Coolier - 新生・東方創想話

嬢ちゃん

2018/04/16 20:25:50
最終更新
サイズ
7.95KB
ページ数
1
閲覧数
440
評価数
0/3
POINT
100
Rate
6.25

分類タグ

今までのあらすじ:一寸法師が手に入れた打ち出の小槌は、振るえばなんでも叶えてくれます。そのことにいい気になったある小人は、身の程知らずにも自分が支配する王国を望みました。大きすぎる願いは叶った瞬間代償を求め、小人は鬼の国に幽閉されることになりました。打ち出の小槌は鬼の宝。虎の威を借りるばかりだった小人族は、哀れ囚われ籠の中。檻を破る力も籠から出る知恵もなく、針に刺されるを待つばかり。戯れに犯され、犬猫と番わされ、加減を誤って殺され。鬼に横道なかりせば、悪意や害意のあるわけではなく、ただちょっと彼らは強すぎたのです。踏まれ躙られ腕を落とされ首を切られようとも立ち上がり、毅然と立ち向かうのが鬼ですから。打たれて輝く日本刀のように。曲がらず弛まず真っ直ぐに。彼らにとってその程度のことは、それこそ日常茶飯事だったのでした。あまりにも強すぎて、酒で無理に酔っ払っては騒ぐのです。互いに殴り合い、余興で盛り上がり、勝者には誉れを敗者には辱めを。そして、敗者たる小人が泣き叫び、嘔吐し、血を流し、あるいはぐったりと動かなくなったのを見て彼らは言うのでした。おやすまん。こいつはちっとやりすぎた。
そんな中、小人族最後の姫がおりました。一寸法師の末裔、少名針妙丸です。輝く針の名の下に、彼女は虫籠の中で毅然と立ち続けました。その折れそうに薄い体で、曲がらず弛まず真っ直ぐに。その強さ気高さは、あるいは少女特有のものだったのでしょうか。鬼にも退かず、正しいことは正しいと言い、邪なものには非を唱えました。鬼たちもその心意気を称え、しかし彼女は籠の中。それでも彼女は文句も言わず、妙なる針仕事を続けたのでした。


だけどそれでも。
「そんなやつが報われねえような幻想郷(世界)じゃ、ひっくり返すしかないだろう……!!」
「はっ、ずいぶん素直じゃないかアマノジャク。明日死ぬんじゃないか?」
「逆言を期待されるなら、それをひっくり返すのが本懐よ。こちとら素直じゃないんでね」
逆さ城の応接間にて、かつて床だった天井に仁王立ちしてまくしたてる。箒に乗った白黒の魔法使いはさも自分が正しいみたいな面で重力に従ったまま空を飛んでいる。その手に持つ小道具は、禍々しい妖気と炎を吹き上げている。八卦炉なんて高尚なもんじゃないだろあれ。いいとこ地獄の釜じゃないか。
螺旋に弾を放つ。白かったり黒かったり、速かったり遅かったり、射手に似て捻くれた弾である。それなのに魔法使いは意にも介さず、炎を吹き上げたかと思うと、閃光。当たる軌道であろうとなかろうと全て吹き飛ばしてしまう。幻想郷じゃ弾幕ごっこが流行ってるんじゃなかったのか!
「ああ、確かに弾幕ごっこが流行で、色彩と技巧に溢れた弾幕をかわしすり抜け打ち返すのが幻想少女の流儀だよ。でもそれはそれが格好良いっていうだけで、別に力で押し潰したってかまやしないさ。今夜の八卦炉はやけに威勢がいいからな!」
閃光に押し負けないよう、弾を放ち続ける。埒が明かない!
白黒の魔法使いを睨み据える。金の瞳がこちらを射貫いている。輝くような目を向けやがって。弱者を踏みつけにして気が引けもしないのか。その認識をひっくり返してやる。
逆符「鏡の国の弾幕」
突如、白黒の動きが精彩を欠いた。突っ込んでくる弾をよけようとして、よけきれずに下がりながら閃光を放つ。左右がひっくり返って狼狽しているらしい。隙を逃さず一斉に弾を放つ。流石にこの程度じゃ当たってはくれないか。
「なんだこれは? 天邪鬼はこんなことも出来るのか?」
「たいしたことはないさ。何でもひっくり返す程度の能力だよ。世界がひっくり返ったわけじゃない」
「私が世界をひっくり返させやしないさ。それに、霊夢も動いてたからな。今頃奥にいる首謀者とやらと戦ってるんじゃないか?」
「手柄を取られて笑ってるんじゃねえよ」
物量で押し潰すべく弾幕の密度を上げる。避けきれないと見るやまたも閃光をぶっ放してくる。無尽蔵かよくそったれ。そんなはずはないだろうに、ばかすかと景気よく打ち放っている。
時間切れだ。小槌の魔力をまとったこっちにだって限界はあるというのに。それは向こうの八卦炉も同じなんだったか。しくじったな。
ごまかし程度に螺旋に弾を放つ。
「種切れか? 早すぎないか? そこらの春妖精だってもっと手管を見せるぞ」
「馬鹿の一つ覚えとばかりに炎と閃光をばらまいてるお前に言われたくはないね」
「これは優しさってやつだよ。格下の新参には優しく手ほどきをしてやらなきゃな」
意識はしていないのだろう。そもそも私のことも知らなかったはずだ。だから偶然だろう。だけどそれでも、その言葉の選び方が、格子の中を思い出させるその言葉が、たまらなく頭をかき乱す。魔女の上に飛び上がり、両手を振り下ろして弾幕を下ろす。掻痒そのままに叫ぶ。
逆符「天地有用」
「おわっ」
魔女は慌てて箒にしがみついた。今このときだけ、あの魔女にとって上が下だ。人間は真上を見ることは出来ない。ましてそれが吸い込まれそうに落ちていく先なのだとしたら、それを見据えることなんて出来やしない。白黒へ弾が殺到する。
それなのに、天に落ちていくかのように箒は突っ込んでくる。炎と閃光を盾にして、何も怖いものなどないかのような笑みで。
突き刺さる流星をすんでの所で避ける。裾の矢印が一つ持って行かれる。白黒は天井にぶっささる直前で急制動をかける。箒が床だった天井を掃く。畳と竹がざりとすれ違う。
「頭逝ってんのか? いのちだいじにって言われたことないか」
「実家では死人同然だよ。魔法の森に住むのも自殺行為だな」
「そりゃ結構なことで」
距離を離すため弾をばらまく。白黒に近付けば速度を下げる。自然、やつの周りは弾幕が滞留していく。動きにくそうにしてやがる。挟み撃ちにしてやるぜ。
逆弓「天壌夢弓」
手の中に弓がある。天へと羽ばたく鳥を撃てと、繁みにさえずる声がする。放ったはずの矢は、空の向こうからこちらを目がけて降り注いだ。当然、白黒を後ろから貫く形で。
貫いた。
はずだった。
妖器「ダークスパーク」
先ほどまでとは比べものにならない光量が目を焼く。たまらず身をかわす。振り向けば、城の壁に大穴が開いていた。まじかよ。弾幕ってそこまでやっていいのかよ。人間ってここまで出来るのかよ。だったら私も壁をぶち抜けたんじゃないか、なんて浮かぶ言葉をかき消すように頭を振る。そんなことを考えていられるような場合じゃない。こうなりゃやけだ。
対象を絞ってなどいられない。これからこの幻想郷をひっくり返そうってのに、お行儀良くやっていたのが間違いだったんだ。ただの人間が相手だからって、形振り構ってたのがいけなかったんだ。
逆転「リバースヒエラルキー」
目まぐるしく世界が回り続ける。真っ直ぐ弾を撃ち続けているはずなのに、周囲にぐるぐると螺旋が描かれていく。白黒も真っ直ぐこっちに向かってくるような面して、ぐるぐると私の周りをまわっている。制御なんてする手間が惜しい。それよりも弾を、弾を、弾を! おもちゃ箱をひっくり返して部屋を埋め尽くして、足の踏み場もなくなれば、誰も入ってこられないだろう!
白黒は近付く弾を焼き弾きながら、密かに眉をひそめている。なんだその目は。金色の瞳は相変わらず輝いてこちらを貫く。なんだその目は。
哀れむような目をしやがって!
「力ある者にはそんなに滑稽か! 美しさを競わず形振り構わず、ふんぞり返って舞台に上がっては下らぬ弾を撒き散らすこの姿が! 歩き回る影法師のように、束の間の燈火のように揺らめくこの姿が! これが私だ! 意味など何一つありはしないとしても、喚き立てずにいられないこの怒りが、天を焦がせと叫ぶのだ!」
叫ぶごとに、喚くごとに、周囲に弾を撒き散らす。ほんの小さなこの身一つも、火に焚べれば輝くだろう!
ぐるぐると世界が回る。自分を中心に世界が回っているかのようだ。もしかしたら回っているのは私自身かもしれない。
そして。
輝く針のように真っ直ぐに、魔女の箒が私を貫いた。
吹っ飛ばされて転がる。逆さ城の畳に頬が触れる。長いことしまわれすぎたからか、この畳、湿ってやがる。
白黒はゆっくり息を吐いた。いちいち癇に障るやつだな。
静かになって初めて、遠くの方で弾のはじける音がするのに気がついた。針が木戸に突き立つ音や、音になる以前のようなゆっくりと動く気配も。
「霊夢だな。こりゃ、これ以上私の出る幕はなさそうだ」
白黒がのんきに呟く。針妙丸を舐めてやがる。そうは思うも、かの悪名高い博麗の巫女相手に、針妙丸が一人勝てると思うのかと考えると、信じ切れない自分もいる。最初から何も信じていないだけかもしれないが。
「出番が終われば捌けるだけの、哀れな役者と思ったか。これからだ、これからだよ革命は。明日、また明日、また明日と小刻みな足取りでだって時は進み、ついには最後のひとときに至るのさ。誰だって永遠に舞台に立ち続けることはできない。お前らだってそのうち、誰かに追い落とされる羽目になるんだ」
白黒は変わらず奥の方に顔を向けている。お仲間を助けに行く様子はないが、帰ろうとする様子もない。なんだこいつは。
「弾幕はパワーだぜ。そう言いながらやってきたんだが、それでもあいつは踊っているみたいに避けるんだ。天衝くような輝きだって、なんでもないかのようにすり抜ける」
神妙な様子で白黒は呟く。
は。哀れな私の姿に自分を重ねたってか。下らねえ。
痛む体を引き摺って、針妙丸の下へ向かう。例え今回討ち果たされたとしても、小槌の魔力を帯びた道具が転がっているはずだ。一度追い落とされたくらいで人生という舞台を諦められるほど、お行儀のいい生き方はしてこなかったさ。
「……いかんな。そんなことを言っている場合ではない」
遅いよ。
漸く動き始めた白黒を尻目に、私は天守閣へ向かった。



この後は、皆さんもご存じの通りです。[2018 04/01 380:25]
# なお、お察しの通り完成すれば例大祭で頒布する予定ですが、完成ってなんでしょうね。何もわからなくなってきました。
阿吹
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.100簡易評価
2.無評価名前が無い程度の能力削除
断片断片を何度も投稿しないで、完成したものをひとつポンと投稿してください
完成するのかも分からない、傑作なのか否かも分からないもので、作品集を埋められるのは一般的に迷惑と思いますよ