Coolier - 新生・東方創想話

白雪姫 in 命蓮寺

2014/12/03 17:46:46
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「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」

「そりゃまぁ、白雪姫だろうね」

 魔法の鏡【ナズーリン】が素っ気なく答えました。
 しばし無言のお妃様【雲居一輪】。

「お妃様? なんとか言いたまえ、話が続かないじゃないか」

「……やっぱりイヤ」

「は?」

「だって今度は私が主役だって言ってたじゃない!
 なんでまたこんな役なんだよ! 交代! チェンジよおー!」

 お妃様【雲居一輪】は、髪を振り乱して叫んでいます。

「おいおい、収拾がつかないからくじ引きで決めただろ?
 今更わがまま言うなよ」

「イヤなものはイヤなの!
 もし、このままなら白雪姫【寅丸星】のおデコに毒リンゴを思いっ切りぶつけてやるから!」

「正気かい? はぁ、始末に負えんな」

 普段は冷静で公明正大な一輪さんがまるで駄々っ子です。
 この辺の経緯はサイト掲載の”超戦士シンデレラ”をご参照願います。
 まぁ、見なくても全く平気なんスがね。

「イヤったらイヤーー!」



 --しばらくお待ちください--



「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」

「それはもちろん、お妃様、貴方です」

 配役を一部変更して再スタートのようです。

 魔法の鏡【ナズーリン】の答えに無言のお妃様【寅丸星】。

「うん? もう一回言おうか? 貴方こそがこの世で最も美しい」

「……えっと、ここは確か『それは白雪姫です』では?」

「私は嘘は言えないよ。
 貴方の髪は陽光と闇、相容れぬはずの陰陽が互いを讃え合う金と黒。
 貴方の瞳は慈愛と情熱、さらには叡智を湛える唯一対の魅惑の宝石。
 貴方の唇はこの世に咲くどんな薔薇の花びらよりも柔らかく可憐だ。
 ああ、心配だ、私はとても心配だ。
 その美しさはこの世の嫉妬と羨望を一身に集めてしまうだろう。
 美の神から呪いをかけられてしまったらどうしよう。
 だが、間違いない、貴方こそがこの世で最も美しいのだ」

 台本に無いセリフを熱く、熱く語る魔法の鏡。

「あの、その、とても嬉しいのですが、お話が進まないですよ」

 お妃様、お顔が真っ赤です。

「それがどうした、些細なことだよ。
 ねえ、その顔、もっとよく見せておくれ」

「あん、触っちゃダメですよ、アナタ、今は鏡なんですから」

「固いこと言わないで……良いでしょ?」

「ダメです、ダメですよぅ…… こんな明るいところじゃ……」

「キスだけだよ……良いでしょ?」

「ホントに? キスだけですよ?」

「ふふふ……多分ね」

「あ、あふん、うそつきぃ、そこはダメぇ……」

 ここは放っておいて話を進めましょう。

 お話の途中から始まってしまいましたが、白雪姫の物語です。

 後添いとしてやってきたお妃様(原作初版では実母)は何でも答えられる魔法の鏡を持っていました。
 はじめの頃は世界一の美貌を保証されご満悦でしたが、年頃になった義娘の白雪姫にその位置を奪われ激怒します。
 家来の狩人【雲山】に白雪姫を殺害し証拠として肝臓を切り取ってくるするように命令しました。
 しかし不憫に思った狩人はこっそり森に逃がし、猪の肝臓を取って帰りました。
 お妃様はその肝臓を料理させ満足そうに平らげました、原作怖い怖い。



「ハイホー♪ ハイホー♪ ランラランララー♪」

 森に住む7人の妖怪、もとい小人たちです。
 一列縦隊でてくてく歩いています。

 マミゾウ、ぬえ、ムラサ、響子、こいし、小傘。
 おや? 一人足りませんね?

「今回は地味な役じゃの」

「やっぱりさー、さるかに合戦の方が良かったんじゃん?」

「ぬえ、それだとアンタがさる役になると思うよ」

 マミゾウ、ぬえ、ムラサは早くも脱線しています。
 小人役はそれなりに頭数は必要ですが一人一人はさして重要ではありませんから、気楽なものです。

「さきほど一輪が随分とゴリ押ししていたようじゃが」

「お芝居始まってんのに役を交代なんておかしいじゃん」

「前回の“シンデレラ”がよっぽど気に入らなかったんでしょ」

「まったく…… 根は真面目で気立ての良い娘なんじゃがの」

「聖が王子様役だからだろうけど、必死すぎて引くわー」

「今回私たちはのんびり参加でOKだよね?」

「そう願いたいもんじゃ」

 前回は最もハードな役を押しつけられたマミゾウさんが呟きました。

「はいほおおーー! はいほおおおおーー!」

「ぱいぽー ぱいぽー ぱいぽのしゅーりんがん」

「ちょっと響子 声が大きすぎるよ。
 こいしさん、歌詞が少し違うよ」

 こちらは更にお気楽な三人。
 フリーダムクイーン古明地こいしが最近になって加わったので若干ツッコミ側にシフトしている小傘なのでした。

「ぜえ、ぜえ、ふー」

 7人目の小人【ナズーリン】が息急き切ってかけつけ、列の最後尾に追いつきました。

「おや? ナズーリン どうしたの?」

 ムラサが問いかけました。

「ぜえ、はあ ……どうもこうも私は7人目の小人だろうが」

 賢将は今回二役のようです。

「7人も6人も大差ないんだから無理しなくてもいいのに」

「ぜえ、ふひゅー ……随分な言いようだな」

「大体さー 7人というのも後付けの設定でしょ?」

 確かにそうなんですけどね。

「キミたちだけだとグダグダになって進まないだろう?
 だから私が掛け持ちすることになったんだよ」

「ふ~ん それはご苦労さんなこったねー」

 ぬえがまったく心を込めずに言いました。



 森をさまよっていた白雪姫【雲居一輪】は小人たちの住処にたどり着きました。
 留守をいいことに勝手に侵入し、パンとスープをむさぼり、ベッドに転がり込んで眠ってしまいました。
 まったくもって傍若無人な振る舞いですが、仕方ないでしょう。
 とっても空腹でくたくたに疲れていたのですから。



 7人の小人たちが帰宅すると、家の中の様子が変わっていることに気づきました。

 まず、一人目の小人【マミゾウ】が言いました。

「誰かが、わしのイスに座ったあとがあるぞ」

 次に、二番目の小人【ぬえ】が言いました。

「誰かが、ワタシのスープを少し飲んだあとがあるよ」

 三番目の小人【ムラサ】が言いました。

「誰かが、私のパンを少し食べたあとがあるね」

 四番目の小人【小傘】が言いました。

「誰かが、わちきの野菜を少し食べたあとがあるみたい」

 五番目の小人【響子】が言いました。

「誰かがー! わたしのスプーンを使ったあとがあるー!」

 六番目の小人【こいし】が言いました。

「わーい、かいかーん」

 七番目の小人【ナズーリン】が言いました。

「なあ、こいしの係は誰なんだよ? 全然なってないじゃないか」

「セリフを教えたのはぬえじゃろ?」

「ワタシ知らないよ、小傘じゃないの?」

「え? わちきじゃないよー」

「……つまり、今回のこいしはいつもに増して好き勝手状態なのか」

「なんとかなるんじゃないの? 重要な役じゃないし。
 あ、誰かが私のベッドに寝ているよ!」

 ムラさが強引に軌道修正してくれました。
 ここ一番で頼りになる娘ですよね。



 小人たちが横たわっている娘の顔を覗き込みます。

「なんて美しいんだろー」

「こおーんなびじん! みたことなーーい!」

「確かに黙ってじっとしておれば別嬪さんじゃからの」

「怖い顔しなければね」

「パーツの一つ一つは一級品なんだから表情の作り方次第だよね」

 賛辞にしては微妙な言い回しも混じっていますが、寝たふりをしている白雪姫は満更でもなさそう。
 口元が不自然に緩んでいますから。 

「鼻毛が出てるがね」

 慌てて顔を押さえる白雪姫【雲居一輪】。

「ウソだよ」

 こんなアドリブをブッ込むのはもちろんナズーリンです。
 賢将とハイカラ少女は相性がよろしくないのです。
 いえ、ハッキリ仲が悪いと言って良いでしょう。
 お寺の仕事や緊急事態では見事な連携を見せるのですが、普段はことある度に相手をやり込めようとするのです。
 
 ギリリッ スゴい歯ぎしりが聞こえましたよ。



 目を覚ました白雪姫は、周りに七人の小人がいるのを知っておどろきました。
 けれども小人たちは大変親切で、ニコニコニヤニヤしながら白雪姫にたずねました。

「おぬし、名前は何というのかな?」

「私の名は白雪姫です」

「自分で“姫”って……プッスー」

 ぬえが口を押さえて笑いを隠し……隠していませんね?

「言われてみればスゴい自己紹介だよね」

 白雪姫の目じりが吊り上がっていってます。 

「それでは、白雪姫、キミはどうして我々の家に入ってきたのかな?
 これは不法侵入と窃盗罪が適用されるケースだが申し開きはできるのかね?」

 ナズーリンが厳しい顔で詰め寄ります。

「そ、そんなこと言われても」

 またしても台本に無いセリフに白雪姫は焦ります。

「場合によっては入墨の上、重敲(百叩き)だよ」

 ナズーリンてば、なんて意地の悪そうな顔でしょう。

「待たんか、そりゃいつの時代の刑罰じゃ(江戸時代ですかね)。
 こら、話を戻すぞ!
 んー 娘さん、訳ありなら聞こうじゃないか」

 今度はマミゾウが軌道修正です。

「はい、それは……」

 継母であるお妃様が美しすぎる自分を妬んで殺そうとした事。
 お妃に命令された狩人が、自分を逃がしてくれた事。
 そして森をさまよっているうちに、この家を見つけた事。
 白雪姫はそれらを全て、小人たちに話しました。

「それは、気の毒な事じゃな。
 もしもよければ……ん? ぬえ? どうしたんじゃ?」

「だって自分のこと“美しすぎる”って、……プププ。
 ダメ……我慢できない アハハハハハハ」

 ぬえが限界を超えたようです。

 ボスンッ! 枕が結構な勢いで封獣の顔に命中しました。
 投げたのはもちろん白雪姫さんです。

「あーあー もういっぺんやるぞ。
 もしも、お前さんが、わしらの家の仕事を引き受けてくれるのなら、ここで暮らしてもいいぞ。
 仕事といっても、家の掃除や洗濯に縫い物、そして食事の用意ぐらいだがの。
 どうじゃ、それらをきちんとしてくれるか?」

「はい、家の仕事はきちんとやりますので、どうぞお願いします」

 こうして白雪姫は、小人たちの家で暮らす事になりました。



「アンタたち、なんだいこの散らかり様は。
 まずは掃除だよ、さあさあ早く!」

 白雪姫はパンパンと手を叩きながら皆を促します。

「自分が全部やるんじゃないの?」

「んー 確かに自分一人でとは言ってないけど……」

「家事を仕切るってことでは間違ってないがのぉ」

「こんな予感がしたんだよね」

「なんだかお寺にいる時と変わらないよー」

「そこ! 口じゃなくて手を動かす!
 働かないモノにはご飯は無いからね!」

「しかしまぁ、これほどお姫様役がしっくりこない娘も珍しいな。
 やはり根本的に向いてないってことじゃないかな?」

「そこのネズミっぽい小人! シャキシャキやんなさいよ!」

 がすっ あ、ケリが入りました。

「った! くそー、覚えておれよ」

 白雪姫を睨みつけた小人その⑦にその③のムラサが言いました。

「ねえ、アンタそろそろ出番じゃないの?」

「あ、そうだった。
 まぁ今は見逃してやるか、ちょっと行ってくる」

 ナズーリンが退場しました。



 再びお城の一室。

「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」

「本当はこんなことを言いたくないんだけど、仕方ないんだよ。
 不実なヤツと思わないでおくれ。
 この胸に秘めた真実の愛は貴方だけに捧げているのだから」

「あのそれはホントに嬉しいのですが、とりあえず置いときませんか?
 私、次のシーンにいけませんよ」

「うー でも、やっぱり言いたくない」

「困っちゃいましたね……
 あ! では、私以外で一番美しいのは誰ですか? なんちゃって……」

 お妃様、自分で言っててとても恥ずかしそうです。

「なるほどナイスアイディアだ、さすがお妃様。
 それなら気が楽だよ、ハッキリ言ってどうでもいいし。
 まぁ、白雪姫あたりでいいんじゃないか?」

「ちょっと気を抜きすぎですよ……」



 お妃様はようやく行動開始です。
 物売りに化け、小人の留守を狙って腰紐を白雪姫に売りつけます。
 そして腰紐を締めてあげる振りをして彼女を締め上げ、息を絶えさせました。

(と、寅丸! ち、力入れ過ぎ! ぐ、ぐるじいい!)
(あ! ごめんなさい!)

 やがて帰ってきた7人の小人は、事切れている白雪姫に驚きましたが、腰紐を切ったら息を吹き返しました。
 一方、お妃様が再び魔法の鏡に尋ねたことにより、白雪姫が生きている事が露見しました。
 お妃様は毒を仕込んだ櫛を作り、再度物売りに扮して白雪姫を訪ねます。
 白雪姫は頭に櫛を突き刺され倒れますが、小人たちが櫛を抜いたら再び息を吹き返しました。

(と、寅丸! 痛いって! 刺さってる! マジで刺さってるよ!)
(あ! ごめんなさい!)



「昼間はわしらがおらんからくれぐれも用心せいと言ったのに」

「何度言っても同じ手に引っかかるんだから」

「白雪姫ってバカなの?」

「バカでしょ」

「バカじゃん」

「バカじゃの」

「バカだーーー!」

 あ、白雪姫のこめかみに血管が浮いてピクピクしてます。
 
「ねえ、一輪姉さん 白雪姫のことだよ?」

「分かってるよ!」

 本来、人一倍警戒心の強い一輪さんがこんなボンクラなはずはないのですが、ここはお芝居ですから仕方ありません。
 でも、面白くないようです。

 しかし、この白雪姫って、お姫様育ちで疑うことを知らないせいでしょうが、あまりにも危機感がありませんよね。



 老婆に変装したお妃様【寅丸星】が最終回の攻撃にやって来ました。
 お待ちかねの毒リンゴ責めです。
 しかし今回は昼間なのに小人たちが家に勢揃いしています。
 皆、有給休暇を取って備えていたのです。

 驚くはずのお妃様でしたが平然としています。
 このことは事前に小人の一人から知らされていたからです。
 内通者がいたのです。
 なんとその裏切り者とは! ……言うまでもないですよね。

「皆さんにはアップルパイですよー」

「うわー、美味しそう!」×7

 したがいまして、準備も万全でした。
 もしゃもしゃ はぐはぐ
 小人たちはお妃様特製のアップルパイに夢中です。

「えー、私もそっちがいいな」

 白雪姫が指をくわえています。

「キミは黙ってリンゴを噛じりたまえ。
 そして速やかに無様に死ね!」

 小人その⑦が吐き捨てるように言いました。

「なに? その言い方は。
 分かったよ、食べればいいんでしょ、食べれば」

 しゃくっ



 毒リンゴを食べた白雪姫は即死でした。
 小人たちはしばらくの間泣き伏せっていましたが、さすがにどうにかせねばと、立ち上がりました。
 いずれは白雪姫を土に埋めないといけないのですが、不思議な事に死んでいるはずの白雪姫は生きていた時のままに美しく、肌もきれいで顔にも赤みがありました。
『こんなにきれいな白雪姫を、土の中に埋める事なんか出来ない』
 そこで小人たちは外から中が見える様にガラスの棺を用意すると、その中に白雪姫を寝かせることにしました。

「これがガラスの棺桶?」

「実はこれ【アクリル】という材質の樹脂なんだ。
 軽い上にとても丈夫だよ。
 ガラスだと、万が一割れたら【頑固白雪姫】でもさすがに大怪我するからね」

 小人その⑦が調達してきた透明な棺について解説しています。
 なんだかんだ言っても本当の危険を回避するための手間を惜しまない苦労性の賢将なのです。

「そんじゃ中に入れようか」

「よっしゃ、持ち上げるよー」

 7人がかりで、頭や腕、腰、足を持ちます。

「うう、意外と重いね」
 
 それを聞いた白雪姫がギロッと睨みました。
 死んでるんですから目を開けないで下さいよ。

 意識の無い(脱力した)人体は結構重く感じるものなのです(これはホント)。

「よいしょ、よいしょ」

 皆、か弱い女の子ですし、受け持つ位置のバランスが良くないため、うまく力が入らないようです。

「ゆっくり、ゆーっくりね!」

「もう少しだよ!」

「あ、そっち、まだだよ?」

「なんで手を離すんだよ!? 早いって!」

「うそ、無理だってー! お、重いよー!」

 ゴビンッ

「いったーっ!」

 白雪姫は後頭部から落ちたようです。
 思わず声が出てしまいました。
 頭を支えていたはずのは古明地こいしが一言。

「あー」
 
 忘れた頃にやらかしてくれました。



「はああー 重かったあ、何食ったらこんなに重くなるんだか」

「ぬえ、アンタ後でどうなっても知らないよ」

 白雪姫が棺桶の中で薄目を開けて封獣をロックオンしていますね。



 白馬に乗った王子様【聖白蓮】の登場です。
 小人たちの家を訪ねてきました。

「そこな鉱夫の方々、私は隣国の王族に連なる者です。
 この深い森で帰り道を見失ってしまいました。
 一晩泊めては頂けないだろうか」
 
 上下純白のスーツに金色のマントが様になっていますね。
 長い髪を後ろで束ね、目の周りはくっきりメイクでバリバリ。
 宝●歌劇の男役のようです。

「おや? その棺は? ……これはなんと美しい女性なのだ!」

 王子様がアクリルの棺に近寄り、中の白雪姫に見とれています。

「この女性を棺ごと私にゆずってくれませんか。
 その代わり私は、あなたたちの欲しい物を何でも用意しましょう。

 なんですと? いえ、分かります。
 確かにそうだ、たとえ世界中のお金を集めても敵いますまい。
 これは、どんなお金や宝物でも代える事は出来ない。

 だが私は、白雪姫なしには、もう生きていられないのだ!
 私は白雪姫に、この白雪姫に恋を、恋をして、しまっ、たの、だあ!
 私の生ある限り! 白雪姫をうやまい続ける! 命を懸けて!

 だから、だから! だからあ! 白雪姫を、この私にゆずってほしいいい!」

 王子様はたっぷりと間合いを取り、大きなアクションで朗々と言いました。



「わしら、セリフ言う暇が無かったのお」

「気合い入ってんなー」

「王子様の唯一の見せ場だからね」

「置いといても仕方ないから引き取ってもらおうか?」

「そだね、ほしいってヒトにあげちゃおうよ」

「それがいいー それがいいーー!」

 結構ぞんざいな扱いですね。

「ねえ、ここで王子様の接吻じゃないの?」

 白雪姫【一輪】が小人【ナズーリン】に小声で聞いています。

「こら、死人がしゃべるんじゃない」

「だってクライマックスでメインシーンだろ?」

「あれは某大手アニメ会社がロマンチックに脚色したものだ。
 原作には無い設定だよ。
 ついでに言うと、この王子様は死んでいるシンデレラを見初めたのだ。
 つまり、死体愛好家、筋金入りの変態に間違いない」

 そうらしいです。
 世界は広いですね、色んな趣味があります。

「うえー! そんな王子様イヤだよ」

「だからしゃべるなって言ってるだろ! じっとしてろよ!」

「ちょっとだけ ちゅって……ダメかい?」

「黙れって!」



「白雪姫が何か言ってるみたいだよ」

「大方、あてが外れて焦っとるんじゃろ」

「姫役をモノにするのに必死でロクに台本見てなかったんじゃないの?」

「憐れというか笑えるというか……」

 小人だちは王子様の願いを聞き届け、白雪姫の身柄を渡すことにしました。

「とりあえず外に出さないとね」

「そんじゃ運ぼうか」

「両側から持つなら偶数人が良いだろう。
 私は先導するとしよう」

 ここでナズーリンが台本に無い提案をしました。

(なんだが嫌な予感がするんだよな)

 残った6人が『せーのっ!』と棺を持ち上げました。

「え? そっちに行くの?」

「こっちからでしょ?」

「まだ動かないでよ! ちょっと持ちかえるから」

「あ! ダメだって!」

 ズゴンッ

 アクリルの棺の片側が派手に落ちました。
 よりによって姫の頭部側です。
 加えて言うなら今回は先程よりはるかに落差があります。

 白雪姫は棺の中で後ろ頭を両手で抱え歯を食いしばっています。
 大事に至らなくて良かったですが、かなーーり痛そうです。
 声も出ません。

「やっべ……またやっちゃったよ……」

「こりゃマズい、どエラくマズいのぉ」

「二度目だよ? どうする?」

「一輪さん怒るかな?」

「怒るだろうね、通常の三倍は確実だ、賭けてもいいよ」

(やっぱりこんなことになったか。
 だが、今回、私は完全にノータッチだから責められる筋合いは無いな、良し良し)

 このあたりが『ずるいネズミ』と言われる所以ですね。

「はわわわわ」

「ど、どーーしよーーー!?」

「ねぇムラサぁ、逃げよっか?」

「そうだね……ややや、それはさすがにダメだよ」

 なんとか踏み止まった小人のキャプテン。

「落ち着けぃ 皆の衆!」

 小人の親分が場を静めました。

「こんな時のためにわしらには切り札があるじゃろうが!」

 小人たちが期待を込めてマミゾウを見つめます。

「ナズーリン、知恵を出せ、なんとかせい!」

「えーー!? 私?」

「おぬし、知恵者を自称するならこの場を収めて見せい!」

 タヌキからネズミへ無茶振りバトンが渡りました。

「頼むよ賢将さん!」

「任せたよ天才!」

「ちえものーーー!」

「いいトコ見せてよ変態!」

「今、変態って言ったの誰だ!?」

「気にしない気にしない」

「ったく、こんな時だけ……」



「アンタたちぃ~~」

 白雪姫が棺の蓋を開け、ゆらりと起き上がってきました。
 ドス黒いオーラをまとったその姿は墓場から蘇った魔物そのものです。

(くっ! こうなったら強引にハッピーエンドへ突入だ!)

「奇跡だ! 何という奇跡だ!
 白雪姫が生き返った! ばんざーーい!」

(ほら、早く!)

 ナズーリンが叫び、皆に目で合図をします。
 その意図を汲んだ小人たち。

「ばんざーい! ばんざーい! ばんずあああい!」×6

 原作では白雪姫の棺をかついでいた家来のひとりが木につまずき、棺が揺れた拍子に白雪姫は喉に詰まっていたリンゴのかけらを吐き出し、息を吹き返すらしいので結果オーライでしょう。

 ナズーリンは呆気にとられている白雪姫を尻目に王子様【聖白蓮】に近寄ります。

「王子様! 白雪姫が愛の力で生き返りました!
 さあ、早くその腕に抱いてあげてください!」

 王子様はすかさず白雪姫に歩み寄り、その手を取りました。
 ここでようやくお芝居の筋を思い出した白雪姫【雲居一輪】。

「まあ、私は、いったいどこにいるのでしょう?」

 不思議そうに辺りを見回す白雪姫に王子様は言いました。

「白雪姫、貴方は私のそばにいるのですよ」

 最大級の笑顔。
 それは水ポケ一輪に対する特大電撃、効果は抜群です。 

「貴方の事は、この私が一生お守りします。
 どうか私の城(寺)へ来て、私と結婚してくださいませんか?」

 白雪姫は、王子様にこくりとうなずきました。

「はい、貴方の国(寺)へ連れて行ってくださいまし」

「かしこまりました」

 王子様は流れるような仕草で白雪姫を抱き上げました。
 完全無欠の”お姫様だっこ”です。
 そして再び電撃スマイルが炸裂しました。

「……私、しあわせ、で、す」

 滅多に見せない白雪姫【一輪】の心からの笑顔でした。 

「白雪姫ばんざーい! 王子様ばんざーい!」×7





「ふーー 何とかなったみたいじゃの」

「やれやれ危なかったー」

「一輪、泣きそうだったね」

「よかった、よかったー!」

「これ 何のお話だったの?」

「……こいしさん、後で教えてあげるから」



 一方、お城に戻ってきた魔法の鏡【ナズーリン】
 お妃様【寅丸星】とおしゃべりしています。

「原作ではこの後お妃様は真っ赤に焼けた鉄の靴を履かされ、死ぬまで踊らされるんだよ」

「えええー! そんなのイヤですよ!」

「安心したまえ、私がそんなことを許すものか」

「ふふふ そうでしたね、貴方がいてくれたら心配ないですよね」

「その通り、万事お任せあれ」

「最後に一つ聞いてみようかしら?
 ……鏡よ鏡 この世で私にふさわしいのは誰?」

「うふふふ この私以外にいるとでも?」

「あは いーえ、いるはずありません」

「では、さっさと逃げ出すことにしよう」

「良いんでしょうか?」

「構うものか、愛の逃避行と洒落込もうか」

「ええ 喜んで」



                     了
紅川です。
 重ねて申し上げます。こんなの書いてごめんなさい。
 一輪さん救済作品のつもりですがヒドいことになっちゃいました。
 結局はナズ×星のベタベタ話です。
 ちなみに『シンデレラ』はサイトで二周年記念作として掲載しております。
 こちらは更にしょうもないパロディですが、お暇がございましたらどうぞ。
 本編(?)も鋭意製作中ですので気長にお待ちいただけましたら幸いです。
紅川寅丸
http://benikawatoramaru.web.fc2.com
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コメント



0.380簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
グッドです
あと煩い人が増えてきましたけどそんなに卑下することもないと思います

4.30名前が無い程度の能力削除
違和感が仕事してました。
5.100名前が無い程度の能力削除
グッドグッド。誰でも知ってるパロは判りやすくていい。肝臓のそれは知らなかったが……
7.80奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
9.80名前が無い程度の能力削除
やっちまったな・・・・・・・ww
10.80名前が無い程度の能力削除
ツッコミに回っただけで響子が精神的に成長したように見えるんやな
こいしちゃんは偉大なんやな
12.70名前が無い程度の能力削除
なずが たのしそうで なによりです まる
13.100aikyou削除
命蓮寺の皆が楽しく白雪姫を演じている姿が目に浮かんで面白かったです。
14.90名前が無い程度の能力削除
面白かった
15.80名前が無い程度の能力削除
懐かしい話ですね
自分は途中までシンデレラと勘違いしてました
意外と忘れてるものですね(自分だけです)
 
一輪さん可愛い
16.100諏訪子の嫁削除
それを聞いたシンデレラがギロッと睨みまし た。
白雪姫じゃないんですか?

面白かったです!
17.無評価紅川寅丸削除
2番様:
 早速のコメントありがとうございます。
 はい、頑張ります!

4番様:
 すみませんでした。

5番様:
 ありがとうございます。
 昔話って原作は本当に怖いですよね。

奇声様:
 いつもありがとうございます。

9番様:
 ありがとうございます やっちまいました ハハハ。

10番様:
 ありがとうございます。
 こいしは影のトラブルメーカーとして活躍する予定です。

12番様:
 ナズありきでございますから……本編も頑張りますので。

aikyou様:
 ありがとうございます。
 実は命蓮寺ものは同人誌で結構書いておるのです。
 いつかサイトにupしますのでよろしくお願いします。

14番様:
 ありがとうございます。

15番様:
 一輪さん大好きです。ナズと絡みやすい設定にしたものですからこんなことになっちゃいましたがこれからも活躍予定です。
 ありがとうございました。

諏訪子の嫁様:
「やっべ……またやっちゃったよ……」
 うわー 完全スルーでした! 誤字脱字のレベルじゃない!
 ご指摘ありがとうございます! 助かりました!