Coolier - 新生・東方創想話

すみれこSeptember Love

2017/02/07 20:11:38
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「あんたの能力って地味よね」

 思わずお箸を取り落とした。

「い、いやいやいや、それはないでしょ、何いってんの霊夢さん」

「だってさ~、超能力、だっけ? なんか凄そうな呼び名だけど、やってることは普通っていうか」

 ちゅるん、とお土産のところてんをすすりながら霊夢さんはこともなげに言う。
 いやいや普通ってアナタ。泣く子も黙る本物の超能力者を相手にアナタ。

「まあ妖怪やら異能者やらが跳梁跋扈する幻想郷じゃあねえ」

「カセンちゃんまで!?」

 自分で持ってきた大判焼きを頬張りつつ、カセンちゃんもそんな事を言う。
 どうでもいいけど、もう三つ目だ。私の持ってきたところてんはとっくに食べ終えちゃってるし。

 とまれ、地味ってアナタ達。超能力って色々できてスゴイんですよ。
 手に触れずに物を動かせるし「魔法使いがたまにやるわね。アリスとか」
 何もないところに火を起こせるし「妹紅は元気かしらねえ」
 瞬間移動することだって「霊夢のワープって、紫に教わったの?」「やめてよ」

「…………」

 ちょっといじけてみる。

「まあ、汎用性には秀でているかもだけど、だったら魔法使いの方ができることは多いわよね」

「基本的に魔法の劣化っぽいからねえ」

 ふくれてる私を尻目にディスりは止まらない。
 なんてヒドイ人たちなんだ。



 そんなわけで、私は超能力の新たな可能性を模索する必要に迫られていた。
 ああまで言われて引っ込んではいられない。なんとかギャフンと言わせなくては。……ギャフンって古いな。

 幸い私には文明の利器、インターネッツという偉大な武器がある。
 幻想郷の妖怪たちに一度敗北したとはいえ、集合知の偉大さは損なわれてはいない。多分。

 スマホでいろいろと超能力について調べてみる。
 昔、自分の能力を自覚した時にもやったことだけど、今の私ならもっと色々な力が使えるのかもしれない。
 何しろ幻想郷に行くようになってから、能力は向上の一途ですもの。

 そして、一個見つけた。扱えたならきっと大いに役立つはずの能力。
 それは、透明化。インビジビリティとでも言えば良いのかしら?
 透視があるんだから透明化だってあって良かろう。我ながら無茶な理屈だと思うけど、信じる力こそパワーなのだ。きっと。

 そんなわけで、再び幻想郷。現実(と言っていいのか?)の私の方は現国に端を発するハイパー睡眠誘発タイムなので、しばらく目を覚ます事はないはずだ。
 博麗神社を少し離れて、人里へ向かう道すがら。見渡す限り人影はない。ただの草原だけど、都会のビル群を見慣れた目には、この開けた風景はやっぱり良いものだ。
 深呼吸して気分を落ち着かせる。目を閉じて集中する。自分の姿を克明に思い描いて、それが徐々に透けて向こう側が見えだすイメージ。超能力に必要なのは、雑念のない純粋なイメージ。余計な思考を排除して、ひたすらイメージに集中するのだ。

「……おおー」

 できた。私スゴイ。やっぱり天才かもしれない。喜び勇んで小躍りして、でもちょっと待って、由々しき問題がひとつ。

 服が透けてない。

 右手のある位置をまじまじ眺めてみる。
 全く見えないが、服の袖は腕の形にきちんと膨らんでいるのが不思議な光景だ。
 髪をつまんで目の前に持ってきても、やはり見えない。
 でも、顔にかけているメガネは普通に見えている。

 つまり、身体だけが透明になっているようだ。

 そう言えば確かに、お話の透明人間もこうだった気はする。
 けど、体質とかじゃなく能力なんだから、服ごと透けても良いような気もするのだけど。

 何度か試してみたが、結果は同じだった。
 見えない両手を顔の前に持ってきて眺める。

 こうなってくると、やることは一つしかないように思える。
 でも良いのか? やるべきなのか? やって良いのか? やっちゃうのか?



 はい、やっちゃいました。
 あ、脱いだ服はきちんと畳んでおきますよ。教養ある現代っ子ですから。
 下着が見えちゃうのはなんか恥ずかしいので、畳んだスカートの中に押し込んでおく。

 メガネを外して、一糸まとわぬ菫子ちゃんの完成。いやいや、十八禁じゃないわよ。だって見えないもの。

 しかしこれは、なんというか、この、クセになったらどうしようというか、そんな恐怖感がある。
 誰もいないとはいえ、こんな見通しの良い草原に全裸で立っているってのは、背徳感とか羞恥とか開放感とか、なんか色々な感情がまぜこぜになってだいぶテンションがヤバイ。なんか意味もなく走り出したい。

 改めて、できるだけ色んな角度で自分の身体を見分してみる。
 身体の中心から足の裏まで、一切合切なにも見えない。服で隠れてる部分は透明になってない、なんてことはなかったようだ。
 スマホで自撮りを敢行してみるも、やっぱりなにも映らない。フハハ、文明の利器すらも欺くとは、私スゲエ。

 こうなってくると後は、誰かの前に出てみたいところだ。
 いや、服着てから出てもいいんだけど、どうせならイタズラしたいじゃん?
 そんな事を思っていると、人里の方から人影が一つ。渡りに船ってやつね。
 目の前に出ても見つからないなら、思う存分おどかせそうだ。やばい、超楽しい。

「……っ、ちょ、ちょっと貴女、なんで服着てないの?」

 速攻バレた。しにたい。

「というか貴女……この前の人間よね。たしか、菫子とか言ったっけ?」

 しかも名バレした。もうだめだ。

「……って! なんで見つけられるのよ! 見えないはずじゃないの!?」

「ええ? ……あー、なんか周波数が変な感じだと思ったら、透明化してるのか」

 呆れたように言ってくるその人は、なんか修験者みたいな格好の女の人。この季節じゃあだいぶ暑そうだ。
 よく見ると、頭の傘からウサギの耳がはみ出ていた。たしか、鈴仙とか言うバニーさんだ。

「生憎だけど、私は物体の波長を読み取る眼を持っているの。たとえ姿が見えなくたって、そこにいる限り波長は存在する。それが見える私には、あなたの姿は丸見えなのよ」

「……それって、なんかのフィルターを通して見てるような感じ? 立体的に見えるわけじゃなくて、例えばサーモグラフィみたいに」

「肌の質感までバッチリ見えてるわよ」

 うわあいなんてこった。これじゃあ私は単なる露出狂じゃないか。

「もっとちゃんと食べて肉つけた方がいいわよ」

「大きなお世話よ!」

 くそう、一人目にして早くも目論見が瓦解してしまった。これじゃ透明化なんてなんの意味もない。
 ……いや、この人はたまたま見える眼を持っていただけで、案外、他の相手なら通じなくもないのだろうか?

「どうかしらね。魔法使いなら見えなくとも魔力で感知できるでしょうし……それでなくとも妖怪は夜に活動するものが大半だから、人間とは異なる感知能力を持っているのが多いと思うわよ」

 やっぱり駄目らしい。幻想郷恐るべし。

「ま、隠密したいなら視界だけじゃなく色々欺けなくちゃあね。精進しなさい」

 鈴仙さんは私の服を背負っていたつづらにしまいながら言う。
 ちゃんと指摘してくれるし、頭も働くようだし、見つかったのがこの人である意味よかったのだろうか……。

「……ってちょっと待て。なんで私の服をしまう?」

「え? だって要らないでしょ」

「要るに決まってるでしょ! なんで要らないと思うのよ!?」

 声を荒げるも鈴仙さんは怯む様子もなく、すっと立ち上がる。

「だって、これからセックスするのに、服なんか着ないでしょ?」

「しないよ!」

「なんでしないの!? 裸で一緒にいる二人がセックスしない理由がないわ!」

「何いってんのこの人!?」

 前言撤回。私が見つかったのがこの人でさえなかったら良かったのに。

「そもそもあんた脱いでないじゃないの!」

「あら、やっぱり脱いでほしかったのね。すぐにすむからちょっと待ってて」

「やめろ脱ぐな!」

 ヤバイこいつ正気じゃない。なるほど狂気の瞳ってそういう……いやそんな馬鹿な。

「だいたい、裸で一緒にいるだけでって、お風呂とかどうすんのよ!」

「うまいこと時間をずらさないと大乱交に突入しちゃうのよねえ」

「まともに生活できる環境じゃない!」

 この人の家って、確かお医者さんとか言ってなかったか。
 幻想郷での大怪我は絶対避けようと心に誓った。

「大体女同士でセッ……その……そ、そんなことするわけないでしょ!」

「それは浅い考えよ。愛を確かめ合う行為にルールは必要ない。お互いを求め慈しむ心があればいいの」

「私はあんたのことこれっぽっちも求めてないわよ!」

「心配いらないわ。私は人を狂わせる眼を持っていてね。十分もしないうちに私のことしか考えられなくなるわ」

「マインドコントロールじゃないの! 私はそんなの絶対かからないわよ!」

「人間の心は脆くてねえ。妖怪と違って」

 じり、と歩み寄ってくる。思わず後ずさってしまう。怖すぎる。
 メガネがないからよく見えないのだけど、なんかジロジロと見られてる気がして、身体を横に向けてちょっとでも隠す努力をするけど、多分効果はない。

「ね、ねえ。ホントは冗談なんでしょ?」

「兎は年中発情期、って、聞いたことない?」

 なんか急にそっぽを向いて語りだす。

「繁殖のシンボルになるくらい、兎は子作りが盛んなことで知られているわ。けど、年中生殖可能なのは、兎以外にも結構いるものよ。その一つが、人間」

「はあ」

「セックスこそ兎のアイデンティティ! その私の前に、セックス上等の姿を晒す人間! これを抱かずしてなにが兎か!」

「捨てろそんなアイデンティティ!」

 迷惑にも程がある。私がいま裸なのは事故のようなものだと言うのに。

「大体、女同士じゃあ子作りできないでしょ! 目的がズレてるじゃあないの!」

「できるわよ?」

「えっ」

「天才八意永琳の薬を見くびってはいけない。ゾンビと鉄鉱石の間にだって子供は作れるわ」

「無機物すら!?」

 それはそれでちょっと見てみたい気がしなくもないけど!

「さあ! めくるめく快楽の深淵は今そこにある! そして私の子を産んでもらうわ! もしくは私が産む!」

 がばちょ、と両手を広げて飛びかかってくる。
 ええい、ままよ!

「…………あら?」

 一瞬で目の前から背後に移動されて、さすがに驚いたようだ。
 これでも私は超能力者。短いけど、テレポートだって出来ちゃうのだ。

「超能力者を舐めないことね! この変態!」

 捨て台詞を残して、全力で走りだす。
 絵面的に変態はこっちだというのは気にしない。



 幸い、追っかけてまで何かしようという気はないのか、無事に私は逃げおおせることができた。

「はあっ……全く、冗談じゃないわ」

 前に遭遇したときはまともそうな人……妖怪だと思ったのに。
 見かけによらないのは、妖怪なんだから当たり前なのだろうか。
 生命とは別の危険に、まさか幻想郷で遭遇することになるとは。

「まあ、捕まったって最悪、時間さえ稼げば逃げることはできるんだけど……」

 幸い、私は時間が経てば幻想郷から脱出できる。
 あっちにいる私の身体が目を覚ませば、私はこの場所から……

「…………」

 この場所から、元の場所に戻る。つまり学校の教室へ。

「えーと」

 まあ待て。落ち着いて考えてみよう。

 私は寝ている間、幻想郷に入り込む事ができる。
 つまりは夢の中というわけだが、ここで起きていることは空想上の出来事というわけじゃあない。

 その証拠に、私は起きている時の所持品を、こちらに置いていける。誰かに渡したりできる。
 目を覚ますと、置いてきたものはきちんと無くなっている。

 つまり、このまま目を覚ました場合、私は。

「……シャレにならん」

 授業中に寝ていた生徒が、目を覚ましたと思ったら全裸になっている。
 都市伝説どころの騒ぎじゃない。
 透明化すれば見られはしないかもしれないが、どっちにしろ大騒ぎ間違い無しだ。

 何がなんでも、あのエロウサギから服を取り戻さなくてはならない。
 たとえ殺してでも!



 踵を返して元の場所へ向かう。
 本当は神社あたりに寄って何か羽織るものを借りていきたいけど、今は一分一秒が惜しい。
 私はあのエロウサギの住処を知らない。名前だけは聞いてるけど、悠長に探している時間はないのだ。

 こうしている間にも、居眠りを見咎めた教師が私を起こすかも知れない。そうなったら一巻の終わり。少しでも早く、服を取り戻す必要がある。

 見通しが良いとはいえ、私はかなりの近視。しかもメガネはヤツの荷物の中。
 見つけるのは難儀するだろうと思ったが、意外にもエロウサギは元の場所から動いていなかった。
 つづらは背に負ったままだ。下ろしていてくれれば、隙を見て荷物をかっぱらいテレポートで逃げる手があったのだが、そこはしっかり対策されているということか。

「ふふふ……私を忘れられずに戻ってくることはわかっていたわ」

「なんの自信よ」

 確かに忘れたくても忘れられない気はするけど。

「とにかく、私の服を返してもらうわ! 速やかに往生するがいい!」

「お馬鹿さん、この眼ですぐに私の虜にしてあげましょう!」

 眼を見ると狂う、だったか。確かに厄介な能力だ。
 だけど、今の私には恐れる必要はない。

 だって、近視でよく見えないから!

「とうっ!」

「うぐっ!?」

 突っ立って眼を光らせるエロウサギの腹部に蹴りを入れる。
 あんまり体育の得意じゃない現代っ子の蹴りでも、ちゃんと通じるようだ。

 怯んだところに念力を放ち、頭の位置を狙って爆発するように力を開放する。
 サイコプロージョンというやつだ。
 念力の方に集中したせいで透明化が解除されちゃうけど、もはや気にしてる場合じゃない。

「くっ!」

 エロウサギはとっさに横に飛び退いて回避する。
 間髪入れず念力を放ち続け、追撃する。

 荷物のせいで機敏に動けていないエロウサギだが、それでも直撃を避けるのはさすがと言うべきか。
 続けざまに力を使いすぎて頭が痛くなってくるけど、手を緩めるわけにはいかない。

 こっちはよく見えないから、一旦攻勢に出られてしまったら、ヤツの攻撃を回避するのは困難だ。
 一気呵成に片をつけなければ!

「なかなかやるわね子猫ちゃん! そんなに激しいのがお好みだった!?」

「うるさい色情魔! 私の平穏のため、ここで根絶やしにしてやるわ!」

 特大の念力を生成し、一気に解き放つ。この際、多少余波を食らってもかまうものか。

「そうは行くものですか! 子孫繁栄こそ兎の使命!」

 エロウサギは飛び退く……ではなく、前に出て爆発直前の力場に自ら飛び込んだ。

「でえええい!」

 力場の中心を通り過ぎるのは、爆発より一瞬早かった。
 低く重い爆発音と共に、威力を背中に受けたエロウサギが吹っ飛ぶ。
 その方向には、当然私がいる。

「うわあっ!」

 体当たりを受けたような格好で、私とエロウサギはそのまま倒れ込んだ。
 いきおい一瞬目を閉じ、開いた瞬間に飛び込んできたのは、視界を埋め尽くす、赤。

「…………っ!」

 とっさに、エロウサギの身体を突き飛ばす。
 念力の補助を添えて目一杯押すと、大した抵抗もなくエロウサギは離れた。

 至近距離で一瞬見えたその表情は、ニヤリと笑みを浮かべていた。

「くっ……う、あ……?」

 立ち上がろうとして、しかし、すぐに膝をついてしまう。
 脚に力が入らない。
 顔が、いや、身体が、熱い。
 なんだ、これ。なんだこれ――

「……ふふふ、見えないのなら、見えるところまで近づけばいいだけの話よ」

 頭の中心がかあっと燃えるような感覚。
 勝手に心臓が早鐘を打つ。
 呼吸がいつの間にか荒くなる。
 視界がぼんやりしてよく見えない。いやこれは元々だ。

 これが、狂気の瞳ってやつなのか。
 マインドコントロールどころじゃない。ほとんど麻薬だ。いや、麻薬を体験したことなんてないけど、多分こんな感じだ。

 エロウサギが、ゆっくりと歩み寄ってくる。

 やばい。やばい。早く逃げないと。立たないと。逃げろ。逃げろ。
 頭の中に浮かぶその声は、テレビの向こうで鳴る警鐘のように、まるで現実感がなかった。

 さわ、と頭の横を撫でられ、指先が耳朶をくすぐる。
 ビクンと背中が跳ねた。
 どうなってんだコレ。何にも抵抗ができない。頭の中は逃げろ逃げろの大合唱なのに、その声はどんどん遠くなっていき、思考も感覚もまるで思い通りにならない。
 なんかもう、半分というか八割くらい「もういいか」なんて気分になってるみたい。子供は二人くらいがいいなあ。でも兎って産めよ増やせよだからそうもいかないんだろうなあ。ってなんだこの思考!

 ああ、もう、ダメだあ……。

「ぐっ」

 遠くの方で、息が詰まったような、なんか変な声が聞こえた。

「うぎっ、ちょっ、あたっ、ちょっまっ、あだだだだ!」

 続けざまの悲鳴と、何か重いものが倒れる音。
 もう頭が全然働かなくて、何が起きてるのかさっぱりわからない。
 子供を産むときってやっぱり痛いのかなあ。

「おーい」

「…………あえ?」

 誰かが私の目を覗き込んでいる。
 エロウサギじゃないっぽい。まあ、誰でもいいか。痛くしないでくれると嬉しい。

 ――――バチン!

「痛っ……たああああ!」

 両頬を襲った痛みで、急速に現実感が戻ってくる。

「真っ昼間の往来でなーにをやってんのよ」

 赤い巫女服に黒い髪。よく見慣れた姿で、霊夢さんは私を見下ろしていた。
 両手で頬を思い切り打たれたらしい。

 はたと見ると、エロウサギは御札にまみれてのびていた。
 急遽駆けつけて助けてくれたわけだ。それはわかる。わかるけど、ちょっと痛すぎる。これ、ぜったい両頬に跡が残ってる。

「……で、そのアホな格好はどういうアレよ」

「う、……えーと」

 半眼の霊夢さんに、事情を説明する。……説明するほど大した事情でもないのだけど。

「つまりアホなことをしてたら、アホに絡まれてアホなことになったと」

「悪意に満ちた要約だけど否定できない!」

 向上心をもって修行に励んでいた、とか善意に満ちた解釈はできないものか。ダメか。

「大体、透明化なんてウチによくいる妖精にもできるような事よ?」

「……マジで?」

 努力の意味すらも否定されてしまった。なんだコレ。泣けばいいのか。

「色々言いたいことはあるけど、とりあえずその格好をなんとかしなさい」

 泣いてる場合でもないらしい。くそう。

 ひとまずエロウサギからつづらをひっぺがして蓋を開ける。
 制服は乱暴に中に突っ込まれていた。シワになったらどうしてくれるんだ全く。念力の直撃を受けたせいもあってつづらの中身はメチャクチャで、靴下とかあちこちに散乱してて探しにくい。

「……ところであんた、その透明化って解除しないの?」

「……へ? もう能力は使ってないわよ?」

「だってあんた……」

 霊夢さんに言われるのとほぼ同時。自分の手を見て気づく。
 透けてる。微妙に。
 超能力じゃない。力は完全に解除している。

 つまり、これは、私があっちに戻りかけているということで――

「ちょっと待って待って待って!」

 慌てて制服を全部広げて袖を通す。
 ああ、ボタンがずれたけど直してる場合じゃない! スカートも履いて靴も、ああ、あとメガネも!
 ちょっと、待って、もうちょっと――



「うわたたっ!」

 ガタタン、と大きな音を立てて倒れる。
 一様にクラスメイトたちが私を見る。そりゃ、寝てると思ったら急に机から転げ落ちたら注目するだろう。

「宇佐見? どうかしたのか?」

 先生が声をかけてくる。周りからはクスクスと笑い声。寝ぼけてたと思われてるのだろう。まあ間違ってはいないかもしれない。半ばまでめくれたスカートを直しつつ――

「…………!!」

 バッと素早く座りを直し、スカートを両手で押さえる。

「……な、何でも、ないです」

 先生は怪訝な表情を浮かべつつも、着席した私になにを言うこともなく、授業は普通に再開された。
 休み時間になると、一目散にトイレに駆け込み、掛け違えたボタンも直した。

 けど、全部元通りにはなっていない。
 つづらにメチャクチャに突っ込まれてたせいで、どっかに紛れて引っ張り出せなかったものがあった。
 急いでいたせいで探す時間はなく、結局それは置いていく事になってしまった。

 具体的には、下着、とか。

「……あんのエロウサギ……!」

 家に帰ったら、すぐに幻想郷に戻らなくてはならない。
 あのエロウサギ、絶対殺してやる!

 固く心に誓い、ノーパンでこの後の授業を受ける恥辱については、その怒りで無理やりごまかすことにした。



「……鈴仙? なにやってんの?」

「ああてゐ。この後お客さんが来るからさ、歓迎のためにあんたのトラップ色々借りるわよ」

「歓迎ねえ」

「あ、それと、お師匠様に薬もらってきてくれる? 三秒で理性がぶっ飛ぶ系の媚薬とかそういうの」

「ほどほどにしなよー」

ご読了に感謝いたします。ご批評をお聞かせ願えれば幸いに存じます。
一部展開を改定したディレクターズ・カット版(R-18)は平成2017年3月公開予定です。あとごめんなさい。
仲村アペンド
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コメント



0.390簡易評価
2.80名前が無い程度の能力削除
鈴仙…月の戦いでクラウンピースにやられた後遺症にかかって…
5.90名前が無い程度の能力削除
エロウサギすぎる……
9.80名前が無い程度の能力削除
全裸も描きようによってはエロさ0。