Coolier - 新生・東方創想話

「ずーっと一人で生きてきて、これからも一人」

2017/05/04 21:41:54
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「永琳師匠、少し相談があるのですが」
「何かしら、ウドンゲ」
「例の月都襲撃の一件以来、純狐さんが毎日、暇さえあれば私に会いに来るようになっちゃったんですよ。あの人私の事気に行っちゃったみたいで、ほんとにしょっちゅう来てて。この人本当に暇なんだなって感じです」
「あらあら。うふふ。それは大変ね」
「笑い事じゃないですよー。怒らせたら怖い方ですから、無碍にも扱えないですし」
「まあ適当に付き合ってあげなさいな。ウドンゲと仲良くしてくれてる間は、純狐も怒りが収まってるみたいだし」
「……でもなんだか、それだけじゃないんですよね。適当に付き合う、っていうのも、私にはうまくできないんです」
「どういうこと?」
「四六時中私に会いに来る純狐さんを見てると、思うんです。この人には、本当に私に会いに来るしかすることがないんだろうな、って。……私には、師匠がいます。輝夜様がいます。てゐもいるし、人里に薬を売りに行けば人と話すこともよくあります。私はいろんな人に囲まれて生きているけど、でも、純狐さんはそうじゃないんだろうなって……。純狐さんには私しか会う人がいなくて、私しか話す人がいないんだろうなって、見てるとそう思うんです。純狐さんはきっと、今までの長い時間を、ずーっと一人で生きてきて、そしてこれからも一人、なんだろうなって…。そんな純狐さんが気に入ってくれて毎日会いに来るのが私なんだ、って考えたら、純狐さんを悪い風に扱うのが、なんだか気が引けるんです」
「なるほどね…。言いたいことはなんとなくわかったわ。でもウドンゲ、そんなに気にすることはないと思うわよ」
「えっ?」
「純狐はね、あなたよりも遥かに長い時間を生きてるの。前にも話したと思うけど、純狐は今までに何度も月都を襲撃してて、その度に月の民は知恵を絞って純狐を追い返していたの。そうして純狐の気が済めば、純狐は暫くはおとなしくなる。怒りが収まらなくなったら襲撃する。その繰り返しなの。そして今、純狐は貴方、ウドンゲに興味があることにより、月都を襲撃する気が起きないでいる。これは別に特別な事じゃないわ、ウドンゲ」
「……純狐さんは、今までに私の他にも興味を持った人がいる、と。そういうことですか?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。月の民を憎むようになる以前の事は、私は知っているけど、純狐本人は覚えていないでしょうね。月の民を憎むようになった後の事は、私は知らないわ。でも長い年月の中で、純狐の怒りが収まっている期間は沢山あって、その間、何か、もしくは誰かに興味を持っていたことは、もしかしたら一度は、もしくは何回かあるんじゃないかしら」
「……」
「だからねウドンゲ、あなたがそんなに気にすることはないわ。これは多分それほど珍しいことではないの。きっと暫くしたら、純狐はあなたのことなんて忘れて、また月の民への憎しみを燃やすでしょうね」
「……なるほど、です。ありがとうございます……」
なるほど。確かに、師匠の言う通りだ。それほど気にしなくても良いのかもしれない。純狐さんは私よりも遥かに長い時間を生きている。その中で私以外の人物と触れ合ったことも数多くあることだろう。私以外の何かや、誰かに興味を持って、それによって怒りを鎮めたことも多くあっただろう。そしてそれに飽きて興味を失えば、また怒りを燃やし、月都に襲撃する。今まで何度も行われてきたサイクルだったのだ。
 師匠の言う通りだ。きっと純狐さんは暫くしたら私への興味を失うだろう。純狐さんはこんなに毎日会いに来てくれたけど、それは次の月都襲撃までの一時的な興味にすぎないのだ。私に飽きて、私への興味が無くなったら、また月都に襲撃するのだろう。
 当たり前だ。思い上がっていたのだ。何の魅力もない私なんかが誰かの特別になんてなれる訳がないのだ。だって現に今日はまだ会いに来てくれていないじゃないか。当たり前だ。きっとすぐに私のことなんて飽きてしまうんだろう。当たり前だ。こんな私のことなんてすぐに忘れて来なくなってしまうに違いない。当たり前だ。当たり前だ、だって、だって私のことを、私一人だけのことをこんなに気にかけてくれた人なんて、今までに純狐さんの他には誰もいなかった……
「ウドンゲ? ……ウドンゲ!」
「は、はい!」
「どうしたの、ぼーっとしちゃって」
「い、いえ、別に……ちょっと考え事をしてまして」
「ちょっと頼みたいお使いがあるのよ。今日は珍しく純狐も来ないし、今のうちに頼んじゃいたいのよね」
「あ、はい。すぐに行ってきます!」
「このメモに書いてあるのを買ってきてね。それじゃよろしく」
「かしこまりました。……では行ってきます!」
「気を付けてねー」
「はい! では……行ってきます」
「はい、いってらっしゃい」
「………」
「………」
「……あの、師匠」
「……何かしら?」
「………」
「……どうしたの?」
「………少し、遅くなってもよろしいでしょうか。……少しだけ、行きたい所があるんです」
「…………別に構わないわよ。急ぎのお使い、って訳じゃないし。明日の朝には、戻ってきなさいね」
「ありがとうございます。……行ってきます」

バタン。


「まったく、あの子にも困ったものねぇ」
ご読了ありがとうございました。
うど純はよいですね。
こういう関係、大好きです。

ご感想等頂けたら嬉しいです~。><
みずき
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コメント



0.350簡易評価
1.90怠惰流波削除
卑屈な鈴仙がらしくて可愛かった。セリフだけで突っ切るのかなと思ったら途中で地の文が出てきて、ちょっとだけおや、となりました。勝手にテンポを崩してだけですが。

ともあれ、よかったです。うどじゅんはいいぞ。
2.70沙門削除
永い時を生き、繰り返し繰り返し憎しみを月都にぶつける純狐。それは自分にとって大事な者が失われ、悲しみをどこにぶつけたらいいのか分からずに、矛先を向けていただけなのかもしれない、なんて感じました。
あと、このお話これで終わり何でしょうか?鈴仙と純狐が語り合う場面も見たかったりして。ご馳走様でした。
3.40名前が無い程度の能力削除
作者の書きたいことを最優先にしてるので作品にリズムがない。少しの気配りでずっと読みやすく出来るのが残念。
4.100佐間削除
こういう関係はいいですね!
なんか青春時代っぽいです
5.100名前が無い程度の能力削除
師匠のお心遣い可愛いですね!
6.80名前が無い程度の能力削除
真面目に悩んでいる鈴仙が良かったです
7.100南条削除
面白かったです
言い寄られてるとウザったいけどいなくなっちゃうと思うと寂しいみたいな妙な感覚がありました
このあと純狐に会いに行くんだろうなと思うと、妄想が捗ります
どんな話をするんでしょうね
8.70名前が無い程度の能力削除
うどじゅんはいいぞ。
読みやすい短さでよかったです
9.80奇声を発する程度の能力削除
良かったです
10.80星鍛冶鴉削除
これはいい関係。
少しぎっしりな感じがしたので、途中に行間を増やすとより読みやすいかと思いました。