Coolier - 新生・東方創想話

えーてる「秘密よ?」

2015/07/07 10:53:29
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 長く、永く。
 共に在り続けると、決めているからこそ。
 秘すべきことも、あるのだ。




*****





「輝夜」

 朝の光に、艶やかな黒髪が煌めく。

「輝夜」

 小さな呻き声が上がる。

「輝夜――……起きて」

 白い顔《かんばせ》に影を落とす、長い睫。
 それが、ふるりと震えて。
 ゆっくりと、持ち上がる。
 眠気から潤んだ瞳と、視線が交わった。

「ッ……」

 それは。
 何千回、何万回も繰り返した朝の一コマだ。
 その筈なのに。
 一瞬。
 ほんの、一瞬。

 呼吸を忘れる。

 しかし、それを決して気取られない様に。
 口角を上げて、囁いた。

「おはよう、お姫様」

 輝夜《私のお姫様》は。
 やわらかな頬を、ふにゃっ、と緩めて。

「おはよお、えーりん」

 寝起き特有の、舌足らずな声で、そう答えた。

「……ッ!」

 ずきゅーん。

「あれ? えーりーん?」
「……」
「ねえ、ったら」
「…………」
「どうしたの?」
「………………」

 心臓を撃ち抜かれた私は、10秒間の活動停止を余儀なくされたのだった。


(昨日も)
(今日も)
(きっと明日も)
(輝夜が宇宙でいちばん可愛い!)


 ――……絶対に、言葉にすることは、ないのだけれど。




*****



 長く、永く。
 共に在り続けると、決めているからこそ。
 秘すべきことも、あるのだ。



*****




「……ほら、せっかくウドンゲが作ってくれた朝ご飯が、冷めてしまうから」

 11秒目に再起動した私は、彼女の手を引っ張った。
 やわらかくて、私の手より、一回り小さい。

「んー……」
「ちょっ!? か、かぐッ」

 小さい、けれど。
 実は、私より、力は強かったりするから。
 引っ張られるまま。
 彼女の上に、倒れこむ。

「輝夜、いきなりなにを、」

 体重を、かけないように。
 彼女の頭の両脇に、腕をつく。
 
 顔が、近い。

「まだ、眠いの」

 吐息まじりの、彼女の囁き。
 前髪が、ゆれる。

「ね、いっしょに寝ましょ?」

 ――……下腹部が、ズクンと疼いた。
 自分が女で良かった、と。
 無理矢理浮かべた微笑みの下で、叫ぶ。

「……だーめ」
「あいたっ!」

 額をぺちっ! と叩いてやって。
 体を起こそうとすると。
 首に、腕が回った。

「輝夜」
「……」
「かーぐーや?」
「だっこ」
「……」
「連れて行って?」

 ああ、もう。
 溜息を吐きながら。
 お姫様の腰に、腕を回した。

 満足そうな笑い声が、耳をくすぐる。


(細い肩)
(折れそうな腰)
(それなのに、やわらかな体)
(何より大切な、私のお姫様)
(だから、他の誰にも、触らせたくない)


 ――……絶対に、言葉にすることは、ないのだけれど。




*****



 長く、永く。
 共に在り続けると、決めているからこそ。
 秘すべきことも、あるのだ。



*****




「うはぁー……」

 輝夜を抱いたまま、食卓に赴くと。
 ウドンゲが、額に汗を垂らしながら、形容しがたい声を漏らした。
 気にしないふりをしながら、輝夜を座らせて。
 自分も、その隣に座ると。
 先に座っていたてゐと、目が合った。
 
「……(ニヤニヤ)」
「……」

 なんか、すごいニヤついていた。
 
「……」

 そっ、と視線を逸らす。
 すると、横に座らせた輝夜の、輝く笑顔に捕まった。

「……(にぱーっ)」
「……」

 視線を逸らす、ことさえ出来ず。
 ウドンゲが配膳を終えるまで、しばし見つめあうことになった。


(天使とか)
(女神とか)
(兎とか)
(そういうの、全部混ぜたくらいの破壊力)
(いや、それ以上ね)
(目が離せない)
(だって)
(私は、宇宙で一番)
(彼女のことが、)


 開きかけた口を、閉じる。
 ――……絶対に、言葉にすることは、ない。




*****



 長く、永く。
 共に在り続けると、決めているからこそ。
 秘すべきことも、あるのだ。

 だって。

 ××だ、とか。
 ××している、だとか。

 そんなことを、伝えたとして。
 受け入れて貰えなかったとしても。
 この命は、永遠に続くのだから。


 もし、傍に居れなくなったら。
 どうすれば、いいの?



*****




 心頭滅却。
 仕事に打ち込んだ。
 今日は、なかなか忙しかった。

 夕食の後。
 縁側で、昇った月を見詰めながら、船を漕ぐ。

 ふいに。
 肩を引き寄せられて。
 温かな膝の上に寝かされた。

「お疲れ様」

 カーテンみたいに視界を区切る黒髪。
 その下で、一際眩しく映る、優しい笑みに。
 自然と、笑みを返して。

 伝えられない言葉の代わりに。
 精一杯の想いを乗せた声で。


「かぐや」


 ただ、その名を、小さく呼んだ。




*****



 長く、永く。
 共に在り続けると、決めているから。
 絶対に、××だなんて、言わないけど。
 その名を、何千、何万回でも呼びたいの。 


 ――……傍に、居させて。




*****




 閉じた瞼から。
 銀色の睫毛に、指をすべらせる。

「えーりん」

 名を呼ぶ。返答はない。

「永琳」

 小さな、寝息。

「ねえ、永琳」

 その耳元で。
 そっと、呟いた。


「大好き」 


(宇宙でいちばん)
(愛してる)




*****



 長く、永く。
 共に在り続けると、決めているからこそ。
 秘すべきことも、ある。

 ――……ある、はずだ。


うどてゐ「「このバカップルめ」」


 ご読了、ありがとうございました。
鬼灯
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コメント



0.760簡易評価
1.100奇声を発する程度の能力削除
素晴らしい!
3.80名前が無い程度の能力削除
ラブラブやで
5.100名前が無い程度の能力削除
シンプルかつ綺麗にまとまっとりますなぁ
7.90美尾削除
よかったです!
8.90非現実世界に棲む者削除
いいねえ。いつまでも愛し合えるって。ごちそうさまでした。
10.100名前が無い程度の能力削除
砂糖をぶっかけた作品
というよりは砂糖そのもの
13.100名前が無い程度の能力削除
おお甘い甘い
14.90名前が無い程度の能力削除
このどうしようもないバカップルめ(褒め言葉)