Coolier - 新生・東方創想話

神社に初詣、除夜の鐘を聞く

2015/01/01 07:58:38
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博麗神社。
常には人も妖も寄り付かない寂れた神社だが、今夜だけはその常識から外れていた。

「早いもんだな」

縁側に腰を下ろした魔理沙が呟く。頬を赤らめ、発音も少々覚束ない。

「今年ももう終わりか」

隣で霊夢がそうね、と答えながらくいっと盃を干した。



大晦日もあと僅か。残すところ数分といったところだ。
年が変わるのを祝おうと誰が言い出したのか定かで無いが、とにかく誰かが言い出して、我も我もと酒好き・騒ぎ好きが相集い、今宵の博麗神社は大宴会の大賑わいと相成った。笑う者、騒ぐ者、宴会芸をやりだす者、酒に呑まれたのか泣き出す者も。全く情緒からは程遠い。
それでも霊夢は大喜びだろう。宴会の参加者からは宴会代に加え、初詣の参拝料も期待できる。参加者の殆どが妖怪連中じゃなかったら、だけど。

「しかし、よく寒くないな。妖怪ってのは暑さ寒さも感じないんかね」

火鉢に手をかざし熱燗をぐびりとやりながら魔理沙がこぼす。隣の霊夢も同じようなもんだ。妖怪に混じって宴席にいる僅かな人間、早苗や妖夢はは何処から持ち込んだのやら、石油ストーブにべったりだ。例外は咲夜だけだろうか。紅魔のメイド長は今宵もメイド装束に身を包み、それでいて鳥肌一つ立ってない。



ごぉぉぉーーーーーーーーーーーーん…………。

突然大きな音が境内を満たした。

「なんだぁ?」

「あら、始まったのね」

霊夢が酒臭い息を吐いて言う。音は断続的に何度も続いている。

「一体なんだよ霊夢、この音は」

「除夜の鐘よ。……と言っても、うちじゃないわ。うちの神社に鐘なんて無いもの」

「金もな」

「寺に勤めてる山彦を借りたの。麓の寺で撞いてる鐘の音を反響させてるのよ」

言われて耳を澄ませてみるとなるほど、大きな鐘の音の前に僅かながら音が聞こえる。しかし、なんだってこんなことを。

「参拝客を増やすためよ」

霊夢は言った。

「うちの神社に来れば、除夜の鐘も一緒に聞けるんだもの、わざわざあんな妖怪寺に行く必要ないわ。そうしたら、もっと参拝に来る人も増えると思うの。ねえ、そうじゃない?」

「そ、そうだな」

適当に頷いて、魔理沙は酒をかっこんだ。どう考えても目の前の有り様――妖怪だらけの大宴会をどうにかするほうが先決だと思うのだが、それは黙っておいた。一寸の虫にも五分の魂。魔理沙にも五分くらいは良心が残っているのだ。

「魔理沙」

突然霊夢が魔理沙と向かい合うようにすると、ぴしりと正座をした。そのまま深々と一礼する。

「明けまして、おめでとう御座います」

そして頭をあげると、呆気にとられる魔理沙に向かってそれは見事な笑顔を見せた。

「さ、魔理沙、新年の初詣しましょうか」

「……やれやれ」

仕方ない、と言った様子で魔理沙が腰を上げる。

(……まあ、今日ぐらいは賽銭入れてやってもいいか)

霊夢の後ろ姿を追いながら、魔理沙はそんなことを考える。

除夜の鐘の音が未だ騒がしい神社に新年の訪れを告げるように、ひときわ高く響いた。
あけましておめでとうございます。
くしなな
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コメント



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2.100非現実世界に棲む者削除
あけましておめでとうございます。
短いながらもとても良い作品でした。
新年を迎えてもレイマリは相変わらずですね。
3.80奇声を発する程度の能力削除
良いですね
4.90名無しです削除
明けましておめでとう御座います。新年早々ほっこりさせて頂きました。
7.80名前が無い程度の能力削除
その妖怪寺の方が人里に近く、人間に害のない妖怪ばかりな時点でお察しな気が…。
やはり霊夢は催し物の才能がないのう。