Coolier - 新生・東方創想話

易者2018年人気投票66位記念スペシャルライブin博麗神社

2018/02/10 10:29:29
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 某月某日。
 夜の博麗神社の境内に一人の男が白いギターを持ち立っていた。
 神社の石段を座席代わりに大勢の名もなき里人、妖怪の男達が完成を上げる。
 彼らをの視線を釘付けにする男は名もなき存在から一気に幻想郷の名のある連中にも引けを取らないほど
上りつめた、妖怪でありながら人間臭い、人間を辞めた妖怪であった。
 男は観衆に感謝を述べると、ギターを鳴らし多くの曲を熱唱する。
 それは彼が占術を通じて見た外の世界で見つけた歌であった。











































   1曲目『叫び』  野猿

 この幻想郷に生まれた俺は妖怪やら神の存在は知っていたし姿も見たことがある。外の世界の連中はどうやら逆に全く見えないらしい。
 しかし欲望というものはどっちの世界でも変わらずドス黒く、エネルギーとなる。博麗の巫女や友人の魔法使いのように優れた能力や才能があるわけでない普通の人間は弾幕ごっこにすらも参加できず、妖怪や神達が巻き起こす騒動にあちこち振り回されるだけだ。弱者の代表と一部囁かれる天邪鬼も能力があるからこそ立ち回れるわけで、非力な人間に何ができるというのか。
 妖怪や神に怯えながら送る人間の生活に不満や悲しみを持った俺は禁断の秘術に手を出した。自由を求めたあがきを巫女は嗤い、俺を葬った。当時は見下した冷めた笑いだと思ったが、今となっては真意はわからない。しかし俺のような存在は幻想郷が存在する限り必ず生まれるだろう。
 彼らの叫びをあいつらは聞きはするが聞いただけで屠るだろうか。



   2曲目『女々しくて』 ゴールデンボンバー

 「里の人間が妖怪になることが最も重い罪」
 そう言って彼女は俺の頭を割り、無に帰した。なんという理不尽だ。
 元人間の妖怪は許されているのに里に生まれたら駄目なのか。
 少年っぽい狐も許され、ウワバミもホフゴブリンも許され今も普通に幻想郷生活をエンジョイしている。
 もしも俺が可憐な美少女だったらワンチャンスで見逃してもらえたのだろうか?
 紅魔館で充実した表情で働くホフゴブリンや居酒屋で酒を飲み満足そうにするウワバミ。彼らの笑顔が妙に輝いて見えた。
 占術を通じて見た、この歌を歌ってる珍妙な連中の珍妙な踊りや振り付けはノリが良く、観衆のみんなも腕を突き上げてくれる。
 愛されたいとまでは言わないが、見逃してほしかったと思う。
 愛情はいらないが自由が欲しい。
 この気持ちはまさしく女々しいだろう。しかし俺の顔はおっさん妖怪なのであった。



   3曲目『夢であるように』 DEEN

 巫女から自分のしたことが大罪だと言われて退治される寸前、これが夢であったらいいのにと思った。ただの易者としてひっそりと生き、人々の幸せへちょっとしたアドバイスを送る人生も修行中何度か考えていた。身体が真っ二つに割れ、この世から消え去る寸前に夢であってくれと言いたかった言葉は遂に口に出すことはできなかった。
 しかし今、こうやってライブを開けるまでになったのは幻想郷史上最大の奇跡なんじゃないかな、なんて。



   4曲目『DAN DAN 心魅かれてく』 FIELD OF VIEW

 巫女に屠られた時、子供の頃にたまたま占いをしていた名前も知らないおっさんの顔を思い出した。悪い結果が出ても頑張ればそれに打ち勝つことができるんだよと優しく力強く言ったおっさんだ。そのおっさんも妖怪に襲われてあっさり死んだ。ここで生きていくということはそういう理不尽に常に襲われる可能性があるということだ。その時から人間を辞めれば理不尽から逃げれるのではと思ったんだよ。
 俺の最後の叫びは巫女の攻撃の音に流されて空に舞った。



   5曲目『さらば恋人』  堺正章

 人間だった頃、ある恋人達を占った。占術を通じて見た二人の未来は破局だった。俺は真実を伝えることができず、困難が立ちふさがるがそれを乗り越えれば永遠に幸せになるだろうと告げた。二人は力強く頷いてお礼を言って帰っていく。
 それ以降、あの二人のことは知らない。俺は人間を辞めたから。仮に占いの通りに別れてしまったとしても、せめてこの歌のようにすっきりと違う道を歩いて行って欲しい。



   6曲目『HEART OF SWORD ~夜明け前~』 T.M.Revolution

 人間のままでは越えられないと思った日々。妖怪になればその先に行けると思った。どんな毎日にも夜明けが来るように。
 俺の想いは派手に転んだのか、どんなに話しても巫女には聞いてもらえない。
 人間では迎えられない明日を妖怪として越えて行きたい。俺と巫女、幻想郷の掟はどこまでもすれ違っていく。


   7曲目『ラストチャンス』 サムシングエルス

 俺だけが幻想郷からも世界からも取り残されたようで。ウワバミや抗鬱、ホフゴブリンやショタ狐が羨ましいと思い続けた。この道を進んだ自分に恨み言を言ったこともある。一流の易者になることだけをガムシャラに目指してた自分のままでいればよかったのか。
 巫女は妖怪になったことが許されざる罪だと言う模範解答を告げた。しかし俺は反逆を続ける。
 もう一度、もう一度。
 みんなの声が届いたかのように、俺は何度も記憶に蘇る。このままじゃ終われない。



   8曲目『春はまだか』 浜田雅功

 この幻想郷は宇宙にある地球という小さな星にある小さな国で忘れ去られた者達が集うとてつもない小さな世界だ。その中でさえも矮小な存在である俺が何かを歌ったところで何も変わらないだろう。物語ではありきたりな展開だが、時代を変えるのは常にそんな小さな連中だ。
 その証拠に、照れ臭いことだが少女達の集う幻想郷の中で男で尚且つモブ的存在の俺が人気で大健闘した。これ、いつぞやの人気が云々で賑わった異変で俺が参加したらいい所までいけたんじゃないかっていう?
 人間としても妖怪としても孤独なポジションにいると思ったら本当に遥かな何かを築いた。ここからはそんな俺を応援してきた人々や幻想郷にひっそりと生きているみんなのために歌おうと思う。





 名も無き男達の熱狂に包まれる博麗神社。鳥居の上に脚を組んで座り、再び易者はギターの音色を響かせる。



   9曲目『今宵の月のように』 エレファントカシマシ

 今夜は眩しいぐらいに満月が夜空を支配する。
 吸血鬼、はたまた月に生きた者、生きる者。そういった連中は様々な恩恵なり情念を持つことだろう。
 しかし俺もまた、この月のようになりたいと思う。彼女達のような強者でなくとも、心に月として残りたい。
 流した涙は悔しいものばっかりだがどれも熱を帯びている。今夜の月も俺の中で輝くだろう。



   10曲目『POISON~言いたい事も言えないこんな世の中は~』 反町隆史

 無力だった里の人間の一人に過ぎない俺が、幻想郷のタブーに触れて普段は妖怪や異変から救ってくれるはずの巫女に
倒された。その道は、今の自分は悔いのない選択だと誇りに思っている。
 ここで生きている限りは妖怪の賢者や力を持つ連中に監視され、胸の内の叫びを封じられる。仮に叫べば、嘲笑され、
最悪イレギュラーとして排除される。
 みんなに俺のようになれとは言わない。ただ、彼女達の言葉が全てではない。仮にどんなに境界を弄られようとも捨てない
誇りを持って、大切にしていってほしい。



   11曲目『WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント』 H Jungle with T

 占術を通じて外の世界を見ると、妖怪や神様はいないが人間同士で複雑なしがらみがあるようだ。
この歌は哀愁とちょっとした温かさがあり、もしも俺が外の世界で生きている人間であればこの歌に深く共感し
涙を流していたかもしれない。名前の無い者達でも肩を並べて酒を飲んだり笑う権利はある。
 彼女達が何とも思っていなくても自分で自分のことはしっかりと褒めるべきだ。



   12曲目『世界に一つだけの花』 SMAP

 俺がここまで周知されたのとこの歌には不思議な縁を感じずにはいられない。アリスという人形遣いも元は人間の魔法使いという噂だが博麗の巫女は特に彼女を制裁することなく、友人として付き合っている。人里の人間というだけで俺は処罰された。しかしみんなの声により俺は人気者という形で復活した。名もなき者が名前も力もある連中に勝った瞬間でもある。
そう、俺達だって異変には関わらなくても幻想郷という世界の中でなくてはならない存在なんだ。オンリー・ワン。



 歌い終えた易者に大喝采とアンコールの大合唱。境内に降りた易者は大きく息を吐くと、易者の体が光る。やがて光が消えると、彼の服は白くなり、胸元が大きく開かれた。幾重にも割れたたくましい腹筋と胸毛。どよめく観衆を尻目に易者は力強い踊りと歌声を響かせる。
 最後を飾る曲は、最愛の女(ひと)へと贈る魂の歌だ。
 


   13曲目『I Was Born To Love You』 QUEEN

 頭を割られても、心臓は消滅する間際まで熱い鼓動を脈打った。普通は自分の存在価値を否定し抹殺した相手に恋をするなんてありえないだろう。しかし俺はそれを喜んで受け入れよう。
 君は俺にとって全てとなった。エクスタシーそのものだ。
 チラリと見せつける腋や太もも。
 風にたなびく黒い長髪に大きなリボン。
 冷めていたが時に温かみを見せる瞳。
 憑依異変で覗いたスカートの中身。
 全てが俺の心を射抜く。
賭けてみたい。彼女とのロマンスに。
 ルールを破った者とルールを厳守する者。
 この歌の意味を知り、ここまで堂々と愛を唱えた歌は無いだろうと心が震えた。
 こうして人気を得て復活した意味は彼女を愛するためだと思う。
 今でも信じられない、香霖堂の店主さえも差し置いて男キャラでトップに立てたことが。
 これはもうトップに立つ彼女の隣に立てという幻想郷の意思そのもの。
 魂が何度千切れても君を愛して愛して愛し抜きたい。月どころか宇宙も突き抜けて地獄の業火も消すぐらい
俺の愛は止まらない。
 常識にも幻想にも囚われない俺が唯一囚われたのは君との夢。
 賭けてみないか? 人間や妖怪のしがらみを越えたロマンス。
 君を愛したい。いつでも君を愛したい。



 熱唱する易者は完全に自分の世界に入っており、観衆がいつの間にかいなくなっていたことも、
背後で針とお祓い棒を構える博麗の巫女の存在にも全く気付いていなかった。
 結局彼は歌い終えた直後に粛清されたわけだが、巫女は律儀にも歌が終わるまでは手を出さなかった。
もしかしたら彼の叫びや歌はほんの少しだが響いていたのかもしれない。
 
今回の投票でカップリング部門が無かったのは極めて遺憾である。
トナルド・トラソプ
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コメント



0.240簡易評価
8.90ヒラリー削除
選曲の振れ幅が凄まじかったわ
きっと形振り構わない易者の気持ちが前に出た結果ね
素敵
11.70名前が無い程度の能力削除
これはつんでれいむ!
多分、真っ赤な顔して易者を粛清したに違いない!