Coolier - 新生・東方創想話

古明地姉妹とRPGゲーム

2018/01/16 07:56:19
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私、古明地こいしが地上から帰ってくるとお姉ちゃんがテレビゲームとなるものをやっていた。
地霊殿に電気が導入されてから、時々こういったゲームというものが、娯楽品として幻想郷の管理者から地霊殿に送られて来る。
別に報酬や取引として契約していないのに送られてくる辺り、案外お姉ちゃんは管理者さんにとって重要な仕事をしているのかもしれない。




居間のドアを開けるとソファに座りながらコントローラーを握っているお姉ちゃんが見える。
長時間やっているのだろうか、ソファの近くにお菓子や、お煎餅の袋が見える。
お姉ちゃんは、集中しているのか、帰ってきた私に気付かない。
何となく腹が立ったので、耳元で「おかえり」と言ってあげた。
「わわ、こいし帰ってきていたのですか。お帰りなさい。それと、少し耳が痛いです。」
さとりは、「うぅっ」と耳を押さえながらこいしに答えた。
「そうだね」
そうなるようにしたのだから当然だ、とこいしは胸を張る。
ついでにそばにあるお菓子の袋も一つとる。
お煎餅だった。


お姉ちゃんの方を見ると「はぁっ」とため息をついている。
こいしが考えるに、おそらく私には胸を張るのではなく反省をしてもらいたかったのだろう。
お姉ちゃんがため息をつく時は大体そうだ。


「そういえば、こいし。貴方もこのゲームをやってみます?」
さとりは、一旦ポーズをかけコントローラーをこいしに差し出しながら尋ねる。
こいしはうーんと唸りながら考えた。
恐らく、さとりはこいしが本当にやるとは思ってはいないだろう。
私はゲームを途中からやることは殆どない。
やるとしたら始めからだ。
お姉ちゃんもそれを知っているだろう。
断られることを前提に相手に尋ねる。
お姉ちゃん風に言うなら思いやり、あるいは配慮とでも言うのだろう。
こいしにはそういった感情は良く分からないが、お姉ちゃんにとっては、必要な儀式なのだろう。
そう思いながらこいしは、さとりが期待しているであろう言葉を答える。
「いいよ、別に。お姉ちゃんもまだ途中なんでしょ。私はお姉ちゃんがゲームをしている所を見ているから。」
「そうですか、それなら有り難く続けさせて貰いますね。」
さとりも、そう答えることが分かっていたのだろう。
用意していたように言葉を返す。
お互いがお互いの答えを知っている会話。
こいしはこの会話が嫌いではなかった。
勘違いだとは分かってはいても、お互いが分かり合えているような気持ちになれるから。






お姉ちゃんのゲーム画面を見ると戦闘画面が見える。
ターン制のゲームのようだ。
RPGというやつだろう。
2Dだ、ドット絵の少女が可愛い。
ちょっとお姉ちゃんに似てるかも。


ロールプレイングゲーム、各自が割り当てられた役割に沿って、目的に向かって進んでいく。
私があまり得意ではないゲームだ。
きちんとした選択肢を選ぶことが難しいから。




引き続き見ていくとパーティーにさとり、こいし、といった私達の名前が見える。
どうやら主人公とその妹で旅をしているらしい。
私がちょっとお姉ちゃんに似てると言ったキャラクターには私の名前が付けられている。
うわー、凄い恥ずかしい。
自分の名前を使われていると凄い恥ずかしくなる。
これは何故なのだろう。
恥ずかしさでむず痒くなってきた。
お姉ちゃんを見ると、私の視線の先に気づいたのか、「違うんです」とか「うー」とか「あー」とか唸りながら悶えている。
可愛い。
この瞬間を切り取って保存したいぐらい。




お姉ちゃんの可愛い反応も面白いが、肝心のゲームにもこいしは興味を引かれた。
ゲームタイトルは「トラウマ」と書かれている。
コマンドに心を読むという選択肢がある。
どうやら登場キャラクターが各自トラウマを抱えていて、心が読める主人公が解決していく物語のようだ。
村人や魔物と話をしている。
心が読めることで相手の本音が分かったり、隠し事が分かったりそれを活かして進めていくみたい。




やっていることは違うけれど、私達の能力と同じだった。
そして、主人公は好かれていて誰からも受け入れられていた。
私たちとは違っていた。


もしかしたらお姉ちゃんも、こうなりたかったのかな?


そう思いながらこいしは、何時も浮かべているような微笑を作った。






「ふむ、どちらの選択肢を選びましょうか。うーん、悩みますね。」
「今日は、右から靴下をはいたから右を選ぼう、お姉ちゃん。」
「この男の子を助けるべきですか、それとも…」
完全に無視された。
電源を切ったら反応してくれるかな?とも思ったけれど前にそれをやって、家に入れてもらえなかったことを思い出し、止めた。
外は寒いのだ。
別に寒くなくてもやる気は無いのだけれど。






お姉ちゃんは主人公に感情移入しているのか、イベントを進める度に一々心を動かされているように見える。
選んだ選択肢のせいで、人が死んだら本気で悲しんだり、逆に助かったらまるで自分のことのように喜んだり。
こいしには全く無い反応だ。
やはりお姉ちゃんは私と違って正常人寄りの感覚を持っているのだろう。
ありたいに言えば共感能力。
他人の感情を我がことのように感じる能力だ。




私は、共感能力というものが壊れている。
それは目を閉じた弊害なのか分からないけれど。


例えば、人が苦しんでいる様子を見て、ああ苦しいんだなとか、ああは、なりたくはないなとは思う。
しかし、だからといって私が嫌な気分になったり、その人を助けようとか思うことはない。
そう、たとえ地霊殿のペットが目の前で死にそうな状態でもこいしは助けないだろう。


こいしにとっては、テレビの向こうで人が死ぬことと、目の前で人が死ぬことにあまり変わりはないのだ。




理解は出来るが共感は出来ない。
別にこいしは共感が出来ないことについて悲しいとは思っていないし、別に欲しいとも思っていない。
ただただ、この世界を生きづらいだけだ。




ゲームが進む。
「ああ、死んでしまいました。このボスどうしたら倒せるのでしょう。」
「お姉ちゃん。防御も使ってみたらどう?」
「確かに試してみなかったですね。こいしのいう通りやってみましょう。」
お姉ちゃんはボスに苦戦している。
村人から受けた怪物退治のクエスト。
見ていると三ターンに一回、大ダメージを与えてくるボスのようだ。
触手で捕まえてきたり、水を吐いたり、腕を振り下ろしたり、色々な攻撃をしている。
タコの様なボス、焼くと美味しそう。
夕御飯はたこ焼きがいいなぁ。


数値だけ見ていればパターンはすぐ分かるけど、台詞や攻撃方法が一々違うからかお姉ちゃんは気づいていない。
まあ後数回もやればお姉ちゃんもパターンに気付くだろう。
「もう、めんどくさいですね。なにをすればいいのでしょう。」
お姉ちゃんは普段心を読んで戦闘をしているせいか、こういった心の読めない戦闘は苦手なのかもしれない。
「お姉ちゃん…」
…ああ、またやられてる。
後何回やるのかなぁ。
こいしはそう思いながらソファの上でボリボリっとお煎餅をかじった。




「やっと倒せました。忘れずにセーブをしときましょうか。前はそれで痛い目を見ましたし。さあ、それではタコの心を見るとしましょう。」


お姉ちゃんがコマンドを押すと回想が始まる。
どうやら、タコのボスは科学汚染によって人間に住み処を奪われたらしい。
悲痛な叫びと、人間への恨みが伝えられる。
「人間も酷いことをしますね。このタコも可哀想です。依頼通りに退治をするべきでしょうか。どうしましょう。」
こいしにはさとりの言うことが良く分からない。
この孤独なタコを助けたところでお姉ちゃんに得は無さそうだ。
それどころか村人から非難の目を向けられるかもしれない。
それよりも、此処で退治をして村人から報酬を貰った方が良いだろう。
別にこのタコが死んだとしても誰も悲しまない。


うーん、ゲームだから普段と違うプレイをしているのだろうか。
いや、それは無いかな。
自分の名前を付けるぐらいだ。
もし、自分だったらという気持ちでプレイしているだろう。
お姉ちゃんはそういう人だ。




こいしは思いきって聞いてみた。
ゲームの世界に夢中になっているお姉ちゃんに声をかけるのはちょっと悪いと感じたけれど、こいしの知的好奇心が上回った。
無意識と好奇心はとても近いところにあるのだ。
それはこいしが一番分かっている。
「お姉ちゃん、そのタコを助けても特に良いものは貰えなさそうだよ。それよりも退治して村に行った方が良さそうじゃない。なんでそのタコを助けるの?」
こいしはソファに座りながら声を投げ掛ける。
上から見下ろすお姉ちゃんの背中はちょっと小さい。
ゲームに集中していたさとりは手を止め、考える。
「そうですね、なぜでしょうか?改めて考えると不思議ですね。何と無くこっちが良いと思ったのですが、きちんとした理由を答えるとなると難しいですね。」




こいしは悩んだ。
お姉ちゃんの言うなんとなくこっちが良いという判断、それがこいしには分からない。
悲しいかな、普通とは違う点がまた一つ分かってしまった。


多分お姉ちゃんの言う、目の前で苦しんでいる人を見捨てられない、困っていたら助けなくてはならない、そういった感情を普通は常識として最初から持っているのだろう。
だからこそ、みんななんとなく正しい行動が出来る。
こいしにはそれが無い。
少しズルいと思ってしまう。




こいしは、正常人の真似して生きている。
人が死ねば悲しい反応をし、人から怒られれば謝る。
全く悲しくないし、謝る理由も分からないけど、そうやって他人と同じ反応をすれば見かけは、正常人と変わらない。
答えだけを知っているテストをそのまま書き写すようなものだ。






こいしがそんなことを考えているといつの間にかペットが私達の元へ集まってきた。
お姉ちゃんはペットの方をチラッと見ると立ち上がり、言葉を発した。
「ああ、もうそんな時間なのですね。それでは夕食にしましょうか。さあこいし、一緒に食堂に行きましょう。」
さとりはコントローラーを置き、私の方に手を差し出した。


「うん、行こっか。お姉ちゃん。」
私は、そう言うとお姉ちゃんの手を取って立ち上がる。
そういえば、お煎餅食べたから手はベタついてないかな?
こいしはそう考えて一旦手を離そうとしたが、さとりはしっかりと手を繋いでいて確認することは出来なかった。






ペットの動物たちと私達の食事場所は違う。
だから、私たちは二人で食べる。
お姉ちゃんと久しぶりに二人で食べるのはちょっと緊張するなぁ。
別に嫌な訳じゃないけれど。


食堂に着くと私とお姉ちゃんはいつも向かいに座る。
向かいといってもテーブルが大きいせいか2メートルは離れている。
でも、それが私とお姉ちゃんの距離。
このぐらいがちょうど良い。


今日の夕食はハンバーグだった。
たこ焼きじゃなかったのはちょっと残念。
でも美味しいから良いけどね。
フォークとナイフできちんと切り取って綺麗に食べる。
なんとなく今日は綺麗に食べたい気分だった。
おいしーと言いながらお姉ちゃんの方を見ると目があった。
お姉ちゃんの目が笑っているように見えたので私も笑みを返す。
こうするとお姉ちゃんの機嫌は良くなるのだ。
私は経験から知っている。
「こうして、久しぶりに二人で食べるのも良いですね。」
さとりはそう言いながら笑う。
こいしは少し返答に詰まりながらもうん、と返す。






お姉ちゃんがそう言った理由を私は知っている。


お姉ちゃんは私が出掛けると、私がその日家に帰らないと分かるまで夕食を食べない。
一人で、私が帰ってくるまで夕食を待っているのだ。
食堂の灯りをつけたまま、冷めた食事を前に、本を読みながら私のことを待っている。
やがて、二十四時を過ぎると私を諦め、静かに一人で食べるのだ。
私はその光景を思い出すと少しだけ胸が痛くなる。






食事が終わる。
ハンバーグもご飯も美味しかった。
こいし的には百点だ。
たこ焼きを食べたかったという思いはどこかにいってしまった。
「ご馳走さまでした!」
「ご馳走さまでした。それではこいし、食器を片付けに行きましょうか。」
お姉ちゃんと私は一緒にあいさつをし、食器を片づける。
「こいし、きちんと食べたら歯磨きをしなさい。虫歯になりますよ。」
「はーい。お姉ちゃん、苦い歯磨き粉は止めてね。」
「分かってますよ。」
二人で歯を磨く。
私たち妖怪が虫歯になるとは思わないが、これは精神的な問題なのだろう。
それにしても、私がいつ帰ってきても私専用の歯磨き粉が置いてあるのは有り難い。
一度、お姉ちゃんの歯磨き粉を使ったことはあるが、あの苦さはもう味わいたくない。
お姉ちゃんの味覚は大丈夫なのか心配になったぐらいだ。




夕食が終わると自由になる。
お姉ちゃんは、どうやらあのゲームを続けるみたいだ。
私は外に出ようと思ったが、夕食の時のお姉ちゃんの顔を思いだし止めた。
なぜ私がお姉ちゃんの顔を思い出したのかは分からなかった。
私はどうせなら最後までゲームを見届けようとお姉ちゃんにくっついていった。
道すがら私は尋ねる。
「お姉ちゃんはあのゲームにどうして夢中なの?」
「うーん、分かりませんね。夢中というよりは途中で放置して止めるということをあまりしたくないだけかもしれません。」
「ふーん、そういうところやっぱりお姉ちゃんは変わらないね。私とは大違い。」




部屋につき電源を入れる。
ロードをして途中から始める。
セーブポイントというのは便利なものだ。
私の人生にも欲しいと思ってしまう。
私はどこからやり直すのだろう?




どうやらゲームも、もう終わりのようだ。
最後はトラウマを抱え、心を閉ざした少女と会話をするみたい。
その状態はちょっとだけ私と似ている。
お姉ちゃんもそれに気づいたのか、私に少し遠慮しているような感じがする。
別に私は今の状態に不幸とか苦しみなんて感じていないのに。
「ねえ、お姉ちゃん。早く進めようよ。」
お姉ちゃんは、一つ一つの選択に時間をかけ進めている。
まるで失敗したら終わりみたいだ。
失敗したらやり直せばいいのに。
見てて焦れったい。
「私は、これでも精一杯早く決断しているつもりなのです。こいしの決断が早すぎるだけなのですよ。」
さとりは、また一つ選択肢を選び、答えた。
さとりの操る主人公が少女を説得する。
心を開ければ家族が喜ぶだとか、前より幸せになるだとか耳障りの良い言葉が響いていく。
こいしは息が苦しくなってきた。
こいしの中の細胞が反抗しているみたいだ。
ちょっと頭も痛くなってきた。
お姉ちゃんは私に瞳を開いてほしいのだろう。
このゲームを見ていて私はそれを再確認する。
私は今の状態が不幸だとか、幸せだとかじゃなくてお姉ちゃんに分かってもらいたいだけなのに。
「こいし、顔色が悪いですけど大丈夫ですか?」
お姉ちゃんが、こっちを心配そうに見ながら話す。
やっぱりお姉ちゃんは優しいというやつなんだろう。
「あー、ちょっと夕食食べすぎちゃったみたい。でも大丈夫だよ。」
私はそう言って、お姉ちゃんに笑みを向ける。
思っていた以上に顔に出ていたみたいだ。
気を付けないと。
「そう…ですか。」
さとりは怪訝そうにしながらも納得する。



ゲームが進む。
「ありがとう。」
ゲーム画面から声が出る。
主人公が少女の心を開いたようだ。
お姉ちゃんも顔を綻ばせ、満足そうな顔をしている。
二人の笑っている顔、幸せそうな音楽、周りからの祝福。
どこをどうみてもハッピーエンドだった。
それを見るこいしの中は良く分からない感情で満たされていた。
「こいし、良かったですね。」
さとりがぐーっと背筋を伸ばしながらこいしに聞く。
「うん、お姉ちゃん。ハッピーエンドだね。幸せ、幸せ。」
こいしは、ふーっと息を吐きながらソファーから立ち上がる。
さとりも、こいしの反応が気になっていたのだろう。
こいしが好意的な反応をしたことに安心しているように見える。
「こいし、今日は久しぶりに帰ってきたことだし一緒に寝ませんか?」
さとりは立ち上がり、部屋を出ようとしているこいしに誘う。
「やったー、お姉ちゃんと寝るの楽しみー」
こいしは、まだ少しだけモヤモヤっとした状態が続いていたがそう答えた。




お姉ちゃんの寝室に行く途中、私は思う。
やっぱり私とお姉ちゃんは分かり合えないのだろう。
お姉ちゃんが私のことを大事に思ってくれているのは分かるし、私もお姉ちゃんは大好きだ。
ただ、私がお姉ちゃんと共感をする日は多分来ない。
私とお姉ちゃんは別の生き物なのだ。


結局、共感というものはただの共同幻想なのかもしれない。
人は、自分のことを分かってもらえたと感じるとこれに快楽の感情を得る。
集団生活をする上でこの共感という能力は大きな武器になったのだろう。
感情が他人と完全同期することなんて絶対に無いのに。


お姉ちゃんの部屋に入る。
ベッドも広いし、良い匂いもする。
部屋全体を眺めるときちんと手入れをしていることが分かる。
やはり、放浪ばかりしている私の部屋とは違う。
そうしてベッドにもたれ掛かっているさとりを見る。
さとりは、枕を抱いたこいしを見ながら伝える。
「こいし、もう夜も遅いですし寝るとしましょう。」
こいしは、返事代わりにお姉ちゃんのベッドに入った。
布団がふわふわしてて気持ちいい。
お姉ちゃんが横にいる。
「こいし、明日も家にいますか?」
さとりが不安そうな声で尋ねる。
「うーん、分からない。でも、毎回放浪をして悪いとは思っているよ。」
こいしは、そう答える。
本当は家にいるつもりはあまり無いのだが、こう言うとお姉ちゃんは追求してこなくなる。
こいしの経験だ。
ただ今日は、なんだかお姉ちゃんに悪いことをしている気がした。
いつもはこんなこと無いのに。
さとりは、こいしが帰ってきたことで疲れていたのか、そうこいしが答えると安心したのか少ししてスーっと寝てしまった。
こいしはしばらくさとりの寝顔を観察していたが、ややもすると目を閉じた。
「おやすみ、お姉ちゃん。」


こいしはそう言い自分も寝ようとするが、なんだか眠れなかった。
今日のお姉ちゃんとの時間を思い出す。
帰ってきた時のこと、一緒にゲームをしたこと、夕食を食べたこと。
久しぶりに地霊殿に帰り、お姉ちゃんと話をしたせいか私は悟ってしまった。
共感能力の無い孤独な私は一生真の意味で独りなのだろう。
そう思うと、なんだか悲しくなる。
心も弱くなってしまったようだ。
私は悲しさを誤魔化すようにお姉ちゃんの背中を抱き締め、その暖かさを感じながら眠った。
何時か、お姉ちゃんが私を理解してくれると信じて。
閲覧ありがとうございました。
kes
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コメント



0.320簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
内面の描写が良かった
2.100名前が無い程度の能力削除
よかったです
実際にウイッチャー3みたいな選択肢や会話重視のRPGって需要があると思います
相手の心を読めるRPGとかやってみたいですね
3.90奇声を発する程度の能力削除
楽しめて面白かったです
4.80名前が無い程度の能力削除
深い断絶の描写が印象的でした
地の文で「私」という一人称と「こいし」という三人称が混じることに最初は違和感を感じましたが、よく考えると普通とは違う感情しか持てないこいしの内面なのですから、むしろそれが彼女にとって自然な内的独白なのかもしれませんね
5.90名前が無い程度の能力削除
前のタイトルも好きですがこちらのほうが分かりやすいですね。
二人の対話を楽しませていただきました。
6.100名前が無い程度の能力削除
良い
7.100名前が無い程度の能力削除
とても面白かったです
作者さんの書く文章、結構好きかも知れません
また新たな作品を見せて頂けると嬉しいです
8.100名前が無い程度の能力削除
よかったです。
9.90大豆まめ削除
> 集団生活をする上でこの共感という能力は大きな武器になったのだろう。
> 感情が他人と完全同期することなんて絶対に無いのに。

共感という能力は人間が集団活動する上での大きな武器で、それ以上の共感するための器官を持ってるのがサトリ妖怪のはずなのに、そのサトリ妖怪が「絶対に無い」って言い切っちゃうのが、切ないというか悲しいというか。
とてもおもしろいお話でした。
10.100名前が無い程度の能力削除
静かな感じがとてもいい
11.80もなじろう削除
淡々と進むストーリーの中にこいしとさとりの複雑な心境を見え隠れさせているのが上手いなと感じました
12.90怠惰流波削除
最初に流し読みした際、敬遠したことを後悔しました。

読むにつれて、輪郭のはっきりしない人称の描写は、じつにこいしらしいと思えるようになって来ました。
こいしが理解されたいと思う限り、希望はあるのだと思います。
13.100ldlphone削除
ちょっと暖かい気持ちになりました
15.90名前が無い程度の能力削除
サイコパスの苦悩。2人の距離が近づけば近づくほどにその断絶が際立つ構成が見事でした。
18.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです