Coolier - 新生・東方創想話

心地良い夢の中で失い損ねた君と

2015/02/09 02:43:15
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 お早う御座います旦那様という声が聞こえ、僕は一瞬で睡魔を振り払い飛び起きた。まず確認したのは、声を発した人間ではなく、自分の居る部屋だ。如何に破壊され、散乱しているかを、背筋に寒気を覚えながら確認した。だが僕の予想に反して、部屋は普段以上に真っ更な綺麗さで、暴虐の後は何処にも無い。どういう事だと少し考えたが分からず、今回は何をしたんだ魔理沙と問いかけてみた。するとエプロンドレスにカチューシャを付けた魔理沙は朝餉の準備が出来たので起こしに参りましたと恭しく頭を下げてきた。
 間違い無く何かある。魔理沙が怪訝な態度を取る以上、何かやましい事があるに違いない。特に今回は、メイド服の格好をしてメイドの真似事をしているという明らかな異常。ここまでくると、僕の家をマスタースパークでふっ飛ばした可能性すらあるのだが。
 予想に反して僕の部屋に壊れた跡は無い。それどころかいつも以上に整頓されている。というより、全く別の部屋だった。畳張りの狭苦しい物に溢れた部屋ではなく、西洋式の上品な部屋が広広としている。
 紅魔館かと思ったが違う。あの毒毒しい紅色基調が何処にも無い。だが、こんな建屋が他の何処にあるのか。
 こういう時にまず疑うべきは、妖怪に化かされている事だ。半妖であるから常人に比べれば抵抗はあるが、大妖怪と呼ばれる類には無力だ。
 どうしたものか。僕程度が窘めたところで止めてくれるとは思えない。喜ばせるだけだ。打ち破る術は無い。頼みのマジックアイテムが何処にも無い。そうすると、結局この茶番に乗るしか無いのだろう。
「それでご飯は何処?」
「ダイニングに」
「面倒だな。持ってきてくれないか」
「畏まりました」
「それと普段通りの口調で喋ってくれ。調子が狂う」
「分かったぜ」
 魔理沙は急に嬉しそうに笑うと、外へ出て行った。
 今の魔理沙は本物なのだろうか。あるいは用意された偽物なのだろうか。もしも偽物であるなら随分良く出来ている。あんな精巧な偽物をそう簡単に用意出来るとも思えないから、操られて無理矢理メイドをやらされている本物だと思う。だが何か違和感がある。魔理沙の態度というより、僕の思考そのものにだ。何か自分の思考がずれている気がする。化かされている所為だろうか。
 この館は何処に建っているのだろうかと気になって、窓から外を見てみたが、生憎酷い雨が降っていた。本当に凄まじい雨で、一寸先が見えない程だった。遠くの景色どころか近くの地面も見えず、この部屋が何階なのかすら分からない。降り頻る雨は途切れる事が無く音を発し、灰色の雨の音は耳から入り込んで、脳を灰色に染め上げていく。雨の音を聞いていると、自分の思考が鈍っていく。庇でもあるのか窓に雨は吹き付けていない。
 ノックの音が聞こえたので入る様に促すと、魔理沙が朝食を持って入ってきた。トレイに載っているのは、雑穀に味噌汁に茄子といんげんの煮物、山菜のお浸しと焼き魚、そして唐揚げ。洋風の部屋にまるで合わない。部屋が洋風貴族然としているから、食事もさぞや豪華な物と期待していた分、少し落胆した。ただ現実に立ち返れば、あの魔理沙が僕の為に作る料理として考えれば、十分豪華である。何かあって特別機嫌が良い時にしか、これだけ用意してくれる事は無い。
 早速食べてみて、僕は目の前の魔理沙が本物であるという確信を強めた。この、美味しいとも言えず、不味いとも言えず、少し甘目の味付けは、魔理沙の味だ。兎の肉の唐揚げは、下味をつけていない。こういう失敗も偶にある。魔理沙の母親が作る料理は実に美味しいので、遺伝や味覚の問題では無い。人に食べさせるという経験が足りないだけだ。いずれは美味しい料理を作る様になる可能性は十分にある。しかし大人になるまでの間に無限の可能性を持っているとはいえ、魔理沙はまだ子供であり、そしてこの料理は確かに魔理沙の味だ。
 食事を終えて箸を置くと、テーブルの上に蜜柑が置かれた。
「温州蜜柑だぜ」
 顔を上げると、魔理沙が悪戯っぽい笑みを浮かべて、王様みたいだろと言った。やはり魔理沙は本物の様だ。明らかに僕と魔理沙しか知らない記憶を元に行動している。
 あれはつい一週間前の僕の店での事だ。早苗という友達から借りた漫画を読んでいた魔理沙が突然言った。温州蜜柑が食べたいと。漫画の中で、温州蜜柑は王族が求める程希少価値のある美味な果物で、一口で良いからそれを食べてみたいと目を輝かせていた。どんなに美味しい物なのだろうと想像を巡らせ、そわそわと落ち着かな気に店の中に歩き、そしていつかで良いから温州蜜柑を食べさせてくれよと僕の背中を何度か叩いた。良いよ、今食べさせてあげよう。そう言った時の魔理沙の驚いた顔を思い出し吹き出しそうになる。僕が店の奥から温州蜜柑を持ってくると、魔理沙は信じられないと目を剥いていた。魔理沙は知らなかったのだ。日本で一般に蜜柑と呼ばれる果実は温州蜜柑であり、何ら特別な果物ではないと。当然希少価値も無い。味については美味であるが、恐らく魔理沙が空想した様な伝説的な味ではないだろう。僕がそう説明した時の魔理沙の愕然とした顔。そう言えば、魔理沙のあんな顔を見たのはいつ以来だろう。最近魔理沙は知恵をつけて、僕がからかっても逆に生意気を返してくる様になったが、純粋な驚きを見せた魔理沙の表情は、まだまだ子供なのだと何だか僕を安心させた。
「魔理沙の分は?」
「香霖の分だけだぜ。楽しみにしていたんだろ?」
 確かに毎年知り合いから貰える蜜柑を愉しみにしているし、数も少ないからあんまりばくばく食べられても困るが、だからと言って蜜柑の一つや二つを堅守する程吝嗇家ではない。
「なら半分ずつ食べよう」
「香霖がそうまで言うなら食べてやらない事も無いぜ」
 僕が半分にした実を魔理沙に渡すと、魔理沙は嬉しそうにそれを頬張った。僕も口にする。蜜柑に甘みがあって美味しいのは、僕の中のいつだって変わらない真実だと思う。
 食事を終えた僕は屋敷を探索する事にした。外が雨だからと言って、屋敷でじっとしている訳にはいかない。出口を探さなければならない。
 部屋を出ると廊下だった。廊下には窓が並んでいて、外は相変わらず土砂降りの雨だ。右に一部屋、左に二部屋、そして一番奥にそれぞれ下に降りる為の階段が見える。
 廊下を歩き、階段を下りると、広いエントランスがあった。エントランスは僕の下りてきた階段側とその向かいに出入口の玄関側、そしてそれと交差して両翼に続く幅広の廊下に面していた。僕は早速玄関の前に立った。閂が二つついていたが、あっさりと外れた。簡単に出られそうだと安堵して、扉を押す。だが開かない。引いても開かない。力強く押したり引いたりしてみたが、扉はびくともしなかった。扉を思いっきり押しても木の軋む音すらしない事から、明らかに単純な力学以外の方法で閉め切られている。
 どうやらまだ僕達を出すつもりは無いらしい。
 玄関を諦めてエントランスを見回す。玄関と両翼へ通じる廊下と二階へ上がる階段。僕は元の二階へ上って、今度は廊下の窓を調べてみたが、こちらも開かない。元の部屋に入って窓を調べてもやはり駄目。他の部屋も同様だった。窓を割ろうと、思いっきりベッドを投げつけてみたが、ベッドが壊れただけで窓には傷一つつかない。
「参ったね。閉じ込められたみたいだ」
「ならここで暮らそうぜ。香霖堂より広くてよっぽど豪華な住まいだ」
 魔理沙が呑気な事を言う。
 僕は他の出口を探す為に、部屋を出た。
「僕はせせこましい香霖堂の方が好きなんだ。それに、ここは他に誰も居なくて寂しいだろう?」
「おいおい、こんな可愛らしい妻が居るのに何が寂しいって言うんだ?」
 振り返ると、おどけて肩を竦めた魔理沙がじっと僕の事を見つめてくる。何だか懐かしい気持ちになる。
「歳の差があり過ぎる。十年早いよ」
「三年前も同じ事を言わなかったか? 私だってあれから大人になったぜ」
「僕も同じだけ歳を取った。差は変わらないさ」
 僕の全てが君とはあまりにも違い過ぎるから。
 そして何より、君の感情は憧れに過ぎないだろうから。
 拗ねた様に口をすぼめた魔理沙に笑いかけ、僕はまた出口を探し出して歩き出した。
「なあ、香霖」
 後ろから魔理沙が追ってくる。
「私の事嫌いなのか?」
「いいや」
「香霖にとって私って何だ?」
「そうだな。昔は恩人の娘だったけど」
「けど?」
「今は、なんて言えば良いのかな」
「はっきりしない男だぜ」
「それが嫌なら、はっきりした男性と結婚する事だね」
 そう軽口を叩くと、背後から魔理沙の唸る様な声が聞こえた。随分と御機嫌が斜めな様で、後ろから腿を蹴られた。
「分かったぜ。そんなに私と居たくないのなら、出口を探してきてやるよ」
 階段を下りると、魔理沙が左側の廊下へ駆けて出した。
「私は左を探すから香霖は右な」
「分かったよ」
 僕の声が向こうに届く前に、魔理沙の姿は消えていた。
 僕は魔理沙に言われた通り右手の廊下へ進む。渡り廊下で、少し歩くと隣の館に移る。隣の館も最初の館と同じ構造だった。同じ様に、玄関は閉まり、窓も開かない。そしてまた隣の館へと繋がっていた。一つ目も二つ目も同じ構造の館なら、三つ目も同じだと想像がつく。全く同じ構造の三つ目の館を探索し終え、結局出口が無い事を確認すると、少し不安になった。もしかしたらこの館は無限に続いているのではないかと嫌な想像をしてしまった。渡り廊下を通って隣の館へ、そしてまた渡り廊下を通って次の館へ。それを繰り返して、延延と同じ構造を探し続ける。決して変化の無い永遠の責め苦は、伝え聞くに地獄でも採用されているらしい。
 自分と魔理沙がそんな責めを負う理由は無い。誰かに恨まれる様な事はした事が無い。魔理沙も恐らくそうだろう。粗暴なところもあるが、一線は越えないだけの気配りは出来る。だがそうすると、この同じ構造が連なる館に閉じ込められた理由は何だろう。理由も無く人を化かす存在を思い浮かべていたが、普通ならもっとちょっかいが入る筈だ。屋敷にただ閉じ込め、何故か魔理沙にはメイドの格好をさせるだけさせておいて他には何もせず、そして出口を探して彷徨わせる。スキマ妖怪、天狗、吸血鬼等、僕の知っている、僕よりも力があり、僕を誑かす可能性のある輩を思い浮かべてみたが、こんな静寂で溺れさせる様な事をするとは思えない。
 そうならばこれは誰が仕組んだ事だろう。
 今、僕を取り巻いている状況は一体何だというのだろう。
「おう、香霖! どうだった?」
 四つ目の館を渡り廊下を探索し終えて、次の館に向かって渡り廊下を歩いていると、反対側から魔理沙がやって来た。どうやら無限に続く責め苦では無かったらしい。館と渡り廊下で円を描いている様だ。聞けば魔理沙が探索したのも全く同じ構造の館で、今四つ目を探索し終えたと言う。つまりこの館と渡り廊下は七角形を描いている。それが分かったところで、何が解決するでもないが、全貌の見えない霧の中を歩くよりは、前が見えないのは同じでも地図を片手に歩いている方が気が楽だ。
 一つ目の館の、一番初めに目を覚ました部屋に戻った。魔理沙は昼食を用意すると言ってキッチンへ消えた。そう言えば、何処を探索してもキッチンが無かった。ダイニングも無かった。魔理沙は何処で料理を作っているのだろう。そして何処で料理を食べさせようとしていたのだろう。気になったが、何だか疲れて眠かった。その抗い難い眠気の中で、魔理沙と、そして魔理沙の友達である霊夢と早苗と咲夜の声が聞こえた様な気がした。自分の知らないダイニングで昼食を摂っているのかもしれないと思った。
 体を揺すられて、目を開けると、ランプの明かりの中に、テーブルに置かれた食事とその横に座る魔理沙が見えた。
「ようやく起きたか。もう夜だぜ」
「寝ていたのか」
「知らなかったのか?」
「自分が寝ている事には気がつかないと古今東西相場が決まっている」
 魔理沙は笑って、僕に掛かっていた掛け布団を払いのけた。
「さ、早く食べろよ。冷めちゃうから」
「うん」
 テーブルの上の食事をよく見ると、鍋だ。性懲りも無く洋風の何か豪華な料理を期待していた僕は落胆した。魔理沙の作る鍋は嫌いな訳ではないけれど。
「今日は火鍋だぜ。羊に豚に牛に鳥に蛙に兎の肉が入っている。それから野菜と茸。幻覚性の茸は入っていないから安心しろよ」
 確かに魔理沙の言う通り、白湯と紅湯がぐつぐつと煮え立つ火鍋だった。
「洋風の料理が良かったんだろ? 感謝しろよ」
 確かに海の向こうだが、普通洋風とは西洋を言う。
「何言っているんだ。日本海の西だから西洋だろう」
 西洋とは東洋の反対であって、僕達の使う一般的な東洋とはヨーロッパの東側を指す。
 魔理沙が笑う。
 そこではたと気がついた。同じ事をつい最近魔理沙に言った。いつの事か思い出せないが、確かに最近、世界史を勉強し始めた魔理沙が西洋、東洋という概念に納得いかないと言って、質問をぶつけてきた。それに対して、僕は今言った事を説明し、そして、そう、同じだ。今日は洋風の食事がしたいと僕が言ったら、魔理沙が冗談めかして火鍋にしようと言って、僕の家に豚肉と野菜はあったから、後は茸を入れようという話になって。そして、僕と魔理沙で茸を取りに行って。
 あの時の火鍋はどうだっただろう。
 僕は火鍋の汁を啜る。
 これと同じ味だっただろうか。
 思い出せない。
「どうだ? 美味しかったか?」
「え? ああ。まだちゃんと口をつけていないから」
 そう言って火鍋を食べようとして、いつの間にか火鍋が無くなっている事に気が付いた。後は汁を残すだけで、具は完全に無くなっている。取り皿を見ると、食べた跡があり、そして口の中がひりひりとしていた。考え事をしている間に、食べてしまっていたらしい。
「美味しかったよ」
 味は思い出せないが、そう言った。魔理沙が満足そうに頷いたので、本当は味わっていなかった僕としては、罪悪感を覚えた。
「もう日が暮れるな」
 外を見ると土砂降りで、日が暮れているのか分からない。魔理沙は一体何を見て日が暮れると言ったのか。
 お腹が一杯になった所為で、人心地ついた。和やかな気分になる。
「また眠りそうだ」
「なら寝れば良い。また起こしてやるぜ」
「眠り過ぎると体に悪い」
「体の事を言うなら、もう少し運動したらどうだ?」
「そうだね。ここを出たらジョギングでもしてみようか」
「私が付き合ってやるぜ」
 魔理沙が笑っている。
 何だろう。また眠くなる。
「何だ。やっぱり眠そうだな。寝たいなら寝てりゃ良いのに」
 そう、眠い。眠くて眠くて仕方無い。
「私が傍に居てやるからさ」
 魔理沙が傍に居てくれるから。安心して眠っていられる。
 それが心地良くて。
「なあ、魔理沙」
「何だ?」
「どうして君は僕の傍に居てくれるんだ?」
「質問の意味が分からないぜ」
「僕は、自分で言うのも何だか、人付き合いの上手い方じゃない。人間とも妖怪とも違うから何処か線を引いて相手と接している。人間でも妖怪でもない僕には相手と決して相交わらない部分があって、深く踏み込めば落とし穴が待ち構えている事が分かっているから、必要以上の付き合いは避けている。相手との関係に薄い膜を張る。僕にとって他人とは、僕と世界を辛うじて繋ぐ紐でしかない。精精が世間話をする程度の関係だ。君の所の親父さんとだって、やはり壁があった。そして他人は僕のそういった部分を敏感に察知して、やはり僕との間に薄い膜を張る。お互いが決して交わらない様に」
「何が言いたいんだ?」
 分からない。眠くて、自分の考えがまとまらない。
「君だけなんだ。君は、一体僕の何処が」
「逆だぜ、香霖」
「僕に対して必要以上に踏み込もうとするのは。僕の張る膜を突き破ろうとするのは。他の誰もが僕を避けるのに、君だけが」
「そんな事はないさ。みんな好きだぜ、香霖の事」
「そんな事はないさ。僕にとって君は」
「そう、私の気持ちは香霖がどう思おうと関係無い。そっちがどんな風にこちらを思おうとこちらの気持ちは変わらない。そうだろう? 同じだよ。君の持つ相手への思いだって相手に左右される事じゃない。初めが違うんだ。相手が自分の事をこう思っているから、自分は相手の事をこう思おうと考える訳じゃないんだ」
「まるで自分に説教されているみたいだ?」
「心地良い?」
「ああ、自分の悩みを他人が理解してくれるというのは良い事だ」
「そう、その通り。香霖がここに居てくれるなら、私は全部理解してあげられる。だからここで暮らそうぜ。二人でずっと」
 その声音はあまりにも心地良くて。
 思わず流されそうになる。
 自分の理性というものが。
 土砂降りの音で洗い流されそうになる。
 それが分かってしまったから。
 僕は覆いかぶさる魔理沙を退けた。
 何よりもまずするべき事を、僕は為さねばならないから。
 ベッドから抜けだして、大きく伸びをした。
「いつまでもここに居たいが仕方無い。魔理沙をこんな所に閉じ込めておいたら、親父さんに顔向け出来ないからね」
 魔理沙も立ち上がり、笑って僕の脇腹を突いてきた。
「いけずだな。据え膳食わねばって言葉を知らないのか?」
「こんな所に居たんじゃ寂しいだろう? 君の友達も居ないんだ。君の世界をこんな小さな世界で完結させちゃ勿体無い」
 窓の外を見れば、土砂降りが小雨に変わっていた。後は出口さえ見つかれば帰りつけるだろう。
 部屋を出て、廊下を歩き、階段を降りて、エントランスに行くと、玄関が僅かに開き、隙間から光が差し込んでいた。
 魔理沙が僕の手を引きながら嬉しそうに言った。
「これなら外に出られそうだぜ。さあ、さっさと行こう」
 僕はそれに頷こうとして、ふと嫌な予感が湧いた。雨が降り止んだのは一過性のものだ。雨は再び強くなる。前の見えない程の土砂降りが戻ってくる。その上、もう少しで夜が来る。雨に巻かれ、闇が深くなれば、例え通い慣れた道であっても、危険極まりない。
 立ち止まった僕を置いて、魔理沙が駈け出した。扉を開き、外へ駆けて行く。開いた扉の向こうに月明かりの無い闇が広がっていた。
「待て、魔理沙!」
 駄目だ。行っちゃいけない。
 僕はその先にあるものを知っている。
 魔理沙を追って外に出ると、細かな雨が肌に張り付いてきた。鬱陶しく思いながら魔理沙を追う。
「香霖! 早く! 雨が降ってきたぜ!」
 魔理沙が後ろ向きに走りながら、こちらを手招いていた。
「危ないから止まれ!」
 突然吹き付ける雨の勢いが強くなり、一気に呼吸が阻害される程の雨量になった。ぬかるんだ足元に滑って転びそうになる。
「魔理沙! 何処だ!」
「香霖、遅い! 置いてくぞ!」
 ああ、止まってくれ。お願いだから。
 雨に溺れそうになりながら、魔理沙の消えた先を睨み走る。巨大な、黒色の化け物が大きく口を開いている姿を幻視した。そこへ魔理沙が走って行く。
「魔理沙!」
 その瞬間、悲鳴が聞こえた。
 雨の中、稲光り、目の前に崖が見えた。足を踏み外した魔理沙が奈落の闇へ落ちるのが見えた。魔理沙がこちらに手を伸ばしていた。総毛立ち、崖から飛びだして、魔理沙の手を掴む。奈落に飛び出した僕は掴む物も無く、下へ落ちていく。魔理沙を抱き締め、僕は下へ下へと落ちていった。

 ようやく僕は全てを思い出し、理解した。全ては夢だった。魔理沙と僕はあの日一緒に茸を取りに出掛け、そして夕立に降られた。一気に辺りが暗くなり、雨の勢いは俄に増して、魔理沙は急いで帰ろうと駈け出し、僕はそれを諌めながら後を追った。そこに崖が待っていた。通い慣れた道だった。ただその時は偶偶闇に満ちて雨が降り、崖がある事を失念する程焦っていた。崖は大人の背丈より少し深い程度で、危険とはいえ普通であれば飛び降りる事も可能な程度の高さだった。ただその時は魔理沙が足を滑らせ、それを助けようとした僕も、咄嗟に飛び出して、頭から落ちる事になった。あの日、もしも雨が降らなければ、夜でなければ、茸を取りに行かなければ、僕が料理を作ってもらっていなければ、魔理沙を早く帰らせていれば、僕達が知り合いでなかったのなら、遡っていけば何処までも遡る事が出来るが、突き詰めれば僕という存在が居なければ、あの事故は起こらなかった。だが僕は居て、魔理沙と森に出掛け、雨が降り、夜だった。全ては夢だった。僕の記憶と願望が産んだ夢。魔理沙を失ってしまった僕が、せめて魔理沙を傍に置こうと見た、あまりにも身勝手で歪な夢。僕は夢の中で僕を閉じ込めていた。僕を決して外に逃さぬ様に、魔理沙を決して手放さない様に。僕は居心地の良い夢の中で僕の分身でしかない魔理沙と共に暮らそうとした。けれど僕の認識は、賢く愚かで、夢を本物と錯誤出来ず、現実へを目指してしまった。魔理沙が命を落とし、僕は重体に陥り眠っている現実を。僕は屋敷を出た事で夢から覚め、そして魔理沙の居ない世界へと戻ってきてしまった。という話だったら美しい話で終わったのにと残念に思った。
「おお、ようやく起きたか。おはよ」
 魔理沙は温州蜜柑を頬張りながら、読んでいた漫画を傍に置いて、身を乗り出して来きた。
「その蜜柑は僕が楽しみにしていると知っての狼藉かな?」
 僕が卓袱台の上の、皮だけになった蜜柑の山を指さすと、魔理沙は笑って僕の肩を叩いてきた。
「起きて一言目がそれかよ。元気そうで良かったなぁ、本当」
 はぐらかそうとしても無駄だ。ついでに、漫画やら座布団やら酒瓶やら古道具やらが散らばった部屋を見渡す。古道具は僕がちらかした物だが、それ以外は違う。魔理沙だけでやったとも思えない。
「僕が眠っている間に誰か入れたのかい?」
「見舞客が来てたんだ。みんな、まあ、帰ったけどな」
 そう言って、魔理沙が視線を逸し、何やら険しい目付きになった。魔理沙の視線を追うと、半開きの襖がある。一瞬緑色が見えた気がして、その後に三つの足音が駆け去って行ったので察した。
「とにかく目を覚まして良かったぜ。本当に心配してたんだから」
 魔理沙が僕の頬に触れ、顔を引き戻した。魔理沙の笑顔と目が合う。
 色色と文句を言おうと思ったが、何だか全てが面倒になって、溜息だけが出てきた。
「とりあえず君が無事で良かったよ」
「助けてくれてありがとう。香霖が下敷きになってくれなかったら、足を滑らせて死ぬなんて言う最悪に間抜けな死に方をするところだったぜ」
「風邪も引いていないみたいで」
「次の日はちょっと熱出た。あの土砂降りの中だったし。でも流石に一週間経ったら治ったぜ」
「そうか。僕は一週間も寝込んでいたのか」
「おう。傷とかは無かったらしかったけど。命に別状は無くて、心因性の問題だって永琳は言っていたぜ。何か気苦労でもあったのか? うなされてたけど」
 良く言う。僕の制止を聞かないで、雨の中で走ってずっこけ、死にそうになった、一番の心因の癖に。
「そう言えば、何か夢を見ていた気がする」
「夢? どんな?」
 思い出そうとしたが、思い出せなかった。
 確か屋敷に居た気がする。そして魔理沙が居て。
「どんなだったか。魔理沙と一緒に紅魔館に遊びに行ったんだったかな?」
「それで何でうなされるんだよ。私と一緒だったのに。喜べ」
「君のお守りに疲れたのかもしれないね。僕が引き止めても走って行ってしまうから」
「悪かったって。それから感謝しているぜ」
 そう言って、魔理沙が何か差し出してきた。水玉模様の包を解くと、中には紙箱があって、開けるとチョコレートが入っていた。
「まあ、なんつーの、私の所為で怪我して寝込んじゃったお詫びって言うかさ。チョコ嫌いじゃないよな? 大丈夫だよな?」
 驚いた。見れば結構手間が掛かっていそうだ。
「これ、いつ作ったんだ?」
「え。いや、違くて。昨日永琳がそろそろ起きそうだって言ってたから」
「別に責めている訳じゃない。ただタイミングが良いなとね。ほら、僕が起きた時に丁度君が作り終わっていて、しかも偶偶持っていて。ちなみに本当に僕で良いのかい? まさか他の人にあげる為に作っていたけど、僕が起きてしまったから仕方無く渡してくれたなんて」
「違うから! 香霖にあげる為に作った物だから!」
「じゃあ貰っておくよ。丁度眠っていてお腹も空いている事だしね。ありがとう」
 チョコレートは即時の栄養補給として有効だと聞いた事がある。大方それを知って、お詫びの品にしたのだろう。魔理沙なりに、本当にお詫びをしようという気持ちがある様だ。
「そもそも君を責める気は無かったよ。足を滑らせたのは事故であって君の所為じゃない」
「でも、香霖の注意を聞かなかったからだし」
「そう思うなら、今度からもう少し僕の言う事を、いや、というよりはお淑やかになってくれ。そうじゃないとお嫁に行けないぞ」
 どうやら痛い所を突かれたらしく魔理沙が黙りこむ。何だか本気で落ち込んでいそうなので、ちょっと反省する。正しい事と、言って良い事は違う。分かっては居るが、つい失念してしまうのだ。
「それなら香霖だって、いつまでも嫁さん居ないじゃんか」
「おや、痛い所を疲れたな」
 落ち込ませてしまった分、魔理沙の気を晴らそうと、大袈裟に胸を押さえて痛がる素振りをしてみた。
「なんなら、私が貰ってやっても良いぜ」
「そうだな。それじゃあ、魔理沙が誰とも結婚出来なかった時の保険にして貰おうかな」
 必要以上に己を卑下する言葉を口にすると、ようやく魔理沙が笑ってくれた。自然な笑みだ。思えばさっきまで見せていた笑顔はぎこちなかった。自分の所為で僕を昏睡させてしまった事に少なからぬ罪悪感を覚えていたのかもしれない。
「そう言えば、思い出すね。何年か前に、君から結婚してくれと言われたのを」
「三年前」
「そうそう。あの時は君もまだ小さかったからね。今思い出すと恥ずかしいんじゃないかな?」
 そう言うと、案の定、魔理沙は顔を赤らめた。そりゃそうだろう。僕だって過去の若気の至りの中には、顔から火が出る様なのが幾つもある。恥ずかしい過去を掘り起こして、ちょっと申し訳無いが、僕への罪悪感を消すのなら、もっと強い感情で上書きするのが簡単だ。
「覚えているんだな」
「勿論さ。魔理沙にとっては忘れて欲しかっただろけれど」
「どうかな。そういやあの時は、十年早いって言われたっけ。どうだ? 私も大人になったけど」
「まだまだ子供だよ」
「あっそう」
 魔理沙が溜息を吐き、顔を俯けてしまったので、しまったと思う。また落ち込ませてしまった。思春期というのは、子供扱いされる事を殊更嫌うなんて知っていた事なのに。慌てて言い直す。
「でもね、少しずつ大人になっているよ」
「気休め」
「いや、本当に。変わっていくんだ。少しずつ。僕もね、変わっている」
「そうか? 昔っから爺臭いのは変わらないぜ」
 魔理沙が意地悪く言った。それから興味深気に顔を近付てきた。
「で、どういう風に変わったんだ?」
「そうだな。色色と」
「例えば?」
 例えば。
 そうだな。
「君への気持ちとか」
「私への気持ち?」
 魔理沙が態勢を崩して、僕の鼻に額をぶつけてきた。
「あ、ごめん。で、どんな気持ちなんだよ」
 鼻の奥の痛みを堪えながら、僕はじっと自分の心の内を覗きこむ。
 そう、あの頃は。
「僕にとって君は世話になった親父さんの娘だった。それが一人暮らしを始めたから守る事が親父さんへの恩返しになると思っていた」
「何だよ、それ。単なる義務感で私に接してたのかよ」
「あの頃はね」
「じゃあ、今は?」
 でも今は。
「君が親父さんの娘である事は変わらない。そして守るべき存在である事も変わらない。でもそれとは別に、僕にとって霧雨魔理沙という存在は」
「何?」
「掛け替えの無い存在になった」
 そう、誰でもなく、魔理沙という存在が、僕という、道具にしか情熱を見いだせなかった冷めた存在にとって、ある種の救いになってくれた。
 魔理沙を見ると口を開けたまま僕の事を見つめていた。良く分からない態度だ。もしかしたら気持ち悪いと思わせてしまったかもしれない。思春期というのは難しいものだ。
「ほら、君が居ないと、僕は温かいご飯が食べられないしね」
「別に香霖だって料理位出来るだろ」
「まあ、だけど、魔理沙の料理の方がね」
「意味が分からない」
「いやつまり」
 昔だったら、もうちょっと簡単に言い包められたのに、今じゃそれも難しい。それもまた成長の証だろう。いつまでも自分の手元に居て欲しいという考えは傲慢だ。魔理沙は大人になっていく。いずれは僕のお守りなんて要らなくなるだろう。かつて僕に抱いていた憧れなんかよりも、ずっと強く確かで素晴らしい感情を誰かに抱くのだろう。あるいはもう、そういう相手を見つけているかもしれない。そしていずれは結婚して。
 きっとその時泣くだろうな、と僕は思った。
「で、チョコは? さっきから食べてないけど」
 魔理沙の言葉で現実に引き戻されて、僕は手元のチョコを見た。小粒のチョコが全部で六つ。それぞれが別種のチョコだ。可愛らしい見た目で、魔理沙が女の子なんだと改めて気付かされた。口には出さない。怒られるだろうから。
「じゃあ、いだきます」
 早速、内の一つ、パウダーで覆われたのを摘み上げて、口の頬った。一気に甘さが広がった。甘みで有名な温州蜜柑よりもずっと甘い。甘すぎるのは好みでなかったが、何故だろう、これは甘すぎるのにとても美味しかった。
「どう?」
「そうだね。毎年楽しみにしている蜜柑よりも美味しかったよ」
 お世辞のつもりだったが、口に出してみると、本気でそう思っている自分に気が付いた。
「マジか? じゃ、あ、じゃあ、来年からも、今日はチョコレートを」
「え? 僕が昏睡した記念?」
「そういう事じゃない! じゃなくて、あー、もう」
 魔理沙が項垂れる。僕が素直に喜んであげられなかったから落ち込ませてしまった。事ある毎に相手を思いやれない自分が嫌になる。魔理沙も呆れ果てた様で、低い声音で呟く様に言った。
「とにかく来年も渡すから」
「ありがとう」
 それでもチョコレートをくれるという事は、少なくとも嫌われてはいないのだろう。魔理沙にとって僕はどんな存在なのか。僕の思いが変わった様に、魔理沙の思いも三年前から変わっているに違いない。あの頃の魔理沙は僕に憧れを抱いて居た筈だ。僕は魔理沙にとってあらゆる面で先輩であったから。でも今の魔理沙にとって僕はもう、先を行く存在ではない。ならば僕は。
「今の魔理沙にとってどんな存在なんだろう」
 思わず口から思考が漏れていた。顔をあげると、魔理沙が驚いた顔をしていた。いきなり脈絡も無く僕をどう思うかなんて聞かれたってそれは驚くに決まっている。
「ああ、ごめん。ただちょっと気になってね。良ければ教えてくれないか?」
 問うと、魔理沙は迷う様に辺りへ目を彷徨わせ、俯き、指を絡め、そして意を決した様子で顔を上げた。
 が、何も言わずにまた俯いた。
 そりゃ言いづらいか。
「いや、別に無理に聞こうとは」
「香霖が結婚出来なかった時!」
 いきなり魔理沙が顔を上げた。睨みつける様な目付きだ。
 意味が分からない。
「香霖が結婚出来なかったら教える」
「いや、いつ? 僕はもう結婚出来ないと思っているけれど」
「ならそっちだっていつだよ。私が結婚出来ないっていうのはいつだ?」
「いつって……まあ、大体里の人間は二十前に結婚するし、幅を持たせて二十三か四?」
「それじゃあ行き遅れじゃんか!」
「だからそうならない様に努力を」
「なら私も同じだ。香霖が私と結婚する時に教える!」
「だから僕が言っているのは保険であって。まあ言いたくないのなら無理に言わなくても良いよ」
 その瞬間、魔理沙が掛け布団の上から両手で叩いてきた。
「分からん奴だな! じゃあ、来年だ! 決めた!」
「来年? 随分と遠くに」
「来年の今日! 二月十四日! その時に言うからな!」
 魔理沙が凄まじい形相で迫ってきたので、僕は身を引かざるを得なかった。
「分かったよ。来年だね。楽しみにしている」
「良し!」
 魔理沙は立ち上がり、腰に手を当てて仁王立ちした。顔は赤らみ、目は険しく、迫力がある。怖い。鬼の様だと思った。怒られるから言わないけど。
「何か怒鳴って熱いし疲れたから帰る!」
 そう言って魔理沙が背を向けた。
「あ、魔理沙。チョコレート美味しかったよ。ありがとう」
「さっき聞いた!」
 そう怒鳴った魔理沙は足音を立てながら去っていった。
 残された僕は、最後の一個を口に入れた。また甘みが広がる。栄養が行き渡り、思考が巡る。差し当たっては一週間店を開けていた分を取り戻さなくちゃいけない。もしかしたら何か仕入れの依頼や注文が来ているかもしれない。客が来たとは思えないけれど。
 後はそれから。
 そう言えば、魔理沙の言っていた二月十四日という日付が気になった。何かあった気がする。
 後で調べてみようと立ち上がり部屋を見渡し、それを調べるよりも店の事よりも前に、この散らかった部屋を片付けなければならないと、肩を落とす事になった。
 香霖堂から駆け続け家まで戻った魔理沙は、勝手に上がり込んでいる三人を見つけた。
「お前等、最初覗こうとしてただろ! 二人っきりにしてくれるって言ったのに」
 魔理沙の言葉を無視して、三人が口口に魔理沙を出迎える。
「お帰り魔理沙。どうだった?」
「ちゃんと渡せた?」
「付き合えた?」
 魔理沙は息を荒らげて三人を睨み、台所で水を飲んでから戻ってきて、三人の前に座り込んだ。
「疲れた。渡せた。無理」
 霊夢があららと言ってお茶を啜る。
 早苗が慰める様に、魔理沙の頭を撫でる。
「チョコは喜んでくれなかった? 可愛く作れてたけど」
「チョコはまあ、美味しいって言ってくれた」
「なら良かったじゃん」
 早苗の笑みに当てられて、魔理沙もへらりと笑い、それから正座した早苗の足に突っ伏した。
「でも全く進展無し」
「でもバレンタインデーにチョコ渡されたら気持ち伝わるんじゃ」
 早苗の言葉を霊夢が否定する。
「いや、霖之助さんは駄目。魔理沙に頼まれて、一ヶ月位前、霖之助さんにそれとなく探ってみたけど、バレンタインデーのバの字も知らなかった」
「うわぁ」
 だよなぁと言って、魔理沙が顔を上げる。
 黙って見つめていた咲夜がぽつりと言った。
「で、何をそんなに嬉しそうにしているの?」
「え?」
 魔理沙達が驚いて、咲夜を見る。
「進展無しと言っている割に、顔がにやついて仕方無いみたいだけど、何があった訳? 明らかにチョコを渡しただけじゃないわよね」
「え? いや」
 霊夢が湯呑を置き、早苗が背筋を伸ばした。
「ほほう」
「詳しく」
「いや、大した話じゃ。香霖鈍感だし」
「で? その走ってたってだけじゃ説明のつかない顔の赤さは何?」
「いや、ちょっと待って」
「待ちましょう。安心して。泊まりこむ準備はしてあるから」
 そう言って咲夜は、持ってきたお泊りセットを見せつけた。後の二人も大きく頷く。
 追い込まれた魔理沙が後退る。
「いや、あの、まあ何から話しますか」
 それから三十分程して、婚約じゃんそれ! という声が上がった。
 それからも断続的に、少女達の仲睦まじい嬌声が響き続けた。
烏口泣鳴
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コメント



0.320簡易評価
1.90名前が無い程度の能力削除
>という話だったら美しい話で終わったのにと残念に思った。
割とひでぇこといってるw
まぁ助かったからいえたことだと思います
5.100特殊作家枠削除
万点ならいつでもとれんな
6.90名前が無い程度の能力削除
恋する魔理沙ちゃん可愛い
7.70奇声を発する程度の能力削除
良かった