Coolier - 新生・東方創想話

リビングデッド

2015/06/16 05:08:51
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「ねぇ、死ぬことも老いることも無いってどういうことなの?」

……はぁ?
 思わず間抜けな声を上げてしまった私は、隣に座りながらそんな質問をしてきた少女の方へ視線を向けた。少女の名は古明地こいし。見た目こそ可愛らしい少女そのものだが、その実、瞳を閉じた覚り妖怪だという。くるりと丸い二つの薄緑色の目が、まじまじと私を見つめる。

「どうしたのさ、突然。お前らしくもない」
「んっとね、なんでだろ? なんか急に思い浮かんだんだよね」

これも無意識かな、と、はにかみながらこいしは加えた。こいつと話していると無意識とは便利な言葉だなとしみじみ思う。今日も今日とてこの少女はいつの間にか私の家に来て、こうして並んで話している。そして文字通り、気が付いたら目の前からいなくなるのだから。

「えっとな、そういったことは私なんかじゃなくて永琳や輝夜……あー、竹林の医者や姫さまに聞いた方がいいぞ?」
「や。私はあなたから聞きたいの」
「そりゃなんでまた」
「私があなたから聞きたいって思ったからよ」

 なんだそりゃ。
 お相手が輝夜だったのならここで一発フジヤマヴォルケイノなところだろうが、こいつ相手だとそういった毒気も抜かれてしまう。私はがしがしと頭を掻きながら言葉を絞り出した。

「そうだな……少なくとも生きている感じはしないかもな」
「死なないのに?」
「そう。『死なない』ということは決して『生きている』こととは言えない。生と死は必ずしもイコールで結ばれたりはしない。私はそう思うな」

 同じような話を、昔、輝夜ともしたことがあった。
 私たち『蓬莱人』はその魂に存在を定着させ、肉体を脱ぎ捨てた歪なサナギのようなものだ。魂さえ残っていればどこへでも肉体を生み出せる。だからどれだけ肉体を殺されようが、決して死ぬことはない。無論、魂さえ殺してくれれば跡形も無く消え去ることが出来るというものだが、生憎とこの幻想郷にそんな器用な真似を出来るような奴はいない。
 ではこうして死なないことは生きているといえるのか? 答えは恐らくNOだろうと、私は思っている。いつか読んだ書物にもあったけど、あれは確かなんといったかな……

「ああそうだ、『生ける屍(リビングデッド)』」
「『生ける屍』?」
「文字通り、死んでも生きたように動く死体のことさ。外の世界の書物にあるらしいが、話によってはそのまま意思を持つこともあるらしい。可笑しな話だよな。死んでいるのに生きている死体なんて」
「私見たことあるよ! いつかお寺のお墓で大きな茄子を齧っていたの」
「マジ? ていうか茄子かよ」

 大きな茄子を貪る生ける屍とは、昨今の幻想郷はなかなか面白いことが落ちているじゃないか。これはそろそろ私も流行に乗る日が来るかもしれない。竹林から出てみることも悪くないかも。

「でもその『生ける屍』と質問の答え、何の関係があるというの?」
 こいしが首を傾げた。
「不思議に思わないか? 『生ける屍』は死んでいるのに生きている。対して私は生きているのに死にはしない。死体は二度とは殺せない、私は一度も殺せない。ほら、同じようなものだろう? 私たち蓬莱人という存在は、蓋を開けてみればそんなものと同じなのかもしれないな」
「んー……んー?」

 意味が呑み込めてないのか、足をぱたぱたとばたつかせながら目をくるくると回していた。
 老いることも死ぬことも無い程度の能力なんて、本当にその『程度』の能力なのだ。動く死体と同じ『程度』の、そんなもの。

 そこでふと、私の中に疑問が浮かんだ。
「お前はどうしてそんなことを私に聞いたんだ?」

 ぴたり、とこいしの動きが止んだ。

「えっとね、道教? の仙人様? が死とはなんとかー、って言っていたのを聞いてさ。ちょっと気になったの」

 ひどくうろ覚えだった。そうやって思い出す素振りを見せている間にも、体は忙しなく動いている。いや、思い出しているように見えて実は何も考えてはいないのかもしれない。無意識とはきっと、そういうものだろう。

 しかし、道教の奴らか……
「自ら不老不死を望むなんて物好きな奴もいるものだ」

 吐き捨てるようにそう言った。
 永遠の苦輪に自ら身を投じるなんて、相当な被虐趣味を持っているのか、それとも相当な大馬鹿者か―――私のような。
 こんな枯れ果てた命に意味は無い。朽ちもしない命に価値は無い。殺せるものなら殺してみろ。
 こんな命、もし手放せるのならばそれこそ命すら賭けよう。

「ああ、あとね」

 思い出したかかのようにこいしが言った。
「ん、どうした?」
「昔ね、お姉ちゃんが言っていたの。死ぬということがどういうことなのか」

 ぱたりと動きを止め、その双眸でこちらを覗く。薄く光を湛えた瞳が、私の目を射貫く。



「死ぬっていうのはね―――心が、なくなってしまうことを言うんだって」



 ぞくり、と私の肌が粟立ったことを理解すると共に、こいしの、目の前の少女の瞳に闇が生まれた。
 その瞳を覗いているのは私のはずなのに、私がそのまま覗かれているような錯覚。心臓か、心か、はたまた本体である魂か。そんな私が私である根本であるなにかが、きゅっと手のひらに握られているような、そんな感覚。
 生まれてこのかた味わったことのないそれがもたらしたのは、幾年ぶりの未知への恐怖と、1300年来の死の感覚だった。

「……なんてね。驚かせちゃったかな?」

 そう言って笑った瞳が再び開かれた時には、闇はその姿を消していた。
 こいしはまた、楽しそうな笑みを浮かべている。
 底なしの深淵にも似た、空虚な笑みを。

「今のは、どういう意味だ?」

 気丈を振る舞い、声を絞り出す。単純にこの少女が放った言葉の意味を知りたいこともあったが、この動揺を悟られまいという感情の方が大きかったのだろう。片方のポケットに隠してあった右手には、不死の炎が不安げに揺れていた。
 そんな問いにも、こいしは楽しそうに答える。

「別にー? そのまんまの意味。といっても私にも分かんないんだけどねー」
 
 それに、またそのうち忘れちゃうからね。
 そう言ってこいしは、背を向けるとそのまま飛んで行こうとする。

「あ、おい!」
「じゃあねー、不死のお姉ちゃん。『生ける屍』の話、面白かったよー」

 また遊びに来るから、その時はまたお話を聞かせてね。
 私の制止を気にも止めず、こいしはそう言って私の視界からいなくなってしまった。
 もう一度、目の前からいなくなってしまってしまった存在の名前を呼ぼうとしたその時には―――……

「―――あれ、私は誰と話していたんだ?」

 ……―――その『なにか』のことを、もうすでに思い出せなくなってしまっていた。


 
まだ深秘録買えてねぇ\(^o^)/ なのでプレイ済みの方からすると違和感がすごいかもしれませんが、その辺りには眼を瞑って頂けると幸いです。。。

妹紅のもんぺに手を突っ込んで赤面されながら焼かれたい
イトマキ
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コメント



0.340簡易評価
3.20名前が無い程度の能力削除
話が薄いなぁ。
なぜこいしともこたんを組み合わせたのかの説明もなし。
リビングデッドの話もオチがなければ、作者の解釈もなし。
正直、なぜこの話を作ろうとしたのか理解に苦しむ。
4.無評価イトマキ削除
>3様
コメントして頂き、ありがとうございました
話が薄い……確かにその通りだとございます。次の作品では改善出来るよう、努力していこうと思います
5.100名前が無い程度の能力削除
不死者すら殺せる実力者がゴロゴロいる幻想郷の恐怖

私が貴方を死なせるから貴方はゾンビじゃないって言ってるようにも見えるし、心が腐っているからゾンビなんだよって言ってるようにも見える
こいしちゃんが妹紅に対してあんま自分を卑下すんなよあんま腐るなよと励ましている気がしないでもないし、余裕かまして超越者ぶってるんじゃねえよわたしでもてめえなんざ死なすこと出来るんだよ、もっと緊張感もってシャキッとしろやって喝入れた気がしないでもない

こいしちゃんが腐ってる上に超越者ぶって余裕かました生意気なやつがいたからおちょくってやったりビビらせたり馬鹿にしただけな気がしないでもない

面白かったです


6.無評価イトマキ削除
>5様
コメントして頂き、ありがとうございました
私が考えてもいないような背景をたくさん想像して頂いて……感無量です
重ね重ね、お礼申し上げます
7.70名前が無い程度の能力削除
薄味すぎて物足りないのがもったいない
雰囲気そのものはいいんだけど、もうすこし話のパーツに肉付けが欲しかったかな
10.50名前が無い程度の能力削除
物語の中のエピソードの一つ、という印象でした。
観念的な会話は、ともすれば双方に大きな影響を与えます。それはつまりパーツでしかなく、その先にある物語の展開を想像させます。
その会話劇のみで終わってしまうのは、せっかくのエピソードを殺してしまうことに他ならないでしょう。
ここから発展していくいくつもの展開を是非見せてほしいです。
11.無評価イトマキ削除
>7様
コメントして頂きありがとうございます
もう少し物語として形になるように書いていこうと思います
>10様
コメントして頂きありがとうございます
パーツだけ投げっぱなしになってしまっていますね……次の話の参考にさせて頂きます