Coolier - 新生・東方創想話

優曇華の花を恋う

2015/08/22 00:13:45
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 真の花が欲しかった。

 偽りの花では無い。言の葉で着飾った枝では無い。

 現の世では到底見れない、美しい玉の枝を、私は人に贈って欲しかった。

 無理難題だとは分かっている。人が頭を悩ませるとも分かってる。

 それでも私は、真の花が欲しかった。



――竹取物語、一句抜粋――
「まことかと 聞きて見つれば 言の葉を
           飾れる玉の 枝にぞありける」

 ---

「結婚してください!!」
 広大な竹林に囲まれて、ひっそりと建つ永遠亭。鳥も鳴かぬ、音一つ木霊しない静かな屋敷の中で、求婚を請う男の声が大きく響いた。彼の前に座る私は、きょとんとして何も言う事が出来ない。
「こ、困ります!姫に贈りたい物があると頭を下げて仰るから、特別に取り計らったのですよ。こんな話をするとは、聞いていません!」
 横に控えていた、私の保護者もどき、八意永琳が口を出した。然し、その言葉など気にも留めず、男は必死に頭を障子に擦り付ける。
「一目ぼれしてしまったのです!どうか、どうかこの想い、受け取っては頂けないでしょうか・・・!」
 その不思議な熱意に、永琳も、優曇華も、竹林の兎までも、語気を強くして帰れと言えない。男の言う所によると、事の経緯は次の通り。
 以前、永遠亭に治療を受けに来たこの男は、客間で待っている間、好奇心で屋敷を散策してしまう。明らかに空き巣紛いなのだけれど、まぁそれは良いとして、散策をしている中で、彼は私を垣間見てしまったのだ。
 男曰く、あまりの美貌に固まっていた所、その人は自分に優しく微笑んでくれたのだと。私は・・・全く覚えていない。
 それから次の日、私の事が頭から離れない男は、仕事にも趣味にも手が付けられなくなってしまう。そんな日々が続いて、一週間程経った今日。男は求婚を決意したらしい。
「あの日から、貴方の事を忘れる事が出来ません。夢にまで貴方が出てきてしまう程です。それ程に、貴方を想っております。・・・私では、駄目でしょうか」
 畳の上に涙を溢して、涙声で男が言う。咽び泣いて頭を下げるその姿はまるで、慟哭している様にも見えた。そんな姿を見せられては、流石に一昨日来なさいとは言いにくいのか、月の賢者殿も動揺している。
 しかし、私は・・・蓬莱山輝夜は冷静だった。彼の眼前で、私は満面の笑みを呈する。幾百の男性を惑わしてきた、魅惑の微笑みだ。
「わかりました、では求婚を受けましょう」
 私がポロッとそんな事を口から溢すと、二人の表情が途端ガラリと変わった。
「姫様!?」
 永琳が酷い形相で私を見て来た。まるで、信じられないと言わんばかりに。そんな彼女とは対照に、男の表情からは歓喜がよく見て取れる。
「おお、おお!本当で御座いますか!ありがとうございます・・・そ、それでは早速、諸々の手配を・・・!」
 私は細いその腕を翳して、男を制す。
「ですが、一つだけ条件があります。求婚を受け入れるのは、その後です」
「条件、ですか?分かりました、何でもお引き受け致しましょう」
 答える男の返事は、威勢の良い物だった。願いを聞き入れてもらえて、飛び切り機嫌が良いのだろう。
 よろしい、それなら・・・同じく飛び切りの難題を提示しようじゃないか。

「天に」
 私が上を指差す。男が見上げるも、そこには真暗な天井しかない。
「天の先の、もっと先に、天の子が抱く緋色の剣があると言います。それを持ってくる事が出来たら、婚約を受け入れましょう」
「・・・へ?」
 間抜けな声を上げて、男が私を呆けた顔で見る。言い出した事の突拍子無さに、付いて行けなくなったのだろう。
 無理も無い。無理も無いが・・・この無茶難題位、私を求めるなら当然だ。
「冗談では、御座いませんよ?」
「そ、それは・・・難し、過ぎるのでは・・・」
 男は血の気の引いた顔で却下と言うが、その言い方は直接的ではない。私を失いたくないと言う欲と、現実の絶望感が対立して、結局どちらも捨てられずにいるのだろう。
 そこで立ち止まってしまう様では、私には届かない。彼の恋路に、終止符を打って差し上げよう。
「それが叶わないなら・・・仕方ありません」
 私はまた満面の笑みを男に見せた。きっとその時には、男にはその笑顔が、悪魔の微笑みにでも見えたのかも知れない。
「婚約の話は、お諦め下さい」

 ---

 あまりの難題に、男は了解とも無理とも答える事をしないまま、意気消沈で屋敷を出て行った。
 そして、男を見送ってから私の部屋に帰ってきた永琳は、思いもよらず表情が曇っている。折角、面倒な輩を退治してやったと言うのに、あんまり嬉しそうじゃない。
「あれは、あまりにも酷だったのでは・・・。嫌なら、嫌とそう仰れば・・・」
「あら、別に嫌では無かったわ」
「では、如何してあんな無茶を仰られたのですか」
「さぁ、何でかしらね」
 わざとあやふやにして、私は理由を語らない。別に、永琳が知らなくても構わないもの。
 私がこんな風に、永琳の小言に付き合っていると、部屋の障子が不意に開かれる。そこにはお茶を持ち、頭に兎の耳を付けた少女がいた。鈴仙・優曇華院・イナバである。
「お茶をお持ちしました。部屋の外まで、師匠の声が聞こえていましたよ。さっきの方の話ですか?」
 上座の私、そして下座の永琳の両方にお茶を差し出して、鈴仙は後ろに控える。文句の捌け口が増えたからか、永琳の鋭い目が私から鈴仙に移り変わった。
「ええそうよ。うどんげ、貴方も流石にあの断り方は無かったと思うでしょう?もしこれで、此処に変な噂でも付いて・・・治療の依頼が来なくなったりでもしたら!」
 険しい顔で永琳に迫られた鈴仙は、苦笑を呈してそれを受け流す。
「は、はは・・・そうなったら大変ですね。ですが、やはり両者の意思が一番大事なわけですし」
「けど、それならもっと言い方があったでしょう?あんな、無理矢理突き放す様な事はしなくても良いと思うのよ。ねぇ?」
 ふふん、甘いわね永琳。鈴仙は貴方に脅された位では、屈したりはしないわ。彼女は私の、一番の理解者なのだから。鈴仙なら、私の事を、きっと分かってくれるはず・・・。
 と、そんな期待を私は寄せていたのだけれど。

「た、確かに、少しだけ相手の男性は、可愛そうでしたね」

 甘い期待は、簡単に玉砕されてしまった。
「・・・」
 私の眉間の皺が、徐々に深くなっていく。そんな私の不機嫌に気遣う事無く、永琳は仲間が出来た事を無邪気に喜んだ。
「そうよね、やっぱり、言い方に問題があったと思うのですよ。ですから、姫様。もう一度あの方がお見えになった際には、一度、謝罪の一つでも・・・」
 そこで、永琳がぎょっとする。私の顔が、これまでに無い程に不機嫌を表していたからである。
「ひ、姫様・・・?」
 鈴仙が私の機嫌を伺って来る。然し、むしろそれは私にとって、今一番不愉快だった。
「出て行って」
「え?」
 鈴仙が聞き直すと同時に、私は二人の襟首を強引に掴んで、部屋の外へ投げ出した。
「出て行って!!!」
 そう言い残して、私は障子を閉じる。そして、障子の隙間部分を手で押さえて、開かない様にした。
「ひ、姫様!ご機嫌を損ねてしまわれたなら謝ります、腹を切ります!で、ですから出てきてください!姫様―!」
 永琳の情けない泣き言が、外から聞こえて来る。ガタガタと障子が揺れるが、私の腕力に彼女が敵うはずもない。
 それからずっと、私は部屋の中で篭っていた。同じく、永琳はずっと部屋の外で私に詫びたり私を呼んだりしていた、気がする。正直興味が無くて頭に残ってない。
 私は鈴仙に裏切られた事で一杯だった。裏切られたなんて言い方は大袈裟だけど、少なくとも失望はした。
「鈴仙なら・・・分かってくれると思ったのに」
 ボソリと一つ、そんな事を呟いてみる。口にしてみると一層苛々して、我慢ならなくなってきた。
 如何して鈴仙は、私の気持ちを理解してくれなかったんだろう。別に永琳とか赤の他人になら、分かって貰えなくても仕方ないと思う。けど、鈴仙だけは違うと信じてた。
 私がただ、我侭であんな事を言わないって、分かってるはずなのに。
「・・・ああ、ムカムカするわ」
 部屋の中で一人になってから、かれこれ五時間位経っただろうか。そこで私は、外から聞こえていた雑音が消えたのに気が付いた。
 そおっと外に出てみると、そこには部屋の前で倒れている永琳がいる。疲れて寝てしまったのだろう。何にしても好都合だ。
 私は廊下で寝る永琳を避けて、廊下の先へ歩いて行く。向かうは玄関、持つべき物は何も考えていない。
「こんな家、出て行ってやる」
 私の常習、家出である。機嫌が悪くなると、私は何時も屋敷を抜けて何処かへ行こうとする。
 手持ち無沙汰のまま、私は玄関から屋敷を出て行く。滅多に外へ出ないからこそ、その時の開放感は何と言うか、とても気持ちが良い。
 しかし・・・何時も、直ぐに後悔するのだけれど。
 滅多に外へ出ないからこそ、私は竹林の地理を全く把握していない。だから家出をする度、この広大な竹林の中で迷う事になる。今回も、それらの例に外れなかった。
 険しい道を、運動不足の足で進んで行く。出口が何処か分からず歩き、一方的に体力だけが喰われていった。

 そして歩き始めて、小時間して。
「もう・・・無理・・・」
 竹林の一点で、私はへたり込んだ。いつも通りである。
 高い竹の更に遠くの空を見上げて、私は一つため息を付いた。
「はぁ・・・。家出なんて、するんじゃなかったなぁ」
 これも毎度言ってる事だけれど、やはり後悔先に絶たず。今頃浅慮を反省しかけたその時。
『少しだけ相手の男性は、可愛そうでしたね』
 その鈴仙の言葉を思い出して、腹の中がまたムカムカし出した。私より、相手の男の方が大事だとでも言うの?
 可哀想なんかじゃない。だってそれ位で折れてしまう様な恋なら、きっとそれは本当に愛してた事にはならないでしょう?
 それなのに・・・皆、私が悪いと言うんだ。
「・・・あの人達も、そうだったよ」
 遠い昔、私に愛を囁いてきた、数多くの男達。彼らもまた、最期は私を罵って帰って行った。
 かつて私が、穢れた世で生きてた頃。そこでも私は、人を難題で試して、愛の程を知ろうとして。
 同時に愛に、裏切られた。

 ---

 都に突如現れた、類稀なる美貌を纏う姫。三室戸斎部秋田はその姫に、なよ竹のかぐや姫と名前をつけた。
 それが私、蓬莱山輝夜だ。
 美しい女、琴の上手な女、綺麗な声の女に、当時の男達は目が無かったから、私を放っておく事は当然しなかった。
 毎日の様に、私へ愛を囁く手紙が贈られる。幾人もの男が、屋敷の外で私の姿を垣間見ようとする。異常な程に人が私を求める事が、私はとても嬉しかった。
 けれど、同時に知っている。男の心は、移ろいやすい物だと言う事を。沢山の恋物語が、私にそれを教えてくれた。
 きっと何時か別れてしまう仲なんて、本当の愛ではない。本当に好きだと思っているなら、それがたとえ火の中水の中。そう、たとえ嘘だとしても、本当に出来るはず。幼い私は、そう信じて疑わなかった。
 だから、無茶難題を人に押し付けたんだ。
 石造皇子、倉持皇子、阿部御主人、大伴大納言、石上中納言。私に求婚を申し入れた中で、一番鼻が長くて鬱陶しい、公達の五人。彼らに私は、それぞれの難題を提示して見せた。
 彼らが持ってきたのは、どれも期待はずれの物ばかり。幾ら待てども、誰も私の期待には応えてくれない。
 けれど、彼だけは違った。倉持皇子だけは、私の期待に応えてくれた。
「約束の、優曇華の花を持ってまいりました」
 私はお爺さんの抑える手も払って、彼の下へ走った。彼の手には、紛れも無い蓬莱の花が・・・玉に飾られた枝が。
「・・・約束を、果たしてくれたのですね」
 歓喜で、私の瞳から涙が零れる。遂に、見つけた。私は本当に愛してくれる人を見つけた。本当の愛を、見つけられたんだ。
 ・・・そう、思っていたのに。
 玉の枝の鉢が、私の手に渡される時。
 それが私の手から零れた。そしてそれが、地に触れた瞬間。

 蓬莱の玉の枝が、砕けて散った。

「・・・え?」
 呆然とする私と、青ざめる皇子。そんな私達に向けて、何処からか声が放たれる。
「倉持の皇子は此処におわしますか!」
 私達の目が外に向けられる。その先の庭には、取り押さえられながらも前に出んとする、職人風貌の男性がいた。部屋から出てきた皇子を見て、男は続けて大声を出す。
「蓬莱の玉の枝製造による報酬を、未だ受け取っておりませぬ!!」
 その報せを聞いた皇子は、未だ青ざめる顔を引っ張って、逃げて行った。
「こらぁ!騙すとは不届き千万!!」
 皇子を罵る、お爺さんの声がする。
「是非報酬を!報酬を!!」
 必死に仕事の報いを請求する、男の声がする。
 どれも私には、聞こえていなかった。私は震える体で、砕けた花の欠片を拾う。
「・・・壊れて、しまった、の・・・?」
 私の欲しかった物が・・・真の愛の証明が、砕けてしまった。結局そこに、愛は無かったのだ。
 失望と悲しみに打ちひしがれて、私は一人、啜り泣いた。
 愛に裏切られた事が、ただ悲しかった。

 ---

「・・・変わらないわ」
暗く蒼い天を仰いで、私はそう呟いた。変わらない、彼らの目も、永琳達の目も、何一つ変わらない。誰もが私を、悪魔だ鬼だと罵って来る。
私の事を、誰も理解してくれない。

『・・・貴方は人殺しだ!火鼠の衣なんて、存在しない物を所望して、私たちを破滅させたかったんだろう!』

 違う、そんなんじゃない。

『あの女は悪魔だ、鬼だ。近寄ってはいけない、あの女は綺麗な美貌を纏って、儂らを陥れようとしているのだ。実際儂は、奴のせいで竜神様に殺されかけた。最初から、儂らなど相手にしていなかったのだ』

 そうじゃない、私はただ・・・。

『こんな恥をかかされたのは初めてだ。蓬莱の玉の枝を持って来いなどと、初めから勝てないとわかっている勝負を提案して、私を辱めて。それで貴方は満足なのか?』

「違う!私は、ただ・・・!」

「姫様・・・?そこにいらっしゃるのですか?」
 ハッとして後ろを見る。そこには何時も見慣れた顔が・・・私の、大切な人がいた。
「・・・鈴仙」
 返事をすると、鈴仙は草木を掻き分けて此方に歩いて来た。首筋に光る汗を見ると、随分走らせてしまったらしい。
「全く・・・皆、心配していたのですよ」
「・・・ごめんなさい」
 時間が経って、家出をした短慮には反省した為、私は素直に謝る。そんな私を見てか、鈴仙はそれ以上の追求をしない。
「反省をして下さったなら、良いのですよ。さぁ、こんな所にいたらお体が冷えてしまいます。屋敷へ、帰りましょう?姫様」
 鈴仙が私に背を向けて肘を付く。
「・・・うん」
 疲れきった私は、差し出された背に身を任せた。家出をしたら、何時もこうして鈴仙におんぶをしてもらうんだ。鈴仙が体を起こし、ゆっくりと前へ歩いて行く。そうして私達は、帰路に着いた。

 後ろに乗せられる私は、複雑な心地のままその背中にもたれかかっている。鈴仙に迷惑を掛けてしまって、申し訳なく思う反面、やっぱり庇ってくれなかった事はムカムカする。
 そんな二つの気持ちがせめぎ合って、話し掛けられない。すると、代わりに鈴仙が口を開いた。
「・・・如何して、あんな無茶を仰ったのですか?」
「・・・」
「深い考えが、あったのですよね?」
 ああ、やっぱり鈴仙には、分かるんだ。分かって、くれるんだ。
「そう、思ってくれるの?」
「勿論です、姫様は無意味に無体な仕打ちをなさる方ではありませんから」
 私は、涙が出そうな程嬉しかった。やっぱり、鈴仙は分かってくれていた事が。
「姫様の昔の話は、師匠から聞いています。前にも、こう言った事をなさったんですよね。・・・理由を、聞かせて下さいますか?」
 聞かれて、私は少し躊躇った。本当は、答えたくない。けれど、それが鈴仙の願いだからこそ、私は話す事にした。重い、重い口がゆっくりと開かれる。

「・・・生半可じゃあ、駄目なのよ」
 低い声で、ポツリと呟いた。鈴仙は反応を見せる事も無く、静かに傾聴してくれている。
「愛を囁くなんて、誰だって出来るじゃない。色んな人が私を愛していると言ってくれたけど、その愛のどれもが薄っぺらい物だった。私を本当に愛する人なんて、誰もいなかった」
 本当に愛してくれていると、信じた人も。その手に持つまことの花は、偽物だった。結局はその愛も、言の葉で飾った偽者の花だったのだ。
「それじゃぁ・・・駄目なのよ」
 私の目から波が零れて、鈴仙の襟がジワリと濡れる。必死に言葉をひねり出す私の声は、震えていた。
「わ、私は・・・それでも、探しに来て欲しかった。届かない様に、思えても・・・私を見つけて欲しかった・・・!」
 だってきっと、それが愛だから。私が欲しい、本当の宝物だから。

「私は、探しに行きます」

「!」
 目を見開いて、鈴仙の大きな背中を見る。振り返る鈴仙は、私に笑ってくれた。
「姫様が、何処へ行ってしまわれても・・・私は、何処までも探しに行きます」
・・・ああ、何てこと。悩む必要なんて、無かったのか。私の欲しい物が、こんな近くにあったなんて。
 私は、静かに泣いた。声を押し殺して、静かに泣いた。ただただ、嬉しくて涙が止まらなかった。
「あ、屋敷が見えてきましたよ。もう直ぐです」
 うっすらと前から光が差してくる。私たちの屋敷の、温かい光だ。
「また何時だって、一緒に帰ってきましょう?姫様」
 優しく囁く鈴仙に、顔を伏せて泣く私がコクリと頷いた。それを見届けると、鈴仙は光の先へ歩いて行く。


 真の花が欲しかった。

 偽りの花では無い。言の葉で着飾った枝では無い。

 現の世では到底見れない、美しい玉の枝を、私は人に見せて欲しかった。

 ・・・けど、本当に欲しい物は、そうじゃなかった。

 私はただ、誰かに本当の意味で愛されたいだけだった。

 たとえ私が、幻想の端に置いてけぼりにされたとしても。

 探し出してくれる人が、欲しかったんだ。

 きっとそれが、愛って事だと思うから。

「・・・ありがとうね」
 涙声で、私が呟く。鈴仙に聞こえたのか、如何か。そんな事、どうだって良い。
 私は、寄り添える人を見つけた。ずっと欲しがっていった、本当の愛を見つけたんだ。
 掠れる声で、愛しい人の名前を呼ぶ。私に愛を示してくれた、真の花のその名前を。


「優曇華」


初投稿です、風水と言います。知り合いの決起に便乗して参加させて頂きました。
姫と優曇華の話で、短編です。文章は稚拙で至らない所もあると思いますが、日々学習して行こうと思っています。宜しくお願いします。
風水
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コメント



0.390簡易評価
2.30名前が無い程度の能力削除
登場人物に他人のことを考えられる人間がさっぱり居ない。
5.無評価名前が無い程度の能力削除
天子が事の次第を聞いたら、男にいたずら半分に緋想の剣を貸し与えてもおかしくないような……
6.無評価名前が無い程度の能力削除
天子が事の次第を聞いたら、男にいたずら半分に緋想の剣を貸し与えてもおかしくないような……
7.70名前が無い程度の能力削除
輝夜は昔から難題で相手を弄んでいた、と言う印象が強いので、実は愛の証明としてそれらを要求していた、と言うのは斬新だと思います
ただ「無理難題」と「無茶難題」の差、と言うか表記揺れや、うどんは自分の味方だよね、と言う輝夜の思惑が破綻した時に「玉砕された」と記してあるような何か変だなあ?と言う文章と、結局男がどうなったのか放置されたままなのが気になりました
12.90名前が無い程度の能力削除
輝夜が純粋で新鮮でした。
欲を言えば、もっと描写が欲しかったかな。
13.90名前が無い程度の能力削除
愛の証明で無理難題をしていたという発想が斬新で面白かったです。
ただ、強いて言えば「天の子が抱く緋色の剣」は実際に幻想郷内にあるのでそこが引っかかりました。
話自体はとても面白く読ませて頂きました。
姫うどん、好きです。
15.100名前が無い程度の能力削除
輝夜の純粋さがいいですね。こういうパターンだってありですよね。とてもよかったです。