Coolier - 新生・東方創想話

お星さまじゃないまりさ

2015/07/08 01:30:05
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少~しだけ「乙女の魔法と光の魔法」を使っています。
読まなくてもそこまでの影響はありませんがお時間が許すのなら読んで下さればうれしいです。



「まりさ今日って七夕だよね」
「んー? あーっと」

読んでいた本を机に置き、壁に立てかけているカレンダーに目をやってみる。
今年の七夕は火曜日だ。
そして昨日は確か月曜日だったはず。
ということは今日は7日で間違いなさそうだな。
うん、隣に「7月6日」ってサインが書かれた紙も貼ってある。

「そうだと思うぜ。願い事は決まったか?」

七夕のことを教えて用意しておいた短冊をルーミアに渡したのが一週間前の今日。
笹の用意はすでに済ませてあるし後はルーミアの短冊をつければ完成ってぐらいに準備は進めておいた。
ただもともとが野良妖怪のせいかルーミアには物欲ってものがあまりないらしく結局その時には何も思いつかなかったみたいだった。

「うん。できてるよ。でも……」

たったった、と窓まで歩いていったルーミアはカーテンを開けた。
外は木漏れ日すら差し込んでおらず木々は水に濡れ青々と茂っていた。

「あー雨か」
「これじゃあ天の川もでないんでしょ?」

カーテンを掴んだ手を離し再び外が見えなくなる。
しかし気付いてしまうと色々と感づくことがある。
木々に水が落ちぱあん、とはじける音。
木々を避けて地面を濡らす音。
葉の先端に向かう流れるような音。
さっきまでは耳に残らなかった雨の音が急に耳元で聞こえ出してきた気がした。

「確かにこれじゃ今年は天の川を見ることはできなさそうだな」

まだ朝の8時だがこの勢いを見る限り今日はもうずっと降りっぱなしな気がする。
大雨ってほど大量には降らず、さりとてやみそうなほど頼りないということもない。
雨はまあまあ好きな方だけど今日に関しては少し厄介に感じてしまうな。

「このままだとおりひめとひこぼしが会えなくて、私たちのお願い事もかなわないんだよね」

ルーミアには「七夕は年に一度織姫と彦星が会える幸せな日で、その幸せにあやかって願い事をかなえてもらう日」と教えていた。
実際私もそこまで詳しく知らないから事実はどうあれ私たちの間ではこれが「七夕」ということになっている。
つまり雨のせいで水かさが増えて二人が会えないとなると七夕自体無意味になってしまう。
まーそもそも妖怪の願いも叶えてくれるのかとかこんな適当でも聞いてくれるのかとかいろいろ思うところはあったわけだが。

「そんな悲しそうにするなよ。なんだったら私が叶えてやろうか?」
「え、できるのそんなこと」
「ほら私って星の魔法を使えるだろ? だから私を星と見立てて願えばかなうかもしれないだろ」

結局のところこんなのは気分だ。
楽しければそれでいいし楽しくなけりゃ楽しくすればいい。
ようは宴会と似たようなものだ。
だから都合の悪いことは都合の良いようにしてしまえばいい。
ルーミアも、あーなるほどって感じてうなずいてるし。
それにしてもさすがに丸め込めやす過ぎだろ。
こんなんじゃいつか騙されてひどい目にあうかもしれないな。
まあそうならないように私が守ってやればいいか。

「それじゃちょっと待ってて!」

笑顔でルーミアは最近作った個室に向かっていった。
作ったといっても別に部屋を増設したわけじゃない。
ただ単に大量に散らかった本とか実験材料とかを掃除してたらいつの間にか部屋が一つできてたからルーミアにあげただけだ。
さすがにあの時は自分の蒐集癖に驚かされたな。

「お待たせ」

戻ってきたルーミアはさっきまで座っていた私と反対側だった席ではなく、私の隣に座った。
手にはこの間渡した短冊が握られている。
ただ、すぐには見せてくれなかった。
何となく気恥ずかしそうにもじもじと、あーだのんーだのとほおを染めて頭を抱えていた。
正直今すぐ抱きしめたい。
まったく、何なんだぜこのかわいい生き物は。
今この瞬間私が我慢できずに押し倒してしまったとしても誰が私を責められようか。
いや、誰も責められまい。
それぐらいかわいい。
ま、しないけどさ。
ルーミアの同意もないのにそんなことしたって楽しくないからな。
私はルーミアのことが好きなんだから、そんな自分勝手な思いでルーミアを振り回したくはない。
そうこう考えている内に決心がついたのかルーミアが私を見上げてプルプルと震えた手で短冊を渡してきた。
……そういえばどうやってルーミアの願い事をかなえてやるか考えてなかったな。
そもそも冗談で言ったようなことだからここまで真に受けると思ってもなかったし。
「人肉が食べたい」とかだった私じゃどうにもできないぞ。
それにルーミアはまだ字を覚えたてだから私が解読できるものになってるかも少し心配だな。
せっかく勇気を振り絞って渡してくれた願い事を「なんて書いてあるの?」なんてデリカシーのかけらもないようなこと言えるわけない。
……どうしようだんだんこの短冊を受け取れるのが怖くなってきた。
いや、でもここまで来たからには引き下がれない。
自分でまいた種なんだから自分で収穫してやらないと。
そんなこんな悩みながらルーミアの短冊を受け取って読んでみた。

『ずつとまいちとりつしよにりたり』

? なんだこれ。
予想に反して字は綺麗で読むのに何の苦労もいらなかったが内容がさっぱりわからない。

「どう……かな?」
「え? あ、いやえーとだな……」
まずい、ルーミアは私に返事を求めているんだ。
つまり私が叶えてやれることなのかもしれないってことだ。
考えろ、考えろ私。
何かルーミアが私に望むことを。

「か、叶うと思うぜ!」

結局かなりあいまいで無責任な答えしか返せなかった。
~ができるようになりますように、とかだったらこの返しでも問題ないはずなんだけど。
はたしてルーミアは満足したのだろうか。

「……ありがと、ちょっとチルノたちと約束してたから行ってくるね」
「あ、おいちょっと……」

私がとめる間もなくルーミアは外に出て行ってしまった。
まだ雨は降り続いている。
弱まりもせず強まりもせず、まるで天の川を増水させるためだけに振っているかのように。
願いを聞き届けられないようにするように。

「まずった。絶対失敗したんだ私」

一人取り残された家で私は絶望していた。
ルーミアに嫌われる。
それは最近の私が一番恐れているものだった。
それがまさかこんな形で再現されるなんて。

「早く解読しないと」

今すぐルーミアを追いかけたい衝動に駆られる。
しかし今ルーミアを捕まえても結局なんて書いてあるのか分からない短冊の内容をフォローすることができない。
関係の修復のためにもとにかく今はこれを解読しないといけない。
しかし焦る私の頭は「はやく、はやく!」と急かすだけで何も考えてはくれない。

「くっそ、分からない!」

私は短冊を近づけたり遠ざけたり、反対にしたり逆から読んでみたりといろいろしてみたが内容はちっともわからなかった。
そして、短冊を握りしめふと視線を変えてみるとカレンダーと1枚の紙が目に映った。
カレンダーはさっき日付を確認するときに使ったもの。
こんなものはどうでもいい。
しかし、その隣にある1枚の紙に私の視線は釘付けとなった。
それはルーミアが書いたものだった。

『まいち るーみあ まほう やみ さつさやなりす おおきなりす』

それは昨日ルーミアが書き取りの練習で使ったものだった。
最近私はルーミアに字を教えていた。
そして昨日その成果を試すためにテストをしてみたんだった。
私が言った言葉を書き取らせるっていう、私なら何も難しくないような内容だったんだけど。
どうも今まで字を使ってこなかったルーミアにとってはなかなかに手強かったようで。
結構な文字が間違って書かれている。
だから今日はその間違いを修正して教えなおしてあげようと思っていたんだった。
本当は問題は解いた後すぐに答え合わせとやり直しをする方が身に着くんだけど、ルーミアはもうこのテストだけでいっぱいいっぱいだったみたいで、
とてもそんなことできそうになかったんだよな。
しかし改めてみてみると結構間違い多いな。
たとえば「まりさ」が「まいち」、つまり「い」と「り」、「さ」と「ち」を逆で覚えていたり。
他にも小文字が大文字だったりと、まだまだ使いこなせていなかったり。
そこでふと私は視線をもとの短冊に戻してみた。

『ずつとまいちとりつしよにりたり』

私はすでに駆け出していた。




ルーミアの意図に気づいた後私は家を飛び出したわけなんだけど。
さて、あいつはどこにいるんだろう。
チルノと約束があるなんて言ってたけどいくらあいつが⑨だからってこんな日に遊ばないだろ。
でもそうなるとルーミアを追う手立てがなくなるわけで。

「……あーもうめんどくせえ!」

頭を使うのは好きなんだけどこういう焦らされながらっていうのは嫌いなんだ私は。
目的もなく飛び出したんならこの森からは出ないで適当にふらついてるだろ。たぶん。
それなら私の独壇場だ。
だてに人間最速を誇ってないぜ。




そんなわけで箒を飛ばして数分間。
意外と早く見知ったその後姿をとらえた。

「見つけたぜ! ってやば」
「へ? わああああ!?」

早く探しに行きたかったのに短冊の解読なんかで無駄に時間を使ってしまっていた私は、自分で思っているより全力で飛ばしていたみたいで。
さらにルーミアを見つけられたということもあって、私自身もう止めることができなくなっていた。
左右に旋回しようにも「魔法の森」と呼ばれているだけあって木々が邪魔して動けない。
このままだとルーミアに一直線でぶつかってしまう。

「っ一か八か!」

私は箒を離した。
当たり前のように私の体が宙に、それもものすごい速度で飛ぶ。
空中で回転しながら私は胸元から取り出した八卦炉で勢いを消すためにできるだけ多くのレーザーを放った。
少しずつ落ちていく速度と空気の抵抗を感じながら私は目標点、ルーミアのいる木にぶつかるように飛んでいった。

「わぷっ!?」

予想より柔らかい衝撃と悲痛な悲鳴と甘いにおいに包まれて私は不時着した。
……あれ?
なんで私ルーミアにぶつかってるんだ?

「いったあ~」

私の体はルーミアにしっかりと掴まれていた。
まるでボールをキャッチした時みたいに。
ってもしかして。

「ルーミア大丈夫か!?」
「あ、あはは。私だって妖怪だよ? これぐらいどうってことないよ。それよりまりさは?」
「わ、私は大丈夫だけど」
「そっか、よかった」

ルーミアを確認したくて体を動かそうとしたけど、背中にしっかりと回されている腕に阻まれて動けなかった。
ただ、声の調子からそこまでの被害はなかったのだと悟ることはできた。
私が木にぶつかる直前、ルーミアは私を捕まえようとしたんだ。
だから私はそこまで痛い思いをしなくて代わりにルーミアは私と木に挟まれてひどい目にあった。

「ひどい目なんて、まりさが無事だったら別に私はいいよ」
「でも痛かったろ?」
「まあそりゃあね。でも魔理沙思ったより軽かったしさっきも言ったけど私も妖怪なんだから大丈夫だよ」

私がばかやったというのに私の心配ばっかり。
ああ、私って愛されてるんだなあなんて思ってしまうの罰当たりなんだろうか。

「というかそろそろ離してくれないか?」
「……」

もう掴まえてる意味なんてないのにルーミアは私を離そうとしなかった。
それどころかさっきまでより強く抱きしめられた。
私を逃がしたくないというかのように。

「……ごめんまりさ! 私やっぱり魔理沙といたい!」
「へ?」

さっきまでとは打って変わって悲しそうな声色のルーミア。
腕にはさっきまでと変わらず力が込められている。
動けない私に雨とは違うものが降り注いできた。

「まりさが私といたくないってわかっていても私は……!」
「ちょ、ちょっと待てルーミア。話が読めないんだぜ」

なんでいきなりルーミアが泣き出したんだ。
それに私がルーミアと居たくないだって?
そんなわけあるか。
ルーミアが私のことを嫌うことがあったとしても私がルーミアのことを嫌になるなんてことは絶対にない。

「だって、まりさ、短冊見たとき、すごく、変な顔した」

しゃくり上げるルーミアなんて見たのはじめてだ。
いつも能天気で楽観的なルーミアが。
それも私のせいで。

「ち、違う! それは誤解なんだ」
「ご、かい?」
「その、言いづらいことなんだけど、実は最初あの短冊になんて書いてあるかわからなかったんだ」

へ? と涙で腫れた目で私を見つめてくる。
これはこれでかわいいなんて余裕があったら思えたかもしれないけど今の私にそんなものはなかった。
デリカシーだとか何とか言ってる場合じゃない。
ルーミアをなんとかなだめて誤解を解かないと。

「字が何個か間違ってたんだよ。私がちゃんと教えられなかったからだ。悪かった」
「でもちゃんと今ならなんて書いてあったかも、それに対するしっかりとした答えもあるんだ。聞いてくれるか?」

力が抜けた腕から逃れて私はルーミアの前に座りなおした。
多少服がぬれてしまうけど関係ない。
ルーミアにはこんな雨模様じゃなくて何もかもを照らす晴れでいてくれないと。

「私の力すべてでお前の想いに応える。叶えさせてくれ。だからそんな顔しないでくれ。お前には似合わないから」

戸惑ったようにルーミアは視線を泳がせたり腕をわたわたとしていたけどやがて、

「ほんと? ほんとに私、まりさと一緒に居てもいいの?」

と言ってくれた。
自信なさそうに、少し照れたように。
かがんだ私より少し下にある顔から上目づかいで。
そんな様子を見せられたらたとえ嫌だったとしても言えなくなるよ。
まったく、本当かわいい奴だ。

「もちろん。離れてしまったとしても、こんなふうに雨が降っていたとしても絶対にお前のところに飛んでいくぜ。私は人間だからな」
「! そうだね。まりさはお星さまじゃないもんね」
「そういうことだ。じゃ、帰ろうぜ。このままじゃ風邪ひいちまう」
「うん!」

ルーミアの手を引いて一緒に歩いて家に帰る。
よくよく見てみればここってこの前ルーミアに魔法を見せた広場だな。
……私もルーミアも無意識にここに引き寄せられたってことか。
まったく、どうあっても私たちは離れることなんてできそうにないな。

「どうしたのまりさ?」
「いや、私たちに天の川なんて現れないなって思っただけだよ」
「ふ~ん?」
「ハックション!」
「チルノちゃん大丈夫?」
「う~ん誰かがあたいのうわさをしてるな? まあ最強だから仕方ないね!」
「いや、こんな雨の中野球してるからじゃ。しかもなんで二人だけなの」
「細かいことは気にしない! プレイボーイ!」
「プレイボールだよ……」

5作目です。
間に合わせたかったんですが期末テストも七夕までという真にウザいスケジュールのせいで遅れました。
こんちくしょう。
ルーマリは2作目です。
一番好きなカップリングのくせに前作での絡みが少なすぎるせいかなかなかネタが思いつかなくて困ります。
次作は予定では前作「幸せは灯台下暗し」の別ルートになると思います。
良かったら期待していてください。
ご意見・ご要望などございましたらコメントしてくだされば愉しいです。

『ずっとまりさといっしょにいたい』
星ネズミ
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コメント



0.240簡易評価
5.100名前が無い程度の能力削除
とても良かったです
6.80名前が無い程度の能力削除
ルーミアと一緒に星観したら真っ暗で見えなさそうと思ってしまった。
ほのぼのした二人が可愛かったです。
9.無評価星ネズミ削除
5様
ありがとうございます!

6様
確かにそういう考え方もありますね。
かわいいと言ってくださってありがとうございます



コメント返信遅くなってしまい申し訳ございませんでした