひぃぃぃいいい!!」
      文「何か良い方法は無いですか?」

事情はわかりました。
でも、この子が泣きっぱなしだと、逃げるのもままなりません。
何か良い方法は無いか、若者は考えました。

     霊夢「いい方法って言ったって……う~ん……。」
  ミスティア「弾幕ごっこ♪勝ったら逃げろ♪」
     霊夢「う~ん……。」
  ミスティア「負けたらしょ~く~りょ~~~♪ぎゃああああああ!わぁああああああ!嗚呼アアアア!!」
     霊夢「ああ五月蝿い!!これでも咥えて黙ってなさい!!」
  ミスティア「ゴボッ………!?」

若者は子供の口に、さっき捕まえた蟲をいれてみました。
すると、どうでしょう。

      文「あ、泣き止みました。」

さっきとは打って変わって、子供が静かになりました。

  ミスティア「モゴモゴ……。」
      文「なるほど。蟲は餌になりますし、お腹が膨れれば少しは落ち着くかもしれない。」
    リグル「う~ん……。あれ、ここは…?」
  ミスティア「モゴ?」
    リグル「って、わ~~!何か知らないけど私食べられてる~~!?」

蟲が復活して暴れ出しましたが、弱ってるので大したことはありません。
子供は、蟲を咥えたまま、大人しくしています。
     霊夢「何か、また五月蝿くなったみたいだけど、さっきよりはマシでしょ?」
      文「そうですね。あ、これ。ほんのお礼です。」

母親は若者に、何かを手渡しました。

     霊夢「なに、これ?」
      文「から揚げ。」
     霊夢「から揚げ?鳥の?ここって、蜜柑になるんじゃないの?」
      文「むう…。不本意ながら、鳥のから揚げです。そして細かいことを気にしてはいけません。」
     霊夢「まさかとは思うけど……。こいつの……。」
      文「いえ。残念ですが、それはありません。既に出来ていたのを、
        失礼させてもらっただけです。から揚げパーティーをやっていたらしくて。」
     霊夢「まぁ、腹が減っては何とやらだしね。」
      文「む。私は鳥は食べません!」
     霊夢「じゃあ、何で盗ってきたのよ?」
      文「いや、路銀の代わりになるかな、って思って。」

手渡されたのは、美味しそうなから揚げです。
どうやら、食材は母親だったりこの子だったりしていることは無いようです。

     霊夢「から揚げパーティーねぇ。ひょっとしてこいつ、材料にされかかったの?」
      文「それは、まぁ……はい。」
     霊夢「ひょっとして、あんたも?」
      文「実は……鴉は臭みが強いから、いらないって……。酷いと思いませんか?」
     霊夢「う~ん、とても微妙な気持ちになれるわね…。」

何か、色々複雑な事情があるようですが、若者は深く考えるのをやめました。

      文「とにかく、助けて貰って、ありがとうございました。」
  ミスティア「ングング……。」
    リグル「た~す~け~て~!」

母親は若者にお礼を言うと、子供を連れて去って行きました。
気がつけば、藁が蟲に、蟲が鳥のから揚げになっていました。

     霊夢「ん~、まぁいいか。」

とりあえずお腹が空いたので、鳥のから揚げを食べることにしました。

     霊夢「………って、から揚げが無い?」

何故か、さっきまで手に持っていたはずのから揚げが、綺麗さっぱり無くなっていました。

     ??「ん~、この肉の柔らかさ、このジューシーな味。」

横から声がしました。
その声の正体は…。

     萃香「酒によく合うねぇ。うんうん。」

どっかの娘さんでした。
何か、酔っ払っているような気がします。

     霊夢「ちょっと!勝手に私のから揚げ食べないでよ!」
     萃香「まあまあ。ちょうど酒のつまみが欲しかったところだから。」
     霊夢「こっちはお腹が空いてるの!朝から何も食べてないんだからね!」
     萃香「大丈夫。人間なら二、三日食べなくても生きてられるよ。」
     霊夢「そういう問題じゃないでしょ!」
     萃香「あ~も~、ああ言えばこう言う。」
     霊夢「それはこっちの台詞だってば!覚悟しなさい!」
     萃香「え?あ、ちょっと何するの~!?」

若者は空腹の余りブチ切れてしまい、娘さんに襲い掛かりました。

     霊夢「食べ物の恨み!これで良いからよこしなさい!」
     萃香「あ、それ駄目だってば!」
     霊夢「うるさい!」

若者は娘さんを殴り倒して、お酒を強奪しました。

     霊夢「……お酒じゃお腹が膨れないじゃないのよ、も~……。」
     萃香「きゅう………。」

ぶっ倒れた娘さんの屍を拾う者は居ません。
空腹のままの若者は、お酒を持ってさらに道を行きます。

     霊夢「て言うか、ここって、お酒じゃなくて絹か何かだったような気がする。」

何か違和感を感じているようですが、空腹のせいですぐに忘れてしまいました。
さて、しばらく歩いていると、今度は、

     幽香「ほれ、きりきり走りなさい、馬車馬の如く。」
     小町「だから馬の役だって。て言うか、何であたいがあんたの馬何かやらされてるんだ?」
     幽香「文句言う馬は、この鞭で尻を引っ叩くわよ。」
     小町「ぐ、き、きりきり走らせていただきます……。」
     幽香「あら残念。そっちのが好きだと思ったんだけど。」
     小町「好きなもんか!」
  メディスン「そっちって、何?」
     小町「あ~いや、あんたは知らん方がいい。」
     幽香「鞭で叩くか叩かれるか。」

何やら、騒がしいご一行が現れました。
見たところ、何処かのお侍さんとその従者と、馬のようです。
ご一行は、若者の方へ向かって来ます。

     幽香「赤貧や~、そこのけそこのけ御馬が通る~。」
     霊夢「赤貧とか言うな!」
     小町「あ~もう、何かいい加減疲れてきた……。」
     幽香「こら馬。スピードが落ちてるわよ。」
     小町「無茶言わないでくれ。もう、喉が渇いて……限界だよ……。」
     幽香「軟弱。でも、簡単に水や食料が見つかると思わないことね。」
     小町「そんな酷い。重労働超えて虐待じゃないか……。」

馬は頑丈そうに見えますが、だいぶ疲れているようです。
このままでは、倒れてしまうかもしれません。

     幽香「と、言うことなのです、そこの赤貧。」
     霊夢「だから赤貧言うなって。」
     幽香「じゃあ一文無し。何か持ってないかしら?」
  メディスン「一文無しって、何も持ってない人って意味じゃなかった?」
     霊夢「持ってるわよ!………まぁ、持ってるのは一文の価値はあると思うお酒だけなんだけど。」
     幽香「あ、それでいいわ。いただくわね。」
     霊夢「あ、こら!」

お侍さんは、若者から酒をふんだくりました。

 幽香「はい、これでも飲んで元気出しなさい。」
     小町「ングッ!」
  メディスン「死神の、あ弱った~ところ見てみたい~。」
     幽香「それいっき、いっき!」
     小町「ングッ!ング!」

馬は無理矢理、お侍さんに酒を飲まされました。
従者は何処で覚えたのか、一気飲みを煽るような音頭を
良い子は、余り真似をしてはいけません。

     小町「ぷは~!い、いきなりにゃにするんにゃほたま~……。」
     幽香「あれ?一撃?」
     霊夢「…あいつ、今日に限って強いの飲んでたのね……。」
     小町「はにゃ?ひょへはでわふへはひゃけてばぐえあんえわ…。」

馬はいい感じに酔っ払ってしまいました。

     幽香「むむむ。これじゃあ使いものにはならないわね。」
  メディスン「むむむ。どうしようスーさん?」
     霊夢「何がむむむよ。馬はこっちでしょ?」
     小町「つぁおつぁおころしゅ~!ちね~!えはは~!」
     幽香「こうなっちゃあ仕方ないわね。馬は捨てて行きましょ。」
  メディスン「は~い。」

お侍さんと従者は、馬を放っておいて、歩いて行くことにしました。

     幽香「二人旅の面子は……君と代だ。」
  メディスン「雷は恐いと思います。」
     幽香「では、日本の国歌は?」
  メディスン「君が代だ!」
     幽香「合格。」
  メディスン「わ~い!」

何やら話をしながら、二人は若者の前から去ってしまいました。
残ったのは若者と馬だけです。

     霊夢「……わけがわかんないわ。って、私が言っても説得力無いような気もするけど。」
     小町「う……ぷ……。」
     霊夢「ん?」
     小町「お……おえ……!」
     霊夢「わ~!ここで吐くな~!!」

暫くお待ちください。

 ・
 ・
 ・

     小町「う゛~……。」
     霊夢「ちょっと、大丈夫?」

若者は、弱った馬の面倒を診ていました。
その甲斐あってか、少し良くなってきたようです。

     小町「あ゛~、なんとか。ちょっとすっきりした。悪いね、背中さすって貰って。」
     霊夢「いいけどね。」
     小町「あ~、でもどうしよう?清々したけど、結果的に捨てられたしな~。」
     霊夢「野生に帰れば?」
     小町「あ~?このサラブレッドに向かって、その言い草は無いだろう。」
     霊夢「道産子。」
     小町「まぁいい。面倒見て貰った恩もある。お前の目的地まで乗せて行ってやるよ。」
     霊夢「別に目的地も無いんだけど。まぁ、楽出来るからいいわ。」

若者は、馬を連れて行くことにしました。
たった一本の藁が蟲になり、から揚げになり、お酒になり、そして今、立派な馬になったのです。
馬に乗った若者は、大きな屋敷の前を通りかかりました。

     四季「よいしょ。……っと、と。」

中から、大荷物を抱えた、長者さんらしき人が出てきました。
足がふらついていて、見ていて危なっかしいです。

     小町「危なっかしいなぁ。」
     霊夢「まぁ、普段力仕事しなさそうだしね。放っておいていいの?」
     小町「う~ん、手伝いたいところなんだが、もう少し見てもいたいんだよなぁ……。」
     四季「こら。」
     小町「ひん!」
     霊夢「あ、ちょっと馬っぽい。」

若者と馬が様子を見ていると、長者さんが話しかけてきました。

     四季「人が働いている所をただ見るだけなど、悪趣味甚だしい。少しは手伝おうと言う気は無いのですか?」
     霊夢「無い。」
     小町「すいません、すいません。手伝わせていただきます~。」
     四季「ん。小町……じゃなくて、そこの馬は良い心がけです。そこの赤貧。少し、馬を借りますよ。」
     霊夢「はいはい。もう何も言わないわ。」
     四季「……貴方は、ここで少し徳を積んでおこうと思わないの?」
     霊夢「無い。大体、私最初から何も食べてないんだから、今力仕事何かしたら空腹で倒れるわ。」
     四季「それでは、少し休憩にしますから、ご飯を食べていきなさい。」
     霊夢「え、いいの?やった!」
     四季「終わったら手伝って貰いますけどね。」

長者さん一人では大変なので、若者は長者さんに馬を貸して、自分も手伝うことにしました。
でもとりあえず、長者さんのお屋敷にお邪魔して、ご飯を頂きました。

     霊夢「で、どういう仕事なの?」
     四季「引越しです。屋敷の中の荷物を、外に運び出してください。」
     霊夢「一人で?手伝いとか居なかったの?」
     四季「それなら……そこに。」
     霊夢「ん?」

長者さんは、隣の部屋を指差しました。

    チルノ「重い~!動けない~!助けて~!」
   ルーミア「暗くて何も見えないよ~あ痛!……う~、またぶつかった~……。」

見ると、お手伝いさんらしき人たちが、荷物に潰されて助けを求めていたり、
目が見えないせいか、荷物を持ったまま壁にぶつかったりしていました。

     霊夢「…人選ミスね。」
     四季「人選ミスです。一人でやった方がよかったのかもしれませんね。」
     小町「まあ、ここは私らに、ドンとまかせてください。万馬券買ったつもりで。」
     四季「それでどうやって、ドンと構えることが出来るのかしら?」

お手伝いの人たちが役に立たないので、結構大変そうです。
それでも何とか、全ての荷物を運び出すことが出来ました。

     霊夢「ふ~、疲れた。」
     四季「ご苦労様。良いことをしました。これからも、地味で良いですから善行を積むことです。」
     霊夢「それはいいけど、この荷物、外に出しただけでどうするのよ?」
     四季「ああ、それは……。」

長者さんが、どうするか言いかけたとき、

      紫「他社よりお得で速い、クロネコヤクモの宅急便、引越しサービスでございま~す。」
     霊夢「……なるほど。」

業者さんが現れました。

     四季「ああ、ご苦労様です。早速ですが、お願いしますね。」
      紫「心得ましたわ。」

業者さんは、あっと言う間に、荷物を片付けてしまいました。
何か、「吸われる~!たすけて~!」とか声がしたり、
覚えの無い黒い塊を持って行ったりしたようですが、これで引越しは終わりのようです。

     霊夢「でも、これなら最初からあんたがやった方が良かったんじゃない?」
      紫「分かってないわねぇ。荷物を一箇所に集めて置いたほうが楽なの。色々と。」
     四季「それでは、ここまで運んでください。領収書は『小野塚 小町』で。」
     小町「何でですか!?」
      紫「それでは、後で取り立てに参りますわ。」

業者さんは帰って行きました。

     四季「さて、私は行かねばならないのですが…。善行ついでに、もう一つ頼みを聞いてくれますか?」
     霊夢「何?」
     四季「新しい屋敷までは遠いので、貴方の馬を是非、譲って欲しいのです。」
     小町「あ~、何かまたこき使われそうな、そんな予感が……。」
     四季「何か?」
     小町「あ~、いえ、何でもないです、ヒヒン。」

ここまでの作業で、この馬を気に入ってしまった長者さんは、
若者に馬を譲って欲しいと持ちかけました。

     霊夢「まぁ、元々そっちのもんだし、譲るって言うのも何だと思うけど。」
     四季「では、よろしいのですね?」
     霊夢「好きにしていいわよ。あ、これ。躾のための鞭ね。」
     四季「鞭ですか。………ふっ。」
     小町「い、いやだなぁ四季さま。そんなん持って、こっち見て、流し目で、笑わないで下さいよ~。」
     四季「ご主人様とお呼び。」
     小町「ひっ!こ、怖っ!」

若者は、それを快諾しました。
長者さんは大喜びです。

     四季「感謝します。……ふむ、善行を積み重ねた者には、相応の報いがあって然るべきですね。」

長者さんは少し考えると、若者に向かって言いました。

     四季「この屋敷を、貴方に差し上げましょう。」
     小町「おお、何と太っ腹な。流石四季さま!」
     四季「ご主人様とお呼び。」
     小町「ひん!…よ、ご主人様太っ腹!」

何と長者さんは、このお屋敷と土地を、若者に譲ると言うのです!

     霊夢「あ~、それは有り難いんだけど、中には何も無いんでしょ?」
     四季「と、ここに少々のお金が有りますから、好きに使いなさい。」
     霊夢「え?ほんと?」
     小町「って、それ私のへそくりじゃないですか~~!!」
     四季「私の物は私の物。馬の物も私の物。私が進呈した物は、彼女の物なのです。」
     小町「とほほ……地味にコツコツ溜めといたのに……。」
     四季「さあ、行くわよ。」
     小町「ひひ~ん……。」
     霊夢「有効に使わせて貰うわね~。」

若者は喜んで、屋敷とお金を受け取りました。
たった一本の藁が、でっかい蟲に。
その蟲が、鳥のから揚げに。
鳥のから揚げが、一文程度の価値はあるだろうお酒に。
お酒が、道産子かサラブレッドか分からないけど、とにかく立派な馬に。
そしてその馬が、何と大きな屋敷になったのです。

     霊夢「何か出来すぎてる気がするけど、まぁいいか。」

屋敷には大きな畑もあったので、若者はそれを耕して暮らしました。
若者はとてもよく働いたので、お金はあっと言う間に稼ぐことが出来ました。
働き者な若者の話を聞いた人たちは、彼のことを尊敬しました。
人々は、藁一本からお金持ちになったこの若者のことを、『わらしべ長者』と言って、敬いました。
わらしべ長者は、美人の嫁さんを貰ったりして、幸せに暮らしたそうです。


 めでたし めでたし






    アリス「と、言いたい所だけど。」
     霊夢「何?」

ある夜、わらしべ長者は、嫁さんと話をしていました。

    アリス「いや、特に何にも無いから、もう一波乱あるんじゃないかなぁ、って。」
     霊夢「不吉なこと言わないでよ。」
    アリス「と言うわけで、はい、離婚届。」
     霊夢「早いわねえ、別れるの。」
    アリス「善は急げ、よ。はい、さっさとここに血判を……。」


 ……~ン ズ……ン


夫婦水入らずの離婚相談中、外から何やら音がしてきました。

    アリス「………。」
     霊夢「血判って、それ何かの契約書なの?」
    アリス「結婚なんて、一種の契約でしょ?血痕も同じ響きだし、血塗れた物なのよ。きっと。」
     霊夢「ふうん。……で、この、外から聞こえる音は何なのかしら?」
    アリス「あら、聞いてない?この付近を彷徨う死霊の噂。」
     霊夢「死霊?」


 ズシ…ン ズシ~…


音は、どんどん大きくなっています。

    アリス「数年前、とある女の子が暴漢に襲われて、持っていた物を盗られたらしいのよ。」
     霊夢「うん。」
    アリス「で、その女の子は死んだんだけど、その霊は夜な夜な盗られた物を求めて彷徨っている。」
     霊夢「それで?」
    アリス「この音、実はその女の子の霊が起こしているもの、ですって。」


 ズシ~ン ズシ~ン


音がはっきりと聴こえてきました。
地響きもしています。

     霊夢「で、何でその霊が、こっちに向かっているような錯覚に囚われてしまうのかしら?」
    アリス「知らない。けど、それを踏まえて、今日は離婚届を……。」


 ズシ~ン!ズシ~ン!


    アリス「……遅かったか。」
     ??「で~い!」

嫁さんがつぶやくと同時に、屋敷の屋根に穴が開きました。
その穴から、巨大なお化けが顔を出したのです。

     萃香「お酒かえせ~~!お酒~~!」
     霊夢「げっ!」

わらしべ長者は、びっくりしました。
何と彷徨う霊の正体とは、昔わらしべ長者が殴り倒した娘さんだったのです。

     萃香「さ~け~さ~け~!酒かえせ~!」
     霊夢「それくらいで何時までも根に持ってんじゃないわよ!」
    アリス「やっぱりあんたが原因だったのね。」
     萃香「さ~け~!」
    アリス「とりあえず離婚届けと、ああ、あと死亡保険に印しといて。」
     霊夢「……このままじゃ、あんたも巻き添え食らうわけだけどね。」

娘さんの霊が大暴れしているので、屋敷が崩れ始めました。

     霊夢「脱出は………無理か。」
    アリス「まぁ、こんなこともあろうかと抜け道作っておいたから。私はここから失礼するわ。」
     霊夢「何時の間にそんなの作ったのよ?って言うか、私も逃げるってば!」
    アリス「だ~め。離婚届と死亡保険と魔理沙からの借り物の担保としての誓約書と………。」
     霊夢「何か嫌な紙切れが増えて来てるし!」
     萃香「酒!ファイヤーーー!!」

娘さんの霊が、屋敷に放火しました。
屋敷は真っ赤に燃え上がりました。

     霊夢「熱い熱い!いや、ほんと死ぬから開けなさい!」
    アリス「残念だけど……たった今、某観音様からお告げがあって、ここは死ぬのが正解だって。」
     霊夢「何よそれ~~!?」
    アリス「酒の恨みは恐いのね。よく覚えておくわ。」
     霊夢「待ちなさぐふっ!」
     萃香「捕まえたわよ~。酒の代わりに喰ってやるわ~。あ~ん。」
     霊夢「わ~!私を食べても美味しくもなんとも……!」


 ぱくっ!


お屋敷は焼かれ、嫁さんには逃げられ。
最早霊とは言えない怪獣に喰われて、わらしべ長者は死んでしまいました……。

 ・
 ・
 ・


何も無い空間。
わらしべ長者は、その空間を、漂っていました。

     霊夢「で、ここは何処なのよ?」

怪獣に食べられて、気がつけばこんな所に居たのです。
状況がさっぱり飲み込めません。
と、そのときです

     咲夜「これ、一文無し。」

目の前に、観音様が現れました。

     霊夢「誰が一文無しよ!」
     咲夜「何も持ってないじゃない。」
     霊夢「これでも立派なお屋敷貰ったんだからね!………って、あれ?」

思い出しました。
お屋敷は、大怪獣の出現によって、焼かれてしまったことを……。

     咲夜「貴方は、嫁に逃げられ家を焼かれ、そして怪獣に食べられて死んでしまったのです。」
     霊夢「………何よ。必ず幸せになれるって言っておいて、こんなオチなの?」
     咲夜「そう結果を急がないの。とりあえず、貴方に会いたいって人が居るから、会ってみて。」
     霊夢「誰よ?」
     ??「ふっふっふ………。」

観音様の後ろから、誰かが現れました。

     てゐ「私は人呼んで、飯食詐乙女(いくさおとめ)!」
     霊夢「いくさおとめ?」

何か、明らかに怪しい、人は、自称『飯食詐乙女』と言うそうです。
飯食詐乙女は、わらしべ長者に話かけます。

     てゐ「貴方は選ばれたのです。さあ、私と一緒に逝きましょう。」
     霊夢「逝くって、何処に?」
     咲夜「詳しくは、うさぎとかめに聞いてみなさい。」
     てゐ「大丈夫大丈夫。私を信じなさいって。信じると救われるのよ。私が。」
     霊夢「私は救われない気がするんだけど?」
     てゐ「ぶつくさ言わずに、さっさと来る!」
     霊夢「あ、こら!離しなさい!」
     咲夜「お幸せにね~。」

飯食詐乙女は、何かと文句を言っているわらしべ長者を引っ張って行きます。
観音様は、それを生暖かく見送りました。
二人は何も無い空間を出て、とある場所に着きました。

    幽々子「あら、これが今回の食材?」
     てゐ「う~ん、先日良い食材を根こそぎゲットしちゃったもんで……。」
     霊夢「まさかとは思うけど……。ここって……。」
 てゐ「遠まわしに言うなら天国。ぶっちゃけて言うならヴァル腹ね。」
     霊夢「やっぱり~!」
    幽々子「まぁ、食べれない程度の物じゃないからいいか。」

そこには、物凄く偉そうな、威厳に溢れる人が居ました。
どっかの貴族っぽくも見えますが、とりあえず便宜上、O-ディン様とでも呼んでおきましょう。

     霊夢「何でこんなネタ引っ張ってんのよ!?」
    幽々子「お気に入り?」
     てゐ「お気に入り。」
     霊夢「誰の?」
幽々子「とりあえず、後でまとめて食べるから、食料庫に入れといて。」
     妖夢「畏まりました。」
     霊夢「は~な~せ~!」
    幽々子「今回の貴方の働きは………まあまあね。」
     てゐ「へい。今度はもっと精進いたしやす。」

わらしべ長者は、料理人らしき人に連れられて、どっかに案内されました。
その後、わらしべ長者は天国、別名ヴァル腹で、幸せに暮らし……たかどうかは、誰も知りません。
でも、観音様が、必ず幸せになれると言ったのですから、きっと幸せに暮らしたのでしょう。

    リグル「あ~ん、二回も食べられるなんて嫌だ~!」
  ミスティア「食べられちゃ~うぞ♪食べられちゃうぞ♪ひぃぃぃいいいいいやぁああああああ!!」
      文「う~ん、ここからの決死の脱出劇、記事になるかな?あ、お久しぶりです。」
     小町「馬役なだけだよあたいは!何でこんなとこ居なきゃいけないんだ!?」
     霊夢「……………。」

どっかで見たような連中と一緒に、暮らすことになるようです。
多分、きっと、恐らく、彼は天国で幸せに……。

     霊夢「幸せになんかなれるか~~~~!!!」


 おしまい



 キャスト

わらしべ長者 ・・・ 博麗 霊夢
観音様    ・・・ 十六夜 咲夜
仁王様    ・・・ フランドール・スカーレット
蟲      ・・・ リグル・ナイトバグ
子供     ・・・ ミスティア・ローレライ
母親     ・・・ 射命丸 文
娘さん    ・・・ 伊吹 萃香
お侍さん   ・・・ 風見 幽香
馬      ・・・ 小野塚 小町
従者     ・・・ メディスン・メランコリー
長者さん   ・・・ 四季映姫・ヤマザナドゥ
お手伝い1  ・・・ チルノ
お手伝い2  ・・・ ルーミア
業者さん   ・・・ 八雲 紫
嫁さん    ・・・ アリス・マーガトロイド

飯食詐乙女  ・・・ 因幡 てゐ
Oーディン様 ・・・ 西行寺 幽々子
料理人    ・・・ 魂魄 妖夢
………さて、何処から言い訳すればよいのか。とりあえず、調子に乗って前回のアレからオチを引っ張って来ると言う暴挙に出たことを、深くお詫び申し上げます。今は反省しているふりをしたい。

 今回のお話は、出来すぎたサクセスストーリーことわらしべ長者。主人公に関わる人物が多いせいで、かなり混沌とした出来になってしまいました。花映塚の新キャラ衆を全員出演させることを目標に書いたので、その辺りは成功したと思っています。支離滅裂加減はおいとおいて。

 確か本来なら、藁→虻→蜜柑→絹か何か、とりあえず布→馬→屋敷 でしたが、こっちでは、藁→蟲→から揚げ→酒→馬→屋敷(→天国)と、微妙に変えています(微妙か?)

 蟲→から揚げの場面でミスティアが歌ってる歌は、某無駄知識の泉で一時有名になった、緑の万能恐竜(5歳)が歌った歌の替え歌です。タイトルは『たべられちゃうぞ』で。何がミスチーを恐怖のズンドコに落としたのか……。鳥つながりで、文を母親役にしました。新作の主人公おめでとう!
 から揚げ→酒の場面では、『から揚げかぁ。酒のつまみの定番だなぁ』所要時間十秒で萃香登場決定でした。そう言えば、まだ昔話、童話にゃ出てなかったような気がします。怪獣化とか、ネタにしやすいはずなのに。
 そして1番分からないのが、酒→馬、お侍さんと従者の場面です。何で横○三国志的なネタが出てきますかと。幽香もメディも、何かよーわからん子になってるし……。「むむむ」という台詞は、馬が言う台詞です、馬が。
 で、馬→屋敷には、ラスボス。小町が微妙にヘタれ入ってしまってる気がします。まー、相手が四季様だから仕方ない……のか?

 と、ここで終わらせては、普通過ぎると言うかオチが無いと言うか、とにかくアレなので、『長者は天国に上って、幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし』を付け加えようと思ったらあら不思議。何故か前回の、『うさぎとか(ぐやひ)め』から、ネタを引っ張ってきてしまいました。こう言うネタは一度しかウケないと分かっていながら、何たる愚挙か。……とりあえず現在てゐが集めた食材は、鈴仙、リグル、ミスティア、文、小町、霊夢です。食材はまだまだあるはずです。慧音とかレティとか。がんばれ飯食詐乙女!次があるかはわからないけど!
 次は、悪てゐープロファイルじゃないオチを持ってこれるようにします。
Piko
[email protected]
http://yugenshokan.fc2web.com/
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コメント



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20.60低速回線削除
ちょwヴァル腹w
割とオチは巧く引っ張れてるんじゃないかな。
霊夢がそんな上手く行けても困るs(腋
28.70床間たろひ削除
相変わらずの素敵昔話。もー大好きっ!
咲夜さんの観音様という響きに何かを感じてしまう私は、きっとヴァル腹には
逝けぬでしょう。
35.70nanasi削除
ミスティアのトラウマ具合に吹きましたw
自分で歌ってトラウマ引き出してちゃ、世話ないよw..
36.50七死削除
悪てゐ~続いてたんだw。
誰でも知ってる昔話って、やっぱり偉大ですよね。
丁度日本昔話も復活したみたいですし、こういうネタは皆の宝にしたいです。

地獄の閻魔様絡みネタが見たいと、こっそりリクしてみたり。
40.70hangon-反魂-削除
キャラの動かし方が秀逸すぎて…感服です。伝統的な昔話を東方色に脚色する腕前、お見事。                     
誰よりもヒドイ扱いな小町に同情の人参を。つ▼

43.70銀の夢削除
0-ディンとかヴァル腹とかやりすぎwwwwwwwwwwww

いやもう、ほんと、腹抱えて笑いましたw
あんた最高だ! って、叫びたいです。
62.100名前がない程度の能力削除
good!!!


あれ?請求書じゃ?(間違ってたらごめんなさい)