Coolier - 新生・東方創想話

東方享楽夜 ~ It is Done.

2014/11/17 01:31:23
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 流れ流され幾星霜。
 時積りても世は変わらず、夜は暗く、月は明く。
「賑やかね」
 庭を見つめて呟く姫の、視線の先には兎達。祭りの余韻を引きずりずっと、兎の子供は燥いでいる。兎の大人はあちこちで、子供を眺めて話し合う。まるでばらばらの兎達は、しかし意識を縁側に、座る姫へと向けている。
「そうですね」
 庭の向こうに提灯明かり。祭会場に続く道を灯火が照らしている。そこを歩いて戻り来る兎の子供を見つめながら、姫は微笑み問いかけた。
「私にもあんな無邪気な時があったかしら」
「今日の輝夜はあれよりも、ずっと燥いでいたけれど」
 従者の言葉を聞いた姫は、月を仰いで笑い上げる。
 笑う姫が足音聞いて、視線を落とすと、兎の子供。綿菓子を持った子供達は、姫の視線に紅潮し、ゴムの結わった水風船を、恥ずかしそうに差し出した。
「おひい様、沢山取れたからこれあげます」
「あら、ありがとう」
 水風船を受け取り、笑んだ姫は、うっとりとする子供達を前に、何度か水風船を飛び跳ねさせた。子供達は一頻り姫の前で燥いでから、誇らしげに親の下へ己の手柄を告げに行った。
「月が明るいわ」
「そうですね」
 姫の言葉に従者が頷く。
「今日は素敵な夜ね」
「そうですね」
 庭を眺める姫の下に、再び兎達がやってきた。
「輝夜様、輝夜様! 見て下さい! こんなに金魚が取れました! 全部一度で取れたんです!」
 先頭の兎が胸を張り、手に持つ袋を掲げて見せる。あまりにも金魚が詰め込まれ、まるで赤い水の様。
「あら、凄いわね」
「はい! ありがとうございます!」
 兎は嬉しそうに飛び跳ねながら、金魚を掲げて駆けて行った。
 その背を見つめて、従者が吐息。
「飼う場所も無いのにあんなに貰ってきて。優曇華ったらどうする気かしら」
 従者の憂いに姫が一言。
「新しくお池を作りましょうか」
 夜は深深降り積もり、賑わい漸次鎮まって、庭を眺める姫の下に一匹の兎がやってきた。
「姫様、そろそろ夜も更けて参りました。宴も酣では御座いますが、そろそろ子供達は眠りませんと」
「あら、御免なさい。私が上がるのを待っていたのかしら」
「皆、少しでも姫様の目に留まれる様にと」
「皆の健康に悪いわね。あなたの助言を受け入れましょう」
「勿体無いお言葉を頂戴致しましてありがとうございます。お心遣い感謝致します」
「てゐ、ちゃんと全員戻ったか確認しなくちゃ駄目よ。この竹林の物は全て姫の物。一つも損じてはならないわ」
「はい、お師匠様。既に確認を終えました。抜かりは御座いません」
 姫が静かに目を閉じる。それを合図に頭を垂れて、兎はその場を離れていく。
 やがて縁側に二人きり、姫は兎の喧騒を聞きながら、はんなりと従者に礼を言う。
「今日はありがとう、永琳。あなたの催した祭り、楽しかったわ」
「それは何より。偶にはこうして楽しまないと」
「いつも楽しいわ。今日も昨日もその前も私はずっと楽しかった」
 姫は目を瞑り、喧騒を聞きながら、瞼の向こうを幻視する。
 そこには誰も居ない。
 そこには何も無い。
 何千何億と積もった時に埋もれ、辺りは真っ白に染まっていた。
「静かね」
「ええ」
 誰も居なくなった時の中で、二人は静かに言葉を交わす。
 遥か昔に過ごした日日を、その一日一日を思い出す。
 かつて過ごした兎達と祭りを開いた日の事が、ありありと思い起こされる。
 あの夜の喧騒が実感を伴いやって来る。
 喧騒が耳に届き、瞼の向こうに提灯明かり、子供達が燥ぎ回る。
 姫がゆっくり瞼を開けると、先程と変わらぬ喧騒が月明かりの下に広がっていた。
 祭り終えた兎達が余韻を引き摺り燥いでいる。
 ふっと笑みを溢して姫は、流れる様に立ち上がり、従者を伴い背を向けた。
 それを合図に兎達が潮を引く様に塒へ戻る。
 姫もまた寝室へ。
 戻るなり窓を開け、真円の月を見上げて言った。
「今日も素敵な夜だった」
 従者に向けて姫が笑う。
「明日も明後日もその先も、ずっと素敵な夜にして」
 姫の言葉に従者は微笑み、今日という日は終わりを告げた。
 歩き連れられ幾千里。
 場所を違えど隣に伴侶、顔は綻び、今ぞ楽しき。
鈴仙は輝夜に褒められたら、それから二週間位、寝る前に布団の中でその時の事を思い出してにやにやしてると思う。
烏口泣鳴
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コメント



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1.50名前が無い程度の能力削除
なんというか最初から落ちが予測出来ちゃって。
もう少し捻りがあると良かったでしょうかね。
3.70名前が無い程度の能力削除
良かったです
5.70名前が無い程度の能力削除
短いながらも切ないお話でした