Coolier - 新生・東方創想話

嵐の名曲「One Love 」を易者に熱唱させてみた

2017/03/25 23:51:14
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 昼下がりの博麗神社。いつもはささやかな参拝客に妖怪や妖精が遊びに来て賑わう程度の神社だが、この日は
境内がびっしりと人妖で埋め尽くされている。
 その中心にいるのはかつて人間を辞め、幻想郷の違反者となった俺と。
 かつてその違反者を葬った、博麗の巫女の姿。
 しかし二人の服装はいつもと違う。
 俺は五つ紋付羽織袴に身を包み。
 巫女――博麗霊夢は、巫女服から、白無垢。

 葬った者、葬られた者。
 違反を犯した者。裁いた者。
 今日は、いや、今日からその関係は変わる。
 ――『夫婦』として。



 妖怪の山の神社の風祝が式の巫女を務め、参進の義や神楽奉納を済ませてくれた。俺は人間を捨てた身、今や身内はいない。そして……霊夢も
また家族と呼べる存在はいなかった。なので参列者は友人知人ばかり。なので世間的な神前式とはかなり勝手が違う。ただ、まあ。妖怪も仙人も、神様もいるこの幻想郷ではそれも問題ないのだろうが。
 祝詞奏上では霊夢の母代わりを自負する隙間妖怪(霊夢は拒否したが、満更では無さそうだった)が妖怪の山の神様二人に報告を済ませ、うむうむとそれっぽく神様二人も頷いていた。



 いよいよ指輪交換だが、その前に俺は一歩前に出て、参列者に頭を下げる。感謝の言葉と共に、この一曲を特別に歌わせてほしいとマイクを持つ。
 今まで出会ってきた人妖(ひと)達への心からの感謝と。
 霊夢への――愛を込めて。











































 思えば、全てを受け入れると言われてた幻想郷で、幻想郷に住む里の人間が妖怪になることが受け入れられないというのは
矛盾していた。確かにある意味この世界は矛盾だらけで、しかし不思議とうまくやっていけている世界だった。
 しかし根底には人間と妖怪の関係が悪化することを考慮していた暗黙の規則だったのだ。当時の俺は自分のことばかりを考えていて幻想郷という世界の裏側を考えてなかった。それで霊夢に粛清された。
 しかし退治され消滅する間際、淡々と巫女としての役割を果たす霊夢の裏側を少しだけ感じ取ったのだ。隙間妖怪も、いつも霊夢と一緒にいる魔法使いや妖怪達さえも気づけなかった彼女の悲しみに気付いた。
 
 ――彼女の悲しみを抱きしめる存在が必要だ。
 その想いが俺を何度も蘇らせた。何度も何度も退治されても彼女に手を伸ばし続けて。その内霊夢を取り巻く妖怪や人間達にも
認知され魂も消滅されかけたが、それでもとうとう彼女の指先に触れることができた。
 冷たい雨が降っていた日だ。ようやくここまで来れたと、穴だらけの体と顔で息を吐きながら。能面のように固まった霊夢の瞳が少しずつ色を戻し、潤み。雨が降っていたが、彼女の頬を伝う涙は温かかった。
 少しだけ、巫女ではない「博麗霊夢」という一人の女の子を取り戻せた瞬間だと今でも強く思う。既に消滅しかけていて触れることはできない腕を伸ばし、そっと霊夢を包み込んだ。
 そこにはどこにでもいるような、一人の女の子しかいなかった。


 ウワバミ、ホフゴブリン、抗鬱のオヤジ。妖怪としても人間としてももはや居場所は無いと思っていた俺を友と呼んで
支えてくれた大切な親友達。みんな、笑いながら泣いてて、手拍子をしてくれている。
 「ありがとう」の意味を込めて、彼らにマイクを持ってない方の手で握り拳を向ける。これからも何があっても、彼らは俺の
一生涯のダチだ。

 歌も最後のサビに入る。妖怪も人間も俺達を祝福してくれている。俺が妖怪になったのは妖怪に管理された人間の生活が惨めだと感じたのがきっかけ。しかし、俺と霊夢の心がつながる内に、そういった幻想郷を縛り付ける鎖は千切れていったと思う。本当の意味で、人間も妖怪も平等に――それこそ、愛し合えるようになっていった。もちろん問題はある。妖怪に比べれば人間の寿命など短い。儚い愛と言われても仕方ない部分は実際、ある。俺と霊夢にしてもそうだ。だから俺は彼女の一生分を愛してみせる。陳腐な言葉かもしれないが肉体は死んでも魂や思い出はずっと共にあるはずだから。
 百年先どころか、俺の存在が消えるその日まで愛を誓う。
 そんな想いを込め、歌い終え、霊夢のもとへ戻る。巫女服から花嫁衣裳となった彼女の顔は巫女服の赤よりも赤く、そっぽを向く。
 「恥ずかしすぎるのよ……馬鹿」
 しかし、彼女が花嫁なら俺は花婿。戦いでは残念ながら途方もない差があるが、今日は男としての見せ所。
 指輪を交換する前に、改めて愛を誓う。

 いずれは博麗の巫女も霊夢から別の少女へと変わる。しかし俺が愛するのは世界でただ一人、霊夢だけだ。
 そっと彼女の耳に唇を寄せ、二人にしか聞こえないように囁く。


 占術を通じて二人の未来を見たんだ。
 そうしたら二人の手がしっかりと握られているのを確認できてな。
 きっと幸せにすると誓ったんだよ。


 「……うん」
 そっと、霊夢が左手を差し出し、不器用ながらそっと掴む。
 細い指だし、綺麗な手だ。それこそ、ちょっと強く握ったら折れてしまいそうなぐらい。
 おそるおそる薬指に指輪をはめていく。……ぴったりだ。
 霊夢は何も言わない。その代わりに、涙を流しながらも、嬉しそうに微笑んだ。
 









































 「……という易書を仕込んでたのでまた復活したんだよ」
 「……このっ……馬鹿ぁっ! 死ねっ! 百年ぐらいずっと死ねぇぇっ!!」
 「ギャース!!」

 そして俺は死んだ。
 
 
次回はボカロ曲か洋楽をネタに、中編ぐらいを書きたい。
トナルド・トラソプ
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コメント



0.190簡易評価
1.10名前が無い程度の能力削除
同じことしかネタがない哀れな作者。
3.10名前が無い程度の能力削除
嫌い不快
4.100名前が無い程度の能力削除
ナイスです
8.無評価名前が無い程度の能力削除
中盤が失速しているのでもっとテンポよく進めてほしかった
9.100ヒラリー削除
素敵
彼は真実の愛を手に入れ損なったのね……
10.100Qneng削除
文句無しの王道オチで笑いがこぼれました