Coolier - 新生・東方創想話

人魚姫じゃない

2015/09/18 03:11:03
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「泡になって消えてしまえるなんて素敵だと思いませんか?」

湖の畔に腰掛けるわかさぎ姫は恍惚と絶望の入り乱れる面持でそういった。




「誰にも気が付かれなくたって、泡になれば…空気になれば彼の体の中で一つになれるのです。彼が生きる上で必要不可欠な呼吸という行為で、私と言う名の空気は彼の体を駆け巡り、彼が1秒でも長く生きるための手伝いが出来るのですよ」


わかさぎ姫は自身の尾ひれで水面を強く何度も叩き、ゆらゆら水面へ浮かび上がってはぽこりぽこりと音を立てて消えていく泡を少しだけ楽しそうな顔で見つめる。そして水面を叩いた余波で出来た波紋を眺めながらまた口を開く。




「嵐の中この湖を船で渡ろうとする人はいないわ。この湖でおぼれた誰かを助けたとしても、こんな私を好きになってくれるなんて事もきっと無いの」


丁度真上にある太陽がわかさぎ姫の鱗と、美しい深海の様な蒼い髪をきらきらと輝かせる。
聞き手である湖の氷精は彼女の為に湖を凍り付かせない程度に氷の羽を揺らし冷気を散らす、腕を組み眉間にシワを寄せながら目の前のもわかさぎ姫が口を開くを待った。


「私の事を心配してくれるような姉達はいませんし、声と引き換えに私のヒレを足にしてくれるような魔女はいないわ。髪と引き換えに作られた魔法のナイフもないし、王子様の血で人魚に戻れるなんて都合の良い魔法も無いでしょうね。そして私には恋焦がれる王子様にナイフをたてる勇気もないの」


眩しいなぁとでも言いたそうに、わかさぎ姫が憂いの表情で目蓋を軽く伏せ、湖を眺めるように首を傾げつつ目線を下げた。
その姿は外の王子様でも、幻想郷の男でも、きっと誰もが胸を高鳴らせる様な美しい姿であったのだが、当の本人と目の前で眉間にシワを寄せたままのチルノには感じ取る事の出来ない儚く危ない美しさだった。
わかさぎ姫はこれ以上口を開かないだろう、そう感じたチルノはやっと口を挟めると独り言を胸の中呟き、すうっと息を吸い込んで今まで黙っていた時間を取り戻す様に大きな口を開いた。


「あんたの話はよく分からない!」


チルノは大きな声で言いきった。
わかさぎ姫はゆっくりと首をもたげ、憂いの顔と目蓋を軽く伏せたままチルノを見つめた。


「今のあんたのどこがいけないのかも分からない。あんたの話に出てくる誰かとあんたは違うんだから別に良いでしょ?ここでこんな話をするあんたはただうじうじしてるだけじゃないの?」
「そうともいうかもしれないわね」
「あんたの事よくわかんないな、この私があんたの事手伝ってあげるからどうなりたいのか言ってみてよ」
「どうなりたい…そう、そうね」




「ふつふつと泡の湧き出る煮えたぎる油に、この身を投げてしまいたいというのが今の気持ちよ」
初投稿です、わかさぎ姫について考えていた時に思いついた事を勢いに任せて書いてみました。
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コメント



0.100簡易評価
7.60名前が無い程度の能力削除
わかさぎ姫がなぜそういう思考に至ったのかが書かれていない声をかけたチルノの必要性
思ったことを書くというのは基本だが物語として作るのなら伝わるようにしなければならない
出出しの語りはよかったので60点