Coolier - 新生・東方創想話

さとり様のちょっとアレなノート

2017/07/23 19:51:04
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 料理担当のいる地霊殿は,しかし明確な掃除担当がいない。
 メイドがいるわけでもないし,掃除のための雇われ人が快く来てくれるような場所でもないからだ。

 けれども,住人がいるからには汚れは溜まる。
 いや,さとり様やこいし様は決して汚くなんかないし,むしろすべすべしていていい匂いがするのだけど,あたいらペットたちが活動するたびに埃やら毛やらが散ってしまうのだ。
 ペットの数はそれなりに多いから,自然,汚れもけっこう溜まることになる。

 さとり様は「別に気にすることはないわ」とおっしゃるが,それはさとり様が世俗の汚れから超越しているためだし,またさとり様やこいし様を汚部屋や汚館に住まわせるのも飼われる側としては体裁がよくない。
 美食家のさとり様は美味しい料理さえあればいいのかも知れないけれども,最低限の衛生面にはやはり気を遣うべきだろう。猫はこれでけっこうキレイ好きなのだ。
 そんなわけで,いつしかペットたちの持ち回りで館や敷地内の掃除をすることになっていた。


「お邪魔しま~す,っと。……うん,さとり様はいらっしゃらないね」

 今日はあたいの担当だったので,さとり様のお部屋を整えることにした。
 さとり様の不在のタイミングを狙って,静かに侵入する。
 もちろん美しくて優しくてチャーミングなさとり様のお部屋が散らかっていることなど万に一つもあり得ないのだが,こういうのは気持ちの問題だ。
 飼い主のお部屋をきちんと綺麗にお掃除した,という満足感は,あたい自身の心を綺麗にしてくれるのである。

 それに,さとり様はあたいらがお部屋に入ることを特に禁じていない。
 さとり様がおっしゃるには,『見られて困るようなものは置いていないですから』ということのようだ。
 その意味するところが「見られて困るものが存在しない」のか,「そういうものを部屋には置いていない」のか,それとも「そもそも困るという感情を持ち合わせていない」のかはわからない。
 ただ,あたいとしては二番目だったらいいなと思う。いつかトレジャーハントする愉しみがあるからだ。
 ちなみに三番目はちょっとイヤだ。不感症気味のさとり様は萌え度が若干低くなる。あたい的には。


「さてさて,今日はどんなお宝……じゃなかった,どこから手を付け」
「――お燐,貴方はお掃除に来たのかしら? それとも物色に来たのかしら?」
「ぴゃっ!?」

 急に背後から声を掛けられたので,書棚に触れていた手が滑ってしまった。
 バサバサと落ちる冊子。

「さっ!? やっ! すっ!」
「『さとり様!? やばい! すみません!』ですか……。少々気になる思考の流れですが,まあいいでしょう」

 さとり様とあたいは心レベルで繋がっているから,こうして声にならない想いも読み取っていただける。その繋がりが一方通行だというのは些細な問題というべきだろう。

「いっ,今片付けます! すぐに片付けます! どんどんしまっちゃいます!」

 散らばった冊子を拾い集めてザックザクと適当に書棚へ差し込んでいたあたいは,ふと妙なものに気づいた。
 落ちた拍子に開いたのであろう薄い冊子。そのページに記された,数多の「正」の文字に。

「さとり様,あの,これは……?」
「うん? ――ああ,懐かしいわね。あらお燐,別にいかがわしくなんてないわよ? 何を思い浮かべているの。ふふ,これは後でおしおきが必要かしら」

 とんだとばっちりだが,結果オーライとはこのことだ。
 それよりも,いかがわしい意味でないなら,この「正」の文字の連なりは何を意味するのだろうか。
 他の零れ落ちた冊子を棚へ押し込め終えたあたいは,その冊子をパラパラとめくりながら内心首を捻った。

「そうね,じゃあお昼までの間に,ちょっとした昔話をしてあげましょう」

 憂いと懐かしさの混ざり合ったような微笑みを浮かべたさとり様が,あたいの手からひょいとその冊子を取り上げ,執務机の向こうへと回る。
 こういう時の「昔話」は,そこそこ長くなることが多い。あたいもそこらの椅子を引っ張ってきて腰掛けた。


「さてと,その『正』の文字だけど。それは私が昔,人間をやった回数を記したものよ。ほら,日付も書いてあるでしょう」

 に,にに,人間とヤったですって!?
 これはうらやまけしからん!

「人間を,ね。その一文字を取り違えられては困るわ。おしおき追加ね」

 ありがとうございます!

「話を戻すと,かつて私は全国を旅しながら,武者修行兼食べ歩きみたいなことをやっていたの」

 その二つは大分異なるような気がする。

「そう思う? でも,意外とそうでもないのよ。なにせ人間を驚かせ,恐怖させればさせるほど,怪異としての位階も上がるし食欲も満たせるわけだから」
「ははぁ,確かに」

 つまりさとり様は,サトリ妖怪として人間を誑かしたり恐れさせたりすることで力をつけて,お腹も満足させるという旅をなさっていたわけか。

「やり方は簡単。どこかの里や村へ行って,正体を隠しつつどこかの家へ身を寄せる。富裕層が多かったわね。そこのご主人や奥方からある程度の信頼を得てから,仕掛けるのよ」

 実際,さとり様が皆から嫌われたり避けられたりしているのは,その能力によるところが大きい。
 能力を抜きにしたさとり様単体についていえば,実に人当たりのよいチャーミングな陰りのある美少女といった趣きである。
 人間を誑かすのもあたいらペットをたらし込むのもお手の物といった感じだ。
 サトリ妖怪が人間と言葉を交わせなければ商売上がったりなわけだから,当然といえば当然なのかも知れないけれど。

「まずは相手の思ったことを言い当てて,私の能力を信じさせるのね。『あら,ご主人。貴方は今,「目の前に可愛らしいおなごがおるわい」と思われましたね?』という具合に。……ふふ,今のはツッコむところよ,お燐」

 いえ,何もおかしなところはありませんでしたけど?

「……こほん。ええと,それを何度か繰り返すことで,相手は私の読心能力を信じます」
「あの,ちょっと気になったんですけど,それだと」
「ええ,わかるわ。相手は警戒するのではないか,というのでしょう? 私のことを,まるで妖怪のようだと」

 さとり様とのお喋りでは,こんな風にあたいが口にする前に何でもさとり様がわかっちゃってくださるので,こちらの口や喉が渇かないという利点がある。
 ちなみにさとり様は一方的にお話しなさることとなるため,わりと飲み物をお飲みになる。けれどもさとり様がお手洗いに行くのを見掛けたことのあるペットは存在しない。地霊殿七不思議の一つである。

「だけど,そういうのはちょっとした工夫でどうにでもなるの。たとえば,ちょっとでも相手が警戒心をいだく前のタイミングで,私はこのように言えばいい。『あら,このように心を言い当ててしまっては,まるで妖怪のように思われてしまうでしょうか。……不気味がられてしまいますね』」

 ウインクしながら,さとり様は語る。

「おかしなもので,人間,自分が恐怖心や不気味さを感じる前に先んじてそう言われてしまうと,いやそんなことはない,と思いたがるものなのよ。お燐も経験がないかしら? 怪我をした時にでも『痛い?』って聞かれたら『いや大丈夫』と答えたくならない?」
「あー,ありますあります!」

 さすがはさとり様だ。
 人間心理の機微に誰よりも通じているサトリ妖怪ならではの技術である。
 さとり様の優れたテクニックは,指先から話術まで遺憾なく発揮されるのだ。

「そのような過程を経て相手が信じ込んでくれたら,ほどなくして仕上げに取り掛かる。ある日,私はご主人にこう言うの。『あの,奥様が使用人の若い方と……』」
「ほうほう」
「別に嘘は何一つ吐いていないわ。私は奥様が使用人の若い方と仕事のお話をしていたことを伝えようとしただけだから。でも,ご主人の内心に浮かび上がるイメージは異なる」
「なかなかイヤらしいですね」

 まるであたいを焦らす時のさとり様の指先みたい。

「胸中に暗雲のように立ち込めた疑惑は,とっても美味なのよ。でも,それだけならサトリじゃなくてもできる。そうよね?」

 確かにそうだ。
 ただの人間でも,虚偽の話を相手に吹き込むことはできる。
 他者に嘘を吹聴して喜ぶ人間は,どうやら少なくないようだし。

「だから,私はそれから敢えて修羅場に居合わせるのよ。ご主人が奥様と使用人を詰るその場に。そこでまた心を読んでみせてから,改めて告げるのね。『奥様の,この使用人への想いは……』と」
「想いは何なのか,ってことは言わないんですね」
「嘘は良くないわ。閻魔様に舌を抜かれちゃう」

 ぺろり,と舌を出してみせるさとり様は,正直悶絶したくなるほど可愛らしい。
 何故この御方はここまで可愛らしいのか。これも地霊殿七不思議の一つである。

「その場で唯一他者の心が読めるという事実は,大きな説得力を私の言葉に与える。つまり証拠が要らないの。私が言うことには」

 さとり様の言葉自体が証拠になり,証明になるということか。
 ご主人だって,実際に自分の思っていることを言い当てられたのだから,奥様や使用人の心も読めると思い込むのも当然だよね。

「そうなると,奥様や使用人の弁解がご主人の心に届くと思う?」
「いやー,厳しいですね。かといって……ああそうか,『やっていないこと』の証明はできないってわけですか」
「その通り。賢いわねお燐。あとでご褒美をあげるわ。それともおしおきと相殺のほうがいいかしら?」
「いえ別々でお願いします!!」

 とんでもない。
 おしおきはおしおき。ご褒美はご褒美。両者をはっきり区別するのが大事だって閻魔様もおっしゃっていた。ような気がする。たぶん。

「そんなわけで,後は坂道を転げ落ちるように,といった具合ね。私が体験した中でも盛り上がったうちの一つは,追い出された奥様が明くる日の夜,屋敷へ付け火して子供たち共々自刃したという事件だったかしら」
「ひぇー」
「人間の疑念や怒り,悲嘆,絶望といった感情はそう,とても美味しかった……」

 さとり様はそうおっしゃりながら,傍らのカップを手に取る。
 お手元にある冊子。その頁にびっしりと記された「正」の字がさとり様の遍歴なのだとすれば,よほど多くの人間の心を食まれてきたのだろう。
 目を伏せたさとり様のお顔には,どこか懐かしむような色合い。そしてそれでも拭い去れない憂いがうっすらと覆っているように思えた。


 ほどなくして顔を上げたさとり様は,いつもの微笑みを浮かべていた。

「さて,もうすぐお昼かしら? まだ早い? そう。なんかお腹が空いてきてしまったわね」

 そんなさとり様に,あたいは一つ訊きたいことがあった。

「……『その旅はどうしてやめたのか?』ですか。ふふ,そうねぇ」

 そう。先ほどの冊子は,途中の頁で「正」の文字が途切れていた。
 別におかしなことじゃない。
 旅は無限に続くものではないし,飽きたとか,路銀が尽きたとか,体調を崩したとか,旅を中止する理由はいくらでも考えられる。
 それに旅を続けていたなら今現在さとり様は(こいし様のように)ここへはいないのだから,気が変わるか何かで旅をやめたことははっきりしているわけだ。
 けれども,その途切れ方があたいには,どうしてか不自然なように思えたのだった。

「やれやれ,貴方は変なところで鋭い……まあ,いいですけれど」
「もしかして触れないほうがよかったですか」
「いいえ。別に見られて困るものも,聞かれて困ることもないですから」

 そうして,さとり様は再びお話を始めた。

「別にもったいぶるようなことではないのですけれどね。妖怪が旅をやめる理由なんて,そう多くはないのですから。……全国津々浦々を彷徨い歩いた私がその小屋に目をつけたのは,ほんの気まぐれからでした」

 今までは富裕層,つまりある程度の大きさのお屋敷を主な標的になさっていたさとり様は,比較的貧しそうな小屋に住む一家を狙うことにしたのだという。

「それまでお屋敷を狙っていたのは,逗留しやすかったからというのと,金持ちであればあるほど欲深く,焚き付けやすかったからというのがありました。ほとんど全てのモノを持ち合わせている人間が堕ちていくというのは,味わい深いものですからね」

 食にこだわりをもつさとり様らしいご意見である。
 あたいも運ぶなら金満家の死体がいい。丸々とした身体が悪路を往く猫車の上でポインポイン弾むのを見ていると,あたいの心も弾んでくるのだ。

「ですが,その時私はふとこう思ったのです。『逆にほぼ全てのモノを持っていない人間が,唯一持ち合わせているモノを喪った時の感情はどういう味わいなのか』と」

 丸々太った死体もいいが,ガリガリに干からびた死体も実は悪くない。噛めば噛むほど味が出てくるのだ。
 脂のしたたる焼き鳥がいいか,それとも魚の干物がいいかというようなものである。つまりその時の気分によるというわけだ。まあ,おくうなら後者を選ぶだろうか。

「さいわいというべきか,その小屋に住む一家は気の好い人々で,荒天に乗じて転がり込んだ私を快く歓迎してくれたのです。まだ若いご主人と奥様,そして小さな男の子。三人は貧しいながらも幸せそうに暮らしていました」

 ここまで説明されたら,その後の展開は薄々わかるものだ。
 おそらく,さとり様の企みは功を奏さなかったのだろう。

「……途中経過は飛ばしてしまいましょうか。そう,私の吹き込もうとした疑いは,彼には通用しなかった。読心能力を信じてもらうところまでは順調に行ったのですけれどね」
「やっぱりですか」

 ほぼ全てのモノを持っていないからこそ,数少ない持ちモノは大切にしているという者も多い。
 なまじ財産を蓄えていると,疑心や疑念をもちやすいというのはあるようだ。あたいもそういう人間ならたくさん見てきた。

「彼に仕掛けた時の反応は,見事なものだったわ。奥様の離心を匂わせる私の言葉に対して,言下に『失礼ながら,見間違いでしょう』と切って捨てた。鮮やかだったわね。それでも食い下がってみたら,『貴方は真実を述べていないようですね』と切り返してきたの」

 さとり様は心を読むことができる。
 それは疑いようのないさとり様のお力であり,サトリ妖怪の能力だ。
 けれども,読んだ心の中身をさとり様が正直に告げるなどという保証は,どこにもないのだ。
 言葉を話すことのできる人間が,嘘を吐けるように。

「そんな単純な陥穽でも,一度疑いに囚われた人間は気づかない。私の読心能力が本物であるからには,その口から発された言葉も真実であると信じ込んでしまうのよ。だけど,その男は目を曇らせていなかったということね」
「やりますねぇ」
「だから最後にもう一度だけ仕掛けてみたわ。『奥様を信じていらっしゃるのですね』と」
「えっ?」

 それがどうして仕掛けになるんだろう。
 何が引っ掛けに当たるのか,さっぱりわからない。

「彼は嵌まらなかった。『いえ,疑っていないのです』とね,きっぱり。真っ直ぐな目だったわ。本当,素晴らしいほどに……。うわーこれはもう敵わないな,と撤退よ」

 さとり様は夢を見るような眼差しで,口元を軽く拭うような仕草をした。
 普段とはどこか違うその表情に,思わずドキッとする。
 あたいは首を軽く振って,話に思考を戻した。

「うーん,それってどう違うんです?」
「ダメよ,ちゃんと考えないと。人間,不思議なものでね。『信じる』と口に出すということは,『疑う』ということなの」

 さとり様のおっしゃることは,時々難しい。
 ちゃんと考えるのは後に回すことにした。

「えっと,それで人間の信じる心を突きつけられて,哀れ邪悪なるさとり様は清浄なる光に目を焼かれ,すごすごと情けなく漆黒の闇の中へ引き下がった……みたいな流れですかね」
「何に影響されたの?」
「こいし様の書かれた小説がそんな感じでして」
「あの子ったら……」

 さとり様は,あたいの語彙力ではちょっと上手く言い表せないような複雑な表情を浮かべて,軽くため息を吐いた。

「ふぅ,そんなわけで私はもう全国行脚はいいやとなって隠居することにしたのです。はいおしまいおしまい」

 わりと雑な感じでそう締め括って,さとり様はカップを傾ける。
 あたいはというと,何となく珍しいというか,微笑ましいような気持ちになっていた。
 そんな思いが言葉となって口からぽろりとまろび出る。

「なんかちょっとさとり様,お可愛いですねぇ」
「あらどうしたの? 急にそのような至極当たり前のことを」
「いえね,仕掛けが失敗したショックで旅をおやめになるだなんて,お可愛らしいじゃないですか」
「は?」

 何言ってんだこいつ,みたいな目でまじまじと見られて,不覚にも身体が熱くなる。
 これはこれで破壊力の高い表情だといわざるを得ない。

「……あのね,お燐。あまり眠たいことを言っているとおしおきを追加しますよ」
「へ,へぁい!」
「悪魔さんたちが人間に取引を持ち掛けるのはどうして? 鬼いさんたちが人間から勝負を挑まれるのはどうして? それを考えればわかることでしょう」

 それはつまり,対等性を保つため。
 取引にも勝負にもルールが必要だ。魔力や腕力で人間を叩き潰すだけなら簡単だけれど,それでは面白くない。
 だからルールを決める。相手にも「勝てる可能性」を与える。

 そして,そうだからこそ鬼も悪魔も負けた時に文句を言わないのだ。
 鬼いさんたちなんてむしろ嬉しそうですらある。

「あ,そうか……」

 さとり様の仕掛けも,その意味では「対等な勝負」だったということだ。
 人間が疑念に囚われ破滅すればさとり様の勝ち。仲間や友や家族を信じ続ければ人間の勝ち。
 ならばどうして負けた時にショックを受けることがあろうか。それを折り込み済みだからこそ愉しめるというのに。

「わかったようね。まったく,たまに鋭いかと思ったらこれなんですから。――さて,そろそろお昼ご飯かしらね」

 そうおっしゃりながらさとり様が立ち上がる。
 いつの間にか,微かに美味しそうな匂いが漂ってきていた。

「ああ,いやだいやだ。こんな話をしたものだからもうお腹がペコペコ。辛いわ,苦しいわぁ」
「すっ,すみません……」

 さとり様のほうから話を始められたように思うのだけど,細かいことはいいのだ。
 ペットたるもの,いついかなる時にも飼い主へ寄り添わねばならない。

「というわけで,私はもう食堂へ行きます」
「あ,じゃああたいもご一緒」
「お燐はそこの乱雑に詰め込んだ冊子,元通りにきちんと揃えて入れ直しておいてね?」
「は,はいぃ……」


 主のいなくなったお部屋で,あたいは冊子を並べて揃えていた。
 手を動かしながらも,頭をよぎるのは先ほどまでのお話である。
 考えてみれば,さとり様は結局どうして旅をおやめになったのか,その理由を語られなかった。
 仕掛けが破られたことがショックだったのではない,という。
 それなら,なおさらわからない。
 あれだけの数の「正」の字があって,それを半端なところで途切れさせるだけの何かがあったのではないか……。

 ――けれどもあたいには,いくら考えてもその答えは思い浮かばなかった。

「んー,考え過ぎかなぁ?」

 ようやく冊子を綺麗に片付け終えて,伸びをする。
 お腹がぐぅぅ,と鳴った。

「ま,いっか。今日のおっひっるはなーにかなーっと!」

 より美味しいものを求め続けるさとり様を満足させるために日々工夫を凝らされるご飯は,あたいらペットたちにも好評だ。
 あたいはご飯とおやつと,その後に待ち構えるであろうめくるめくおしおきに思いを馳せながら,勢いよく駆け出した。



                 ―― 了 ――





『ほ,ほんの出来心だったんです!
 あたいは何気なくさとり様のスカートをめくり上げただけなんです!
 そしたら太ももにあんな――
 (この先は赤く染まっていて読めない)』

-----

 慢性的な東方病のため,ただ今入院中です。
 早く快復して幻想郷へ行けるといいなぁ。

 ZUNさんと,お読みくださった方々に感謝。
仮に筆
http://karinihita.jugem.jp/
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コメント



0.280簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
お盛んなようで何よりです。このさとりは色っぽいからしょうがないね。
面白かったです。
4.80沙門削除
面白かった。それ以外の言葉が出てこない
5.100スベスベマンジュウガニ削除
こういう地霊殿もいいと思います!
6.100南条削除
面白かったです
本筋とまったく関係ありませんがご褒美とお仕置きを別々に欲しがるお燐にやられました
いい聞き役でした
10.100名前が無い程度の能力削除
静かなのにユーモアがあって
いい雰囲気持ってますね