Coolier - 新生・東方創想話

死体探偵「フレイム」

2017/01/15 22:22:37
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 耳鳴りがする。
 地獄の鬼共が囚人へがなり立てるように、あるいは狂える吹雪が激しく幹を打つが如く。頭の中を悪魔の絶叫が駆け巡っている。
 じわりと首筋が痛んだ。思わず首元へやった手がぬるりとぬめる。手を開いてみる。赤い血でかすれている。溜息が出る。
 傷が開いていた。
 眩暈がした。吐き気もひどい。肩は重く、腕が怠い。
 地に立つというのに、沈み行くが如く。
 纏わりつく業に、私は溺れかけていた。
「どうした、何を呆けている?」
 烏帽子を被った童顔の少女が小首を傾げている。
「民衆にやられた傷が開いたのか? まあ、あの礫の雨は中々のものじゃったからな。我には石打ちの刑にも見えたぞ。しかし、お主は妖怪じゃろう。その程度の傷など、どうという事はあるまい」
「……私は鼠だからな。ヤワなのさ」
 その少女、物部布都は腰を折って盛大に笑った。
「倉を食む悪魔がヤワとは、馬鹿を言いよる」
 見ているこちらのほうも痛快な笑い転げようである。窓が少なく薄暗い霊堂の中で、彼女の周りだけ火が付いたように明るい気がする。
「いい加減にしろよ、布都」
 色硝子の嵌め込まれた窓辺に佇む、妙に気配の薄い女が声を上げる。そのはず、彼女は現世に漂う幽世の住人、亡霊なのである。
「太子様の御前だぞ。まったくお前はいつもいつも……」
 蘇我屠自古はペチャクチャとお小言を始めた。食べ終わった食器は毎日片付けろだとか、洗濯くらい自分でしろだとか、主婦みたいな愚痴を言っている。それ今関係ないだろ。大体、そんな事こそ太子様とやらの御前で言う事じゃないだろうに。しっかり者を装ってはいるが、この女も相当抜けている。
「屠自古。それくらいにしておきなさい。客人の手前です」
 樫の机の向こう側に腰掛けるヘッドフォンをした女性が、小言を垂れ流す屠自古を制した。その声にお小言亡霊はピタリと口を噤んだ。凜として威厳のある、しかし何処か弱々しい声。
 覇気の薄れたその面を儚げに崩して、聖徳王は私へと笑いかけた。いつもは脂ぎった煮凝りを連想させる自信と自尊と精力とに満ち溢れた笑顔が、今は澄み切った清水のようにさらりとしている。獲物を狙う木菟の翼のように逆立った髪も、ふわりと優しいカーブを描き、普段の威圧感が感じられない。
 まったく意外な事に、豊聡耳神子は弱っているようだった。まさに晴天の霹靂……いや、天網恢々疎にして漏らさずとも言う、なるべくして成ったというべきか。
 布都と屠自古、二人の従者も、そんな主の姿を見て心配そうな視線を向けている。
「恥ずかしいところを見せてしまったかな。すまないね」
「気にするな。命蓮寺も似たようなものさ、喧しいのには慣れている」
「そうか。それはさぞ楽しいだろうな」
 神子は相変わらず、美しい笑みを浮かべている。それを強者の余裕と見るべきか、商売敵への嘲笑と見るべきか、私は少し迷った。だが結局はそのどちらでもない印象を持たざるを得なかった。
「この地で傷を癒やすとよいだろう。此処、神霊廟は私に付き従う者達の街だ。里とは違う。君への憎悪も此処には無い」
「礼を言わせて欲しい。その言葉に甘えさせて頂いている」
 私は聖徳王に頭を下げた。頭に巻いた包帯がズルリと落ちて、闇が目の前を覆った。
 民衆から石を投げられ、私は里を追われた。死体探偵、そして私自体に憎悪が集まっている今、命蓮寺に戻る事も出来ない。拠点である無縁塚にも恐らく有象無象共の刺客が向けられているだろう。私は止まり木を失った鳥に等しい。
 行く宛の無い私を拾ったのは、なんと商売敵の聖徳王だった。彼女からの書状を受け取った私は、着の身着のまま、この神霊廟の青娥の部屋に転がり込む事になったのだ。
 私の窮状を見て、どうやら青娥が口添えをしてくれたらしい。彼女にはいくら感謝してもし足りないくらいだ。
「もう一つ礼を言わせてくれ。先の災害の折の援助、旱天の慈雨と言う他無い」
「それは筋違いと言うものだ。あの災害は幻想郷に住まう者全てにとって等しく厄災だった。力を合わせて事に当たるのは、それは義務というものだ」
「それでも、重ねて助けられた事に変わりはない」
 ずれた包帯を直して、私は神子を正面から見据えた。
「だが、私もタダ飯を喰らうつもりはない。仕事はするさ」
 それは仏道に相反した、私の矜持でもある。
 神子は首を振った。
「気にしないでよい。客人にたかったとあっては、私の名が廃れる」
「いや。私自身がそうしたいんだ。私は鼠だ。鼠は動き回っていないと死んでしまう性分なのさ」
「そうか。ならば君には……」
 神子は口を開いたまま固まった。
 一瞬だけその視線を二人の従者へと向け、それから目を伏せた。
「――いや、いい。忘れてくれ」言い掛けた言葉を飲み込んで、神子は首を振った。「ここで君の行動を束縛するものは、法だけだ。あとは君の心の赴くまま、自由にするとよい」
 そうして、疲労を息で吐き出す。
 バイセクシャルを公言して憚らない聖徳王のこと、夜伽の相手をしろなどと言い出すのではと恐れていたのだが、杞憂に過ぎなかったようだ。
 しかし、どんな言葉を飲み込んだのやら。
「ああ、ちなみに寵姫はいつでも募集している。君もなってみないかね? 私の寵姫は幸せだぞ。愛と快楽に包まれた毎日を送れる」
 ……飲み込んだのはそっちの言葉じゃなかったのかよ。
 調子を崩しても、やはり神子は神子のようだ。性欲が外套を羽織ったような奴、聖は神子をそう評していたが、なるほどその通りである。
 もちろん、そんな魅力皆無の勧誘など受けるはずもない。
「遠慮するよ。私は修行中の身だからな」
「そうか。それは残念」
 神子は笑いながらそう言うと、席を立った。
「私はもう行かねばならない」
「わざわざの御足労、痛み入る」
「何、定期の巡視ついでに立ち寄ったまでだ」
 二人の従者を付き従え、神子は押し戸に手を掛けた。
 ふと振り返った神子は、その牡丹のような口を再び開いた。
「この神霊廟は、例えるなら水鏡だ。我々は君を受け入れよう、毘沙門天の使者よ。ゆるりとしてゆくがよい」開かれた神子の瞳は、底知れぬ光を帯びていた。「君が迷いを断ち切る、その時まで……」
 心の底の底まで見透かすような神子の瞳を逃れ、私は視線を石造りの床に逸した。
 甘夏のような香りを残して、神子は去った。
 私は少し息をついた。私にとっては恩人に当たるのだが、それでもやはりあの聖徳王を相手にするのは骨が折れる。しかし、この疲労はそれだけではない。
 血で汚れた頭の包帯を取り換える。四万十の放った水爆弾で、私の体はボロボロになっていた。殺到した飛礫の痛みも、まだ胸に響いている。
 だが、いつまでも腐ってばかりいられない。神子に仕事をすると宣言したのだ。多少の強がりが入っていたとはいえ、その言葉に違う事は出来ない。それに、八雲紫との契約もある。
 私は死体探偵の変装をした。結局、これ以外で私が生きて行く道など無いのだった。
 耳鳴りの残る頭を抱えて堂を出る。溢れる太陽の光が薄暗がりに慣れた目を刺した。
 空は突き抜けるように蒼い。
 蒼空を泳ぐ極彩色の鳥の赤い尾羽がはらりと落ちて、眼前の塀上に落ちた。私はなんとなくそれに手を伸ばした。自然と、広がる景色に目が吸い寄せられた。
 高い城壁から見下ろすその光景。
 視界一面に広がるは、巨大なる街。
 碁盤目状に規則正しく区画整備され、精密画のように整然として美しい。広い街道を無数の人や牛車が行き来しているのが見える。活気のある声が飛び交い、街のあちこちからは生産活動を示す細い煙があがっている。雑然とした里とは違った、素朴ながらも洗練された上品な街並み。
 これが神霊廟である。
 聖徳王こと豊聡耳神子が亜空間、言わば幻想郷の隙間に造り出したこの街は、中国文化の影響を強く受けているようだ。高く分厚い城壁が四方をぐるりと取り囲み、東西南北それぞれに巨大な門、そして城郭を備えている。所謂、城塞都市の体を取っていた。
 城内部には小さな川が引き込まれ、秋に色づく小高い山もある。街の各所には幾つもの背の高い倉が立ち並ぶ、城外に広がる田畑の収穫を納めているのだろう。その貯蔵量たるや、目算しただけでも相当なものである。
 神子が創り上げたこの神霊廟は、このように非常に戦闘的な、まさに要塞と形容するにふさわしい剣呑とした都市だ。妖怪達からの評判はすこぶる悪い。しかしその高い城壁が、妖怪の影響に怯える人々に安堵をもたらしているのもまた事実である。
 そして、中心にそびえ立つは神子を戴く霊堂――正確にはあれを神霊廟と呼称すべきなのだろうが。
 神子という巨大な精神的支柱の存在が、この都市により強力な政治的価値を付与している。これは幻想郷に現れた一個の独立国家と言って差し支えないだろう。
 恐るべき豊聡耳神子。幻想郷に現れてから、あれよと言う間にこのような都市を創り上げてしまった。その行政面の知見たるや、目を見張るものがある。その知見を活かし、神子は積極的に公共事業への投資を行ってもいる。花の温泉郷だとか、妖怪の山への街路を引いたのも神子である。その名声は鰻登りだ。彼女は既に幻想郷に対して大きな影響力を持ち始めている。
 加えて、先程の謁見である。人を見透かすあの瞳が脳裏に焼き付いて離れない。噂によると、神子は人の心を聴き通す神通力を備えているという。その超能力が彼女のカリスマ性をさらに引き上げている。あの聖も認めているように、豊聡耳神子は稀代の傑物であった。……ふしだらなその性生活を公言さえしていなければ、今頃この幻想郷も道教一色に染まってしまっていたのかもしれない。
 私は手に取った赤い尾羽を髪に挿して、城壁の石段を降り街へと入った。
 この街の目抜き通りは四つある。即ち、東西南北それぞれの門から、中心に鎮座する霊堂へと伸びる道である。北側は工業区画になっているため少し人通りが薄いが、南側の参道は里の目抜き通りにも負けない活気があるらしい。私は青娥の作業部屋がある北側の通りを抜けて、南通りを目指して歩いた。
 行き交う人々は私の姿を見かけると皆一様に身を強張らせていたが、それだけだった。罵声を浴びせられる事も無ければ、礫を投げつけて来る事も無い。神子の言った通り、ここの人間達はよく統制が取れている。これも神子の統率力がなせる業なのか。
「ナズーリン!」
 南通りに差しかかった時、聞き覚えのある声がして、私は振り向いた。
 駆け寄って来たのは、袈裟姿の少女である。
「一輪じゃないか。どうしたんだ、こんな所で。説法か?」
「それはこっちの台詞よ! なんでここにいるの!」
 肩で大きく息をしながら、雲居一輪は私の胸ぐらを掴みかからんばかりの勢いである。
「なんで神霊廟にいるの、ナズーリン」
「君もあの場に居たのなら、知っているだろう。私は命蓮寺にはもう戻れん」
「でも……!」
「でもも季もない。それが真実さ」
 私が歩き出すと、それを追って一輪が付いてきた。
「……その格好。あんたまだ死体探偵を続ける気なの、ナズーリン」
「それ以外、生きて行く術を知らんからな」
「でも……」
「言ったろ。でもも季もないんだ」
 通りの角に、人集りが出来ているのが見える。一輪もそこから来たのだろう。
 その中心には、よく見知った顔があった。
「ナズーリン……」
 袈裟姿の寅丸星が、説法を行う口を止めて、私へと視線を投げかけて来た。同時に、集った民衆の視線も私へと殺到する。ある者は怯え、ある者は憎悪を瞳の中に宿らせて。
 星が此処にいるのは、神霊廟での布教活動の為だろう。神霊廟からシェアを奪おうと、攻勢をかけているのだ。相変わらず、真面目一辺倒な奴。
「……何故、貴女がここにいるのです?」
「愚問だな、毘沙門天の代理とやらよ!」甲高い声が殺伐とした空気を割る。「毘沙門天の使者は今やこの神霊廟の一員となったのだ。即ち、毘沙門天の加護も我らが神霊廟にあるというもの!」
 喧しい声に振り返ると、いつの間にか背後で布都が腕を組んで仁王立ちしていた。
「物部の……」
「ナズーリン女史は太子様に心酔し、我らが門下に下ったのだ! そうであろう? そうであろーう?」
 言葉の語尾毎にいちいち無意味で暑苦しいポーズを決めてくる。鬱陶しいことこの上ない。
「本当ですか、ナズーリン」
「さあね」
 なんとなく腹が立ったので、私はそっぽを向いた。
「我もあの狂騒を見ていたぞ。ナズーリン女史が石を投げつけられている間、貴様ら邪教の信奉者共は何もせんかったではないか。あまつさえその場から逃げ出す始末。これでは女史が我々を頼るのも仕方無いというもの。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずと言う、それすら実践できぬとは貴様らが人の道に外れた邪教である証拠。貴様等の信奉する正義は所詮その程度のものと言う訳だ! それに比べて、我らが太子様のお心のなんと深い事よ。異教の信徒と言えど分け隔てなく受け入れる。器の違いが出たな!」
 布都はその童顔を邪悪に歪めて、星を嘲笑した。
 一輪は拳を震わせて怒っていたが、星は何も言わず、ただ鉾を地に刺し佇んでいる。
「ナズーリン女史は我々の手足となって働くことを誓ってくれたぞ。毘沙門天の代理よ」
 小さな体を目一杯反り返らせて、勝ち誇ったように笑みを浮かべる。
 星はそれには目も向けず、私の瞳を真っ直ぐに見つめて問うた。
「ナズーリン。本気で仏教を捨てる気ですか」
「私の意志は、以前に伝えたとおりさ。君も良く知っているだろう。私は生きるためになら、泥水でも啜る」
「ちょっと……ナズーリン!」
 一輪が私の服の袖を引っ張っているが、私は構わず言葉を吐き捨てた。
「道教に与すれば、貴女は本当に破門されるかもしれない」
「今の私に、仏教徒を名乗る資格は無い」
 あの豊聡耳神子が看破したように。
 経典の百万言には、もはや力が宿っていない。あらゆる教えも虚しいだけ。私の中で、今まで培ってきた全ての教義が色を失くし始めている。
 いや。それはもっと、ずっと昔から始まっていたのかもしれない。
 聖が封印され、私と星が毘沙門天に見捨てられたあの日から。
「……そうですか。分かりました」
「星! ちょっと、待ちなさいよ!」
 星は背を向けると、信徒を引き連れて大路を引き返して行った。一輪の呼びかけを背で聞いても、その歩みは止まらない。
「見たか、天魔覆滅ぞ!」
 はっはっは、と声を上げて笑う布都。
 星が居なくなると、集まっていた神霊廟の住人達は、布都に会釈しつつそろそろと在るべき場所に戻っていった。
「ナズーリン、本気なの? 道教の奴らの仲間になるなんて……!」
 一輪はしきりに私の袖を引っ張るが、無視した。
 代わりに、私は布都を睨んだ。
「人の弱みにつけこんで、有る事無い事言いふらすのが、道士様のやり方かい」
「む。そう言われると、辛いな」布都はちょっと頭を掻いた。「まあ、必要経費だと思ってくれ」
「私が信用出来ないか」
「いいや? 我はお主を信用しておる。お主は我らが太子様を信頼して神霊廟を頼ったのだからな。その信頼に報いるのにはやぶさかではないぞ」布都はニヤリと笑った。「だが、信じているから座して在るというのは違うのだ。それは人を統べる者が行う事ではない。我は為政者だからな。お主もそれを望んでおるのじゃろう?」
 その物言いに、背筋がぞくりとする。
 ただの嫌味な馬鹿かとも思ったが、この物部布都。どこまで分かっているのか、底が知れない感じがする。
「一輪。君ももう私に用は無いだろう。あの事件の後処理を頼んだぞ」
 私は歩き出した。
「夕餉までには戻るんじゃぞ~」
 布都が大きく手を振りながら、子どもみたいな事を言う。なんと言うか、掴みどころの無い奴である。怒る気にもなれなかった。
「ナズーリン……」
「なんだい、一輪。後処理を頼むって言ったじゃないか」
 神霊廟を出ても、私の後をしつこく一輪が付きまとってくる。
「ナズーリン、今からでも遅くないわ。命蓮寺に戻りましょう」
「それは出来ない」
「でも、このままじゃあんた、破門されちゃうかもしれない」
「それもまた、私の道なのだろう」
 突然、一輪が私の腕を掴んだ。
「帰るわよ。今ならまだ間に合うわ」
「な、なんだい突然」
「納得行かないわよ、こんなの。里のみんなにちゃんと話して、誤解を解きましょう。私も手伝うから」
「軽率だぞ、一輪。また聖を封印するつもりか」
「代わりにあんたが封印されちゃったら、意味ないでしょ! そんなの姐さんも望まないわよ!」
 一輪の大喝に、私は一瞬怯んでしまった。
 その隙に、一輪は雲山に指示して私を羽交い締めにした。
「ちょっ、待て、一輪!」
「待たないわよ!」
 為す術のない私は、そのまま里へと引っ張られて行った。
 里の入り口で私達を待っていたのは、もうもうと立ち上る黒煙だった。
「なんて事……!」
 一輪が口元を押さえて戦慄いている。
 燃えている。星鼠亭が。
 天まで届くような火柱を噴き上げ、轟々と恐ろしい唸り声を上げながら。猛り狂う火龍が小さな星鼠亭の全てを喰らい尽くそうと、のたうち回っている。辺りには木の焼ける嫌な臭いが充満し、息が詰まった。
 その炎の前に佇むのは、星だ。袈裟姿の信徒達を従えて、右手の燃ゆる松明を掲げ。其の様は宛ら、冥界を照らすランパース。
「星……! ど、どういうつもりなの!」
 一輪が震える声で問いかける。私達に気付いた星は、くるりと振り返ると、手にした松明を門の外の私達へ投げ付けて来た。それは私達の足元に転がり、炎の壁を作った。
「星、星!」
 一輪が叫んでいる。
「ナズーリン。貴女がそこまですると言うのなら、私も毅然と立ち向かいましょう」
 そう言い放つ星の穏やかな顔は、炎に赤く彩られて、壮絶なまでに美しかった。
「……それでこそ、寅丸星だ」
 酷い耳鳴りが私を責め立てている。
 天道は何処にありや。空を見上げても、私には何も見えやしない。雲無くして照る秋の太陽は、人の手で生み出された黒雲によって覆い隠されてしまった。
 髪に挿した赤い尾羽、蒼空を飛ぶ自由の欠片を、足元の松明に投げ入れた。
 私の過去も、この炎に焚べてしまおう。
 もうこの連載も一年になっちゃいました。最初は一年で百万言くらい余裕で書けるだろーと思っていたのですが、蓋を開けて見ればその三分の一にも満たない体たらく。遅筆な自分が恥ずかしい限りです。
 連載に重要なものは、気力、体力、時間にモチベーションと色々ありますが、今回の連載にあたって必要だなと痛感したのは、教養でした。書くに当ってどの文献を読んだらいいか、ってところから始めるのは、なかなか時間と体力を使ってしまうのでして。
 とりあえず最近はwikipediaの参考文献にあたるようにしてます。
 今年はもっとペースを上げて行きたいと思っています。……出来るだけ、ですけれども。
チャーシューメン
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コメント



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1.100南条削除
面白かったです
みんなそれぞれ深い考えがあるようで読んでいてワクワクします
7.100いぬきち削除
がんじがらめになったこの感じ、いいですね。
Wikipedia先生はたまに平気で大嘘をつくので、ご注意くださいませ。
続きを楽しみにしております。