Coolier - 新生・東方創想話

セカンド・ハンド・スモーキング・ガールズ

2016/01/04 17:17:19
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 天高く馬肥ゆる秋。 秋晴れという言葉はあれど、夏晴れとか春晴れとか冬晴れなんて言葉は聞いたことがない。外を見れば、どうやら晴れているらしい。空気が乾燥していると、空は高く見えるだとか、なんとか。香霖堂の店主さんがそんなことを言っていた記憶があるけれども、今日も今日とて私は家の中。ひきこもりとまでは行かないけれども、そこそこ出不精であるのは自覚している。どこぞの白黒のようにあちこちを飛び回るのは、それを馬鹿だとか非効率的だとか言うつもりもないしそれはそれで楽しいのだろうとは思うが、私にはそのような積極的な行動力はない。
 というか、そもそも外に出てもやることがないし。
 人里で布を買うか人形劇するか。
 ゲリラ人形劇なんて誰が見るんだ。
 鳥獣伎楽じゃああるまいし。
 よってどんよりとした空気の中で、私はゆっくりと紅茶を啜り優雅な昼下がりを過ごす、予定だったのだけれど。 
「紅葉しない森なんて何の価値があるわけ?」
 と、ご立腹のネイチャーモンスターが対面の椅子に座ってクッキーを頬張っている。その様からは大妖怪のオーラは微塵も感じられないのだが、弱い妖精やら妖怪やらをいたぶっている時だけはそれっぽく見えてしまうのが残念である。ああ、そういえば幽香って強かったなあ、とか、そういうことを思い出さなきゃ忘れるくらいに、普段はまあまあ腑抜けていて、今なんかは完全にその状態であった。
「こんなところの木々が紅葉したところで誰も見ないもの」
「私と貴女は見てるじゃない」
「じゃあカーテンを閉めるわね」
「よけい陰気臭くなるわよ」
 ちょっと待て。今私の家を陰気臭いと申したか。その陰気臭い家に足しげく通っておいて何を言うか。
「そもそも神の怠慢でしょ? ちょっと一発カマしてやろうかしら」
「やめて」
 とまあ、彼女は自然であるとか植物であるとか、そういったものに並々ならぬ執着を持っている。私はそれほどそういったものを愛でていないので、彼女の話はかなり新鮮に聞こえる。
「そういえば秋だものね……こういうところに居ると忘れてしまうわ。私も植物を植えたり生けたりしてみようかしら」
 私がふとそんなことを呟いてみると、幽香は目を輝かせて私の方に乗り出した。近い近い。自分の土俵に他人が上がってきたのがそんなに嬉しいか。私は貴女が人形の話をする時はどんな悪用を思いついたのだろうかと冷や汗をかいたものだが。
 ちなみにその時はぬいぐるみを作ってやったら喜んだ覚えがある。
 子供か。
「あら? 興味を示していらっしゃる? 何を植える? 秋に種を蒔く花だとヤグルマギクだとかデイジーだとかがぱっと思いつくわね、何にするかしら? いくらでも助言するわよ?」
「サボテンとか」
「四季を愛でる気が微塵も感じられねえ!」
 思わず口調が変わるくらい激昂しながら、ばんっと大きな音を立てて机を叩く幽香。クッキーが跳ね、紅茶の水面が音を立てた。流石は幽香、そこに秘められた力は尋常なものではない。ただ、それ、うちの机だから。他人の家の家具を堂々と叩いてんじゃねえよ。
「けれどアリス、今植えても花が咲くのは来年以降よ?」
「それもそうね、面倒になってきたわ」
「心が折れるのが早いわ、もっと私に喋る機会を与えなさいよ」
 植物についての話をどうしてもしたいらしい。気持ちはわかる、自分のテリトリーの話題になると饒舌になるというのは。
 友達がいない者のあるあるネタだ。
 ブーメランを投げる人形遣い。
「私の能力で種を植えた瞬間に発芽させて花を咲かせることも可能と言えば可能だけれど」
「それなら造花作るわ」
「でしょうね」
 そこまで言うと、幽香はクッキーの最後の一枚を手に取った。結構な枚数焼いてたんだけどな。幽香が来ると私の取り分がなくなる。天高く幽香肥ゆる秋。それはちょっと嫌だなあ。
「なんなら、うちの花をいくつか譲りましょうか? いつもお菓子と紅茶を御馳走になってる御礼はしないとね。私に出来ることなら喜んで協力するわよ」
「それはいいわね。貴女の庭ならどんな花でも選り取りみどりでしょう? 例えばそうね、金烏帽子、マミラリア、エキノプシス……」
「それ全部サボテンでしょうが!」

 太陽の畑が見える。空気が乾燥しているのはあまり好きではない。暑い寒いには感覚が疎くても、肌の乾燥には敏感なのである。あんまり外に出たくない大きな理由の一つだ。
 魔女の弱点其の一、肌が弱い。
 一応金髪碧眼の西洋美少女として売っている私としては、日焼けも非常に避けておきたいところである。秋とはいえ、油断をするとわりとやられるから気を付けたい。
「幽香、貴女いつも傘を持ち歩いているけれど、肌弱いの?」
 日光にアレルギー反応を起こす人間もいると聞く。妖怪にアレルギーなんてものがあるのかはわからないけれども。
「いや、これは鈍器ね」
「鈍器」
「でも棍棒や釘バットを持ち歩くのってあからさますぎるでしょう?」
「ファッショナブル鈍器」
 思った以上に彼女らしいアクセサリーであった。そういうことを言うから怖がられて友達ができないのだ、とは、多分彼女もわかっているであろうから、言わなかった。
 損になるとわかった上でやらなければならないこともある。
 主に格好をつけるために。
「ここよ、私の家……来たこと、あったかしら?」
「無かったような気がするわ」
 目の前にあったのは小さな家で、どちらかといえばその建物よりも本来付属品であるはずの庭のほうが広く、より強い存在感を放っているように見える。
 普通の植物も多いのだけれど、なんか私の辞書に基づく植物の範疇にないものも群生してる。
 なにあれダンシングフラワー?
「さて、庭から採ってもいいけれど、初心者なら中で育ててるやつの方がオススメね」
 たぶん経験とかそういう問題じゃない。
「入りましょうか」
 そう言って私を先導する幽香。
 ドアにもなんかの蔦がついてる。
 うわ、玄関からもう植物の温床だ。なにあれ、姿見に枝が絡み付いてて見えないじゃん。もはや使い物になってないじゃん。どういう心境でこれここに置いてんの。
「ねえ幽香、この姿見、機能してなくない?」
「可愛いでしょう?」
「え、あ、そ、そうね」
 わかんない。私そのセンスわかんない。これで確認できる私の姿は枝に絡まってる時の私でしかないんだけど。
 どういうシチュエーションなのそれ。
「ほら、ここが居間」
「……あら、意外と植物少ないのね」
「住みにくいじゃないそんなの」
 いや、なんかもう感性が独特すぎるでしょ。心の中のツッコミが止まらないので一つ深呼吸。そして周りを見渡してみる。台所もわりと整頓された普通のもので、テーブル、椅子、箪笥、簡単な本棚……全体的に木造で統一された、本当に普通の部屋だ。なんか拍子抜けである。
 しかし、それにしても、だ。ひとつ、今、気付いたことがある。
「ねえ、じゃあ、この花みたいな甘い匂いは何なの?」
 そう、姿は見えないのに香りだけは花が主張してくる。まるて部屋の中に大きな花束があるような、しかし私の視界には小さな花瓶だとか植木鉢だとかしか映らない。しかも数個の。
「あ、多分それ芳香剤」  
「近代的」
 あれ、幻想郷ってそんなハイカラだっけ。
 そんなことを言いながら数歩歩いて、幽香はタンスの上のなにやら直方体の塊を手に取った。それが芳香剤らしい。薄い紫色の液体が見える。
「さて、花で丁度いいのはここの――」
「ふうん、食器とかも揃ってるのね。意外だわ」
「聞いてる?」
 台所に勝手に立ち入って、ガラス張りの棚の中の食器を確認してみる。横から幽香の声が聞こえたが、あまり気にしないことにする。
「……あまり他人の家を物色するものじゃあないわ」
「貴女だって私の家をカスタマイズしてるじゃない」
 幽香専用のティーカップがあるのはわりと納得いかない。
 私の、来客用の、幽香の。なんだお前は。嫁か。
 歯ブラシはないからセーフって言い分はおかしい。
「ちゃんと掃除もされてる……貴女、ちゃんと生活できてるのね」
「喧嘩売ってる?」
「まさか。貴女に敵うわけないでしょ」
 そりゃあそうだ。彼女の「特殊能力」と言うべき能力はもちろん植物を操ることにあるのだが、それは彼女の本質ではない。いわばオマケだ。彼女は植物を使って戦うよりもその腕でぶん殴る方が格段に強いという、はっきり言ってしまうとすごく投げやりな妖怪なのである。
 ほぼ鬼だ。
 インドア派の鬼。
 そういう表現をすると手がつけられない感じが如実に表れるな。実際手がつけられないし。
「貴女がまともかつ健康に生活しているだなんて考えられなかったもの」
「私の身体が不調だったことがあって?」
「そりゃあ見た事がないけれど……って」
「あっ」
 台所を物色する私、それを引き剥がそうとする幽香、無視して奥へ進む私、溜息を吐く幽香、灰皿を見つけた私、声を漏らした幽香。
「……幽香、貴女、煙草なんてやるの?」
「……あ、いや、それは鈍器よ」
「鈍器」
 いや、今回のは多分本気じゃあない。目が泳いでいる。幽香ってあんまり嘘を吐くのが得意じゃないなあ、と思う。冗談や皮肉は結構な頻度で飛ばしてきても、本当に自分の都合の悪いことを覆い隠すような嘘を吐くことに慣れていない。多分そういう時は相手を殴り倒して記憶を飛ばすことにより対処していたからだと、私は推測する。
 本人に言ったらそれはそれで殴られそうなので、真偽を確かめてはいないけれども。
「鈍器なら他のでもいいでしょ、なんならサボテンで殴っても相手はかなりのダメージよ」
「……確かに」
 折れるの早いなあ……
「ってことは」
「うん……まあ、でも、たまによ? アリスいるときとか会う日とかは吸わないし……」
 認めた。かなり俯きながら。しかしそれにしても、なんで隠していたんだろうか。確かに私は煙草を嗜まないけれども、私が嫌煙家であるとは限らないだろうに。
「別に隠すことなかったんじゃないの? 私、別に嫌煙家ってわけでもないし」
「あーうん、それはあんまり心配してなかったんだけどね」
 幽香はとてもバツが悪そうに口角を少しだけ上げていた。しかし、それを心配していなかったというのであれば、いったい何を心配していたというのであろうか。
「咎められそうだな、って思って」
「あー、それは、ある。無理にやめろとは言わないけれど」
 煙草の体への悪影響を挙げていけばキリがない。肺は黒ずむし息は濁るし身体は朽ちる。どうしてそんな毒を自分の肺に入れて喜べるのだろうか。だがまあしかし、自分がやらないものを無条件に否定するのは少しばかり私の哲学に反するというか、そんな柄でもないというか、自分の説得力と押しの強さに関しては全くもって自信がないというか。
 あんまり嗜んでほしくはないけれども、それを叱るような立場でもない。
 そういうのは閻魔の領分である。
 私もどっちかっていうと怒られる側だし。友達を作れって。うっせえお前もいねえだろって言いそうになったけれど、私は淑女だった。
「まあ、わかってるんでしょ、体に悪いって」
「そりゃあ。でも妖怪だし、少々体に悪くても大丈夫でしょ」
「毒は鬼にも等しく毒よ」
 ぐ、と幽香が一歩退いた。うーん大妖怪がこんな感じなのは私としては楽だしやりやすいけれども、いいのかそれで。普通にタイマンなんかやったら価値の目は絶対にないはずなのだが、相性がいいというか、じゃんけんに勝っているようというか、どうも幽香は私に対して力を発揮しにくいらしい。
「……で、その煙草はどこ?」
「捨てる気?」
「別にやめろって言ってるわけじゃないって言ってるでしょ」
 台所のいろいろな棚を開けたり閉めたりしながら幽香に問う。ライターは一つ目の引き出しから早々に見つかった。幽香の苦い顔は無視して、台所を物色する。
 少し、いいことを思いついた。
「……そこの、一番右の、上の段」
「オウケイ……ふーん。なるほど」
 煙草のパッケージ。恐らく最初は外来品だったのだろう。河童のロゴが入った木箱が見つかった。既に何やら薬臭い棒状の煙草を一本咥えて、これまた河童が作っているらしいライターで火をつけようと……した、その時、幽香が私の手を押さえてそれを制した。何をしているのだ。予告なく手を握るんじゃない。私の計画を邪魔するでない。
「何、考えてるの?」
「見ればわかるでしょう、煙草吸おうとしてんのよ」
 あたまおかしくなったんじゃねえの、と言わんばかりの幽香であるが、その気持ちもわかる。たった数分前に自分が咎めようとしていたことをそのまま行おうというのだから、はっきり言ってあたまおかしい。自分の言ったこととやっていることの整合性が全くない。それに関しては意外と多くの者が知らず知らずのうちにやらかすことでもあるのだけれど、ここまであからさまになってくると最早ボケ老人である。
「……わからないわね」
「文句がないなら手を放してくれるかしら」
 さて、初めての煙草だ……緊張するが、何事も挑戦だと思う。火をつける。このライターの感覚すらも相当に久々である、魔法使いは魔法に頼りがちなのだ。料理も専ら魔法によって済ませてしまう私には、その小さな火にちょっとした恐怖すら覚えてしまうのであった。
 じゅっと先端が赤く光って、私は目出度く喫煙者となった。 
「……うぇ、ごほっ」
「何してんのよ」
 まずい。なんだこれ。それでも我慢して、喫煙者がよくやるように、右手の人差し指と中指で煙草を挟んで息を吐いた。煙が口から出てくるのが面白かった。そんなことも面白く感じるくらいには、私の頭は働いていなかった。
「……めっちゃまずい」
「そらそうでしょうよ」
「なんでこんなんやってんのよ」
 悪態をつきながら、それでも私は煙を吸い込んだ。咽るのをなんとか押しとどめて、明らかな毒を体内に溶け込ませる。血液に煙を染み込ませる。やっとこさ少し落ち着いてきて幽香のことを思い出し、幽香の方を見遣った。
 焦っているように見えた、落ち着かないといった風に体を小刻みに動かして、いろいろと考えているような素振りを見せている。
「どうしたのよ、自分も吸いたくなった?」
「いや、そういうわけではなくて……」
 そこで暫く言い淀んで。
「健康が心配で……」
「どの口がそれを言うか」
 自分がさっきまで少々体に悪くても大丈夫だとか言っていたのに、私がそれをやったら心配とか。
 なんだ、私は弱いといわれているのか。そりゃあ幽香よりは絶対に弱いだろうけれど、どうも気に食わないな、それは。
 人間であることを捨ててまで魔女になって、寿命と強さを手に入れて、それでも幽香には脆弱な子供のようにしか映らないのか。
「どうってことないわよ、私だって妖怪みたいなものなんだから」
「……そうなのかしらね」
「貴女が思っているほど、私は弱くな……ごほっ」
「本当にそうなのかしら」
 やっぱり咽る。苦しさはかなりのものだし、やってみてもこれに依存してしまう気持ちは理解できそうにない。痺れと眩暈がするだけではないか。しかしこうすることでなんとか正常に生きている人間なんかがいることを考えれば、もしかすると痺れと眩暈で自分の頭を鈍くしないと疲れてしまって動けないというような感覚なのかもしれない、なんてことを、ふと思った。
 幽香は相変わらず、不安そうに私の方を向いている。全く、野暮な妖怪だ。
「ほら、幽香も吸いましょうよ」
 そう言って、私は木箱の中からもう一本棒を取り出して幽香に投げてよこした。それを掴んで、諦めたように笑って、それを咥えた。ライターをよこせ、と左手を差し出してきたのを無視して、私はまだ握っていたライターをそのまま点火して幽香の口元の煙草に近づける。驚いたように目を見開いた幽香だったが、数瞬して、幽香は目を閉じた。
 煙を吐いて、幽香は呟く。
「体調が優れないならやめなさいよ?」
「まだ言うか、もう私だって大人なんだから」
 睨んでやる。
「大人、ね」
「身長だって私の方が高いし」
「それは関係ないでしょ」
 じと、という視線をこちらにしばらくぶつけてから、私の後ろを通り抜けて奥へ進むと、窓を開けた。そりゃあそうか、窓を閉めたままだと部屋中に煙が充満してしまう。窓の外には、美しい紅葉。気付かなかったが、ここからなら四季の移り変わりだとか、自然の美しさだとか、そういったものをしっかりと慈しめる。
 あとダンシングフラワーも見える。
「ま、あの頃のアリスからは、かなり成長したように思うけれど」
 窓を開けたことによって吹き込む風に幽香の髪が揺れて、煙草を咥えたまま外を眺めるその姿が、とても恰好良くて、綺麗に見えた。
 幽香の上には、到底いけないのだろうと思う。
 私は大人になった。魔界にいた頃の自分とは、相当変わった自信があった。恐怖の対象でしかなかった幽香に近づいたような気がしていたのだけれど、どうやらそれはまだ先の話らしい。ぼんやりとした今の自分の感覚も、幽香に近づきたかったという、それだけのものなのだろうか。
 灰皿に灰を落として、煙草をぐしゃりと押し付ける。振り返る幽香に、満足気な表情だけを見せた。頭は痛いし舌も痺れていたけれど、具合が悪くなっているということは、見せたくなかった。それが例え見透かされていて、意味がないとしても。
「さて、本題の植物を貰って帰りましょうか」
「そうね、忘れてたわ。どのサボテンにする?」
「引っ張るなあ」
 少し笑って、台所を出た。それを追いかけるようにして、幽香も煙草を捻じ消して部屋に出る。部屋の数個の植木鉢、どうやら室内でわりと簡単に栽培できるような植物のようだ。
「気に入ったのを選ぶといいわ」
「そうね、幽香の一番好きな花を頂戴」
「ふうん……」
 幽香に任せることにしよう。植物のことなら幽香に任せるに限る。あとは暴力に関することも。それに関しては私が彼女に要請することなどないように思うけれども。
「じゃ、これかしらね」
 幽香が持ってきたのはピンク色の花。これは私でも知っている花だ。コスモス。漢字で書くと秋桜、日本においては秋の花と言えばコスモスであろう。
「秋と言えばこれよね」
「ベタね」
 けれど、やっぱりベタなもの、人気なものというのはそれなりの理由があってその座に君臨しているのであって、その花の美しさを誰もが認めたということであろう。
「綺麗ね」
「綺麗じゃない花なんてないわ」
 感心する私と、哲学を炸裂させる幽香。あのダンシングフラワーも綺麗なのかなあ。センスが少し違うようだが、それも私の人形への執着みたいなものだろう。煙草を好きな者と嫌いな者がいるのと同じである。
「そりゃあそうね……さて、ありがとう、早速家に飾ることにするわ」
 植木鉢を受け取って、玄関へ向かう。早く飾りたいというのも当然だが、早く帰って水でも飲みたいというのもまた私の心情の多くを占めていた。
 頭が、まだふらついている。吸い終わって暫く経つというのに、未だに体には異常が出たままだ。こんなもの、まともな頭をしていれば二度とやりたくないに決まっている。けれど、今は煙のせいで頭がうまく働かないのだ。ぼうっとしたまま、振り返って、へらへらと。

「また、吸いに来るわ」
「せめて吸った分のお金は置いていきなさいよ」

十六作目です。倫理病棟です。おはようございます。未成年です。
ちなみに僕は重度の喘息を持つため、喫煙者が近くにいると肺が爆発して最悪の場合死に至ります。
倫理病棟
http://twitter.com/byo_ri
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コメント



0.440簡易評価
1.90奇声を発する程度の能力削除
二人のやり取りが良かったです
4.80名前が無い程度の能力削除
こういう関係の二人もいい。
5.100名前が無い程度の能力削除
とても好かったです。喫煙に後ろめたさを感じる幽香と、そこまで気にとめてないアリスのやり取りが好きでした。
軽妙な地の文も、読みやすい雰囲気を醸し出していて良です。
7.100名前が無い程度の能力削除
大人のマネをしたい時もあるさ
素敵な関係です
9.90とーなす削除
面白かったです。
正直言うと最初はこのノリがあまり得意ではなかったんですが、いつのまにか癖になってしまっていた。

> 「いや、これは鈍器ね」
> 「鈍器」
> 「でも棍棒や釘バットを持ち歩くのってあからさますぎるでしょう?」
> 「ファッショナブル鈍器」

このやり取り好き。
14.100名前が無い程度の能力削除
アリスがなんちゃって不良になってしまった
16.80名前が無い程度の能力削除
二人のなんとなく気の抜けたやり取りがよかったです。
煙草の煙は臭いですよねぇ。
17.90爆撃!削除
タバコを道具にした、妙に日常感のあるワンシーンを切り出してきたような描写がよかったです
幽香さん、タバコも栽培できそうだなあ