Coolier - 新生・東方創想話

私は本である。

2015/04/17 00:50:20
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「お帰りなさい」
見覚えのある光景。この薄暗さ、私は帰ってきたらしい。
ヴワル魔法図書館。
 私はその中心の小さなテーブルの上に、広げて置かれていた。
「フン、短気で悪かったわね」
 パチュリー氏が口を曲げて言う。
いや、実にナイスタイミングだった。流石である。
「散々、言ってくれてるようじゃないの。死蔵なんて、心外だわ」
 しかし、他の本たちもそう言っているぞ?
「死蔵じゃないわ。いずれ、私が読むもの」
デザートのレシピ本もか?とてもデザートを作って楽しむような風体には見えないが?
「うるさいわ。それもいずれ作るのよ!」
ハ!どうだか。似合うエプロンがあればいいが?
「フン、言ってなさい。それにね、死蔵死蔵というけれど、あなた達をここに保管するのだって、ちゃんとした理由もあるのよ?」
 ほう、何だそれは?
「全ての本、活字とその記憶は、必ずどこかに保管されてなきゃいけないもの。なぜなら、本には人の歴史、文化全てが詰まっている。例えただのレシピ本でもね。一つだけならただのレシピ本でも、あらゆる種類のレシピ本が揃えば、それは立派な人の歴史の一つになる。少なくとも私はそう考えるわ」
 その保管場所がここなのだと?
「そういうこと。あなた達は失われてはいけない存在。他の物とは違う。本と物は違うのよ」
 君が私達のことが大好きなのはよくわかった。
「単なるエゴとか言われてしまえばそれまでだけどね。でもまぁ、それはそれよ」
彼女はにまりと笑い
「これで、やっとあなたが読める。楽しみにしてたのよ。今日一日」
 それは光栄だ。
「だって、変に特殊な本なんですもの。性格がひねくれているのはそのせいかしら?」
ほっとけ。
「本当にあなたを読むためには、まず下ごしらえをしなくてはいけない。それが、あなたの隠された千年の記憶を読む鍵だから。
 それはひとつ、あなたに旅をさせること。魔導書の本棚駆ら外に出て、あなたに様々な経験をさせること。その一つだけ。そうやって、幾千もの場所をさまよいながら、持ち主を変えて、長い物語を紡ぎだす本。それがあなた。
 あなたは、その時の主と決めた者以外に、自分の正体に関する事はある程度言わないようにできてる。表紙に書かれている題の文字もその一つね。
それはあなたが、あくまで、お遊びで作られたものだから。要するに暇つぶしね。あなたの本来の目的は、研究室で引きこもりがちになりやすい魔法使いが、手安く外の様子を娯楽感覚で知るためのもの。
あなたはその場に起こったことを、自分に意志があるように、叙述的に自らのページに書いていく。それに興味を持った人が、あなたと会話し、ともに経験し、あなたは段々厚くなっていく。そこに『実は、あなたの行動を、自分の主の娯楽目的で覗かせてもらうために自分はこうやって、ページを重ねていくのだ』なんて言ったら、誰も気楽にはあなたに手を伸ばさないものね。故に、あなたは自分では正体は明かさないようにできている。
ジョナ・ファルコン氏も洒落たことを考えるわ。
と言っても、今回ことでは、何人かにはバレていたみたいだけど、あの人形遣いに限っては、どうやら、私のこの時間制限式のカムバック魔法にも気付いて、表紙の隅に小さく書いた、魔法式を消して、あわよくば、なんて考えていたみたいだけど、残念ながらあれはカムフラージュ。本物は、この最後のページ。ページがここまで来たら自然とここに帰って来るように仕込んでいた。もう一人は、まさか持ち主以外で、この表紙の文字を読める人物がいるとは思わなかったけど、そこは流石幻想郷というべきところかしらね」
パチュリー氏、私の主は私に手をかざした。
 中身が膨れ上がる。千年のページがよみがえるのを感じる。
 主は両の手で私を持ち上げる。
「これが千年分?『コウジエン』とそんなに変わらないじゃない」
 あんまりでかくすると、読みづらくなるだろう?ページはめくればどんどん増えていく。
「フフン、なるほど。便利にできるわね」
そして我が主は、この私『引きこもりの望遠鏡』の最初の1ページ目を開いた。

中盤後半まで完全無計画で書いていたのであまり自信はありません。
ジョナ・ファルコン云々は気にしないでください。
感想・評価貰えたら嬉しいです。

猛進ドイ
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コメント



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2.80名前が無い程度の能力削除
魔理沙掃除したあげて…
3.10名前が無い程度の能力削除
びっくりするほどクズ魔理沙。キモい。
5.70名前が無い程度の能力削除
面白かったです。それと、ヴワル魔法図書館は図書館の名前では無いですよ。
7.90名前が無い程度の能力削除
面白かったです
無計画に書いたからこそ自然なメルヘン感があるというか
三魔女のそれぞれの雰囲気も魅力的でした
8.100名前が無い程度の能力削除
nice
10.100手乗り霜削除
とても素敵なお話でした。こんな本があったら是非読んでみたい。
途中で挫折してしまいそうだけど。