Coolier - 新生・東方創想話

初夏の白玉楼

2015/05/03 23:46:39
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春も終わり、少しずつではあるが暖かくなってきた。
西行桜も、濃い緑の葉を風にざわめかせている。

「幽々子様ー、お昼ごはんですよー。」

「ふわあ。妖夢、何を食べるのかしら?」

「今日は暖かくて…少し暑いくらいですから、冷たいおうどんを作りました。」

「あら、それはいいわね。確かに暑いし、木陰で食べましょう。」


花見のように、いろいろと用意するのは食事を摂るだけには億劫なので、西行桜の根に座る。
煌めく木漏れ日が、地面をきらきらと明滅させる。


「いやあ、木陰は涼しいですね、幽々子様。」

「そうねえ。おうどんもおいしいわよ、妖夢。」

平和な時間が流れる。
この時間が、乾いた初夏の空気が、ずっと続けばいいと、妖夢は思った。

「あ、幽々子様。喉、乾きませんか?冷茶でも入れましょうか。」

「そうね…ありがとう。二人の分、入れてくれると助かるわ。
妖夢も喉、乾いたでしょう?」

「すいません…ありがとうございます。」

妖夢が少し離れた縁側に小走りしていく。
幽々子には、長年連れ添ってくれた従者の考えていることはお見通しのようなものだ。


少しして、妖夢がお盆を胸に抱えて歩いてきた。
二人の分の冷茶が入った湯のみが乗っている。

「やっぱり、暑い時は冷たいお茶ね。体に染み渡るわ。」

「そうですねぇ。そうだ、こんな話を知っていますか。」

「どんな話?」

妖夢がこんな話の始め方をするのは珍しい。
いつもこういった形で話を始めるのは幽々子の方なので、少し気になった。

「冷えるということは、熱を奪う、つまり、熱の逆、負を与えるらしいですよ。」

「らしいって、誰かから聞いたの?」

「この前も、こんなよく晴れた日があったじゃないですか。
その時に、紫さんがお見えになって…。」

なるほど、紫から聞いたのなら、妖夢からこの手の話、いや、価値観のようなものが出るのも頷ける。
ならば、その先はどうなっているのだろう。

「それで、妖夢はどう思ったの?」

少し、意地の悪い質問になってしまっただろうか。

妖夢が答える。

「とても、よい考えだと思いました。
冷やすということは、氷を温めることなんですね。」

妖夢にも、物事をしっかりと見る力が付いてきたらしい。
主として、従者が育っていくということが、誇らしく思える。

もうすぐ、幻想郷にも雨と夏が訪れる。
乾いた風が、そのことを告げているようだった。

幽々子も、このからりとした空気がずっと続けばいいのにと思うのだった。

終わり
今回は、妖夢と幽々子で一本書かせていただきました。
妖々夢と言えば冬、春みたいなイメージだったので、最近暑いしいい感じのギャップが出てうまく行くのではなかろうか。
といった感じで、最近の気候、初夏の白玉楼で書き上げました。今日マジ暑い。

補足
妖夢が冷茶を勧めるすこし前までは、視点が妖夢だったのですが、
妖夢がお茶を取りに行ったくらいで、視点が幽々子に変わってしまっています。
これは、途中で気づいたのですが、「〜初夏の空気が、ずっと続けばいいと、妖夢は思った。」
の「妖夢」のところ、これを「幽々子」に変えればすべての視点が幽々子になるのですが、
最初の会話文が妖夢から書いている、ここを変えてしまうと自分が納得行かない、といった理由から、
「〜初夏の空気が、ずっと続けばいいと、妖夢は思った。」と表記させていただきます。

補足の補足
妖夢がお茶を入れに行ったことによって桜の木の下に残った幽々子に視点が写ったと解釈することもできます
山椒
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コメント



0.130簡易評価
1.20名前が無い程度の能力削除
小学生の作文みたいな文章でした。
2.10名前が無い程度の能力削除
妖夢の視点だろうが幽々子だろうがさすがに冷やすということは、氷を温めることなんですねにはならんだろう?
3.70名前が無い程度の能力削除

氷で対象を冷やす時、それは対象から氷に熱を移動させることになる
だから氷で冷やすということは氷を温めるということ

初夏の空気感が伝わってきますね

熱にまつわる問答と妖夢の成長のくだりはもう少し長く展開したものを読んでみたい気がしました
4.40非現実世界に棲む者削除
西行妖ってずっと枯れ木のままで葉とかもつかないんじゃ・・・
もう少し内容を膨らませてほしかったです。
9.80名前が無い程度の能力削除
朗らかでいいですね

何気無い日常に価値観や認識が凝縮されるというのが自分の持論で
これは平和ないい日で幽々子もいい主なんだと思いますが穿った見方をすると幽々子はこの話で妖夢の成長を感心してしまう程妖夢を馬鹿にしてるわけだし妖夢からしたら何気無い会話如きで人格を測られたわけで
多分幽々子は一般的には寛大ないい主でこの話が平和な幸せな時間の話である分なんというか
大人の子供に対する距離感というか下に見られたものに対する冷酷さというかそういうものを感じます
それが悪いことなのか意味すらない当然のことだと感じるのかは人次第なんでしょうか?多分その時その時の状況や立場で変わってくるでしょうが