Coolier - 新生・東方創想話

晩秋を背に

2017/12/14 21:18:27
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 探しもの、というのは。

往々にして人から必要とされ、求められ、そして大抵、探した場所には無いものである。中にはそれを必要とせず、ただの蒐集目的で探す者もあるかもしれない。

或いは、知られたくない秘密を知られ、その者を消そうとしているのかもしれない。

 いずれにせよ、『無い』という事実がここでは重要なのだ。無い物を求めるからこそ、彼女は探すのだ。探すことに掛けては彼女は天賦の才を持っている。探しものがそこに無いのなら、別の場所へ。また別の場所へ。

 そして……。




「ちゅちゅっ」

 使役しているネズミの声が聞こえた。庭では紅葉が萎れ、散り始めている。どうやら晩秋の夕陽の中、まどろんでいたようだ。私は声のした方を見下ろし、灰色の愛らしいソイツを見下ろした。

 ソイツは口に何か咥えている。よく見れば、それはご主人の字で『ナズーリンへ』と書かれた手紙だ。またぞろ、宝塔でも失くしたか。私は溜息を吐きながらネズミから手紙を受け取り、適当な労いと共に彼を解放する。

 手紙を開くと、焦ったようにのたうつ文字で以下のように書き綴られていた。


『たたたほたうたたたとたうをたたたなたたたくたたたしまたたしたたたたすけてたたたたた』


 ……ご丁寧に可愛らしい狸の絵まで描いてある。コイツ実は結構余裕あるんじゃないかと錯覚しかけるが、わざわざあのご主人が御大層に暗号まで使って助けを求めて来たのだ。どうせ今回も助けないと駄目なのだろう。

 私は立ち上がり、暮れなずむ庭を見詰めていた。その時ふと、庭に一つ立てられた、小さな石が目に入った。

 不自然に盛り上がった土の上、これまた不自然に突き立った石である。庭の外観に明らかにそぐわぬ。庭掃除の際にでもさっさとどかされそうな不自然さであるが、ナズーリンはそうしなかった。


 何故ならそれは、墓だからだ。いかに小さくとも、彼女なりの偲び方なのだ。


(なつかしい。あの時は、今などより必死になって探していた)


 彼女は一時、それを思い返した。晩秋の風が冷たく吹き抜け、紅葉をさらっていった。





「何故だ!」

 ナズーリンは叫んだ。建ったばかりの妙蓮寺が揺れるほどの大音声であった。寅丸は顔を伏せ、淡々と繰り返した。

「ナズーリン、不可能なのです。この子はもう……」
「嘘だ。ご主人はよく考えもせずに諦めている」

 ナズーリンはやり場の無い怒りと焦燥に震え、正座したままわなわなと寅丸を睨み付ける。寅丸は申し訳なさそうに視線を逸らす。それがますますナズーリンを苛立たせた。

「何かあるハズだ。コイツを助ける手段があるハズなんだ」
「……ナズーリン、ですが、この子は……」

 寅丸は寝かされていた『それ』を手に取り、目の前に持ち上げた。彼女の掌の上では、今にも途切れそうなか細い呼吸を繰り返す、小さな灰色のネズミが乗っていた。くたびれた白毛交じりの小さな身体は、必死の呼吸の度に震え、その命は今にも燃え尽きようとしている事が分かる。

「……見てわかるでしょう。寿命です」
「……」

 諭すような言い方が更に気に食わなかった。気が付いた時、ナズーリンは怒りに任せて口を開いていた。

「結局、ご主人もそうなんだ。私達がネズミだから、死んでもいくらでも代わりが居ると思っている。だからそんなに簡単にあきらめがつくんだ」
「ナズーリン……!」
「もういい! もう頼らない!」

 ナズーリンは叫び、弾けるように立ち上がると、踵を返して寅丸の目の前から立ち去った。

 寅丸は障子を開いて出て行くナズーリンを見詰め、やがて掌の中の命に視線を落とすと、溜め息を吐いて白い布の上に寝かせた。灰色のネズミは小さな息を繰り返していた。





(あの頃はまだ青かった)

 ナズーリンは目を細め、外出の準備を整えながら思い返す。はて、あの頃は、などと言うと今は成熟しているようにも聞こえるが、そうではない。彼女も彼女なりの殊勝さというものは持ち合わせている。自分の未熟さは重々承知しているつもりだ。

 気が付けば、大量のネズミたちが小屋に上がり込んできていた。彼らは皆、ナズーリンが使役するネズミ達だ。数が多く、このような探し物の際には特に重宝する。彼らはナズーリンを見上げ、命令を待っている。

「すまないな、お前達。またご主人の宝塔だ。頼まれてくれるか?」

 ナズーリンの言葉にうなずくと、ネズミ達は一斉に散開し、森の中へ、人里へ、山の方角へと消えてゆく。ナズーリンは彼らを信頼している。彼らの捜索能力は大したものだ。もっとも、食べ物が目的の場合は見つけたその場で食べてしまうため、その限りではないが……。

 タンスの中からロッドを取り出し、服もすっかり着替え終わると、ナズーリンも外出のために土間へ降りた。留守番のために小屋に残るネズミ達が、見送りのために玄関へ来ている。

「心配ない。すぐに帰るよ」

 ナズーリンが言うと、ネズミ達は深々と頭を下げた。ネズミの主人は丁寧すぎるネズミ達に苦笑いをこぼし、軽く手を振ると、玄関から出て行った。

 夜になる無縁塚では、真っ赤な絨毯と見まごうほどの彼岸花が、その元気を失い、こうべを垂れつつある。もうすぐ冬がやってくるのだ。死の季節が。一陣吹いた北風に、彼女は服の襟元をかき寄せる。

「……さて、使うとするか」

 ナズーリンはダウジングロッドを取り出し、見下ろした。North,East,West,Southの文字が輝き、やがてその方角を指した。

「……行くか」

 誰に言うともなく、ナズーリンは呟いた。そして土を踏みしめ、森の中へ分け入って行った。




「なんでだ、なんで反応しない……」

 焦ったような声が、人里の通りに響く。ナズーリンは自身が手に持ったダウジングロッドを見詰め、歯を食い縛って手を震わせる。

 死にかけの友を救うため、ナズーリンは人里の中、その手段を捜索していた。だが彼女の命とも呼べるそのダウジングロッドは全く反応を寄越さない。苛立ちが頂点に達そうとしていた。



((……死を覆す薬ですか))

 最後の頼みの綱とばかりに頼った白蓮は、妙な顔つきで黙り込んだ。これで駄目ならば迷いの竹林の医者に頼み込むまでだ。自分の身体を売ってしまえば、多少の薬は手に入る算段だった。

 だが、白蓮は顔を上げ、意外な返答をした。

((あるには、あります。万能の薬と呼ばれる、その薬は。ですがそれは生半可な覚悟では手に入りません。その覚悟はありますか?))

 ナズーリンは一も二も無く頷いた。それがどのような物かさえ分かれば、後はダウジングロッドで探し当ててみせる。あの灰色の友は助かるのだ。そう考えただけで、ナズーリンは救われた心地だった。

((ならば、今から言う人物を尋ねて下さい))



「……それしかないのか」

 ナズーリンは結局諦め、白蓮に言われた通りの場所へ来ていた。軒を連ねる家々の中でも、どことなく陰気な雰囲気を漂わせる家屋だ。ここに来てもダウジングロッドはピクリとも反応しないが、手掛かりがこれしかないのも確かだ。ナズーリンは諦め、戸を叩いた。

「開いておりますよ」

 返事はすぐに返った。老いた声だった。ナズーリンは一瞬訝しんだが、すぐにそれを振り捨て、声を出した。

「失礼させてもらうよ」

 戸を開き、中を覗く。広さは6畳ほどだろうか。その部屋の向こう、囲炉裏を挟んだ向かい側では、真っ白な髭をたくわえた老人が、意外そうな顔でこちらを見ていた。

「お客さんではないのですか」
「お客さん? 何の?」
「いえ……いえ、不躾な質問でした。とにかく、上がって下さい。お茶をお出しします」

 老人は立ち上がり、部屋の奥、棚へと歩いて行く。そして難儀しながらそれを開き、中から様々な種類の缶を取り出し始めた。

 見れば、老人の片手は義手である。更なる疑念が浮かんだナズーリンは、しかしそれどころではないと思い出す。


「ご老人、私もお茶をご馳走になりたいところだが、そうのんびりとはしていられない。万能の薬を持っていると聞いた。それを貰いたい」
「……」

 老人の動きが止まった。だがすぐにまた動き出し、お茶の葉を急須にふり込む。

「……ええ、分かりました。ですがどうか、お茶をまずは」
「そんな暇は……」
「いえ、どうか」

 ナズーリンはなかば叫びかけたが、老人は粘り強く語りかけた。この老人の態度に何か譲れぬ信念めいたものを感じ取り、ナズーリンは止まった。人間と妖怪の視線がぶつかる。

 そして、やがてナズーリンが折れた。

「……分かった」

 靴を脱ぎ、居間に上がって囲炉裏の傍に正座する。その斜め隣に老人が座り、水とお茶の葉を入れた急須を火にかけた。それきり、どちらも喋らなくなる。

 妙な空間だった。火が爆ぜる音が時折響く以外には何の音もしない。老人は優し気な瞳で燃える火を見詰めている。ナズーリンは何処か居心地の悪さのようなものを感じ、もぞもぞと座り直す。

「……ご老人、これは一体」
「ああ、いえ、お茶が沸くのを待とうと。年を取るとすぐに静かになって申し訳ない」

 老人は笑みを浮かべ、また静かになる。何も言わないその姿は、ともすれば死体じみている。ずんぐりとした身体と、妙にスッキリした義手が不釣り合いだ……そんなことを考ていると、不意に急須が甲高い音を鳴らした。見れば、小さな穴から蒸気が噴出している。沸いたのだ。

「では、失礼して」

 老人は義手を軋ませながら急須を取ると、そのままの姿勢で固まった。木の掌で急須の中の茶の熱を感じるかのように暫時目を閉じ、そして脇の湯呑を取って注いだ。

「どうぞ。枯れた葉で申し訳ない」
「いや……」

 正直、このままのんびりと茶を啜っている自分の悠長さに焦れた。友が死のうとしているのに、ここでのんびりとしている自分が腹立たしかった。

 だが、身体は自然と動き、湯呑を受け取っていた、茶の熱が器を通して掌を温めた。老人は目を細めて笑みを浮かべる。

「……さて、お待たせいたしました。どうかこの老人に、話をお聞かせください。貴女が万能の薬を求めるに至った、その理由を」

 ナズーリンは……彼女は、今更ながら自分の居心地の悪さの理由を知った。そうだ。静かな空間では、何もない空間では、落ち着いてしまう。落ち着いて、冷静になってしまう。そうして、自分は気付いてしまう。自分はただ、怒るフリを、焦るフリをして、■■■■■■■■■■■■■■のだという事に。

「私は……」

 湯呑を持つ手が震えた。彼女はそれでもなお、自分の根本的な問題から目を逸らした。諦めたくなかったのだ。傲慢だったのかもしれない。

「私の友が、死のうとしている。私が……とある任務を請け負ってから、ここに一緒に来てくれた、数少ない友なんだ。死なせたくない」
「……失礼ですが、ご友人を苦しめている原因は」
「寿命だ」
「寿命ですか」

 老人は遠い何かを見るように顔を上げた。ナズーリンは対照的に目を伏せる。寿命など、なんとでもなるハズなのだ。ただ、死んでほしくない。我儘であったとしても。

「……分かりました。少し、付き合ってもらいたいのです」
「仕事か? 探し物か?」
「仕事です。隣で見てくださっているだけで構いません」

 老人は呟き、ゆっくりと立ち上がった。そして奥の部屋へ籠り、数珠と法衣を携えて出て来た。

「それは……」
「どうか、ついて来て下さい。薬は見つかるでしょう」





(……アレは今でも完全には納得していないが)

 サクサクと落ち葉を踏み、ナズーリンは歩く。前方では人里の灯りがチラつき、屋台で飲み潰れた男達の下品な歌声が響く。

 ネズミの主は歩みを止め、白い息を吐き出した。

(しかし、この方角)

 このまま行けば人里の中へ入る事になる。人里の中に宝塔が落ちているなら、寅丸が気付かないハズは無いが。

(……誰かが持ち去った、という事も)

 まさか、誰がそんな事をするのだろうか。毘沙門天に認められた者しか扱えぬ道具など、余人には大した価値も無いだろうに。

(……)

 だが、ナズーリンは何故かその可能性を否定し切れなかった。あるいは、彼女を見下ろす星々が、何かしらの啓示めいたものを与えたのかもしれない。

 いずれにせよ、行かねばならない。宝塔を回収する。それが彼女の……探す者の、使命だった。





 無機質なお経に、すすり泣きの声が混ざる。喪服を身に纏った老女は、人目もはばからず、目から大粒の涙を零していた。

 老人を弔う老人は、数珠を片手に木魚を叩き、目を瞑って読経している。

 他の者達も、ハンカチで目頭を抑え、悲しそうに目を伏せ、皆が哀悼の意を示す。


(理解出来ない)

 人間の葬式の中、ナズーリンは……何処か浮ついた、熱に取りつかれたような思考を回していた。


 理解が出来ないのだ。

悲しいのなら、何故行動を起こさない? 何故結果を覆す行動に出ない? 何故誰も彼もが悲しみに暮れるだけで、足掻こうとしないのだ?


 気が付けば読経も終わっていた。仕事を終えた老人は遺族を振り返り、説教じみた事を行っている。それを見ながら、ネズミの主人は何処かで気付いていた。自分は騙されたのだと。


「……さて、お待たせしました。何でも治す、万能薬の事でしたな」

 葬儀の合間に老人が歩み寄り、ナズーリンの隣に座った。だが彼女は立ち上がり、怒りと憎悪に燃える瞳で老人を見下ろした。


「騙したんだな」

「……何故、誰もが葬儀を執り行うのか、分かりますか」

「騙したんだな!」


 大声だった。遺族が静まり返り、囁きが水面の波めいて広がった。老人は落ち着き払った態度で、ナズーリンを見上げた。


「ご友人には、何の薬も必要ない。必要があるのは、貴女なのです」

「何を……」

「……もう一度、質問です。友人思いの妖怪殿。人は……いいえ、生き物は何故、死したものを悼むのか、分かりますか」

「分かる訳が無いだろう! 分かりたくもない!」


 叫び散らした直後、ナズーリンは自分が致命的な事を口走ったのに気付いた。だが口から出たものは、もはや――。


「そうでしょう。貴女は分かっている。賢い御方だ」

「……」

 老人の言葉は石じみて、しじまの中に重く響いた。ナズーリンは震える拳を無理に握り込んだ。

「……怒りは燃え上がるでしょう。不甲斐なさに震える時もあるでしょう。死という結果を避けられたはずだ、そう思う事もあるはずだ」

「……きれいごとはやめろ……」

 分かっていた。最初から。


 自分はただ、怒るフリを、焦るフリをして、友の死から目を逸らしたかったのだ。


「いいえ、綺麗事などではありません。むしろこれはとても残酷な事なのです。生き物は怒りや理不尽を乗り越え、楽しい思い出だけを記憶の中に残す事ができる。ですがそれには……貴女自身が、事実と向き合う必要がある」

「もういい」


 ナズーリンは走り出し、葬儀から抜け出した。

 老人はその背中を見詰め、一度ゆっくりと瞬きした。そして葬儀に戻っていった。





「……どうしてだよぉ、どうして治らないんだよぉ……」


 宝塔を抱えた少年が、今にも泣きそうな声を上げる。

 ナズーリンは宝塔を見つけていた。……宝塔を盗んだ者も。


 夜闇が覆う里の隅、倒れた状態で虫の息を繰り返す犬。その目の前で、必死に宝塔を握り締める少年。

「……キミ」

 ナズーリンが声を掛けると、少年はビクリと肩を震わせて振り返った。そしてみるみる目を真っ赤にし、ポロポロと涙を流し始めると、引き攣った声で叫び始めた。

「お、お願い! お願い、だから、これを使わせて! 盗んだのは謝る、から! だって、だって、こうしないと、タロウが、死んじゃうからぁ……」

 ナズーリンは、少年が背後に庇った犬に視線をやった。老衰だろう、今にも死にそうな呼吸を繰り返し、虚空を見詰めている。


 もう、助からない。寿命なのだ。ナズーリンはそれを伝えようとし……言葉に詰まった。


 少年はなおも言葉を続ける。

「お、おかあ、さんが! 神様なら、なんでもできるって、言ってたから! だから、この道具なら……なんとかできるんだろ! お願いだから、タロウを助けて!」


 そんな力は、宝塔には無い。少年は逃げたいだけなのだ。

「……そんな事は、出来ない」

「嘘だ! 嘘はやめろよ! だって、タロウは、ちょっと前まであんなに元気で……だって、神様だろ!」

「タロウも、そんな事は望んではいない」


 ナズーリンの言葉は鋭い刃物のように、冷たい空気を切り裂いた。少年はボロボロと涙を零しながら、歯を食い縛って妖怪を睨み付ける。

 分かっている。縋る手段が無くなれば、理不尽な怒りしか無くなるんだ。分かっている。

「……生き物は何故、死を悲しむのか。分かるか」

「……分からないよ。分かりたく、ないよ」

「……」


 ああ、この子は賢い。だからこそ、分かっていたからこそ、自分の冷たさに腹が立ってしまうのだ。助けられないなどと結論を出してしまう自分の理性が憎いのだ。

「……けど、もう、どうすれば良いんだよ……だって、死んでほしくないんだよぉ……」

 少年は宝塔を取り落とし、膝をついて泣き崩れた。ナズーリンは宝塔を手に取り、少年を一瞥すると、それ以上は何も言わず、歩き出した。




 満天の星空の下、すすり泣く声と、か細い息の音が、しばらく響いていた。だが、やがてか細い息が途切れると、泣き声は一層大きくなった。






 結局、ナズーリンはヨロヨロと命蓮寺へ戻った。小さな友を助ける手立ては何一つなく、もはや冷たい事実と向き合うしかなかったのだ。


 寅丸が何かを言っていたような気がする。ナズーリンはいい加減な返事を返し、小さな友の前に膝をついた。


 灰色の彼は自分の主人を見上げ、少しの間、か弱い呼吸を繰り返していた。だが、その呼吸もいつしか止まっていた。

 ナズーリンはその死体に手を触れ、息をしていない事と、脈が止まっている事を確かめた。どうしようもない事実だった。

 
 涙があふれた。噴火しそうな感情が洪水を起こし、彼女は恥も外聞もなく泣き声を上げた。小さな死体の前で、小さな妖怪はいつまでも泣いていた。


 その内に涙も枯れ、ナズーリンは疲れ果てて眠った。


 翌日、目を覚ました彼女は、白蓮に葬儀を開くよう頼んだ。尼僧もこれを受け入れ、小さな、だが大切な葬式が執り行われた。そこでナズーリンはまた泣いた。遺体を焼く時も泣いた。


そうして、彼女は自分の庭に墓を作った。





「ああ、本当にありがとうございます……! まったく、どうしていつも失くしてしまうんでしょう」

「……さあ、ね。とにかく、次からは気を付けてくれ、御主人」


 宝塔を手渡し、これにて御役御免とばかりにナズーリンは歩き出す。

「待って下さい、ナズーリン」

「何だい」

 呼び止められ、歩みを止める。寅丸が何かを言おうとし、躊躇っているのが分かった。

「……何か、ありましたか?」

「……まさか。いつも通りだよ」

 それだけ返し、ナズーリンは歩き出す。


(線香を買って帰ろう)


 ネズミの主人は心の中でそう決めた。


 月の光に吐息が溶ける、寒い夜の事だった。
皆さんは冬を迎える準備ができましたか?
ヤクザ憲兵
kenpei893@yahoo.co.jp
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コメント



0.160簡易評価
3.20名前が無い程度の能力削除
遺族からしたらナズーリンは完全な糞野郎ですね。まあ作者にとってモブ何かどうでもいい存在なんでしょうけど。
4.10名前が無い程度の能力削除
ゴミ。キャラにも話にも深み無し。同じ事を繰り返しているだけのクソのような話。何が面白いと思ってこんな話を書いたの?
5.無評価名前が無い程度の能力削除
命蓮寺建立の時点ですでに1000年以上も生きているナズーリンが、部下のネズミの死でこんなに取り乱すのが不自然です。
星蓮船のストーリーをご存知ないのではないでしょうか。

7.90名前が無い程度の能力削除
現代のナズーリンと未熟だった頃(?)のナズーリンの対比の描写が良かったです。
子供にかつての自分を照らし合わせているところもよかったと思います。
次の作品も期待してますね!
8.無評価名前が無い程度の能力削除
原作レイプ、と言う言葉をご存知ですか?

あなたがした事は原作のキャラの名前だけを使い、その特徴を何一つ活かさずに物語という檻の中で殺したようなものです。

こんな事は言いたくありませんが、あなたに東方の二次創作は二度と書いて欲しくはない。かなりの不快感を覚えました。
9.無評価名前が無い程度の能力削除
原作レイプ、と言う言葉をご存知ですか?

あなたがした事は原作のキャラの名前だけを使い、その特徴を何一つ活かさずに物語という檻の中で殺したようなものです。

こんな事は言いたくありませんが、あなたに東方の二次創作は二度と書いて欲しくはない。かなりの不快感を覚えました。
10.無評価名前が無い程度の能力削除
>(あの頃はまだ青かった)
命蓮寺も永遠亭もあるということは幻想郷に来てからの話と思いますが、このお話は相当な未来が舞台なのでしょうか。
少なくとも1000歳は超えているナズーリンが「あの頃」と振り返っていますから。