Coolier - 新生・東方創想話

二つの針の進む速さは

2017/12/08 02:27:23
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 とある駅のロータリーに私はいた。
 郊外にある小さな駅の小さな円形道路。そこの内側にちょっとしたスペースがある。外縁に木々が植えられて、モニュメントや舞台もあって。まるで広場のミニチュアみたいな空間。
 その真ん中の、噴水の淵に座っていた。
 水鳥の像が乗った台座から湧き出す水が、一枚の薄いベールになって水面へと流れ落ちていく。
 時折吹く風が、それを水滴へと戻してしまうのをなんとなしに眺める。魔法を解かれたみたいに分かたれた水の欠片達が、初夏の乾いた日差しを受けて宝石みたいに輝く。
 それはとても奇麗で、しばらくこうして見ていたいと思う位には興味深い風景だった。水の流れる音も涼やかで心地いい。
 でも自分はもちろん、そんなささやかな風流を楽しむ為にここにいる訳じゃない。
 幾度目かの風が止んで、水滴が全部水面へと消えていくのを見送ってから、ようやく時間を確認する事にした。
 遥か彼方、日時計や水時計の時代にアウグスティヌスが『時間とは何か、と誰も私に問わなければ私はそれを知っている。しかし時間とは何かと問う者に説明しようとする時、私はそれを知らない』と自伝に綴ってから幾星霜。
 どんなに小さくて安価な時計でも、世界標準時から少しもずれるなんて事はありえない現代。
 でも、今持っているものはそれとはほど遠い代物だった。
 首から下げた品。今日の服装——陽気に誘われて解禁した、微かに紫の入った瑠璃色のセーラーワンピースにはポケットが無かったので、アクセサリ感覚で付けてみた。ちょっと冒険したけれど、これは中々のナイスアイディアだったかも。どっちもレトロ風味だし。
 コーデを自画自賛しながら、お腹の上あたりに麻の紐で吊ったそれを持ち上げる。
 手に居心地良く収まる滑らかな銀の円盤。吊り輪の中にあるボタンを押すと、穏やかなふくらみを描く硝子付きの蓋が、留め具から解放されて開いた。
 ローマ数字が並ぶ文字盤と二本の細い針。遠い異国情緒を思わせる金色の月が、文字盤に空いた窓から覗く。
 そう、私の手の中で丁度予定の時間だと告げているのは、懐古趣味甚だしい懐中時計だった。
 ただ時間だけを示す為だけの大仰な装置。それすら危ういアンティークな物。きっとそれでも色んな価値を見いだす人がいる。かくいう私もその一人ということになるのだろう。
 でも別に郷愁とか蒐集とかそういう事ではなくて、私の場合はあくまでも実用品としての価値だけれど。
 というのも、正確でシンプルなデジタル表記の時刻は、時々何故かやたらと長く思えるのだ。
 特に、毎回の様に遅刻をする相方を待っている間は。 
 それに比べて長針と短針は読みにくいけれど、常に同じ速度で着実に進み続けてくれる。電子的な制御なんて無い筈なのに、驚く程滑らかに盤面に描かれるその軌道には、不思議なもので、ほのかに温かさみたいなものが感じられるような気がした。
 そしてもう一つ。この時計なら——
「お待ちの品をお持ちしましたお客様」
 思考を遮る突然のその声が、何の気後れも無さそうな悪戯っぽい陽気さで告げた。
 随分とふざけた三文芝居をする傍らのその人物を見もせずに、こっちの不満が伝わる様にやや低い声色で答えてやる。
「それで。その品というのはどこに?」
「ここにありますよ、マエリベリーハーン様」
 遅刻の罰として色々と困らせてやろうと思っていたのに、その想定外の言葉とわざわざのフルネーム呼びで、つい顔を上げてしまう。
 何故か目に飛び込んでくる深い赤色。それにふわりと鼻孔をくすぐる良い香り。
 そこにあったのは一輪の薔薇だった。腰を落とし、捧げる様に差し出された奇麗にラッピングされたそれは、たった一輪なのに凛とした佇まいで。プレゼントとして貰えたなら、きっと素敵な思い出になること間違い無しだろう。普通なら。
「い……」
「い?」
「イタリア男か!」
 つい、そう叫びながら未だキメ顔の蓮子の脳天に、渾身のチョップを決めていた。
「あたっ! ……もー。折角詫びの品も用意したのに真っ先に暴力に訴えるなんて、メリーは血の気が多いわよ」
 頭をさすりながら遅刻魔、もとい宇佐見蓮子が口を尖らして抗議してくる。
「いや、どう見てもツッコミ待ちでしょ」
「薔薇を貰ったのに、乙女ゴコロが不足してるわねメリーは」
「いや、渡し方諸々の問題でしょう」
 そんな相方の今日の格好はいつもと大して変わらないシンプルな出で立ちだ。白い半袖シャツと黒のスカートに、これまたおなじみの白いリボンが特徴的な黒のボーラーハット。胸の前に添えていたそれを、私の追加注文を恐れてか、いそいそと被りなおす。
 いつもと違うのは闇色のチョッキを身につけている所だ。
 タイトな、銀ボタンのダブルブレストで、華奢な蓮子の線の細さをより強調する。その前見頃に差し込まれた赤いネクタイがモノクロの中で栄えていた。
 まるで街に繰り出した見習いバーテンダーか美容師か。気取った着こなしなのに、自然体そのもののようなその素質故か、不思議と蓮子に似合ってしまっている。
「で、どうして遅刻のお詫びが薔薇なの」
「麗しい相方への愛念と謝罪を、精一杯形にしようとした結果よ」
 恥ずかしげも無くそう言ってのける蓮子。つまりは特に意味は無いらしい。
「そんなに愛おしいのなら、最初から遅れてこないでよ」
「それが生憎時計を忘れちゃってね」
「まったく。その目は忘れようもないでしょ」
 私の呆れ声に蓮子はにっと笑って、その深い鳶色の双眸を空へと向けた。
「十四時四十六分二十三秒。そろそろおやつでも食べたくなるわね」
 驚くべき事、なのかどうかは分からないけれど。彼女は月で場所を、星から時刻を読み取れるのだった。まあ、私の瞳だってたまに変な物を見てしまったりするのだけれど。

「さて。今日の活動は収集した情報の共有と今後の話し合いね」
 噴水の淵から立ち上がって軽く身だしなみを整えていると、さっそく蓮子がそう切り出す。
 もし他人が聞いていたならば勤勉な学究の徒がまさに学究に挑まんとしているように思われるかもしれないが、これから私達が情熱を投じるのは、主に心霊や不可思議な物事や結界が相手のサークル活動だ。といっても私と彼女二人だけの秘封倶楽部の実態は、とりあえず集まって、気になった事を話し合ったり考えたりして、そこから先は成り行きにまかせるという、至極つかみ所のない感じなのだけれど。
「じゃあいつもの場所?」
「そうね、リクエストがあれば考える素振りくらいはしてあげなくもない」
 実に悩ましいといった顔で、蓮子がのたまう。なにその小悪党並みな横暴さは。
「うわー酷い。考える事もしてくれないの」
「いや、あの宇治抹茶パフェが悪い。抹茶の苦みと特製生クリームの筆舌尽くし難いハーモニー。あんな悪魔的な美味しさを一度味わってしまったらもう!もちろんフレークもただの嵩まし要因じゃなくて甘さのコントラストを調整する役目が——」
 蓮子が興奮気味に「パフェの階層構造が食事の進行において味覚へ与えうる効果的で合理的な演出」について、まさに立て板に水を流すみたいに語り出した。こうなると彼女は大抵の場合、いつまでも止まらなくなる。
 これ以上本格的になる前に、はいはいと適当に相づちを放りながら歩き出す。
 ロータリーに別れを告げて歩道橋を渡って、両脇に店が並ぶ並木道を進む。
 歩道に落ちる木陰が風に揺られて、水面の煌めきみたいだ。その中を歩めば、葉擦れの音がすぐ頭上を渡っていく。なんだかちょっとした物語でも始められそうな雰囲気。
「なので、科学的にもパーフェクトな味覚のコントラストを形成しているのよ、うん」
 相方はパフェの呪いにかかっているようだけれども。横で歩く蓮子の話が一段落したのを見計らって言葉を差し込む。
「それじゃその悪魔的なパフェの養分を、脇腹や二の腕あたりに蓄えてしまうのも仕方ない事、と」
 私の一言がまるで刺さったかの様に蓮子が横腹を抑える。
「うっ……。なんだか急に富士山あたりの結界を調べたくなって来た。山頂までの約四千キロカロリーの道程はきっと有意義な調査になるわ。それに、不老不死の薬も落ちてるかもしれないし」
 恐怖に凍り付いた表情だったのも一瞬で、彼女がオカルトという常識の淵に触れる常のとおりに、子供のように顔を輝かせる。
「不老不死の薬? また変なルートからの情報?」
 蓮子は心外だというように肩を竦めてみせる。
「あら、私はいつだって信頼できるソースに裏打ちされた情報しか取り扱わないわよ。それに不老不死の薬については日本最初期の物語にちゃんと書いてあるもの」
「不老不死になる話なんてあったっけ?吸血鬼は海外だし、富士山に人魚がいるはずないし……」
 考える私をよそにさっさと蓮子が答えを明かす。
「竹取物語よ。かぐや姫から貰った妙薬を、帝は家来に富士山の火口へ投げ入れさせたの。かぐや姫がいないのなら不死の薬なんてあっても仕方ないと嘆いてね。今もなお妙薬を焼いた煙は天に向かって立ち上っているらしいわ! あーどこかに少しくらい残ってたりしないかな」
 古の草子に一体どれくらいの信頼性があるのだろうか。でも確かにロマンがある響きだとは思う。不老不死。でも不老不死ねえ。
「蓮子は不老不死になりたいの?」
「メリーは興味ないの?」
「質問を質問で返す……。んー、そうね。あんまり考えた事も無いし、死ななくなった時にやりたい事なんて特に思いつかないわね」
 私の言葉に、蓮子は歩きつつ空に薄く見える半分欠けた月を眺める。
「顕界でも冥界でもある世界の住人になれるかもしれないわよ。長生きすれば仙人にだってなれたりするかも。とりあえず『これ』はいらなくなりそうだけれど」
 蓮子が宙の視線を手元に戻す。そこには私の懐中時計が握られていた。
 何か気になる事があったらしく、噴水の前で蓮子に貸してあげたのだった。
 さっきから端末片手になにやら調べてるみたいだけれど、何か変わった所でもあるのだろうか。それとも偉人が使っていた物だったとか。確か、かの坂本龍馬が懐中時計を使っていたという説があったような。
 そんな事を思案していると、端末と懐中時計を交互に矯めつ眇めつしていた蓮子が歓声を上げた。
「あったあった! やっぱりね」
 どうやらついに目的の情報へと辿り着いたらしい。ほー、とかはー、とか言いながら何やら改めて文字盤を覗き込んだりしている。
「なになに。何が分かったの?」
「これよこれ!」
 その興奮した面持ちのまま、端末と時計をかざして見せてくれる。
 展開された端末にはアンティークの時計、私のような懐中時計やら腕時計の画像が表示されていた。その画面の一番上には『トゥールビヨン』という単語が表示されている。多分、このページの表題だろうけれど、どうにも見慣れない単語だ。
「何なのこのトゥールビヨンって?」
 私のその言葉を聞いて、何が可笑しいのか蓮子が苦笑する。
「やっぱり知らなかったのね。きっとそうだろうと思ってたんだけど」
 なんとも酷い言われ様だ。人をまるで無知の化身みたいに言うとは。
「その言い草を続けるなら今日のサークル活動、私の集めた情報はお預けね」
 半分軽口のつもりだったその言葉は効果覿面だった。蓮子は数秒固まった後、眉間に皺付きの真面目な顔をこしらえながら、大層な咳払いをしてみせる。
「オホン。えー、知の権化たるメリー女史に僭越ながら若輩の私めがご説明申し上げます。このトゥールビヨンとは簡単に言えば重力に逆らう為の装置です」
 蓮子が懐中時計の文字盤の下の方、ちょうど六時の上あたりを指差す。そこには文字盤がくり抜かれた丸い穴があって、内部の機構が見える様になっていた。
 ひしめき、幾重にも重なる歯車達。複雑に噛み合う金属の輪は、軸の淡紅色の石も合わさってまるで天球儀のようにも見えた。その機械仕掛けの拍動は、針と同じくなんだか現実離れしている位滑らかで。
 しかもそれが小指の先程のスペースで繰り広げられているのだから、最初アンティークショップで見た時は驚いた。でもてっきり針を進ませる為か、飾りだとばっかり思っていたのだけれど。
「重力に逆らうってどういうこと? 宙にでも浮かぶの?」
「ほら、懐中時計って名前の通りポケットに入れて持ち歩くでしょ。そうすると今のように垂直になる」
 言いながら時計をまっすぐ縦にしてみせる。
「そうすると姿勢差、時計の向きのせいで時計に誤差が生まれちゃうの。ヒゲゼンマイとかが重力に負けてね。それを防ぐのがこのトゥールビヨンって訳!機構全体を回転させる事によって重力の影響を分散させてくれる、言うなれば反重力装置なのです」
 得意げに胸を反らせながら、蓮子はそう説明を締めくくった。
 反重力うんぬんは流石に誇張しすぎだと思うけれど、そこまで自信満々に言い切られると、あながち間違ってない様な気もしてくるんだから大した物だと思う。
「機能は分かったけれど、これってそんなすごいものなの」
「結構なレア物だからね。発明から二百年余りの、クォーツとか電波時計が普及した時代でも尚美的価値を認められていた三大複雑機構の一つだし。それに今は機械式時計自体滅多にお目にかかれないもの。お陰で一つ見聞が広まったわ、ありがと」
 ようやく気が済んだのか、蓮子から時計を返される。
 手の内で程よい重さで存在を主張するかつての英知の結晶。改めて見れば、確かに噛み合って動く歯車達自体が回転しているのが分かる。
 ひたすらに正確さを追い求めた複雑怪奇な、それでいて美しい機構。蒸気船や機関車が行き交ったロマンの風薫る時代の職人達、その情熱がなんだか少し伝わってくる気がした。
 ……実用品として買ったけれど、やっぱり私もそんな不思議な魅力に取り憑かれていたのかも。
 漠然と、人と物の縁について想いを馳せていると蓮子が道の先を見やって声を上げる。
「おお! 愛しのパフェちゃん、もうちょっとで辿り着くよ!」
 顔を上げれば道の先に目的の喫茶店が見えた。
 こじんまりとした煉瓦造り風の建物。煉瓦の赤とほどほどに伸びた蔦の組み合わせが可愛らしい。
 店の前に置かれたスタンドボードの『夏ブレンド、始めました』の文字に、一体どういう味なのかつい想像を巡らしているといきなり手を掴まれる。
「わっと。なに?」
 振り返った蓮子は帽子の影の中、満面の笑顔で答える。 
「いくわよ!」
「ちょ、ちょっとちょっと!」
 そのまま走り出す蓮子に手を引かれるまま、二人で喫茶店まで駆けていった。



「ふぅ、喫茶店に出てくるレモン水ってなんでこんなに美味しいのかな」
 テーブルの向かいに座った蓮子がグラスの半分程を飲んで息をつく。
「さっき爆走してきたからでしょ」
 喫茶店の店内はとても落ち着いた雰囲気だった。椅子や家具はもちろん、砂時計や卓上ランプ等、ちょっとした調度品に至るまでシックに整えられている。控えめな音量でゆったりしたジャズが流れ、その全てを包み込む焙煎されたコーヒー豆の深い香り。外とは隔絶された優雅な世界なのに、ほっとくつろがせてくれる飴色の空間が広がっていた。
 横長の店の片側にはカウンターがあって、喫茶店らしくガラスと鉄と木で出来た様々なコーヒー用具が並んでいる。
 私達がいるのは窓際に並んだテーブル席の一番奥だった。
「早く来ないかなー」
 そう言いながら蓮子はカウンターの方を見やる。席に着くなりオーダーした例のパフェはまだ来ていない。
 秘封倶楽部の本分はどこへやら。まったく誘った本人がこの調子じゃ、流石にちょっと呆れてくる。
「はいはい。食べ終わったらやるわよ」
 一応そう釘を刺すと、不敵な笑顔を返された。
「もちろん。お腹以外も満たさないとね。私達の必須元素なんだから」
 その表情と鼻につく台詞に、思わず水をさしたくなる。
「そんなこと言って、本命はパフェなんでしょ?」
「ひど! 人の折角のキメ台詞を! それにメリーもちゃっかりパンケーキ頼んでたじゃん」
「いや、なんだかんだ言っても、甘いものには抗い難い魅力があるって事ね」
「じゃあやっぱり週末は富士山行き?」
「パンケーキなら比叡山くらいじゃないかしら?」
 そんな事を話しながら二人でくすくす笑い合う。
「あ、そうだ」
 ふと懐中時計の機能を思い出して、首から外した時計の蓋を開いて机の上に置いてみる。深い色のテーブルと時計の銀色は思った通り、最初から店の品だったみたいに、ここの雰囲気にとても良く馴染んでいた。
 簡易な卓上時計となった懐中時計を眺める蓮子が、しみじみ呟く。
「改めて考えると重力が時間を歪めるなんて、なんだか相対性理論っぽいわね。トゥールビヨンはさながらダークエネルギーってとこか」
 またも飛躍していく蓮子理論。そこに思わぬ単語を見つける。
「相対性ねぇ……」
「相対性とは!」
 何も聞いてもいないのに今日は無駄に調子が良い蓮子が、バッと手を開いて説明し始める。
「かのアインシュタインの言う事には、『ストーブの上に手を置いての一分は一時間の様に長く、可愛い女の子と一緒にいれば一時間は一分のように短い』。つまり、蓮子ちゃんと過ごしている時間は、光と等しい速度で過ぎていくって事なのよ!」
 アインシュタインも吃驚のとんでも論法を展開する我が相棒。ちゃっかり自分の愛嬌を前提にくみこむあたりに苦笑してしまう。
 でも、ということは、特に蓮子に待たされる時間が長く感じたのは私が——
 何かが自分の表面へと出てしまう前に、蓮子へと手を伸ばしていた。
「へ?」
 突然の事にきょとんとしている彼女。その半開きの口の両脇、滑らかなほっぺを、上は人差し指、下は親指で挟む。二本の指の間にはさまれたそれは、マシュマロみたいに柔らかくてほのかに温かくて、心地良い。
「ふぁ! ふぁんふぇ?」
 私に頬を引っ張られたままの蓮子が、伸びたお餅みたいな頬のまま、できそこないの疑問を唱える。
「蓮子の不用心な言葉によって、精神的な辱めを受けたので」
 理不尽さを目で訴えながらも、蓮子は諦めずに頑張って口を動かす。
「ふぉれふぁ、あひんしゅたひんふぁ!」
「それに釈迦に説法よ。私の専攻を忘れた?ま、遅れて来た分だけこのままね」
「ふぇー」
 ついに言い分も尽きた蓮子は、鳴き声じみた悲鳴を上げて、天を仰ぐ。
「大丈夫、きっと一瞬よ。私といるんだから、ね」
 涙目の蓮子をよそにちらりと見た机の上の懐中時計は、とても機嫌良さそうに時を刻んでいた。
随分と久しぶりです!
yoshi
http://twitter.com/yoshi155
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コメント



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1.80名前が無い程度の能力削除
蓮子の押しの強い性格がいいですね
2.80奇声を発する程度の能力削除
良い秘封でした
3.90南条削除
2人のやり取りは面白かったです
ちょっと芝居がかった蓮子がいいキャラしてました
5.10名前が無い程度の能力削除