Coolier - 新生・東方創想話

本気を出さない理由

2014/11/08 18:58:35
最終更新
サイズ
6.04KB
ページ数
1
閲覧数
3372
評価数
8/34
POINT
1970
Rate
11.40

分類タグ

いつも通り変わらない、ただ炎天下なだけの夏の一日だと思ってた。

いつも通り麦茶を飲みながら、霊夢は縁側でただ座っていた。
そして同様に、射命丸文も座っていた。

「しかし、この暑さもたまりませんねぇ」

器用に扇子を動かして風を流す文。
霊夢はそのおこぼれにあずかり、涼んでいた。

「あんたはいいわねぇ、こうやって好きに風を操れるんだから」
「いやいや、だからといっていつも涼しいわけじゃないですよ。元々の風がぬるければぬるいままです」
「そうは感じないわぁ」

いい感じに流れてくる風に癒される霊夢。
その風は間を挟んでいる文の匂いも運ぶ。

(……文の匂い)

心地いいような、懐かしいような。
そんな雰囲気をひっそり楽しんだ。


「そろそろ取り換えた方がいいんじゃない?」
「それもそうですね。中失礼します」

向こうの井戸で水を汲み、タオルに流す音がする。
それを日陰で倒れているチルノにかぶせてやった。

「この暑さなら氷精も溶けるわけだわ」

昼ごろ、文が超特急で駆け込んできたので何事かと思えば、その後ろにはぐったりした氷精がいた。
曰く、石の上で寝ていたところを撮っていたら溶け始めたのだそうだ。
うなされてはいるものの、意識はあるようで二人は安心した。

「これで溶けたら一回休みってやつなのかしらね」
「そういうことなんですかねぇ。妖精はまだ謎がおおいですから」

恐らく妖精なら阿求と争えるといわれている文。
これは阿求の関心の足りなさゆえなのか、文が関心しすぎているのか、それまではわからないが。

「しかし意外ね」
「何がですか?」
「あんたがこうやって面倒見るだなんて」

少々茶化すつもりで霊夢は言った。

「私だってそこまで鬼じゃないですよぉ」

ひどいなぁ、とチルノにタオルをかぶせながら返す文。

「う~ん……」

冷や水を含んだシャツとドロワ姿で寝ているチルノがうめく。
羽の結晶が先よりかは尖ってきた形になった。

「いやー、これはチャンスとばかりに持って帰りそうな気がしてね」
「持って帰るって、霊夢さん私をなんだと思ってるんですか……」
「ペドフェリア天狗」
「もうそういうあだ名はやめてくださいよぉ!」

少々弄り過ぎたか。
そう思っていた霊夢に、文のつぶやきが大きく飛んできた。


「持ちかえるなら、私は霊夢さんの方を攫いますってー」

「え?」

「あ」


しまった、といった風に口をふさぐ。
霊夢がそそそ、と少しばかり距離を取る。

「じょ、冗談ですよ」
「そんな分かりやすい反応して後に弁解されても信用ないわよ」

そんなぁ~、と悲しそうな顔をする。

「まぁ、アンタなんかに連れ去られるなんてまっぴらごめんだけどね」

「………」


ふっと文の顔が素に戻った。

「それは『私には捕まえられない』という意味なのでしょうか?」

何か変なところを踏んだのだろうか、と不穏な雰囲気を感じ取る霊夢。

「そんなところかしらね」

霊夢はそっと札を手元に寄せた。

「そういえば霊夢さん。どうして私が本気を出さないか知ってますか?」
「『手加減してあげるから』って奴?」
「ええ」
「本気を出しても対等に勝負できる相手がいないから?」
「違いますね」
「さぁ。どこぞの魔法使いみたいに本気で負けたら悔しいから?」
「それでもないですね」

じゃあなんなのよ、と小さく悪態をついた。

「確かに昔ならそんな理由でしたが」

「……今は?」


刹那、文の羽が大きく動いた。
霊夢は札を投げるが、そこに文の姿はない。

「っ!」

「ふふっ」

いつの間にか反対側に回った文がニヤリと笑い、霊夢を突き飛ばした。
縁側から立っていたはずの霊夢の体は、札を手にしていた左腕もろとも床に押し付けられる。

「いっ……!」

最悪だ、と霊夢は唇をかんだ。
どうやら左肩が外れたようで、全く動かない。

「ああ、すみません。ちょっと加減を間違えてしまいました」

霊夢は抜けだそうとするが、体が動かない。
腕も体も同じような細さのくせに力が段違いだ。

「これでも私は妖怪、天狗ですよ?鬼には劣りますが、力は人間の非じゃありません」

「……何のつもり?」

あくまで睨み返す霊夢。
夏の太陽が羽と体に遮られ、逆光が文の顔を隠して見えなくなる。

「私は人間を追い続けるのと同時に、博麗の巫女を追い続けた」

蹴り上げようとする足は全て抑えられた。
すべすべした脚が、霊夢の足を抑えながら器用に割り込んでくる。

「もちろん貴方の事もずっと見てきた」

いつもの口調から素の言葉遣いへと変わっていく。

「そして、情を持ってしまった」

黒い翼が2人を包み込むように広がった。


「……私はね、霊夢」

互いの顔が、鼻の先まで迫る。

「ずっと、あなたを攫いたいと思っていたの」


右手が霊夢の顔を撫でる。

「私が本気を出すのはその時だけ」
「……私が抵抗した時、全力で叩きのめして攫う為?」
「それもいいけどね」

ぎゅっと握った霊夢の手をやさしく解いていく。

「やはり相手は博麗霊夢、気にかけている妖怪も多いのよ」
「妖怪に気にかけられるなんて真っ平ごめんなんだけど」
「面白い巫女よね、あなたは。そういうあなただからこそ私は惹かれたんだわ」

くすっと文が笑う。

「紫や萃香が黙っちゃいないわよ?」

きっとそれだけじゃない。
魔法の森や紅魔館や冥界、あげたらキリがないほどに追手がやってくるだろう。

「そのために隠し続けてきた本気。目に物見せてやるわ」
「あら、あんたあの二人と相性最悪じゃない。大丈夫なの?」
「あなたがいてくれたら、きっとできるわ」
「あら頼もしい。カッコつけちゃって」

つられて霊夢も笑った。

「でもちょっと見直したわ、文」
「それじゃあ、私にさらわれてくれる?」
「それはダメ」
「あら残念」

文がはぁ、とため息をついた。
同時に拘束を解く。

「……力ずくで攫うんじゃなかったの?」
「あれ?無理矢理のほうがお好きなんですか?」
「違うわよ」
「じゃあまたの機会にします。なんか冷めちゃいました」

ほら肩入れましょう、と霊夢を起こす。
少し荒々しいかったものの、鈍い音とともに慣れた手つきで肩が入った。

「どうですか?」
「やけに手馴れてるのね」
「ははは……」
「ふむ……違和感はないわね」

ぐるぐる腕を回してちゃんとくっついているかどうかを確認する。




そしておもむろに文に肩を回した。

「つかまえた」

「へ?」

バチン!と背中が叩かれる。
何かが張り付けられた、そんな気がした。

「あ、あれ?霊夢さん……?」

力が出ない。
それは、なんかおぼえのある感覚。

「どう、本気出せる?」
「ちょ、なんですか!?」
「とっておきの御札よ」

霊夢は、そのまま力の抜けた文を軽々と押し倒した。
先と立場が逆転した態勢した状態だ。

「あんたなんかに攫われるなんてまっぴら」

ずいずいと顔を近づけていく霊夢。
その素は押しに弱いのか、文の顔が引きつり始める。

「え、えっと……チ、チルノさんもいますし……」

「あの子はどうせ、起こされるまで寝てるわよ。あんたは心配しなくていいから」



「私はね、主導権を握られるのが大嫌いなだけなのよ」

目と鼻の先まで顔が近づく。
そして文の上にまたがり、ぺろっと舌なめずりをした。


「さて、鴉を飼うならまず躾からよね」
深夜のテンションでに何気なく風神録してたら、文の建前台詞「手加減してあげるから~」を見て、そのまま本気同士のカッコいい弾幕をかこうと思ったら、イチャイチャさせたくなってきたのでこの有様に。伴って人称も三人称に変化。

あやれいむは、どちらもが同時に主導権を握りあおうとする良いカップリングだと思います。
monolith
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.1240簡易評価
1.80名前が無い程度の能力削除
二人とも不思議にいろっぺーから、な、なんだかワクワクしてきた
2.90絶望を司る程度の能力削除
文が霊夢に主導権をとられた所がめちゃくちゃエロいと思いました。
3.80奇声を発する程度の能力削除
とても良い
8.100名前が無い程度の能力削除
オラなんだかワクワクしてきたぞw
9.100暇神削除
続き、続きは何処ですか!?
12.80ハイカラ削除
お願いですから続きカモン
16.100名前が無い程度の能力削除
あやれいむ最高です。でもれいあやも大好きなので続きが読みたいです。
20.100名前が無い程度の能力削除
鴉って食べられるらしいですね
本気を出さない鴉はどんなお味なんでしょうか?