Coolier - 新生・東方創想話

意図し故意し

2016/02/18 05:59:31
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「~♪」

 鼻歌交じりに、人ごみの中を右へ左へ、ぶつからぬ様にふらふらと歩いている一人の少女が居た。
 時刻は丁度昼時、里の商店が一番賑わう時間帯だ。
 しかし、少女はそれには目もくれず、ただただ目的も無く歩き回っていた。

「――――――――」
「――――――――」

 客寄せの声が辺りに響いている。少女がその目の前を通る時も、その声は調子を変えない。
 まるで、その少女が見えていないかの様に。

 少女もまた、それが当たり前であるかの様に、否、それに対して、何も意識を働かせて居ないかの様に、歩調を変える事は無い。
 少女の名は、古明地こいし。瞳を閉じたさとり妖怪。彼女が無意識のうちに動く限り、人もまた、彼女の事を意識的に捉える事は出来ない。

 そんな彼女だからこそ、妖怪の身でありながら、白昼堂々と人里を闊歩して居られる。
 しかしながら、そんな彼女も、辛うじて残っている意識を働かせる事もある。それは、彼女の気まぐれ――尤も、彼女の現在の行動全てが気まぐれの様な物ではあるのだが――であり、彼女自身も、何故そうしているのかは分からないのかもしれない。そして、それが無意識の内に記憶より抜け出る事も、しばしばである。

 これは、そんな無意識の邂逅である。

「――――」

 鈴仙・優曇華院・イナバ。彼女は、里に薬売りに来ている兎の妖怪である。今日もまた、置き薬などを訪問販売して歩いている。
 今現在、彼女は、本日のノルマを終え、帰路に着こうとしている所である。

「――――」

 里に薬を売る様になって久しく、この日々にも慣れた物ではあるが、やはり人と接する仕事である以上、疲れる事も多い。
 訪問した先で、子供の相手をする内に被っている笠をとられそうになったり、風邪で寝込んでいる人の看病をしてやったりと、サービスの枠を少しはみ出ている様なそんな対応をしていれば、疲れも溜まって当然と言えば当然ではあるが、それすらにも、彼女は働き甲斐を感じている。

(さあ、帰って明日に備えるとしましょうか)
「ねえってば」

 鈴仙が、その言葉に気付いたのは、歩き出そうと前に出した足が、少女にぶつかった時だ。

「うわあ! びっくりした!」
「貴方、此処で何してるの?」
(何? いきなり目の前に現れた?)

 少女は、鈴仙が彼女を蹴りかけた事など気にも留めず、子供の様に動き回る。

「これ、何が入ってるのかしら」
「ああ、これは、薬を売っているから、薬が入っていて……」

 しどろもどろになりながらも、頭を落ち着かせようとする鈴仙。よくよく見れば、その少女は、どうやら人間ではない様である。

「貴方、こんな昼間から、なんで人里を出歩いているの!?」

 大声を上げてから、はっとして、鈴仙は周囲を見回した。幸いな事に、こちらに注意を向けている人間は居ない様だ。

「とにかく、こっちへ」

 鈴仙は、少女の手を引き、人気の無い場所へと連れて走った。

「どうしたのかしら」

 呑気そうに少女、こいしは言う。

「どうしたのじゃあ無いわよ。なんで妖怪がこんな昼間から、しかも人里を出歩いているんですか」

 息を切らしながら、鈴仙は尋ねる。

「それは貴方も同じでしょう?」
「――! 私は、ほら、こうやって人間の振りをしてますけど、貴方は、何も隠そうとしていないじゃないですか」
「隠す必要が無いもの」

 鈴仙は、こいしの返答に驚いた。まるで正気の返答だとは思えなかったからだ。
 しかし、その真意を知る為、こいしの意識の波長を読み取ろうという試みは、失敗に終わった。

(波長が読み取れない? 何も考えていない? そんな馬鹿な事が――)
「貴方、一体何者?」
「私? 私はこいし」
「なんで人里に居たんですか?」
「いつの間にか、質問する側が変わっているね」

 会話が成り立たない。何を考えているのかも分からない。

「真面目に聞いて下さい」
「動物に効く薬は無いのかしら。ペットが病気だと、お姉ちゃんも暗くなっちゃうもの」

 まるで子供の様だ、としか言いようが無かった。鈴仙は、この時点で、こいしへの追及を諦めた。

(訳が分からないけど、多分、悪さをする様な妖怪じゃあ無いのかな……?)
「ねえ、動物の薬は売って無いの?」
「あーっと。今日は持って来て無いですね」
「そっかー」

 対して興味が無さそうに――何事にも興味が無さそうに――こいしは呟いた。

「じゃあ、今度私の家まで持って来てよ」
「え? あ、はい。何の動物ですか?」

 相変わらずこいしの事は分からないが、しかし、薬を欲するなら、とりあえずの所は客である。鈴仙は、一応話を伺ってみた。

「んー。猫とか鳥とか、いろいろ。いっぱい」
「いっぱい、ですか……」
「ええ、いっぱい。次は持って来てね」
(猫に鳥に、いっぱい……。とりあえずは犬用の薬でも師匠に調合してもらいましょうか……)

 色々な種類の動物がいるというのなら、何種類もの薬を用意しなければいけない。鈴仙は、それをどう用意しようか、等と算段を立てながら、思い出した様に尋ねた。

「そう言えば、貴方の家はどこにあるんですか?」
「私の家は地霊殿だよ」
「成程、地霊殿……。え?」

 聞き間違えかと思い、鈴仙はこいしに答えを聞きなおそうとした。だが、その時には、こいしはもうどこにも見当たらなかった。

「地霊殿って、地底の……?」

 呟いてみたが、勿論、返って来る声も無い。

(地底……か)

 とりあえず、今度時間がある時に売り込みに行ってみようかな、と鈴仙は思った。

 後日、地霊殿にて、さとりがペット用の薬を大量に買わされる事となったが、それはまた、別の話。
こいしちゃんは面白い子なので好きです
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コメント



0.90簡易評価
2.無評価名前が無い程度の能力削除
終始説明で終わったね。
3.無評価名前が無い程度の能力削除
ここのとこ毎日投稿してるがチラ裏レベル止まり
まずは起承転結のある作品作ってから投稿してほしい
4.50名前が無い程度の能力削除
うーん……話の大筋はそこまで悪くはないんだけど、流れが性急というか筋のそこここが薄いというのかな、色々と説明が足りて感じかな。そのせいで『なんでこの流れからそうなる?』という気分になりがちなんだよね。
もう少し、シーン毎の描写に割く情報量や密度を増やして、話の整合性や説得力をもたせられないものかな。
6.無評価名前が無い程度の能力削除
連日の作品見ても思うけど、パッと面白いのが書ける方じゃないんだから練らなきゃでしょ。ネタが浮かんだまま書くんじゃなくてどこを見せ場にしようとか、ここが魅力なんだ!って言い張れるとこまでお話を考えたらいいと思う。
8.20名前が無い程度の能力削除
物語としては中途半端、あるいは投げやりな形で終わっているが、それならそれでせめて二人のやり取りや地の文にもっと光る部分が欲しかった
9.10名前が無い程度の能力削除
前回も前々回も含め、いずれも起承転結の起で終わってるほどの薄さです。

(地底か…)
とりあえず、今度~

で、いきなり話が飛んで、さとりが薬を大量に買わされる羽目になっちゃった、で終わるのはいくらなんでも手を抜きすぎでしょう。
下手な鉄砲数撃ちゃ当たる、は創想話では通用しませんよ。
10.無評価秋塚翔in創想話削除
組み合わせは魅力的だった
11.50秋塚翔in創想話削除
組み合わせは魅力的だった
12.60名前が無い程度の能力削除
文体は好きです。
期待を込めて、60点。次回作もお待ちしています。
15.100名前が無い程度の能力削除
うどんげが普通に優しいのと
こいしの強引な買い方が面白い

こういう会話だけ切り取った話と言うのも面白い
16.10名前が無い程度の能力削除
真面目に書く気がないなら失せな。
17.80名前が無い程度の能力削除
オチがとても魅力的だと感じましたので、どこかでさとりんが訪問販売に弱い的な伏線を張ると、より良くなるのではないかと思いました。